(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した車両用灯具では、車両先端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、レンズ体の最終出射面にスラント角(傾ける向きによってはキャンバー角ともいう。)を付与することがある。例えば、最終出射面にスラント角が付与されたレンズ体では、車両進行方向に対して車幅方向の内側よりも外側が後退する方向に向かって所定の角度(スラント角)で最終出射面を傾斜させている。
【0005】
しかしながら、最終出射面にスラント角が付与されたレンズ体では、最終出射面を傾斜させたことによって、フレネル反射損失等が発生し、光源から出射された光を拡散配光させる際の光利用効率が低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、光源から出射された光を効率良く拡散配光させることができる拡散配光光学系、並びにこれを備えた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光源から出射された光を車両進行方向に向けて拡散配光させるレンズ体を備え、前記レンズ体が車幅方向に複数並んで配置されるように構成された拡散配光光学系であって、前記レンズ体は、第1入射面、反射面及び第1出射面を含む第1レンズ部と、第2入射面及び第2出射面を含む第2レンズ部とを有して、前記光源からの光が、前記第1入射面から前記第1レンズ部の内部に入射して、前記反射面によって一部が反射された後、前記第1出射面から前記第1レンズ部の外部に光が出射され、更に、前記第2入射面から前記第2レンズ部の内部に入射して、前記第2出射面から前記第2レンズ部の外部に光が出射されることによって、当該レンズ体の前方に照射される光が、上端縁に前記反射面の前端部によって規定されるカットオフラインを含む所定の配光パターンを形成するように構成されており、前記第1出射面は、当該第1出射面から出射される光を水平方向に集光させるように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記第2出射面は、当該第2出射面から出射される光を鉛直方向に集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記複数のレンズ体の各々の前記第2出射面は、互いに隣接した状態で前記車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成し、前記複数のレンズ体のうち少なくとも1つ以上のレンズ体は、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されて
おり、前記第1レンズ部は、仮想の回転軸を有すると共に、この回転軸を中心として回転する方向に傾けられており、前記回転軸は、上下方向に延びると共に、少なくとも前記第1レンズ部の光軸と前記第1出射面との接点を通る線であることを特徴とする拡散配光光学系である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を傾けることで、車幅方向の外側に向かって拡散配光させることができる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明では、レンズ体を構成する第1レンズ部と第2レンズ部とのうち、第1レンズ部の第1出射面が水平方向に集光させる機能を有し、第2レンズ部の第2出射面が鉛直方向に集光させる機能を有することで、第1出射面と第2出射面とで集光機能を分解しながら、水平方向及び鉛直方向に集光した所定の配光パターンを形成することができる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明では、複数のレンズ体の各々の第2出射面が、互いに隣接した状態で車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成していることから、車幅方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの拡散配光光学系を提供することができる。
【0012】
また、請求項
1に記載の発明では、第1出射面と第2入射面との間の光路長を大きく変化させることがないため、配光に影響を与えることなく、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を傾けることができる。
【0013】
請求項
2に記載の発明は、
