(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々が、前後方向に延び、後端部において鍵盤シャーシに回動自在に支持されるとともに、下方に開放するガイド凹部を有する複数の鍵を備えた鍵盤楽器において、押鍵に伴って回動する前記鍵を案内するための鍵盤楽器の鍵ガイド構造であって、
前記鍵盤シャーシにおいて、前記鍵ごとに前記ガイド凹部の下側に立設された複数の鍵ガイドホルダと、
これらの複数の鍵ガイドホルダの上部にそれぞれ取り付けられ、前記ガイド凹部の左右の内側面に摺接する複数の鍵ガイド部材と、
を備え、
前記各鍵ガイド部材は、
正面形状が矩形状にかつ所定の厚さを有する板状に形成され、前記ガイド凹部の左右の内側面との間にそれぞれ所定の隙間を存した状態で配置された鍵ガイド本体と、
この鍵ガイド本体の前面及び後面の一方において、左右両端部から前後方向に沿って突出するように延び、左右方向に可撓性を有する左右2つの可撓部と、
これらの可撓部の先端部にそれぞれ、側方に凸に設けられ、前記ガイド凹部の左右の内側面に当接する左右2つの当接部と、
を有していることを特徴とする鍵盤楽器の鍵ガイド構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の鍵ガイド本体は、鍵のガイド凹部における左右のガイド壁間の距離とほぼ同じ横幅寸法を有するように形成されているため、鍵ガイド本体の製造時や取付時におけるバラツキ、さらには、鍵盤楽器の使用時における周囲の環境(温度や湿度)によっては、鍵ガイド本体とガイド凹部の左右のガイド壁との間の摩擦が増大することがある。この場合には、押鍵時に、鍵が必要以上に重くなったり、押鍵された鍵の戻りが遅くなったりするおそれがある。また、鍵ガイド本体の左右の側面と、ガイド凹部の左右のガイド壁との間に、隙間を確保することで、上記の摩擦の増大による不具合を解消することが可能であるものの、その隙間の大きさによっては、鍵の横振れを十分に防止できないことがある。加えてこの場合には、押鍵時に、鍵に対して横方向の力が作用することなどによって、鍵ガイド本体にガイド凹部のガイド壁が当たると、雑音が発生したり、隣接する鍵に接触するおそれもある。したがって、従来の鍵ガイド構造には改善の余地がある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、押鍵に伴って回動する鍵を、雑音を発生させることなく、安定して適切に案内することができる鍵盤楽器の鍵ガイド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、各々が、前後方向に延び、後端部において鍵盤シャーシに回動自在に支持されるとともに、下方に開放するガイド凹部を有する複数の鍵を備えた鍵盤楽器において、押鍵に伴って回動する前記鍵を案内するための鍵盤楽器の鍵ガイド構造であって、鍵盤シャーシにおいて、鍵ごとにガイド凹部の下側に立設された複数の鍵ガイドホルダと、これらの複数の鍵ガイドホルダの上部にそれぞれ取り付けられ、ガイド凹部の左右の内側面に摺接する複数の鍵ガイド部材と、を備え、各鍵ガイド部材は、正面形状が矩形状にかつ所定の厚さを有する板状に形成され、ガイド凹部の左右の内側面との間にそれぞれ所定の隙間を存した状態で配置された鍵ガイド本体と、この鍵ガイド本体の前面及び後面の一方において、左右両端部から前後方向に沿って突出するように延び、左右方向に可撓性を有する左右2つの可撓部と、これらの可撓部の先端部にそれぞれ、側方に凸に設けられ、ガイド凹部の左右の内側面に当接する左右2つの当接部と、を有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、前後方向に延びる複数の鍵は、それぞれ下方に開放するガイド凹部を有しており、後端部において鍵盤シャーシに回動自在に支持されている。また、鍵盤シャーシにおいて、複数の鍵ガイドホルダが、鍵ごとに、そのガイド凹部の下側に立設され、それらの鍵ガイドホルダの上部に、鍵ガイド部材が取り付けられている。
【0009】
