(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下流側ユニットの水平材には、その下部に同水平材を支持するサポート部材が一体的に設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した鋼製スリットダム。
前記鋼管フレーム部材が砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間に設置される場合に、前記上流側ユニットの上流側柱材が、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面よりも前方へせり出す構成で前記下流側ユニットに接合されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載した鋼製スリットダム。
前記上流側ユニットの上流側柱材は、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面と略平行となる角度で前記下流側ユニットに接合されていることを特徴とする、請求項6に記載した鋼製スリットダム。
前記鋼管フレーム部材が砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間に設置される場合に、前記砂防堰堤間に梁部材が架設され、当該梁部材の上流側前方部に前記上流側ユニットの上流側柱材の上端部が直接的又は緩衝材を介して間接的に当接する構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載した鋼製スリットダム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1〜3に係る鋼管フレーム部材は、流木等の流下物を効果的に捕捉できるものの、その上流側の柱材および下流側の柱材の下端部が、ともにコンクリート基礎に埋め込まれた構成で実施しているが故に、以下の点が懸念されていた。
【0006】
すなわち、最も衝撃を受けやすい上流側の柱材が流木等の衝突(直撃)により損傷を受けた場合、上流側の柱材を交換する際に前記コンクリート基礎の破砕作業、およびコンクリート基礎の再打設作業等を行う必要があり、手間とコストを要していた。
また、流木対策として、既設堰堤を改修して鋼製スリットダムを構築する場合、鋼製スリットダムを設置する領域に開削作業を施し、開削した既設堰堤の天端部に前記鋼管フレーム部材を設置する要領で作業を行う。しかし、開削した既設堰堤の天端部の河川方向の幅が、鋼管フレーム部材を安定した状態で立設するに足るコンクリート幅を備えていないことが多く、そのため、
図11の符号Hに示したように、既設堰堤の上流側に所定幅のコンクリートの腹付けを行う必要があった。よって、開削した既設堰堤の天端部のコンクリートの打設作業に加え、大掛かりな腹付けコンクリートの打設作業も別途必要になり、手間とコストを要していた。
【0007】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鋼管フレーム部材のうち最も損傷を受けやすい上流側の柱材を交換する際に、コンクリート基礎の破砕作業、およびコンクリート基礎の再打設作業等の各種作業を行う必要のない、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供することにある。
また、既設堰堤を改修して鋼製スリットダムを構築する場合に腹付けコンクリートを必要としない、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る鋼製スリットダムは、コンクリート基礎に立設する構成の鋼管フレーム部材を河川横断方向に間隔をあけて複数設置してなる鋼製スリットダムであって、
前記鋼管フレーム部材は、前記コンクリート基礎の上流側前方へ略水平に突出する水平材からなる下流側ユニットと、前記下流側ユニットの水平材の突出端部と接合する接合部材を下端部に備えた上流側柱材からなる上流側ユニットとで構成され、前記コンクリート
基礎に固定された下流側ユニットに上流側ユニットが脱着可能に接合されてなること
、
前記上流側ユニットの上端部の高さ位置が前記コンクリート基礎の上面の高さ位置よりも上方であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明に係る鋼製スリットダムは、コンクリート基礎に立設する構成の鋼管フレーム部材を河川横断方向に間隔をあけて複数設置してなる鋼製スリットダムであって、