光源から出射された光を車両進行方向に向けて拡散配光させるレンズ体を備え、前記レンズ体が車幅方向に複数並んで配置されるように構成された拡散配光光学系であって、前記レンズ体は、第1入射面、反射面及び第1出射面を含む第1レンズ部と、第2入射面及び第2出射面を含む第2レンズ部とを有して、前記光源からの光が、前記第1入射面から前記第1レンズ部の内部に入射して、前記反射面によって一部が反射された後、前記第1出射面から前記第1レンズ部の外部に光が出射され、更に、前記第2入射面から前記第2レンズ部の内部に入射して、前記第2出射面から前記第2レンズ部の外部に光が出射されることによって、当該レンズ体の前方に照射される光が、上端縁に前記反射面の前端部によって規定されるカットオフラインを含む所定の配光パターンを形成するように構成されており、前記第1出射面は、当該第1出射面から出射される光を水平方向に集光させるように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記第2出射面は、当該第2出射面から出射される光を鉛直方向に集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記複数のレンズ体の各々の前記第2出射面は、互いに隣接した状態で前記車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成し、前記複数のレンズ体のうち少なくとも1つ以上のレンズ体は、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されており、前記連続出射面は、前記車両進行方向に対して前記車幅方向の内側よりも外側が後退する方向に向かって所定の角度で傾斜しており、前記複数のレンズ体のうち少なくとも1つ以上のレンズ体は、前記連続出射面が傾斜する角度に合わせて、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を前記第2レンズ部の光軸と同じ方向に傾けた状態で配置されていることを特徴とする
拡散配光光学系である。
【0014】
請求項2に記載の発明では、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を傾けることで、車幅方向の外側に向かって拡散配光させることができる。
また、請求項2に記載の発明では、レンズ体を構成する第1レンズ部と第2レンズ部とのうち、第1レンズ部の第1出射面が水平方向に集光させる機能を有し、第2レンズ部の第2出射面が鉛直方向に集光させる機能を有することで、第1出射面と第2出射面とで集光機能を分解しながら、水平方向及び鉛直方向に集光した所定の配光パターンを形成することができる。
また、請求項2に記載の発明では、複数のレンズ体の各々の第2出射面が、互いに隣接した状態で車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成していることから、車幅方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの拡散配光光学系を提供することができる。
また、請求項
2に記載の発明では、各レンズ体の最終出射面である第2出射面(連続出射面)が所定の角度(スラント角)で傾斜しており、この連続出射面が傾斜するスラント角に合わせて、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を第2レンズ部の光軸と同じ方向に傾けることで、フレネル反射損失等の発生を抑制し、光源から出射された光を拡散配光させる際の光利用効率を高めることができる。
【0015】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載の拡散配光光学系において、前記第1レンズ部の光軸と前記第2レンズ部の光軸とが互いに一致した方向を向いていることを特徴とする。
【0016】
請求項
3に記載の発明では、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を第2レンズ部の光軸と同じ方向に同じ角度(スラント角)で傾けることができる。この場合、フレネル反射損失等の発生を最小に抑え、光源から出射された光を拡散配光させる際の光利用効率を最も高めることができる。
【0017】
請求項
4に記載の発明は、
光源から出射された光を車両進行方向に向けて拡散配光させるレンズ体を備え、前記レンズ体が車幅方向に複数並んで配置されるように構成された拡散配光光学系であって、前記レンズ体は、第1入射面、反射面及び第1出射面を含む第1レンズ部と、第2入射面及び第2出射面を含む第2レンズ部とを有して、前記光源からの光が、前記第1入射面から前記第1レンズ部の内部に入射して、前記反射面によって一部が反射された後、前記第1出射面から前記第1レンズ部の外部に光が出射され、更に、前記第2入射面から前記第2レンズ部の内部に入射して、前記第2出射面から前記第2レンズ部の外部に光が出射されることによって、当該レンズ体の前方に照射される光が、上端縁に前記反射面の前端部によって規定されるカットオフラインを含む所定の配光パターンを形成するように構成されており、前記第1出射面は、当該第1出射面から出射される光を水平方向に集