特許第6595848号(P6595848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595848
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20191010BHJP
   G02F 1/1341 20060101ALI20191010BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20191010BHJP
   C08G 75/04 20160101ALI20191010BHJP
【FI】
   G09F9/30 309
   G02F1/1341
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   C08G75/04
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-169162(P2015-169162)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-44969(P2017-44969A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】梁 信烈
(72)【発明者】
【氏名】小林 由季
【審査官】 橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−127392(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070382(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/192880(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/089100(WO,A1)
【文献】 特開2011−213821(JP,A)
【文献】 特開2012−041499(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/029846(WO,A1)
【文献】 特開2009−086291(JP,A)
【文献】 特開2013−237845(JP,A)
【文献】 特開2008−184514(JP,A)
【文献】 特開2003−226718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30
C08G 75/04
G02F 1/1341
H01L 51/50
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に3個以上のチオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを含有する重合性化合物と、重合開始剤とを含有し、
前記1分子中に3個以上のチオール基を有するポリチオールモノマーは、2級チオール基を有するポリチオールモノマーと、1級チオール基のみを有するポリチオールモノマーを含有することを特徴とする表示素子用封止剤。
【請求項2】
前記1分子中に3個以上のチオール基を有するポリチオールモノマーは、1分子中に4個以上のチオール基を有することを特徴とする請求項1記載の表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーは、グリコールウリル骨格を有するポリエンモノマーを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の表示素子用封止剤。
【請求項4】
前記1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーは、1分子中に4個以上の炭素−炭素二重結合を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の表示素子用封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生及び金属と接触した際のゲル化を抑制できる表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示素子として、液晶表示素子や有機EL表示素子等が広く利用されている。これらの表示素子では、通常、液晶や発光層の封止等に光硬化性樹脂組成物が用いられる。
【0003】
液晶表示素子は、通常、2枚の電極付き透明基板を所定の間隔をおいて対向させ、その周囲を封止剤で封着してセルを形成し、その一部に設けられた液晶注入口からセル内に液晶を注入し、この液晶注入口を、液晶表示素子用封口剤を用いて封止することにより製造される。従来、液晶表示素子用封口剤としては、特許文献1に記載されているような光硬化型のアクリル系樹脂組成物等が広く用いられてきた。光硬化型のアクリル系樹脂組成物は、作業性や生産性には優れているものの、液晶との相互作用が強いため液晶を汚染して色むらを生じたり、表示素子の製造過程で残存するアクリル樹脂により多量のアウトガスを発生させたり、接着性や硬化物の透明性に劣るものであったりするという問題があった。
【0004】
また、有機EL表示素子では、有機発光材料層や電極が外気に曝されると、その性能が急激に劣化してしまうため、有機EL表示素子の安定性や耐久性を高めるために、有機発光材料層と電極とを、無機材料膜を介して樹脂膜で被覆して封止する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、無機材料膜の上にアクリル系の樹脂組成物からなる樹脂膜を形成する方法が開示されている。また、特許文献3には光カチオン重合による方法も開示されている。しかしながら、このような場合もアウトガス発生等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−160972号公報
【特許文献2】特開2001−307873号公報
【特許文献3】特開2005−336314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生及び金属と接触した際のゲル化を抑制できる表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを含有する重合性化合物と、重合開始剤とを含有し、上記1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーは、2級チオール基を有するポリチオールモノマーを含有する表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
表示素子用封止剤には、耐湿熱試験による耐久性が必要とされるため、高いガラス転移温度を有することが要求される。そこで、本発明者らは、重合性化合物として、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを用いることにより、高いガラス転移温度を発現し、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生を抑制できる表示素子用封止剤を作製することを検討した。しかしながら、得られた表示素子用封止剤は、SUS等の金属と接触するとゲル化しやすいという問題があった。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーとして、2級チオール基を有するものを用いることにより、金属と接触した際のゲル化を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表示素子用封止剤は、更に、液晶表示素子に用いた場合の液晶汚染の発生や有機EL表示素子に用いた場合の有機発光材料層へのダメージを防止することができる。
なお、本明細書において上記「表示素子」とは、液晶表示素子と有機EL表示素子とを表す。