各鍵ガイド部材は、正面形状が矩形状にかつ所定の厚さを有する板状に形成された鍵ガイド本体を有しており、この鍵ガイド本体が、鍵のガイド凹部の左右の内側面との間にそれぞれ所定の隙間を存した状態で配置されている。また、鍵ガイド本体の前面及び後面の一方には、左右両端部から前後方向に沿って突出するように延びる可撓部が設けられ、各可撓部の先端部には、側方に凸に設けられた当接部が、鍵のガイド凹部の左右の内側面に当接している。つまり、鍵ガイド部材の各可撓部の先端部に設けられた当接部が常に、鍵のガイド凹部の左右の内側面に、適度な摩擦でかつ比較的弱い力で当接している。これにより、押鍵時に、鍵のガイド凹部の左右の内側面が、鍵ガイド部材の鍵ガイド本体に直接、当たる場合に比べて、雑音の発生を効果的に抑制することができる。また、鍵ガイド部材の製造時や取付時のバラツキなどに起因して、押鍵時に、鍵のガイド凹部の内側面で鍵ガイド部材の当接部が押圧されても、可撓部が撓むことで、ガイド凹部の内側面と鍵ガイド部材の当接部の間で大きな摩擦が生じることがない。それにより、鍵の円滑な回動を確保することができ、鍵を安定して適切に案内することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵ガイド構造において、鍵ガイド部材は、軟質の合成樹脂から成り、各可撓部は、左右方向の厚さが所定寸法を有する薄肉状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、軟質の合成樹脂から成る鍵ガイド部材において、各可撓部を、左右方向の厚さが所定寸法を有する薄肉状に形成することにより、左右方向に可撓性を有する可撓部を容易に構成することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の鍵盤楽器の鍵ガイド構造において、各可撓部及び各当接部は、上下方向に延びるように形成され、各当接部が、その上下方向の全体にわたってガイド凹部の内側面に当接可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、鍵ガイド部材の左右の可撓部及び当接部がいずれも、上下方向に延びるように形成されていて、各当接部が、その上下方向の全体にわたって、鍵のガイド凹部の内側面に当接可能に構成されている。つまり、各当接部は、ガイド凹部の内側面にほぼ線接触の状態で接するので、両者の接触面積をできるだけ小さくすることで摩擦を抑制できるとともに、当接部が押圧された際に、可撓部を容易にかつバランス良く撓ませることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の一実施形態による鍵ガイド構造を適用した電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。なお、両図では、1オクターブ分のみを示している。
【0016】
図1及び
図2に示すように、この鍵盤装置1は、鍵盤シャーシ2と、この鍵盤シャーシ2に回動自在に取り付けられた白鍵3a及び黒鍵3bから成り、左右方向に並んだ状態に配置された複数の鍵3と、鍵3ごとに鍵盤シャーシ2に回動自在に取り付けられた複数のハンマー4と、各鍵3の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ5などを備えている。
【0017】
鍵盤シャーシ2は、所定の樹脂材料(例えばABS樹脂)を射出成形することなどにより、所定形状の樹脂成形品で構成されている。
図3(a)に示すように、この鍵盤シャーシ2では、その前部11、中央部12及び後部13がいずれも全体として左右方向に延びるように形成され、これらが左右方向に適宜、間隔を隔てた複数のリブ14によって連結されている。なお、以下の説明では、鍵盤シャーシ2の前部11、中央部12及び後部13をそれぞれ、「シャーシ前部11」、「シャーシ中央部12」及び「シャーシ後部13」というものとする。
【0018】
シャーシ前部11は、白鍵3aをガイドするものである。このシャーシ前部11には、白鍵3aごとに、下方から挿入され、その白鍵3aの横振れを防止するための複数(
図3(a)では7つ)の白鍵ガイド部11aが立設されている。また、シャーシ前部11には、各白鍵ガイド部11aの左右両側に、上下方向に貫通する係合孔11b、11bが設けられており、両係合孔11b、11bに、白鍵3aの後述する左右2つの上限位置規制部21a、21aがそれぞれ貫通した状態で係合する。
【0019】
シャーシ中央部12は、黒鍵3bをガイドするものである。このシャーシ中央部12には、前記シャーシ前部11と同様、黒鍵3bごとに、下方から挿入され、その黒鍵3bの横振れを防止するための複数(
図3(a)では5つ)の黒鍵ガイド部12aが立設されている。また、シャーシ中央部12の前方には、ハンマー4を支持するハンマー支持部15が設けられている。このハンマー支持部15は、左右方向に延びる一直線上に沿って延びる複数の支軸15aを有しており、これらの支軸15aに、ハンマー4が回動自在に支持されている。
【0020】
また、上記のハンマー支持部15とシャーシ前部11の間には、前記鍵スイッチ5が取り付けられている。
