(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595946
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 9/14 20060101AFI20191010BHJP
B05C 9/04 20060101ALI20191010BHJP
F26B 13/10 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B05C9/14
B05C9/04
F26B13/10 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-75067(P2016-75067)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-185434(P2017-185434A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】592088666
【氏名又は名称】株式会社市金工業社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】千代 哲
(72)【発明者】
【氏名】藤下 雄司
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3015430(JP,U)
【文献】
特開平02−017966(JP,A)
【文献】
特開2002−113408(JP,A)
【文献】
特開2014−056840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00−21/00
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、
筐体と、
前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、を備え、
前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能に構成され、
前記乾燥装置は、乾燥室と、前記乾燥室に設けられた第1熱風口及び第2熱風口と、前記第1熱風口又は前記第2熱風口を介して前記乾燥室に熱風を送り込む熱風発生手段と、を備え、
前記ウェブの走行方向を基準として、前記第1熱風口は前記乾燥室の上流端に設けられ、前記第2熱風口は前記乾燥室の下流端に設けられ、
前記第1熱風口から吹き出された熱風は、前記乾燥室内を前記走行方向下流側に流れて前記第2熱風口から排出され、
前記第2熱風口から吹き出された熱風は、前記乾燥室内を前記走行方向上流側に流れて前記第1熱風口から排出され、
前記乾燥装置は、熱風の吹き出し口を前記第1熱風口と前記第2熱風口との間で切り替え可能に構成されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、
筐体と、
前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、
前記ウェブの走行経路を規定する複数のガイドロールと、を備え、
前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能であって、
前記複数のガイドロールは第1ガイドロールを含み、
前記乾燥装置は、前記第1ガイドロールを中心に回動し、
前記第1ガイドロールは前記乾燥装置よりもウェブ走行方向上流側に位置し、前記筐体に支持されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項3】
長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、
筐体と、
前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、
前記ウェブの走行経路を規定する複数のガイドロールと、を備え、
前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能に構成されており、
前記乾燥装置は、乾燥炉と、前記乾燥炉を支持する支持フレームと、を備え、前記支持フレームは回転軸を中心に前記筐体に対して回動自在であって、
前記複数のガイドロールは、前記筐体に回転可能に支持された第1ガイドロール及び第2ガイドロールと、前記支持フレームに回転可能に支持された第3ガイドロールと、を含み、前記第1ガイドロールは前記第2ガイドロールよりも前方に位置し、