【0009】
本発明の表示素子用封止剤は、重合性化合物として、1分子中に3個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有する。上記重合性化合物として、上記3官能以上のポリチオールモノマーと上記3官能以上のポリエンモノマーとを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、接着性、透明性、及び、アウトガスの発生を抑制する効果に優れるものとなる。
【0010】
上記3官能以上のポリチオールモノマーは、2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有する。
上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、金属と接触した際のゲル化を抑制することができるものとなる。
なお、上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーは、有する全てのチオール基が2級チオール基であってもよいし、一部のチオール基のみが2級チオール基であってもよい。
【0011】
上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。これらの2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記3官能以上のポリチオールモノマーは、硬化性や接着性の観点から、更に、1級チオール基のみを有するポリチオールモノマー(以下、「1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマー」ともいう)を含有することが好ましい。
【0013】
上記1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーとしては、例えば、トリス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン−1,8−ジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、1,3,4,6−テトラメルカプトプロピオニルグリコールウリル等が挙げられる。これらの1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の表示素子用封止剤が上記1級チオール基のみを有する3官能以上のポリチオールモノマーを含有する場合や、上記2級チオール基を有する3官能以上のポリチオールモノマーが1級チオール基も有するものである場合、ポリチオールモノマー全体中における上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合は、モル当量比で、1級チオール基:2級チオール基=0.9:0.1〜0.3:0.7であることが好ましい。上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が金属と接触した際のゲル化を抑制する効果を維持しつつ、硬化性により優れるものとなる。上記1級チオール基と上記2級チオール基との割合は、モル当量比で、1級チオール基:2級チオール基=0.8:0.2〜0.4:0.6であることがより好ましい。
【0015】
また、上記3官能以上のポリチオールモノマーは、1分子中に4個以上の1級又は2級チオール基を有することが好ましく、1分子中に4〜20個の1級又は2級チオール基を有することがより好ましく、1分子中に4〜8個の1級又は2級チオール基を有することが更に好ましい。
【0016】
また、上記重合性化合物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記3官能以上のポリチオールモノマーに加えて、1分子中に2個の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマー(以下、「2官能のポリチオールモノマー」ともいう)を含有してもよい。
以下、1分子中に2個以上の1級又は2級チオール基を有するポリチオールモノマーを、単に「ポリチオールモノマー」ともいう。
【0017】
上記2官能のポリチオールモノマーを含有する場合、ポリチオールモノマー全体100重量部中における上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合の好ましい下限は60重量部、好ましい上限は98重量部である。上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果、接着性、及び、硬化性により優れるものとなる。上記3官能以上のポリチオールモノマーの含有割合のより好ましい下限は80重量部、より好ましい上限は95重量部である。
【0018】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記ポリチオールモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記ポリチオールモノマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記ポリチオールモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0019】
本発明の表示素子用封止剤は、重合性化合物として、1分子中に3個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー(以下、「3官能以上のポリエンモノマー」ともいう)を含有する。上述したように、上記重合性化合物として、上記3官能以上のポリチオールモノマーと上記3官能以上のポリエンモノマーとを含有することにより、本発明の表示素子用封止剤は、接着性、透明性、及び、アウトガスの発生を抑制する効果に優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「炭素−炭素二重結合」は、エチレン性不飽和結合を意味する。
【0020】
上記3官能以上のポリエンモノマーとしては、例えば、(メタ)アリル化合物、(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。これらのポリエンモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アリル」とは、アリル又はメタリルを意味し、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0021】
上記(メタ)アリル化合物としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a−メチルグリコールウリル、1,3,4,6−テトラアリル−3a,6a−ジメチルグリコールウリル等が挙げられる。なかでも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリルが好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0023】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるものが挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートの原料となるエポキシ化合物としては、例えば、スルフェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0024】
また、上記エステル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記3官能以上のポリエンモノマーは、高温高湿環境下における信頼性の観点から、グリコールウリル骨格を有するポリエンモノマーを含有することが好ましい。