図1及び
図2(b)に示すように、鍵スイッチ5は、左右方向に延びる横長のプリント基板5aと、このプリント基板5a上に鍵3ごとに取り付けられたゴムスイッチから成る複数のスイッチ本体5bとで構成されている。
【0021】
シャーシ後部13は、鍵3を、その後端部において上下方向に回動自在に支持するものである。
図3(b)に示すように、シャーシ後部13は、隣接する鍵3、3同士を仕切るよう、互いに左右方向に所定間隔を隔てて、複数の仕切壁16が設けられている。そして、互いに隣り合う仕切壁16、16間には、左右対称に形成され、鍵3を回動自在に支持する所定の鍵支持部17が設けられている。具体的には、鍵支持部17は、鍵3の後述する左右の支点軸24、24を下方からそれぞれ支持する左右の下側支持部18、18(
図3(b)では左側のもののみ図示)と、鍵3の後端部において、その上面から背面に亘る部位を上方から支持する左右一対の上側支持部19、19とを備えている。
【0022】
鍵3は、所定の樹脂材料(例えばAS樹脂)を射出成形することなどにより、前後方向に所定長さ延びるとともに、下方に開放する中空状に形成されている。
図3(a)に示すように、白鍵3aの前端部には、左右の側壁から下方に延びかつその下端部が前方に屈曲するように形成された左右一対の上限位置規制部21(21a)が設けられており、前記シャーシ前部11の左右の係合孔11b、11bにそれぞれ貫通した状態で係合している。また、白鍵3aは、上限位置規制部21(21a)よりも後方の所定位置に、下方に突出するアクチュエータ部22(22a)が、ハンマー4の後述する係合凹部34に収容された状態で、これに係合している。一方、黒鍵3bは、その前端部に、白鍵3aの上限位置規制部21(21a)及びアクチュエータ部22(22a)と同様の機能を有する上限位置規制部21(21b)及びアクチュエータ部22(22b)を有している。
【0023】
また、
図3(a)に示すように、鍵3の後部は、それよりも前側部分に対して横幅が狭く形成され、前後方向に延びる後部本体23を有している。この後部本体23の左右の側面(
図3(a)では右側の側面のみ図示)にはそれぞれ、後端寄りの所定位置に、外方(左方及び右方)に突出する支点軸24、24が設けられている。各支点軸24は、下半部に円弧面を有するとともに、側面形状が半円状に形成されている。また、後部本体23の後端部には、その上面から背面に亘り、所定の曲率を有する曲面25が形成されている。この曲面25は、その側面形状が、鍵3の支点軸24を中心とする同心円に沿って凸状に湾曲するように形成されている。
【0024】
図2(b)に示すように、ハンマー4は、前後方向(
図2(b)の左右方向)に延びるハンマー本体31と、このハンマー本体31の後部の左右両側面に取り付けられ、前後方向に延びる2つの重り32(右側の重りのみ図示)とで構成されている。ハンマー本体31は、所定種類の合成樹脂(例えばポリアセタール)から成り、前部の所定位置に設けられた軸受部33を介して、鍵盤シャーシ2におけるハンマー支持部15の支軸15aに回動自在に係合している。また、ハンマー本体31の前部には、軸受部33の前方に、鍵3のアクチュエータ部22に係合する係合凹部34が設けられるとともに、係合凹部34の下側に、鍵スイッチ5のスイッチ本体5bを押圧するためのスイッチ押圧部35が設けられている。
【0025】
重り32は、ハンマー本体31よりも比重の大きな材料(例えば鉄などの金属)から成り、細長い板状の2枚の重りで構成されている。両重り32、32は、ハンマー本体31の後部を両側から挟んだ状態で、これに固定されている。
【0026】
以上のように構成された鍵盤装置1では、
図1及び
図2に示す離鍵状態において、鍵3を押鍵すると、その鍵3が、後端部の左右の支点軸24、24を中心として下方に回動する。これに伴い、鍵3のアクチュエータ部22が、ハンマー4の前部の係合凹部34を下方に押圧する。それにより、ハンマー4は、ハンマー支持部15の支軸15aを中心として、
図2(b)の反時計方向に回動しながら、スイッチ押圧部35で鍵スイッチ5の対応するスイッチ本体5bを上方から押圧する。なおこの場合、ハンマー4は、その後端部がシャーシ後部13のハンマーストッパ13aに下方から当接することによって、それ以上の回動が阻止される。
【0027】
一方、押鍵した鍵3を離鍵すると、ハンマー4が上記と逆方向に回動し、それに伴い、鍵3が、アクチュエータ部22を介して押し上げられることにより、上方に回動する。その結果、鍵3及びハンマー4は、
図1及び
