(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物外壁において屋外側には外壁面材を有してなる外壁部が設けられ、前記外壁部よりも屋内側には内壁面材とその裏面側に設けられた下地フレームとを有してなる内壁部が設けられ、
前記内壁部の上方には、当該内壁部の幅方向に沿って延びる上梁が設けられ、
前記上梁は、上下に延びるウェブとウェブの上下両端部に設けられた上フランジ及び下フランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を屋内側に向けて配置されている建物に適用され、
前記外壁部と前記内壁部との間に設けられ、上端部が前記上梁の下面に当接した状態で配置された壁内断熱材と、
前記上梁の前記溝部に配設された梁内断熱材とを備える建物の断熱構造において、
前記梁内断熱材は、前記溝部の外に延出した延出部を有しており、
前記延出部は、前記下フランジの屋内側を経由して前記上梁よりも下方へ延びているとともに、その一部が前記内壁部の上端部と前記上梁の下面との間を塞ぐ第1塞ぎ部となっており、
前記第1塞ぎ部は、前記内壁部の上端部と前記上梁の下面との間に入り込んでそれら両者間を塞いでいるとともに、その屋外側の端部が前記壁内断熱材に接触しており、
前記壁内断熱材は、前記内壁部に対して屋外側に離間した状態で配設され、
前記延出部は、前記内壁部と前記壁内断熱材との間に上方から入り込みそれら両者間を塞ぐ第2塞ぎ部をさらに有していることを特徴とする建物の断熱構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図5の構成では、壁内断熱材78が下地フレーム75(ひいては内壁部73)に対して屋外側に離間して配置されているため、壁内断熱材78と内壁部73との間の空間から、下地フレーム75の上端部と上梁77の下面との間を通じて天井裏空間81へ向けた空気の流れ(気流)が生じるおそれがある。その場合、外壁部分71において気密性能の低下が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、かかる気流の発生を防止するために、
図5に示すように、内壁部73と壁内断熱材78とに跨がる状態で気密シート82を設けることが考えられる。気密シート82は、例えば内壁フレーム75の上端面に貼り付けられるとともに、壁内断熱材78の屋内側面に貼り付けられる。
【0007】
しかしながら、この場合、気密シート82の継ぎ目に隙間ができる等して、天井裏へ向けた気流の発生を防止することができない場合が想定される。また、気密シート82の継ぎ目に隙間ができないよう同シート82を貼り付けるのには大きな手間がかかることが考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的容易に気流の発生を防止することができる建物の断熱構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の断熱構造は、建物外壁において屋外側には外壁面材を有してなる外壁部が設けられ、前記外壁部よりも屋内側には内壁面材とその裏面側に設けられた下地フレームとを有してなる内壁部が設けられ、前記内壁部の上方には、当該内壁部の幅方向に沿って延びる上梁が設けられ、前記上梁は、上下に延びるウェブとウェブの上下両端部に設けられた上フランジ及び下フランジとを有する形鋼からなり、前記ウェブと前記各フランジとにより囲まれた溝部を屋内側に向けて配置されている建物に適用され、前記外壁部と前記内壁部との間に設けられ、上端部が前記上梁の下面に当接した状態で配置された壁内断熱材と、前記上梁の前記溝部に配設された梁内断熱材とを備える建物の断熱構造において、前記梁内断熱材は、前記溝部の外に延出した延出部を有しており、前記延出部は、前記下フランジの屋内側を経由して前記上梁よりも下方へ延びているとともに、その一部が前記内壁部の上端部と前記上梁の下面との間を塞ぐ第1塞ぎ部となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、上梁の溝部に配設された梁内断熱材のうち溝部の外へと延出した延出部が上梁よりも下方へ延びており、その延出部の一部(第1塞ぎ部)により内壁部の上端部と上梁の下面との間の隙間が塞がれている。この場合、内壁部と壁内断熱材との間から上記の隙間を通じて天井裏へ空気が流れるのを防止することができる。つまり、この場合、天井裏へ向けた気流の発生を防止することができる。また、施工の際は梁内断熱材の延出部により内壁部と上梁との隙間を塞ぐといった簡易な作業を行うだけでよいため、気密シートを用いる場合と比べて、容易に気流の発生を防止することができる。
