(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595925
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】車載電装品温調装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20191010BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20191010BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20191010BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20191010BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20191010BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20191010BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20191010BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20191010BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20191010BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20191010BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20191010BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20191010BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20191010BHJP
H01M 10/6551 20140101ALN20191010BHJP
H01M 2/10 20060101ALN20191010BHJP
H01M 10/42 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
H01M10/633
B60R16/033 C
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
H01M10/6566
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
H05K7/20 H
B60K11/06
H02J7/00 301A
H02J7/00 P
H02J7/10 L
!H01M10/6551
!H01M2/10 S
!H01M10/42 P
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-15590(P2016-15590)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-135052(P2017-135052A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】中曽 善朗
【審査官】
下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−112268(JP,A)
【文献】
特開2005−318675(JP,A)
【文献】
特開2013−005576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 − 10/667
B60K 11/00 − 15/10
B60R 16/00 − 17/02
H05K 7/20
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H01M 10/42 − 10/48
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリと当該バッテリを充電する車載充電器との温度を調節する車載電装品温調装置であって、
冷却風を発生させる冷却ファンと、
前記冷却ファンからの冷却風が送風されるとともに、前記冷却ファンの送風方向下流側に設けられた2つの分岐路と、この2つの分岐路に対応して当該2つの分岐路の送風方向下流側に設けられた2つの収容室とを有する送風ダクトと、
前記2つの分岐路のいずれか一方を選択的に開閉可能な第一開閉手段と、
前記2つの収容室を連通させる連通孔を開閉可能な第二開閉手段と、
前記第一開閉手段及び前記第二開閉手段の開閉動作を個別に制御可能な制御手段と、
を備え、
前記2つの収容室のうち、一方の収容室内に前記車載充電器が収容されるとともに、他方の収容室内に前記バッテリが収容され、
前記制御手段は、
前記車両が走行中の場合には、前記第一開閉手段により、前記2つの分岐路のうち前記一方の収容室に連通する一方の分岐路を閉塞させて他方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させ、
