(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このサスペンション装置で車両のロール剛性を高めるには、アキュムレータ内の圧力を高くすればよい。アキュムレータ内の圧力を高めるには、具体的には、気室に充填する気体の封入圧力を高めたり気室容積を減少させたりすればよい。このようにするとロール剛性が高まる反面、アキュムレータのガスバネ反力が大きくなり、各油圧ダンパが同位相で伸縮或いは片方のみが伸縮する際や、油温の上昇の際に減衰力が大きくなって、車両における乗り心地が悪化し、車高変動が大きくなってしまう。
【0007】
また、気室に充填する気体の封入圧力を高めたり気室容積を減少させたりすると、アキュムレータの気室と液室をフリーピストンで区画する構造を採用する場合、フリーピストンと油圧ダンパのシールに高圧が作用するので、両者のシールの劣化が早まり耐久性を損なう可能性もある。
【0008】
そこで、本発明は前記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、シールの耐久性と車両の乗心地を悪化させずにロール剛性を高めるサスペンション装置の提供であり、また、他の目的は、流入液量に対してガスバネ反力の特性が変化するアキュムレータの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、一対の液圧ダンパと、一方の液圧ダンパにおける伸側室と他方の液圧ダンパの圧側室とを連通する第一流路と一方の液圧ダンパにおける圧側室と他方の液圧ダンパの伸側室とを連通する第二流路と、第一流路および第二流路のそれぞれに途中に設けたアキュムレータとを備え、各アキュムレータが中空なケースと、ケース内に摺動自在に挿入されてケース内を液室と気室とに区画する第一フリーピストンと、ケース内に摺動自在に挿入されて気室内を第一気室と第二気室とに区画する第二フリーピストンとを有し、第二フリーピストンにおける第一気室側の受圧面積を第二気室側の受圧面積よりも小さくした。アキュムレータは、作動油の流入量が少ないと、第一気室のみを有効とし、流入量が中程度となると、第一気室および第二気室がともに有効になる。そのため、液室への液体の流入量が少ないときにはガスバネ反力を極小さくし、液室への液体の流入量が多くなるとガスバネ反力が大きくなるように、アキュムレータが発揮するガスバネ反力特性を設定でき、第一気室と第二気室の設定圧を従来のサスペンション装置のアキュムレータに比較して小さくできる。よって、各液圧ダンパが逆位相で伸縮する場合にサスペンション装置は、大きな減衰力を発揮して車両のロールを抑制でき、車両のロール剛性が高くできるだけでなく、液圧ダンパの同位相での伸縮或いは片方のみの伸縮に対して減衰力が過剰とならず車両の乗り心地の悪化を引き起さない。また、液体の温度が上昇して、液体の体積が大きくなっても、第一フリーピストンのみが移動して第一気室でこれを吸収でき、アキュムレータのガスバネ反力の変動は小さくなる。
【0010】
また、サスペンション装置におけるアキュムレータに第二気室から第一気室へ向かう気体の流れのみを許容する逆止弁を設ける場合には、第二気室へ気体を注入すると、第一気室へも簡単に気体を注入できる。さらに、第一気室に封入されていた気体の圧力が第二気室の圧力よりも低下している場合、逆止弁を介して第二気室から第一気室G2へ気体をチャージでき、第一気室の気圧の低下を防げ、サスペンション装置の作動が長期間に亘って維持される。
【0011】
そして、サスペンション装置におけるアキュムレータのケースが小径部と大径部とを有し、第二フリーピストンが小径部内に摺動自在に挿入される小ピストン部と大径部内に摺動自在に挿入される大ピストン部とを有し、ケースと第二フリーピストンとの間に形成される空間を大気開放する場合には、ケースと第二フリーピストンとの間に形成される空間が大気開放されるので、第二フリーピストンがケース内で移動した際に、前記空間が圧縮および拡大されても空間内が高圧となったり負圧となったりしない。よって、第二フリーピストンの移動が空間の圧縮および拡大によって妨げられず、サスペンション装置における各液圧ダンパが発生する減衰力を低減したい場面で、減衰力が大きくなってしまう等の悪影響を与えない。また、万が一、第一気室或いは第二気室から空間に気体が漏れても、空間が大気開放されているので、空間内への気体の漏洩で当該空間内が高圧とならず、気体漏れによって第二フリーピストンの移動が妨げられる恐れもない。
【0012】
さらに、サスペンション装置におけるアキュムレータの第一フリーピストンと第二フリーピストンの対向端の一方または両方に凹部を設ける場合、第一フリーピストンが第二フリーピストンに接触可能となる。このようにすれば、液室内への液体流入量が多くなると、第二気室のみが有効となって、ガスバネ反力特性を途中で変更して、アキュムレータの液体流入量に対するガスバネ反力の増加割合を大きくできる。
【0013】
また、サスペンション装置におけるアキュムレータの第一フリーピストン第二フリーピストンの対向端の一方または両方にクッションを設ける場合、両者が衝突してもクッションで両者の衝突による衝撃が和らぎ、打音発生が抑制される。
【0014】
