特許第6595976号(P6595976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6595976
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】発泡箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20191010BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B65D81/26 A
   B65D85/50 120
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-257389(P2016-257389)
(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公開番号】特開2018-108847(P2018-108847A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】593025619
【氏名又は名称】トーホー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】西山 禎一
(72)【発明者】
【氏名】楠田 真太郎
【審査官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234232(JP,A)
【文献】 特開2011−031940(JP,A)
【文献】 特開2006−264740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0132909(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0335233(US,A1)
【文献】 米国特許第5130152(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を収容する容器本体と、前記容器本体の側面に設けられ正面視略矩形の開口部に装着される蓋部材と、を備えた発泡箱であって、
前記容器本体は、前記開口部の周縁において、内方が外方よりも突出するように形成された嵌合凸部を有し、
前記蓋部材は、前記開口部と対向する周縁において、内方が外方よりも窪むように形成されて前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を有し、
前記嵌合凹部は、該嵌合凹部の外壁を成す外縁部と、前記嵌合凹部の内壁を成し前記容器本体の前記開口部に嵌め込まれる内板部と、前記嵌合凹部の底面を成す鉛直面と、前記嵌合凹部の角部近傍に形成されて前記容器本体内と連通する通気溝と、を有し、
前記外縁部は、その外周面の角部が丸みを帯びたR状面とされ、前記通気溝と連通する通気孔を有し、
前記通気孔は、前記外縁部における前記開口部の外方の周縁と対向する周縁面に形成された通気流路と、前記R状面のうち前記蓋部材の鉛直側面と近接した位置において外部に開口した通気口と、を有し、
前記通気流路は、前記通気口の水平位置よりも上方に屈曲した屈曲部を有することを特徴とする発泡箱。
【請求項2】
前記通気孔は、前記蓋部材の上面と鉛直側面との成す角部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発泡箱。
【請求項3】
前記蓋部材は、板状の壁部の外面から内方に掘り込まれた凹部と、前記壁部の内面から内方に突出して収容物と当接する当接部と、を有し、
