特許第6595898号(P6595898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595898
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】中空粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/08 20060101AFI20191010BHJP
   C04B 35/626 20060101ALI20191010BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20191010BHJP
   B01J 2/04 20060101ALI20191010BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20191010BHJP
【FI】
   C04B38/08 D
   C04B35/626 450
   C01B33/18 Z
   B01J2/04
   B82Y30/00
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-244635(P2015-244635)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109898(P2017-109898A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕太
(72)【発明者】
【氏名】向井 健太
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/050263(WO,A1)
【文献】 特開2014−055083(JP,A)
【文献】 特開2011−256098(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/102569(WO,A1)
【文献】 姜 允贊,減圧噴霧熱分解法による機能性微粒子の製造,エアロゾル研究,日本,1998年,13(3),191−197頁
【文献】 Wuled Lenggoro,静電噴霧法によるナノ粒子の合成および計測,エアロゾル研究,日本,2005年,20(2),116−122頁
【文献】 高橋 実,中空粒子の合成とその応用,Journal of the Society of Inorganic Materials,日本,2005年,12,87−96頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C04B 38/00−38/10
C01B 33/12−33/193
B01J 2/04
B01J 13/02−13/22
C23C 16/00−16/56
B82Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子の集合体である外殻部と、該外殻部によって該外殻部の内部に画成された中空部とを有し、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、空孔率が2体積%以上70体積%以下であり、窒素吸着法によって測定される細孔径のピークが20nm以下であり、窒素吸着法によって測定される全細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下である中空粒子。
【請求項2】
前記外殻部が、1nm以上300nm以下の範囲内において少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する前記金属酸化物ナノ粒子によって構成されている請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物ナノ粒子が2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子及び大粒径粒子を含み、
小粒径粒子の粒子径をDとし、大粒径粒子の粒子径をDとしたとき、粒子径比D/Dが0.1以上0.6以下である請求項1又は2に記載の中空粒子。
【請求項4】
小粒径粒子の粒子径Dが1nm以上50nm以下であり、大粒径粒子の粒子径Dが20nm以上300nm以下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の中空粒子。
【請求項5】
金属酸化物ナノ粒子の集合体である外殻部と、該外殻部によって該外殻部の内部に画成された中空部とを有し、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である中空粒子であって、
前記金属酸化物ナノ粒子が2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子及び大粒径粒子を含み、
小粒径粒子の粒子径が1nm以上50nm以下であり、大粒径粒子の粒子径が20nm以上300nm以下である中空粒子。
【請求項6】
空孔率が2体積%以上70体積%以下であり、窒素吸着法によって測定される細孔径のピークが20nm以下である請求項5に記載の中空粒子。
【請求項7】
小粒径粒子と大粒径粒子の合計に占める、小粒径粒子の質量分率が0.35以上0.95以下である請求項3ないし6のいずれか一項に記載の中空粒子。
【請求項8】
前記金属酸化物ナノ粒子がシリカである請求項1ないし7のいずれか一項に記載に記載の中空粒子。
【請求項9】
前記外殻部が高分子成分を含み、
前記金属酸化物ナノ粒子に対する前記高分子成分の割合が0.01質量%以上5質量%以下である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の中空粒子。
【請求項10】
1nm以上300nm以下の範囲内において、少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥する静電噴霧工程を有する中空粒子の製造方法であって、
前記溶媒が水であるか又は水を50質量%超含み、
前記高分子成分が水溶性多糖類又は水溶性多糖類誘導体である、中空粒子の製造方法
【請求項11】
前記原料液に含まれる前記金属酸化物ナノ粒子は、各金属酸化物ナノ粒子をそれぞれ動的光散乱法で粒度分布を測定したときに、異なる粒子径の位置にピークを示し、
各々のピークは重なっておらず、且つ各々の粒子径の変動係数が20%以下である請求項10に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物ナノ粒子が2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子及び大粒径粒子を含み、
小粒径粒子の粒子径をdとし、大粒径粒子の粒子径をdとしたとき、粒子径比d/dが0.1以上0.6以下である請求項11に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項13】
小粒径粒子の粒子径dが1nm以上50nm以下であり、大粒径粒子の粒子径dが20nm以上300nm以下である請求項12に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項14】
小粒径粒子と大粒径粒子の合計に占める、小粒径粒子の質量分率が0.35以上0.95以下である請求項12又は13に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項15】
前記静電噴霧工程の後に、前記高分子成分の熱分解温度以上で加熱し、該高分子成分を除去する熱分解工程を有する請求項10ないし14のいずれか一項に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の中空粒子を600℃以上1500℃以下で焼結処理する工程を有する、窒素吸着法により測定されるBET比表面積が10m/g以下である中空粒子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が小さく、中空状の形態を有する金属酸化物粒子は、非中空状の粒子に比べて見かけ比重が小さく、中空粒子という形態に起因して低誘電率化効果を有することから、多層プリント基板や電線被覆材、半導体封止材等の、低誘電率化のニーズがある分野での利用が期待されている。また内部に空気や種々の化合物や材料を内包できるため揮散制御基材としての用途、更には反射防止膜用や光拡散膜用の充填剤等の各種材料の用途など、多様な用途への利用が検討又は実現されている。
【0003】
これまで知られている金属酸化物の中空粒子としては、例えば粒径が100μm以下の一次粒子及びこれを結合する微細な二次粒子からなる球殻を有し、直径が1000μm以下の中空球状体からなる中空粒子が挙げられる(特許文献1参照)。この中空粒子は、 一次粒子を液中の球状油滴分散相へ導入し、一次粒子を油滴表面に付着させ、次に該液中に二次粒子を生成する成分を加え、生成した二次粒子を該油滴に付着した一次粒子相互の隙間にバインダとして沈積させ、次いで油相を抽出し、一次粒子と二次粒子の結合した殻を備えた中空体を得る方法で製造される。
【0004】
特許文献2には、水系媒体に分散可能な有機ポリマー粒子、金属酸化物ナノ粒子及び水系媒体を含有する混合液を調製し、それによって得られた混合液を乾燥して有機無機複合体を得、この有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去することで、金属酸化物多孔質体を得る方法が提案されている。
【0005】
