(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り替え制御部は、前記バス車両が実車状態の場合に、現在時刻が事前に定めた深夜時間に含まれる場合には、前記運行状態を実車状態から深夜実車状態に切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載のバス車両管理用車載器。
前記外部装置は、前記バス車両管理用車載器から入庫状態への切り替わりを示すデータを受信した場合には、受信したデータに含まれる前記バス車両の現在位置の情報を、生成する日報の中に記録する、
ことを特徴とする請求項5に記載のバス車両管理システム。
【背景技術】
【0002】
バス、タクシー、トラックなどの業務用車両を運行する企業等においては、乗務員の過労運転による事故の発生を防止するために、所定の管理者が乗務員の労務管理を適切に行う必要がある。
【0003】
例えば、高速乗り合いバスおよび貸し切りバスをワンマン運行する場合には、「旅客自動車運送事業運輸規則」により、一運行の実車距離が昼間は原則500km、夜間は原則400kmまでに制限されている。
【0004】
ここで、「ワンマン運行」は、交代運転者が同乗していない運行をいう。また、「夜間ワンマン運行」は、最初の旅客が乗車する時刻若しくは最後の旅客が降車する時刻が午前2時から午前4時までの間にあるワンマン運行又は当該時刻をまたぐワンマン運行をいう。また、「一運行」は1人の運転者の1日の乗務のうち、回送運行を含む運転を開始してから運転を終了するまでの一連の乗務をいう。
【0005】
また、バス、タクシー、トラックの自動車運転者の休息期間(勤務と勤務を分断するもので休憩時間とは異なる)については、勤務終了後に原則として継続した8時間以上を必要とすることが規定されている。
【0006】
したがって、従来より企業等が管理しているバス、タクシー、トラック等の車両にはデジタルタコグラフ、すなわち運行記録計の車載器を搭載してあり、この車載器が記録した運行情報に基づいて管理者が乗務員の労務管理などを行い、法律に違反することがないように各乗務員の運行業務を管理している。
【0007】
バスなどに搭載するデジタルタコグラフの車載器は、乗務員の適切な労務管理を可能にするために、「回送」、「実車」、「夜間」、「入庫」などの車両の状態を区別して運行情報を記録することができる。また、デジタルタコグラフが把握している「回送」、「実車」、「夜間」、「入庫」などの車両の状態については、一般的に、乗務員のボタン操作をデジタルタコグラフが検知することにより切り替わる。
【0008】
一方、特許文献1には、タクシーメータに設ける実車ボタンの押し忘れ装置が示されている。特許文献1の装置は、同乗者を検知すると、乗車信号を出力する第1センサと、ドア閉め後の発進準備操作を検知して、発進準備信号を出力する第2センサとを備えており、実車ボタンを押さずに発進しようとすると音で注意を促す。
【0009】
また、特許文献2にはタクシーメータ確認忘れ防止装置が示されている。特許文献2の装置は、タクシーの後部ドアに設けられた投光器、受光器を備え、乗客を乗車させるためにドアが開いてから所定時間経過後にメーターの表示状態信号が「空車」「迎車」の状態のままであるとき、メーター確認信号を出力するコントローラーを備えている。
【0010】
また、特許文献3はタクシーメータ表示切り替え装置を示している。特許文献3の装置は、車速信号、後部ドア開閉信号を入力する車両状態信号入力部を有し、タクシーメータに対するボタン操作に従って変化する「空車」、「実車」、「合計」等の状態と、車速信号、後部ドア開閉信号に基づいて予め用意した複数の表示モードのいずれかを自動的に選択する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、バス車両に搭載するデジタルタコグラフの車載器は、「回送」、「実車」、「夜間」、「入庫」などの車両の状態を乗務員のボタン操作により切り替えるので、操作忘れや操作ミスが発生する可能性がある。したがって、労務管理を行うために必要な運行情報を正確に記録できない場合がある。
【0013】
例えばタクシー車両を管理する場合には、特許文献1〜特許文献3に示されているように、後部ドアの開閉状態を検出し、この変化に基づいて乗務員に対して音などでボタン操作忘れの注意を促すことが可能である。