前記当接部は、前記当接部と前記壁部とを繋ぐ基部を除いて前記壁部と分離されて前記凹部内で外方に移動可能となることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラガス等のような長尺の果菜類等を収容する発泡箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アスパラガス等のような傷み易い長尺の果菜類の収容に用いられる発泡箱においては、種々の検討がなされている。例えば、根元が太く先端が細いアスパラガスの形状に合わせて、底壁及び蓋部材の内面に斜面が形成されている気密容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この気密容器は、一面が開口した長方体状の容器本体と、この容器本体の開口を気密状態で閉止する蓋体と、を備え、アスパラガス等の果菜類の梱包時には、容器本体の長手方向が水平になるように横倒しして、開口を上方に向けた状態で果菜類と収容した後、蓋体で開口を閉じる。そして、搬送時には、容器本体の長手方向が鉛直になるように縦向きに置かれる。このように、果菜類を上下に立てた状態で保管、運搬することにより、収容された果菜類の自重による損傷を防ぎ、また植物の生理作用に合致して、長時間にわたって鮮度を維持することができる。
【0003】
ところが、アスパラガス等の果菜類は、エチレンガスや水蒸気を放出し、それらのガスが容器内に溜まった状態になると、果菜類の鮮度が低下してしまうことがある。そこで、容器本体の内部から外部にガスを放出できるように、通気孔を設けた発泡箱が知られている(例えば、特許文献2参照)。この発泡箱では、蓋部材の成形時には、蓋部材の主体を成す壁部と当接部とは、弾性部よりも肉厚の薄い薄肉部を介して一体的に形成されており、収容物の梱包時に当接部を外方に押圧することで、上記薄肉部が破断される。これにより、当接部は、弾性部を有する基部で壁部と繋がっている一方で、基部以外の周縁部では薄肉部の破断により壁部とは分離され、壁部の外面に形成された凹部内で外方に移動可能となる。上記通気孔は、蓋部材の上端角部に設けられており、容器内の気密性を保持しつつ、当接部が可動となるように、適度に容器内の空気を排出等する機能も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録2550309号公報
【特許文献2】特開2014−234235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記発泡箱においては、通気孔が蓋部材の上端角部に設けられているので、例えば、搬送時に発泡箱の上から氷が被せられたり、水が掛けられた場合に、通気孔から容器内に水が浸入する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、出荷及び輸送時において容器内に水が浸入することを抑制することができる発泡箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、収容物を収容する容器本体と、前記容器本体の側面に設けられ正面視略矩形の開口部に装着される蓋部材と、を備えた発泡箱であって、前記容器本体は、前記開口部の周縁において、内方が外方よりも突出するように形成された嵌合凸部を有し、前記蓋部材は、前記開口部と対向する周縁において、内方が外方よりも窪むように形成されて前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を有し、前記嵌合凹部は、該嵌合凹部の外壁を成す外縁部と、前記嵌合凹部の内壁を成し前記容器本体の前記開口部に嵌め込まれる内板部と、前記嵌合凹部の底面を成す鉛直面と、前記嵌合凹部の角部近傍に形成されて前記容器本体内と連通する通気溝と、を有し、前記外縁部は、その外周面の角部が丸みを帯びたR状面とされ、前記通気溝と連通する通気孔を有し、前記通気孔は、前記外縁部における前記開口部の外方の周縁と対向する周縁面に形成された通気流路と、前記R状面のうち前記蓋部材の鉛直側面と近接した位置において外部に開口した通気口と、を有し、前記通気流路は、前記通気口の水平位置よりも上方に屈曲した屈曲部を有することを特徴とする
【0009】
上記発泡箱において、前記通気孔は、前記蓋部材の上面と鉛直側面との成す角部の近傍に設けられていることが好ましい。
【0010】
上記発泡箱において、前記蓋部材は、板状の壁部の外面から内方に掘り込まれた凹部と、前記壁部の内面から内方に突出して収容物と当接する当接部と、を有し、前記当接部は、前記当接部と前記壁部とを繋ぐ基部を除いて前記壁部と分離されて前記凹部内で外方に移動可能となることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発泡箱によれば、通気口は、R状面のうち蓋部材の鉛直側面と近接した位置において、概ね水平方向に開口しているので、通気口から水が容器内に侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る発泡箱の容器本体と蓋部材とを分離した状態を示す斜視図、(b)は容器本体に蓋部材を装着して横置きとした状態を示す斜視図、(c)は(b)を縦置きした状態を示す斜視図。