特許文献3には、外殻層の内部に空洞を有するシリカ系微粒子が記載されている。このシリカ系微粒子は、いわゆるゾルゲル法によって製造される。特許文献4には、ポリスチレン粒子をコアとし、該ポリスチレン粒子を被覆したシリカをシェルとするコアシェル粒子を形成し、次いでコアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより該ポリスチレン粒子を除去することで、中空シリカ粒子を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−154374号公報
【特許文献2】特開2012−224509号公報
【特許文献3】特開2013−121911号公報
【特許文献4】特開2014−94867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、比重を低くする目的や、内包する剤の量を増加させる目的で中空粒子の空孔率を高めると、それに伴い外殻が薄肉化していき、そのことに起因して外殻の強度が低下する傾向にあり、中空粒子の構造が崩壊し易くなる。
【0008】
したがって、本発明の課題は中空粒子の改良にあり、更に詳しくは外殻の強度が高く、外殻が薄肉化しても中空粒子の構造が崩壊し難い中空粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属酸化物ナノ粒子の集合体である外殻部と、該外殻部によって該外殻部の内部に画成された中空部とを有し、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、空孔率が2体積%以上70体積%以下であり、窒素吸着法によって測定される細孔径のピークが20nm以下であり、窒素吸着法によって測定される全細孔容積が0.1cm/g以上1.0cm/g以下である中空粒子を提供するものである。
【0010】
また本発明は、金属酸化物ナノ粒子の集合体である外殻部と、該外殻部によって該外殻部の内部に画成された中空部とを有し、平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である中空粒子であって、
前記金属酸化物ナノ粒子が2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子及び大粒径粒子を含み、
小粒径粒子の粒子径が1nm以上50nm以下であり、大粒径粒子の粒子径が20nm以上300nm以下である中空粒子を提供するものである。
【0011】
更に本発明は、1nm以上300nm以下の範囲内において、少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥する静電噴霧工程を有する中空粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の範囲の粒子径において、外殻の強度が高く、外殻が薄肉化しても中空粒子の構造が崩壊し難い中空粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の中空粒子の一例を示す断面模式図である。
図2図2(a)ないし(d)は、静電噴霧工程における帯電液滴から中空粒子になるまでの変化を示す図であり、図2(e)は中空粒子とならない場合の状態を示す図である。
図3図3は、本発明中空粒子の製造に好適に用いられる装置の概略構成を示す図である。
図4図4は、図3に示す装置の液体噴霧部の要部を示す断面図である。
図5図5は、図3に示す装置の液体噴霧部を、図1中の下側から視た液体噴霧部の正面図である。
図6図6は、図3に示す装置の液体噴霧部の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の中空粒子の一実施形態の断面構造が模式的に示されている。中空粒子3は、外殻部33と、該外殻部33によって該外殻部33の内部に画成された中空部32とを有している。すなわち中空粒子3は、中空部32、及び該中空部32を取り囲む外殻部33を有している。外殻部33は球殻の形状をしている。外殻部33は、複数の金属酸化物ナノ粒子の集合体から構成されている。外殻部33は、多孔質構造を有していることが好ましい。中空粒子3は、概ね球形のものである。概ね球形とは、中空粒子3の投影像を観察したときに、その投影像の真円度が0.8以上であることを言う。真円度とは、中空粒子3の100個の投影像を観察し、以下の式から算出される値の相加平均値のことである。
真円度=4π(投影像の面積)/(投影像の周長)2
【0015】
中空粒子3は、その平均粒子径が0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。平均粒子径は用途等を考慮して適宜調整することができ、より好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、更に好ましくは0.3μm以上3μm以下である。平均粒子径の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0016】
中空粒子3は、その空孔率が2体積%以上70体積%以下であることが好ましい。空孔率が2体積%以上であることによって、中空であることによる種々の有利な効果が得られる。他方、空孔率が70体積%以下であることによって、種々の利用に耐え得る強度をもった中空粒子となる。中空粒子3の空孔率は、より好ましくは4体積%以上50体積%以下であり、更に好ましくは5体積%以上40体積%以下である。空孔率の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0017】
中空粒子3における外殻部33は、1nm以上300nm以下の範囲内において少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子によって構成されていることが好ましい。詳細には、外殻部33を構成する金属酸化物ナノ粒子は、図1に示すとおり、2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子35A及び大粒径粒子35Bを含むことが好ましい。そして、小粒径粒子35Aの粒子径及び大粒径粒子35Bの粒子径は、いずれも1nm以上300nm以下の範囲内であることが好ましい。このように粒径の異なる少なくとも2種類の金属酸化物ナノ粒子を用いることで、大粒径粒子35Bどうしの間に形成される空隙を、小粒径粒子35Aが充填するので、外殻部33の密度が向上し、それによって外殻部33の強度が向上する。
【0018】
金属酸化物ナノ粒子として小粒径粒子35Aと大粒径粒子35Bを用いる場合、小粒径粒子35Aはその粒子径Dが1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、30nm以上であることが一層好ましい。また、小粒径粒子35Aはその粒子径Dが50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることが更に好ましい。小粒径粒子35Aの粒子径Dは、1nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上45nm以下であることが更に好ましく、30nm以上45nm以下であることが一層好ましい。小粒径粒子35Aの粒子径Dをこのように設定することで、大粒径粒子35Bどうしの間に形成される空隙に、小粒径粒子35Aが首尾よく充填される。
【0019】
一方、大粒径粒子35Bに関しては、その粒子径Dは、小粒径粒子35Aの粒子径よりも大きいことを条件として、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、80nm以上であることが一層好ましい。また、大粒径粒子35Bはその粒子径Dが300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることが更に好ましく、130nm以下であることが一層好ましい。大粒径粒子35Bの粒子径Dは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることが更に好ましく、80nm以上130nm以下であることが一層好ましい。大粒径粒子35Bの粒子径Dをこのように設定することで、小粒径粒子35Aを、大粒径粒子35Bどうしの間に形成される空隙に首尾よく充填することができる。
【0020】
大粒径粒子35Bどうしの間に形成される空隙に、小粒径粒子35Aを一層首尾よく充填させる観点から、小粒径粒子35Aの粒子径Dと、大粒径粒子35Bの粒子径Dとの粒子径比D/Dは、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることが更に好ましい。また粒子径比D/Dは、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、0.4以下であることが一層好ましい。粒子径比D/Dは、0.1以上0.6以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることが更に好ましく、0.2以上0.4以下であることが一層好ましい。
【0021】
大粒径粒子35Bどうしの間に形成される空隙に、小粒径粒子35Aを更に一層首尾よく充填させる観点から、小粒径粒子35Aと大粒径粒子35Bの合計に占める、小粒径粒子35Aの質量分率は0.35以上であることが好ましく、0.6以上であることが更に好ましい。また質量分率は、0.95以下であることが好ましく、0.9以下であることが更に好ましい。質量分率は、0.35以上0.95以下であることが好ましく、0.6以上0.9以下であることが更に好ましい。
【0022】
