(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動分析装置に設けられる分注機構の各実施形態、および各実施形態の分注機構が設けられる本発明の自動分析装置の構成を、図面に基づいてこの順に説明する。
【0011】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る分注機構の構成図である。この図に示す分注機構1は、自動分析装置に設けられるものであって、プローブ10、ポンプ20、配管系30、ヒータ40、および駆動制御部50を備えている。また、分注機構1は、プローブ10を洗浄する洗浄槽S1を有している。以下、これらの各構成要素の詳細を説明する。
【0012】
<プローブ10>
プローブ10は、管状体のものであって、その一端が分注液Lを吐出する開口端10aとして構成されたものであり、開口端10aに向かって管状体の開口径が徐々に縮小された形状であってもよい。またプローブ10は、分注液Lを吐出する分注容器Sや洗浄槽S1内部の深部への開口端10aの挿入を可能とするため、ある程度の長さを有して構成され、管状体の流路を垂直に保って自動分析装置に配置される。
【0013】
このようなプローブ10には、移動機構11が設けられており、この移動機構11によって、分注液Lの吐出位置とプローブ10の洗浄位置との間でプローブ10の移動が可能となっている。
【0014】
ここで、分注液Lの吐出位置とは、プローブ10の開口端10aから分注容器S内に分注液Lを吐出させる際の位置であり、自動分析装置において分注容器Sが配置される位置の上方である。またプローブ10の洗浄位置とは、プローブ10の開口端10aを洗浄する位置である。このプローブ10の洗浄位置は、自動分析装置に配置される洗浄槽S1内に、プローブ10の開口端10aが挿入される位置である。なお、プローブ10を定期的に洗浄する際、洗浄槽S1内には、洗浄液が満たされる。また、洗浄槽S1の下端部には、洗浄液を排出するための排出口S1aが設けられている。
【0015】
このような移動機構11は、例えば鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームと、アームの先端部に設けられたプローブ10を保持するための保持部と備える。またこの移動機構11は、以降に説明する駆動制御部50に接続され、この駆動制御部50からの指示によってプローブ10を移動させる。
【0016】
<ポンプ20>
ポンプ20は、プローブ10から吐出させる分注液Lの吸引および排出を行なうものであり、例えば図示したシリンジポンプの外、ダイヤフラムポンプやペリスタポンプ(登録商標)のような他のポンプであってもよい。このようなポンプ20は、以降に説明する配管系30を介して、プローブ10における開口端10aと逆側に接続され、さらに分注液Lの供給ボトルBに接続される。またポンプ20の駆動部21は、以降に説明する駆動制御部50に接続され、この駆動制御部50からの指示によって、分注液Lの吸引および排出が制御される。
【0017】
<配管系30>
配管系30は、排出管31、吸引管33、共通配管35、および開閉弁37を備えている。このうち排出管31は、一端がポンプ20に接続され、他端が共通配管35を介してプローブ10における開口端10aと逆側に接続された配管である。一方、吸引管33は、一端が共通配管35を介してポンプ20に接続され、他端が分注液Lの供給ボトルBに接続される配管である。
【0018】
また開閉弁37は、排出管31および吸引管33と共通配管35との開通状態を切り替えるものである。ここでは、例えば3方弁が用いられる。この3方弁は、例えば電磁弁であって、排出管31をノーマリークローズとして常時閉塞し、吸引管33をノーマリーオープンとして常時開放するものである。
図1に示したように、開閉弁37は、非通電状態において、排出管31側の接続口を閉塞してポンプ20とプローブ10との間を遮断し、吸引管33側の接続口を開通させて供給ボトルBとポンプ20との間を開通させる。この際、共通配管35側の接続口は常時開通状態である。尚、図面においては、開閉弁37の3方の接続口のうち、閉塞している接続口を黒塗りで示し、開通している接続口を白塗りで示している。
【0019】
以上のような開閉弁37は、以降に説明する駆動制御部50に接続され、この駆動制御部50からの指示によって排出管31と吸引管33の開通状態を切り替える。
【0020】
<ヒータ40>