前記した目的を達成するために、他の本発明の課題解決手段は、アキュムレータが中空なケースと、ケース内に摺動自在に挿入されてケース内を液室と気室とに区画する第一フリーピストンと、ケース内に摺動自在に挿入されて気室内を第一気室と第二気室とに区画する第二フリーピストンとを備え、第二フリーピストンにおける第一気室側の受圧面積を第二気室側の受圧面積よりも小さくしたことを特徴とする。アキュムレータにあっては、液室への液体の流入量が少ないと、第一気室のみが圧縮可能な状態となり、流入量が増加すると、第一気室および第二気室がともに圧縮可能な状態となって、液体の流入量に対するガスバネ反力の増加割合が途中で変化する。
【0015】
また、アキュムレータに第二気室から第一気室へ向かう気体の流れのみを許容する逆止弁を設ける場合には、第二気室へ気体を注入すると、第一気室へも簡単に気体を注入できる。さらに、第一気室に封入されていた気体の圧力が第二気室の圧力よりも低下している場合、逆止弁を介して第二気室から第一気室G2へ気体をチャージでき、第一気室の気圧の低下を防げ、アキュムレータの作動が長期間に亘って維持される。
【0016】
そして、アキュムレータにおけるケースが小径部と大径部とを有し、第二フリーピストンが小径部内に摺動自在に挿入される小ピストン部と大径部内に摺動自在に挿入される大ピストン部とを有し、ケースと第二フリーピストンとの間に形成される空間を大気開放する場合には、ケースと第二フリーピストンとの間に形成される空間が大気開放されるので、第二フリーピストンがケース内で移動した際に、前記空間が圧縮および拡大されても空間内が高圧となったり負圧となったりしない。よって、第二フリーピストンの移動が空間の圧縮および拡大によって妨げられず、アキュムレータは円滑に作動できる。また、万が一、第一気室或いは第二気室から空間に気体が漏れても、空間が大気開放されているので、空間内への気体の漏洩で当該空間内が高圧とならず、気体漏れによって第二フリーピストンの移動が妨げられる恐れもない。
【0017】
さらに、アキュムレータの第一フリーピストンと第二フリーピストンの対向端の一方または両方に凹部を設ける場合、第一フリーピストンが第二フリーピストンに接触可能となる。このようにすれば、液室内への液体流入量が多くなると、第二気室のみが有効となって、ガスバネ反力特性を途中で変更して、アキュムレータの液体流入量に対するガスバネ反力の増加割合を大きくできる。
【0018】
また、アキュムレータの第一フリーピストン第二フリーピストンの対向端の一方または両方にクッションを設ける場合、両者が衝突してもクッションで両者の衝突による衝撃が和らぎ、打音発生が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のサスペンション装置によれば、シールの耐久性と車両の乗心地を悪化させずにロール剛性を高められる。また、本発明のアキュムレータによれば、流入液量に対してガスバネ反力の特性を変化させられる
。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。本発明の一実施の形態におけるサスペンション装置1は、一対の液圧ダンパDL,DRと、一方の液圧ダンパDLの伸側室ELと他方の液圧ダンパDRの圧側室CRとを接続する第一流路P1と、一方の液圧ダンパDLの圧側室CLと他方の液圧ダンパDRの伸側室ERとを接続する第二流路P2と、第一流路P1に接続されるアキュムレータ
ALと、第二流路P2に接続されるアキュムレータ
ARとを備えて構成されており、たとえば、四輪自動車の左前輪車軸と車体との間に液圧ダンパDLを介装し、右前輪車軸と車体との間に液圧ダンパDRを介装するようにして使用される。
【0022】
まず、液圧ダンパDL,DRは、
図1に示すように、筒状のシリンダ2L,2Rと、シリンダ2L,2R内に摺動自在に挿入されシリンダ2L,2R内を伸側室EL,ERと圧側室CL,CRに区画するピストン3L,3Rと、一端をピストン3L,3Rに連結したピストンロッド4L,4Rとを備えて構成され、シリンダ2L,2R内には作動液体として、たとえば、作動油が油密状態とされて充満されている。なお、作動液体としては、作動油以外にも水、水溶液、電気粘性流体、磁気粘性流体といった液体の利用も可能である。また、前記したところでは、液圧ダンパDL,DRは、所謂片ロッド型のダンパとされているが、ピストン3L,3Rの両側にピストンロッドが伸びる両ロッド型とされてもよい。
【0023】
そして、各液圧ダンパDL,DRは、第一流路P1および第二流路P2で接続されている。具体的には、第一流路P1は、一方の液圧ダンパDLの伸側室ELと他方の液圧ダンパDRの圧側室CRとを接続し、他方の第二流路P2は、一方の液圧ダンパDLの圧側室CLと他方の液圧ダンパDRの伸側室ERとを接続している。つまり、第一流路P1と第二流路P2は、一対の液圧ダンパDL,DRの伸側室EL,ERと圧側室CL,CRとを襷掛け接続している。
【0024】
また、この場合、第一流路P1には、減衰バルブ5,6が設けられており、第二流路P2にも、減衰バルブ7,8が設けられている。よって、液圧ダンパDL,DRのシリンダ2
L,2R内から第一流路P1および第二流路P2へ作動油が押し出され、或いは、シリンダ2
L,2R内へ作動油が供給される際に、減衰バルブ5,6,7,8が通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになっている。なお、減衰バルブ5,6,7,8は、