【0014】
しかし、高速乗り合いバスおよび貸し切りバスのようなバス車両の場合には、例えば車庫から出庫して、「回送」状態になってから、乗客の乗車が可能となる「実車」状態になるまでの間に、時間を調整するために、あるいは何らかの準備作業を行うために一時的に停車して、乗務員がドアの開閉操作を行う可能性も考えられる。したがって、ドアの開閉状態を参照するだけでは、「回送」から「実車」に変化したのかどうかは分からない。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗務員の操作忘れや操作ミスに起因して車載器が誤った運行状態を把握するのを防止することが可能なバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムは、下記(1)〜(6)を特徴としている。
(1) バス車両に搭載され、前記バス車両の運行状態管理に必要な情報を記録または送信するバス車両管理用車載器であって、
前記バス車両における乗降ドアの開閉状態を検知するドア開閉検出部と、
前記バス車両の現在位置を検知する位置情報検出部と、
前記バス車両の事前に定めた運行経路上にある1つ以上の特定地点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記乗降ドアの開閉動作が検知されたこと、及び、前記バス車両の現在位置と前記特定地点の位置とが一致したこと、の双方を条件に、前記バス車両の運行状態を回送状態から実車状態に切り替える切り替え制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
このバス車両管理用車載器によれば、前記バス車両が回送状態から実車状態に変化した場合に、乗務員がボタン操作を行わなくても、実車状態に切り替わったことを正しく把握できる。すなわち、高速乗り合いバスや貸し切りバスの運行においては、運行経路が事前に決められており、乗客の乗降地点もこの運行経路上にあるので、乗客の乗降地点を前記特定地点の位置として事前に登録することができる。つまり、運行経路上の特定の乗降地点でドアの開閉が検出されれば、乗客の乗降がある可能性が高いので、実車状態であるとみなすことができる。乗務員のボタン操作が不要なので、この車載器がバス車両の運行状態を誤って把握する状態は生じにくい。
【0018】
(2) 前記切り替え制御部は、前記バス車両が実車状態の場合に、現在時刻が事前に定めた深夜時間に含まれる場合には、前記運行状態を実車状態から深夜実車状態に切り替える、
ことを特徴とする上記(1)に記載のバス車両管理用車載器。
【0019】
このバス車両管理用車載器によれば、バス車両の運行状態について、「実車」状態から「深夜実車」状態へ自動的に切り替えることができる。乗務員のボタン操作が不要なので、この車載器がバス車両の運行状態を誤って把握する状態は生じにくい。したがって、「実車」状態と「深夜実車」状態とを正しく区別して労務管理を行うことが可能になる。
【0020】
(3) 前記切り替え制御部は、前記バス車両の入庫を表す所定の状態を検知した場合には、前記運行状態を実車状態または深夜実車状態から入庫状態に切り替える、
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のバス車両管理用車載器。
【0021】
このバス車両管理用車載器によれば、バス車両の運行状態について、「実車」状態または「深夜実車」状態から「入庫」状態に切り替えることができる。
【0022】
(4) 前記バス車両と外部装置との間でデータ通信するための無線通信部、を更に備え、
前記切り替え制御部は、前記バス車両の運行状態の切り替わりを検知した場合には、少なくとも現在の運行状態と、車両番号、乗務員情報、時刻、および前記バス車両の現在位置のデータを、前記無線通信部を介して前記外部装置に送信する、
ことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のバス車両管理用車載器。
【0023】
このバス車両管理用車載器によれば、前記バス車両を管理する前記外部装置において、前記バス車両の運行状態および乗務員の乗務状態を把握するために必要な情報を自動的に取得できる。