ヒータ40は、プローブ10から吐出される分注液Lを加熱するためのものであり、プローブ10の周囲に設けられている。このようなヒータ40は、以降に説明する駆動制御部50に接続され、この駆動制御部50からの指示によってプローブ10を加熱する。尚、ヒータ40は、プローブ10に設けられることに限定されず、排出管31に設けられてもよい。
【0021】
<駆動制御部50>
駆動制御部50は、プローブ10に設けられた移動機構11、ポンプ20の駆動部21、配管系30の開閉弁37、およびヒータ40に接続され、これらの駆動を制御する。このような駆動制御部50は、ここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備え、予め設定された自動分析装置用の分注動作の処理プログラムに従って各部の駆動を制御する。このような駆動制御部50によって実行される分注動作の詳細は、次の通りである。
【0022】
<分注動作>
図2は、第1実施形態に係る分注機構1における分注動作を説明するフローチャートである。以下、
図2のフローチャートに従い、その他の必要図面を参照しつつ、分注機構1において実施される分注動作の手順を説明する。本フローは、駆動制御部50を構成するCPUが、ROMに記録されたプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
[ステップS101(
図3参照)]
先ずステップS101では、分注液Lの供給ボトルBからポンプ20に分注液Lを吸引する。この際、前回までの分注動作を終了した時点では、移動機構11により、プローブ10は洗浄位置に配置され、より詳しくはプローブ10の開口端10aが、洗浄槽S1内に挿入された状態となっている。また、開閉弁37の駆動により、排出管31が閉塞されてポンプ20とプローブ10との間が遮断され、吸引管33が開通してポンプ20と供給ボトルBとの間が開通した状態となっている。
【0024】
以上の状態で、ポンプ20の吸引駆動により、供給ボトルBから、吸引管33を介してポンプ20内に所定量の分注液Lを吸引する。この際にポンプ20内に吸引する分注液Lの量は、以降に行うポンプ20の排出駆動によって分注容器S内に吐出させる分注液Lの総量と、ポンプ20のバックラッシュを考慮した余剰量とを合計した量である。また、この吸引駆動における分注液Lの吸引速度[V]は、特に限定されることはなく、キャビテーションによる気泡の発生が防止できる程度の加速で到達できる速度であれば一定の吸引速度であってよい。
【0025】
[ステップS102(
図3参照)]
次にステップS102では、分注液Lの余剰量の調整を行う。ここでは、先のステップS101で実施したポンプ20の吸引駆動から、以降に実施するポンプ20の排出駆動への切り替えにともなうポンプ20のバックラッシュを考慮し、ポンプ20を排出駆動に切り替え、ポンプ20に吸引した分注液Lのうちの余剰量を、供給ボトルB側に押し戻す。これにより、ポンプ20内の分注液Lの量を、分注容器S内に吐出させる分注液Lの総量に一致させる。
【0026】
[ステップS103(
図4参照)]
次いでステップS103では、開閉弁37を切り替えることにより、排出管31を開通させポンプ20とプローブ10との間を開通させる。これにより、吸引管33を閉塞してポンプ20と供給ボトルBとの間を遮断する。
【0027】
尚、上述したステップS102は、このようなステップS103の後に実施してもよい。この場合、分注液Lの余剰量は、洗浄槽S1内に排出されることになる。
【0028】
[ステップS104(
図5参照)]
次にステップS104では、移動機構11の駆動により、プローブ10を洗浄位置から分注液Lの吐出位置に移動させる。より詳しくは、プローブ10の開口端10aを洗浄槽S1内から引き上げ、予め決められた位置に配置されている分注容器Sの上部の吐出位置に移動させる。
【0029】
[ステップS105(
図5参照)]
その後ステップS105では、ポンプ20の排出駆動により、プローブ10の開口端10aに分注液Lの液滴Ldが形成される初期の吐出速度[V1]で、ポンプ20内の分注液Lをプローブ10の開口端10aから分注容器S内に吐出する。この際、ヒータ40をオンにして、分注液Lを加温して吐出する。
【0030】
ここで、初期の吐出速度[V1]は、開口端10aに分注液Lの液滴Ldが形成されればよく、これにより分注容器S内に落下させた分注液Lが分注容器Sの内壁に衝突することによる分注液Lの飛散を防止した分注が実施される。ただし初期の吐出速度[V1]は、1回の分注動作を高速化することを目的とし、開口端1aに分注液Lの液滴Ldが形成される範囲で速い方が好ましい。このような初期の吐出速度[V1]は、プローブ10の開口端10aの開口径、および分注液Lの粘度に応じて適宜に調整される。
