【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対のガラス板の間に、熱可塑性樹脂及び発光材料を含む合わせガラス用中間膜が積層された合わせガラスと、前記合わせガラスに光線を照射する照射装置とを有するディスプレイ装置であって、前記照射装置から照射される光線の出力が1mW以下であり、前記光線を前記合わせガラスに照射したときに、合わせガラスが1cd/m
2以上の輝度で発光するディスプレイ装置である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、低強度の光線を照射したときでも所定の初期輝度が得られるディスプレイ装置を検討した。その結果、出力が1mW以下の低強度の光線を用いることにより、所定の初期輝度が得られ、かつ、安全なディスプレイ装置が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のディスプレイ装置は、低強度の光線を照射したときでも所定の初期輝度が得られるため、特にナイトビジョンに好適である。
【0010】
本発明のディスプレイ装置は、合わせガラスと該合わせガラスに光線を照射する照射装置とを有する。
上記合わせガラスは、2枚のガラス板の間に、熱可塑性樹脂及び発光材料を含む合わせガラス用中間膜が積層されたものである。
【0011】
上記熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。なかでも、可塑剤と併用した場合に、ガラスに対して優れた接着性を発揮する合わせガラス用中間膜が得られることから、ポリビニルアセタール樹脂が好適である。
【0012】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0013】
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が35モル%である。水酸基量が15モル%以上であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。水酸基量が35モル%以下であると、得られる合わせガラス用中間膜の取り扱いが容易になる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0014】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0015】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記発光材料としては、例えば、ハロゲン原子を含む多座配位子を有するランタノイド錯体が挙げられる。
ランタノイド錯体のなかでも、ハロゲン原子を含む多座配位子を有するランタノイド錯体は光線を照射することにより高い発光強度で発光する。上記ハロゲン原子を含む多座配位子を有するランタノイド錯体としては、ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む四座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む五座配位子を有するランタノイド錯体、ハロゲン原子を含む六座配位子を有するランタノイド錯体等が挙げられる。
【0017】
なかでも、ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、300〜410nmの波長の光を照射することにより、580〜780nmの波長の光を極めて高い発光強度で発光する。この発光は極めて高強度であることから、これを含有する発光層を有する合わせガラス用中間膜は、出力が1mW以下の低強度の光線を照射したときでも、1.3〜165cd/m
2の輝度で発光することができる。該合わせガラス用中間膜を用いれば、充分なコントラストでの表示が可能であるとともに、合わせガラス用中間膜を透過した光線が直接人に観察されたとしても、目が眩んだりすることもない。
しかも、上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、耐熱性にも優れる。フロントガラスは太陽光の赤外線が照射されることにより、高温環境下で使用されることが多い。このような高温環境下では発光材料が劣化して、特に合わせガラスの端部において著しく輝度が低下してしまうことがある。発光材料として上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体を用いることにより、高温環境下においても、輝度が変化しにくい合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0018】
熱可塑性樹脂と、ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体とを含有する発光層を有し、出力が1mW以下の光線を照射したときに1.3〜165cd/m
2の輝度で発光する合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。
出力が1mW以下の光線を照射したときに、1.3〜165cd/m
2の輝度で発光する合わせガラスであれば、周囲が暗い夜間であっても、運転者が観察した際に明る過ぎず、且つ、暗過ぎない視認性の高い像を得ることができ、ナイトビジョン用途に特に好適である。
更に、該合わせガラス用中間膜が一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
【0019】
なお、合わせガラス用中間膜の発光の輝度は、例えば、本発明の合わせガラス用中間膜を厚み2.5mmの2枚のクリアガラスの間に挟持して合わせガラスを作成し、該合わせガラスの輝度を測定する方法により測定することができる。より具体的には、暗室下にて合わせガラスの面に対して垂直方向に10cm離れた位置に配置した光源(例えば、High Powerキセノン光源(例えば、朝日分光社製、「REX−250」、照射波長405nm等))から合わせガラスの全面へ光を照射し、光を照射した合わせガラスの面から45度の角度で35cm離れた位置に配置した輝度計(例えば、トプコンテクノハウス社製、「SR−3AR」等)によって測定することができる。
【0020】
本明細書においてランタノイドとは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムを含む。より一層高い発光強度が得られることから、ランタノイドは、ネオジム、ユーロピウム又はテルビウムが好ましく、ユーロピウム又はテルビウムがより好ましく、ユーロピウムが更に好ましい。
【0021】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体は、例えば、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)フェナントロリンユーロピウム、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンユーロピウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ジフェニルフェナントロリンユーロピウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)ビス(トリフェニルホスフィン)ユーロピウム、トリス(トリフルオロアセチルアセトン)2,2’−ビピリジンユーロピウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトン)2,2’−ビピリジンユーロピウム等が挙げられる。