上記グリコールウリル骨格を有するポリエンモノマーとしては、例えば、1,3,4,6−テトラアリルグリコールウリル等が挙げられる。
【0026】
また、上記3官能以上のポリエンモノマーは、1分子中に4個以上の炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、1分子中に4〜20個の炭素−炭素二重結合を有することがより好ましく、1分子中に4〜8個の炭素−炭素二重結合を有することが更に好ましい。
【0027】
上記重合性化合物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記3官能以上のポリエンモノマーに加えて、1分子中に2個の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマー(以下、「2官能のポリエンモノマー」ともいう)を含有してもよい。
以下、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有するポリエンモノマーを、単に「ポリエンモノマー」ともいう。
【0028】
上記2官能のポリエンモノマーを含有する場合、ポリエンモノマー全体100重量部中における上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合の好ましい下限は60重量部、好ましい上限は95重量部である。上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果、接着性、及び、硬化性により優れるものとなる。上記3官能以上のポリエンモノマーの含有割合のより好ましい下限は80重量部、より好ましい上限は90重量部である。
【0029】
上記重合性化合物100重量部中における上記ポリエンモノマーの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記ポリエンモノマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記ポリエンモノマーの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0030】
上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの配合割合としては、上記ポリチオールモノマーの1級又は2級チオール基と上記ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合との割合が、モル比で、チオール基:炭素−炭素二重結合=3:1〜1:3となる範囲で配合することが好ましく、チオール基:炭素−炭素二重結合=2:1〜1:2となる範囲で配合することがより好ましい。
【0031】
本発明の表示素子用封止剤は、上記重合性化合物として、更に、上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの反応により形成されるチオエーテルオリゴマー(以下、単に「チオエーテルオリゴマー」ともいう)を含有することが好ましい。
本発明の表示素子用封止剤は、上記チオエーテルオリゴマーを含有することにより、接着性が向上し、かつ、表示素子用封止剤の粘度が適度に高くなって塗工時にムラが生じにくいものとなる。
【0032】
上記チオエーテルオリゴマーは、上記ポリチオールモノマーと、上記ポリチオールモノマーに対して3:1〜1:3となる範囲で上記ポリエンモノマーとを、重合開始剤の存在下で光照射や加熱により付加重合反応させることにより重合体として反応混合物中に得られる。上記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤が好ましく用いられる。
なお、上記チオエーテルオリゴマーは、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいし、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含んでいなくてもよい。即ち、上記ポリチオールモノマーと上記ポリエンモノマーとの付加重合反応を充分に進めて得られる、チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含まないチオエーテルオリゴマーであってもよいし、該付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られる、未反応チオール基や未反応炭素−炭素二重結合を含むチオエーテルオリゴマーであってもよい。
【0033】
上記熱重合開始剤としては特に限定されないが、熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤としては、後述する本発明の表示素子用封止剤に含有される重合開始剤として挙げる光重合開始剤と同様のものを用いることができる。
【0034】
上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、ポリエンモノマーの炭素−炭素二重結合のモル数に対するポリチオールモノマーのチオール基のモル数(チオール基のモル数/炭素−炭素二重結合のモル数)が0.15以下である場合は、通常、得られる反応混合物中にポリエンモノマーが未反応成分として残る。
【0035】
なお、本発明の表示素子用封止剤は、上述したポリチオールモノマーとポリエンモノマーとの付加重合反応において、付加重合反応の途中で反応を停止させることにより得られるポリチオールモノマーとポリエンモノマーとチオエーテルオリゴマーの混合物に重合開始剤等を配合したものであってもよい。
また、上記チオエーテルオリゴマーは、予め作製したものをポリチオールモノマー及びポリエンモノマーと混合してもよい。
上記チオエーテルオリゴマーを予め作製する場合、上記チオエーテルオリゴマーの原料となるポリチオールモノマー及びポリエンモノマーは、上述した、本発明の表示素子用封止剤に含有される上記3官能以上のポリチオールモノマー及び上記3官能以上のポリエンモノマーとそれぞれ同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0036】
上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は4万である。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記チオエーテルオリゴマーの重量平均分子量のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は1万、更に好ましい下限は2000、更に好ましい上限は8000である。
なお、本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0037】
上記重合性化合物全体100重量部中における上記チオエーテルオリゴマーの含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記チオエーテルオリゴマーの含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤がアウトガスの発生を抑制する効果及び塗布性により優れるものとなる。上記チオエーテルオリゴマーの含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0038】
本発明の表示素子用封止剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、光重合開始剤や上述した熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好適に用いられる。
【0039】