図2】(a)は容器本体の正面図、(b)は背面図、(c)は上面図、(d)は底面図、(e)は側面図。
図3】(a)は図2(a)のA−A線断面図、(b)はB−B線断面図、(c)はC−C線断面図。
図4】(a)は蓋部材の正面を上方に置いた斜視図、(b)は背面を上方に置いた斜視図。
図5】(a)は蓋部材の正面図、(b)は背面図、(c)は上面図、(d)は底面図、(e)は側面図。
図6】(a)は図5(b)のD−D線断面図、(b)は図5(a)のE−E線断面図、(c)はF−F線断面図。
図7】(a)は薄肉部を破断させた状態の図6(a)に対応する断面図、(b)は図6(b)に対応する断面図、(c)は(a)の一点鎖線部の拡大図。
図8図5(a)の一点鎖線部の拡大図。
図9】容器本体に蓋部材を装着して横置きとした状態を示す断面図。
図10】(a)は蓋部材の背面の斜視図、(b)は(a)のH部分の拡大図、(c)は図5(b)のG部分の拡大図、(d)は(c)のI−I線断面図。
図11】容器本体に蓋部材を装着して横置きとした状態を示す斜視図。
図12】蓋部材の通気流路の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る発泡箱について、図面を参照して説明する。図1(a)乃至(c)に示すように、発泡箱1は、アスパラガス等の収容物を収容する容器本体2と、容器本体2に設けられている開口部20に装着される蓋部材3と、を備える。発泡箱1は、アスパラガス等の果菜類の梱包時には、図1(a)(b)に示したように、開口部20を上方に向けた状態で、収容物を横倒しの状態で収容した後、蓋部材3で開口部20が閉じられる。また、搬送時には、図1(c)に示したように、収容物が上下に起った状態となるよう、縦向きに置かれる。なお、以下の説明では、蓋部材3の外面と正対する方向を正面とする(図1(c)参照)。
【0014】
容器本体2及び蓋部材3は、いずれも正面視において略矩形であり、四方の角部が丸みを帯びるように面取りされている。容器本体2及び蓋部材3は、発泡合成樹脂の成形体であり、例えば、熱可塑性樹脂の発泡用の粒子を型内に充填し加熱し、発泡させて一体成形される。熱可塑性樹脂は、例えば、スチレン系樹脂であり、又はスチレン系樹脂に、例えば、オレフィン系樹脂といった他の樹脂を混合させた複合樹脂であってもよい。
【0015】
図2(a)乃至(e)及び図3(a)乃至(c)に示すように、容器本体2は、一辺が他辺よりも長い矩形状の底板21(図2(d)、図3(b))と、底板21の周囲に立設される壁板22、23(図2(e)(b))と、底板21と正対する天板24(図2(c)、図3(c))と、を有する。壁板22は、容器本体2の側面を成し、縦置き状態としたときに、鉛直方向の辺が水平方向の辺よりも長い矩形状である。なお、壁板22は、左右対称形状である(図2(e))。一方、壁板23は、容器本体2の背面を成す(図2(b))。
【0016】
開口部20は、底板21、各壁板22、天板24の4辺のうち、壁板23とは反対側の周縁により形成される(図1(a)も参照)。開口部20の周縁には、蓋部材3に形成された嵌合凹部35(後述する図4(b)参照)と嵌合する嵌合凸部20aが形成されている(図2(c)(d))。嵌合凸部20aは、開口部20の周縁において、内方が外方よりも突出するように形成されている(図1(a)も参照)。嵌合凸部20aの外縁には、僅かに外方に突起した凸縁20bが形成されており(図2(d))、蓋部材3の嵌合凹部35に形成された凹溝35a(図4(b)参照)と係合することで、容器内の密閉性を高めることができる。
【0017】
底板21及び天板24の壁板23側の外面には、内方に窪んだ手掛け部21a、24aが夫々設けられている。手掛け部21a、24aは、容器本体2を横置き状態(図1(a)参照)で持ち運びする際に用いられる。また、天板24の開口部20側の外面には、収容物の取り出し際して蓋部材3を容器本体2から外すために用いられる差込部24bが形成されている(図1(c)、図2(c))。