図1に示すところでは、絞りとされており、作動油の双方向の流れに対して抵抗を与えるようになっているがチョークとされてもよい。また、
図2に示すように、減衰バルブ5,6,7,8は、絞り或いは一方通行のバルブと逆止弁を並列させる構成であってもよく、シリンダ2L,2R内から作動油が押しだされる流れに対してのみ抵抗を与えるバルブとされてもよい。この場合には、シリンダ2L,2R内へ作動油が供給される流れに対しては減衰バルブ5,6,7,8に並列される逆止弁が開いて抵抗なくシリンダ2
L,2R内へ作動油が供給されるようになる。さらに、本実施の形態では、減衰バルブ5,6,7,8を設けているが、これらの省略も可能である。
【0025】
一方のアキュムレータALは、第一流路P1の途中であって減衰バルブ5,6間に接続される第一接続路JLを通じて第一流路P1に接続されている。この第一接続路
JLには、第一流路P1からアキュムレータALへ向かう作動油の流れに対して抵抗を与える第一弁要素V1が設けられている。第一弁要素V1は、絞りとされていて作動油の双方向の流れに対して抵抗を与えるようになっているがチョークとされてもよい。また、第一弁要素V1は、
図2に示すように、第一流路P1からアキュムレータALへ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を与える減衰バルブとこれに並列されて反対の流れのみを許容する減衰バルブとで構成されてもよい。さらには、第一弁要素V1は、第一流路P1からアキュムレータALへ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を与える減衰バルブとこれに並列されて反対の流れのみを許容する逆止弁とで構成されてもよい。
【0026】
他方のアキュムレータARは、第二流路P2の途中であって減衰バルブ7,8間に接続される第二接続路JRを通じて第二流路P2に接続されている。この第二接続路JRには、第二流路P2からアキュムレータARへ向かう作動油の流れに対して抵抗を与える第二弁要素V2が設けられている。第二弁要素V2は、この場合、絞りとされていて作動油の双方向の流れに対して抵抗を与えるようになっているがチョークとされてもよい。また、第二弁要素V2は、
図2に示すように、第二流路P2からアキュムレータARへ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を与える減衰バルブとこれに並列されて反対の流れのみを許容する減衰バルブとで構成されてもよい。さらには、第二弁要素V2は、第二流路P2からアキュムレータARへ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を与える減衰バルブとこれに並列されて反対の流れのみを許容する逆止弁とで構成されてもよい。
【0027】
アキュムレータAL,ARは、
図1から
図3に示すように、中空なケース10と、ケース10内に摺動自在に挿入されてケース10内を液室Lと気室Gとに区画する第一フリーピストン11と、ケース10内であって第一フリーピストン11よりも気室G側に摺動自在に挿入されて気室G内を第一フリーピストン11との間の第一気室G1と、第二気室G2とに区画する第二フリーピストン12とを備えている。
【0028】
ケース10は、筒状であって、内周に小径部10aと、小径部10aより内径が大径な大径部10bとを備えており、小径部10aと大径部10bとの境に段部10cが形成されている。また、このケース10には、小径部10aの段部10cの近傍から開口して外部へ通じる通気孔10dが設けられている。
【0029】
また、ケース10の
図3中下端の底部には、小径部10a内に通じるポート10eが設けられ、
図3中上端の頂部には、大径部10b内に通じるガス注入口10fが設けられている。なお、ガス注入口10fには、ガス注入に便利なようにケース10外から気室G内への気体の流れは許容するが、気室Gからケース10外への気体の漏れを防止する封入弁13が装着されている。
【0030】
第一フリーピストン11は、ケース10の小径部10a内に摺動自在に挿入されており、ケース10内を第一フリーピストン11よりも
図3中下方の液室Lと上方の気室Gとに区画している。アキュムレータAL,ARにおけるケース10のポート10eは、それぞれ第一接続路JLおよび第二接続路JRに接続され、各液室Lは、それぞれ第一流路P1および第二流路
P2に連通される。また、第一フリーピストン11の気室G側には凹部11aが設けられ、外周には、ケース10における小径部10aの内周面に摺接するシールリング11bが装着されていて、液室Lと気室Gとが連通しないよう密にシールされている。
【0031】
第二フリーピストン12は、ケース10の大径部10b内に摺動自在に挿入されており、気室Gを第一気室G1と第二気室G2とに区画している。第一気室G1は、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12と間で形成され、第二気室G2は、第二フリーピストン12よりも
図3中上方に形成されている。
【0032】
第二フリーピストン12は、具体的には、有底筒状とされていて、小径部10a内に摺動自在に挿入される小ピストン部12aと、大径部に摺動自在に挿入される小ピストン部