【0031】
また、以上のような初期の吐出速度[V1]での分注液Lの吐出量は、次のステップで実施する後期の吐出速度[V2]での分注液Lの吐出において、分注容器S内での分注液Lの飛散が防止される程度に十分な量であることとする。
【0032】
したがって、分注容器Sに吐出させる分注液Lの総量が少ない場合には、初期の吐出速度[V1]での分注液Lの吐出量は、例えば次のステップで実施する後期の吐出速度[V2]での吐出量以上に設定される。ここでは、ポンプ20内の分注液Lの量を、分注容器S内に吐出させる分注液Lの総量に一致させているため、ポンプ20内の分注液Lの総量の半分以上の量である。これにより、次のステップで実施する後期の吐出速度[V2]での分注液Lの吐出において、分注容器S内での分注液Lの飛散が防止される程度に十分な量の分注液Lを、分注容器Sに貯留させることができる。
【0033】
一方、分注容器Sに吐出させる分注液Lの総量が多い場合には、初期の吐出速度[V1]での分注液Lの吐出量は、次のステップで実施する後期の吐出速度[V2]での吐出量よりも少なくなるように設定してもよい。ここでは、ポンプ20内の分注液Lの総量の半分を下回る量である。これにより、初期の吐出速度[V1]で十分な量の分注液Lを分注容器Sに貯留しつつ、次のステップで実施する後期の吐出速度[V2](>[V1])での分注液Lの吐出量を多くして、1回の分注動作を高速化することができる。
【0034】
以上のように初期の吐出速度[V1]での分注液Lの吐出量は、分注容器Sに吐出させる分注液Lの総量と、分注容器Sに吐出する際の出分注液Lの分注容器S内においての分注液Lの飛び散り安さ、すなわち分注液Lの粘度によって適宜に決定する。
【0035】
[ステップS106(
図6参照)]
次いでステップS106では、ポンプ20の排出駆動により、プローブ10の開口端10aに分注液Lの液柱Lpが形成される後期の吐出速度[V2](>[V1])で、ポンプ20内の分注液Lをプローブ10の開口端10aから分注容器S内に吐出する。この際、ヒータ40をオンにして、分注液Lを加温して吐出する。
【0036】
ここで、後期の吐出速度[V2]は、開口端10aに分注液Lの液滴Lpが形成される速度であり、初期の吐出速度[V1]よりも速い速度である。これにより、先のステップS105よりも高速での分注液Lの分注を実施し、1回の分注動作を高速化することができる。しかも、先のステップS105で吐出させて分注容器S内に貯留した十分な量の分注液Lがクッションとなるため、後期の吐出速度[V2]で吐出した分注液Lの飛散が防止される。このような後期の吐出速度[V2]は、プローブ10の開口端10aの開口径、および分注液Lの粘度に応じて適宜に調整されるが、初期の吐出速度[V1]の2.5倍〜3倍とすることが好ましい。
【0037】
この際、以上のような後期の吐出速度[V2]での分注液Lの吐出量は、分注容器Sに吐出させる分注液Lの総量のうち、先のステップS105においての吐出量を差し引いた量である。ここでは、ステップS102において、ポンプ20内の分注液Lの量を、分注容器S内に吐出させる分注液Lの総量に一致させているため、ステップS105の後にポンプ20内に残された分注液Lの全量が、後期の吐出速度[V2]での分注液Lの吐出量となる。
【0038】
[ステップS107(
図7参照)]
その後ステップS107では、ステップS106においての分注液Lの吐出を終了させた後、開閉弁37を切り替えることにより、排出管31を閉塞してポンプ20とプローブ10との間を遮断する。これにより、吸引管33を開通してポンプ20と供給ボトルBとの間が開通する。尚、ステップS106においての分注液Lの吐出を終了させた状態においては、プローブ10の開口端10aに分注液Lの液滴Ldが残される。しかしながら、後期の吐出速度[V2](>[V1])での吐出によって、分注液Lの吐出を終了しているため、残される液滴Ldは小さいものとなる。
【0039】
[ステップS108(
図8参照)]
その後ステップS108では、移動機構11の駆動により、プローブ10を分注液Lの吐出位置から洗浄位置に移動させる。より詳しくは、プローブ10を分注容器Sの上部の吐出位置から移動させ、プローブ10の開口端10aを洗浄槽S1内に挿入させる。以上により、1回の分注動作が終了する。
【0040】
[ステップS109]