前記の質量分率は、次の方法で測定される。中空粒子3の表面又は断面を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、撮影された画像から任意の金属酸化物ナノ粒子100個を選定し、その最大横断長を測定する。その最大横断長をその金属酸化物ナノ粒子の粒子径とみなし、横軸に粒子径をとり、縦軸に球換算での体積割合をとって、体積基準の粒度分布を求める。そして、横軸の粒子径が1nm以上300nm以下の範囲に二つのピークが観察された場合、粒子径の小さい方のピークにおける当該粒子径をDとし、また、粒子径の大きい方のピークにおける当該粒子径をDとする。また、それぞれのピークでの体積割合を小粒径粒子の方をXとし、大粒径粒子の方をXとし、中空粒子3を構成する小粒径粒子及び大粒径粒子の質量割合をそれぞれM、Mとすると、M及びMは以下の式で決定される。
中空粒子3の小粒径粒子の質量割合M
=(金属酸化物の密度)×πD/6×X/100
中空粒子3の大粒径粒子の質量割合M
=(金属酸化物の密度)×πD/6×X/100
そして、上記で得られた小粒径粒子及び大粒径粒子の質量割合を以下の式に代入することで小粒径粒子の質量分率を求めることができる。
質量分率(%)=M/(M+M
また、他の方法として後述する原料液の金属酸化物ナノ粒子の配合比から決定される小粒径粒子の質量分率と中空粒子3の小粒径粒子の質量分率は概ね一致する。原料液に配合する小粒径粒子の質量をM‘、大粒径粒子の質量をM’とすると小粒径粒子の質量分率は以下の式で求めることができる。
質量分率(%)=M‘/(M’+M‘)
【0023】
小粒径粒子35Aの粒子径D及び大粒径粒子35Bの粒子径Dは、次の方法で測定する。中空粒子3の電子顕微鏡像を撮影し、撮影された電子顕微鏡像から任意の金属酸化物ナノ粒子100個を選定し、その最大横断長を測定する。その最大横断長をその金属酸化物ナノ粒子の粒子径とみなし、横軸に粒子径をとり、縦軸に球換算での体積割合をとって、体積基準の粒度分布を求める。そして、横軸の粒子径が1nm以上300nm以下の範囲に二つのピークが観察された場合、粒子径の小さい方のピークにおける当該粒子径を小粒径粒子35Aの粒子径Dと定義する。また、粒子径の大きい方のピークにおける当該粒子径を大粒径粒子35Bの粒子径Dと定義する。
【0024】
また、1nm以上300nm以下の範囲に三つ以上のピークが観察され、且つ50nm以上にもピークが観察される場合であって、且つ1nm以上50nm未満の間にピークが二つ以上現れる場合、その中で粒度分布から計算される質量が最も大きい粒子径の粒子を小粒径粒子35Aの粒子径Dと定義する。なお二つ以上の粒子の質量が同じで、且つ質量が最も大きい場合、粒子径が大きいものを小粒径粒子35Aの粒子径Dと定義する。また、50nm以上300nm以下の間にピークが二つ以上現れる場合、その中で粒度分布から計算される質量が最も大きい粒子径の粒子を大粒径粒子35Bの粒子径Dと定義する。なお二つ以上の粒子の質量が同じで、且つ質量が最も大きい場合、粒子径が大きいものを大粒径粒子35Bの粒子径Dと定義する。
【0025】
一方、1nm以上300nm以下の範囲に三つ以上のピークが観察され、且つ50nm以上にはピークが観察されない場合、その中で粒度分布から計算される質量が最も大きい粒子径の粒子と2番目に質量が大きい粒子径の粒子を選び、粒子径の小さいものを小粒径粒子35Aの粒子径D1と定義する。また、粒子径の大きいものを大粒径粒子35Bの粒子径D2と定義する。なお、質量が同率の場合は、粒子径が大きいものが選ばれる。
【0026】
粒度分布から計算される質量とは、ピークでの粒子径と頻度及び真密度から以下の式で求めることができる。
粒度分布から計算される質量=π(粒子径)/6×(頻度)×(真密度)
例えば酸化ケイ素の場合、その真密度は2.2(g/cm)を用いることができる。
【0027】
上述のとおり、中空粒子3はその外殻部33に、1nm以上300nm以下の範囲内において異なる粒子径を有する2種類の金属酸化物ナノ粒子である小粒径粒子35A及び大粒径粒子35Bを含むことが好ましい。この場合、1nm以上300nm以下の範囲内において小粒径粒子35Aよりも粒子径の小さい金属酸化物ナノ粒子を更に1種以上含んでいてもよい。また、1nm以上300nm以下の範囲内において大粒径粒子35Bよりも粒子径の大きい金属酸化物ナノ粒子を更に1種以上含んでいてもよい。更に、1nm以上300nm以下の範囲内において小粒径粒子35Aよりも粒子径が大きく、且つ大粒径粒子35Bよりも粒子径の小さい金属酸化物ナノ粒子を更に1種以上含んでいてもよい。更に、本発明の効果を損なわない範囲において、1nm未満の粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子を1種以上含んでいてもよく、あるいは300nm超の粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子を1種以上含んでいてもよい。尤も、本発明の効果を一層顕著なものとする観点からは、外殻部33を構成する金属酸化物ナノ粒子は、上述の定義にしたがう粒子径が、すべて1nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0028】
以上のとおり、本発明の中空粒子3における外殻部33は、粒子径の異なる複数種類の金属酸化物ナノ粒子を含むものであるところ各金属酸化物ナノ粒子は同種材料のものであってもよく、あるいは異種材料のものであってもよい。
【0029】
上述の構造を有する外殻部33を有する中空粒子3は、該外殻部33の構造に起因して、微視的な多孔質構造が、これまで知られている中空粒子、すなわち単一種のナノ粒子から構成される外殻部を有する中空粒子と相違している。詳細には、中空粒子3の外殻部33は、その全細孔容積が0.1cm3/g以上1.0cm3/g以下であることが好ましい。全細孔容積が0.1cm3/g以上であることによって、外殻部33の内部と外部の物質透過性が高くなるため、揮散制御基材として揮散性に優れたものとなる。また、全細孔容積が1.0cm3/g以下であることによって、過度に外殻部33が低密度にならないため、粒子の強度に優れたものとなる。これらの利点を一層顕著なものとする観点から、中空粒子3の全細孔容積は、0.1cm3/g以上0.5cm3/g以下であることが更に好ましい。全細孔容積の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0030】
中空粒子3は、外殻部33のメソ細孔の細孔径のピークが20nm以下であることが好ましい。メソ細孔の細孔径のピークが20nm以下であることによって、外殻部33が高密度となり中空粒子3が強度に優れたものとなる。この観点から、メソ細孔の細孔径のピークは20nm以下であることが更に好ましい。一方、メソ細孔の細孔径のピークの下限値は、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。下限値をこのように設定することで、中空粒子3は、各種成分の粒子内部への浸透性、内部に浸透させた成分の徐放性、及び物理的な衝撃による崩壊性に優れたものとなる。メソ細孔の細孔径のピークの測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0031】
中空粒子3の外殻部33を構成する金属酸化物ナノ粒子における金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化カルシウム、あるいは酸化インジウム錫などの複合酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してよい。入手の容易性や中空構造の制御の点からは酸化ケイ素又は酸化チタンを用いることが好ましい。
【0032】
中空粒子3は、その外殻部33に高分子成分を含んでいてもよい。高分子成分としては、外殻部33を構成する金属酸化物ナノ粒子を結合する結合剤として機能するものが好適に用いられる。高分子成分の詳細については後述する。外殻部33に占める高分子成分の割合が高いほど、該外殻部33の強度が向上するので、その点からは高分子成分の割合が高いことが好ましい。その一方、高分子成分の割合が過度に高いと、外殻部33が有する多孔質構造の性質が減殺される傾向にある。この観点から、外殻部33が高分子成分を含む場合には、金属酸化物ナノ粒子に対する高分子成分の割合は、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。また、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることが更に好ましい。金属酸化物ナノ粒子に対する高分子成分の割合は、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上4質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
外殻部33に占める高分子成分の割合は以下の方法で測定される。
熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、質量A(mg)の中空粒子3を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱する。高分子成分の熱分解温度における質量減少がB(mg)であったとき、その中空粒子3の外殻部33の高分子成分の含有率は以下の式で算出することができる。
外殻部33の高分子成分の含有率(質量%)=(B/A)×100