上記重合開始剤は、分子量の好ましい下限が250、好ましい上限が1500である。分子量が250〜1500の重合開始剤を用いることにより、本発明の表示素子用封止剤は、優れた硬化性を有し、かつ、アウトガスの発生を抑制する効果により優れるものとなる。なかでも、アウトガスの発生を低減する等の観点から、上記重合開始剤の分子量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は1050、更に好ましい下限は348、更に好ましい上限は790である。
【0040】
上記光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、オリゴマー化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。なかでも、光硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンジルケタール骨格を有する化合物、α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物、ベンゾイン骨格を有する化合物、オキシムエステル骨格を有する化合物、チタノセン骨格を有する化合物、及び、オリゴマー化合物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物、及び/又は、オリゴマー化合物であることがより好ましい。
ここで、上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物とは、アシルホスフィンオキサイドの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−アミノアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンジルケタール骨格を有する化合物とは、α−ジヒドロキシアセトフェノンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物とは、α−モノヒドロキシアセトフェノンの水酸基以外の一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記ベンゾイン骨格を有する化合物とは、ベンゾインの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記オキシムエステル骨格を有する化合物とは、N−アセチルジメチルオキシムの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記チタノセン骨格を有する化合物とは、チタノセンの一部が別の基に置換した化合物を意味する。上記有機過酸化物とは、ペルオキシ基を有する化合物を意味する。上記アゾ化合物とは、アゾ基を有する化合物を意味する。
【0041】
上記アシルホスフィンオキサイド骨格を有する化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、「LUCILIN TPO」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、「IRGACURE 819」)等が挙げられる。
【0042】
上記α−アミノアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(BASF社製、「IRGACURE 369」)、1,2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(BASF社製、「IRGACURE 379」)等が挙げられる。
【0043】
上記ベンジルケタール骨格を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 651」)等が挙げられる。
【0044】
上記α−ヒドロキシアセトフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル)フェニル)−2−メチル−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 127」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 1173」)、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 2959」)等が挙げられる。
【0045】
上記オキシムエステル骨格を有する化合物としては、例えば、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)(BASF Japan社製、「IRGACURE OXE01」)、O−アセチル−1−(6−(2−メチルベンゾイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)エタノンオキシム(BASF社製、「IRGACURE OXE02」)等が挙げられる。
【0046】
上記チタノセン骨格を有する化合物としては、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(BASF社製、「IRGACURE 784」)等が挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤として挙げたオリゴマー化合物は、アウトガスの発生を低減する観点から、重合度が2〜10のものが好ましく、更に、アウトガスが発生しにくいことから、水酸基やアミノ基等の水酸結合性官能基を有することが好ましい。
具体的には例えば、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパン)(Lamberti社製、「ESACURE KIP 150」)、ポリエチレングリコール200−ジ(β−4(4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、(2−カルボキシメトキシチオキサントン)−(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol TX」)、(カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン)−(ポリエチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol BP」)等が挙げられる。
【0048】
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、作業性を低下させることなく均一な硬化物を得ることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部である。
【0049】
本発明の表示素子用封止剤は、酸化防止等を目的として安定剤を含有することが好ましい。
上記安定剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。なかでも、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)が好ましい。これらの安定剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記安定剤の含有量は、上記重合性化合物全体100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記安定剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が優れた硬化性やアウトガスの発生を抑制する効果を維持したまま、酸化防止等の効果を充分に発揮することができる。上記安定剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0051】
本発明の表示素子用封止剤は、接着性付与剤を含有してもよい。