前記鋼管フレーム部材は、前記コンクリート基礎の上流側前方へ略水平に突出する水平材と、同コンクリート基礎の上方へ突出する下流側柱材とを一体化してなる下流側ユニットと、前記下流側ユニットの水平材および下流側柱材の突出端部とそれぞれ接合する接合部材を備えた上流側柱材からなる上流側ユニットとで構成され、前記コンクリート基礎に固定された前記下流側ユニットに前記上流側ユニットが脱着可能に接合されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明に係る鋼製スリットダムは、前記請求項1に係る鋼管フレーム部材と前記請求項2に係る鋼管フレーム部材とが河川横断方向に混在して設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項2に記載した鋼製スリットダムにおいて、隣接する前記上流側ユニット及び/又は前記下流側ユニットの全部又は一部が横繋ぎ材で連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した鋼製スリットダムにおいて、前記下流側ユニットの水平材には、その下部に同水平材を支持するサポート部材が一体的に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載した鋼製スリットダムにおいて、前記鋼管フレーム部材が砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間に設置される場合に、前記上流側ユニットの上流側柱材が、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面よりも前方へせり出す構成で前記下流側ユニットに接合されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した鋼製スリットダムにおいて、前記上流側ユニットの上流側柱材は、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面と略平行となる角度で前記下流側ユニットに接合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載した発明は、請求項1に記載した鋼製スリットダムにおいて、前記鋼管フレーム部材が砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間に設置される場合に、前記砂防堰堤間に梁部材が架設され、当該梁部材の上流側前方部に前記上流側ユニットの上流側柱材の上端部が直接的又は緩衝材を介して間接的に当接する構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる鋼製スリットダムによれば、以下の作用効果を奏する。
<1>鋼管フレーム部材の上流側ユニットが、コンクリート基礎に固定されることなく下流側ユニットと脱着可能に接合して実施できる。
よって、鋼管フレーム部材のうち最も損傷を受けやすい上流側柱材(上流側ユニット)を交換する際に、コンクリート基礎の破砕作業、およびコンクリート基礎の再打設作業等の各種作業を行うことなく、接合状態を解除するだけで容易に交換することができるので、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供できる。
また、上流側柱材の下端部を、コンクリート基礎の前方まで伸張させて実施することができるので、コンクリート基礎、および上流側ユニットと下流側ユニットの接合部への流木衝突を回避できる等、コンクリート基礎および接合部の損傷を未然に防止することもできる。
<2>上流側ユニット(の下端部)をコンクリート基礎に固定する必要がないので、開削した既設堰堤の天端部の河川方向の幅が、従来の両脚部固定式の鋼管フレーム部材を安定した状態で立設するに足るコンクリート幅を備えていない場合であっても、腹付けコンクリートを設けることなく実施することができる(
図1と
図11とを対比して参照)。よって、腹付けコンクリートを設けるための工期、コスト(設置部位が満砂の場合は浚渫作業等の準備期間、コストを含む。)を削減できる等、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供できる。