【0011】
また、梁内断熱材の一部を用いて気流の発生を防止しているため、気密シート等の気密部材を設ける場合と異なり、部品点数の増大を伴うことなく、上記の効果を得ることができる。
【0012】
さらに、延出部が上梁の下フランジの屋内側を経由して延びているため、延出部により下フランジを屋内側から覆うことができる。そのため、下フランジが熱橋となるのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることもできる。
【0013】
第2の発明の建物の断熱構造は、第1の発明において、前記第1塞ぎ部は、前記内壁部の上端部と前記上梁の下面との間に入り込んでそれら両者間を塞いでいるとともに、その屋外側の端部が前記壁内断熱材に接触していることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、梁内断熱材の第1塞ぎ部が内壁部の上端部と上梁の下面との間に入り込んだ状態でそれら両者間を塞いでいるため、気流の発生をより確実に防止することができる。また、第1塞ぎ部がその屋外側の端部で壁内断熱材に接触しているため、梁内断熱材と壁内断熱材とにより連続した断熱ラインを形成することができる。これにより、断熱性能の向上を図ることができる。
【0015】
第3の発明の建物の断熱構造は、第2の発明において、前記壁内断熱材は、前記内壁部に対して屋外側に離間した状態で配設され、前記延出部は、前記内壁部と前記壁内断熱材との間に上方から入り込みそれら両者間を塞ぐ第2塞ぎ部をさらに有していることを特徴とする。
【0016】
壁内断熱材が内壁部に対して屋外側に離間した状態で配設されている構成では、内壁部と壁内断熱材との間から天井裏へ向けた空気の流れ(気流)が生じ易いと考えられる。そこで本発明では、かかる構成において、延出部の一部(第2塞ぎ部)を内壁部と壁内断熱材との間に上方から入り込ませ、それによりそれら両者間を塞ぐようにしている。これにより、壁内断熱材と内壁部とが離間配置された構成にあっても、気流の発生を好適に防止することができる。
【0017】
第4の発明の建物の断熱構造は、第3の発明において、前記下地フレームは、縦桟と横桟とを有して矩形枠状に形成され、前記第1塞ぎ部は、前記下地フレームのフレーム上端部に配置された上端横桟と前記上梁との間を塞ぐように設けられ、前記第2塞ぎ部は、前記上端横桟と前記壁内断熱材との間を塞ぐように設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、梁内断熱材(延出部)の第2塞ぎ部が下地フレームの上端横桟と壁内断熱材との間に上方から入り込みそれら両者間を塞いでいるため、上記第3の発明の効果を得ることができる。また、かかる構成では、少なくとも上端横桟の周囲に延出部(第1塞ぎ部及び第2塞ぎ部)を配設すれば済むため、延出部の長さ(延出長さ)を比較的短くすることができる。そのため、延出部の配設作業をし易くすることができる。
【0019】
第5の発明の建物の断熱構造は、第3又は第4の発明において、前記建物外壁において前記外壁部と前記内壁部との間には耐力壁が設けられ、前記耐力壁は、前記建物外壁の幅方向に離間配置された一対の縦材と、それら縦材同士を連結する補強用の線材とを有しており、前記線材は前記内壁部と前記壁内断熱材との間に配置されており、それら前記内壁部及び前記壁内断熱材の間が前記第2塞ぎ部により塞がれていることを特徴とする。
【0020】
建物外壁の内部には耐力壁が設けられる場合がある。耐力壁が設けられている外壁部分では、耐力壁を構成する補強用の線材が内壁部と壁内断熱材との間に配設される場合が考えられる。この場合、その線材により内壁部と壁内断熱材とが屋内外に隔てて配置されることとなる。そこで本発明では、そのような構成に第3の発明を適用している。この場合、建物外壁の内部に耐力壁が設けられる構成にあっても、気流の発生を好適に防止することができる。
【0021】
なお、耐力壁としては、例えば補強用の線材としてラチスを用いたラチス柱が挙げられる。
【0022】
第6の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記梁内断熱材は繊維系断熱材により形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、梁内断熱材が比較的柔軟性を有する繊維系断熱材により形成されているため、梁内断熱材の延出部(詳しくは第1塞ぎ部)を内壁部と上梁との間に入り込ませそれら両者間を塞ぐにあたって作業がし易い。また、第1塞ぎ部を内壁部の上端部と上梁の下面との間で圧縮状態で挟み込むようにすれば、気流の発生をより確実に防止することが可能となる。