前記ウェブの走行方向を基準として、前記回転軸と前記第1及び第2ガイドロールは前記乾燥炉よりも上流側に位置し、前記第3ガイドロールは前記乾燥炉よりも下流側に位置し、
前記乾燥室は、前記ウェブが搬入される搬入口と、前記ウェブを搬出する搬出口と、を有し、
前記乾燥装置が前記倒伏位置にあるとき、前記第1ガイドロールの上端と、前記第2ガイドロールの上端と、前記乾燥室の前記搬入口及び前記搬出口と、前記第3ガイドロールの上端とは水平方向に一列に並び、前記ウェブは前記第1ガイドロール,前記第2ガイドロール,及び前記第3ガイドロールに掛け渡され、
前記乾燥装置が前記起立位置にあるとき、前記第1ガイドロールの前端と、前記乾燥室の前記搬入口及び前記搬出口と、前記第3ガイドロールの前端とは上下方向に一列に並び、
前記ウェブは前記第1ガイドロール及び前記第3ガイドロールに掛け渡されることを特徴とする塗工装置。
【請求項4】
前記筐体は、第1塗工ヘッドを装着するための第1ヘッド装着部と、第2塗工ヘッドを装着するための第2ヘッド装着部と、を備え、
前記第1ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールと前記第2ガイドロールの間に位置し、
前記第2ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールの上方に位置し、
前記ウェブに対して上面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、前記第1ヘッド装着部に装着された前記第1塗工ヘッドにより前記ウェブの第1面に塗工剤が上方から塗布され、
前記ウェブに対して両面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記起立位置に位置づけられ、前記第2ヘッド装着部に装着された前記第2塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面及び第2面に塗工剤が塗布されることを特徴とする請求項3に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記複数のガイドロールは、前記第2ガイドロールの下方に設けられた第4ガイドロールを更に含み、
前記筐体は、第3塗工ヘッドを装着するための第3ヘッド装着部を更に備え、
前記第3ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールと前記第4ガイドロールの間に位置し、 前記ウェブに対して下面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、前記第3ヘッド装着部に装着された前記第3塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面に対して塗工剤が下方から塗布されることを特徴とする請求項4に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記複数のガイドロールは、前記第1ガイドロールの前方に設けられた第5ガイドロールと、前記第5ガイドロールの下方に設けられた第6ガイドロールと、を更に含み、
前記筐体は、第4塗工ヘッドを装着するための第4ヘッド装着部を更に備え、
前記第4ヘッド装着部は、前記第5ガイドロールと前記第6ガイドロールの間に位置し、
前記ウェブに対して垂直塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、前記第4ヘッド装着部に装着された前記第4塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面に対して塗工剤が塗布されることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状のウェブに連続的に塗工剤を塗工する塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺帯状のウェブに連続的に塗工液を塗布して被膜を形成する塗工装置は通常、ウェブを連続的に送り出すウェブ供給手段と、ウェブの表面に塗工剤を塗布する塗工ヘッドと、ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させて硬化させる乾燥装置と、を備える。そして、このような塗工装置には、水平に搬送されるウェブに塗工剤を上側又は下側から塗布する横型のものや、垂直に搬送されるウェブに横側から塗布する縦型のものがあり(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、どのような塗工装置を使用するかはウェブや塗工剤の種類等に応じて適宜選択される。また、塗工ヘッドとしては、ダイコータ、グラビアコータ、リバースロールコータ等、様々な種類のものが提案されている。