次にステップS109では、予め設定されたn回数の分注が終了したか否かを判断する。n回の分注が終了した(YES)と判断した場合には、一連の分注動作を終了させる。一方、n回の分注が終了していない(NO)と判断した場合には、ステップS101に戻り、以降のステップを繰り返す。尚、この繰り返しにおいては、吐出位置に配置される分注容器Sを、新たな分注容器Sと交換する動作が実施される。
【0041】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態では、1回の分注動作におけるポンプ20の排出駆動を、吐出速度[V1]とした初期と、吐出速度[V2](>[V1])とした後期都に分けたことにより、分注動作の高速化を図りつつも、分注容器S内においての分注液Lの飛散を防止し、さらにプローブ10の開口端10aに残される液滴Ldを小さくして分注精度の向上を図ることができる。また、また分注容器Sの洗浄不良も防止できるため、分注精度の向上と共に、以降に説明する自動分析においての分析精度の向上を図ることができる。
【0042】
≪第2実施形態≫
次に、先の
図1を用いて第2実施形態に係る分注機構2の構成を説明する。第2実施形態の分注機構2が、第1実施形態の分注機構1と異なるところは、配管系30’に設けられた開閉弁37’の構成と駆動制御部50’による分注動作の手順のみであり、他の構成は第1実施形態と同様である。このため、各構成要素には同一の符号を付し、以下においては配管系30’の開閉弁37’の構成、駆動制御部50’による分注動作のみを説明し、重複する説明は省略する。
【0043】
<配管系30’>
配管系30’は、排出管31、吸引管33、共通配管35、および開閉弁37’を備えている。このうち開閉弁37’のみが第1実施形態のものとは異なる。すなわち開閉弁37’は、例えば3方弁として構成された電磁弁であるが、排出管31を常時開放されるノーマリーオープンとし、吸引管33を常時閉塞されるノーマリークローズとするものである。したがって開閉弁37’は、非導通状態において、排出管31を開通させてポンプ20とプローブ10との間を開通し、吸引管33を閉塞させて供給ボトルBとポンプ20との間を遮断する。
【0044】
<駆動制御部50’>
駆動制御部50’は、プローブ10に設けられた移動機構11、ポンプ20の駆動部21、配管系30’の開閉弁37’、およびヒータ40に接続され、これらの駆動を制御することは、第1実施形態と同様である。また、このような駆動制御部50’は、ここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備え、予め設定された自動分析装置用の分注動作の処理プログラムに従って各部の駆動を制御することは、第1実施形態と同様である。このような駆動制御部50’によって実行される分注動作の詳細は、次の通りである。
【0045】
<分注動作>
図9は、第2実施形態に係る分注機構2における分注動作を説明するフローチャートであり、第1実施形態の分注機構1における分注動作と同一のステップには、同一の符号を付している。以下、
図9のフローチャートに従い、その他の必要図面を参照しつつ、分注機構2において実施される分注動作の手順を説明する。本フローは、駆動制御部50’を構成するCPUが、ROMに記録されたプログラムを実行することにより実現される。
【0046】
[ステップS201(
図10参照)]
先ずステップS201では、開閉弁37’を切り替えることにより、排出管31を閉塞してポンプ20とプローブ10との間を遮断する。これにより、吸引管33を開通してポンプ20と供給ボトルBとの間を開通させる。
【0047】
この際、前回までの分注動作を終了した時点では、移動機構11の駆動により、プローブ10は洗浄位置に配置され、より詳しくはプローブ10の開口端10aが、洗浄槽S1内に挿入された状態となっている。また、配管系30’は、排出管31が開通してポンプ20とプローブ10との間が開通し、吸引管33が閉塞されてポンプ20と供給ボトルBとの間が遮断された状態となっている。
【0048】
このような状態において、上述したように開閉弁37’を切り替えることにより、排出管31を閉塞してポンプ20とプローブ10との間を遮断し、吸引管33を開通させてポンプ20と供給ボトルBとの間を開通させるのである。
【0049】
[ステップS101〜ステップS106(
図3〜
図6参照)]
その後は、第1実施形態で説明したステップS101〜ステップS106を、同様の手順で実施する。
【0050】
すなわち
図3に示したように、ステップS101では、分注液Lの供給ボトルBからポンプ20に分注液Lを吸引し、引き続きステップS102において分注液Lの余剰量の調整を行う。その後、
