(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の粒子除去装置100の概略断面図である。
粒子除去装置100は、外筒110、内筒120と、外筒110の上流側(図中右側)の内部に配置された回転流発生装置20と、を備える。粒子除去装置100は、第1ガス排出管10Aと第2ガス排出管10Bとの間に配置されている。
【0013】
外筒110は、小径部111と、大径部113と、小径部111と大径部113との間に位置する遷移部112と、を備える。
【0014】
小径部111は、外筒110の上流側(図中右側)の部分であり、回転流発生装置20が内部に配置されている。小径部111の内径は、小径部111(外筒110)が連結される第1ガス排出管10Aの内径と略同様である。
小径部111の上流側端部の外周には連結フランジ111Aが設けられている。
【0015】
大径部113は、外筒110の下流側(図中左側)の部分で、小径部111よりも径が大きい。大径部113は、外筒110の全長の半分以上を占める。大径部113の下流側の端部には、連結フランジ113Aが設けられている。
【0016】
内筒120は、外筒110の大径部113よりも小径で、小径部111の内径と略同じ内径を有し、大径部113の内部に配置されている。大径部113(外筒110)の軸線と、内筒120の軸線とは同軸であり、大径部113と内筒120との間には、一定の間隔の隙間130が形成される。
【0017】
内筒120の下流側端部は、大径部113の下流側端部から下流側に突き出している。
内筒120の上流側端部は、大径部113の上流側端部(大径部113と遷移部112との境界)より手前(下流側)に位置する。すなわち、内筒120は遷移部112の内部までは延びていない。
【0018】
内筒120における、外筒110と重なっている部分の、下流側端部近傍の側面には、周方向に均等な間隔で配置された4つのスリット121が設けられている。ただし、スリット121の数は4に限定されず、それ以上でもそれ以下であってもよい。
内筒120の端部には、連結フランジ122が設けられている。
【0019】
外筒110の大径部113の下流側端部に隣接し、大径部113のフランジ113Aの外径と略同じ外径を有する円環状の封止部材114が、内筒120の外周に装着されている。封止部材114の内径は、内筒120の外径に隙間なく嵌合可能な大きさである。
【0020】
封止部材114は、連結フランジ113Aと対向配置され、間にOリングを挟んで外周側からクランプ115で締め付けられている。
これにより、外筒110の下流側端部が塞がれるとともに、外筒110内に内筒120が保持される。
【0021】
図2は、回転流発生装置20の外観斜視図である。
図3(a)は回転流発生装置20を上流側から見た正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0022】
回転流発生装置20は、
図2及び
図3に示すように、円筒部21と、その一端に形成されたフランジ部24と、円筒部21の中心部に位置する軸部22と、円筒部21と軸部22との間に設けられた4枚の案内羽根23と、を備えている。なお、回転流発生装置20は、
図2及び
図3(b)中、右側を上流側(基板処理室2側)として配置される。
【0023】
円筒部21は、肉薄の短筒状であり、その外径は、外筒110の内側に隙間なく挿入可能な大きさに形成されている。
軸部22は、所定径の円柱状であって、後述する案内羽根23が一体に接合する円柱部22aの前後両端に、それぞれ円錐部(先端円錐部22F,後端円錐部22R)を備えている。
なお、本実施形態の回転流発生装置20は、このように円筒部21を有しているが、これに限定されず、羽根23の外周部に円筒部21を有さないものであってもよい。
【0024】
上流側に向かう先端円錐部22Fの頂角は120°、下流側に向かう後端円錐部22Rの頂角は90°に設定されている。
上流側に向かう先端円錐部22Fの頂角を120°とすることで、乱流等形成することなく、流体の流れを滑らかに案内羽根23に導入することができる。
また、下流側に向かう後端円錐部22Rの頂角を90°とすることで、案内羽根23によって形成された回転流を、乱流等形成することなく、滑らかに管の内壁に案内することができる。
【0025】