なお、後述する中空粒子3の製造方法で用いられる原料液に含まれる金属酸化物ナノ粒子と高分子成分との固形分比(質量比)が、そのまま、中空粒子3の外殻部33の金属酸化物ナノ粒子と高分子成分との質量比となる場合は、原料液中の固形分比や配合比から中空粒子3の外殻部33の高分子成分の含有率とすることもできる。また、中空粒子3から高分子成分が溶解可能な溶媒により高分子成分を抽出し、その抽出液を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロママトグラフィー、質量分析、示差走査熱量測定、熱重量測定装置などの熱分析などの機器分析又はその組み合わせによって、外殻部33の高分子成分の含有率を測定することもできる。
【0034】
上述の構造を有する外殻部33を備えた中空粒子3は、中空部32に各種の成分を封入可能であることに加えて、徐放性又は物理的な衝撃による崩壊性を有すること、耐熱性を有すること等の一又は二以上の有利な性質を有しており、それらの一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、医薬品、香料成分、機能性成分の徐放剤として用いることができる。また、外殻部33が高分子成分を含む場合には、中空粒子3は、高分子成分による柔軟性、外殻部の溶媒や熱による崩壊性等の一又は二以上の有利な性質を有しており、それらの一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、中空部32に各種機能成分を内包し、外部環境に応じて機能成分を徐放するようなドラッグデリバリー基材として用いることができる。また、樹脂フィルムや塗料用組成物に配合して、それらの膜材料に中空部に充填した空気相や各種機能成分を付与する充填剤等として用いることができる。
【0035】
次に、これまで説明してきた中空粒子3の好適な製造方法について説明する。本製造方法では、1nm以上300nm以下の範囲内において、少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子と、溶媒と、高分子成分とを含む原料液を静電噴霧し、それによって生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する。原料液としては、高分子成分が溶媒に溶解又は分散した溶液に、金属酸化物ナノ粒子が分散したものが好ましく用いられる。また本発明の課題を解決できる種類及び量の範囲内において、公知の充填剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、シランカップリング剤、無機粒子、樹脂粒子、架橋剤、電解質、酸・塩基、香料、油性成分、ワックス、蓄熱材、医薬成分等を配合することができる。
【0036】
原料液に含まれる金属酸化物ナノ粒子としては、各金属酸化物ナノ粒子をそれぞれ動的光散乱法で粒度分布を測定したときに、異なる粒子径の位置にピークを示すような粒度分布を有するものであることが好ましい。この場合、各ピークの位置は、1nm以上300nm以下の範囲内であることが好ましい。そのような粒子径の異なる2種以上の金属酸化物ナノ粒子を用いることで、図1に示す構造の外殻部33を有する中空粒子3を首尾よく得ることができる。
【0037】
特に、各金属酸化物ナノ粒子について前記の粒度分布を測定したときに各々のピークが重なっておらず、且つ各々の粒子径の変動係数、すなわちCV値が20%以下であることが好ましい。変動係数CV値はσ/rで定義される。式中、rは、各金属酸化物ナノ粒子の粒度分布を動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの体積基準の算術平均径である。σは、各金属酸化物ナノ粒子の粒度分布を動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの体積基準の算術平均径の標準偏差である。なお「ピークが重なっていない」とは、隣り合うピークが全く重なっていない場合だけでなく、隣り合うピークの裾が一部重なっている場合も包含する。隣り合うピークの裾が一部重なっている場合とは、小粒径粒子と大粒径粒子の粒度分布を重ね合わせたときに得られる粒度分布が、二つのピークが消えずに残る場合をいう。つまり、両者の粒度分布を重ね合わせた場合に得られる粒度分布のピークが単一の場合は含まない。
【0038】
原料液は、金属酸化物ナノ粒子として、2種類の異なる粒子径を有する小粒径粒子35a及び大粒径粒子35bを含むことが好ましい。小粒径粒子35aは、外殻部33に含まれる小粒径粒子35Aの元となるものである。大粒径粒子35bは、外殻部33に含まれる大粒径粒子35Bの元となるものである。小粒径粒子35aはその粒子径dが1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、30nm以上であることが一層好ましい。また、小粒径粒子35aはその粒子径dが50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることが更に好ましい。小粒径粒子35aの粒子径dは、1nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上45nm以下であることが更に好ましく、30nm以上45nm以下であることが一層好ましい。一方、大粒径粒子35bに関しては、その粒子径dは、小粒径粒子35aの粒子径よりも大きいことを条件として、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、80nm以上であることが一層好ましい。また、大粒径粒子35bはその粒子径dが300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることが更に好ましく、130nm以下であることが一層好ましい。大粒径粒子35bの粒子径dは、20nm以上300nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることが更に好ましく、80nm以上130nm以下であることが一層好ましい。こうすることで、図1に示す構造の外殻部33を有する中空粒子3を首尾よく得ることができる。
【0039】
小粒径粒子35aの粒子径d及び大粒径粒子35bの粒子径dはそれぞれ、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの体積基準の算術平均径である。なお、原料液中に含まれる小粒径粒子35a及び大粒径粒子35bの粒子径d,dはそれぞれ、中空粒子3を構成する外殻部33に含まれる小粒径粒子35A及び大粒径粒子35Bの粒子径D,Dと概ね一致する。
【0040】
原料液中に含有される金属酸化物ナノ粒子が、小粒径粒子35a及び大粒径粒子35bを含む場合、個別に測定された小粒径粒子35aの粒子径dと、大粒径粒子35bの粒子径dとの粒子径比d/dは、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることが更に好ましい。また粒子径比d/dは、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、0.4以下であることが一層好ましい。粒子径比d/dは、0.1以上0.6以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることが更に好ましく、0.2以上0.4以下であることが一層好ましい。こうすることで、図1に示す構造の外殻部33を有する中空粒子3を首尾よく得ることができる。
【0041】
原料液中に含有される金属酸化物ナノ粒子が、小粒径粒子35a及び大粒径粒子35bを含む場合、小粒径粒子35aと大粒径粒子35bの合計に占める、小粒径粒子35aの質量分率は0.35以上であることが好ましく、0.6以上であることが更に好ましい。また質量分率は、0.95以下であることが好ましく、0.9以下であることが更に好ましい。質量分率は、0.35以上0.95以下であることが好ましく、0.6以上0.9以下であることが更に好ましい。こうすることで、図1に示す構造の外殻部33を有する中空粒子3を首尾よく得ることができる。
【0042】
静電噴霧工程においては、図2(a)に示すように、静電噴霧により噴霧された帯電した液滴31が、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって、図2(b)に示すように小径の液滴31Aが生じるとともに、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の金属酸化物ナノ粒子35a,35b及び高分子成分34の濃度が高まる。そして、更に乾燥が進むことによって、図2(c)に示すように表面近傍に金属酸化物ナノ粒子35a,35b及び高分子成分34からなる被膜33Aを有する粒子37が生じる。この被膜33Aが形成された粒子37の内部の溶媒が蒸発することによって、図2(d)に示すように、中空部32及び外殻部33を有し、該外殻部33に高分子成分34を含む微小な中空粒子3Aが得られる。
【0043】
中空部32を有する微小な中空粒子3Aを得るためには、被膜33Aが形成されるタイミングが重要である。例えば、静電噴霧により噴霧した直後の液滴に被膜が形成されると、その後の分裂が阻害され、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子が得られにくくなる。他方、静電噴霧により噴霧した液滴が、レイリー分裂を繰り返して微粒子化しても被膜が形成されないと、平均粒子径が10μm以下の微小粒子とはなるものの、図2(e)に示すように、中空部を有しない中実粒子38となり易くなる。
【0044】