12aより外径が大径な大ピストン部12bと、小ピストン部12aと大ピストン部12bとの間の外周に設けた環状凹部12cと、底部12dに設けた逆止弁12eとを備えて構成されている。
【0033】
そして、第二フリーピストン12は、小径部10a内への小ピストン部12aの挿入によって、小径部10a内であって第一フリーピストン11との間に第一気室G1を区画している。また、第二フリーピストン12は、大径部10b内への大ピストン部12bの挿入によって、大径部10b内であって
大ピストン部12bより
図3中上方に第二気室G2を区画している。第二フリーピストン12の第一気室G1の圧力を受ける受圧面積は、小ピストン部12aの外径を直径とする円の面積に等しく、第二フリーピストン12の第二気室G2の圧力を受ける受圧面積は、大ピストン部12bの外径を直径とする円の面積に等しい。よって、第二フリーピストン12の第一気室G1の圧力を受ける受圧面積は、第二フリーピストン12の第二気室G2の圧力を受ける受圧面積より小さい。さらに、逆止弁12eは、第二気室G2側から第一気室G1へ向かう気体の流れのみを許容するようになっている。
【0034】
また、小ピストン部12aの外周には、小径部10aの内周面に摺接するシールリング12fが装着され、大ピストン部12bの外周には、大径部10bの内周面に摺接するシールリング12gがそれぞれ装着されている。よって、第一気室G1と第二気室G2との連通しないよう密にシールされている。
【0035】
そして、ケース10内に第一フリーピストン11および第二フリーピストン12を挿入した状態で、ガス注入口10fから気体を注入すると、第二気室G2内に気体を充填でき、さらに、逆止弁12eを通じて第一気室G1にも気体を充填できるようになっている。
【0036】
また、第二フリーピストン12は、ケース10内を
図3中下方へ移動して段部10cへ大ピストン部12bが当接すると、それ以上の下方への移動が規制されるようになっている。このように第二フリーピストン12が最大限に下方へ移動しても環状凹部12cが通気孔10dに対向するようになっている。また、液室Lの設計上の上限圧力となって、第二フリーピストン12が
図3中上方へ移動して第二気室G2を圧縮しても、環状凹部12cは通気孔10dに対向するようになっている。よって、環状凹部12cは、常時、通気孔10dに通じていて、ケース10と第二フリーピストン12との間に形成される空間Kである環状凹部12c内は、常にケース10外に通じて大気開放されている。このように、ケース10と第二フリーピストン12との間に形成される空間Kが大気開放されるので、第二フリーピストン12がケース10内で移動した際に、前記空間Kが圧縮および拡大されても空間K内が高圧となったり負圧となったりしない。よって、第二フリーピストン12の移動が前記空間Kの圧縮および拡大によって妨げられない。
【0037】
なお、前記した第二フリーピストン12には、環状凹部12cが設けられているので、この環状凹部12cを常時通気孔10dによって大気開放しているが、環状凹部12cを設けない場合、通気孔10dは段部10cに開口するようにすればよい。この場合、第二フリーピストン12の大ピストン部12bとケース10の段部10cとの間に空間Kが形成されるので、通気孔10dを前記のように設ければ、前記空間Kが負圧や高圧にならないので、第二フリーピストン12の移動を阻害しない。
【0038】
また、この実施の形態のサスペンション装置1では、第一フリーピストン11の第二フリーピストン12側の端部に環状のクッション14が装着されている。これにより、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12とが衝突してもクッション14が両者の衝突による衝撃を和らげ、打音発生が抑制される。なお、クッション14は、第二フリーピストン12の第一フリーピストン11側の端部に設けるようにしてもよく、形状も任意で環状以外の形状とされてもよい。
【0039】
以上のように、サスペンション装置1は構成され、つづいて、その作動について説明する。まず、液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合、つまり、シリンダ2L,2Rに対するピストン3L,3Rの変位の位相が各液圧ダンパDL,DRで同一となる場合について説明する。
【0040】
各液圧ダンパDL,DRが共に同速度で伸長する場合、各液圧ダンパDL,DRの伸側室EL,ERの容積が減少し圧側室CL,CRの容積が増大する。そして、一方の液圧ダンパDLにおける伸側室ELから流出する作動油は、第一流路P1を介して、他方の液圧ダンパDRの容積が増大する圧側室CRへ流入する。また、他方の液圧ダンパDRにおける伸側室ERから流出する作動油は、第二流路P2を介して、一方の液圧ダンパDLの容積が増大する圧側室CLへ流入する。
【0041】
しかし、各液圧ダンパDL,DRにおいて、伸側室EL,ERで減少する容積より圧側室CL,CRで増大する容積の方が、ピストンロッド4L,4Rがシリンダ2L,2Rから退出する体積分だけ大きくなるので、圧側室CL,CR内で作動油が不足する。
【0042】
したがって、この不足する体積分の作動油は、一方の液圧ダンパDLの圧側室CLにあっては