【0024】
(5) 上記(4)に記載の前記バス車両管理用車載器と、前記外部装置と、を備えるバス車両管理システムであって、
前記外部装置は、前記バス車両管理用車載器からのデータを受信した結果に基づき、前記バス車両の現在の運行状態を少なくとも画面上に表示する、
ことを特徴とする。
【0025】
このバス車両管理システムによれば、前記外部装置を操作する管理者は、前記外部装置の画面表示により、該当するバス車両の運行状態を正しく把握できる。
【0026】
(6) 前記外部装置は、前記バス車両管理用車載器から入庫状態への切り替わりを示すデータを受信した場合には、受信したデータに含まれる前記バス車両の現在位置の情報を、生成する日報の中に記録する、
ことを特徴とする上記(5)に記載のバス車両管理システム。
【0027】
このバス車両管理システムによれば、前記外部装置により、該当するバス車両が入庫した位置を、該当する乗務員の休息場所として前記日報に自動的に記入することができる。したがって、日報の記入ミスを防止できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムによれば、乗務員の操作忘れや操作ミスに起因して車載器が誤った運行状態を把握するのを防止することが可能になる。したがって、バス車両の運行業務における乗務員の労務管理を正確に行うことができる。
【0029】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0032】
まず、バス車両管理システムの構成例を説明する。
本発明の実施形態のバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムの構成例を
図3に示す。また、バス車両の外観の例を
図4に示す。
【0033】
図3に示したバス車両管理システムは、車載器10と、事務所PC40とを備えている。車載器10は、
図4に示すようにバス車両25上に搭載される。事務所PC40は、例えばバス車両25を管理している企業の事務所内に設置される。
【0034】
車載器10は、デジタルタコグラフ、すなわち車両用の運行記録計の機能を有している。また、本実施形態の車載器10は、後述するようにバス車両の運行を管理する際に役立つ特別な機能を備えている。
【0035】
事務所PC40は、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)上に、バスの運行管理やバスを運転する乗務員の労務管理を行うために必要な特別なソフトウェアを組み込んで構成してある。つまり、事務所PC40は管理対象のバス車両25の運行状態を画面上に表示したり、運行日報41を作成して画面上や紙に出力することができる。
【0036】
車載器10は、例えば移動体通信事業者等が提供する広域無線通信網30の無線基地局との間で無線接続して通信回線を確保するための無線通信機能を搭載している。また、事務所PC40はインターネット網35と接続するための通信機能を搭載している。したがって、
図3に示すように広域無線通信網30およびインターネット網35を経由して、車載器10と事務所PC40とを通信可能な状態で接続することができる。なお、例えばインターネット網35上に配置される所定のサーバが、車載器10と事務所PC40との間のデータ通信を中継するように構成してもよい。
【0037】
車載器10は、デジタルタコグラフの機能を有しているので、基本的な機能として、搭載された車両上で様々な情報を自動的に収集して所定の記録媒体に記録することができる。また、車載器10は収集した様々な情報を、広域無線通信網30およびインターネット網35を経由して事務所PC40に送信することができる。
【0038】
事務所PC40は、車載器10が送信した様々な情報を広域無線通信網30およびインターネット網35を経由して受信し、受信した情報に基づいてバス車両25の運行管理や乗務員の労務管理を行うための処理を行う。
【0039】
次に、バス車両管理用車載器の構成例を説明する。
図3に示すように、車載器10はマイクロコンピュータ(CPU)11、速度信号インタフェース12、エンジン信号インタフェース13、GPSインタフェース14、アナログ信号インタフェース15、外部入力インタフェース16、広域無線通信モジュール17、不揮発性メモリ18、揮発性メモリ19、SDカード20、スイッチ(SW)入力部21、液晶表示器(LCD)22、およびアンテナ23を備えている。