被膜の形成のタイミングを適正なものとして微小な中空粒子3Aを効率よく生じさせる観点から、本発明においては、原料液に含ませる金属酸化物ナノ粒子として、上述のとおり、1nm以上300nm以下の範囲内において、少なくとも2種類以上の異なる粒子径を有する金属酸化物ナノ粒子35a,35bを用いている。金属酸化物ナノ粒子35a,35bの粒子径が1nm未満であると、液滴31Aの表面からの溶媒の蒸発に伴う液滴の半径の減少速度に対して、同等以上の速度で金属酸化物ナノ粒子35a,35bが液滴31Aの中心方向へと拡散し易くなるため、液滴31Aの表面近傍の金属酸化物ナノ粒子35a,35bの濃度が高くなりにくく、その結果、外殻部33となる被膜33Aが形成されにくい。他方、金属酸化物ナノ粒子35a,35bの粒子径を1nm以上、特に10nm以上とすると、液滴31Aの表面からの溶媒の蒸発に伴う液滴の半径の減少速度に対して、金属酸化物ナノ粒子35の、液滴31Aの中心方向への拡散速度が遅くなり易く、外殻部33となる被膜33Aが形成され易くなる。
【0045】
一方、金属酸化物ナノ粒子35a,35bの粒子径が300nm超であると、静電噴霧後、早い段階で被膜が形成され易くなり、レイリー分裂や表面からの蒸発が抑制されて、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子が得られにくくなる。このように、噴霧後に被膜33Aが形成されるタイミングが早すぎると、中空粒子は形成され易くなるものの、微小な中空粒子が得られにくくなる。また、金属酸化物ナノ粒子間の距離が大きくなり、外殻部33の密度が低下する傾向にある。そのため、微小な中空粒子を得るためには、(イ)噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜が形成されるようにすること、及び(ロ)金属酸化物ナノ粒子として小粒径粒子35aと大粒径粒子35bを併用し、外殻部33の密度を高くすることが有利である。
【0046】
被膜の形成のタイミングに影響する因子としては、上述した金属酸化物ナノ粒子35a,35bの粒径の他に、原料液の粘度、原料液を噴霧する環境条件、溶媒の揮発のし易さ等が挙げられる。これらの因子は、静電噴霧された液滴がレイリー分裂により適度に微粒子化した段階で被膜が形成されるように適宜に調整する。
【0047】
原料液に含ませる高分子成分は、有機高分子であり、水溶性高分子でもよいし、非水溶性高分子でもよい。また天然高分子でも合成高分子でもよい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、キトサン、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、ゼラチン、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。非水溶性高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。用いられる高分子成分は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子成分から任意の複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0048】
原料液に、高分子成分が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
【0049】
特に溶媒として水又は水を50質量%超含むものを用いる場合は、前述した各種の水溶性高分子のような水溶性高分子を用いるのが好適である。水溶性高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子の中でも、水溶性多糖類又は水溶性多糖類誘導体が好適である。水溶性多糖類誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースが特に好適である。水を50質量%超含む溶媒としては、水とアルコール類(メタノール、エタノール等)との混合物が挙げられる。原料液中の高分子成分の含有率(質量%)は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは1%以上であり、また好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下であり、また好ましくは0.01%以上5%以下、より好ましくは1%以上4%以下である。
【0050】
噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜33Aが形成されるようにして、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子3Aを得る観点から、液滴31を乾燥させる気相の露点温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、更に好ましくは-20℃以上であり、また好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下であり、また好ましくは−50℃以上20℃以下、より好ましくは−30℃以上10℃以下、更に好ましくは−20℃以上0℃以下である。
【0051】
図3には、静電噴霧工程に好ましく用いられる中空粒子の製造装置の一例の概略構成が示されている。同図に示す中空粒子の製造装置1は、原料液である液体30を噴霧させる液体噴霧部2と、液体噴霧部2に対して、原料液である液体30を供給する原料液供給手段(図示せず)と、液体噴霧部2に対して圧縮空気4を供給する圧縮空気供給手段(図示せず)と、高電圧発生手段5と、液体噴霧部2に形成された液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。
【0052】
液体噴霧部2は、原料液である液体30が通過する導電性金属製の金属細管21を備えた液体吐出ノズル22と、液体吐出ノズル22の一端に形成された液体吐出口23と、液体吐出口23の周囲から圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24と、圧縮空気を噴射する第2噴射口25とを備えている。第2噴射口25には、コロナ放電用の針電極26を設け、コロナ放電により生じた空気イオンを含むイオン搬送流を生じさせることもできる。高電圧発生手段5は、導電性の金属細管21に高電圧を印加可能であるとともに、コロナ放電用の針電極26にもコロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能であり、導電性の金属細管及び針電極と前記対向電極との間に電位差を生じさせ得る。対向電極6は、接地されるか、又は液体吐出口23から噴霧された帯電粒子とは逆極性の電圧が印加される。
【0053】
製造装置1について更に説明すると、液体吐出ノズル22は、導電性の金属細管21自体から構成されている。金属細管21は、通直な直管であり、内部を原料液である液体30が流通可能になっている。金属細管21の内径は、例えば0.1mm以上1.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。金属細管21の外径は、例えば0.2mm以上2.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下である。金属細管21の内径及び外径をこの範囲内に設定することで、原料液である液体30を、容易に、且つ定量的に送液できるとともに、ノズル周辺の狭い領域に電界が集中し、原料液を効率よく帯電させられる。
【0054】
金属細管21及び液体吐出ノズル22は、液体噴霧部2のケース体20に、共通する中心軸が一方向Xに延在するように支持されており、液体吐出ノズル22の一端に開口する開口部が、液体吐出口23を形成している。液体噴霧部2の正面視において、液体吐出口23は円形であり、その周囲に、圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24が形成されている。第1噴射口24は、図5に示すように、液体吐出口23を囲む環状に形成されていることが好ましいが、液体吐出口23の周囲に、複数個、好ましくは3個以上20個以下の第1噴射口24が、液体吐出口23を囲むように環状に配置されていてもよい。液体噴霧部2の正面視とは、液体吐出ノズル22の液体吐出口23をその正面から視た状態をいい、本実施形態の装置1においては、液体噴霧部2を、図4における下側から視た状態である。
【0055】
第1噴射口24は、圧縮空気供給手段によって圧縮空気が供給される内部空間42と連通した第1流路24Aの一端部に形成されており、圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、第1流路24Aを通過した圧縮空気が、第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する。また、原料液供給手段は、液体吐出ノズル22に対して微粒子の原料液である液体30を定量的に供給することができる。第1噴射口24から微粒化用圧縮空気を噴出させつつ、液体吐出ノズル22に原料液である液体30を供給することによって、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。
【0056】
図4には、液体吐出ノズル22の中心軸の延在方向Xが鉛直方向に一致し、第1流路24Aが液体吐出ノズル22の中心軸に沿って延在する例を示したが、本発明において、圧縮空気4や微粒化した液体3を噴射させる方向は、特に制限されず、鉛直方向の下方に代えて、水平方向、斜め上方、斜め下方等としてもよい。また、第1流路24Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行でもよいし非平行でもよい。
【0057】