光させるように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記第2出射面は、当該第2出射面から出射される光を鉛直方向に集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記複数のレンズ体の各々の前記第2出射面は、互いに隣接した状態で前記車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成し、前記複数のレンズ体のうち少なくとも1つ以上のレンズ体は、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されており、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されるレンズ体は、前記車幅方向の最も外側に位置するレンズ体から内側に向かって順に配置されていることを特徴とする
拡散配光光学系である。
【0018】
請求項4に記載の発明では、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を傾けることで、車幅方向の外側に向かって拡散配光させることができる。
また、請求項4に記載の発明では、レンズ体を構成する第1レンズ部と第2レンズ部とのうち、第1レンズ部の第1出射面が水平方向に集光させる機能を有し、第2レンズ部の第2出射面が鉛直方向に集光させる機能を有することで、第1出射面と第2出射面とで集光機能を分解しながら、水平方向及び鉛直方向に集光した所定の配光パターンを形成することができる。
また、請求項4に記載の発明では、複数のレンズ体の各々の第2出射面が、互いに隣接した状態で車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成していることから、車幅方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの拡散配光光学系を提供することができる。
また、請求項
4に記載の発明では、車幅方向の外側に向かって効率良く拡散配光させることができる。
【0019】
請求項
5に記載の発明は、
光源から出射された光を車両進行方向に向けて拡散配光させるレンズ体を備え、前記レンズ体が車幅方向に複数並んで配置されるように構成された拡散配光光学系であって、前記レンズ体は、第1入射面、反射面及び第1出射面を含む第1レンズ部と、第2入射面及び第2出射面を含む第2レンズ部とを有して、前記光源からの光が、前記第1入射面から前記第1レンズ部の内部に入射して、前記反射面によって一部が反射された後、前記第1出射面から前記第1レンズ部の外部に光が出射され、更に、前記第2入射面から前記第2レンズ部の内部に入射して、前記第2出射面から前記第2レンズ部の外部に光が出射されることによって、当該レンズ体の前方に照射される光が、上端縁に前記反射面の前端部によって規定されるカットオフラインを含む所定の配光パターンを形成するように構成されており、前記第1出射面は、当該第1出射面から出射される光を水平方向に集光させるように、その円柱軸が鉛直方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記第2出射面は、当該第2出射面から出射される光を鉛直方向に集光させるように、その円柱軸が水平方向に延びた半円柱状のレンズ面として構成され、前記複数のレンズ体の各々の前記第2出射面は、互いに隣接した状態で前記車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成し、前記複数のレンズ体のうち少なくとも1つ以上のレンズ体は、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されており、前記車両進行方向に対して前記第1レンズ部の光軸を傾けた状態で配置されるレンズ体以外のレンズ体は、前記第1レンズ部の光軸が前記車両進行方向を向くように配置されていることを特徴とする
拡散配光光学系である。
【0020】
請求項5に記載の発明では、車両進行方向に対して第1レンズ部の光軸を傾けることで、車幅方向の外側に向かって拡散配光させることができる。
また、請求項5に記載の発明では、レンズ体を構成する第1レンズ部と第2レンズ部とのうち、第1レンズ部の第1出射面が水平方向に集光させる機能を有し、第2レンズ部の第2出射面が鉛直方向に集光させる機能を有することで、第1出射面と第2出射面とで集光機能を分解しながら、水平方向及び鉛直方向に集光した所定の配光パターンを形成することができる。
また、請求項5に記載の発明では、複数のレンズ体の各々の第2出射面が、互いに隣接した状態で車幅方向にライン状に延びた半円柱状の連続出射面を構成していることから、車幅方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの拡散配光光学系を提供することができる。