【0040】
マイクロコンピュータ11は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、車載器10が必要とする様々な機能を実現するための制御を行う。例えば、車両の運行に関する様々な情報を自動的に収集して記録媒体であるSDカード20に記録したり、無線通信回線を利用してデータを事務所PC40に送信する。
【0041】
速度信号インタフェース12は、車両側のセンサから出力される速度パルス信号を入力して、マイクロコンピュータ11が処理するのに適した信号に変換する。この速度パルス信号のパルス周期または一定時間内のパルス数に基づいて、自車両の走行速度(km/h)を算出することができ、パルス数に基づいて走行距離を算出することもできる。
【0042】
エンジン信号インタフェース13は、車両側のセンサから出力されるエンジン回転パルス信号を入力して、マイクロコンピュータ11が処理するのに適した信号に変換する。このエンジン回転パルス信号のパルス周期または一定時間内のパルス数に基づいて、エンジンの回転速度(rpm)を算出することができる。
【0043】
GPSインタフェース14は、自車両に搭載された所定のGPS受信機を車載器10に接続するための信号処理を行う。GPS受信機は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信し、受信時刻に基づいて自車両の現在位置を表す緯度/経度の情報を出力することができる。
【0044】
アナログ信号インタフェース15は、車両側から出力される様々なアナログ信号を入力してマイクロコンピュータ11が処理可能なデジタル信号に変換するためのA/D変換器を内蔵している。
【0045】
外部入力インタフェース16は、車両側から出力される様々な二値信号を入力してマイクロコンピュータ11の処理に適した電圧の信号に変換する。本実施形態では、
図4に示したバス車両25の車両ドア25aの開閉に連動して動作するスイッチからドア開閉信号が外部入力インタフェース16に入力される。したがって、マイクロコンピュータ11は車両ドア25aの開閉状態を認識できる。
【0046】
広域無線通信モジュール17は、移動体通信事業者等が提供する広域無線通信網30に含まれる無線基地局との間でアンテナ23を介して無線通信を行い、データ通信を行うために必要な無線通信回線を確保する機能を有している。
【0047】
不揮発性メモリ18は、マイクロコンピュータ11の動作に必要なプログラムや各種定数などのデータを予め保持している。揮発性メモリ19は、マイクロコンピュータ11のアクセスによりデータの書き込みおよび読み出しが可能なメモリであり、様々なデータを一時的に格納するために利用される。
【0048】
SDカード20は、車載器10が収集した運行情報等のデータを保存するための不揮発性メモリを内蔵した記録媒体である。このSDカード20は、車載器10に設けられた図示しないカードスロットに着脱自在な状態で装着される。SDカード20上の記憶領域には、これを所持する特定の乗務員を表す情報や、バス車両25の番号などの情報が事前に登録されている。
【0049】
スイッチ入力部21は、乗務員が操作可能な様々なスイッチの状態を示す信号をマイクロコンピュータ11に入力するための信号処理を行う。例えば、「実車」、「深夜」、「出庫」、「入庫」、「高速」、「一般」などのボタンの操作と連動する各スイッチの二値信号がスイッチ入力部21に入力される。
【0050】
液晶表示器22は、様々な文字情報などを乗務員が視認可能な状態で表示可能な表示画面を有している。この液晶表示器22は、車載器10の動作状態を表示したり、乗務員に知らせるべき所定のメッセージなどを出力するために利用される。
【0051】
本実施形態におけるバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムの主要な動作を
図1および
図2に示す。すなわち、
図1、
図2において、ステップS11〜S26が車載器10の動作を表し、ステップS31〜S33が事務所PC40の動作を表す。
【0052】