前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が所定の温度閾値よりも低い場合には、前記第一開閉手段により前記他方の分岐路を閉塞させて前記一方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を開放させることを特徴とする車載電装品温調装置。
【請求項2】
前記温度閾値は、前記バッテリの充電量が制限されるか否かを判定するための閾値であることを特徴とする請求項1に記載の車載電装品温調装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値以上かつ他の温度閾値未満である場合には、前記第一開閉手段により前記他方の分岐路を閉塞させて前記一方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させることを特徴とする請求項1または2に記載の車載電装品温調装置。
【請求項4】
前記第一開閉手段は、前記2つの分岐路の双方を同時に開放可能であり、
前記制御手段は、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値よりも高い他の温度閾値以上である場合には、前記第一開閉手段により前記2つの分岐路の双方を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置。
【請求項5】
前記他の温度閾値は、前記バッテリの冷却が不要であるか否かを判定するための閾値であることを特徴とする請求項3または4に記載の車載電装品温調装置。
【請求項6】
前記送風ダクトは、前記2つの収容室の送風方向下流側の端部に連通されて、当該2つの収容室内の冷却風を個別にダクト外へ排出させる2つの排風路を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置。
【請求項7】
前記2つの排風路のうち、前記一方の収容室に連通する一方の排風路を開閉可能な第三開閉手段を備え、
前記制御手段は、前記第三開閉手段の開閉動作を制御可能であるとともに、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値よりも低い場合に、前記第三開閉手段により前記一方の排風路を閉塞させることを特徴とする請求項6に記載の車載電装品温調装置。
【請求項8】
前記バッテリの温度を検出可能な温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記バッテリの温度に基づいて、前記第一開閉手段及び前記第二開閉手段の開閉動作を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリ及び充電器の温度を調節する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車では、蓄電池であるバッテリと、これを充電するための車載充電器とが車両に搭載されている。これら車載充電器及びバッテリは、充電時や駆動時の発熱による温度上昇を抑えるために冷却が必要となるが、冷却の必要な状況が互いに異なるため、近くに配置された場合であっても冷却ファンなどの冷却機構は個別に設けられていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、送風路を切り替え可能なダクト内に車載充電器及びバッテリを配置して冷却することにより、これら車載充電器とバッテリの冷却機構を共用化して構造の簡便化を図っている。より詳しくは、ダクト内に冷却ファン、バッテリ及び車載充電器をこの順に配置するとともに、バッテリと車載充電器との間に分岐路を形成して当該分岐路と車載充電器側とに送風路の切り替えを可能なように構成している。
そして、車両走行時には、車載充電器側の送風路を閉塞することによりバッテリのみを冷却し、充電が行われる停車時には、車載充電器側の送風路を開放することによりバッテリと車載充電器の双方を冷却できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5257079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池などのバッテリでは、温度が低過ぎる場合に劣化防止の目的で充電量を制限する場合があるため、このような場合にはバッテリを昇温させて充電を行うべきである。
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、車載充電器及びバッテリの冷却しか行えないため、バッテリを昇温させることができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡便な構造で車載充電器及びバッテリの温度を好適に調節することができる車載電装品温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載されたバッテリと当該バッテリを充電する車載充電器との温度を調節する車載電装品温調装置であって、
冷却風を発生させる冷却ファンと、
前記冷却ファンからの冷却風が送風されるとともに、前記冷却ファンの送風方向下流側に設けられた2つの分岐路と、この2つの分岐路に対応して当該2つの分岐路の送風方向下流側に設けられた2つの収容室とを有する送風ダクトと、
前記2つの分岐路のいずれか一方を選択的に開閉可能な第一開閉手段と、
前記2つの収容室を連通させる連通孔を開閉可能な第二開閉手段と、
前記第一開閉手段及び前記第二開閉手段の開閉動作を個別に制御可能な制御手段と、
を備え、