また、請求項
5に記載の発明では、車幅方向に広く拡散させた配光パターンを形成することができる。
【0021】
また、請求項
6に記載の発明は、請求項1〜
5の何れか一項に記載の拡散配光光学系と、前記拡散配光光学系を構成する前記複数のレンズ体に対して、各々の前記第1入射面に向けて光を照射する複数の光源とを備えることを特徴とする車両用灯具である。
【0022】
請求項
6に記載の発明では、フレネル反射損失等の発生を抑制し、光源から出射された光を拡散配光させる際の光利用効率を高めることができる拡散配光光学系を備えた車両用灯具を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、光源から出射された光を効率良く拡散配光させることができる拡散配光光学系、並びにこれを備えた車両用灯具を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0026】
本発明の一実施形態として、例えば
図1及び
図2に示す拡散配光光学系10を備える車両用灯具20について説明する。なお、
図1は、拡散配光光学系10を備える車両用灯具20の概略構成を示す上面図である。
図2は、拡散配光光学系10の主要面構成を示す斜視図である。また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具20(拡散配光光学系10)の前後方向、Y軸方向を車両用灯具20(拡散配光光学系10)の左右方向、Z軸方向を車両用灯具20(拡散配光光学系10)の上下方向として、それぞれ示すものとする。
【0027】
本実施形態の車両用灯具20は、
図1及び
図2に示すように、車両先端側の両コーナー部(本例では左側コーナー部の場合を例示する。)に配置される車両用前照灯である。具体的に、この車両用灯具20は、本発明を適用した拡散配光光学系10と、拡散配光光学系10を構成する複数(本例では4つ)のレンズ体11の各々に対して光を照射する複数(本例では4つ)の光源12とから構成される複数(本例では4つ)の灯体セル30を備えている。
【0028】
車両用灯具20は、複数の灯体セル30が車幅方向(Y軸方向)に一列に並んで配置された構成であり、各灯体セル30を構成するレンズ体11及び光源12は、基本的に同じ構成を有している。
【0029】
ここで、灯体セル30(レンズ体11及び光源12)の具体的な構成について
図3〜
図5を参照して説明する。なお、
図3は、レンズ体11の概略構成を示す平面図である。
図4は、レンズ体11に入射した光Lの光路を示す上面図である。
図5は、レンズ体11に入射した光Lの光路を示す側面図である。
【0030】
レンズ体11は、
図3〜
図5に示すように、第1入射面13a、反射面13b及び第1出射面1dを含む第1レンズ部13と、第2入射面14a及び第2出射面14bを含む第2レンズ部14とを有している。また、第1レンズ部13の第1出射面1dと第2レンズ部14の第2出射面14bとは、空間Sを隔てて対向している。
【0031】
第1レンズ部13は、水平方向(X軸方向)に延びる第1基準軸AX1に沿って、前後方向(X軸方向)に延びた形状の多面レンズ体である。具体的に、この第1レンズ部13は、第1基準軸AX1に沿って、第1入射面13aと、反射面13bと、第1出射面13dとが、この順で配置された構成を有している。
【0032】
なお、第1レンズ部13については、例えば、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。また、第1レンズ部13に透明樹脂を用いた場合は、金型を用いた射出成形によって第1レンズ部13を形成することが可能である。
【0033】
第1入射面13aは、第1レンズ部13の後端部(後面)に位置して、この第1入射面13a近傍に配置される光源12(正確には、光学設計上の基準点F
1)からの光Lが屈折して第1レンズ部13の内部に入射するレンズ面(例えば、光源12に向かって凸となる自由曲面)を構成している。
【0034】
第1入射面13aは、少なくとも鉛直方向(Z軸方向)に関し、この第1入射面13a近傍に配置される光源12からの光Lが、光源12の中心(基準点F
1)と反射面13bの前端部13c近傍の点(後述する合成レンズ15の合成焦点F
2)とを通過し、且つ、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜した第2基準軸AX2寄りに集光するように、その面形状が調整されている。
【0035】
また、第1入射面13aは、水平方向(Y軸方向)に関し、第1レンズ部13の内部に入射した光源12からの光Lが、反射面13bの前端部13cに向かって第1基準軸AX1寄りに集光するように、その面形状が構成されている。なお、第1入射面13aは、水平方向(Y軸方向)に関し、第1レンズ部体13の内部に入射した光源12からの光Lが、第1基準軸AX1に対して平行な光となるように、その面形状が構成されていてもよい。