【0003】
このような塗工装置には、生産用の塗工装置と、試作などにおける小ロッドでの運転に適した試験用の塗工装置があり、試験用の塗工装置としては、カセット式の塗工ヘッドを交換することにより各種塗工のテストを行えるものも提案されている。例えば、特許文献3では、複数の異なる塗布手段(塗工手段)をモジュール化して交換可能に構成された塗工装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2013−34980号公報
【特許文献2】特開第2010−221204号公報
【特許文献3】特開平8−281196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験用の塗工装置には、各種塗工テストを行えることに加え、装置全体の小型化や取り扱いやすさが求められるところ、交換可能に構成されたカセット式の塗工ヘッドを有する従来の試験用の塗工装置においても、乾燥装置の配置位置は予め決められており、塗工装置全体の小型化の障害となっていた。
【0006】
本発明は、位置変更可能な乾燥装置を備える塗工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明
に係る塗工装置は、長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、筐体と、前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、を備え、前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能に構成され
、前記乾燥装置は、乾燥室と、前記乾燥室に設けられた第1熱風口及び第2熱風口と、前記第1熱風口又は前記第2熱風口を介して前記乾燥室に熱風を送り込む熱風発生手段と、を備え、前記ウェブの走行方向を基準として、前記第1熱風口は前記乾燥室の上流端に設けられ、前記第2熱風口は前記乾燥室の下流端に設けられ、前記第1熱風口から吹き出された熱風は、前記乾燥室内を前記走行方向下流側に流れて前記第2熱風口から排出され、前記第2熱風口から吹き出された熱風は、前記乾燥室内を前記走行方向上流側に流れて前記第1熱風口から排出され、前記乾燥装置は、熱風の吹き出し口を前記第1熱風口と前記第2熱風口との間で切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る塗工装置は、長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、筐体と、前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、前記ウェブの走行経路を規定する複数のガイドロールと、を備え、前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能であって、前記複数のガイドロールは第1ガイドロールを含み、前記乾燥装置は、前記第1ガイドロールを中心に回動し、前記第1ガイドロールは前記乾燥装置よりもウェブ走行方向上流側に位置し、前記筐体に支持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明
に係る塗工装置は、
長尺帯状のウェブに塗工剤を塗工する塗工装置であって、筐体と、前記ウェブに塗布された塗工剤を乾燥させる乾燥装置と、前記ウェブの走行経路を規定する複数のガイドロール
と、を備え、
前記乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を前記筐体に対して回動可能に構成されており、 前記乾燥装置は、乾燥炉と、前記乾燥炉を支持する支持フレームと、を備え、前記支持フレームは回転軸を中心に前記筐体に対して回動自在であって、前記複数のガイドロールは、前記筐体に回転可能に支持された第1ガイドロール及び第2ガイドロールと、
前記支持フレームに回転可能に支持された第3ガイドロールと、を含み、
前記第1ガイドロールは前記第2ガイドロールよりも前方に位置し、 前記ウェブの走行方向を基準として、前記回転軸と前記第1及び第2ガイドロールは前記乾燥炉よりも上流側に位置し、前記第3ガイドロールは前記乾燥炉よりも下流側に位置し、 前記乾燥室は、前記ウェブ