【0018】
各壁板22の開口部20側の縁部には、蓋部材3の両側部から台形形状に張り出した凸辺部34(後述する図4(a)参照)と嵌合する凹辺部22aが形成されている(図1(a)、図2(e))。発泡箱1は、図1(c)に示したように、搬送時には、蓋部材3が発泡箱1の一側面となるので、蓋部材3の凸辺部34と容器本体2の凹辺部22aとを嵌合させて、それらの3次元的に係合させることで、蓋部材3が容器本体2から容易には外れないようにしている。また、各壁板22の凹辺部22aとは反対側の縁部には、切欠き22bが形成されている(図1(a)、図2(e))。切欠き22bは、手掛け部21a、24a同様、容器本体2の持ち運びに際して用いられる。
【0019】
壁板23は、収容物の梱包時に横置きされた際には底板となり、内面には収容物の配置方向を示す矢印が形成されている。また、壁板23の内面には、壁板23に対して傾斜しており、内方に突出して収容物と当接する容器側当接部23aが形成されている(図2(a)、図3(a))。この容器側当接部23aは、蓋部材3が装着されたとき、蓋部材3側の当接部33と正対する(後述する図4(b)、図9参照)。容器側当接部23aは、根元が太く先端が細いアスパラガスの形状に合わせて、下方から上方に向かうほど突出高さが高くなるように形成されている。
【0020】
壁板23の外面には、容器側当接部23aの厚みを抑制するための凹部23bが形成されている(図2(b)、図3(a))。また、壁板23の外面の周縁近傍には、容器本体2のみを複数積み重ねたときに安定するように、嵌合凸部20aに対応する凹部23cが形成されている(図2(b))。なお、壁板23の外面にも、収容物の配置方向を示す矢印と文字が形成されている。
【0021】
壁板22及び壁板23の内面には、縦置き状態における水平方向に複数の凹凸22c、23dが形成されている(図2(a)、図3(a))。凹凸22c、23dは、収容物の梱包時に横置きされた収容物が横滑りすることを防止し、また、搬送時に発泡箱1が縦置きされた際にも、収容物が上下方向に動くことを抑制し、収容物の損傷を抑制することができる。また、壁板22の内面には、収容物の積載量の目安となる目盛りが形成されている。底板21の内面には、格子状の凹凸21bが形成されている(図3(b))。凹凸21bは、搬送時に収容物が上下方向に動くことを抑制する滑り止めとなる。また、凹凸21bは、開口部20側が高く、壁板23側が低くなっている。そのため、収容物が僅かに壁板23側に傾くようになり、不本意に蓋部材3が外れた場合でも、収容物が容器外に飛び出すことを抑制することができる。
【0022】
図4(a)(b)に示すように、蓋部材3は、その主体を成す板状の壁部31と、壁部31の外面から内方に掘り込まれた凹部32と、壁部31に対して傾斜しており、壁部31の内面から内方に突出して収容物と当接する当接部33と、を有する。当接部33は、容器側当接部23aと同様、根元が太く先端が細いアスパラガスの形状に合わせて、下方から上方に向かうほど突出高さが高くなるように形成されている。また、凹部32も、蓋部材3の下方から上方に向けて掘り込み深さが深くなるように形成されている。
【0023】
また、蓋部材3は、蓋部材3の両側部から内方に台形形状に張り出した凸辺部34を有する。凸辺部34は、容器本体2の凹辺部22a(図2(e))と嵌合する。蓋部材3の外面のうち、凸辺部34と対峙する縁部には、蓋部材3を複数安定して積み重ねられるように、凸辺部34に対応する形状に切り欠かれた凹部31aが形成されている。また、蓋部材3の外面にも、手掛け部31bと、収容物の配置方向を示す矢印等とが形成されている。
【0024】
蓋部材3の内面の周縁には、上述したように、容器本体2の嵌合凸部20aと嵌合する嵌合凹部35が形成されている(図4(b))。嵌合凹部35は、開口部20と対向する周縁において、内方が外方よりも窪むように形成されている。また、嵌合凹部35の内側面には、嵌合凸部20aの凸縁20bと係合する凹溝35aが形成されている。
【0025】