【0024】
第7の発明の建物の断熱構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記外壁面材は、前記壁内断熱材及び前記上梁の屋外側に跨がって上下に延びており、前記壁内断熱材及び前記上梁と前記外壁面材との間には屋外に通じる通気層が形成されており、前記上梁の前記ウェブには、厚み方向に貫通する梁貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0025】
上梁には、そのウェブに配線等を通すための梁貫通孔が形成されている場合がある。この場合、上梁の屋外側に形成された通気層と、上梁の屋内側に形成されている天井裏空間とが梁貫通孔を介して連通状態となる。そのため、例えば内壁部と壁内断熱材との間の空気が天井裏空間を経由して通気層側へと流れる気流が生じ易くなると考えられる。この点本発明では、かかる構成に第1の発明を適用しているため、当該構成において上記の気流が生じるのを好適に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1は外壁の構成を示す縦断面図である。
図2は外壁の構成を示す横断面図である。なお、
図1は
図2のA−A線断面図に相当する。
【0028】
図1に示すように、建物10は、基礎11上に形成された一階部分12と、一階部分12の上方に形成された二階部分13とを備える。一階部分12には居室15が設けられ、二階部分13には居室16が設けられている。
【0029】
一階部分12の床部には、床下地材18,19が設けられている。これら床下地材18,19のうち、床下地材18は基礎11の上に設けられたALC床からなり、床下地材19は床下地材18の上に設けられたパーティクルボードからなる。また、床下地材19の上には、フローリング材等からなる床仕上げ材(図示略)が敷設されている。
【0030】
図1及び
図2に示すように、一階部分12には、居室15(ひいては屋内)を屋外と仕切る外壁21(建物外壁に相当)が設けられている。外壁21は、その屋外側に外壁部22を備え、その屋内側に内壁部23を備える。外壁部22は、屋外面を形成する外壁面材25と、その裏面側(屋内面側)に固定された外壁フレーム26とを備える。外壁面材25は、窯業系サイディングよりなる。外壁フレーム26は、断面コ字状の軽量鉄骨材が矩形枠状に組み合わせられてなる。
【0031】
内壁部23は、内壁面材28と、内壁面材28の裏面側(屋外面側)に固定された内壁フレーム29とを備える。内壁面材28は、石膏ボードよりなる。内壁面材28の表面(屋内側面)には、居室15の壁面を仕上げるクロス等の壁仕上げ材(図示略)が貼り付けられている。なお、内壁フレーム29が下地フレームに相当する。
【0032】
内壁フレーム29は、上下一対のランナ31,32と、それら各ランナ31,32を上下に連結する左右一対のスタッド33とを有している。この場合、内壁フレーム29は、各ランナ31,32と各スタッド33とにより矩形枠状に形成されている。なお、左右一対のスタッド33の間に、さらに両ランナ31,32を連結するスタッド33を設けるようにしてもよい。また、この場合、各ランナ31,32がそれぞれ横桟に相当し、スタッド33が縦桟に相当する。
【0033】
上下の各ランナ31,32はいずれも軽量溝形鋼よりなり、互いの溝部を上下に向き合わせた状態で配置されている。これら各ランナ31,32のうち下側ランナ32については床下地材19上にビス等で固定されている。また、スタッド33は軽量角形鋼管よりなる。スタッド33は、その上端部が上側ランナ31の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ31にビス等で固定され、その下端部が下側ランナ32の溝部に挿し入れられた状態で同ランナ32にビス等で固定されている。
【0034】
内壁フレーム29は、外壁21の幅方向に横並びで複数設けられている(
図2参照)。それら内壁フレーム29の屋内側には内壁面材28が横並びで複数設けられている。各内壁面材28は、内壁フレーム29にビス等で取り付けられている。このように、各内壁面材28と各内壁フレーム29とを有して内壁部23が形成されている。
【0035】