が搬入される搬入口と、前記ウェブを搬出する搬出口と、を有し、前記乾燥装置が前記倒伏位置にあるとき、前記第1ガイドロールの上端と、
前記第2ガイドロールの上端と、前記乾燥室の前記搬入口及び前記搬出口と、前記第3ガイドロールの上端とは水平方向に一列に並び、
前記ウェブは前記第1ガイドロール,前記第2ガイドロール,及び前記第3ガイドロールに掛け渡され、前記乾燥装置が前記起立位置にあるとき、前記第1ガイドロールの前端と、前記乾燥室の前記搬入口及び前記搬出口と、前記第3ガイドロールの前端とは上下方向に一列に並
び、前記ウェブは前記第1ガイドロール及び前記第3ガイドロールに掛け渡されることを特徴とする。
【0010】
また、前記筐体は、第1塗工ヘッドを装着するための第1ヘッド装着部と、第2塗工ヘッドを装着するための第2ヘッド装着部と、を備え、前記第1ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールと前記第2ガイドロールの間に位置し、前記第2ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールの上方に位置し、前記ウェブに対して上面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、
前記第1ヘッド装着部に装着された前記第1塗工ヘッドにより前記ウェブの第1面に塗工剤が上方から塗布され、前記ウェブに対して両面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記起立位置に位置づけられ、
前記第2ヘッド装着部に装着された前記第2塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面及び第2面に塗工剤が塗布されることを特徴とする。
【0011】
前記複数のガイドロールは、前記第2ガイドロールの下方に
設けられた第4ガイドロール
を更に含み、
前記筐体は、第3塗工ヘッドを装着するための第3ヘッド装着部を更に備え、前記第3ヘッド装着部は、前記第1ガイドロールと前記第4ガイドロールの間に位置し、前記ウェブに対して下面塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、
前記第3ヘッド装着部に装着された前記第3塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面に対して塗工剤が下方から塗布されることを特徴とする。
【0012】
また、前記複数のガイドロールは、前記第1ガイドロールの前方に
設けられた第5ガイドロール
と、前記
第5ガイドロールの下方に
設けられた第6ガイドロール
と、を更に含み、
前記筐体は、第4塗工ヘッドを装着するための第4ヘッド装着部を更に備え、前記第4ヘッド装着部は、前記第5ガイドロールと前記第6ガイドロールの間に位置し、前記ウェブに対して垂直塗工を行う場合には、前記乾燥装置は前記倒伏位置に位置づけられ、
前記第4ヘッド装着部に装着された前記第4塗工ヘッドにより前記ウェブの前記第1面に対して塗工剤が塗布されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明
に係る塗工装置によれば、乾燥装置は倒伏位置と起立位置との間を筐体に対して回動可能であるので、乾燥位置に至るまでのウェブの走行経路が可変であり、塗工ヘッドの装着位置の自由度を高めることができ、よりコンパクトな塗工装置を提供できる。
【0014】
また、乾燥装置が倒伏位置にあるときは、ウェブの走行方向下流側に位置する第2熱風口から乾燥室に熱風が送り込まれるので、走行方向下流側のウェブに沿ってより新鮮な熱風を流すことができ、塗工剤の乾燥を良好に行うことができる。また、乾燥装置が起立位置にあるときは、ウェブの走行方向上流側に位置する第1熱風口から乾燥室に熱風が送り込まれるので、熱風は上向きに吹き出されることになり、熱風をスムーズに流すことができる。
【0015】
本発明
に係る塗工装置によれば、第3ガイドロールは乾燥装置に回転可能に支持されているので、乾燥装置が倒伏位置と起立位置の間を回動するときには第3ガイドロールも乾燥装置と共に移動する。そして、乾燥装置が倒伏位置にあるときは、第1、第2、第3ガイドロールの上端と乾燥室の搬入口及び搬出口とが水平方向に一列に並び、乾燥装置が起立位置にあるときは、第1及び第3ガイドロールの前端と乾燥室の搬入口及び搬出口とは上下方向に一列に並ぶので、乾燥装置を倒伏位置と起立位置の間で回動させても、良好なウェブの走行経路を確保できる。