また、液体吐出ノズル22の液体吐出口23から離間した位置に、液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。詳細には、対向電極6は、液体吐出ノズル22の液体吐出口23の開口の正面の位置において、液体吐出口23の開口に対面して配置されている。対向電極6は、金属等から構成されており導電性を有している。液体吐出ノズル22の先端と対向電極6との間の距離(最短距離)は、好ましくは200mm以上1500mm以下であり、また、より好ましくは300mm以上1000mm以下である。
【0058】
高電圧発生手段5は、図3に示すように、液体吐出ノズル22の導電性の金属細管21と対向電極6との間に、高電圧を印加可能に構成されている。図3に示す例では、液体吐出ノズル22の金属細管21に負電圧が印加されており、金属細管21が負極、対向電極6が接地されており、金属細管21と対向電極6との間には電界が生じる。なお、金属細管21と対向電極6との間に電界を生じさせるためには、図4に示す電圧の印加の仕方に代えて、液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。また、対向電極6は必ずしも接地する必要はなく、金属細管21とは逆極性の電圧を印加するようにしてもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
【0059】
高電圧発生手段5には高圧電源装置などの公知の装置を用いることができる。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は1kV以上、特に5kV以上とすることが、液体吐出口23から噴霧される原料液の液滴を十分に帯電させ、液滴のレイリー分裂を促進する点から好ましい。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは1kV以上60kV以下、より好ましくは5kV以上50kV以下である。
【0060】
図3に示す製造装置1における液体噴霧部2は、圧縮空気を噴射する第2噴射口25を備えている。製造装置1における第2噴射口25は、図5に示すように、液体吐出口23の中心からの距離が、第1噴射口24よりも遠く、また、第1噴射口24から第2噴射口25までの距離L3が、液体吐出口23の中心から第1噴射口24までの距離L1よりも長くなっている。第2噴射口25は、図5に示すように、少なくとも、液体吐出口23の挟む両側の位置に一対形成されていることが好ましい。また、第2噴射口25は、図6に示すように、液体吐出口23の周囲に、液体吐出口23との間に間隔を設けて形成された傾斜面27に形成されている。傾斜面27は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端、液体吐出口23から遠い側に傾斜上端を有している。傾斜面27は、平面状であることが好ましいが、凸曲面又は凹曲面状であってもよい。第2噴射口25は、液体吐出口23を挟むように一対設けるのに代えて、液体吐出口23の周囲に均等に3個以上設けることもできる。
【0061】
第2噴射口25は、図3及び図4に示すように、遠位流路25A及び液体吐出ノズル22の中心軸に対して角度を有する傾斜流路25Bを介して、前述した内部空間42と連通している。圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、その一部が、前述したように、第1流路24Aを通って第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する一方、他の一部が、遠位流路25A及び傾斜流路25Bを通って、第2噴射口25から噴射される。第1流路24A、遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、それぞれ内面が円筒状をなしていることが好ましい。遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、互いに連通して、第2噴射口25に空気を供給する連続流路を形成しており、遠位流路25Aは、傾斜流路25Bに比して第2噴射口25から遠い位置にある。図4に示す遠位流路25Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行に形成されているが、非平行であってもよく、また、傾斜流路25Bに対して角度を有する遠位流路25A自体が存在しなくてもよい。
【0062】
また第2噴射口25には、コロナ放電を生じさせるための針電極26を設けることもできる。本実施形態の高電圧発生手段5は、針電極26にも、コロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能に構成されている。図3に示すように、本実施形態においては、液体吐出ノズル22の金属細管21及び針電極26に、分岐させた金属導線51を介して、同極性の電圧が印加されるように構成されている。
【0063】
針電極26は、その先端が、第2噴射口25から突出するように配置されていることが好ましい。針電極26は、遠位流路25A又は傾斜流路25Bの内面に固定されていてもよく、また、遠位流路25Aの内面及び傾斜流路25Bの内面のいずれにも接触しないように支持されていてもよい。針電極26としては、放電用金属ワイヤ等を好ましく用いることができる。針電極として用いる放電用金属ワイヤの材質としては、タングステン、黄銅、銅、モリブデン等の導電性金属材料で腐食しにくいものが好ましい。また、針電極26は、圧縮空気の噴射に耐える強度をもち、噴射を妨げない適度な太さであることが好ましく、例えば、針電極26の直径は、第2噴射口の口径の60%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば第2噴射口の口径が0.5mmの場合0.2〜0.3mmが好ましい。針電極26は、先端を針状に尖らせて、放電し易くして用いる。なお、針電極26として、先端が尖った放電用金属ワイヤ等を用いる場合、針電極26の直径は、直径が最大の部位における直径とする。また、針電極26は、先端が尖っていない棒状体であってもよい。
【0064】
また、針電極26の第2噴射口25からの突出長さL5(図4参照)は、コロナ放電の生じ易さの観点から、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また空気の流れを妨げる程度を減らし、液の付着を防止する観点から、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。なお、遠位流路25Aや傾斜流路25Bが形成されている部材が導電体である場合、その部材に針電極26を融着し、その部材に高電圧発生手段5からの金属導線51等を接続してもよい。
【0065】
図3に示す例は、針電極26に、液体吐出ノズル22の金属細管21と同じ負電圧が印加した場合であるが、図3に示す電圧の印加の仕方に代えて、針電極26及び液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
【0066】
針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、15kV以上、特に20kV以上とすることが、コロナ放電により空気イオンを大量に生じさせる点から好ましい。一方、この電位差は60kV以下、特に50kV以下とすることが、装置の絶縁を過大にする必要がない点から好ましい。針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは15kV以上60kV以下、より好ましくは20kV以上50kV以下である。高電圧発生手段5は、液体吐出ノズル22の金属細管に電圧を印加する装置とは別に、針電極26に電圧を印加する装置を有していてもよく、相互に異なる電圧を発生させる機能を備えた電源装置を用いて、液体吐出ノズル22の金属細管と針電極26とに独立して異なる電圧を印加してもよい。
【0067】
本実施形態の製造装置1は、対向電極6の表面に、微粒子の捕集部7を備えている。微粒子の捕集部7は、導電性材料からなる対向電極6の表面であってもよいが、対向電極6の表面に、薄いフィルム等を被せて捕集部7として用いてもよい。
【0068】
前述した製造装置1を用いて静電噴霧工程を実施するには、製造装置1の液体噴霧部2に、圧縮空気供給手段により圧縮空気を供給するとともに、定量送液ポンプ等の公知の原料液供給手段(図示せず)により液体噴霧部2に、原料液である液体30を供給する。圧縮空気の供給により、金属細管21の一端側に開口する液体吐出口23の周囲に位置する第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41が噴出するとともに、第2噴射口25から圧縮空気が噴射される。
【0069】
この状態で、高電圧発生手段5を作動させて、微粒子の原料液である液体が通過する導電性の金属細管21及び針電極26に負電圧の直流高電圧を印加すると、金属細管21内を流れる液体30にマイナスの電荷が帯電し、その帯電した液体30が、液体吐出口23から、液体吐出口23の周囲から噴出された微粒化用圧縮空気41によって微粒化されて噴霧される。液体30は、噴霧により液滴となるとともに帯電した帯電液滴31となっている。噴霧により生じた帯電液滴31は、第1噴射口24からの圧縮空気の噴射により生じた気流に乗り、また金属細管21と対向電極6に生じた電界に沿って対向電極6に向かって流れる。
【0070】