【0036】
反射面13bは、第1入射面13aの下端縁から前方(+X軸方向)に向かって、水平方向(X軸方向)に延びた平面形状を有している。反射面13bは、第1レンズ部13の内部に入射した光源12からの光Lのうち、この反射面13bに入射した光Lを第1のレンズ部13の内部で前方の第1出射面13dに向けて内面反射(全反射)する。これにより、第1レンズ部13では、金属蒸着による金属反射膜を用いることなく、反射面13bを形成できるため、コストアップや反射率の低下等を防ぐことが可能である。
【0037】
また、反射面13bは、第1基準軸AX1に対して前方斜め下方に向かって傾斜していてもよい。この場合、反射面13bで反射した光Lの一部が第1出射面13dに入射しない方向に進む光(迷光)となることを抑制しながら、反射面13bで反射した光の利用効率を高めることができる。
【0038】
反射面13bの前端部13cは、第1レンズ部13の内部に入射した光源12からの光Lのカットオフラインを規定するものであり、第1レンズ部13の左右方向(Y軸方向)に延びるように形成されている。
【0039】
また、反射面13bの前端部13cは、カットオフラインに対応した段差形状を有している。なお、反射面13bの前端部13cについては、上述した段差形状に必ずしも限定されるものではなく、カットオフラインが規定可能な範囲で、適宜変更を加えることが可能である。また、反射面13bの前端部13cについては、上述した段差形状の代わりに、カットオフラインに対応した溝部によって形成することも可能である。
【0040】
第1出射面13dは、第1レンズ部13の前端部(前面)に位置して、この第1出射面13dから出射される光Lを水平方向(Y軸方向)に集光させるように、その円柱軸が鉛直方向(Z軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面として構成されている。また、第1出射面13dの焦線は、反射面13bの前端部13c近傍において鉛直方向(Z軸方向)に延びている。
【0041】
第2レンズ部14は、左右方向(Y軸方向)に延びた形状のレンズ体であり、第1基準軸AX1に沿って、第2入射面14aと、第2出射面14bとが、この順で配置された構成を有している。
【0042】
なお、第2レンズ部14については、第1レンズ部13と同様に、例えば、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。また、第2レンズ部14に透明樹脂を用いた場合は、金型を用いた射出成形によって第2レンズ部14を形成することが可能である。
【0043】
第2入射面14aは、第2レンズ部14の後端部(後面)に位置して、第1出射面13dから出射した光Lが入射する面として、平面を構成している。なお、第2入射面14aの形状については、このような平面に限らず、曲面(レンズ面)とすることも可能である。
【0044】
第2出射面14bは、最終出射面として第2レンズ部14の前端部(前面)に位置して、この第2出射面14bから出射される光Lを鉛直方向(Z軸方向)に集光させるように、その円柱軸が水平方向(Y軸方向)に延びた半円柱状のレンズ面として構成されている。また、第2出射面14bの焦線は、反射面13bの前端部13c近傍において水平方向(Y軸方向)に延びている。
【0045】
また、第1出射面13b、第2入射面14a及び第2出射面14bから構成される合成レンズ15の合成焦点F
2は、反射面13bの前端部13c近傍(例えば、反射面13bの前端部13cの左右方向の中心近傍)に設定されている。
【0046】
なお、第1レンズ部13及び第2のレンズ部14を構成する面のうち、図示や説明を省略したその他の面については、第1レンズ部13及び第2のレンズ部14の内部を通過する光Lに悪影響(例えば、遮蔽するなど。)を与えない範囲で自由に設計することが可能である。
【0047】
光源12には、
図1及び
図2に示すように、例えば、白色発光ダイオード(LED)や白色レーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いることができる。本実施形態では、1つの白色LEDを用いている。なお、光源12の種類については、特に限定されるものではなく、上述した半導体発光素子以外の光源を用いてもよい。
【0048】
光源12は、その発光面を前方斜め下方に向けた状態、すなわち、この光源12の光軸が第2基準軸AX2に一致した状態で、第1レンズ部13の第1入射面13aの近傍(基準点F
1の近傍)に配置されている。また、光源12は、この光源12の光軸が第2基準軸AX2に一致していない状態(例えば、光源12の光軸が第1基準軸AX1に平行に配置された状態)で、第1レンズ部13の第1入射面13aの近傍(基準点F
1の近傍)に配置されていてもよい。
【0049】