【0016】
また、ウェブに対して上面塗工を行う場合には、第1ガイドロールの後上方位置に装着された第1塗工ヘッドにより、略水平に搬送されるウェブの第1面に塗工剤を上方から塗布することができる。また、このとき乾燥装置は倒伏位置に位置づけられるので、塗工後のウェブをスムーズに乾燥装置へ搬送できる。一方、ウェブに対して両面塗工を行う場合には、第1ガイドロールの上方位置に装着された第2塗工ヘッドにより、略垂直に搬送されるウェブの第1面及び第2面に塗工剤を塗布できるので、同一の塗工装置で上面塗工と両面塗工の双方に対応できる。また、両面塗工の際には乾燥装置は起立位置に位置づけられるので、この場合であっても塗工後のウェブをスムーズに乾燥装置へ搬送できる。更に、第1塗工ヘッドは第1ガイドロールの後上方位置に装着可能であり、第2塗工ヘッドは第1ガイドロールの上方位置に装着可能であるので、塗工装置の全体構成をコンパクトにできる。
【0017】
また、第3塗工ヘッドにより、略水平に搬送されるウェブの第1面に対して塗工剤を下方から塗布できるので、上面塗工と両面塗工に加え、下面塗工にも対応できる。また、第3塗工ヘッドは第1ガイドロールの後下方位置に装着できるので、塗工装置の全体構成をコンパクトにできる。
【0018】
また、第4塗工ヘッドにより、略垂直に搬送されるウェブの第1面に対して塗工剤を塗布できるので、垂直塗工にも対応できる。また、第4塗工ヘッドは第1ガイドロールの前下方位置に装着されるので、塗工装置の全体構成をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗工装置を示す説明図。
【
図2】(a)は
図1に示す塗工装置の回動機構を示す概略平面図であり、(b)は概略側面図。
【
図4】
図1に示す塗工装置を垂直塗工式とした場合の説明図。
【
図5】
図1に示す塗工装置を下面塗工式とした場合の説明図。
【
図6】
図1に示す塗工装置を上面塗工式とした場合の説明図。
【
図7】
図1に示す塗工装置を両面塗工式とした場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る塗工装置について説明する。
図1に示す塗工装置1は、筐体2と、長尺帯状のウェブWが卷装された供給ロール3と、ウェブWに塗布された塗工剤を乾燥させるための乾燥装置4と、乾燥後のウェブWを巻き取るための巻取ロール5と、を備え、乾燥装置4は筐体2に対して
図1(a)に示す倒伏位置と
図1(b)に示す起立位置の間を回動可能とされている。なお、以下の説明において、ウェブWの幅方向を左右方向とし、左右方向に垂直な水平方向を前後方向とする。
【0021】
図2を参照して、乾燥装置4は中空直方体状の乾燥炉41と、乾燥炉41を支持する支持フレーム42と、を備え、支持フレーム42は回転軸43を中心に筐体2に対して回動自在とされている。回動軸43は連結機構8を介して操作ハンドル9に連結されており、操作ハンドル9を回すと乾燥装置4が回転軸43を中心に回動する。より具体的に、連結機構8はウォームギア81と、ウォームギア81に噛合したギア(図示せず)を有し、回転軸43は当該ギアと一体的に回転し、支持フレーム42は回転軸43に対して相対回転不能に連結されている。かかる構成において、操作ハンドル9を回すとウォームギア81が回転し、これに伴いギア(図示せず)及び回転軸43が回転し、支持フレーム42が乾燥炉41と共に回転軸43を中心に回動する。
【0022】
図3をも参照して、乾燥炉41の内部には乾燥室41aが設けられている。ウェブWの走行方向F(搬送方向)を基準として、乾燥炉41の上流側端部の中央部にはウェブWを乾燥室41aに搬入する搬入口41bが設けられ、その下流側端部の中央部にはウェブWを乾燥室41aから搬出する搬出口41cが設けられ、搬入口41bから乾燥室41aに搬入されたウェブWは搬出口41cに向かって走行し、排出口41cから搬出される。また、
図3に実線で示す倒伏位置を基準として、乾燥室41aの走行方向F上流側端部には一対の第1熱風口43が搬入口41bの上下方向両側に配置されており、乾燥室41aの走行方向F下流側端部には一対の第2熱風口44が排出口41cの上下方向両側に配置されている。
【0023】
乾燥装置4は更に、乾燥室41a内に熱風を送風する熱風発生手段(図示せず)が設けられており、熱風発生手段はヒータで加熱した空気をファンの回転によって熱風を発生させるように構成されている。熱風発生手段で発生された熱風は、一対の第1熱風口43又は一対の第2熱風口44を介して乾燥室41aに吹き出される。一対の第1熱風口43を介して吹き出された熱風は一対の第2熱風口44から吸い込まれて外部へ排出され、一対の第2熱風口44を介して吹き出された熱風は一対の第1熱風口43から吸い込まれて外部へ排出される。