また、車載器10の不揮発性メモリ18上には、事前に複数の特定地点の各々の位置を表す位置情報が登録してある。すなわち、該当するバス車両25の事前に定めた運行予定における運行経路上にある乗客の乗降地点の各々を表す位置情報が固定情報として登録してある。
【0053】
図1のステップS11では、車載器10上のマイクロコンピュータ11は、車両ドア25aの開閉状態を示す信号の状態を外部入力インタフェース16から入力し、開閉動作の有無を識別する。車両ドア25aの開閉、つまり乗客の乗降の可能性がある場合にS11からS12に進む。
【0054】
ステップS12では、マイクロコンピュータ11はGPSインタフェース14を経由して自車両の現在位置の情報を取得する。
【0055】
ステップS13では、マイクロコンピュータ11はS12で取得した現在位置と、不揮発性メモリ18に登録されている各地点の位置情報とを比較する。不揮発性メモリ18に登録されているいずれか1つの地点の位置と現在位置とがほぼ一致する場合にはS13からS14に進む。一致しない場合はS16に進む。
【0056】
ステップS14では、マイクロコンピュータ11はバス車両25の現在の運行状態を「実車」状態として自動的に認識する。例えば、それまで「回送」状態であったのであれば、乗客の乗降予定地点においてドア開閉が検出されたので、バス車両25が「実車」状態に変化した可能性が極めて高い。したがって、乗務員のボタン操作がない場合でも、「回送」状態から「実車」状態に切り替えることが妥当である。
【0057】
ステップS15では、マイクロコンピュータ11は、「実車」イベント情報を無線通信回線を経由して事務所PC40に自動的に送信する。この「実車」イベント情報は、バス車両25が「実車」状態に切り替わったことを表す情報であり、それ以外に現在時刻、車両番号、乗務員情報、および現在位置の情報も含んでいる。
【0058】
また、「回送」状態から「実車」状態に切り替わった場合には、この「実車」イベント情報をSDカード20にも記録する。また、現在の運行状態を表す「実車」状態の情報を例えば不揮発性メモリ18上に保存する。
【0059】
ステップS16では、マイクロコンピュータ11は、それ自身が把握しているバス車両25の現在の運行状態が「実車」状態か否かを識別する。「実車」状態であればS17に進み、実車でなければ
図2のS21に進む。
【0060】
ステップS17では、マイクロコンピュータ11は車載器10の内部で管理している現在時刻の情報を取得し、取得した現在時刻を、「深夜実車」状態を表す基準時刻と比較する。具体的には、「夜間ワンマン運行」か否かを識別する。
【0061】
「夜間ワンマン運行」は、「最初の旅客が乗車する時刻若しくは最後の旅客が降車する時刻が午前2時から午前4時までの間にあるワンマン運行又は当該時刻をまたぐワンマン運行をいう」と規定されている。したがって、ステップS17では、現在時刻が午前2時から午前4時までの間に含まれているか否か、つまり、「実車」状態のまま基準時刻である午前2時を超えたか否かを識別している。現在時刻が午前2時を超えた場合はS17からS18に進み、午前2時を超えてなければS21に進む。
【0062】
ステップS18では、マイクロコンピュータ11は、バス車両25の現在の運行状態を「深夜実車」状態として自動的に認識する。つまり、「実車」状態から「深夜実車」状態に自動的に切り替える。
【0063】
ステップS19では、マイクロコンピュータ11は、「深夜実車」イベント情報を無線通信回線を経由して事務所PC40に自動的に送信する。この「深夜実車」イベント情報は、バス車両25が「深夜実車」状態に切り替わったことを表す情報であり、それ以外に現在時刻、車両番号、乗務員情報、および現在位置の情報も含んでいる。
【0064】
また、「実車」状態から「深夜実車」状態に切り替わった場合には、この「深夜実車」イベント情報をSDカード20にも記録する。また、現在の運行状態を表す「深夜実車」状態の情報を例えば不揮発性メモリ18上に保存する。
【0065】
図2のステップS21では、マイクロコンピュータ11は、「入庫」操作を検出したか否かを識別する。本実施形態では、当日のバス車両25の運行業務が終了してバス車両25を入庫する時に、乗務員が車載器10に備わった「入庫」ボタンを操作する。このボタン操作をスイッチ入力部21からの信号によりマイクロコンピュータ11が検知した場合に、S21からS22に進む。