上記接着性付与剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、チタンカップリング剤や、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらの接着性付与剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
本発明の表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、充填剤、可塑剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0053】
本発明の表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、ポリチオールモノマー、ポリエンモノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて添加される接着性付与剤等を、撹拌機を用いて均一に混合する方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の表示素子用封止剤は、コーンローター式粘度計を用いて、20℃、20rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が0.4Pa・s、好ましい上限が40Pa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる表示素子用封止剤が塗布性により優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は1.0Pa・s、より好ましい上限は6.0Pa・sである。
【0055】
本発明の表示素子用封止剤は、硬化物の波長380〜780nmの領域での可視光の平均透過率が80%以上であることが好ましい。上記可視光の平均透過率が80%以上であることにより、透明性が求められる用途に好適に用いることができる。上記可視光の平均透過率は、95%以上であることがより好ましい。
なお、上記可視光の平均透過率を測定する硬化物は、本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cmの紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0056】
本発明の表示素子用封止剤は、厚さ100μmの硬化物を、昇温速度10℃/minで130℃まで加熱したときの重量減少率が0.15%以下であることが好ましい。上記重量減少率は、アウトガス発生量とみなすことができるため、0.15%以下であることにより、表示素子への悪影響を抑制できるものとなる。上記重量減少率は、0.1%以下であることがより好ましい。
なお、上記重量減少率を測定する硬化物は、厚さ100μmとなるように塗布した本発明の表示素子用封止剤に対して、2000mJ/cmの紫外線を照射する方法により得ることができる。
【0057】
本発明の表示素子用封止剤は、上記重合開始剤として光重合開始剤を用いることにより、光照射により容易に硬化させることができる。
本発明の表示素子用封止剤を光照射により硬化させる方法としては、例えば、300〜400nmの波長及び300〜3000mJ/cmの積算光量の光を照射する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明の表示素子用封止剤に光を照射するための光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
本発明の表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0060】
本発明の表示素子用封止剤は、表示素子の全面、前面、若しくは、後面を封止するための封止剤、又は、表示素子に設けられた開口部を封止するための封口剤として用いることができ、なかでも、表示素子の全面を封止するために好適に用いられる。
なお、本明細書において上記「全面」とは、表示素子の有する面の必ずしも100%を意味するものではなく、表示素子に求められる必要な封止面全体を意味する。また、上記「前面」とは、光線を取り出す側、即ち、視認側の面を意味する。
【0061】
本発明の表示素子用封止剤は、例えば、有機EL表示素子用封止剤、液晶表示素子用封口剤、エレクトロクロミック基板用封止剤、電子ペーパー用封止剤等に用いることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生及び金属と接触した際のゲル化を抑制できる表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0064】
(チオエーテルオリゴマーの作製)
ポリチオールモノマーとしてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製、「PEMP」)50重量部と、ポリエンモノマーとしてトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、「TAIC」)50重量部と、熱重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部とを、撹拌機(新東科学社製、「スリーワンモーター HEIDON BLH300」)を用いて80℃で180分間混合し、反応混合物を得た。得られた反応混合物を貧溶媒に流し、沈殿したオリゴマーを集め、溶媒を真空下で除去することにより、重量平均分子量2000のチオエーテルオリゴマーを得た。
【0065】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に記載された配合比に従い、各材料を、撹拌機(新東科学社製、「スリーワンモーター HEIDON BLH300」)を用いて混合した後、80℃で10分加熱することにより、実施例1〜5及び比較例1〜3の表示素子用封止剤を調製した。
【0066】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0067】
(1)低アウトガス性
実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤を、スリットコーターを用いて100mm/秒の速度で塗布後の厚さが50μmとなるようにして塗布し、波長365nmのLEDランプを用いて2000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で30分間加熱してフィルムを形成した。
得られたフィルムを熱分析装置(Seiko Instruments社製、「TG/DTA6200」)を用いて、昇温速度10℃/minで130℃まで加熱したときの重量減少率を測定し、これをアウトガス発生量とした。アウトガス発生量が0.05%未満であったものを「○」、アウトガス発生量が0.05%以上0.20%未満であったものを「△」、アウトガス発生量が0.20%以上であったものを「×」として低アウトガス性を評価した。
【0068】
(2)硬化性
実施例及び比較例で得られた各表示素子用透明封止剤をガラス基板上に塗布し、波長365nmのLEDランプを用いて、2000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で30分間加熱してフィルムを形成した。その後、FT−IRを用いた分析方法により、炭素−炭素二重結合に由来するピークの減少率から反応率を測定した。反応率が90%を超えた場合を「○」、80%を超え90%以下であった場合を「△」、80%以下であった場合を「×」として硬化性を評価した。
【0069】
(3)接着性