<3>上流側ユニットの上流側柱材が、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面よりも前方へせり出す構成で、しかも、前記砂防堰堤の上流側側面と略平行となる角度で前記下流側ユニットに接合された構成で実施することができる。よって、開口部内に鋼製スリットダムを設けた場合と比し、大洪水時等に発生する流木等を、砂防堰堤の開口部(スリット領域)の前方で堰き止めることできるので、開口部内に流木が入り込むこと、さらには開口部内が流木等で閉塞されることを大幅に軽減できる等、良好なスクリーン効果を発揮できる。これに伴い、流木閉塞による上流域の湛水や越流も軽減できる。
また、流木を捕捉した後の除木作業は、砂防堰堤が邪魔になることなく、開口部の前方部で良好かつ容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、コンクリート基礎に立設する構成の鋼管フレーム部材を河川横断方向に間隔をあけて複数設置してなる鋼製スリットダムにおいて、前記鋼管フレーム部材の上流側に設ける上流側ユニットをコンクリート基礎に固定せず、コンクリート基礎に固定した下流側ユニットに対して脱着可能な構成で実施することにより、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを実現することを主たる特徴としている。
以下、本発明に係る鋼製スリットダムの実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1にかかる鋼製スリットダムは、
図1と
図2に示したように、コンクリート基礎11に立設する構成の鋼管フレーム部材10を河川横断方向に間隔をあけて複数(図示例では3体)設置してなる鋼製スリットダムである。
前記鋼管フレーム部材10は、前記コンクリート基礎11の上流側前方へ略水平に突出する水平材1aと、同コンクリート基礎11の上方へ突出する下流側柱材1bとを一体化してなる下流側ユニット1と、前記下流側ユニット1の水平材1aおよび下流側柱材1bの突出端部とそれぞれ接合する接合部材2b、2cを備えた上流側柱材2aからなる上流側ユニット2とで構成され、前記コンクリート基礎11に固定された前記下流側ユニット1に前記上流側ユニット2が脱着可能に接合されてなる。
ちなみに図中の符号3は、前記水平材1aと一体的に設けられ、同水平材1aを支持するサポート部材を示している。
【0020】
前記鋼製スリットダムは、本実施例では、既設の不透過型(コンクリート)砂防堰堤20を開削(切削)して形成したスリット領域21内に前記鋼管フレーム部材10を設置してなる構成で実施しているが、これに限定されない。例えば、山間地の河川に構築される新設の砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間のスリット領域内に前記鋼管フレーム部材10を設置してなる構成で実施することも勿論できるし、砂防堰堤がない山間地の河川(平場)に前記鋼管フレーム部材10を設置してなる構成で実施することもできる。
【0021】
前記鋼管フレーム部材10は、本実施例では、施工性、運搬性、及び経済性を考慮し、下流側ユニット1と上流側ユニット2との2分割構造体で実施し、現場で突き合わせ接合して組み立てる構成で実施される。もとより、3分割以上の構造体でも実施できる。
前記鋼管フレーム部材10の高さは、埋め込み長(1m程度)を除外すると3m程度である。使用する鋼管のサイズは共通して、径400mm程度、肉厚14mm程度である。ただし、上流側ユニット2と下流側ユニット1とで、鋼管のサイズを変えて実施することもできる。例えば、流木等の流下物を直接受け止める上流側ユニット2(特には上流側柱材2a)を下流側ユニット1よりも大径(300mmに対して400mm等)で実施することも勿論できる。
なお、前記数値は勿論これに限定されず、設置する河川の想定流量等に応じて適宜設計変更可能である。例えば、前記鋼管フレーム部材10の高さは埋め込み長を除外して2〜5mの範囲内、埋め込み長は1m程度、使用する鋼管径は300〜600mm程度、鋼管肉厚は8〜22mm程度の範囲内が好適とされる。
また、隣接する前記鋼管フレーム部材10の配置間隔は、設置する現場の調査結果から決定されるため一様でなく状況に応じて適宜設計変更されるが、一般的に1〜7m程度の間隔が採用される。また、当該間隔に伴い好適な個数が決せられる。
次に、前記鋼管フレーム部材10を構成する下流側ユニット1と上流側ユニット2の構成について具体的に説明する。
【0022】
