(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596002
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】自動調心永久磁石籠型ロータを備えるハイブリッド電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20191010BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20191010BHJP
H02K 1/27 20060101ALI20191010BHJP
H02K 17/16 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
H02K16/02
H02K1/22 A
H02K1/27 501K
H02K17/16 Z
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-543653(P2016-543653)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-502641(P2017-502641A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2015010662
(87)【国際公開番号】WO2015106002
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】14/151,333
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/229,673
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512047025
【氏名又は名称】フィンクル ルイ
【氏名又は名称原語表記】FINKLE, Louie
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】フィンクル ルイ
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−331445(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/158881(WO,A1)
【文献】
特開2006−217792(JP,A)
【文献】
特開2006−353090(JP,A)
【文献】
特開2006−296184(JP,A)
【文献】
特開2006−121896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
H02K 1/22
H02K 1/27
H02K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド永久磁石籠型モータであって、
モータハウジングと;
前記モータハウジングに固定され、回転ステータ磁場を生成するステータと;
前記モータハウジングに回転可能に連結され、負荷に取り付けられるように前記モータハウジングの少なくとも1つの端部から延在するモータシャフトと;
前記モータシャフトと同軸で、前記モータシャフトに回転可能に固定されたインナーロータであって、インナーロータコアと、
前記インナーロータコアに組み込まれた第2の導電性籠型バー、及び
前記インナーロータコアに組み込まれたN個の永久磁石
の少なくとも一方を備える、前記インナーロータと;
前記モータシャフトと同軸で前記ステータと前記インナーロータの間に配置され、前記モータシャフトとは独立に回転可能なアウターロータであって、アウターロータコアと、前記アウターロータコアに組み込まれた第1の導電性籠型バーとを備え、永久磁石を有さない、前記アウターロータと;
を備える、モータ。
【請求項2】
前記インナーロータ及び前記アウターロータは前記モータシャフトの軸方向に沿って動かないようにされる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記インナーロータコアに組み込まれた永久磁石は直接接触している、請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記インナーロータコアに組み込まれた永久磁石はフェライト磁石である、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記第2の導電性籠型バーは、前記永久磁石の間で、角度方向に間隙を設けて配置される、請求項2に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1の導電性籠型バーと前記アウターロータの表面との間に小間隙が設けられる、請求項2に記載のモータ。
【請求項7】
前記小間隙は非鉄間隙である、請求項2に記載のモータ。
【請求項8】
ハイブリッド永久磁石籠型モータであって、
モータハウジングと;
前記モータハウジングに固定され、回転ステータ磁場を生成するステータと;
前記モータハウジングに回転可能に連結され、負荷に取り付けられるように前記モータハウジングの少なくとも1つの端部から延在するモータシャフトと;
前記モータシャフトと同軸で、前記モータシャフトに回転可能に固定されたインナーロータであって、インナーロータコアと、前記インナーロータコアに組み込まれた第2の導電性籠型バーを備える、前記インナーロータと;
前記モータシャフトと同軸で前記ステータと前記インナーロータの間に配置され、前記モータシャフト、前記インナーロータ及び前記ステータとは独立に回転可能なアウターロータであって、アウターロータコアと、前記アウターロータコアに組み込まれた第1の導電性籠型バーを備える、前記アウターロータと;
