特許第6595888号(P6595888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6595888ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595888
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/08 20060101AFI20191010BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   E02D5/08
   E02D5/20 101
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-232102(P2015-232102)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-96066(P2017-96066A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(73)【特許権者】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】西青木 光則
(72)【発明者】
【氏名】平川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】谷一 彰彦
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−066215(JP,A)
【文献】 特開平03−033318(JP,A)
【文献】 特開2010−084385(JP,A)
【文献】 特開2009−221803(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0117826(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/08
E02D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソイルミキシングウォールを構成する芯材であるH型鋼の2つのフランジにおける、ウェブを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板が取り付けられ、一方の半割鋼矢板のセクションに別途の鋼矢板のセクションが噛み合っている、ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体。
【請求項2】
他方の半割鋼矢板のセクションは別途の鋼矢板のセクションと噛み合うことなく、ソイルミキシングウォールを構成するソイルセメント内に埋設されている請求項1に記載のソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルミキシングウォールと鋼矢板からなる異種土留め壁の接続部における接続構造体関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソイルミキシングウォール(SMW:Soil Mixing Wall)は、遮水性土留め壁や耐土圧構造物、止水構造物などとして施工されている。
【0003】
たとえば、ソイルミキシングウォールのみで土留め壁を施工できない箇所等においては、ソイルミキシングウォールと鋼矢板(SP:Steel Sheet Pail)を組み合わせた、異種土留め壁が施工される場合がある。
【0004】
具体的には、ソイルミキシングウォールを構成する芯材であるH型鋼に対して鋼矢板を取り付けておき、地盤をオーガーで削孔しながら地盤内にセメントスラリーを吐出し、原地盤とセメントスラリーを混練させて混練土を造成後、鋼矢板が取り付けられたH型鋼を混練土内に吊り下し、建て込むことにより、ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体が施工される。
【0005】
鋼矢板が取り付けられたH型鋼が芯材として埋設されたエレメントの一方側には複数のエレメントがラップされた状態でソイルミキシングウォールが造成され、他方側には、H型鋼に取り付けられた鋼矢板のセクションに隣接する鋼矢板のセクションが接続され、当該隣接する鋼矢板にさらに他の鋼矢板が接続されて、ソイルミキシングウォールと鋼矢板からなる異種土留め壁が施工される。
【0006】
ところで、H型鋼に対する鋼矢板の取り付け形態としては、鋼矢板のウェブにH型鋼の一方のフランジが取り付けられた形態や、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された半割鋼矢板がH型鋼の一方のフランジに取り付けられた形態など、多様な形態がある。なお、特許文献1には、鋼矢板のウェブにH型鋼の一方のフランジが取り付けられた組合せ鋼矢板が開示されている。
【0007】
このように多様な組み付け形態の鋼矢板が取り付けられたH型鋼を混練土に建て込むに際し、鋼矢板が取り付けられたH型鋼の建て込み時のバランスを取るのが難しく、そのために鉛直精度が悪くなり易く、建て込みに手間と時間を要するといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5413541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で開示される鋼矢板が取り付けられたH型鋼をはじめ、従来の施工にて適用されている鋼矢板が取り付けられたH型鋼は、混練土内への建て込みの際にバランスが悪く、鉛直精度を確保するのが難しく、既述するように建て込みに手間と時間を要している。