図4に示したように、ステップS103では、開閉弁37’を切り替えることにより、ポンプ20とプローブ10との間を開通させ、ポンプ20と供給ボトルBとの間を遮断する。
【0051】
次に
図5に示すように、ステップS104では、移動機構11の駆動により、プローブ10を洗浄位置から分注液Lの吐出位置に移動させる。続くステップS105では、ポンプ20の排出駆動により、プローブ10の開口端10aに分注液Lの液滴Ldが形成される初期の吐出速度[V1]で、ポンプ20内の分注液Lをプローブ10の開口端10aから分注容器S内に吐出する。
【0052】
次いで
図6に示すように、ステップS106では、ポンプ20の排出駆動により、プローブ10の開口端10aに分注液Lの液柱Lpが形成される後期の吐出速度[V2](>[V1])で、ポンプ20内の分注液Lをプローブ10の開口端10aから分注容器S内に吐出する。
【0053】
[ステップS207(
図11参照)]
以上の後、ステップS207では、移動機構11の駆動により、プローブ10を分注液Lの吐出位置から洗浄位置に移動させる。より詳しくは、ポンプ20とプローブ10との間が開通し、ポンプ20と供給ボトルBとの間が遮断されたままの状態で、プローブ10を分注容器Sの上部の吐出位置から移動させ、開口端10aを洗浄槽S1内に挿入させる。
【0054】
[ステップS109]
その後のステップS109では、第1実施形態と同様に、予め設定されたn回数の分注が終了したか否かを判断し、n回の分注が終了した(YES)と判断した場合には、一連の分注動作を終了させる。一方、n回の分注が終了していない(NO)と判断した場合には、ステップS201に戻り、以降のステップを繰り返す。尚、この繰り返しにおいては、吐出位置に配置される分注容器Sを、新たな分注容器Sと交換する動作が実施される。
【0055】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態であっても、1回の分注動作におけるポンプ20の排出駆動を、吐出速度[V1]とした初期と、吐出速度[V2](>[V1])とした後期都に分けたことにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、本第2実施形態においては、
図11を用いて説明したように、ステップS106での分注液の吐出を終了させた後のステップS207では、開閉弁37’を切り替えることなく、プローブ10を洗浄槽S1内に移動させる手順としている。このため、分注動作が終了した後に、開閉弁37’の切り替えによる衝撃でプローブ10の開口端10aから分注液Lの液滴が落下した場合であっても、その液滴が分注容器S内に落下することはない。したがって、分注容器S内における分注液Lの供給量のばらつきを防止でき、分注精度の向上を図ることが可能である。
【0056】
≪分注機構の変形例≫
図12は、上述した第1実施形態の変形例としての分注機構3の構成を示す図である。この図に示す分注機構3が第1実施形態の分注機構と異なるところは、配管系30aに設けた開閉弁37a,37bが2方弁であって、排出管31と吸引管33とのそれぞれに設けられているところにある。駆動制御部50によって実施される分注動作は第1実施形態と同様であってよいが、2つの開閉弁37a,37bのそれぞれの駆動を制御することのみが異なる。このような変形例の構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
尚、この変形例は、第2実施形態とも組み合わせることが可能であり、この場合、第2実施形態で説明した分注機構2の配管系30’に設けた開閉弁37’を、2方弁とすればよく、このような構成であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
≪自動分析装置の全体構成≫
次に、
図13に基づいて本発明を適用した自動分析装置100の構成を説明する。この図に示す自動分析装置100は、上述した分注機構1を用いて構成されたものであり、ここでは一例として化学発光酵素免疫測定法(CLEIA:Chemiluminescent Enzyme Immunoassay)を適用した免疫分析を、複数の検体に対して連続して実施するものとして説明を行なう。
【0059】
CLEIAは、主な工程として、反応容器内で検体(抗原又は抗体)と試薬とを反応させる反応工程、反応容器内の反応生成物(bound)と未反応物質(free)を分離する分離工程(BF分離)、各試薬と検体とが反応して生成される免疫複合体から生じる発光の発光量を測定する測光工程を有する。