前記下流側ユニット1は、主として水平材1aと下流側柱材1bとを溶接等の接合手段で一体的に形成してなる。
前記下流側柱材1bは、所定の傾斜角度を保持した姿勢で、その下端部に補強リブで補強されたベースプレート4が溶接接合され、上端部に円盤状フランジ(又は環状フランジ)5が溶接接合されている。
一方、前記水平材1aは、その一端部が前記下流側柱材1bの下部に水平な姿勢で溶接接合され、他端部に円盤状フランジ(又は環状フランジ)5が溶接接合されている。そして、前記水平材1aのほぼ中央部に、当該下流側ユニット1を平地に置いた状態で水平材1aの水平姿勢を保持するためのサポート部材3が溶接接合されている。サポート部材3は、本実施例では、鉛直な鋼管とベースプレートとで構成されている。ちなみに、サポート材3に用いる前記鉛直な鋼管は、前記下流側ユニット2に用いる鋼管のサイズよりも小径(本実施例では、190.7mm程度)で実施されている。
念のため、前記円盤状フランジとは、使用する鋼管よりも大径で外周縁部に複数のボルト孔を備えたフランジをいい、前記環状フランジとは、前記円盤状フランジを中空にしたものいう。
なお、本実施例に係る下流側ユニット1は、下流側柱材1bと水平材1aとが形成する内角を65度程度に形成して実施しているがこれに限定されない。構造設計に応じて30〜90度の範囲内で好適に実施される。
【0023】
前記上流側ユニット2は、前記下流側ユニット1(水平材1a、下流側柱材1b)と中空断面形状が一致する鋼管材(上流側柱材2a、接合部材2b、2c)が用いられ、本実施例では、下流側ユニット1と突き合わせ接合すると、略A字形状をなす形態、さらに言えば、前記上流側柱材2aが砂防堰堤20の上流側側面20aと平行となる傾斜角度で実施されている。ただし、上流側ユニット2と下流側ユニット1とで、鋼管のサイズを変えて実施することもできる。例えば、前記上流側柱材2aを1サイズアップし、その他の鋼管(水平材1a、下流側柱材1b、接合部材2b、2c)を同径で実施することも勿論できる。
前記上流側柱材2aの頂部には、上流側柱材2aよりも短尺の接合部材2cが、互いの接合端部同士を切断加工等して溶接等の接合手段により一体化され、全体としてほぼ倒立レの字形に形成されている。前記接合部材2cの他端部には、前記下流側柱材1bの円盤状フランジ(又は環状フランジ)5と一対をなす円盤状フランジ(又は環状フランジ)5が溶接接合されている。
一方、前記上流側柱材2aの下部には、水平方向に若干突き出る程度の長さの接合部材2bの一端部が水平な姿勢で溶接接合され、他端部には、前記水平材1aの円盤状フランジ(又は環状フランジ)5と一対をなす円盤状フランジ(又は環状フランジ)5が溶接接合されている。
【0024】
かくして、上記構成の下流側ユニット1と上流側ユニット2とを、対応する2箇所の一対の円盤状フランジ(又は環状フランジ)5、5に設けたボルト孔が互いに一致するように突き合わせ、当該一致したボルト孔にボルトを通しナットで締結する手法で同心上でボルト接合することにより、高強度、高剛性の略A字形状をなす鋼管フレーム部材10が構築される。
【0025】
次に、
図3に基づき、鋼製スリットダム(鋼管フレーム部材10)の構築方法について説明する。
ちなみに、
図3に係る鋼製スリットダムは、既設の不透過型(コンクリート)砂防堰堤20を開削(切削)して形成したスリット領域21内(
図3A、B参照)の天端部21aに前記鋼管フレーム部材10を設置してなる構成で実施している。その他の場合、すなわち、山間地の河川に構築される新設の砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間のスリット領域21内に前記鋼管フレーム部材10を設置して鋼製スリットダムを構築する場合は、
図3B〜Eの手順で実施する。砂防堰堤がない山間地の河川(平場)に前記鋼管フレーム部材10を設置して鋼製スリットダムを構築する場合は、
図3B〜Eと同様の手順で実施する。
【0026】
前記鋼管フレーム部材10の構築方法は、先ず、
図3A、Bに示したように、不透過型砂防堰堤20を所定の高さ(深さ)開削してスリット領域21を形成する。
次に、
図3Cに示したように、スリット領域21内の天端部21aの所定部位に、上記構成の(水平材1aと下流側柱材1bとからなる)下流側ユニット1を、クレーン等の重機を利用して載置する。前記下流側ユニット1は、前記ベースプレート4及びサポート部材3により、安定した状態で前記天端部21aの上面に起立させて位置決めすることができる。この下流側ユニット1は、所定の数量(本実施例では3体)で、所定の間隔をあけて載置される。さらに言えば、この下流側ユニット1は、後に接合する上流側ユニット2の上流側柱材2aが、側面視で、前記砂防堰堤の上流側側面よりも前方へせり出す部位に載置される。