また、針電極26への負電圧の高電圧の印加により、針電極26からのコロナ放電で空気イオンが生じるとともに、第2噴射口25からの圧縮空気の噴射により、空気イオンを含む気流であるイオン搬送流45が生じる。イオン搬送流45中に含まれる空気イオンは、帯電液滴31と同じ極性であるマイナスに帯電している。また第2噴射口25は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端を有する傾斜面27に形成されており、空気イオンを含むイオン搬送流45は、図4に示すように、前述した帯電液滴の流れFに対して、角度をつけて吹き付けられる。コロナ放電で生じさせる空気イオン(負イオン)としては、例えば、O2-(H2O)n ,O3-(H2O)n ,NO2-(H2O)n ,NO3-(H2O)n ,CO3-(H2O)n ,NO3- ,NO3-(HNO3n ,NO3-NO3等が挙げられる。
【0071】
帯電液滴31と同じ極性に帯電した空気イオンを含むイオン搬送流45を、噴霧により生じた帯電液滴の流れFに吹き付けることによって、流れF中の帯電液滴31の帯電量が増加する。帯電量が増加する理由は、通常、帯電液滴と空気イオンは同極性であり、平行流ならば反発して合一することはないが、帯電液滴の流れFに角度をつけて高速の空気イオンを衝突させているので、帯電液滴に空気イオンが取り込まれ、その結果、帯電量が増加していると考えられる。
【0072】
図2(a)ないし図2(d)に示すように、静電噴霧により噴霧された帯電した液滴31は、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって小径の液滴31Aを生じ、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の金属酸化物ナノ粒子35a,35b及び高分子成分34の濃度が高まり、更に乾燥が進むことによって、中空粒子3Aが得られる。そして、その中空粒子3Aが捕集部7に捕集される。捕集は、対向電極6を接地した状態、若しくは対向電極に、微粒子と逆極性の電圧、すなわち微粒子がマイナスに帯電している場合はプラス、微粒子がプラスに帯電している場合はマイナスの電圧を印加した状態で行ってもよい。また針電極26を設置せずに、第2噴射口25から圧縮空気を噴射することも可能である。その際、噴射された気流は空気イオンを含まないため、帯電液滴31の帯電量が増加することはない。
【0073】
イオン搬送流45の吹き付けによる帯電量の増大を一層効果的に生じさせる観点から、イオン搬送流を生じさせるための圧縮空気を噴射する噴射口である第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとが、液体吐出口23からの距離Lが2mm以上6mm以下の範囲内において40度以上80度以下の交差角度θ(図4参照)で交差することが好ましい。距離Lを2mm以上6mm以下の範囲内とすることにより、イオン搬送流45を、帯電液滴があまり拡散せず、空気イオンの濃度も高い状態で、帯電液滴の流れFに吹き付けることができ、帯電効率が高くなり、交差角度θを40度以上80度以下の範囲内とすることにより、イオン搬送流45を帯電液滴の流れFに強く衝突させることができて帯電効率が高まるとともに、角度が大きすぎて液滴が広く飛散してしまうことも防止できる。
【0074】
なお、第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとの交差は、中心軸どうしがねじれの位置にあっても該点Pにおいて交差しているとしてよい。液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする半径0.5mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することが好ましく、半径0.35mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することがより好ましい。第2噴射口25の中心軸25cが液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする前記半径の球殻の内部を通過していれば、該点Pにおいて交差しているとする。
【0075】
同様の観点から、第2噴射口25の中心軸25cと液体吐出口23の中心軸23cとは、液体吐出口23からの距離Lが3〜5mmの範囲内において45〜60度の交差角度θで交差することが更に好ましい。液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出口23に隣接する液体30の流路の中心軸であり、該液体30の流路内に位置する部分に加えて、液体吐出口23から突出する、軸長方向への延長部分も含まれる。本実施形態における、液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出ノズル22の中心軸及びその軸長方向への延長部分と一致している。第2噴射口25の中心軸25cは、第2噴射口25に隣接する流路、すなわち前述した傾斜流路25Bの中心軸であり、該流路25B内に位置する部分に加えて第2噴射口25から突出する軸長方向への延長部分も含まれる。
【0076】
本発明における静電噴霧工程には、圧縮空気を併用しないエレクトロスプレー法を用いることもできるが、噴霧量を多くして中空粒子の生産効率を向上させる観点から、2流体ノズルを用いる方法により行うことが好ましい。2流体ノズルは、圧縮空気などの高速気体の流れを利用して液体を微粒化するものであり、テイラーコーンを生じさせる従来のエレクトロスプレー法に比して大量の液体を微粒化して噴霧することができる。
【0077】
前述した製造装置1においては、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。原料液の静電噴霧を、2流体ノズルを用いた方法で行う態様には、図3に示す製造装置のように、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24に加えて第2噴射口25からも圧縮空気を噴射して行う態様、及び第2噴射口25を設けずに、第1噴射口24のみから圧縮空気を噴射して行う態様等も含まれる。
【0078】
原料液である液体30の静電噴霧を2流体ノズルによって行うことで、噴霧量を比較的多くすることができる。原料液の噴霧量は、0.1mL/分以上100mL/分以下とすることが好ましく、0.2mL/分以上50mL/分以下とすることが更に好ましい。ここでいう噴霧量は、噴霧させるために液体吐出ノズル等に供給する原料液の量と同じである。例えば、前記の製造装置1においては、原料液である液体30を、液体吐出ノズル22に送液して該液体吐出ノズル22から吐出させているが、その液体吐出ノズル22に対する原料液である液体30の供給量が、原料液の噴霧量である。
【0079】
このようにして中空粒子3Aが得られたら、その外殻部33Aに含まれる高分子成分の熱分解温度以上で加熱し、該高分子成分を除去する熱分解工程を行ってもよい。加熱には、静電噴霧工程で得られた中空粒子3Aを加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。
【0080】
「高分子成分の熱分解温度」とは、外殻部33に含まれている状態の高分子成分34の熱分解温度であり、例えば以下のようにして測定されるすなわち、熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、高分子成分34を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、その質量減少率を測定する。質量減少率が90%以上となったときの温度を熱分解温度とする。
【0081】
高分子成分の熱分解温度は、高分子成分の種類等に応じて異なるが、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上であり、また好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下であり、また好ましくは200℃以上600℃以下であり、より好ましくは300℃以上500℃以下である。高分子成分の熱分解温度以上で処理する時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは60分以上であり、また好ましくは2880分以下、より好ましくは1440分以下であり、また好ましくは10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。
【0082】
このようにして中空粒子3が得られたら、必要に応じ、該中空粒子3の外殻部33に含まれる金属酸化物ナノ粒子を該金属酸化物ナノ粒子の融点以下の温度で焼結する焼結工程を行ってもよい。焼結工程は、上述の高分子分解工程を行った後、それに引き続き加熱温度を上昇させて焼結工程を行ってもよいし、あるいは高分子分解工程を行った後、得られた中空粒子3を一旦保管等により常温まで冷やした後、再び加熱して焼結工程を行ってもよい。また、静電噴霧工程で得られる中空粒子3Aを、外殻部33に含まれる金属酸化物ナノ粒子35が焼結する温度に一気に加熱して、一工程で、高分子成分の熱分解と金属酸化物ナノ粒子の焼結とを行ってもよい。加熱には、粒子を加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。
【0083】