上記ハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、例えば、ターピリジントリフルオロアセチルアセトンユーロピウム、ターピリジンヘキサフルオロアセチルアセトンユーロピウム等が挙げられる。
【0022】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を用いることができる。なかでも、配位子の構造を安定化させることから、フッ素原子が好適である。
【0023】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体のなかでも、特に初期発光性に優れることから、ハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体が好適である。
上記ハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体は、例えば、Eu(TFA)
3phen、Eu(TFA)
3dpphen、Eu(HFA)
3phen、[Eu(FOD)
3]bpy、[Eu(TFA)
3]tmphen、[Eu(FOD)
3]phen等が挙げられる。これらのハロゲン原子を含むアセチルアセトン骨格を有する二座配位子を有するランタノイド錯体の構造を示す。
【0024】
【化1】
【0025】
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体は、粒子状であることが好ましい。粒子状であることにより、上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体を合わせガラス用中間膜中に微分散させることがより容易となる。
上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体が粒子状である場合、ランタノイド錯体の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は10μmであり、より好ましい下限は0.03μm、より好ましい上限は1μmである。
【0026】
上記合わせガラス用中間膜における上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.001重量部、好ましい上限が10重量部である。上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の含有量が0.001重量部以上であると、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の含有量の含有量が10重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の含有量のより好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は5重量部、更に好ましい下限は0.05重量部、更に好ましい上限は1重量部である。
【0027】
上記発光材料としては、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料も用いることができる。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料は、光線が照射されることにより発光する。
【0028】
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料は、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物や下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
【化2】
【0030】
上記一般式(1)中、R
1は有機基を表し、xは1、2,3又は4である。
合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなることから、xは1又は2であることが好ましく、ベンゼン環の2位又は5位に水酸基を有することがより好ましく、ベンゼン環の2位及び5位に水酸基を有することが更に好ましい。
上記R
1の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。
上記炭化水素基の炭素数が10以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。
上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート、ジメチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。
なかでも、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物はジエチル−2,5−ジヒドロキシルテレフタレート(Aldrich社製「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(2)中、R
2は有機基を表し、R
3及びR
4は水素原子又は有機基を表し、yは1、2、3又は4である。
上記R
2の有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。
上記炭化水素基の炭素数が上記上限以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。
上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(2)中、NR
3R
4はアミノ基である。
R
3及びR
4は、水素原子であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物のベンゼン環の水素原子のうち、一つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、二つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、三つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、四つの水素原子が上記アミノ基であってもよい。
【0033】
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物として、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、ジエチル−2,5−ジアミノテレフタレート(Aldrich社製)が好ましい。
【0034】