【0060】
このような免疫分析を行なうための自動分析装置100は、分注機構1が設けられた自動測定部100a、および自動測定部100a全体の制御を行うとともに自動測定部100aから出力される測定データの分析を行う制御装置100bとを備えている。以下、先ず分注機構1が設けられた自動測定部100aの構成を説明し、次いで制御装置100bを説明する。
【0061】
<自動測定部100a>
自動測定部100aは、発光計測装置102、反応容器供給ユニット103、検体架設ユニット104、反応容器搬送ユニット105、検体分注ユニット106、試薬保冷ユニット107、第1の試薬分注ユニット108、第2の試薬分注ユニット109、免疫酵素反応ユニット110、第1のBF分離ユニット111、第2のBF分離ユニット112、基質液保冷庫114、および容器移送アーム115を備える。
【0062】
発光計測装置102は、CLEIAを適用した検体(抗原または抗体)の定量に用いられる装置であり、反応容器S内において生じさせた化学発光現象の発光強度を計測する装置である。この発光計測装置102は、免疫酵素反応ユニット110に近接して配置される。
【0063】
反応容器供給ユニット103は、複数の反応容器Sを収容し、それら複数の反応容器Sを1つずつ反応容器供給ユニット103内の移送位置に供給する。移送位置に供給された反応容器Sは、反応容器搬送ユニット105によって免疫酵素反応ユニット110に搬送される。免疫酵素反応ユニット110に搬送された反応容器Sには、検体と所定の試薬が注入される。
【0064】
検体架設ユニット104は、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されているターンテーブルを備える。この検体架設ユニット104には、複数の検体容器104aが収容されている。検体容器104aには、被検者から採取した血液又は尿等からなる検体(サンプル)が収容される。複数の検体容器104aは、検体架設ユニット104の周方向に所定の間隔を空けて並べて配置されている。検体架設ユニット104は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。そして、検体架設ユニット104は、不図示の駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。
図13の例では、検体架設ユニット104の周方向に並べられた検体容器104aの列は、検体架設ユニット104の半径方向に所定の間隔を空けて2列設けられている。なお、検体として、所定の希釈液で希釈された検体を用いてもよい。
【0065】
反応容器搬送ユニット105は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームと、アームの先端部に設けられた保持部を備える。反応容器搬送ユニット105は、反応容器供給ユニット103の供給位置に供給された反応容器Sを保持部により保持し、アームを旋回して、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット110の所定の位置に搬送する。
【0066】
検体分注ユニット106は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームと、アームの先端部に設けられたプローブを備える。検体分注ユニット106は、検体架設ユニット104の所定位置に移動された検体容器104a内の検体をプローブによって吸引し、アームを旋回して、所定のタイミングで免疫酵素反応ユニット110の所定の位置にある反応容器Sに分注する。
【0067】
試薬保冷ユニット107は、検体架設ユニット104と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されているターンテーブルを備える。試薬保冷ユニット107は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回動可能に支持されており、この不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で正回転又は逆回転する。
【0068】