他方のアキュムレータARから、他方の液圧ダンパDRの圧側室CRにあっては
一方のアキュムレータALから供給される。
【0043】
逆に、各液圧ダンパDL,DRが共に同速度で圧縮される場合、各液圧ダンパDL,DRの伸側室EL,ERの容積が増大し圧側室CL,CRの容積が減少する。そして、一方の液圧ダンパDLにおける圧側室CLから流出する作動油は、第二流路P2を介して、他方の液圧ダンパDRの容積が増大する伸側室ERへ流入する。また、他方の液圧ダンパDRにおける圧側室CRから流出する作動油は、第一流路P1を介して、一方の液圧ダンパDLの容積が増大する伸側室ELへ流入する。
【0044】
しかし、各液圧ダンパDL,DRにおいて、伸側室EL,ERで増大する容積より圧側室CL,CRで減少する容積の方が、ピストンロッド4L,4Rがシリンダ2L,2Rへ進入する体積分だけ大きくなるので、圧側室CL,CR内で作動油が過剰となる。
【0045】
したがって、この過剰となる体積分の作動油は、一方の液圧ダンパDLにあっては他方のアキュムレータARに、他方の液圧ダンパDRにあっては一方のアキュムレータALに吸収される。
【0046】
つづいて、液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合、つまり、シリンダ2L,2Rに対するピストン3L,3Rの変位の位相が各液圧ダンパDL,DRで全く逆となる場合について説明する。
【0047】
一方の液圧ダンパDLが伸長し、他方の液圧ダンパDRが一方の液圧ダンパDLと同速度で逆に圧縮されると、液圧ダンパDLの伸側室ELの容積が減少し圧側室CLの容積が増大し、液圧ダンパDRの伸側室ERの容積が増大し圧側室CRの容積が減少する。
【0048】
この場合、第一流路P1で接続される液圧ダンパDLの伸側室ELと他方の液圧ダンパDRの圧側室CRの容積が共に減少し、液圧ダンパDLの伸側室ELおよび液圧ダンパDRの圧側室CRから流出する作動油は、一方のアキュムレータALに吸収される。
【0049】
また、第二流路P2で接続される液圧ダンパDLの圧側室CLおよび液圧ダンパDRの伸側室ERの容積が共に増大し、液圧ダンパDLの圧側室CLおよび液圧ダンパDRの伸側室ERへ流入する作動油は、他方のアキュムレータARから供給される。この一方のアキュムレータALへ流入する作動油量と他方のアキュムレータARから流出する作動油量は、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合に比較して多くなる。
【0050】
反対に各液圧ダンパDL,DRの伸縮が逆となると、第一流路P1に接続される一方のアキュムレータALから作動油が各液圧ダンパDL,DRへ供給される。また、第二流路P2に接続される他方のアキュムレータARによって、各液圧ダンパDL,DRから押し出される作動油が吸収される。やはり、この一方
のアキュムレータALから流出する作動油量と他方のアキュムレータARへ流入する作動油量は、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合に比較して多くなる。
【0051】
ここで、一方の液圧ダンパDLの減衰力は、伸側室ELと圧側室CLの差圧に比例し、他方の液圧ダンパDRの減衰力も同様に、伸側室ERと圧側室CRの差圧に比例する。
【0052】
前述したように、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合に比較して、一方のアキュムレータALおよび他方のアキュムレータARと各液圧ダンパDL,DRでやり取りする作動油量が多くなる。また、一方のアキュムレータALおよび他方のアキュムレータARのうち作動油が流入する側のアキュムレータのガスバネ反力は作動油の流入量が多い方が大きくなるとともに、通過する流量が多ければ第一弁要素V1および第二弁要素V2での圧力損失も大きくなる。
【0053】
したがって、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する際の各液圧ダンパDLの伸側室EL,ERと圧側室CL,CRの差圧は、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する際の液圧ダンパDLの伸側室EL,ERと圧側室CL,CRの差圧よりも大きくなる。よって、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合の各液圧ダンパDL,DRが発生する減衰力は、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合の各液圧ダンパDL,DRが発生する減衰力よりも高くなる。よって、このサスペンション装置1によれば、車体がロールして各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合、減衰力を高くして当該車体のロールを抑制できる。
【0054】
なお、前記の説明では、各液圧ダンパDL,DRが同位相および逆