上記合わせガラス用中間膜における上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限は0.001重量部、好ましい上限は15重量部である。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が0.001重量部以上であると、光線が照射されることにより、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が15重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量のより好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は10重量部、更に好ましい下限は0.1重量部、更に好ましい上限は8重量部、特に好ましい下限は0.5重量部、特に好ましい上限は5重量部である。
【0035】
上記合わせガラス用中間膜における上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量は、上記合わせガラス用中間膜100重量%中、好ましい下限が0.007重量%、好ましい上限が4.5重量%である。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が0.007重量%以上であると、コントラストがより一層高い画像を表示することができる。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量が4.5重量%以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。
上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料の含有量のより好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は4重量%、更に好ましい下限は0.1重量%、更に好ましい上限は3.5重量%である。
【0036】
上記合わせガラス用中間膜には、熱可塑性樹脂製造時に用いた中和剤等の原料に由来するカリウム、ナトリウム、マグネシウムが含まれ得る。上記合わせガラス用中間膜では、上記合わせガラス用中間膜に含まれるカリウム、ナトリウム及びマグネシウムの合計の含有量が50ppm以下であることが好ましい。
カリウム、ナトリウム及びマグネシウムの合計の含有量を50ppm以下とすることにより、併用する上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の発光性が低下するのを防止することができる。
【0037】
上記合わせガラス用中間膜に含まれるマグネシウムの含有量は40ppm以下であることが好ましい。上記合わせガラス用中間膜に含まれるマグネシウムの含有量が40ppm以下であることにより、上記合わせガラス用中間膜における上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体の発光性能の低下をより確実に抑制することができる。上記合わせガラス用中間膜に含まれるマグネシウムの含有量は35ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることが更に好ましく、20ppm以下であることが特に好ましい。上記合わせガラス用中間膜に含まれるマグネシウムの含有量は0ppmであってもよい。
【0038】
上記合わせガラス用中間膜に含まれるカリウム、ナトリウム及びマグネシウムの合計の含有量を50ppm以下とするためには、熱可塑性樹脂を過剰量のイオン交換水で複数回洗浄することが好ましい。
【0039】
上記合わせガラス用中間膜は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、上記発光材料の凝集を抑制でき、より均一な発光が得られる。
上記分散剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸構造を有する化合物や、ジエステル化合物、リシノール酸アルキルエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル等のエステル構造を有する化合物や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールやアルキルフェニル−ポリオキシエチレン−エーテル等のエーテル構造を有する化合物や、ポリカルボン酸等のカルボン酸構造を有する化合物や、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンの2級アミン、ポリオキシエチレンの3級アミン、ポリオキシエチレンのジアミン等のアミン構造を有する化合物や、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド等のポリアミン構造を有する化合物や、オレイン酸ジエタノールアミド、アルカノール脂肪酸アミド等のアミド構造を有する化合物や、ポリビニルピロリドン、ポリエステル酸アマイドアミン塩等の高分子量型アミド構造を有する化合物等の分散剤を用いることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)や高分子ポリカルボン酸、縮合リシノール酸エステル等の高分子量分散剤を用いてもよい。なお、高分子量分散剤とは、その分子量が1万以上である分散剤と定義される。
【0040】
上記分散剤を配合する場合に、上記合わせガラス用中間膜中における上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体100重量部に対する上記分散剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分散剤の含有量がこの範囲内であると、上記ハロゲン原子を含む二座配位子を有するランタノイド錯体又はハロゲン原子を含む三座配位子を有するランタノイド錯体を合わせガラス用中間膜中に均一に分散させることができる。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は25重量部である。
【0041】
上記合わせガラス用中間膜は、更に、紫外線吸収剤を含有してもよい。上記合わせガラス用中間膜が紫外線吸収剤を含有することにより、上記合わせガラス用中間膜の耐光性が高くなる。
コントラストがより一層高い画像を表示できる合わせガラス用中間膜が得られることから、上記合わせガラス用中間膜中における上記紫外線吸収剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい上限は1重量部、より好ましい上限は0.5重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。
【0042】
上記紫外線吸収剤は、例えば、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
