【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを含有する重合性化合物と、重合開始剤とを含有し、上記1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーは、2級チオール基を有するポリチオールモノマーを含有する表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
表示素子用封止剤には、耐湿熱試験による耐久性が必要とされるため、高いガラス転移温度を有することが要求される。そこで、本発明者らは、重合性化合物として、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを用いることにより、高いガラス転移温度を発現し、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生を抑制できる表示素子用封止剤を作製することを検討した。しかしながら、得られた表示素子用封止剤は、SUS等の金属と接触するとゲル化しやすいという問題があった。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーとして、2級チオール基を有するものを用いることにより、金属と接触した際のゲル化を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表示素子用封止剤は、更に、液晶表示素子に用いた場合の液晶汚染の発生や有機EL表示素子に用いた場合の有機発光材料層へのダメージを防止することができる。
なお、本明細書において上記「表示素子」とは、液晶表示素子と有機EL表示素子とを表す。
【0009】
本発明の表示素子用封止剤は、重合性化合物として、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有する。上記重合性化合物として、上記3官能以上のポリチオールモノマーと上記3官能以上のポリエンモノマーとを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、接着性、透明性、及び、アウトガスの発生を抑制する効果に優れるものとなる。
【0010】
上記3官能以上のポリチオールモノマーは、2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有する。
上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、金属と接触した際のゲル化を抑制することができるものとなる。
なお、上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーは、有する全てのチオール基が2級チオール基であってもよいし、一部のチオール基のみが2級チオール基であってもよい。
【0011】
上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。これらの2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記3官能以上のポリチオールモノマーは、硬化性や接着性の観点から、更に、1級チオール基のみを有するポリチオールモノマー(以下、「1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有することが好ましい。
【0013】
上記1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーとしては、例えば、トリス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、1,3,4,6−テトラメルカプトプロピオニルグリコールウリル等が挙げられる。これらの1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の表示素子用封止剤が上記1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーを含有する場合や、上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーが1級チオール基も有するものである場合、ポリチオールモノマー全体中における上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合は、モル当量比で、1級チオール基:2級チオール基=0.9:0.1〜0.3:0.7であることが好ましい。上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が金属と接触した際のゲル化を抑制する効果を維持しつつ、硬化性により優れるものとなる。上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合は、モル当量比で、1級チオール基:2級チオール基=0.8:0.2〜0.4:0.6であることがより好ましい。
【0015】
また、上記3官能以上のポリチオールモノマーは、1分子中に4個以上の1級又は2級チオール基を有することが好ましく、1分子中に4〜20個の1級又は2級チオール基を有することがより好ましく、1分子中に4〜8個の1級又は2級チオール基を有することが更に好ましい。
【0016】
また、上記重合性化合物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記3官能以上のポリチオールモノマーに加えて、1分子中に2個の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「2官能のポリチオールモノマー」ともいう)を含有してもよい。
以下、1分子中に2個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーを、単に「ポリチオールモノマー」ともいう。
【0017】
上記2官能のポリチオールモノマーを含有する場合、ポリチオールモノマー全体100重量部中における上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合の好ましい下限は60重量部、好ましい上限は98重量部である。上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果、接着性、及び、硬化性により優れるものとなる。上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合のより好ましい下限は80重量部、より好ましい上限は95重量部である。
【0018】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記ポリチオールモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記ポリチオールモノマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記ポリチオールモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0019】
本発明の表示素子用封止剤は、重合性化合物として、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー(以下、「3官能以上のポリエンモノマー」ともいう)を含有する。上述したように、上記重合性化合物として、上記3官能以上のポリチオールモノマーと上記3官能以上のポリエンモノマーとを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、接着性、透明性、及び、アウトガスの発生を抑制する効果に優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「炭素−炭素二重結合」は、エチレン性不飽和結合を意味する。
【0020】
上記3官能以上のポリエンモノマーとしては、例えば、(メタ)アリル化合物、(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。これらのポリエンモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アリル」とは、アリル又はメタリルを意味し、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0021】
上記(メタ)アリル化合物としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a−メチルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル等が挙げられる。なかでも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリルが好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0023】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるものが挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートの原料となるエポキシ化合物としては、例えば、スルフェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0024】
また、上記エステル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記3官能以上のポリエンモノマーは、高温高湿環境下における信頼性の観点から、グリコールウリル骨格を有するポリエンモノマーを含有することが好ましい。