外壁部22と内壁部23との間には、板状(ボード状)の壁内断熱材35が設けられている。壁内断熱材35は、発泡系断熱材(硬質系断熱材)としての硬質ウレタンフォームにより形成されている。壁内断熱材35は、その下端面を床下地材19の上面に載置した状態で設けられ、その屋外側面を外壁部22の外壁フレーム26に当接させた状態で配置されている。また、壁内断熱材35は、外壁21の幅方向に横並びで複数設けられている。
【0036】
内壁部23(詳しくは内壁フレーム29の上方)及び壁内断熱材35の上方には上梁36が設けられている。上梁36は、内壁部23の幅方向に沿って延びており、内壁フレーム29の上端部に対して上方に離間して配置されている。したがって、内壁フレーム29の上端部と上梁36の下面との間には所定の隙間37が形成されている。その一方で、壁内断熱材35は、その上端部を上梁36の下面に当接させた状態で配設されている。
【0037】
上梁36は、H形鋼からなり、上下に延びるウェブ36aと、ウェブ36aの上下両端部に設けられた下フランジ36b及び上フランジ36cとを有する。上梁36のウェブ36aには、厚み方向に貫通する梁貫通孔48が形成されている。梁貫通孔48は、上梁36の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。図示は省略するが、この梁貫通孔48には、配線や配管等が挿通されている。
【0038】
上梁36には、ウェブ36aと各フランジ36b,36cとにより囲まれた一対の溝部38,39が形成されている。これらの溝部38,39はウェブ36aを挟んだ両側にそれぞれ形成されている。各溝部38,39のうち、溝部38が屋外側に向けて開放され、溝部39が屋内側に向けて開放されている。
【0039】
上梁36の各溝部38,39にはそれぞれ梁内断熱材41,42が設けられている。各梁内断熱材41,42はいずれも繊維系断熱材としてのロックウールにより形成されている。各梁内断熱材41,42は上梁36の長手方向に延びる長尺状に形成され、それぞれ溝部38,39を埋めるように配設されている。
【0040】
各梁内断熱材41,42のうち、屋外側の溝部38に配設された梁内断熱材41は壁内断熱材35の真上に配置されている。この場合、梁内断熱材41は上梁36の下フランジ36bを挟んで壁内断熱材35と上下に隣接している。また、上梁36の溝部38,39に配設された各梁内断熱材41,42はウェブ36aを挟んで左右に隣接している。したがって、この場合、壁内断熱材35と各梁内断熱材41,42(さらには後述する梁内断熱材65)とは上梁36を介して互いに連続しており、これにより、これら各断熱材35,41、42,65により連続した断熱層45が形成されている。
【0041】
壁内断熱材35及び梁内断熱材41(ひいては断熱層45)は外壁部22の外壁フレーム26に屋内側から当接した状態で配置されている。この場合、断熱層45と外壁面材25とは外壁フレーム26によって屋内外方向に隔てられており、それにより、それら両者25,45の間には上下に延びる通気層46が形成されている。通気層46は、外壁フレーム26の枠内空間により形成され、その下端において屋外に通じている。なお、外壁フレーム26を構成する横材には通気層46を上下に連続(連通)させるべく複数の孔部が形成されている。
【0042】
一階部分12の天井部には天井面材43が設けられている。天井面材43は石膏ボードよりなり、その端部を内壁面材28の屋内面(詳しくは内壁仕上げ材の屋内面)に隣接させた状態で配置されている。また、天井面材43の下面には、居室15の天井面を仕上げる天井クロス等の天井仕上げ材(図示略)が貼り付けられている。なお、天井面材43の上方には天井裏空間44が形成されている。
【0043】
二階部分13の床部には、一階部分12の床部と同様、床下地材18,19が設けられている。床下地材18は上梁36の上に設けられ、その床下地材18の上に床下地材19が設けられている。また、床下地材19の上には、フローリング材等からなる床仕上げ材(図示略)が敷設されている。
【0044】
二階部分13には、居室16を屋外と仕切る外壁51が設けられている。外壁51は、一階部分12の外壁21と上下に連続して設けられている。外壁51は、その屋外側に外壁部52を有し、その屋内側に内壁部53を有している。また、それら外壁部52及び内壁部53の間には板状の壁内断熱材54が設けられている。
【0045】
ところで、一階部分12の外壁21には、その一部に耐力壁としてのラチス柱56が設けられている。以下、このラチス柱56周辺における外壁21の構成について