上記合わせガラス用中間膜は、更に、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0044】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0045】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0046】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0047】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0048】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0049】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、特にトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することがより好ましい。
【0050】
上記合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が100重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなるため、合わせガラス用中間膜を容易に成形できる。上記可塑剤の含有量が100重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は80重量部、更に好ましい下限は45重量部、更に好ましい上限は70重量部、特に好ましい下限は50重量部、特に好ましい上限は63重量部である。
【0051】
上記合わせガラス用中間膜は、優れた耐光性を得ることができることから、酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤は特に限定されず、フェール構造を有する酸化防止剤、硫黄を含む酸化防止剤、リンを含む酸化防止剤等が挙げられる。
上記フェノール構造を有する酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記フェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアシッドグリコールエステル、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、光安定剤、帯電防止剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の添加剤を含有してもよい。
【0053】
上記合わせガラス用中間膜は、上記発光材料を含む発光層のみからなる単層構造であってもよいし、上記発光材料を含む発光層と他の層を積層した多層構造であってもよい。
上記合わせガラス用中間膜が多層構造である場合、上記発光材料を含む発光層は合わせガラス用中間膜の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよく、合わせガラス用中間膜の厚み方向とは垂直の面方向の全面に配置されていてもよく、一部にのみ配置されていてもよい。上記発光材料を含む発光層が一部にのみ配置されている場合には、該一部を発光エリア、他の部分を非発光エリアとして、発光エリアにおいてのみ情報を表示できるようにすることができる。
【0054】
上記合わせガラス用中間膜が多層構造である場合、上記発光材料を含む発光層及び他の層の構成成分を調整することにより、得られる合わせガラス用中間膜に種々の機能を付与することも可能である。
例えば、上記合わせガラス用中間膜に遮音性能を付与するために、上記発光材料を含む発光層における熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)を、他の層における熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)よりも多くすることができる。この場合、上記含有量Xは上記含有量Yよりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましい。合わせガラス用中間膜の耐貫通性がより一層高くなることから、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。なお、上記含有量Xと上記含有量Yとの差は、(上記含有量Xと上記含有量Yとの差)=(上記含有量X−上記含有量Y)により算出される。
【0055】
上記含有量Xの好ましい下限は45重量部、好ましい上限は80重量部であり、より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は75重量部であり、更に好ましい下限は55重量部、更に好ましい上限は70重量部である。上記含有量Xを上記好ましい下限以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができる。上記含有量Xを上記好ましい上限以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトの発生を抑止し、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。
上記含有量Yの好ましい下限は20重量部、好ましい上限は45重量部であり、より好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は43重量部であり、更に好ましい下限は35重量部、更に好ましい上限は41重量部である。上記含有量Yを上記好ましい下限以上とすることにより、高い耐貫通性を発揮することができる。上記含有量Yを上記好ましい上限以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトの発生を抑止し、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。
【0056】
また、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性を付与するためには、上記発光層における熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタールXであることが好ましい。上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、発光層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0057】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0058】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%であり、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0059】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、発光層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0060】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、発光層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%であり、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。
上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0061】