試薬保冷ユニット107には、第1の試薬容器107aと第2の試薬容器107bが収容されている。第1の試薬容器107aと第2の試薬容器107bは、試薬保冷ユニット107の周方向上に所定の間隔を空けて並べて配置される。第1の試薬容器107aには、第1の試薬として、検体中の目的の抗原と反応する磁性粒子からなる磁性試薬が収容される。また、第2の試薬容器107bには、第2の試薬として、検体中の抗原と磁性試薬が結合した反応生成物と反応する標識試薬(酵素抗体)が収容される。試薬保冷ユニット107内は、不図示の保冷機構によって所定の温度に保たれている。そのため、第1の試薬容器107aに収容された第1の試薬(磁性試薬)と、第2の試薬容器107bに収容された第2の試薬(標識試薬)は、所定の温度で保冷される。
【0069】
免疫酵素反応ユニット110では、周方向に配置された反応容器S内で検体と分析項目に対応する所定の試薬との免疫反応と、この免疫反応で生成される免疫複合体と化学発光基質による酵素反応とが行われる。免疫酵素反応ユニット110は、検体架設ユニット104と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されているターンテーブルを備える。免疫酵素反応ユニット110は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されており、この不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で回転する。ここでは、免疫酵素反応ユニット110は、反時計回りに回転する。
図13の例では、免疫酵素反応ユニット110の周方向に並べられた反応容器Sの列は、免疫酵素反応ユニット110の半径方向に所定の間隔を空けて1列セットされているが、後述する第1の試薬用の反応容器Sの列と第2の試薬用の反応容器Sの列を半径方向に所定の間隔を空けて設けてもよい。
【0070】
免疫酵素反応ユニット110は、検体が注入された反応容器Sに第1の試薬分注ユニット108によって磁性試薬が分注されると、不図示の撹拌機構により磁性試薬と検体の混合液を撹拌し、検体中の抗原と磁性試薬とを一定時間免疫反応させる(1次免疫反応)。次に、免疫酵素反応ユニット110は、この反応容器Sを第1の集磁機構(磁石113)に移動し、抗原と磁性試薬が結合した反応生成物を磁力により集磁する。そして、この状態で反応容器S内が洗浄され、磁性試薬と反応しなかった未反応物質が除去される(1次BF分離)。
【0071】
第1の集磁機構は、免疫酵素反応ユニット110の外周部近傍に配置された第1のBF分離ユニット111に対応した位置に固定されている。免疫酵素反応ユニット110のターンテーブルは、固定された下層と回転可能な上層の二層で構成されている。下層のターンテーブルには、第1の集磁機構として磁石113が配置され、上層のターンテーブルには反応容器Sが配置される。磁石113は、反応容器S内の反応生成物を集磁する。
【0072】
第1のBF分離ユニット111は、アーム125と、アーム125に取り付けられたノズル121と、BFノズル洗浄槽124とを備える。アーム125は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。このアーム125は、ノズル121を、免疫酵素反応ユニット110の1次BF分離位置にある反応容器Sと、第1のBF分離ユニット111側のノズル洗浄位置にあるBFノズル洗浄槽124に移動する。ノズル121は、1次BF分離位置において、検体と磁性試薬が注入された反応容器S内に洗浄液を吐出及び吸引して洗浄し、磁性試薬と反応しなかった未反応物質を除去する(BF洗浄)。
【0073】
第1のBF分離ユニット111は、反応容器Sが1次BF分離位置に搬送されると、1次BF分離を行う。1次BF分離及びBF洗浄により、反応容器Sには、検体中の目的の抗原と磁性試薬が結合した反応生成物が集磁される。そして、1次BF分離が終了すると、アーム125によりノズル121をBFノズル洗浄槽124があるノズル洗浄位置に移動する。
【0074】
1次BF分離後、免疫酵素反応ユニット110は、反応生成物が残留した反応容器Sに、第2の試薬分注ユニット109によって標識試薬が分注されると、不図示の撹拌機構により磁性試薬と検体の混合液を撹拌し、反応生成物と標識試薬とを一定時間免疫反応させる(2次免疫反応)。次に、免疫酵素反応ユニット110は、この反応容器Sを不図示の第2の集磁機構に移動し、反応生成物と標識試薬が結合した免疫複合体を磁力により集磁する。そして、この状態で反応容器S内が洗浄され、標識試薬と反応しなかった未反応物質が除去される(2次BF分離)。
【0075】