以上のようなレンズ体11及び光源12から構成される灯体セル30では、第1入射面13aから第1レンズ部13の内部に入射した光源12からの光Lのうち、反射面13bで反射された後、第1出射面13dに向かって進行する光(反射光)と、第1出射面13dに向かって進行する光(直進光)とが、第1出射面13dから第1レンズ部13の外部(空間S)へと出射される。そして、この光Lは、空間Sを通過しながら、第2入射面14aから第2レンズ部14の内部に入射した後、第2出射面14bから第2レンズ部14の外部へと出射される。
【0050】
これにより、レンズ体11の前方に照射される光Lは、合成レンズ15の合成焦点F
2近傍に形成される光源像を反転投影して、上端縁に反射面13bの前端部13cによって規定されるカットオフラインを含むロービーム(LB)用配光パターン(図示せず。)を形成する。
【0051】
また、本実施形態の車両用灯具20は、
図1及び
図2に示すように、各灯体セル30の光源12から出射された光Lをレンズ体11により車両進行方向に向けて拡散配光させる。これにより、各灯体セル30により形成されるLB用配光パターンを合成した配光パターンを形成する。
【0052】
ところで、本実施形態の拡散配光光学系10では、各レンズ体11の第2レンズ部14が互いに隣接した状態で車幅方向(Y軸方向)に一列に並んで配置されている。これにより、複数のレンズ体11の各々の第2出射面14bは、互いに隣接した状態で車幅方向(Y軸方向)にライン状に延びた半円柱状の連続出射面14Bを構成している。
【0053】
なお、拡散配光光学系10では、複数の第2レンズ部14を一体に成形した構成に限らず、複数の第2レンズ部14を別体に成形した後に、これらをレンズホルダ等の保持部材に保持することで、一体の構成とすることも可能である。
【0054】
本実施形態の車両用灯具20では、このような水平方向にライン状に延びる一体感のある見栄えの拡散配光光学系10を備えることで、そのデザイン性を向上させることが可能である。
【0055】
また、本実施形態の拡散配光光学系10では、車両先端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、レンズ体11の最終出射面となる連続出射面14Bにスラント角θが付与されている。すなわち、この連続出射面14Bは、車両進行方向(+X軸方向)に対して車幅方向(Y軸方向)の内側(+Y軸側)よりも外側(−Y軸側)が後退する方向(−X軸方向)に向かって所定の角度(スラント角)θで傾斜している。
【0056】
本実施形態の拡散配光光学系10では、4つのレンズ体11のうち、車幅方向(Y軸方向)の内側(+Y軸側)から順に並ぶ3つのレンズ体11(以下、第1レンズ体11Aという。)が、
図1及び
図6(a)に示すように、第1レンズ部13の光軸BX
1を車両進行方向(+X軸方向)に向けた状態で配置されている。なお、
図6(a)は、第1レンズ体11Aの配置を示す上面図である。一方、第2レンズ部14の光軸BX
2は、連続出射面14Bが傾斜するスラント角θに合わせて、車両進行方向(+X軸方向)に対して前方斜め外側に向かって傾斜している。
【0057】
これに対して、車幅方向(Y軸方向)の最も外側(−Y軸側)に位置する1つのレンズ体11(以下、第2レンズ体11Bという。)は、
図1及び
図6(b)に示すように、第1レンズ部13の光軸BX
1を車両進行方向(+X軸方向)に対して傾けた状態で配置されている。なお、
図6(b)は、第2レンズ体11Bの配置を示す上面図である。第1レンズ部13の光軸BX
1及び第2レンズ部14の光軸BX
2は、連続出射面14Bが傾斜するスラント角θに合わせて、車両進行方向(+X軸方向)に対して前方斜め外側に向かって傾斜している。
【0058】
なお、
図1に示す拡散配光光学系10では、第2レンズ体11Bを構成する第1レンズ部13が、その隣の第1レンズ体11Aを構成する第1レンズ部13と上面視で重なるように配置されているが、これは第1レンズ体11Aと第2レンズ体11Bとが異なる高さで配置されていることによるものである。
【0059】
ここで、シミュレーションにより第1レンズ体11Aに正対した正対した仮想鉛直スクリーンに対して、第1レンズ体11Aから出射された光を投影したときの光源像を
図7に示す。また、シミュレーションにより第2レンズ体11Bに正対した正対した仮想鉛直スクリーンに対して、第1レンズ体11Aから出射された光を投影したときの光源像を
図8に示す。
【0060】
なお、
図7は、第1レンズ体11Aにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたLB用配光パターンPを示す光度分布図である。
図8は、第2レンズ体11Bにより仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたLB用配光パターンPを示す光度分布図である。また、仮想鉛直スクリーンは、第1レンズ体11A及び第2レンズ体11Bの第2出射面14bから約25m前方に配置されている。