【0066】
ステップS22では、マイクロコンピュータ11は、バス車両25の現在の運行状態を「入庫」状態として自動的に認識する。つまり、「実車」または「深夜実車」から「入庫」状態に切り替える。
【0067】
ステップS23では、マイクロコンピュータ11は、「入庫」イベント情報を無線通信回線を経由して事務所PC40に自動的に送信する。この「入庫」イベント情報は、バス車両25が「入庫」状態に切り替わったことを表す情報であり、それ以外に現在時刻、車両番号、乗務員情報、および現在位置の情報も含んでいる。
【0068】
また、「実車」または「深夜実車」から「入庫」状態に切り替わった場合には、この「入庫」イベント情報をSDカード20にも記録する。また、現在の運行状態を表す「入庫」状態の情報を例えば不揮発性メモリ18上に保存する。
【0069】
また、「入庫」以外のボタンについても、マイクロコンピュータ11が乗務員の操作をS24で検知すると、次のS25に進み、ボタン操作に応じた状態の変化を認識する。そして、変化後の状態を示すイベント情報をS26で事務所PC40に送信する。
【0070】
一方、事務所PC40においては、車載器10がS15で送信する「実車」イベント情報を受信した場合には、各車両を管理している画面において、受信した情報に基づき、該当する番号のバス車両25の状態が「実車」に切り替わったことを表すように画面表示を更新する(S31)。
【0071】
また、事務所PC40において、車載器10がS19で送信する「深夜実車」イベント情報を受信した場合には、各車両を管理している画面において、受信した情報に基づき、該当する番号のバス車両25の状態が「深夜実車」に切り替わったことを表すように画面表示を更新する。また、事務所PC40が生成する運行日報41の中にも、「深夜実車」に切り替わったことを表す情報を書き込む(S32)。
【0072】
また、事務所PC40において、車載器10がS23で送信する「入庫」イベント情報を受信した場合には、各車両を管理している画面において、受信した情報に基づき、該当する番号のバス車両25の状態が「入庫」に切り替わったことを表すように画面表示を更新する。また、事務所PC40が生成する運行日報41の中にも、「入庫」に切り替わったことを表す情報を、休息場所(入庫場所)を表す情報と共に書き込む(S33)。
【0073】
次に、画面表示の具体例を説明する。
事務所PC40が深夜実車状態を自動表示した画面の例を
図5に示す。休息場所を自動表示した運行日報41の画面の例を
図6に示す。
【0074】
図5に示したように、事務所PC40の画面においては、「配送計画」、「出退勤」、「点呼」、「運行状況」、「労務確認」、「乗務管理」、および「ユーティリティ」の各々を管理するための画面を表示できる。
図5に示す状態では、「運行状況」の中の「作業状況」の項目を選択している。この画面においては、管理対象の複数のバス車両のそれぞれを車両番号で区別して、車両毎に現在の運行状態を表示できる。
【0075】
図5の例では、車両番号が「20000086」のバス車両25について、「出庫」が表示されているが、事務所PC40が該当車両の車載器10から「深夜実車イベント」を受信した場合には「出庫」の代わりに「深夜実車」が自動的に表示される(S32)。
【0076】
図6に示した事務所PC40の画面においては、運行日報41の内容の具体例が表示されている。
図6に示すように、この運行日報41には、バス車両25の運行状態の切り替わりのイベント毎に、現在の運行状態の区分(「出庫」、「実車」、「入庫」等)と、住所または場所、日時などの情報が表示される。したがって、この運行日報41の内容から、該当する乗務員の休息場所を特定できる。
【0077】
以上のように、本発明の実施形態に係る車載器10を用いる場合には、バス車両25の運行状態が「出庫」から「実車」に最初に切り替わる時に、乗務員が「実車」ボタン操作を行わなくても、車載器10が把握している運行状態を「出庫」から「実車」に自動的に切り替えることができる。したがって、ボタンの押し忘れや、操作ミスに起因して誤った運行情報が記録されるのを防止できる。また、記録されたデータの修正が不要になるため管理者の負担が軽減される。