位相で伸縮し、かつ、ピストン速度が同じ状況について説明しているが、各液圧ダンパDL,DRの発生減衰力は、各アキュムレータAL,ARで供排する作動油量に依存して変化する。よって、各液圧ダンパDL,DRの一方のみが伸縮したり、これら各液圧ダンパDL,DRが位相をずらして伸縮したりするような場合には、各液圧ダンパDL,DRは各アキュムレータAL,ARで供排される作動油量に応じて、減衰力を発揮する。したがって、このような場合、各液圧ダンパDL,DRは、同位相で伸縮する場合と逆位相で伸縮する場合の中間の減衰力を発生する。
【0055】
なお、各液圧ダンパDL,DRの車両への配置であるが、前述したところでは、各液圧ダンパDL,DRをそれぞれ車両の左右輪と車体との間に配置して車体のロールを抑制する例を説明したが、各液圧ダンパDL,DRをそれぞれ車両の前後輪と車体との間に配置すると車体のピッチング時に減衰力が大きくなって当該車体のピッチングを抑制できる。また、各液圧ダンパDL,DRをそれぞれ車両の右前輪と左後輪と車体の間、或いは、車両の左前輪と右後輪と車体の間に配置すると、車体のロールだけでなくピッチング時に減衰力が大きくなって当該車体のロールとピッチングの双方を抑制できる。
【0056】
つづいて、アキュムレータAL,ARの作動について詳細に説明する。アキュムレータAL,ARは、液室Lに流入する作動油量に応じて、ガスバネ反力の特性が変化する。以下、具体的に、このガスバネ反力の特性変化について説明する。
【0057】
各液圧ダンパDL,DRからアキュムレータAL,ARの液室Lに作動油が供給されない初期状態では、
図3に示すように、第二フリーピストン12は、大ピストン部12bがケース10の段部10cに当接して
図3中下方へ移動できない状態に維持される。
【0058】
そして、アキュムレータAL,ARの液室Lに作動油が流入すると、第一フリーピストン11が流入する作動油に押されて
図3中上方へ移動し、第一気室G1を圧縮する。第二フリーピストン12には、第一気室G1の圧力による
図3中上方へ押し上げる力と、第二気室G2の圧力による
図3中下方へ押し下げる力が作用する。よって、第一フリーピストン11が第一気室G1を圧縮して、第一気室G1の圧力が上昇しても、第二フリーピストン12を
図3中押し下げる力の方が押し上げる力を上回っている状態では、第二フリーピストン12は動かない。この状態では、第二フリーピストン12が動かずに、第一フリーピストン11のみが
図3中上方へ移動して第一気室G1のみが圧縮されるのみとなる。つまり、第二気室G2の容積は減少せずに、第一気室G1のみが圧縮されるため、アキュムレータAL,ARは、見掛け上、第一気室G1のみが有効に機能し、第一気室G1と液室Lのみを備えるアキュムレータとして振る舞う。この状態では、アキュムレータAL,ARが発するガスバネ反力に寄与するのは、第一気室G1のみであり、第一フリーピストン11の移動に対して第一気室G1の容積変化は著しい。そのため、
図4に示すように、アキュムレータAL,ARは、液室L内に流入する作動油量に対して傾きが大きくなる特性にてガスバネ反力を発揮するため、ガスバネ反力の特性は、流入量の二乗に比例するように立ち上がる特性となるが、流入量が少ないとガスバネ反力が極小さくなる特性となる。
【0059】
ここで、第一気室G1内の圧力をP1とし、第二気室G2内の圧力をP2とし、第二フリーピストン12の第一気室G1の圧力を受ける受圧面積をA1として、第二フリーピストン12の第二気室G2の圧力を受ける受圧面積をA2とする。第一気室G1の圧力P1がP1≧P2・A2/A1の条件を満たすまで第一フリーピストン11によって圧縮されるまでは、前記の状態が維持される。
【0060】
他方、作動油の液室Lへの流入量が増えて、第一フリーピストン11の移動量が増えて第一気室G1をさらに圧縮すると、前記条件が満たされるようになる。すると、第一気室G1の圧力で第二フリーピストン12を押し上げる力が第二気室G2の圧力でこれを押し下げる力を上回り、第二フリーピストン12も
図3中上方へ移動するようになる。つまり、第一フリーピストン11による第一気室G1の圧縮による第一気室G1の圧力上昇に伴い、第二フリーピストン12も
図3中上方へ移動して第二気室G2を圧縮する。この状態では、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12とは離間してはいるが、これらが共に
図3中上方へ移動して、第一気室G1と第二気室G2が共に圧縮される状態となる。具体的には、第一フリーピストン11の移動に対して、P1=P2・A2/A1となるように第二フリーピストン12が
図3中上方へ移動する。この状態では、第一気室G1と第二気室G2が圧縮されるため、第一気室G1と第二気室G2の双方が有効に機能して、アキュムレータAL,ARが発するガスバネ反力に寄与する。したがって、作動油量が増えると、第一気室G1のみが圧縮される状態から第一気室G1と第二気室G2がともに圧縮される状態となる。そのため、
図4に示すように、アキュムレータAL,ARは、第一気室G1のみが圧縮される状態に比較して液室L内に流入する作動油量に対して傾きが小さい特性にてガスバネ反力を発揮する。よって、この場合のガスバネ反力の特性は、第一気室G1のみが圧縮される状態に比較して、流入量に対して傾きが寝る特性となる。
【0061】
さらに、作動油の液室Lへの流入量が増えると、第一フリーピストン11の移動量が増えて第一気室G1をさらに圧縮し、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12とが当接して一体となって