【0061】
第1レンズ体11A及び第2レンズ体11Bによる光源像は、
図7及び
図8に示すように、それぞれの仮想鉛直スクリーンの面上において、上端縁に反射面13bの前端部13cによって規定されるカットオフラインを含むLB用配光パターンPを形成する。
【0062】
一方、
図8に示す第2レンズ体11Bによる光源像(LB用配光パターンP)は、
図7に示す第1レンズ体11Aによる光源像(LB用配光パターンP)よりも、車幅方向(Y軸方向)の外側(+Y軸側)にシフトしている。
【0063】
図6(b)に示す第2レンズ体11Bでは、連続出射面14Bが傾斜するスラント角θに合わせて、車両進行方向(+X軸方向)に対して第1レンズ部13の光軸BX
1を第2レンズ部14の光軸BX
2と同じ方向に傾けることで、フレネル反射損失等の発生を抑制し、光源12から出射された光Lを拡散配光させる際の光利用効率を高めることができる。
【0064】
また、
図6(b)に示す第2レンズ体11Bでは、第1出射面13aの先端部に位置する仮想の回転軸Rを中心として回転する方向に第1レンズ部13を傾けることが好ましい。回転軸Rは、上下方向(Z軸方向)に延びると共に、少なくとも第1レンズ部13の光軸BX
1と第1出射面13aとの接点を通る線である。
【0065】
この場合、第1出射面13aと第2入射面14aとの間の光路長を大きく変化させることがないため、配光に影響を与えることなく、車両進行方向(+X軸方向)に対して第1レンズ部13の光軸BX
1を第2レンズ部14の光軸BX
2と同じ方向に傾けることができる。
【0066】
また、
図6(b)に示す第2レンズ体11Bでは、第1レンズ部13の光軸BX
1と第2レンズ部14の光軸BX
2とが互いに一致した方向を向いていることで、車両進行方向(+X軸方向)に対して第1レンズ部13の光軸BX
1を第2レンズ部14の光軸BX
2と同じ方向に同じ角度(スラント角θ)で傾けることができる。この場合、フレネル反射損失等の発生を最小に抑え、光源12から出射された光Lを拡散配光させる際の光利用効率を最も高めることができる。
【0067】
したがって、本実施形態の拡散配光光学系10では、上述した車両先端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、第2レンズ体11Bの第2出射面14bにスラント角θが付与された場合でも、フレネル反射損失等の発生を抑制し、光源12から出射された光Lを拡散配光させる際の光利用効率を高めることが可能である。
【0068】
また、本実施形態では、このような光源12から出射された光Lを効率良く拡散配光させることができる拡散配光光学系10を備えた車両用灯具20を提供することが可能である。
【0069】
ここで、シミュレーションにより
図1に示す拡散配光光学系10に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、拡散配光光学系10から出射された光を投影したときの光源像を
図9に示す。なお、
図9は、
図1に示す拡散配光光学系10により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンPを示す光度分布図である。
【0070】
また、比較例として、第2レンズ体11Bを設けなかった場合、すなわち拡散配光光学系10を構成する4つのレンズ体11の全てを第1レンズ体11Aで構成した場合の拡散配光光学系から出射された光を投影したときの光源像を
図10に示す。なお、
図10は、第2レンズ体11Bを設けなかった場合の拡散配光光学系により仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンPを示す光度分布図である。
【0071】
図9及び
図10に示すように、本実施形態の拡散配光光学系10は、第2レンズ体11Bを設けなかった場合の拡散配光光学系に比べて、車幅方向(Y軸方向)に広く拡散させた配光パターンPを形成することが可能である。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、車両用灯具20が4つの灯体セル30により構成されたものとなっているが、車両用灯具20を構成する灯体セル30(拡散配光光学系10を構成するレンズ体11)の数については特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、拡散配光光学系10が3つの第1レンズ体11Aと1つの第2レンズ体11Bとから構成される場合を例示しているが、このような構成に限らず、第2レンズ体11Bを複数設けた構成としてもよい。この場合、車幅方向(Y軸方向)の最も外側(+Y軸側)に位置するレンズ体11から内側に向かって順に第2レンズ体11Bを配置することが好ましい。これにより、車幅方向(Y軸方向)の外側(+Y軸側)に向かって効率良く拡散配光させることができる。