図2に加え
図3及び
図4を用いながら説明する。
図3は、ラチス柱56周辺における外壁21の構成を示す縦断面図であり、
図2のB−B線断面図に相当する。また、
図4は
図2のC−C線断面図に相当する。
【0046】
図2乃至
図4に示すように、外壁21において外壁部22と内壁部23との間にはラチス柱56が設けられている。ラチス柱56は、外壁21の幅方向(壁幅方向)に離間して配置された一対の縦材57,58と、それら各縦材57,58の間をつなぐラチス59とを有している。各縦材57,58は角形鋼からなる。ラチス59は、丸鋼材等の線材がジグザグ状に曲げ加工されることで形成されている。ラチス59は、各縦材57,58の間に配設され、その配設状態で壁幅方向の一方側が縦材57に金属製スペーサ61を介して固定され、他方側が縦材58にスペーサ61を介さず直接固定されている。なお、ラチス59が補強用の線材に相当する。
【0047】
ここで、外壁21の内部にラチス柱56が設けられている外壁部分(以下、ラチス壁部21aという)と、ラチス柱56が設けられていない外壁部分(以下、一般壁部21bという)とでは、外壁21の内部構成が互いに相違している。そこで以下では、その相違点について説明する。なお、
図1では一般壁部21bにおける外壁の構成が示されており、
図3ではラチス壁部21aにおける外壁の構成が示されている。また、以下の説明では便宜上、一般壁部21bを構成する部材の符号にbを付し、ラチス壁部21aを構成する部材の符号にaを付す。
【0048】
まず、一般壁部21bについて説明すると、一般壁部21bでは、外壁部22と内壁部23との間に配設された壁内断熱材35(35b)が外壁部22の外壁フレーム26に当接しているだけでなく、内壁部23の内壁フレーム29(29b)にも当接した状態で配置されている(
図1も参照)。この場合、壁内断熱材35bと内壁フレーム29bとの間には屋内外方向の隙間が存在しない状態となっている。これにより、内壁フレーム29bの枠内では空気が滞留して空気層が形成され、それにより一般壁部21bにおける断熱性能の向上が図られている。また、壁内断熱材35bは、その幅方向の端面がラチス柱56の縦材57の側面に当接している。
【0049】
一方、ラチス壁部21aでは、ラチス柱56のラチス59が内壁フレーム29(29a)と壁内断熱材35(35a)との間に配設されている(
図3を参照)。この場合、内壁フレーム29aと壁内断熱材35aとがラチス59を隔てて屋内外方向に離間配置されている。内壁フレーム29aは、その厚み(屋内外方向の長さ)が一般壁部21bの内壁フレーム29bの厚みよりも小さくされており、ラチス柱56の各縦材57,58の間に配設されている。また、壁内断熱材35aは、その厚みが一般壁部21bの壁内断熱材35bの厚みよりも小さくされており、ラチス柱56の屋外側で各縦材57,58の屋外側面に跨がって配設されている。壁内断熱材35aは、その幅方向の端面が一般壁部21bの壁内断熱材35bの端面に当接しており、これにより、当該壁内断熱材35bと連続した状態で設けられている。
【0050】
上記のように、ラチス壁部21aでは、内壁フレーム29aと壁内断熱材35aとが屋内外方向に離間して配置されているため、内壁フレーム29aの上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの間には屋内外方向の隙間63が生じている。この場合、内壁部23(内壁面材28)と壁内断熱材35aとの間の空間から上記隙間63(及び隙間37)を通じて天井裏空間44へ空気の流れ(気流)が生じることが想定され、そうなると、ラチス壁部21aにおいて断熱性能の低下を招くおそれがある。そこで本実施形態では、この点に鑑みて、かかる気流の発生を抑制すべく気密構造を設けている。以下においては、かかる気密構造について説明する。
【0051】
図1及び
図3に示すように、上梁36の溝部38では、梁内断熱材41が一般壁部21bとラチス壁部21aとに跨がって連続して設けられているのに対し、上梁36の溝部39では、一般壁部21bとラチス壁部21aとで異なる梁内断熱材42,65が配設されている。すなわち、上梁36の溝部39では、一般壁部21bにおいては上述した梁内断熱材42が配設され、ラチス壁部21aにおいては梁内断熱材65が配設されている。
【0052】
梁内断熱材65は、繊維系断熱材としてのロックウールにより形成されている。梁内断熱材65は、上梁36の長手方向に延びる長尺状に形成され、ラチス壁部21aの壁幅方向において各縦材57,58の間の範囲に設けられている。なお、この梁内断熱材65が、特許請求の範囲に記載された「梁内断熱材」に相当する。