【0024】
本実施形態においては、乾燥装置4が倒伏位置にあるときには、熱風発生手段からの熱風は一対の第2熱風口44から吹き出され、乾燥室41a内を層流状態で流れ、一対の第1熱風口43から吸い込まれて排出される。よって、乾燥室41a内を水平方向に走行するウェブWの上方及び下方を、熱風がウェブWの走行方向F下流側から上流側へ向かって(走行方向Fとは逆方向に)流れることになる。これにより、走行方向F下流側に位置するウェブWに沿ってより新鮮な熱風を流すことができ、塗工剤の乾燥を良好に行うことができる。
【0025】
一方、乾燥装置4が起立位置にあるときには、熱風発生手段からの熱風は一対の第2熱風口44から吹き出され、乾燥室41a内を層流状態で流れ、一対の第1熱風口43から吸い込まれて排出される。よって、乾燥室41a内を上向きに走行するウェブWの前方及び後方を熱風が上方に(ウェブWの走行方向Fに沿って)流れる。熱い空気は上方へ流れることから、熱風を下向きに吹き出すと空気の流れに逆らうことになるが、このように熱風を上向きに吹き出すことにより、熱風をスムーズに流すことができる。
【0026】
なお、上述したような熱風の吹き出し方向の切り替えは、熱風発生手段が備える送風経路の切り替えによって行っても良く、或いは熱風発生手段を付け替えることにより行っても良い。
【0027】
図1を参照して、塗工装置1は更にウェブWの走行経路を規定するための複数のガイドロールを備え、これらガイドロールには筐体2に回転可能に支持されたガイドロールR1〜R5及びガイドロール(バックアップロール)R6と、乾燥装置4の支持フレーム42(
図2)の後端に回転可能に支持された一対のガイドロールR7,R8と、が含まれる。
【0028】
バックアップロール
R6は駆動ロールであって、倒伏位置における乾燥炉41の前方であって、起立位置における乾燥炉41の下方に配置されている。ガイドロールR1とR2はバックアップロールR6よりも前方位置において上下方向に配列されており、ガイドロールR3とR4はバックアップロールR6よりも後方位置において上下方向に配列されている。乾燥装置4が倒伏位置にあるときを基準として、ガイドロールR7とR8は上下方向に配列されており、乾燥装置4の回動に伴い
図1(a)に示す位置と
図1(b)に示す位置の間を移動する。
【0029】
そして、乾燥装置4が倒伏位置にあるとき、バックアップロールR6(第1ガイドロール)の上端と、ガイドロールR3(第2ガイドロール)の上端と、乾燥室41aの搬入口41b及び搬出口41cと、ガイドロールR7(第3ガイドロール)の上端とが略水平方向に一列に並び、ガイドロールR3とガイドロールR7の間を後方に走行するウェブWが乾燥炉41に接触することなく乾燥室41aを通過できるように構成されている。
【0030】
また、乾燥装置4が起立位置にあるとき、バックアップロールR6の前端と、乾燥室41aの搬入口41b及び搬出口41cと、ガイドロールR7の前端とが上下方向に一列に並び、バックアップロールR6とガイドロールR7の間を上方に走行するウェブWが乾燥炉41に接触することなく乾燥室41aを通過できるように構成されている。
【0031】
更に、筐体2には4つのヘッド装着部が設けられ、これらのヘッド装着部には
図3に示す様に塗工ヘッド6又は7が装着可能とされている。塗工ヘッド6は供給ロール3から繰り出されたウェブWの片面(第1面)に塗工剤を塗布するものであり、塗工ヘッド7(第2塗工ヘッド)は供給ロール3から繰り出されたウェブWの両面(第1面及び第2面)に塗工剤を塗布するものである。なお、塗工ヘッド6,7の種類としては、バーコータやコンマロールコータ、ダイコータ、キスコータ、エアーナイフコータ等が挙げられるが、本発明では塗工ヘッド6,7の種類に限定はない。また、塗工ヘッド6,7を筐体2に対して着脱自在とする構成は公知であるので説明は省略する。
【0032】
そして、本実施形態においては、塗工ヘッド6の装着位置に応じて、上向きに搬送されるウェブWの片面に塗工剤を塗布する垂直塗工と、略水平に搬送されるウェブWの片面に下方から塗工剤を塗布する下面塗工と、略水平に搬送されるウェブWの片面に上方から塗工剤を塗布する上面塗工を行うことができ、塗工ヘッド7を装着することにより上向きに搬送されるウェブWの両面に塗工剤を塗布する両面塗工を行うことができる。
【0033】
より具体的に、ウェブWに対して垂直塗工を行う場合には、