前記2つの収容室のうち、一方の収容室内に前記車載充電器が収容されるとともに、他方の収容室内に前記バッテリが収容され、
前記制御手段は、
前記車両が走行中の場合には、前記第一開閉手段により、前記2つの分岐路のうち前記一方の収容室に連通する一方の分岐路を閉塞させて他方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させ、
前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が所定の温度閾値よりも低い場合には、前記第一開閉手段により前記他方の分岐路を閉塞させて前記一方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を開放させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載電装品温調装置において、
前記温度閾値は、前記バッテリの充電量が制限されるか否かを判定するための閾値であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車載電装品温調装置において、
前記制御手段は、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値以上かつ他の温度閾値未満である場合には、前記第一開閉手段により前記他方の分岐路を閉塞させて前記一方の分岐路を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置において、
前記第一開閉手段は、前記2つの分岐路の双方を同時に開放可能であり、
前記制御手段は、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値よりも高い他の温度閾値以上である場合には、前記第一開閉手段により前記2つの分岐路の双方を開放させるとともに、前記第二開閉手段により前記連通孔を閉塞させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の車載電装品温調装置において、
前記他の温度閾値は、前記バッテリの冷却が不要であるか否かを判定するための閾値であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置において、
前記送風ダクトは、前記2つの収容室の送風方向下流側の端部に連通されて、当該2つの収容室内の冷却風を個別にダクト外へ排出させる2つの排風路を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車載電装品温調装置において、
前記2つの排風路のうち、前記一方の収容室に連通する一方の排風路を開閉可能な第三開閉手段を備え、
前記制御手段は、前記第三開閉手段の開閉動作を制御可能であるとともに、前記バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が前記温度閾値よりも低い場合に、前記第三開閉手段により前記一方の排風路を閉塞させることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車載電装品温調装置において、
前記バッテリの温度を検出可能な温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記バッテリの温度に基づいて、前記第一開閉手段及び前記第二開閉手段の開閉動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両が走行中の場合には、冷却ファンからの冷却風が他方の分岐路を通じて他方の収容室内に流入し、当該他方の収容室内のバッテリが冷却される。そのため、車両の走行中には、駆動中のバッテリのみが冷却される。
また、バッテリが充電中であって当該バッテリの温度が所定の温度閾値よりも低い場合には、冷却ファンからの冷却風が一方の分岐路を通じて一方の収容室内に流入し、当該一方の収容室内の車載充電器が冷却される。そして、この車載充電器の熱によって温まった冷却風が、連通孔から他方の収容室内に流入して、当該他方の収容室内のバッテリを昇温させる。そのため、バッテリが低温状態での充電時には、駆動中の車載充電器が冷却されつつ、充電量が制限されないようバッテリが昇温される。
これにより、車載充電器とバッテリとの温度調節機構を共用化するとともに、車両走行時におけるバッテリの冷却と、バッテリが低温状態での充電時における車載充電器の冷却及びバッテリの昇温とを好適に行うことができる。したがって、簡便な構造で車載充電器及びバッテリの温度を好適に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車載電装品温調装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】車載電装品温調装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】車載電装品温調装置による温度調節処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】車載電装品温調装置での各温度調節状態を示す図である。
【
図5】車載電装品温調装置での各温度調節状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車載電装品温調装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[車載電装品温調装置の構成]