図2に示すように、もとの離鍵状態に復帰する。なおこの場合、鍵3は、その前端部の上限位置規制部21が鍵盤シャーシ2の所定のストッパ20に下方から当接することによって、それ以上の回動が阻止される。
【0028】
次に、本発明に係る鍵ガイド構造について、
図3〜
図7を参照しながら、シャーシ前部11の白鍵ガイド部11a、及びこれによって案内される鍵3の構成をさらに詳細に説明する。なお、この鍵ガイド構造は、白鍵3a及び黒鍵3bにおいてほぼ同じであるので、以下の説明では、白鍵3aを中心に説明するものとする。
【0029】
図4は、シャーシ前部11における2つの白鍵ガイド部11aを示しており、一方(同図(a)及び(b)の左側)の白鍵ガイド部11aは、後述する鍵ガイド部材52が取り付けられた状態、他方(同図(a)及び(b)の右側)の白鍵ガイド部11aは、鍵ガイド部材52を取り外した状態を示している。同図に示すように、各白鍵ガイド部11aは、シャーシ前部11の水平な平坦部11cに立設された鍵ガイドホルダ51と、この鍵ガイドホルダ51に取り付けられた鍵ガイド部材52とで構成されている。
【0030】
鍵ガイドホルダ51は、鍵盤シャーシ2と一体に構成されており、上下方向に所定長さ延びる円筒状のホルダ部53と、このホルダ部53の前後にそれぞれ連なった状態で平坦部11cに立設された補強部54、55とを有している。ホルダ部53には、上方に開放しかつ左右方向に貫通した状態に形成され、上下方向に延びるスリット状の取付部53aが設けられており、この取付部53aに鍵ガイド部材52が取り付けられている。また、前後の補強部54、55はいずれも、平面形状がホルダ部53側に開放するコ字状に形成されている。なお、後ろ側の補強部55には、その下半部の左右の側面に連なった状態で、平坦部11cに立設された補助補強部55a、55aが設けられている。
【0031】
一方、鍵ガイド部材52は、軟質の合成樹脂(例えばエラストマー)から成り、
図4及び
図5に示すように、正面形状が縦長矩形状にかつ所定の厚さを有する板状の鍵ガイド本体41と、この鍵ガイド本体41の前面の左右両端部から前方に突出するように延び、左右方向の可撓性を有する左右2つの可撓部42と、これらの可撓部42、42の先端部にそれぞれ、側方に凸に設けられ、鍵3の後述する左右のガイド壁61、61に当接する左右2つの当接部43、43とを有している。
【0032】
鍵ガイド本体41は、所定寸法の横幅W1を有しており、この横幅W1が鍵3の左右のガイド壁61、61間の距離よりも小さく設定されている。また、鍵ガイド本体41の上側及び左右両側の縁部が所定の厚さを有しており、それらの縁部が、それ以外の部分よりも厚く形成されている。鍵ガイド本体41の上記縁部には、周方向に沿って延びる溝41aが形成されている。鍵ガイド本体41の上記縁部にグリスなどの潤滑剤が塗布されたときには、その溝41aに潤滑剤の一部が入り込み、保留される。それにより、鍵ガイド本体41の左右の側面に潤滑剤が保持された状態を、長期間にわたって維持することができ、押鍵時における鍵3の後述する左右のガイド壁61、61と鍵ガイド本体41の左右の側面との間の潤滑性を確保することができる。
【0033】
また、鍵ガイド本体41には、前面側の中央に、上下方向に延び、鍵ガイドホルダ51のホルダ部53内に挿入される挿入部56が設けられている。この挿入部56は、
図5(b)及び(c)に示すように、前後方向に比較的厚く形成されるとともに、下方に向かって左右方向の横幅が次第に小さくなるように形成されている。また、挿入部56の下端部には、前方に突出する係止凸部57が形成されている。この係止凸部57は、ほぼ水平な係止面57aと、その下側において前上がりに傾斜した傾斜面57bとを有している。
【0034】
図5(a)及び(b)に示すように、鍵ガイド部材52の左右の可撓部42、42及び当接部43、43は、左右対称に形成されている。具体的には、各可撓部42は、左右方向の厚さが所定寸法(例えば0.5mm)を有する薄肉状に形成され、側面形状が縦長矩形状になっている。一方、各当接部43は、各可撓部42の先端部において、上下方向の全体にわたって延び、鍵ガイド本体41の対応する左右の側面よりも外側に突出するように形成されている。つまり、
図5(a)に示すように、左右の当接部43、43の先端間の距離(以下「最大幅W2」という)は、鍵ガイド本体41の横幅W1よりも大きくなっている。
【0035】
以上のように構成された鍵ガイドホルダ51及び鍵ガイド部材52では、鍵ガイド部材52の中央の挿入部56が、鍵ガイドホルダ51のホルダ部53に対し、その取付部53aに上方から挿入された状態で、鍵ガイド部材52が鍵ガイドホルダ51に取り付けられている。この場合、