図3中上方に移動するようになる。すると、第一気室G1は最圧縮状態となり、その容積は凹部11aの容積に等しくなって、それ以上容積は減少しなくなる。この状態では、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12と接触を保ったまま一体となってケース10内を移動するので、第二気室G2のみが圧縮される状態となる。つまり、第一気室G1の容積は減少せずに、第二気室G2のみが圧縮されるため、アキュムレータAL,ARは、見掛け上、第二気室G2のみが有効に機能し、第二気室G2と液室Lのみを備えるアキュムレータとして振る舞う。この状態では、アキュムレータAL,ARが発するガスバネ反力に寄与するのは、第二気室G2のみである。そして、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12が離間したまま移動する場合に比較して、第一フリーピストン11の移動に対する第二気室G2の容積変化は大きい。そのため、
図4に示すように、アキュムレータAL,ARは、第一気室G1と第二気室G2が共に圧縮される状態に比較して液室L内に流入する作動油量に対して傾きが大きい特性にてガスバネ反力を発揮する。よって、この場合のガスバネ反力の特性は、第一気室G1と第二気室G2が共に圧縮される状態に比較して、流入量に対して傾きが若干大きくなる特性となる。なお、アキュムレータAL,ARのガスバネ反力の特性は、第一気室G1および第二気室G2内の圧力の設定、第二フリーピストン12の第一気室G1側および第二気室G2側の受圧面積の設定、第一気室G1および第二気室G2の容積の設定により、調整可能である。
【0062】
液圧ダンパDL,DRが停止しアキュムレータAL,ARの動作も終了すると、液圧ダンパDL,DRの動作により流入した作動油が液室Lから排出され、第二フリーピストン12は、大ピストン部12bがケース10の段部10cに当接する初期状態の位置に戻る。また、第一フリーピストン11も、
図3に示すように、初期状態の位置に戻る。長期間の使用等により、第一気室G1に封入されていた気体の圧力が初期の設定圧より下がっていて、第二気室G2の圧力よりも低下している場合、逆止弁12eを介して第二気室G2から第一気室G2へ気体がチャージされる。これにより、第一気室G1の気圧の低下を防ぎ、前記作動が長期間に亘って維持される。
【0063】
アキュムレータAL,ARにあっては、作動油の流入量が少ないと、第一気室G1のみを有効とし、流入量が中程度となると、第一気室G1および第二気室G2がともに有効になり、さらに、流入量が多くなると、第二気室G2のみが有効となる。液室Lへの作動油量が少なく第一気室G1の
み有効な領域では、アキュムレータAL,ARが発揮するガスバネ反力特性は、この領域において流入量が少ないとガスバネ反力が極小さくなり、液室Lへの作動油量がある程度多くなるとガスバネ反力が大きく増加する。液室Lへの作動油量が中程度で第一気室G1と第二気室G2が共に有効な領域では、アキュムレータAL,ARが発揮するガスバネ反力特性は、有効な気室Gの容積が大きくなるため、作動油量の増加に対して傾きが小さくなるもののガスバネ反力も増加していく特性となる。液室Lへの作動油量が多く第二気室G2のみ有効な領域では、アキュムレータAL,ARが発揮するガスバネ反力特性は、有効な気室Gの容積が減少するため、作動油量の増加に対して傾きが中程度の場合に比較すると大きくなる特性となる。このように、アキュムレータAL,ARは、作動油の流入量に対して見掛け上気室Gの有効容積が変化するので、作動油の流入量に対してガスバネ反力が作動油の二乗に比例して増加する特性とはならず、作動油の流入量に対するガスバネ反力の増加割合が途中で変化して小さくなる。
【0064】
よって、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合や片側のみが伸縮する場合では、アキュムレータAL,ARに出入りする作動油量が少ないので、アキュムレータAL,ARが発揮するガスバネ反力が前述の如く極小さくなる。したがって、このサスペンション装置1にあっては、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合や片側のみが伸縮する場合は、各液圧ダンパDL,DRが発揮する減衰力は極小さくなる。対して、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合では、アキュムレータAL,ARに出入りする作動油量が多くなるので、アキュムレータAL,ARが発揮するガスバネ反力が前述の如く大きくなる。したがって
、このサスペンション装置1にあっては、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合は、各液圧ダンパDL,DRが発揮する減衰力をより大きくできる。
【0065】