金属酸化物ナノ粒子を焼結させるための好ましい温度は、金属酸化物ナノ粒子の種類や粒径、不純物の量等に応じて、変動するが、金属酸化物ナノ粒子を焼結させる工程での加熱温度は、好ましくは600℃以上、更に好ましくは800℃以上、より好ましくは850℃以上、一層好ましくは900℃以上であり、また好ましくは1500℃以下、より好ましくは1300℃以下であり、更に好ましくは1200℃以下である。加熱温度は、好ましくは600℃以上1500℃以下、更に好ましくは800℃以上1500℃以下、より好ましくは850℃以上1300℃以下、一層好ましくは900℃以上1300℃以下である。ただし、金属酸化物ナノ粒子を焼結させる工程での加熱温度の上限は、金属酸化物ナノ粒子の種類毎に定まるその金属酸化物ナノ粒子の融点である。高分子分解工程後に行う焼結工程を別に行う場合、焼結工程における加熱時間は、例えば、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。高分子分解工程と連続又は同時に行う焼結工程は、温度が焼結温度に達した後の加熱時間が、例えば、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。
【0084】
このような焼結工程によって得られた中空粒子は、図1に示す多孔質構造の外殻部33を有する中空粒子3に比べて、外殻部の多孔質状態が減少しているので、外殻部の内側に溶融樹脂が浸透しないか又は浸透しにくく、高気密性を有する。また外殻部が、高強度及び耐熱性を有する。更に、焼結前に比べて中空粒子のBET比表面積が低下している。具体的には、焼結された中空粒子は、そのBET比表面積が10m/g以下であることが好ましく、1.0m/g以下であることが更に好ましく、0.6m/g以下であることが一層好ましい。BET比表面積の下限値は0.01m/g以上であることが好ましく、0.1m/g以上であることが更に好ましい。
【0085】
焼結された中空粒子は、上述した一又は二以上の有利な性質を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、樹脂用の充填剤として用いられ、成形体に、低誘電率性、低比重性、光拡散性又は反射防止性といった性能を付与することができる。焼結された中空粒子が配合された樹脂製シートは、CPU等のパッケージ基板等に使用される層間絶縁膜として好ましく用いられる。
【0086】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0088】
〔実施例1〕
表1に示す処方の原料液を調製し、図3に示す中空粒子の製造装置を用いて、原料液を静電噴霧し、微小な粒子を得た。ただし、針電極26を取り外し、第2噴射口からは空気イオンを含まない圧縮空気の噴射を行った。
金属酸化物ナノ粒子としては、表1に示すとおり、粒子径がそれぞれ40nm及び125nmのシリカを用いた。粒子径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置(ナノ粒子解析装置 nano Partica SZ−100/株式会社堀場製作所)で測定した体積基準の算術平均径である。設定条件は、ナノアナリシスモード、体積基準、単分散、ナロー、検出角度:173°とした。また表1中の「HPC」及び「MC」は、ヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬工業株式会社製、6.0−10.0mPa・s)及びメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、メトローズ60SH−15(登録商標))を示す。原料液は、メチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースとを質量比3:1で含んでおり、表1中の高分子成分の合計含有量の欄には、それらの合計量を示した。
【0089】
原料液の噴霧量は、1mL/分とした。
他の条件は、下記のとおりとした。
噴霧空気圧:0.4MPa
気相の露点温度:13℃
細管への印加電圧:+20kV
噴射口から対向電極(捕集部)までの距離:850mm
【0090】
このようにして得られた中空粒子について、平均粒子径、空孔率、細孔径のピーク、全細孔容積、BET比表面積、及び外殻部の高分子成分の含有率を、以下に示す方法により測定した。更に、得られた中空粒子について、粒子欠陥率及び粒子形状を、以下の方法で測定・評価した。それらの結果を表1に示す。
【0091】
〔平均粒子径の測定方法〕
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JSM−6510)を用いて、加速電圧20kV、倍率5000倍にて粒子の観察を行った。画像解析ソフト(A像くん/旭化成エンジニアリング(株))で手動にて100−300個の粒子の粒子径を個別に測定し。その個数平均粒子径を計算した。
【0092】
〔空孔率の測定方法〕
乾式自動密度計(株式会社島津製作所、AccuPyc II 1340−10CC)を用いて、粒子の密度を測定した。測定は、約1gの粒子を試料セルに入れ、窒素ガス雰囲気下で密度の測定を行った。測定された密度の値から、下記の式より粒子の空孔率を算出した。
空孔率(%)=100×(金属酸化物の真密度―測定された密度)/金属酸化物の真密度
なお金属酸化物が酸化ケイ素の場合、その真密度は2.2g/cmとした。
【0093】
〔細孔径のピーク、全細孔容積、BET比表面積の測定方法〕
細孔径のピーク及び全細孔容積を測定するときには、熱分解工程を行い、中空粒子を500℃で2時間加熱して高分子成分を除去した。BET比表面積を測定するときには、熱分解工程及び焼結工程を行い、中空粒子を1000℃で10時間加熱して粒子表面の細孔を封止した。
比表面積・細孔分布測定装置(日本ベル株式会社、商品名:BELSORP mini II)を用いて、液体窒素を用いた多点法で、粒子のBET比表面積を測定し、吸着パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用し、100nm以下の細孔分布におけるピークトップをメソ細孔の細孔径のピーク、累積を全細孔容積とした。測定試料は110℃で1時間加熱する前処理を施した。
【0094】
〔外殻部の高分子成分の含有率の測定方法〕
熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、質量A(mg)の中空粒子を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱する。高分子成分の熱分解温度(測定方法は前述)における質量減少がB(mg)であったとき、その中空粒子の外殻部の高分子成分の含有率は以下の式で算出することができる。
外殻部の高分子成分の含有率(%)=(B/A) ×100
【0095】
〔粒子欠陥率〕
熱分解工程を行った後、焼成工程を行う前の中空粒子を対象として、5000倍視野の電子顕微鏡(SEM/JEOL製)で撮像し、中空粒子表面の孔の数を測定し粒子欠陥率を算出した。粒子欠陥率は、5000倍視野中の粒子50個以上に対して、真円度が0.8以下の粒子又は貫通孔が空いた粒子の数の割合で定義される。粒子欠陥率は、中空粒子の強度の尺度となるものであり、粒子欠陥率が低いほど、中空粒子の強度が高いことを意味する。
【0096】
〔粒子形状〕
上述の方法で測定された粒子欠陥率に基づき、以下の基準で粒子形状を評価した。
◎:20%未満(欠陥が非常に少ない)
○:40%未満(欠陥が少ない。)
△:40%以上60%未満(一部に欠陥あり。)
×:60%以上(欠陥が多数ある。)
【0097】
〔実施例2ないし4〕
表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にして中空粒子を得た。得られた中空粒子について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を以下の表1に示す。
【0098】
〔比較例1〕
本比較例は、原料液に含まれる小粒径粒子の粒子径を、各実施例よりも大きくした例である。また、それ以外の条件を以下の表1に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にして中空粒子を得た。得られた中空粒子について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を以下の表1に示す。
【0099】
〔比較例2〕
本比較例は、原料液に含まれる小粒径粒子の粒子径を、各実施例よりも小さくした例である。また、それ以外の条件を以下の表1に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にして中空粒子を得た。得られた中空粒子について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を以下の表1に示す。
【0100】
〔比較例3及び4〕
本比較例では、原料液に含まれる小粒径粒子の質量分率を、各実施例よりも小さくした例である。また、それ以外の条件を以下の表1に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にして中空粒子を得た。得られた中空粒子について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた中空粒子は、比較例で得られた中空粒子に比べて粒子欠陥率が低く、球形に近い形状の粒子となることが判る。
【符号の説明】
【0103】
1 中空粒子の製造装置
2 液体噴霧部
21 導電性の金属細管
22 液体吐出ノズル
23 液体吐出口
24 第1噴射口
24A 鉛直流路
25 第2噴射口
25c 第2噴射口の中心軸
26 針電極
27 傾斜面
3 中空粒子
30 原料液である液体
31 帯電液滴
33 外殻部
34 高分子成分
35A 小粒径粒子
35B 大粒径粒子
4 圧縮空気
41 微粒化用圧縮空気
45 イオン搬送流
5 高電圧発生手段
6 対向電極
7 捕集部
図1
図2
図3
図4
図5
図6