図4に示す様に乾燥装置4は倒伏位置に位置づけられ、ガイドロールR1とR2の間に設けられたヘッド装着部に塗工ヘッド6(第1塗工ヘッド)が横向きに装着される。そして、供給ロール3から繰り出されるウェブWは、ガイドロールR1、R2、R6、R3、R7、R5に上流側から順に掛け渡され、巻取ロール5に巻き取られる。この間、ガイドロールR1とガイドロールR2の間を上方に搬送されるウェブWの片面(第1面)に塗工ヘッド6により塗工剤が塗布され、ウェブWに塗布された塗工剤は乾燥装置4において乾燥される。
【0034】
ウェブWに対して下面塗工を行う場合には、
図5に示す様に乾燥装置4は倒伏位置に位置づけられ、ガイドロールR4とガイドロール(バックアップロール)R6の間に設けられたヘッド装着部に塗工ヘッド6(第3塗工ヘッド)が上向きに装着される。供給ロール3から繰り出されるウェブWは、ガイドロールR4、R6、R3、R7、R5に上流側から順に掛け渡され、巻取ロール5に巻き取られる。この間、ガイドロールR4とガイドロールR6の間を略水平に搬送されるウェブWの下面(第1面)に塗工ヘッド6により下側から塗工剤が塗布され、ウェブWに塗布された塗工剤は乾燥装置4において乾燥される。
【0035】
ウェブWに対して上面塗工を行う場合には、
図6に示す様に乾燥装置4は倒伏位置に位置づけられ、ガイドロールR6とガイドロールR3の間に設けられたヘッド装着部に塗工ヘッド6(第3塗工ヘッド)が下向きに装着される。供給ロール3から繰り出されるウェブWは、下面塗工の場合と同様にガイドロールR4、R6、R3、R7、R5に上流側から順に掛け渡され、巻取ロール5に巻き取られる。この間、ガイドロール6とガイドロールR3の間を略水平に搬送されるウェブWの上面(第1面)に塗工ヘッド6により上側から塗工剤が塗布され、ウェブWに塗布された塗工剤は乾燥装置4において乾燥される。
【0036】
ウェブWに対して両面塗工を行う場合には、
図7に示す様に、乾燥装置4は起立位置に位置づけられ、ガイドロール6の上方(ガイドロール6と起立位置における乾燥炉41との間)に設けられたヘッド装着部に塗工ヘッド7が装着される。供給ロール3から繰り出されるウェブWは、ガイドロールR4、R6、R7、R8、R5(
図1(b)も参照)に上流側から順に掛け渡され、巻取ロール5に巻き取られる。この間、ガイドロールR4とガイドロールR7の間を上方に搬送されるウェブWの両面(第1面及び第2面)に塗工ヘッド7により塗工剤が塗布され、乾燥装置4において乾燥される。
【0037】
このように、本実施形態における塗工装置1においては、乾燥装置4を倒伏位置と起立位置との間を移動可能に構成したため、ガイドロール6から乾燥装置4へ至る走行経路を可変にすることができ、これにより塗工ヘッド6、7の装着位置の自由度を向上できる。また、塗工ヘッド6、7の装着位置を、ガイドロール(バックアップロール)R6を取り囲む複数の位置(即ち、ガイドロールR6の前下方、後下方、後上方、上方)とすることができ、塗工装置1全体をコンパクトにできる。また、乾燥装置4の向き(ウェブWの走行方向F)に応じて熱風の吹き出し方向を切り替えるので、塗工剤の乾燥をより良好に行うことができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る塗工装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態においては同一の塗工ヘッド6をバックアップロールR6の前下方位置、後下方位置、及び後上方位置に向きを変えて選択的に装着するように構成したが、これらの装着位置毎に異なる塗工ヘッドを装着させるように構成しても良い。即ち、バックアップロールR6の前下方位置には垂直塗工専用の塗工ヘッドを、後下方位置には下面塗工専用の塗工ヘッドを、後上方位置には上面塗工専用の塗工ヘッドが装着されるようにしても良い。
【0040】
また、上記実施形態においてはバックアップロール6の上方には両面塗工用の塗工ヘッド7が装着されるが、両面塗工用の塗工ヘッド7に代えて片面塗工用の塗工ヘッド6を横向きに装着して垂直塗工を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 塗工装置
2 筐体
3 供給ロール
4 乾燥装置
5 巻取ロール
6 塗工ヘッド(第1塗工ヘッド、第3塗工ヘッド、第4塗工ヘッド)
7 塗工ヘッド(第2塗工ヘッド)
41 乾燥炉
41a 乾燥室
42 支持フレーム
43 第1熱風口
44 第2熱風口
R6 ガイドロール(第1ガイドロール)
W ウェブ