特に、上記発光層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0062】
また、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性を付与するためには、上記他の層における熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタールYであることが好ましい。ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいことが好ましい。
【0063】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、他の層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0064】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0065】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0066】
上記ポリビニルアセタールYのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記他の層とガラスとの接着力を確保することができる。上記ポリビニルアセタールYのアセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0067】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、他の層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。
なお、ポリビニルアセタールYの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0068】
また、例えば、上記合わせガラス用中間膜に遮熱性能を付与するために、上記発光材料を含む発光層及び他の層のいずれか1層、いずれか2層、又は、すべての層に熱線吸収剤を含有させることができる。
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0069】
上記合わせガラス用中間膜の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は1700μmであり、より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は1000μm、更に好ましい上限は900μmである。なお、上記合わせガラス用中間膜の厚みの下限は、合わせガラス用中間膜の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記合わせガラス用中間膜の厚みの上限は、合わせガラス用中間膜の最大厚さの部分の厚みを意味する。
上記合わせガラス用中間膜が多層構造である場合、上記発光材料を含む発光層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は1000μmである。上記発光材料を含む発光層の厚さがこの範囲内であると、特定の波長の光線を照射したときに充分にコントラストの高い発光が得られる。上記発光材料を含む発光層の厚さのより好ましい下限は80μm、より好ましい上限は500μm、更に好ましい下限は90μm、更に好ましい上限は300μmである。
【0070】
本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形であってもよい。合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であれば、合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、二重像の発生を防止した画像表示が可能となる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mrad、更に好ましい下限は0.3mradであり、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有し、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。
【0071】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合、発光層と、他の層(以下、「形状補助層」と呼ぶ場合がある。)を含む多層構造を有することが好ましい。上記発光層の厚みを一定範囲とする一方、上記形状補助層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が一定の楔角である楔形となるように調整することができる。上記形状補助層は、上記発光層の一方の面にのみ積層されていてもよく、両方の面に積層されていてもよい。更に、複数の形状補助層を積層してもよい。
【0072】
上記発光層は、断面形状が楔形であってもよく、矩形であってもよい。上記発光層の最大厚さと最小厚さの差は100μm以下であることが好ましい。これにより、一定範囲の輝度で画像を表示することができる。上記発光層の最大厚さと最小厚さの差は95μm以下であることがより好ましく、90μm以下であることが更に好ましい。
【0073】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合、上記発光層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は700μmである。上記発光層の厚みがこの範囲内であると、充分に高いコントラストの画像を表示できる。上記発光層の厚みのより好ましい下限は70μm、より好ましい上限は400μmであり、更に好ましい下限は80μm、更に好ましい上限は150μmである。なお、上記発光層の厚みの下限は、発光層の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記発光層の厚みの上限は、発光層の最大厚さの部分の厚みを意味する。
【0074】
上記形状補助層は、上記発光層に積層して、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が一定の楔角である楔形となるように調整する役割を有する。上記形状補助層は、断面形状が楔形、三角形、台形又は矩形であることが好ましい。断面形状が楔形、三角形、台形の形状補助層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状を一定の楔角である楔形となるように調整することができる。また、複数の形状補助層を組み合わせて、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状を整えてもよい。
【0075】