図5(a)乃至(e)及び図6(a)乃至(c)に示すように、当接部33は、当接部33と壁部31とを繋ぐ基部33aと、基部33aを除いて当接部33の外縁部と凹部32の内縁部とを繋ぐ薄肉部33bと、当接部33の外面において薄肉部33bの内側に沿って形成される溝部36と、を有する。また、当接部33は、その外面に形成され収容物と当接したとき弾性変形して当接部33を内方に付勢する弾性部33cを有する。
【0026】
基部33aは、壁部31に対して緩やかに傾斜しており、その下端部は壁部31と滑らかに連続しており、その両縁部は凹部32の内縁部と繋がっている。薄肉部33bは、蓋部材3の成形時は、当接部33の外縁部のうちの両側縁及び上縁と、凹部32の内縁部とを繋いでいる。なお、図6(a)(b)は、当接部33の上縁と凹部32の上内縁部とが薄肉部33bで繋がれた構成を示している。
【0027】
凹部32は、当接部33の周縁近傍が深くスリット状に切り込まれており、それより内側にある当接部33が、容器外方に突出し肉厚になっている。弾性部33cは、肉厚となった当接部33の外面に、幅方向に伸びるように切り込まれた切込であり、本例では、2本の切込が形成されている。また、弾性部33cは、当接部33により大きな弾性を与えられるように、内方から外方に向けて切込の開口が大きくなるように形成されている。
【0028】
薄肉部33bは、蓋部材3を容器本体2に装着するときに、当接部33を内方から外方へ押し込むことで、容易に破断される。その結果、図7(a)(b)に示すように、当接部33は、基部33aを除いて壁部31と分離されて凹部32内で外方に移動可能となる。また、図7(c)に示すように、当接部33の上縁には凸部33dが設けられている。一方、凹部32は、その上縁面に、当接部33の凸部33dが嵌まり込み、これと当接して当接部33の外方への移動を規制する凹状の規制部32aが形成されている。これにより、例えば、搬送時の揺れで、収容物が当接部33を外方へ押し出したとしても、当接部33が凹部32よりも外方へ押し出されることはなく、容器内の気密性を確保することができる。
【0029】
図8に示すように、溝部36は、当接部33の周縁部の両側縁に沿って形成された縦溝36aを含む。従来の発泡箱、例えば、上記特許文献2に記載の発泡箱においても、弾性部によって、当接部の上縁部と凹部の上縁部との摺動性を一定程度は確保されていた。しかしながら、当接部の側縁部の外寸法と凹部32の側縁部の内寸法とは殆ど同じで、それらの間の摺動性が十分でなく、収容物を保持するために十分なクッション性を得られないことがあった。これに対して、本実施形態の発泡箱1では、当接部33の周縁部の両側縁に形成された縦溝36aが、当接部33の側縁部が凹部32の側縁部に接触しながら摺動可能とする弾性を与える。従って、蓋部材3の形成時に薄肉部33bにより繋がれ、凹部32の側縁面と殆ど同寸法の当接部33を、凹部32内で適切に摺動可能とし、収容物を損傷させることなく保持するために十分なクッション性を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、溝部36は、当接部33の周縁部の上縁に沿って形成された横溝36bを含む。この横溝36bは、当接部33の上縁部が凹部32の上縁部に接触しながら摺動するのに必要な弾性を与える。従って、弾性部33cよりも、より効果的に当接部33の凹部32に対する摺動性を高めることができる。また、溝部36は、薄肉部33bの切込の深さよりも深くなるように形成されている(図6(b)参照)。これにより、当接部33の外面において、溝部36の開口面積が小さくても、当接部33を摺動可能とする適切な弾性を与えることができる。なお、溝部36は、薄肉部33bの切込の深さよりも深いものの、当接部33の内面まで貫通はしておらず、図6(b)に示したように、当接部33に一定の厚みを持たせている。
【0031】
また、図8で示したように、溝部36のうち、縦溝36aは、横溝36bよりも上方に延出するように形成されていることが好ましい。上述したように、当接部33の上縁部と凹部32の上縁部との摺動性は、弾性部33cによって一定程度は確保できるが、当接部33の側縁部と凹部32の側縁部との間の摺動性は、縦溝36aに依存する。従って、この縦溝36aの長さを、より長く設けることで、当接部33を凹部32内で摺動可能とする十分な弾性を効果的に与えることができる。