まず、本実施形態における車載電装品温調装置1の構成について説明する。
図1は、車載電装品温調装置1の概略構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、車載電装品温調装置1は、図示しない車両に搭載されており、当該車両の荷室などに搭載されたバッテリ3及び車載充電器2の温度を調節(主に冷却)するものである。車両は、電気自動車(EV)またはプラグインハイブリッド自動車(PHV、PHEV)であり、車載充電器2により充電されたバッテリ3の電気エネルギーによって走行可能なものである。
【0020】
具体的に、車載電装品温調装置1は、冷却風を発生させる冷却ファン4と、この冷却ファン4からの冷却風を送る送風ダクト5とを備えている。
【0021】
送風ダクト5は、冷却ファン4が配置された送風方向の上流端(
図1の左端)の下流側(
図1の右側)で2つの分岐路51に分岐されており、この2つの分岐路51の送風方向下流側に、当該2つの分岐路51に対応した2つの収容室52を有している。具体的には、2つの分岐路51のうち、一方の第一分岐路511が2つの収容室52のうちの第一収容室521に連通しており、他方の第二分岐路512が第二収容室522に連通している。2つの収容室52には、それぞれ分岐路51と連通した側とは反対側(つまり、送風方向の下流側)の端部に、当該2つの収容室52に対応した2つの排風路53(第一排風路531及び第二排風路532)が連通しており、これら2つの排風路53の送風方向の下流側がダクト外に開放されている。
【0022】
2つの収容室52は、ダクト壁52aを介して並設されており、内部に車載充電器2及びバッテリ3を収容している。具体的には、第一収容室521内に車載充電器2が収容され、第二収容室522内にバッテリ3が収容されている。
車載充電器2は、バッテリ3を充電するためのものであり、当該バッテリ3と電気的に接続されている。この車載充電器2は、停車時に図示しない外部充電設備に接続されることでバッテリ3を充電するように構成されている。また、車載充電器2には、当該車載充電器2の温度を検出(計測)する充電器温度センサ21が設けられている。
バッテリ3は、例えばリチウムイオン電池であり、車両を走行等させるための電気エネルギーを蓄電する。また、バッテリ3には、当該バッテリ3の温度を検出(計測)するバッテリ温度センサ31が設けられている。
【0023】
また、送風ダクト5内には、冷却風の送風路を切り替えるための3つの切替弁6が設けられている。
これら3つの切替弁6のうち、第一切替弁61は、2つの分岐路51の分岐点に設けられており、当該2つの分岐路51のいずれか一方を選択的に開閉可能であるとともに、これら双方を同時に開放することも可能なようになっている。
第二切替弁62は、2つの収容室52間のダクト壁52aに形成されて当該2つの収容室52を連通させる連通孔52bを開閉可能なように設けられている。本実施形態では、連通孔52bがダクト壁52aのうち送風方向の略中央に設けられており、第二切替弁62が送風方向の下流側を開閉させるように設けられている。但し、連通孔52b及び第二切替弁62は、第一排風路531が後述の第三切替弁63に閉塞された状態で、第一分岐路511から第一収容室521内に流れ込んだ冷却風が車載充電器2全体の表面上を流れてから当該連通孔52bに流れ込むように(つまり、第一分岐路511からの冷却風が当該連通孔52bに直ぐに流れ込んでしまわないように)設けられていればよい。
第三切替弁63は、第一収容室521に連通した第一排風路531を開閉可能に設けられており、本実施形態では、当該第一排風路531のうち送風方向の上流端に設けられている。
【0024】
続いて、車載電装品温調装置1の制御構成について説明する。
図2は、車載電装品温調装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、車載電装品温調装置1は、車両の各部と電気的に接続されて当該各部を制御するECU(Engine Control Unit)10を備えている。
具体的に、ECU10は、充電器温度センサ21及びバッテリ温度センサ31から車載充電器2及びバッテリ3の温度が出力されるほか、3つの切替弁6の開閉動作を個別に制御したり、冷却ファン4の動作を制御したりすることが可能となっている。
また、ECU10は、車載充電器2の動作を検知してバッテリ3の充電状態を検出可能なほか、バッテリ3の充電量(蓄電量)も検出可能に構成されている。
【0026】
[車載電装品温調装置の動作]
続いて、車載充電器2及びバッテリ3の温度を調節する温度調節処理時の車載電装品温調装置1の動作について説明する。
図3は、車載電装品温調装置1による温度調節処理の流れを示すフローチャートであり、
図4及び
図5は、車載電装品温調装置1での各温度調節状態を示す図である。
【0027】
図3に示すように、まずECU10は、車両各部の状態を検知して、当該車両が停車中であるか否かを判定する(ステップS1)。ここで、「停車」とは、完全にエンジンが停止している状態を言い、アイドリング状態や一時的なアイドリング停止状態を含まない。
【0028】
このステップS1において、車両が停車中でなく走行中であると判定した場合(ステップS1;No)、ECU10は、第一切替弁61を車載充電器2側にして第一分岐路511を閉塞させ、第二切替弁62を閉じて2つの収容室52間の連通孔52bを閉塞させる(ステップS2)。そして、ECU10は、冷却ファン4を駆動させ(ステップS3)、上述のステップS1へ処理を移行する。