【0053】
梁内断熱材65は、その上下寸法が溝部39の上下寸法よりも大きくされている。梁内断熱材65は、その上部が溝部39に配設されて梁内断熱部66となっており、その下部が溝部39の外に延出して梁外断熱部67となっている。なお、梁外断熱部67が延出部に相当する。また、梁内断熱部66は、溝部39を埋めるようにして配設されている。
【0054】
梁外断熱部67は、梁内断熱部66と連続し上梁36の下フランジ36bの屋内側を通って上下に延びる第1部分67aと、第1部分67aの下端部から内壁フレーム29aの上端部(詳しくは上側ランナ31aの上面)と上梁36の下面との隙間37を通じて屋外側に延びる第2部分67bと、第2部分67bの屋外側端部から上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの隙間63を通じて下方に延びる第3部分67cとを有する。
【0055】
第2部分67bは、上側ランナ31aと上梁36との間で上下に圧縮された状態で挟み込まれている。これにより、上側ランナ31aと上梁36との間の隙間37が第2部分67bにより塞がれている。第3部分67cは、上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの間で屋内外方向に圧縮された状態で挟み込まれている。これにより、上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの間の隙間63が第3部分67cにより塞がれている。なお、この場合、第2部分67bが第1塞ぎ部に相当し、第3部分67cが第2塞ぎ部に相当する。また、上側ランナ31aが上端横桟に相当する。
【0056】
上記のように、ラチス壁部21aでは、上側ランナ31aと上梁36との間の隙間37が梁内断熱材65(梁外断熱部67)の第2部分67bにより塞がれているため、内壁フレーム29aと壁内断熱材35aとが離間配置された構成にあっても、内壁部23(内壁面材28)と壁内断熱材35aとの間の空間から上記の隙間37を通じて天井裏空間44に空気が流れるのを防止することができる。そのため、気密性能の確保を図ることができる。また、内壁部23と壁内断熱材35aとの間に空気を滞留させることができるため、それら両者23,35aの間に空気層を形成することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0057】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0058】
上梁36の溝部39に配設した梁内断熱材65の一部を溝部39の外へと延出させて梁外断熱部67とし、その梁外断熱部67の第2部分67bにより内壁フレーム29bの上端部(詳しくは上側ランナ31aの上面)と上梁36の下面との間の隙間37を塞ぐようにした。この場合、施工時には、第2部分67bを上側ランナ31aと上梁36との隙間37に入り込ませるといった比較的簡易な作業を行うだけでよいため、気密シートを用いる場合と比べて、容易に気流の発生を防止することができる。
【0059】
また、梁内断熱材65の一部を用いて気流の発生を防止しているため、気密シート等の気密部材を設ける場合と異なり、部品点数の増大を伴うことなく気密性能を確保することができる。
【0060】
また、梁外断熱部67の第1部分67aについては上梁36の下フランジ36bの屋内側(換言すると天井裏空間44側)を経由して下方に延びているため、その第1部分67aにより下フランジ36bを屋内側から覆うことができる。そのため、下フランジ36bが熱橋となるのを抑制することができ、断熱性能の向上を図ることができる。
【0061】
梁外断熱部67の第2部分67bを上側ランナ31aと上梁36との隙間37に入り込ませ、それにより当該隙間37を第2部分67bにより塞ぐようにした。この場合、気流の発生をより確実に防止することができる。
【0062】
また、第2部分67b(及び第3部分67c)についてはその屋外側の端部において壁内断熱材35aと接触させたため、梁内断熱材65と壁内断熱材35aとにより連続した断熱ラインを形成することができる。これにより、断熱性能の向上を図ることができる。
【0063】