実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤を、マイクロピペットを用いてガラス基板上に0.05g塗布した。この基板を、スペーサーを配置した別のガラス基板と50μmの厚みとなるように貼り合わせ、波長365nmのLEDランプを用いて2000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で30分間加熱して接着力試験用試料を作製した。得られた接着力試験用試料について、EZ GRAPH(島津製作所社製)を用いて、剥離速度5mm/minの条件で剥離試験を行い、接着力を測定した。接着力が1.0N/cm以上であったものを「○」、接着力が0.8N/cm以上1.0N/cm未満であったものを「△」、接着力が0.8N/cm未満であったものを「×」として接着性を評価した。
【0070】
(4)硬化物の透明性(光線透過率)
実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤をPET樹脂フィルムに挟み、波長365nmのLEDランプを用いて2000mJ/cmの紫外線を照射して、厚さ100μmの透過率測定用サンプルを作製した。得られた透過率測定用サンプルについて、分光光度計(日立製作所社製、「U−3000」、条件300〜800nm)を用いて、波長380〜780nmにおける光線透過率を測定した。
【0071】
(5)金属と接触した際のゲル化防止性
実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤を、マイクロピペットを用いてステンレス基板上に0.05g塗布した。封止剤が50μmの厚みとなるように、この基板をスペーサーを配置した別のステンレス基板と貼り合わせ、25℃の環境下で24時間静置させた。上部の基板を剥がし、ウエスで基板上の表示素子用封止剤を拭取った後、基板上の拭き残り状態を観察した。ゲルが全く見られなかったものを「○」、わずかにゲルが見られたものを「△」、全体がゲル化していたものを「×」として金属と接触した際のゲル化防止性を評価した。
【0072】
(6)表示性能
(6−1)液晶表示素子の表示性能
(液晶表示素子の作製)
厚さ1000ÅのITO電極を表面に成膜した後、更にスピンコートにて厚さ800Åの配向膜を表面に塗布したガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)を2枚用意し、一方の基板に熱硬化性エポキシ樹脂(周辺シール剤)を用いて、液晶注入口部を設けるようにしたパターンの印刷をスクリーン印刷にて行った。次に、パターンの印刷を行った基板を80℃で3分間保持することにより予備乾燥と基板への周辺シール剤の融着とを行った後、室温に戻した。次いで、もう一方の基板に5μmのスペーサーを散布した後、それぞれの基板を貼り合わせ、130℃に加熱した熱プレスで2時間の圧着を行って周辺シール剤を硬化させ、空の液晶表示素子を得た。得られた空の液晶表示素子を真空吸引した後、注入口より液晶(メルク社製、「ZLI−4792」)を注入し、注入口を実施例及び比較例で得られた各表示素子用封止剤を用いて封止し、波長365nmのLEDランプを用いて、2000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で30分間加熱した。その後、120℃で1時間液晶のアニールを行い、液晶表示素子を作製した。
【0073】
(液晶表示素子の配向乱れ)
得られた液晶表示素子を、50℃、90%RHの条件下に240時間暴露した後、AC3.5Vの電圧にて中間調の表示状態で駆動させ、注入口近傍の液晶の配向乱れを偏光顕微鏡で観察した。配向乱れが確認されなかった場合を「○」、1mm未満の配向乱れが確認された場合を「△」、1mm以上のはっきりとした配向乱れ(濃い色むら)があった場合を「×」として液晶表示素子の表示性能を評価した。
【0074】
(6−2)有機EL表示素子の表示性能
(有機発光材料層を含む積層体が配置された基板の作製)
ガラス基板(長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mm)にITO電極を1000Åの厚さで成膜したものを基板とした。上記基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV−オゾンクリーナ(日本レーザー電子社製、「NL−UV253」)にて直前処理を行った。
次に、この基板を真空蒸着装置の基板フォルダに固定し、素焼きの坩堝にN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を200mg、他の異なる素焼き坩堝にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10−4Paまで減圧した。その後、α−NPDの入った坩堝を加熱し、α−NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いで、Alqの入った坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの有機発光材料層を成膜した。その後、正孔輸送層及び有機発光材料層が形成された基板を別の真空蒸着装置に移し、この真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートにフッ化リチウム200mgを、別のタングステン製ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空蒸着装置の蒸着器内を2×10−4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、10mm×10mmの有機発光材料層を含む積層体が配置された基板を取り出した。
【0075】
(無機材料膜Aによる被覆)
得られた有機発光材料層を含む積層体が配置された基板の、該積層体の全体を覆うように、13mm×13mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Aを形成した。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成されたシリコンナイトライドの無機材料膜Aの厚さは、約0.2μmであった。
【0076】
(樹脂保護膜の形成)
上記無機材料膜A上に、実施例及び比較例で得られた各表示素子用透明封止剤を、スリットコーターを用いて、100mm/秒の速度で塗布後の厚さが50μmとなるようにして塗布した。次いで、波長365nmのLEDランプを用いて、2000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で30分間加熱して樹脂保護膜を形成した。
【0077】
(無機材料膜Bによる被覆)
上記樹脂保護膜の全体を覆うように、12mm×12mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて無機材料膜Bを形成して表示素子(有機EL表示素子)を得た。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiHガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiHガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成されたシリコンナイトライドの無機材料膜Bの厚さは、約1μmであった。
【0078】
(有機EL表示素子の発光状態)
作製した有機EL表示素子をそれぞれ85℃、85%RHの条件下に240時間暴露した後、3Vの電圧を印加し、発光状態(発光及びダークスポットや、画素周辺消光の有無)を目視で観察し、ダークスポットや周辺消光が無く均一に発光した場合を「○」、ダークスポットや周辺消光が認められた場合を「△」、非発光部が著しく拡大した場合を「×」として有機EL表示素子の表示性能を評価した。
【0079】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、接着性及び透明性に優れ、かつ、アウトガスの発生及び金属と接触した際のゲル化を抑制できる表示素子用封止剤を提供することができる。