【0078】
また、上述の車載器10を用いる場合には、バス車両25の運行状態が「実車」から「深夜実車」に最初に切り替わる時に、乗務員が「深夜実車」ボタン操作を行わなくても、車載器10が把握している運行状態を「実車」から「深夜実車」に自動的に切り替えることができる。したがって、「実車」の状態で深夜時間になった場合、および「回送」の状態で深夜時間に「実車」になった場合の何れの場合においても、ボタンの押し忘れや、操作ミスに起因して誤った運行情報が記録されるのを防止できる。また、「実車」と「深夜実車」とを正しく区別できるので、乗務員の適切な労務管理が可能になる。
【0079】
また、上述の車載器10および事務所PC40を用いる場合には、バス車両25の運行状態が「実車」または「深夜実車」から「入庫」に切り替わった時に、事務所PC40が該当する乗務員の休息場所を自動的に記録するので、乗務員の休息時間の管理が容易になる。すなわち、各乗務員が勤務終了後に8時間以上の休息時間を経過した後で次の勤務を開始しているかどうかを容易に識別できる。
【0080】
なお、
図3に示した車載器10は乗客の乗降予定地点の位置情報を不揮発性メモリ18から取得しているが、通信回線を経由して事務所PC40から取得するように変更することも可能である。
【0081】
ここで、上述した本発明に係るバス車両管理用車載器およびバス車両管理システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] バス車両(25)に搭載され、前記バス車両の運行状態管理に必要な情報を記録または送信するバス車両管理用車載器(10)であって、
前記バス車両における乗降ドア(車両ドア25a)の開閉状態を検知するドア開閉検出部(外部入力インタフェース16)と、
前記バス車両の現在位置を検知する位置情報検出部(位置情報検出部14)と、
前記バス車両の事前に定めた運行経路上にある1つ以上の特定地点の位置情報を取得する位置情報取得部(不揮発性メモリ18)と、
前記バス車両の現在位置と前記特定地点の位置との位置関係、および前記ドア開閉検出部が検知した開閉状態に基づいて、前記バス車両の運行状態を回送状態から実車状態に切り替える(S11〜S15)切り替え制御部(マイクロコンピュータ11)と、
を備えたことを特徴とするバス車両管理用車載器。
【0082】
[2] 前記切り替え制御部は、前記バス車両が実車状態の場合に、現在時刻が事前に定めた深夜時間に含まれる場合には、前記運行状態を実車状態から深夜実車状態に切り替える(S16〜S19)、
ことを特徴とする上記[1]に記載のバス車両管理用車載器。
【0083】
[3] 前記切り替え制御部は、前記バス車両の入庫を表す所定の状態を検知した場合には、前記運行状態を実車状態または深夜実車状態から入庫状態に切り替える(S21〜S23)、
ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のバス車両管理用車載器。
【0084】
[4] 前記バス車両と外部装置との間でデータ通信するための無線通信部(広域無線通信モジュール17)、を更に備え、
前記切り替え制御部は、前記バス車両の運行状態の切り替わりを検知した場合には、少なくとも現在の運行状態と、車両番号、乗務員情報、時刻、および前記バス車両の現在位置のデータを、前記無線通信部を介して前記外部装置に送信する(S15、S19、S23)、
ことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のバス車両管理用車載器。
【0085】
[5] 上記[4]に記載の前記バス車両管理用車載器(10)と、前記外部装置(事務所PC40)と、を備えるバス車両管理システムであって、
前記外部装置は、前記バス車両管理用車載器からのデータを受信した結果に基づき、前記バス車両の現在の運行状態を少なくとも画面上に表示する(S31、S32)、
ことを特徴とするバス車両管理システム。
【0086】
[6] 前記外部装置は、前記バス車両管理用車載器から入庫状態への切り替わりを示すデータを受信した場合には、受信したデータに含まれる前記バス車両の現在位置の情報を、生成する日報の中に記録する(S33)、
ことを特徴とする上記[5]に記載のバス車両管理システム。