しかる後、前記ベースプレート4とサポート部材3のベースプレートとをそれぞれアンカーボルト(図視略)で天端部21aに固定すると共に、コンクリート基礎11を構築するための型枠を組む(図視略)。構築するコンクリート基礎11の高さは、水平材1aの全部、および下流側柱材1bの下端部が埋設する(本実施例では1m)程度に設定される。
次に、
図3D、Eに示したように、前記型枠内にコンクリートを打設・養生してコンクリート基礎11が所定の強度を発現した後、当該コンクリート基礎11により下部が強固に固定された(計3体の)下流側ユニット1に、対応する上記構成の上流側ユニット1を脱着可能に突き合わせ接合して(前記段落[0024]参照)、鋼製スリットダムを構築する。
なお、前記手順のほか、
図3Cの段階で、予め前記下流側ユニット1と上流側ユニット2とを突き合わせ接合して一体化した鋼管フレーム部材10を前記天端部21aの所定部位に載置し、しかる後、コンクリートを打設・養生する手順で実施することもできる。
【0027】
したがって、前記構築方法により構築された鋼製スリットダムによれば、下記する効果を奏する。
<1>前記鋼管フレーム部材10の上流側ユニット2が、コンクリート基礎11に固定されることなく下流側ユニット1と脱着可能に接合して実施できる。
よって、鋼管フレーム部材10のうち最も損傷を受けやすい上流側柱材2a(上流側ユニット2)を交換する際に、コンクリート基礎11の破砕作業、およびコンクリート基礎11の再打設作業等の各種作業を行うことなく、接合状態を解除するだけで容易に交換することができるので、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供できる。
また、上流側柱材2aの下端部を、コンクリート基礎11の前方まで伸張させて実施することができるので、当該コンクリート基礎11、および下流側ユニット1の水平材1aと上流側ユニット2の接合部材2bとの接合部の保護を図ることもできる。
<2>上流側ユニット2(の下端部)をコンクリート基礎11に固定する必要がないので、開削した既設堰堤20の天端部21aの河川方向の幅が、従来の両脚部固定式の鋼管フレーム部材を安定した状態で立設するに足るコンクリート幅を備えていない場合であっても、腹付けコンクリートHを設けることなく実施することができる(
図1と
図11とを対比して参照)。よって、腹付けコンクリートHを設けるための工期、コスト(設置部位が満砂の場合は浚渫作業等の準備期間、コストを含む。)を削減できる等、合理的かつ経済的な鋼製スリットダムを提供できる。
<3>上流側ユニット2の上流側柱材2aが、側面視で、前記砂防堰堤20の上流側側面20aよりも前方へ(20〜100cm程度が好適)せり出す構成で、しかも、前記砂防堰堤20の上流側側面20aと略平行となる角度で前記下流側ユニット1に接合された構成で実施することができる。よって、開口部内に鋼製スリットダムを設けた場合と比し、大洪水時等に発生する流木等を、砂防堰堤の開口部(スリット領域21)の前方で堰き止めることできるので、開口部内に流木が入り込むこと、さらには開口部内が流木等で閉塞されることを大幅に軽減できる等、良好なスクリーン効果を発揮できる。これに伴い、流木閉塞による上流域の湛水や越流も軽減できる。
また、流木を捕捉した後の除木作業は、砂防堰堤が邪魔になることなく、開口部の前方部で良好かつ容易に行うことができる。
【実施例2】
【0028】
図4A〜Cは、上記実施例1に係る鋼製スリットダムのバリエーションを示している。 この実施例2に係る鋼製スリットダムは、上記実施例1(
図1〜
図3)と比し、砂防堰堤20の形態、鋼管フレーム部材の寸法、傾斜角度を変更した程度なので、同一の符号を付してその説明は省略する。
ちなみに、
図4Aは、河川方向の幅寸を大きくした砂防堰堤20に上記実施例1に係る鋼管フレーム部材10を設置した実施例を示している。
図4B、Cは、主として、砂防堰堤20の上流側側面の傾斜角度に応じて上流側柱材2aの傾斜角度を適宜変更した実施例を示している。