上記形状補助層の厚みは特に限定されないが、実用面の観点、並びに、接着力及び耐貫通性を充分に高める観点から、好ましい下限は10μm、好ましい上限は1000μmであり、より好ましい下限は200μm、より好ましい上限は800μmであり、更に好ましい下限は300μmである。なお、上記形状補助層の厚みの下限は、形状補助層の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記形状補助層の厚みの上限は、形状補助層の最大厚さの部分の厚みを意味する。また、複数の形状補助層を組み合わせて用いる場合は、その合計の厚みを意味する。
【0076】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合の、態様の一例を説明する模式図を、
図1〜3に示した。なお、
図1〜3では、図示の便宜上、合わせガラス用中間膜及び該合わせガラス用中間膜を構成する各層の厚みや楔角θは、実際の厚み及び楔角とは異なるように示されている。
【0077】
図1には、合わせガラス用中間膜1の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜1は、発光材料を含有する発光層11の一方の面に形状補助層12が積層された2層構造を有する。ここで発光層11は矩形であるのに対して、形状補助層12の形状を楔形、三角形又は台形とすることにより、合わせガラス用中間膜1全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0078】
図2には、合わせガラス用中間膜2の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜2は、発光材料を含有する発光層21の両面に形状補助層22と形状補助層23とが積層された3層構造を有する。ここで発光層21と形状補助層23とが厚みが一定の矩形であるのに対して、形状補助層22の形状を楔形、三角形又は台形とすることにより、合わせガラス用中間膜2全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0079】
図3には、合わせガラス用中間膜3の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜3は、発光材料を含有する発光層31の両面に形状補助層32と形状補助層33とが積層された3層構造を有する。ここで発光層31は最大厚さと最小厚さの差が100μm以下の緩やかな楔形であり、楔形の形状補助層32、33を積層することにより、合わせガラス用中間膜3全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0080】
上記合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。例えば、可塑剤と発光材料を含む可塑剤溶液と、熱可塑性樹脂とを十分に混合し、合わせガラス用中間膜を形成するための樹脂組成物を作製する。次に、該合わせガラス用中間膜を形成するための樹脂組成物を押出機を用いて押出し、合わせガラス用中間膜を製造することができる。
【0081】
上記合わせガラスは、上記合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されたものである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができるが、特定の波長の光線を照射する側とは反対のガラス板として用いることが好ましい。更に、上記ガラス板としてポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、上記合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【0082】
上記照射装置は、上記合わせガラスに光線を照射するものであって、照射される光線の出力が1mW以下である。上記出力が1mW以下であることにより、照射した光が合わせガラス用中間膜を透過して直接人に観察されても安全である。上記照射する光線の出力の好ましい上限は0.9mW、より好ましい上限は0.8mW、更に好ましい上限は0.7mWである。
上記照射する光線の出力の下限は、合わせガラスを1cd/m
2以上の輝度で発光させることができる出力であれば特に限定されないが、好ましい下限は0.1mW、より好ましい下限は0.2mW、更に好ましい下限は0.4mWである。
なお、上記照射する光線の出力は、光源より10cm離れた位置に配置したレーザーパワーメーター(例えば、オフィールジャパン社製、「ビームトラックパワー測定センサー3A−QUAD」等)を用いた照射強度測定により測定することができる。
【0083】
上記照射する光線は、密度の好ましい下限が0.1mW/cm
2、好ましい上限が550mW/cm
2である。上記照射する光線の密度が0.1mW/cm
2以上であると、夜間時の発光表示が充分に視認でき、550mW/cm
2以下であると、夜間時の周囲との輝度差が不快にならない。上記照射する光線の密度のより好ましい下限は0.2mW/cm
2、より好ましい上限は530mW/cm
2であり、更に好ましい下限は0.3mW/cm
2、更に好ましい上限は500mW/cm
2であり、特に好ましい下限は0.4mW/cm
2、特に好ましい上限は450mW/cm
2である。
なお、上記照射する光線の密度は、光源より10cm離れた位置に配置した紫外線積算光量計(例えば、ウシオ電機社製、「UIT−250」等)を用いて、単位面積当たりの紫外線積算光量測定により測定することができる。
【0084】
上記照射する光線は、照射径の好ましい下限が0.005cmφ、好ましい上限が3cmφである。上記照射する光線の照射径が0.005cmφ以上であると、目視による発光の認識が可能であり、3cmφ以下であると、コントラストの良好な表示を行うことができる。上記照射する光線の照射径のより好ましい下限は0.01cmφ、より好ましい上限は2.5cmφであり、更に好ましい下限は0.03cmφ、更に好ましい上限は2cmφであり、特に好ましい下限は0.05cmφ、特に好ましい上限は1cmφである。
なお、上記照射する光線の照射径は、光源より10cm離れた位置に配置したCCDセンサー及びCMOSセンサー(例えば、コヒレント・ジャパン株式会社製、「USB2.0 ビーム診断カメラ Laser Cam HR」等)による測定結果をもとに、ISO11146規格によって算出することができる。
【0085】
上記照射装置は、例えば、スポット光源(浜松ホトニクス社製、「LC−8」等)、キセノン・フラッシュランプ(ヘレウス社製、「CWランプ」等)、ブラックライト(井内盛栄堂社製、「キャリーハンド」)等が挙げられる。
【0086】
本発明のディスプレイ装置は、上記合わせガラスに上記照射装置から光線を照射したときに、合わせガラスが1cd/m
2以上の輝度で発光する。出力が1mW以下の低強度の光線を照射したときでも、1cd/m
2以上の輝度で発光することにより、充分なコントラストでの表示が可能であるとともに、合わせガラス用中間膜を透過した光線が直接人に観察されたとしても、目が眩んだりすることもない。
なお、上記合わせガラスの輝度の測定は、400nm以上の波長において上記発光材料の発光が最大の強度を示す波長又は405nmの波長で行われることが好ましく、405nmの波長で行われることがより好ましい。
本発明のディスプレイ装置は、特にナイトビジョンに好適に用いることができることができる。
本発明のディスプレイ装置は、特に車両のフロントガラスに好適に用いることができることができる。