【0032】
図9に示すように、容器本体2は、その内側面(壁板22)に形成され、当接部33の内方への移動を規制する凸部23eを有する。壁板22には、複数の凹凸23dが水平方向に設けられ、それらが開口部20よりも内方で留まるように形成されて、凹凸23dの凸部の水平端部が、凸部23eとして機能する。複数の凹凸23dのうち上段部のものは、壁板22に対する突出高さが高くなるように形成され、その水平端部である凸部23eは、当接部33を規制するに足りる厚みを有している。この凸部23eを設けたことにより、例えば、外部要因により当接部33が内方に押し込まれた場合でも、凸部23eが当接部33の内方への移動を規制するので、内部の収容物が当接部33により不要に圧迫されることを抑制することができる。
【0033】
上述したように、アスパラガス等の果菜類は、エチレンガスや水蒸気を放出し、それらのガスが容器内に溜まった状態になると、果菜類の鮮度が低下してしまうことがある。そこで、本実施形態の発泡箱1では、容器本体2の内部から外部にガスを放出できるように、通気機構が設けられている。この通気機構は、容器内の気密性を保持しつつ、当接部33が摺動可能となるように、適度に容器内の空気を排出等して、容器内の圧力を調整する圧力調整機構としても機能する。以下、本実施形態の発泡箱1における通気機構について、図面を参照して説明する。
【0034】
図10(a)乃至(d)に示すように、蓋部材3の嵌合凹部35は、嵌合凹部35の外壁を成す外縁部35bと、嵌合凹部35の内壁を成し容器本体2の開口部20(図1(a)参照)に嵌め込まれる内板部35cと、嵌合凹部35の底面を成す鉛直面35dと、を有する。なお、外縁部35bのうち鉛直面35dに近接する位置に、嵌合凸部20aの凸縁20bと係合する凹溝35aが形成されている。
【0035】
また、嵌合凹部35は、その角部近傍に形成されて容器本体2(図9参照)内と連通する通気溝37a、37b、37c(総称して通気溝37)を有する。また、嵌合凹部35の外縁部35bは、その外周面の角部が丸みを帯びたR状面3rとされ、通気溝37と連通する通気孔38を有する。本実施形態の発泡箱1における通気機構は、これら通気溝37及び通気孔38により成される。
【0036】
通気溝37は、内板部35cに形成され蓋部材3の装着方向に伸びる第1通気溝37aと、鉛直面35dが外方に掘り込まれ第1通気溝37aと連通する第2通気溝37bと、外縁部35bに形成され第2通気溝37bと連通する第3通気溝37cと、を有する。
【0037】
第1通気溝37aは、半円状の切り欠きであり、内板部35cの一角部近傍につき2箇所設けられている。内板部35cの外周面は、第1通気溝37aを除いて、容器本体2の嵌合凸部20aの内縁と密着している。第2通気溝37bは、鉛直面35dのうち蓋部材3の角部に相当する箇所が、他の箇所に比べて容器外方に深く掘り込まれており、容器本体2の嵌合凸部20aのうち蓋部材3と正対する周縁面との間に僅かな隙間を形成している。なお、鉛直面35dもまた、第2通気溝37bを除いて、嵌合凸部20aの周縁と密着している。第3通気溝37cは、外縁部35bのうち嵌合凹部35の隅部に形成された半円状の切り欠きである。外縁部35bもまた、第3通気溝37cを除いて、嵌合凸部20aの外縁と密着している。
【0038】
通気孔38は、外縁部35bにおける開口部20と対向する周縁面に形成された通気流路38aと、R状面3rのうち蓋部材3の鉛直側面3vと近接した位置において外部に開口した通気口38bと、を有する。
【0039】
このように、本実施形態の発泡箱1では、蓋部材3に通気溝37及び通気孔38が設けられているので、蓋部材3が容器本体2の開口部20に装着されたとき、容器内のエチレンガスや水蒸気等のガスを放出し、梱包された果菜類の鮮度が低下することを抑制することができる。また、容器内の圧力を適宜に調整することができるので、当接部33は、収容物を損傷させることなく保持するために適度な摺動性を得ることができる。また、蓋部材3を容器本体2の開口部20に装着させる際にも、容器内の空気が外部に放出されるので、蓋部材3の装着に要する力を低減することができる。
【0040】