この実施例2に係る鋼製スリットダムも、上記実施例1と同様に、前記鋼管フレーム部材10の上流側ユニット2が、コンクリート基礎11に固定されることなく下流側ユニット1と脱着可能に接合して実施でき、また、上流側柱材2aが、側面視で、前記砂防堰堤20の上流側側面20aよりも前方へせり出す構成で、しかも、前記砂防堰堤20の上流側側面20aと略平行となる角度で前記下流側ユニット1に接合された構成で実施することができる。よって、上記実施例1と同様の作用効果を奏する(前記段落[0027]参照)。
【実施例3】
【0029】
図5A、Bも、上記実施例1に係る鋼製スリットダムのバリエーションを示している。 この実施例3に係る鋼管フレーム部材10は、上記実施例1、2と比し、主として、下流側ユニット1の下流側柱材1bの形態を直線形状から屈曲形状に設計変更して、上流側柱材2aの中間部と接合している点が相違する程度なので、やはり同一の符号を付してその説明は省略する。
この実施例3に係る鋼製スリットダムも、上記実施例1、2と同様に、前記鋼管フレーム部材10の上流側ユニット2が、コンクリート基礎11に固定されることなく下流側ユニット1と脱着可能に接合して実施でき、また、上流側柱材2aが、側面視で、前記砂防堰堤20の上流側側面20aよりも前方へせり出す構成で、しかも、前記砂防堰堤20の上流側側面20aと略平行となる角度で前記下流側ユニット1に接合された構成で実施できることに変わりない。よって、上記実施例1、2と同様の作用効果を奏する(前記段落[0027]参照)。
【実施例4】
【0030】
図6A、Bは、上記実施例1に係る鋼製スリットダムの異なる実施例を示している。
この実施例4に係る鋼製スリットダムは、上記実施例1(〜実施例3)と比し、主として、下流側ユニット1’について、上記した下流側柱材1bを備えていないシンプルな構成で実施している点が相違する。これに伴い、水平材1a’を2つのサポート部材3’を用いて支持している点も相違する。
【0031】
すなわち、この実施例4にかかる鋼製スリットダムは、コンクリート基礎11に立設する構成の鋼管フレーム部材10’を河川横断方向に間隔をあけて複数(例えば、3体)設置してなる鋼製スリットダムである(全体的な構成は、上記実施例1に係る
図2と同様なので省略する)。
前記鋼管フレーム部材10’は、前記コンクリート基礎11の上流側前方へ略水平に突出する水平材1a’からなる下流側ユニット1’と、前記下流側ユニット1’の水平材1a’の突出端部と接合する接合部材2b’を下端部に備えた上流側柱材2a’からなる上流側ユニット2’とで構成され、前記コンクリート基礎11に固定された下流側ユニット1’に上流側ユニット2’が脱着可能に接合されてなる。
さらに、前記上流側ユニット1’の上端部の高さ位置が前記コンクリート基礎11の上面の高さ位置よりも上方である。
【0032】
前記鋼製スリットダムは、上記実施例1と同様に、既設の不透過型(コンクリート)砂防堰堤20を開削(切削)して形成したスリット領域21内に前記鋼管フレーム部材10’を設置してなる構成で実施しているが、これに限定されない。例えば、山間地の河川に構築される新設の砂防堰堤に形成されたコンクリート袖部間のスリット領域内に前記鋼管フレーム部材10’を設置してなる構成で実施することも勿論できるし、砂防堰堤がない山間地の河川(平場)に前記鋼管フレーム部材10’を設置してなる構成で実施することもできる。
【0033】
前記鋼管フレーム部材10’は、本実施例では、施工性、運搬性、及び経済性を考慮し、下流側ユニット1’と上流側ユニット2’との2分割構造体で実施し、現場で突き合わせ接合して組み立てる構成で実施される。
前記鋼管フレーム部材10’の高さ、設置間隔、使用する鋼管のサイズ等は、上記実施例1と同様である(前記段落[0021]参照)。
【0034】
前記下流側ユニット1’は、水平材1a’と2つのサポート部材3’とを溶接等の接合手段で一体的に形成してなる。また、前記水平材1a’の上流側端部には、円盤状フランジ(又は環状フランジ)5’が溶接接合されている。
一方、前記上流側ユニット2’は、前記下流側ユニット1’(水平材1a’)と中空断面形状が一致する鋼管材(上流側柱材2a’、接合部材2b’)が用いられ、本実施例では、下流側ユニット1’と突き合わせ接合すると、略L字形状をなす形態、さらに言えば、前記上流側柱材2a’が砂防堰堤20の上流側側面20aと平行となる傾斜角度で実施されている。なお、この実施例においても、上流側ユニット2’と下流側ユニット1’とで、鋼管のサイズを変えて実施することもできる。例えば、前記上流柱材2a’を1サイズアップし、その他の鋼管(水平材1a’、接合部材2b’)を同径で実施することも勿論できる。