第2の集磁機構は、第1の集磁機構の磁石113と同様の磁石を有し、免疫酵素反応ユニット110の外周部近傍に配置された第2のBF分離ユニット112に対応した位置に固定されている。
図13の例では、第2の集磁機構が備える磁石は、2次BF分離位置にあるノズル121の下方に配置されている。
【0076】
第2のBF分離ユニット112は、第1のBF分離ユニット111と同様の構成を有し、第1のBF分離ユニット111に対し周方向に所定の距離をあけて配置される。アーム125は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。このアーム125は、ノズル121を、免疫酵素反応ユニット110の2次BF分離位置にある反応容器Sと、第2のBF分離ユニット112側のノズル洗浄位置にあるBFノズル洗浄槽124に移動する。ノズル121は、2次BF分離位置において、標識試薬が注入された反応容器S内に洗浄液を吐出及び吸引して洗浄し、標識試薬と反応しなかった余剰の未反応物質を除去する(BF洗浄)。
【0077】
第2のBF分離ユニット112は、反応容器Sが2次BF分離位置に搬送されると、2次BF分離を行う。2次BF分離及びBF洗浄により、反応容器Sには、検体中の目的の抗原及び磁性試薬からなる反応生成物と標識試薬とが結合した免疫複合体が集磁される。そして、2次BF分離が終了すると、アーム125によりノズル121をBFノズル洗浄槽124があるノズル洗浄位置に移動する。また、BFノズル洗浄槽124の近傍には、後述する基質液分注ユニット126のプローブ10を洗浄、又はプローブ10の待機位置となる洗浄槽S1が配置されている。
【0078】
第2のBF分離ユニット112のアーム125には、さらに基質液分注ユニット126が取り付けられている。基質液分注ユニット126は、ノズル121よりもアーム125の回転軸から遠い位置に配置される。この基質液分注ユニット126として、上述した第1実施形態の分注機構1、または他の実施形態または変形例の分注機構が用いられる。
【0079】
基質液分注ユニット126は、不図示のチューブを介して、基質液を収容して保冷する基質液保冷庫114と接続している。基質液分注ユニット126は、磁性試薬、抗原及び標識試薬(酵素抗体)が結合した免疫複合体に対し、標識試薬と特異的に反応する化学発光基質を含んだ基質液を、2次BF分離後の反応容器S内に分注する。そして、基質液が注入された反応容器Sは、免疫酵素反応ユニット110の回転によって、所定位置までに搬送される。所定位置に搬送された反応容器Sは、容器移送アーム115によって発光計測装置102へ移送される。ここでは、この反応容器Sが分注容器Sとなる。
【0080】
<制御装置100b>
制御装置100bは、分注機構1を含む自動測定部100aの各ユニットの動作を制御すると共に、発光計測装置102の光検出器から出力される計測データのデータ処理を行う。このような制御装置100bは、入出力処理部、入力部、分析部、記憶部、出力部、および通信インターフェース等を備えて、先に説明した分注機構1の各構成要素の他、自動測定部100aの各ユニットが接続されている。
【0081】
この自動分析装置100においては、先に説明した分注機構1の駆動制御部50(
図1参照)が、この制御装置100bに設けられた構成である。そして制御装置100bの駆動制御部50において、先に説明した分注機構1の各部の駆動が制御される。
【0082】
<自動分析装置100の効果>
以上説明した自動分析装置100によれば、分注機構1を用いて反応容器S内への基質液の分注動作が行われる。このため、基質液の反応容器Sへの分注動作に際し、反応容器S内においての基質液(すなわち分注液L)の飛散を防止しつつ、分注動作の高速化を図ることが可能になる。反応容器S内においての基質液の飛散が防止されるため、反応容器S内に分注した基質液の全量を、検体と反応させることが可能となり、分析精度の向上を図ることが可能となる。しかも、1回の分注動作の高速化により、分析速度の高速化を図ることも可能となる。
【0083】
尚、以上の自動分析装置100においては、基質液分注ユニット126に対して、第1実施形態の分注機構1を適用する構成を説明した。しかしながら、第1実施形態の分注機構1、および他の実施形態や変形例の分注機構は、検体分注ユニット106、第1の試薬分注ユニット108や、第2の試薬分注ユニット109に対して適用してもよい。ただし、実施形態および変形例の分注機構は、内容物が空の場合や固形物のみが収容されている分注容器(ここでは反応容器S)に対して、液体状の分注液を分注する分注ユニットに対して適用することで、上述した効果が十分に発揮される。