上記グリコールウリル骨格を有するポリエンモノマーとしては、例えば、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリル等が挙げられる。
【0026】
また、上記3官能以上のポリエンモノマーは、1分子中に4個以上の炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、1分子中に4〜20個の炭素−炭素二重結合を有することがより好ましく、1分子中に4〜8個の炭素−炭素二重結合を有することが更に好ましい。
【0027】
上記重合性化合物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記3官能以上のポリエンモノマーに加えて、1分子中に2個の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー(以下、「2官能のポリエンモノマー」ともいう)を含有してもよい。
以下、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを、単に「ポリエンモノマー」ともいう。
【0028】
上記2官能のポリエンモノマーを含有する場合、ポリエンモノマー全体100重量部中における上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合の好ましい下限は60重量部、好ましい上限は95重量部である。上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果、接着性、及び、硬化性により優れるものとなる。上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合のより好ましい下限は80重量部、より好ましい上限は90重量部である。
【0029】
上記重合性化合物100重量部中における上記ポリエンモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記ポリエンモノマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記ポリエンモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0030】
上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの配合割合としては、上記ポリチオールモノマーの1級又は2級チオール基と上記ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合との割合が、モル比で、チオール基:炭素−炭素二重結合=3:1〜1:3となる範囲で配合することが好ましく、チオール基:炭素−炭素二重結合=2:1〜1:2となる範囲で配合することがより好ましい。
【0031】
本発明の表示素子用封止剤は、上記重合性化合物として、更に、上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの反応により形成されるチオエーテルオリゴマー(以下、単に「チオエーテルオリゴマー」ともいう)を含有することが好ましい。
本発明の表示素子用封止剤は、上記チオエーテルオリゴマーを含有することにより、接着性が向上し、かつ、表示素子用封止剤の粘度が適度に高くなって塗工時にムラが生じにくいものとなる。
【0032】
上記チオエーテルオリゴマーは、上記ポリチオールモノマーと、上記ポリチオールモノマーに対して3:1〜1:3となる範囲で上記ポリエンモノマーとを、重合開始剤の存在下で光照射や加熱により付加重合反応させることにより重合体として反応混合物中に得られる。上記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤が好ましく用いられる。
なお、上記チオエーテルオリゴマーは、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいし、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいなくてもよい。即ち、上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの付加重合反応を充分に進めて得られる、チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含まないチオエーテルオリゴマーであってもよいし、該付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られる、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含むチオエーテルオリゴマーであってもよい。
【0033】
上記熱重合開始剤としては特に限定されないが、熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤としては、後述する本発明の表示素子用封止剤に含有される重合開始剤として挙げる光重合開始剤と同様のものを用いることができる。
【0034】
上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合のモル数に対するポリチオールモノマーのチオール基のモル数(チオール基のモル数/炭素−炭素二重結合のモル数)が0.15以下である場合は、通常、得られる反応混合物中にポリエンモノマーが未反応成分として残る。
【0035】
なお、本発明の表示素子用封止剤は、上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られるポリチオールモノマーとポリエンモノマーとチオエーテルオリゴマーの混合物に重合開始剤等を配合したものであってもよい。
また、上記チオエーテルオリゴマーは、予め作製したものをポリチオールモノマー及びポリエンモノマーと混合してもよい。
上記チオエーテルオリゴマーを予め作製する場合、上記チオエーテルオリゴマーの原料となるポリチオールモノマー及びポリエンモノマーは、上述した、本発明の表示素子用封止剤に含有される上記3官能以上のポリチオールモノマー及び上記3官能以上のポリエンモノマーとそれぞれ同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0036】
上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は4万である。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は1万、更に好ましい下限は2000、更に好ましい上限は8000である。
なお、本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0037】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記チオエーテルオリゴマーの含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記チオエーテルオリゴマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記チオエーテルオリゴマーの含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0038】
本発明の表示素子用封止剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、光重合開始剤や上述した熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好適に用いられる。
【0039】
上記重合開始剤は、分子量の好ましい下限が250、好ましい上限が1500である。分子量が250〜1500の重合開始剤を用いることにより、本発明の表示素子用封止剤は、優れた硬化性を有し、かつ、アウトガスの発生を抑制する効果により優れるものとなる。なかでも、アウトガスの発生を低減する等の観点から、上記重合開始剤の分子量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は1050、更に好ましい下限は348、更に好ましい上限は790である。
【0040】
上記光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、オリゴマー化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、光硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、及び、オリゴマー化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、及び/又は、オリゴマー化合物であることがより好ましい。
ここで、上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物とは、アシルホスフィンオキサイドの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−アミノアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンジルケタール骨格を有する化合物とは、α−ジヒドロキシアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−モノヒドロキシアセトフェノンの水酸基以外の一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンゾイン骨格を有する化合物とは、ベンゾインの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記オキシムエステル骨格を有する化合物とは、N−アセチルジメチルオキシムの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記チタノセン骨格を有する化合物とは、チタノセンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記有機過酸化物とは、ペルオキシ基を有する化合物を意味する。上記アゾ化合物とは、アゾ基を有する化合物を意味する。