前記上流側柱材2a’の下部には、水平方向に若干突き出る程度の長さの接合部材2b’の一端部が水平な姿勢で溶接接合され、他端部には、前記水平材1a’の円盤状フランジ(又は環状フランジ)5’と一対をなす円盤状フランジ(又は環状フランジ)5’が溶接接合されている。
【0035】
かくして、上記構成の下流側ユニット1’と上流側ユニット2’とを、対応する一対の円盤状フランジ(又は環状フランジ)5’、5’に設けたボルト孔が互いに一致するように突き合わせ、当該一致したボルト孔にボルトを通しナットで締結する手法で同心上でボルト接合することにより、高強度、高剛性の略L字形状をなす鋼管フレーム部材10’が構築される。
上記構成の鋼製スリットダム(鋼管フレーム部材10’)の構築方法については、上記実施例1に係る
図3に基づく説明から容易に推測できるので省略する(前記段落[0025]、[0026]参照)。
この実施例4に係る鋼製スリットダムも、上記実施例1〜3と同様に、前記鋼管フレーム部材10’の上流側ユニット2’が、コンクリート基礎11に固定されることなく下流側ユニット1’と脱着可能に接合して実施でき、また、上流側柱材2a’が、側面視で、前記砂防堰堤20の上流側側面20aよりも前方へせり出す構成で、しかも、前記砂防堰堤20の上流側側面20aと略平行となる角度で前記下流側ユニット1’に接合された構成で実施できることに変わりない。よって、上記実施例1〜3と同様の作用効果を奏する(前記段落[0027]参照)。
【実施例5】
【0036】
図7A、Bは、上記実施例4に係る鋼製スリットダムを補強した実施例を示している。
要するに、この実施例5に係る鋼製スリットダムは、前記砂防堰堤20、20間に梁部材(鋼管材)6が架設され、当該梁部材6の上流側前方部に前記上流側ユニット2’の上流側柱材2a’の上端部が直接的(必要に応じて弾性材等の緩衝材を介して間接的)に当接する構成で実施されている。
前記梁部材6は、通常、複数本の鋼管材をフランジ接合又は溶接等の接合手段により適宜継ぎ足して前記砂防堰堤20、20間の所定の高さ位置に架設される。梁部材6と砂防堰堤20との接合手段は、本実施例では、梁部材6の端部に溶接により一体化したプレート部材7を、砂防堰堤の上流側側面に当てがい複数のアンカーボルトを打ち込んで固定している。
この実施例5に係る鋼製スリットダムによれば、上記実施例4と同様の作用効果を奏することに加え、鋼管フレーム部材10’の上流側ユニット2’に作用する流木等による衝撃力が前記梁部材6を介して両側の砂防堰堤20へと伝わって吸収されるので、当該上流側ユニット2’の損傷を軽減すると共に、より強度・剛性が高い鋼製スリットダムを実現することができる。
【実施例6】
【0037】
図8A、Bは、上記実施例1に係る鋼製スリットダムの捕捉効果を高めた実施例を示している。
この実施例6に係る鋼製スリットダムは、
図2と
図8とを対比すると分かり易いように、上記実施例1に係る鋼管フレーム部材10(図示例では上流側柱材2a)の所定の高さ位置に、端部にフランジを備えた鋼管(横繋ぎ材)を水平に設けてフランジ接合することにより言わばスリット型の鋼製スリットダムを実現している。
なお、前記横繋ぎ材は、隣接する鋼管フレーム部材10のすべてに設けて実施することもできるし、一部に設けて部分的に連結する形態で実施することもできる。また、図示は省略するが、上流側柱材2aの軸方向にバランス良く分枝鋼管を設けて実施することもできる。以下の[実施例7]で説明するスリット型の鋼製スリットダムについても同様の技術的思想とする。
このスリット型の鋼製スリットダムによれば、上記実施例1〜4と同様の作用効果を奏することに加え、より捕捉効果を高めることができる。
【実施例7】
【0038】
図9A、Bは、上記実施例1に係る鋼管フレーム部材10(
図1参照)と上記実施例4に係る鋼管フレーム部材10’(
図6参照)とを混在させた鋼製スリットダムの実施例を示している。
この実施例に係る鋼製スリットダムによれば、特に説明するまでもなく、上記実施例1〜4と同様の作用効果を奏することができる。
また、
図10A、Bは、
図9に係る鋼管フレーム部材10、10’を横繋ぎ材で連結した言わばスリット型の鋼製スリットダムの実施例を示している。
この実施例に係るスリット型の鋼製スリットダムによれば、上記実施例1〜4と同様の作用効果を奏することに加え、より捕捉効果を高めることができる。
【0039】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。