【0029】
これにより、
図4(a)に示すように、車両の走行中には、冷却ファン4からの冷却風が第二分岐路512を通じて第二収容室522内に流入し、当該第二収容室522内のバッテリ3を冷却して第二排風路532から送風ダクト5外へ排出される。
そのため、車両の走行中には、駆動中のバッテリ3のみが好適に冷却される。
【0030】
また、
図3に示すように、ステップS1において、車両が停車中であると判定した場合には(ステップS1;Yes)、ECU10は、バッテリ3が充電中であるか否かを判定する(ステップS4)。具体的に、ECU10は、車載充電器2の動作を検知したり、車載充電器2が外部充電設備に接続されたことを検知したりすることで、バッテリ3が充電されるか否かを判定する。
そして、ECU10は、バッテリ3が充電中でないと判定した場合には(ステップS4;No)、温度調節処理を終了する。このとき、ECU10は、冷却ファン4が駆動されていた場合には当該冷却ファン4を停止させる。
【0031】
また、ステップS4において、バッテリ3が充電中であると判定した場合には(ステップS4;Yes)、ECU10は、バッテリ温度センサ31によりバッテリ3の温度T
Bを検出する(ステップS5)。
【0032】
次に、ECU10は、バッテリ3の温度T
Bが所定の第一温度閾値α
1よりも低いか否かを判定する(ステップS6)。
ここで、第一温度閾値α
1は、充電量(蓄電量)が制限されるほどにバッテリ3が低温であるか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では約−10℃である。リチウムイオン電池などにおいては、所定以上の低温下では劣化防止の目的で充電量が制限される場合がある。そこで、このステップS6では、バッテリ3の温度T
Bが低過ぎるために当該バッテリ3が充電量を制限されるか否かが判定される。
【0033】
このステップS6において、バッテリ3の温度T
Bが第一温度閾値α
1よりも低いと判定した場合(ステップS6;Yes)、ECU10は、第一切替弁61をバッテリ3側にして第二分岐路512を閉塞させ、第二切替弁62を開いて2つの収容室52間の連通孔52bを開放させ、第三切替弁63を閉じて第一排風路531を閉塞させる(ステップS7)。それから、ECU10は、冷却ファン4を駆動させる(ステップS11)。
【0034】
これにより、
図4(b)に示すように、バッテリ3が低温状態(本実施形態では約−10℃未満)での充電時には、冷却ファン4からの冷却風が第一分岐路511を通じて第一収容室521内に流入し、当該第一収容室521内の車載充電器2を冷却する。そして、この車載充電器2の熱によって温まった冷却風が、連通孔52bから第二収容室522内に流入して、当該第二収容室522内のバッテリ3を昇温させ、第二排風路532から送風ダクト5外へ排出される。
そのため、例えば寒冷地での充電開始初期時など、バッテリ3が低温状態での充電時には、駆動中の車載充電器2が冷却されつつ、充電量が制限されないようバッテリ3が昇温される。
【0035】
また、
図3に示すように、ステップS6において、バッテリ3の温度T
Bが第一温度閾値α
1以上であると判定した場合には(ステップS6;No)、ECU10は、バッテリ3の温度T
Bが所定の第二温度閾値α
2よりも低いか否かを判定する(ステップS8)。
ここで、第二温度閾値α
2は、第一温度閾値α
1よりも大きな値であって、バッテリ3が冷却不要な程度にやや低温であるか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では約0℃である。つまり、このステップS8では、バッテリ3の冷却が不要であるか否かが判定される。
【0036】
このステップS8において、バッテリ3の温度T
Bが第二温度閾値α
2よりも低いと判定した場合(ステップS8;Yes)、ECU10は、第一切替弁61をバッテリ3側にして第二分岐路512を閉塞させ、第二切替弁62を閉じて2つの収容室52間の連通孔52bを閉塞させ、第三切替弁63を開いて第一排風路531を開放させる(ステップS9)。それから、ECU10は、冷却ファン4を駆動させる(ステップS11)。
【0037】
これにより、
図5(a)に示すように、バッテリ3がやや低温状態(本実施形態では約−10℃以上かつ約0℃未満)での充電時には、冷却ファン4からの冷却風が第一分岐路511を通じて第一収容室521内に流入し、当該第一収容室521内の車載充電器2を冷却して第一排風路531から送風ダクト5外へ排出される。
そのため、バッテリ3が充電量を制限される程には低温過ぎず且つ冷却不要な程度にやや低温状態での充電時には、駆動中の車載充電器2のみが冷却される。
【0038】
また、
図3に示すように、ステップS8において、バッテリ3の温度T
Bが第二温度閾値α
2以上であると判定した場合には(ステップS8;No)、ECU10は、第一切替弁61を動作させて2つの分岐路51の双方を開放させ、第二切替弁62を閉じて2つの収容室52間の連通孔52bを閉塞させ、第三切替弁63を開いて第一排風路531を開放させる(ステップS10)。それから、ECU10は、冷却ファン4を駆動させる(ステップS11)。
【0039】
これにより、