また、通気口38bは、R状面3rのうち蓋部材3の鉛直側面3vと近接した位置において開口している。すなわち、通気口38bは概ね水平方向に開口しているので、例えば、搬送時に発泡箱1の上から氷が被せられたり、水が掛けられた場合であっても、通気口38bから水が容器内に侵入することを抑制することができる。また、本実施形態では、通気溝37や通気口38bがいずれも蓋部材3に設けられているので、容器本体2自体には改変を加える必要がないので、開口部の形状が適合するものであれば、従来型の容器本体を使い回すことができ、不要な在庫の発生を抑制することができる。
【0041】
通気流路38aは、通気口38bの水平位置よりも上方に屈曲した屈曲部38cを有する(図10(c)参照)。そのため、仮に通気口38bから水が浸入しても、屈曲部38cにより堰き止められ、通気流路38aから第3通気溝37cへ水が浸入することを抑制することができる。
【0042】
また、図11に示すように、通気口38bは、蓋部材3の上面3uと鉛直側面3vとの成す角部の近傍に設けられている。収容物が収容された状態では、容器内の上方に空き空間ができるので、通気口38bを蓋部材3の上方位置に設けることで、容器内上方から通気溝37を介してスムーズに空気を排出することができる。また、容器内の下方位置には、収容物から排出された水や埃カス等によって、通気溝37や通気口38bが目詰まりする虞がある。一方、通気溝37や通気口38bを蓋部材3の上方位置に設ければ、目詰まりの虞も少なく、持続的に容器内の空気を排出することができる。
【0043】
また、第3通気溝37cは、外縁部35bの一隅部につき1箇所設けられているのに対して、第1通気溝37aは、内板部35cの一角部近傍につき2箇所設けられている。これにより、容器内と第1通気溝37a、第2通気溝37bとは連通性が高く、それらの間の圧力差が少なくなる。そのため、当接部33が内方へ押し込まれても、容器内から第1通気溝37aを介して第2通気溝37bへ空気は緩やかに流れ込み、蓋部材3が容器本体2から外れることを抑制することができる。
【0044】
なお、図10(c)では、屈曲部38cが曲線状の湾曲した形状となった構成を示したが、この構成に限らず、例えば、図12に示すように、屈曲部38cは、互いに角度の異なる直線辺を組み合わせた鋸刃状に形成されていてもよい。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。屈曲部38cの形状として、図10(c)では湾曲形状のもの、図12では直線形状のものを示したが、湾曲部38cは、通気流路38aの一部を通気口38bの水平位置よりも上方にまで屈曲したものであれば、上記2例に限られず、例えば、湾曲形状及び直線形状の組み合わせであってもよい。なお、通気口38bは、上述したように、R状面3rのうち蓋部材3の鉛直側面3vと近接した位置において開口しており、そのR状面3rよりも下方の鉛直側面3vにおいてではない。鉛直側面3vは、複数の発泡箱1が横に置かれると、鉛直側面3vは、隣り合う他の発泡箱と接することがある。そのため、通気口38bは、僅かに湾曲したR状面3rで開口することで、他の発泡箱の鉛直側面によって通気口38bが閉じられることを防止することができる。また、通気口38bは、R状面3rのうち蓋部材3の上面3uと近接した位置では開口していない。複数の発泡箱1が縦積みされると、上面3uは、上に積載された他の発泡箱と接することがある。通気口38bは、R状面3rの鉛直側面3s近傍で開口することで、他の発泡箱の下面によって通気口38bが閉じられることを防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 発泡箱
2 容器本体
20 開口部
20a 嵌合凸部
3 蓋部材
31 壁部
32 凹部
32a 規制部
33 当接部
35 嵌合凹部
35b 外縁部
35c 内板部
35d 鉛直面
37 通気溝
37a 第1通気溝
37b 第2通気溝
37c 第3通気溝
38 通気孔
38a 通気流路 38a
38b 通気口
38c 屈曲部
3r R状面
3u 上面
3v 鉛直側面
図1
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図12