【0010】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、鋼矢板が取り付けられたH型鋼の建て込みの際のバランスが取り易く、したがって高い鉛直精度を保証することができ、効率的な建て込みを実施することが可能な鋼矢板が取り付けられたH型鋼を具備する異種鋼材ユニット芯材とするソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明によるソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体は、ソイルミキシングウォールを構成する芯材であるH型鋼の2つのフランジにおける、ウェブを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板が取り付けられ、一方の半割鋼矢板のセクションに別途の鋼矢板のセクションが噛み合っているものである。
【0012】
本発明のソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体は、ソイルミキシングウォールの芯材であるH型鋼の2つのフランジにおける、ウェブを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板が取り付けられて構成された異種鋼材ユニットを芯材としている点に特徴を有するものである。
【0013】
H型鋼のウェブを挟んだ対角位置に2つの半割鋼矢板が取り付けられていることにより、これを吊り上げた際に左右に傾斜する等のアンバランスが解消され、バランスが取れて鉛直精度の高い状態でエレメントを構成する断面円形の原地盤−セメントスラリー混合攪拌領域(混練土)に対し、2つの半割鋼矢板が取り付けられているH型鋼を建て込むことが可能になる。
【0014】
断面円形の混合土にH型鋼が建て込まれると、2つの半割鋼矢板もたとえば同じ混練土内に埋設される。
【0015】
このエレメントのたとえば左方向には相互にラップしながら造成される別途のエレメントがあり、右方向には鋼矢板の建て込みが実施される形態においては、H型鋼に取り付けられた右側の半割鋼矢板のセクション(継手)に対し、別途の鋼矢板のセクションを噛み合わせることで、ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体が構成される。
【0016】
なお、上記の形態においては、左側の半割鋼矢板のセクションには別途の鋼矢板は接続されない。すなわち、左側には別途のエレメント(SMW)が造成されることより、別途の鋼矢板の接続は不要である。
【0017】
すなわち、上記の形態においては、左側の半割鋼矢板は、あくまでも2つの半割鋼矢板が取り付けられているH型鋼の建て込み時のバランスを確保するためのいわゆる捨て部材となっている。
【0018】
このように、鋼矢板が取り付けられているH型鋼の建て込み時のバランスを確保するために、捨て部材をH型鋼に取り付けておくという技術思想は従来にはなく、斬新な技術思想と言える。
【0019】
ここで、前記H型鋼と前記半割鋼矢板がボルト接続されているのが好ましい。
【0020】
H型鋼と半割鋼矢板の接続方法としては、溶接接続やボルト接続などが挙げられる。このうち、溶接接続は接続箇所の止水性を良好にする一方で、施工に時間を要してしまう。
【0021】
本発明の接続構造体では、H型鋼のフランジと半割鋼矢板の接続箇所は混練土内に存在することから、H型鋼のフランジと半割鋼矢板の接続箇所に止水性が保証されていない場合でも、接続構造体としての止水性は十分に保障される。
【0022】
上記する止水性が不要であることを前提とすれば、ボルト接続は溶接に比して施工性が良好であることより、H型鋼と半割鋼矢板の接続はボルト接続が好ましい。
【0023】
また、本発明はソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体の芯材となる異種鋼材ユニットにも及ぶものであり、この異種鋼材ユニットは、H型鋼の2つのフランジにおける、ウェブを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板が取り付けられているものである。
【0024】
既述するように、本発明の異種鋼材ユニットによれば、H型鋼のウェブを挟んだ対角位置に2つの半割鋼矢板が取り付けられていることにより、これを吊り上げた際に左右に傾斜する等のアンバランスが解消され、バランスが取れて鉛直精度の高い状態で異種鋼材ユニットを建て込むことが可能になる。
【0025】
また、少なくとも一方の半割鋼矢板の有するセクションにベントナイトからなる防護体が間詰めされているのが好ましい。
【0026】
本実施の形態では、2つの半割鋼矢板が取り付けられているH型鋼の建て込みに際して半割鋼矢板のセクションを防護するべく、セクションにはベントナイト(粘土)が防護体として間詰めされている。なお、防護体にて防護するセクションは、別途の鋼矢板と接続される一方の半割鋼矢板のみでよいが、双方の半割鋼矢板のセクションに防護体を設けることを排除するものではない。
【0027】
ここで、間詰め材として発泡スチロールも使用可能ではあるが、セクションに挿入可能な形状および寸法に加工する必要があることから、単にセクションに流し込むだけで間詰めできるベントナイトを使用するのがよく、ベントナイトからなる防護体を適用する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体よれば、ソイルミキシングウォールの芯材であるH型鋼の2つのフランジにおける、ウェブを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板が取り付けられている異種鋼材ユニットを芯材として適用したことにより、混練土内への建て込みの際にバランスが取り易く、鉛直精度の高い状態で建て込むことができる。そのため、芯材の鉛直精度の高い接続構造体を効率的に施工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の接続構造体を構成する、本発明の異種鋼材ユニットの実施の形態1を示した斜視図である。
図2】本発明の異種鋼材ユニットの実施の形態2を示した斜視図である。