【0041】
上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、「LUCILIN TPO」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、「IRGACURE 819」)等が挙げられる。
【0042】
上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(BASF社製、「IRGACURE 369」)、1,2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(BASF社製、「IRGACURE 379」)等が挙げられる。
【0043】
上記ベンジルケタール骨格を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 651」)等が挙げられる。
【0044】
上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル)フェニル)−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 127」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 1173」)、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 2959」)等が挙げられる。
【0045】
上記オキシムエステル骨格を有する化合物としては、例えば、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)(BASF Japan社製、「IRGACURE OXE01」)、O−アセチル−1−(6−(2−メチルベンゾイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)エタノンオキシム(BASF社製、「IRGACURE OXE02」)等が挙げられる。
【0046】
上記チタノセン骨格を有する化合物としては、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(BASF社製、「IRGACURE 784」)等が挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤として挙げたオリゴマー化合物は、アウトガスの発生を低減する観点から、重合度が2〜10のものが好ましく、更に、アウトガスが発生しにくいことから、水酸基やアミノ基等の水酸結合性官能基を有することが好ましい。
具体的には例えば、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパン)(Lamberti社製、「ESACURE KIP 150」)、ポリエチレングリコール200−ジ(β−4(4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、(2−カルボキシメトキシチオキサントン)−(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol TX」)、(カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン)−(ポリエチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol BP」)等が挙げられる。
【0048】
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、作業性を低下させることなく均一な硬化物を得ることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部である。
【0049】
本発明の表示素子用封止剤は、酸化防止等を目的として安定剤を含有することが好ましい。
上記安定剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。なかでも、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)が好ましい。これらの安定剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記安定剤の含有量は、上記重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記安定剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が優れた硬化性やアウトガスの発生を抑制する効果を維持したまま、酸化防止等の効果を充分に発揮することができる。上記安定剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0051】
本発明の表示素子用封止剤は、接着性付与剤を含有してもよい。
上記接着性付与剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、チタンカップリング剤や、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらの接着性付与剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
本発明の表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、充填剤、可塑剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0053】
本発明の表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、ポリチオールモノマー、ポリエンモノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて添加される接着性付与剤等を、撹拌機を用いて均一に混合する方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の表示素子用封止剤は、コーンローター式粘度計を用いて、20℃、20rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が0.4Pa・s、好ましい上限が40Pa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が塗布性により優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は1.0Pa・s、より好ましい上限は6.0Pa・sである。
【0055】
本発明の表示素子用封止剤は、硬化物の波長380〜780nmの領域での可視光の平均透過率が80%以上であることが好ましい。上記可視光の平均透過率が80%以上であることにより、透明性が求められる用途に好適に用いることができる。上記可視光の平均透過率は、95%以上であることがより好ましい。
なお、上記可視光の平均透過率を測定する硬化物は、本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cm
2の紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0056】
本発明の表示素子用封止剤は、厚さ100μmの硬化物を、昇温速度10℃/minで130℃まで加熱したときの重量減少率が0.15%以下であることが好ましい。上記重量減少率は、アウトガス発生量とみなすことができるため、0.15%以下であることにより、表示素子への悪影響を抑制できるものとなる。上記重量減少率は、0.1%以下であることがより好ましい。
なお、上記重量減少率を測定する硬化物は、厚さ100μmとなるように塗布した本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cm
2の紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0057】
本発明の表示素子用封止剤は、上記重合開始剤として光重合開始剤を用いることにより、光照射により容易に硬化させることができる。
本発明の表示素子用封止剤を光照射により硬化させる方法としては、例えば、300〜400nmの波長及び300〜3000mJ/cm
2の積算光量の光を照射する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明の表示素子用封止剤に光を照射するための光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
本発明の表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0060】
本発明の表示素子用封止剤は、表示素子の全面、前面、若しくは、後面を封止するための封止剤、又は、表示素子に設けられた開口部を封止するための封口剤として用いることができ、なかでも、表示素子の全面を封止するために好適に用いられる。
なお、本明細書において上記「全面」とは、表示素子の有する面の必ずしも100%を意味するものではなく、表示素子に求められる必要な封止面全体を意味する。また、上記「前面」とは、光線を取り出す側、即ち、視認側の面を意味する。
【0061】
本発明の表示素子用封止剤は、例えば、有機EL表示素子用封止剤、液晶表示素子用封口剤、エレクトロクロミック基板用封止剤、電子ペーパー用封止剤等に用いることができる。