図4に示すように、鍵ガイド部材52の鍵ガイド本体41は、その上側及び左右の縁部が鍵ガイドホルダ51のホルダ部53よりも外方に突出した状態で取り付けられる。加えて、
図6に示すように、鍵ガイド本体41の係止凸部57が、鍵ガイドホルダ51のホルダ部53よりも下側に位置し、係止凸部57の係止面57aがホルダ部53の下端に係止される。これにより、鍵ガイド部材52は、鍵ガイドホルダ51に抜け止め状態でしっかりと取り付けられる。
【0036】
図7は、白鍵3aの前部を示しており、(a)はその内部構造、(b)及び(c)は白鍵ガイド部11aとの関係を示している。同図に示すように、白鍵3aの前部には、互いに左右方向に所定間隔を隔てた左右のガイド壁61、61が設けられている。各ガイド壁61は、上下方向に所定長さ延びるとともに、白鍵3aの天壁60aから垂下し、白鍵3aの対応する側壁60bから内方に所定長さ突出するスペーサ62を介して、白鍵3aと一体に構成されている。そして、左右のガイド壁61、61間の距離Gは、鍵ガイド部材52の鍵ガイド本体41の横幅W1よりも大きく、かつ左右の当接部43、43の最大幅W2以下に設定されている(W1<G≦W2)。なお、これらの両ガイド壁61、61によって、下方に開放するとともに鍵ガイド部材52が摺接する、本発明のガイド凹部が構成されている。
【0037】
上記のように構成された左右のガイド壁61、61を有する白鍵3aでは、離鍵状態において、鍵ガイド部材52の上端部が左右のガイド壁61、61の間に下方から若干入り込んだ状態となり、鍵ガイド部材52の鍵ガイド本体41と各ガイド壁61との間に、所定の隙間(例えば0.2mm)が画成される。この離鍵状態から白鍵3aを押鍵すると、後端部の支点軸24を中心として回動する白鍵3aは、両ガイド壁61、61が白鍵ガイド部11aの鍵ガイド部材52の左右の当接部43、43、またはこれに加えて、鍵ガイド本体41の側面に対して摺動しながら、横振れすることなく円滑に案内される。
【0038】
なお、詳細な説明は省略するが、黒鍵3bをガイドする黒鍵ガイド部12aは、白鍵ガイド部11aの鍵ガイド部材52と同一の鍵ガイド部材52を有しており、また、その鍵ガイド部材52は、左右の当接部43、43、またはこれに加えて、鍵ガイド本体41の側面が、黒鍵3bの左右の側壁に直接、摺接するようになっている。
【0039】
以上詳述したように、本実施形態によれば、各鍵ガイド部材52の鍵ガイド本体41は、その左右の側面が、対応する鍵3の両ガイド壁61、61との間に隙間を存した状態で配置され、鍵ガイド本体41の左右の可撓部42、42の先端部の当接部43、43が、左右のガイド壁61、61に当接している。つまり、鍵ガイド部材52の左右の当接部43、43が常に、鍵3の両ガイド壁61、61に、適度な摩擦でかつ比較的弱い力で当接している。これにより、押鍵時に、鍵3の左右のガイド壁61、61が、鍵ガイド部材52の鍵ガイド本体41に直接、当たる場合に比べて、雑音の発生を効果的に抑制することができる。
【0040】
また、鍵ガイド部材52の製造時や取付時のバラツキなどに起因して、押鍵時に、鍵3のガイド壁61で鍵ガイド部材52の当接部43が押圧されても、その当接部43が設けられた可撓部42が撓むことで、ガイド壁61と鍵ガイド部材52の当接部43の間で大きな摩擦が生じることがない。それにより、鍵3の円滑な回動を確保することができ、鍵3を安定して適切に案内することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、鍵ガイド部材52において、鍵ガイド本体41の上側及び左右両側の縁部にグリスなどの潤滑剤を塗布したが、その潤滑剤として、従来に比べて、比較的安価なものを採用したり、使用量を少なくしたりしても、雑音の発生を防止しながら、鍵ガイドとしての十分な効果を得ることができる。
【0042】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、鍵ガイド部材52において、左右の可撓部42、42を鍵ガイド本体41の前面の左右両端部に前方に突出して延びるように設けたが、これに代えて、鍵ガイド本体41の後面の左右両端部に、後方に突出して延びるように設けてもよい。この場合も、左右の可撓部42、42及び当接部43、43による前述した効果を得ることができる。
【0043】
また、実施形態で示した本発明の鍵ガイド構造を構成する鍵ガイドホルダ51、鍵ガイド部材52及び鍵3の細部の構成や、それらを構成する材料などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。