図3】本発明の接続構造体を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の異種鋼材ユニットの実施の形態1,2とソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体の実施の形態を説明する。
【0031】
(異種鋼材ユニットの実施の形態1,2、および、ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体の実施の形態)
図1は本発明の接続構造体を構成する、本発明の異種鋼材ユニットの実施の形態1を示した斜視図であり、図2は本発明の異種鋼材ユニットの実施の形態2を示した斜視図である。また、図3は本発明の接続構造体を示した平面図である。
【0032】
まず、図1を参照して、異種鋼材ユニットの実施の形態1を説明する。図1で示す異種鋼材ユニット10は、ウェブ1a、2つのフランジ1bから構成されるH型鋼1の各フランジ1bにおける、ウェブ1aを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板2が取り付けられてその全体が大略構成されている。
【0033】
フランジ1bに対する半割鋼矢板2の取り付けは、図示するように数mピッチのボルト3によるボルト接続にておこなわれる。
【0034】
図示するH型鋼1のように、ソイルミキシングウォールの芯材として適用されるH型鋼1は一般に長尺であることから、H型鋼1に半割鋼矢板2を溶接接続する場合に比して、ボルト接続による場合は接続効率が極めて高くなる。
【0035】
フランジ1bに半割鋼矢板2がボルト接続された状態において、半割鋼矢板2のセクション2aはフランジ1bの外側に張り出した位置にあり、不図示の他の鋼矢板のセクションと接続可能である。
【0036】
図示する異種鋼材ユニット10のように、2つの同形で同寸法の半割鋼矢板2がH型鋼1の各フランジ1bにおける、ウェブ1aを挟んだ対角位置に取り付けられていること、言い換えれば、H型鋼1の軸心Lに対して点対象の位置にあることにより、H型鋼1が不図示のクレーン等で吊り上げられた際にH型鋼1はアンバランスに傾斜することなく、鉛直姿勢を安定的に保持することが可能になる。
【0037】
一方、図2で示す異種鋼材ユニット10Aは、半割鋼矢板2のセクション2aにベントナイトからなる防護体7が間詰めされ、この防護体7でセクション2aが防護されたものである。
【0038】
セクション2aの間詰め方法(防護方法)としては、定型の発泡スチロールを詰め込む方法なども考えられるが、定型部材はセクション2aの寸法および形状に応じた部材を用意する必要があり、セクション2aへの挿入にも手間がかかることから、図示するようにベントナイトを間詰めすることで防護体7を形成するのがよい。
【0039】
次に、図3を参照して、本発明のソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体について説明する。
【0040】
図示する接続構造体100は、断面円形の原地盤−セメントスラリー混合攪拌領域(混練土5)内に図1で示すH型鋼1に2つの半割鋼矢板2が取り付けられてなる異種鋼材ユニット10が芯材として埋設されたソイルミキシングウォール6(のエレメント)と、2つの半割鋼矢板2のうちの一方の半割鋼矢板2(図示例では右側の半割鋼矢板2)のセクション2aに別途の鋼矢板4のセクション4aが噛み合うことでその全体が構成されている。
【0041】
接続構造体100を構成するエレメントの左側には別途のエレメント(混練土5内にH型鋼1が埋設されたもの)が相互にラップした姿勢で造成されており、この別途のエレメントが左側に所定数造成されることで所定延長のソイルミキシングウォールが形成される。
【0042】
一方、接続構造体100を構成するH型鋼1に接続された半割鋼矢板2のセクション2aに噛み合っている別途の鋼矢板4には、さらに別途の鋼矢板4が接続され、この別途の鋼矢板4も右側に所定数設置されることで所定延長の鋼矢板壁が形成される。
【0043】
接続構造体100において、H型鋼1にボルト固定されている2つの半割鋼矢板2は混練土5内に収容されている。そのため、H型鋼1と半割鋼矢板2の固定が溶接でなく、ボルト3によるものであっても、この固定部における止水性は混練土5にて保障される。
【0044】
また、図3から明らかなように、異種鋼材ユニット10を構成する2つの半割鋼矢板2のうち、隣接するソイルミキシングウォール6が造成される側(図示例では左側)の半割鋼矢板2のセクション2aには別途の鋼矢板は接続されない。
【0045】
すなわち、左側の半割鋼矢板2はあくまでも2つの半割鋼矢板2が取り付けられているH型鋼1の建て込み時のバランスを確保するためのいわゆる捨て部材である。
【0046】
このように、図示するソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体100によれば、H型鋼1の2つのフランジ1bにおける、ウェブ1aを挟んだ対角位置に対して、鋼矢板をその長手方向に半割りして形成された2つの半割鋼矢板2が取り付けられてなる異種鋼材ユニット10を芯材として適用したことにより、混練土5内への建て込みの際にバランスが取り易く、鉛直精度の高い状態で建て込むことが可能になる。
【0047】
そのため、芯材(異種鋼材ユニット10)の鉛直精度の高い接続構造体100を効率的に施工することができる。
【0048】
そして、芯材の鉛直精度が高いことに起因して、半割鋼矢板2と別途の鋼矢板4のセクション2a,4aを介した接続も容易となり、鉛直精度の高いソイルミキシングウォール6と鋼矢板4からなる異種土留め壁を施工することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…H型鋼(芯材)、1a…ウェブ、1b…フランジ、2…半割鋼矢板、2a…セクション、3…ボルト、4…鋼矢板、4a…セクション、5…混練土、6…ソイルミキシングウォール、7…防護体、10,10A…異種鋼材ユニット、100…接続構造体(ソイルミキシングウォールと鋼矢板の接続構造体)
図1
図2
図3