案内羽根23は、薄板状で、円筒部21の内壁と軸部22の外周面との間に、周方向に等間隔で(すなわち90°間隔で)4枚設けられている。そして、案内羽根23は、軸部22の外周面と円筒部21の内周面とを連結するように設けられ、換言すると、4枚の案内羽根23で、円筒部21の中央に軸部22を支持している。
【0026】
円筒部21の軸線CLと直交する面と円筒部21との交線L1に対する、案内羽根23と円筒部21との連結部L2の角度は
図2に示すように、角度θ(たとえば、θ=20°)で傾斜している。本実施形態では、角度θは、4枚全ての案内羽根23において同一に設定されている。
【0027】
円筒部21の一端側から外径側に向かって延びるフランジ部24は、該フランジ部24の外周面24a(外方を向く面)が、
図3に示すように湾曲している。
この外周面24aにOリング14が配置されて保持される。すなわち、フランジ部24は、Oリング14の位置決めを行うインナーリングの機能を有している。
フランジ部24の厚みtは、
図3に示すように、Oリング14の厚みRより小さい。なお、Oリング14の厚みとは、
図3に示すように、Oリング14を構成する部材の断面の直径である。
【0028】
粒子除去装置100は、例えば、半導体製造装置1内に配置される。
図4は、本実施形態の粒子除去装置100を適用した半導体製造装置1の一例を示した図である。
図5は、回転流発生装置20の外筒110への装着構造、及び粒子除去装置100と第1ガス排出管10Aとの連結構造を示す図である。
【0029】
図4に示すように。半導体製造装置1は、ガス供給管3と、基板処理室2と、本実施形態の粒子除去装置100と、真空ポンプ5とを備える。そして、基板処理室2と粒子除去装置100との間が第1ガス排出管10Aで連結され、粒子除去装置100と真空ポンプ5との間が第2ガス排出管10Bで連結されている。
【0030】
ガス供給管3は、基板処理室2のガス流入側に連結され、基板処理室2に基板処理ガスを供給する。
基板処理室2は、詳細な説明は省略するが、石英等によって形成され、下部にフランジによって開閉可能な開口部を備えている。基板処理室2には、開口部を介して処理される基板4が出し入れされる。
第1ガス排出管10Aは、基板処理室2のガス排出側に連結されている。
【0031】
粒子除去装置100の外筒110の小径部111は、第1ガス排出管10Aの下流側に連結されている。第1ガス排出管10A、外筒110、内筒120、及び第2ガス排出管10Bは軸線である。
外筒110の小径部111と第1ガス排出管10Aとの連結は以下のように行う。
Oリング14の外周側に、
図5に示すようにアウターリング25を配置する。アウターリング25は、断面T字形状の封止部材で、外環部25aと、その外環部25aの内側中央部より内径側に延びる内環部25bとを有する。内環部25bの厚みは、フランジ部24の厚みと同じ、Oリング14の厚みRより小さい厚みtである。
また、内環部25bの端面25cは、フランジ部24の外周面24aと同様に湾曲し、フランジ部24の外周面24aとアウターリング25の端面25cとで、Oリング14を挟み込む。
【0032】
ここで、回転流発生装置20の円筒部21は、小径部111の内側に挿入されるが、回転流発生装置20の上流側のフランジ部24は小径部111の内径よりも大きいので、内部に挿入されない。また、回転流発生装置20の上流側のフランジ部24は、第1ガス排出管10Aの内径よりも大きいので、内部に挿入されない。したがって、回転流発生装置20全体がガス排出管10内へ深く進入して取り外しが困難になることが防止される。
【0033】
さらに、回転流発生装置20は、フランジ部24を備え、フランジ部24がインナーリングの機能を有しているので、別部材としてインナーリングを用いることなく、Oリング14を保持することができる。
フランジ部24の厚みtはOリング14の厚みRより小さいので、クランプで締め付けたときにOリング14が圧縮変形することができ、ガス排出管10と基板処理室2とを、気密的に連結することができる。
【0034】
そして、
図5に示すように、外筒110の先端部の外周に設けられた連結フランジ111Aと、基板処理室2の排出口に設けられた固定フランジ2Fとは、間にフランジ部24と、Oリング14と、アウターリング25の内環部25bとを介して対向して配置され、外周側からクランプ15で締め付けられる。
【0035】
連結フランジ111Aと、固定フランジ2Fとは外周側に向かって厚みが薄くなるように、互いが対向する側と反対側の斜面にテーパが設けられている。