外壁21内部にラチス柱56が設けられている関係で、ラチス柱56のラチス59が内壁フレーム29aと壁内断熱材35aとの間に配置されている上記実施形態の構成では、内壁フレーム29aと壁内断熱材35aとが屋内外方向に離間配置されるため、上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの間に隙間63が生じている。このため、その隙間63を通じて、内壁部23と壁内断熱材35aとの間から天井裏空間44へ向けた空気の流れ(気流)が生じ易いと考えられる。そこで、上記の実施形態では、梁外断熱部67に、上記隙間63に上方から入り込み当該隙間63を塞ぐ第3部分67cをさらに設けた。これにより、内壁部23と壁内断熱材35aとが離間配置されている構成にあっても、好適に気流の発生を防止することができる。
【0064】
梁内断熱材65を比較的柔軟性を有するロックウール(繊維系断熱材に相当)により形成したため、梁外断熱部67を上側ランナ31aと上梁36との隙間37や、上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの隙間63に入り込ませる作業、すなわちそれらの隙間37,63を塞ぐ作業を比較的容易に行うことが可能となる。また、梁外断熱部67の第2部分67bについては上側ランナ31aと上梁36との間で上下に圧縮した状態で配設し、第3部分67cについては上側ランナ31aと壁内断熱材35aとの間で屋内外方向に圧縮した状態で配設したため、気流の発生をより確実に防止することができる。
【0065】
上梁36のウェブ36aに梁貫通孔48が形成されている上記実施形態の構成では、その梁貫通孔48を通じて通気層46と天井裏空間44とが連通状態にあるため、例えば内壁部23と壁内断熱材35aとの間の空気が天井裏空間44を経由して通気層46側へ流れる気流が生じ易くなると考えられる。この点、上記の実施形態では、かかる構成に上述の気密構造を適用したため、上記の気流が生じるのを好適に防止することができる。
【0066】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0067】
(1)梁内断熱材65(詳しくは梁外断熱部67)の形態は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、上記実施形態では、梁内断熱材65の梁外断熱部67を、第1部分67a、第2部分67b及び第3部分67cを有して構成したが、これら各部67a〜67cのうち、例えば第3部分67cを不具備としてもよい。その場合にも、第2部分67bにより上側ランナ31aと上梁36との隙間37が塞がれているため、気流の発生を防止することができる。
【0068】
また、第3部分67cに加えて第2部分67bを不具備にしてもよい。その場合、第1部分67aの下端側により、上側ランナ31aと上梁36との隙間37を屋内側から塞ぐ(覆う)ようにすればよい。そのため、この場合においても気流の発生を防止することができる。また、この場合には、梁外断熱部67(第2部分67b)を上記の隙間37に入り込ませなくても済むため、当該隙間37を塞ぐ作業をし易くすることができる。
【0069】
(2)上記実施形態では、梁内断熱材65をロックウール(繊維系断熱材)により形成したが、グラスウール等他の繊維系断熱材により形成してもよい。また、梁内断熱材65を硬質ウレタンフォーム等の発泡系断熱材により形成してもよい。例えば、上記(1)で説明した梁外断熱部67において第2部分67bと第3部分67cとを不具備とした構成、つまり梁外断熱部67を第1部分67aのみにより構成した場合等には、梁内断熱材65を発泡系断熱材により形成することが可能となる。
【0070】
(3)上記実施形態では、外壁21内に耐力壁としてラチス柱56が配設されていたが、外壁21内には、他の耐力壁が配設される場合も考えられる。他の耐力壁としては、例えば各縦材57,58の間に筋交い(補強用の線材に相当)が配設されたものがある。この場合にも、その筋交いが内壁部23と壁内断熱材35との間に配置されればそれら両者23,35間に隙間が発生することになるため、上述の気密構造を適用することが可能である。
【0071】
(4)上記実施形態では、ラチス壁部21aに上述した気密構造すなわち梁内断熱材65を用いた気密構造を適用したが、かかる気密構造を一般壁部21bに適用してもよい。一般壁部21bでは、内壁部23(内壁フレーム29b)と壁内断熱材35bとが当接して配置されているため、それら両者29b,35b間に隙間が存在していないが、例えば壁内断熱材35bが経年劣化する等して両者29b,35b間に事後的に隙間が発生すじることも考えられる。そのため、この点を考慮して、一般壁部21bにも上述の気密構造を適用するようにしてもよい。