図5(b)に示すように、バッテリ3が低温でない状態(本実施形態では約0℃以上)での充電時には、冷却ファン4からの冷却風が2つの分岐路51を通じて2つの収容室52内に流入し、当該2つの収容室52内の車載充電器2及びバッテリ3を冷却して2つの排風路53から送風ダクト5外へ排出される。
そのため、例えば常温下での充電時などには、駆動中の車載充電器2及び充電中のバッテリ3の双方が冷却される。
【0040】
次に、
図3に示すように、ECU10は、バッテリ3の充電量を検出して当該バッテリ3の充電が完了したか否かを判定する(ステップS12)。そして、バッテリ3の充電が完了していないと判定した場合(ステップS12;No)、ECU10は、上述のステップS5へ処理を移行し、当該ステップS5以降の処理を繰り返す。また、バッテリ3の充電が完了したと判定した場合には(ステップS12;Yes)、ECU10は、冷却ファン4を停止させて(ステップS13)、温度調節処理を終了する。
【0041】
[効果]
以上のように、本実施形態の車載電装品温調装置1によれば、車両の走行中の場合には、冷却ファン4からの冷却風が第二分岐路512を通じて第二収容室522内に流入し、当該第二収容室522内のバッテリ3が冷却される。そのため、車両の走行中には、駆動中のバッテリ3のみが冷却される。
また、バッテリ3が充電中であって当該バッテリ3の温度T
Bが第一温度閾値α
1よりも低い場合には、冷却ファン4からの冷却風が第一分岐路511を通じて第一収容室521内に流入し、当該第一収容室521内の車載充電器2が冷却される。そして、この車載充電器2の熱によって温まった冷却風が、連通孔52bから第二収容室522内に流入して、当該第二収容室522内のバッテリ3を昇温させる。そのため、バッテリ3が低温状態での充電時には、駆動中の車載充電器2が冷却されつつ、充電量が制限されないようバッテリ3が昇温される。
これにより、車載充電器2とバッテリ3との温度調節機構を共用化するとともに、車両走行時におけるバッテリ3の冷却と、バッテリ3が低温状態での充電時における車載充電器2の冷却及びバッテリ3の昇温とを好適に行うことができる。したがって、簡便な構造で車載充電器2及びバッテリ3の温度を好適に調節することができる。
【0042】
また、バッテリ3が充電中であって当該バッテリ3の温度T
Bが第一温度閾値α
1以上かつ第二温度閾値α
2未満である場合には、第二分岐路512が閉塞されて第一分岐路511が開放されるとともに、2つの収容室52間の連通孔52bが閉塞される。
これにより、バッテリ3がやや低温状態での充電時には、冷却ファン4からの冷却風が第一分岐路511を通じて第一収容室521内に流入し、当該第一収容室521内の車載充電器2が冷却される。
したがって、バッテリ3が充電量を制限される程には低温過ぎず且つ冷却不要な程度にやや低温状態での充電時には、駆動中の車載充電器2のみを冷却することができる。
【0043】
また、バッテリ3が充電中であって当該バッテリ3の温度T
Bが第二温度閾値α
2以上である場合には、2つの分岐路51の双方が開放されるとともに、2つの収容室52間の連通孔52bが閉塞される。
これにより、バッテリ3が低温でない状態での充電時には、冷却ファン4からの冷却風が2つの分岐路51を通じて2つの収容室52内に流入し、当該2つの収容室52内の車載充電器2及びバッテリ3が冷却される。
したがって、例えば常温下での充電時などには、駆動中の車載充電器2及び充電中のバッテリ3の双方を冷却することができる。
【0044】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、バッテリ3の温度T
Bが第一温度閾値α
1以上かつ第二温度閾値α
2未満の場合に車載充電器2のみを冷却することとしたが、当該温度T
Bが第一温度閾値α
1以上の場合に車載充電器2及びバッテリ3の双方を冷却することとしてもよい。
また、第一温度閾値α
1や第二温度閾値α
2の値は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0046】
また、充電器温度センサ21やバッテリ温度センサ31が検出した車載充電器2やバッテリ3の温度に応じて、冷却ファン4の駆動力(冷却風の強さ)が調節されるように構成してもよい。
【0047】
また、車載充電器2及びバッテリ3の各筐体に、各収容室52内での冷却風の送風方向に沿った複数の放熱フィンを設けてもよい。
また、送風ダクト5の2つの収容室52は、車載充電器2及びバッテリ3の筐体としてもよい。つまり、2つの分岐路51、2つの排風路53及び連通孔52bが車載充電器2及びバッテリ3の筐体内に連通されるように構成し、冷却ファン4からの冷却風がそれぞれの筐体内を流れることとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 車載電装品温調装置
2 車載充電器
21 充電器温度センサ
3 バッテリ
31 バッテリ温度センサ(温度検出手段)
4 冷却ファン
5 送風ダクト
51 分岐路
511 第一分岐路(一方の分岐路)
512 第二分岐路(他方の分岐路)
52 収容室
521 第一収容室(一方の収容室)
522 第二収容室(他方の収容室)
52b 連通孔
53 排風路
531 第一排風路(一方の排風路)
532 第二排風路
6 切替弁
61 第一切替弁(第一開閉手段)
62 第二切替弁(第二開閉手段)
63 第三切替弁(第三開閉手段)
10 ECU(制御手段)
T
B バッテリの温度
α
1 第一温度閾値(温度閾値)
α
2 第二温度閾値(他の温度閾値)