一方、クランプ15は、外周側から内周側に向かって厚みが薄くなるように内面側にテーパが設けられている。
したがって、クランプ15を内径側に向かって締め付けると連結フランジ111Aと、固定フランジ2Fとが互いに近づくように押圧される。
【0036】
このとき、Oリング14の厚みRは、アウターリング25の内環部25bの厚みt及びフランジ部24の厚みtよりも大きい。このため、クランプ15を内径側に向かって締め付けて連結フランジ111Aと、固定フランジ2Fとが互いに近づくように押圧されることによってOリング14が変形する。
この際、Oリング14はフランジ部24によって位置が固定されているので締め付けの際にずれることなく、Oリング14の側面は連結フランジ111Aと固定フランジ2Fとに押し付けられて、ガス排出管10と基板処理室2とが気密的に連結される。
【0037】
第2ガス排出管10Bは、粒子除去装置100の内筒120の下流側に連結されている。
内筒120と第2ガス排出管10Bとの間の連結は、詳細な説明を省略するが、内筒120の連結フランジ122と、第2ガス排出管10Bに設けられたフランジ部10Cとの間にOリング(図示せず)を挟んだ状態で、クランプ(図示せず)によって連結される。
【0038】
真空ポンプ5は、第2ガス排出管10Bの下流側に連結されている。
真空ポンプ5は、その駆動によって基板処理室2での反応によって生成された基板処理済みガス等を、ガス排出管10を介して排気する。
【0039】
上記構成の半導体製造装置1は、下記のような作用によって基板に成膜処理を行う。
すなわち、基板処理室2内に基板4を載置して、基板処理室2内の温度、圧力が調節し、ガス供給管3を介して基板処理室2に基板処理ガスを供給する。
これにより、基板処理室2に供給された基板処理ガスが、加熱により反応して成膜成分を生成し、基板4の表面に堆積させる。たとえば、基板処理ガスとしてSiH
2CL
2とNH
3との混合ガスを用い、反応生成した成膜成分であるSi
3N
4(窒化珪素)を基板4の表面に堆積させる。
【0040】
前述の反応ではHCLが発生し、発生したHCLは、二次反応によって、NH
3(アンモニウム)と結合してNH
4CL(塩化アンモニウム)となり、これが他の反応成分とともに反応副生成物等の粒子となる。
そして、基板処理室2で反応した後の基板処理済みガスは、真空ポンプ5の駆動によって第1ガス排出管10A、粒子除去装置100、第2ガス排出管10Bを介して吸引されて排出される。
【0041】
この際、粒子除去装置100は以下のように作用する。
図1に示すように、真空ポンプ5の吸引により、上流の基板処理室2及び第1ガス排出管10A側から、反応生成物の粒子Mが含まれるガスが、粒子除去装置100の回転流発生装置20に流入する。
【0042】
回転流発生装置20の軸部22の先端円錐部22Fは、ガスの流れを、周囲に向かって(外筒110の内壁面に衝突する方向に)放射状に偏向させ、さらに、案内羽根23がその形成形状に沿って周方向斜めに偏向させる。
【0043】
すなわち、案内羽根23は、基板処理済みガスの流れを、軸線CLと直交する面内においては軸線CLを中心とする円の接線方向に、且つ、軸線CLと平行する方向においては案内羽根23の角度に偏向させる。
軸部22の後端円錐部22Rは、偏向した流れを軸部22の下流側において円滑に合流させる。
【0044】
これにより、回転流発生装置20の下流側において基板処理済みガスは、外筒110の小径部111の内壁面に衝突して方向を規制され、回転流を形成する。
案内羽根23は周方向に90°間隔で4枚設けられているため、回転流は、同一ピッチで90°位相が異なる4条ネジのように4本形成され、これらが合流して回転流を発生し、この回転流に沿って粒子Mも流れる。
【0045】
回転流は、外筒110の遷移部112において遷移部112の外径に沿って徐々に外径を拡大し、それにしたがって粒子Mの回転軌道の径も大きくなる。
遷移部112から大径部113になると、ガスは、大径部113の側面に沿って流れ、粒子も大径部113の側面に沿って流れる。
【0046】
ここで、内筒120は、第2ガス排出管10Bに連結され、第2ガス排出管10Bは真空ポンプ5によって吸引されているため、粒子除去装置100を流れるガスは、内径部120の上流側端部付近において内筒120内に吸引される。
しかし、慣性の影響を受ける粒子M(粒径が約0.1μm以上)の場合、慣性力が作用する。この慣性力のため、粒子Mは、内筒120に入る軌道のガスの流れに乗らず、内筒120と外筒110との間の隙間130に入り込む。