つまり、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合にアキュムレータAL,ARに流入する作動油量で大きなガスバネ反力を発揮するように第一気室G1および第二気室G2の圧力を設定しても、各液圧ダンパDL,DRが同位相で伸縮する場合や片側のみが伸縮する場合にアキュムレータAL,ARに流入する作動油量ではガスバネ反力を小さく抑えられる。このように、第一気室G1および第二気室G2の圧力を設定すると、各液圧ダンパDL,DRが逆位相で伸縮する場合にサスペンション装置1は、大きな減衰力を発揮して車両のロールを抑制できるので、車両のロール剛性が高くなる。また、このように、第一気室G1および第二気室G2の圧力を設定しても、作動油の流入量が少ないとアキュムレータAL,ARのガスバネ反力は小さく抑えられる。よって、このサスペンション装置1にあっては、車両のロール剛性を高めても、液圧ダンパDL,DRの同位相での伸縮に対して減衰力が過剰とならず車両の乗り心地の悪化を引き起さない。
【0066】
また、作動油の温度が上昇して、作動油の体積が大きくなっても、第一フリーピストン11のみが移動して第一気室G1でこれを吸収でき、アキュムレータAL,ARのガスバネ反力の変動は小さくなる。したがって、液圧ダンパDL,DR内の液体の温度の上昇に対して、アキュムレータAL,ARのガスバネ反力の変動は小さいので、車高変動も小さくてすむ。
【0067】
さらに、第二フリーピストン12の第二気室G2の圧力を受ける受圧面積は、第一フリーピストン11の液室Lの圧力を受ける受圧面積よりも大きく、ロール剛性を高めるようにしても、第一気室G1と第二気室G2の設定圧を従来のサスペンション装
置のアキュムレータに比較して小さくできる。よって、アキュムレータAL,AR内の第一フリーピストン11および第二フリーピストン12の外周に設けたシールリング11b,12f,12gに過剰な高圧が作用せず、これらの劣化を早めず、耐久性も損なわない。
【0068】
また、このサスペンション装置1におけるアキュムレータAL,ARでは、第二気室G2から第一気室G1へ向かう気体の流れのみを許容する逆止弁12eを設けたので、第二気室G2へ気体を注入すると、第一気室G1へも簡単に気体を注入できる。さらに、第一気室G1に封入されていた気体の圧力が第二気室G2の圧力よりも低下している場合、逆止弁12eを介して第二気室G2から第一気室G1へ気体がチャージされる。これにより、第一気室G1の気圧の低下を防ぎ、アキュムレータAL,ARの前記作動およびサスペンション装置1の前記作動が長期間に亘って維持される。なお、逆止弁12eの省略も可能であり、アキュムレータAL,ARおよびサスペンション装置1の作動そのものに影響はなく、本発明の効果が失われない。また、逆止弁12eを設けない場合には、第一気室G1内の設定圧と第二気室G2内の設定圧を異なるようにしてもよい。
【0069】
また、アキュムレータAL,ARにおけるケース10が小径部10aと大径部10bとを有し、第二フリーピストン12が小径部10a内に摺動自在に挿入される小ピストン部12aと大径部10b内に摺動自在に挿入される大ピストン部12bとを有している。そして、ケース10と第二フリーピストン12との間に形成される空間Kを大気開放している。このように、ケース10と第二フリーピストン12との間に形成される空間Kが大気開放されるので、第二フリーピストン12がケース10内で移動した際に、前記空間Kが圧縮および拡大されても空間K内が高圧となったり負圧となったりしない。よって、第二フリーピストン12の移動が前記空間Kの圧縮および拡大によって妨げられず、アキュムレータAL,ARは円滑に作動できる。したがって、サスペンション装置1における各液圧ダンパDL,DRが発生する減衰力を低減したい場面で、減衰力が大きくなってしまう等の悪影響を与えない。万が一、第一気室G1或いは第二気室G2から空間Kに気体が漏れても、空間Kが大気開放されているので、空間K内への気体の漏洩で当該空間K内が高圧とならず、気体漏れによって第二フリーピストン12の移動が妨げられる恐れもない。
【0070】
アキュムレータAL,ARにおける第一フリーピストン11の第二フリーピストン12の対向端に凹部11aを設けているので、第一フリーピストン11が第二フリーピストン12に接触可能となっている。このようにすれば、液室L内への液体流入量が多くなると、第二気室G2のみが有効となって、ガスバネ反力特性を途中で変更して、アキュムレータAL,ARの液体流入量に対するガスバネ反力の増加割合を大きくできる。なお、凹部は、第二フリーピストン12の第一フリーピストン11の対向端に設けてもよいし、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12の双方に設けてもよい。また、第一フリーピストン11の第二フリーピストン12の対向端の一方または両方に、凹部ではなく、
図5に示すように、突部15等を設けて両者の接触を図ってもよい。突起15の設置数はいくつでもよい。
【0071】
アキュムレータAL,ARにおける第一フリーピストン11の第二フリーピストン12の対向端にクッション14を設けているので、両者が衝突してもクッション14が両者の衝突による衝撃を和らげ、打音発生が抑制される。なお、クッションは、第二フリーピストン12の第一フリーピストン11の対向端に設けてもよいし、第一フリーピストン11と第二フリーピストン12の双方に設けてもよい。
【0072】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。