【0047】
内筒120にはスリット121が設けられており、スリット121を介して隙間130から内筒120内にガスが流入する。
真空ポンプ5による吸引により、隙間130内においてわずかに上流から下流に向かう流れが生じるので、隙間130に流入した粒Mは、隙間130の下流側に向かう。そして、粒子Mは隙間130内に下流側から捕獲されていく。
一方、粒子Mは隙間130に捕獲されるので、内筒120は粒子Mを含まないガスが流れ、慣性の影響を受ける粒子Mが減少した、清浄なガスのみ下流に流れる。
【0048】
粒子Mは、このように粒子除去装置100における外筒110の大径部113と内筒120との間の隙間130に捕集され、下流には粒子Mを含まない清浄なガスが流れるので、メンテナンスの頻度、及びそのための休止時間を少なくでき、半導体製造装置1の稼働効率を向上させることが可能となる。
【0049】
なお、ガスの旋回流がほとんど発生しないような減圧下でも、慣性の影響を受ける粒子Mには回転流発生装置20により旋回流が発生され、捕集することができる。
【0050】
また、粒子除去装置100の内筒120と、外筒110の小径部111と、第1ガス排出管10Aと、第2ガス排出管10Bとは、略同じ内径を有する。したがって、ガスが流れる際に圧力損失が少ない。
【0051】
内筒120の上流側端部は、大径部113の端部(大径部113と遷移部112との境界)より手前(下流側)に位置する。すなわち、内筒120は遷移部112の内部までは延びていない。
これにより、回転流発生装置20により発生された回転流によって、遷移部112において粒子Mに十分な慣性力が与えられ、粒子Mは、内筒120に入ることなく、大径部113の内壁に押し付けられながら進むため、気流と分離される。
【0052】
(第2実施形態)
つぎに、本発明にかかる粒子除去装置100の第2実施形態について説明する。
図6は第2実施形態の粒子除去装置100の概略断面図である。
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、外筒110と内筒120との間の隙間130に、網部材として円筒状網部材140が配置されている点である。
円筒状網部材140の下流側端部は、封止部材114と接している。
また、スリット121の外周側にスリット被覆用網部材141が、配置されている。
【0053】
本実施形態によると、隙間130に円筒状網部材140が設けられているので、粒子が流れ込むと、円筒状網部材140に捕獲される。従って、粒子の捕獲効果がより高くなり、メンテナンスの際に捕獲物を取り出しやすい。また、スリット121にも網部材141が取り付けられているので、したがって、スリット121を通して粒子が内筒120に流入することがない。
【0054】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
実施形態では、粒子除去装置100が半導体製造装置1内で使用される形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、流体が流れる管内であれば、他の配管内での使用も可能である。例えば流体が気体の場合は、掃除機、空気清浄器等としての使用も可能である。また、流体は気体に限らず、液体であってもよい。
【0055】
本実施形態では、回転流発生装置20は4枚の案内羽根を備えている。しかし、案内羽根の数はこれに限らず、それ以下又はそれ以上であってもよい。たとえば、1〜16枚(好ましくは2〜8枚)の案内羽根を備える構成としてもよい。
【0056】
本実施形態の回転流発生装置20は、基板処理室2の直後に設けられたガス排出管に配置したが、これに限定されず、取り外しして捕集粒子を取り出しやすいその他の箇所に配置することができる。
【0057】
上述の実施形態では、外筒110が、大径部113と小径部111と遷移部112とを有する形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、回転流発生装置20が配置されている上流側と、封止部材114が取り付けられている下流側とが同径であって遷移部112を有さない形状、すなわち、外筒110の径が一定であってもよい。
【0058】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。