を備えるモータであって、
前記インナーロータコア及び前記アウターロータコアのいずれか一方のみに永久磁石が組み込まれ、
前記アウターロータは、前記モータのどのような動作中においても、前記モータシャフトに機械的に回転可能には結合されてはおらず、
前記アウターロータは、前記モータの同期動作中においては、前記モータシャフトに磁気的に回転可能に結合される、
モータ。
【請求項9】
前記第1の導電性籠型バーと前記アウターロータの表面との間に小間隙が設けられる、請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
ハイブリッド永久磁石籠型モータであって、
モータハウジングと;
前記モータハウジングに固定され、回転ステータ磁場を生成するステータと;
前記モータハウジングに回転可能に連結され、負荷に取り付けられるように前記モータハウジングの少なくとも1つの端部から延在するモータシャフトと;
前記モータシャフトと同軸で、前記モータシャフトに回転可能に固定されたインナーロータであって、インナーロータコアと、前記インナーロータコアに組み込まれた第2の導電性籠型バーを備える、前記インナーロータと;
前記モータシャフトと同軸で前記ステータと前記インナーロータの間に配置され、前記モータシャフトとは独立に回転可能なアウターロータであって、アウターロータコアと、前記アウターロータコアに組み込まれたN個の永久磁石と、前記アウターロータコアに組み込まれた第1の導電性籠型バーとを備える、前記アウターロータと;
を備えるモータであって、
前記アウターロータは、前記モータのどのような動作中においても、前記インナーロータに機械的に回転可能には結合されず、
前記アウターロータは、前記モータの同期動作中においては、前記インナーロータに磁気的に回転可能に結合される、
モータ。
【請求項11】
前記インナーロータ及び前記アウターロータは前記ステータの軸方向に沿って動かないようにされる、請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
前記インナーロータ及び前記アウターロータは前記モータシャフトの軸方向に沿って動かないようにされる、請求項10に記載のモータ。
【請求項13】
起動後に同期動作に移行する、請求項10に記載のモータ。
【請求項14】
前記インナーロータの外面に複数の溝を備え、前記溝の数及び間隔は、前記アウターロータの前記永久磁石の数及び間隔に一致し、
前記溝は、突極によって、前記アウターロータを前記インナーロータに対して磁気的に回転可能に結合することに寄与する、
請求項10に記載のモータ。
【請求項15】
前記アウターロータは、前記モータのどのような動作中においても、前記モータシャフトに機械的に回転可能には結合されない、請求項10に記載のモータ。
【請求項16】
前記アウターロータは、前記モータのどのような動作中においても、前記インナーロータに機械的に回転可能には結合されない、請求項1に記載のモータ。
【請求項17】
前記アウターロータは、前記モータのどのような動作中においても、前記モータシャフトに機械的に回転可能には結合されない、請求項1に記載のモータ。
【請求項18】
前記インナーロータ及び前記アウターロータは前記ステータの軸方向に沿って動かないようにされる、請求項8に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気モータに関し、具体的には、独立回転永久磁石ロータを有する誘導モータに関する。この永久磁石ロータは誘導ロータに可変連結され、それによって始動時の非同期誘導動作から始動後の同期動作にモータを再構成することができ、効率的な動作を可能にする。
【0002】
本出願は、2014年1月9日に出願された米国特許出願第14/151,333号及び2014年3月28日に出願された米国特許出願第14/229,673の優先権を主張するものであり、これらの出願を参照することにより、その全体が本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
電気モータの好ましい形態は、ブラシレス交流誘導モータである。誘導モータのロータは、ステータの内側で回転する籠(又は「回し車(hamster wheel)」に似た回転籠)を備える。この籠は、ロータの外周に、角度方向に離隔して配され軸方向に延在するバーを備える。ステータに流れる交流電流は、ロータの内側に回転ステータ磁場を誘起し、回転磁場がバーに電流を誘起する。バーの誘導電流は更に誘導磁場を生じさせ、この誘導磁場がステータ磁場と協働してトルクを発生させ、ロータを回転させることになる。
【0004】
電流をバーに誘起させるためには、回転ステータ磁場に同期してバーが動かないように(又は回転しないように)しなくてはならない。これは、電磁誘導には磁場と磁場内の誘導体との間の(滑りと呼ばれる)相対運動が必要とされるからである。このため、ロータは回転ステータ磁場に対して滑ることになり、バーに電流が誘起され、トルクが発生する。したがって、誘導モータは非同期モータとも呼ばれる。
【0005】
不都合なことに、低出力誘導モータは設計動作速度でも効率が高くなく、負荷を減らすほど効率は更に低くなる。これは、負荷を減らしてもステータの消費電力量が一定のままであるためである。
【0006】
こうした誘導モータの効率を改善する一つのアプローチは、ロータに永久磁石を追加することであった。これにより、モータは最初、典型的な誘導モータと同様に始動するが、モータが動作速度に達すると、ステータ磁場が永久磁石と協働して同期動作に遷移することができる。しかし不都合なことに、永久磁石にはサイズに制限がある。永久磁石が大き過ぎるとモータの始動が妨げられるからである。こうしたサイズ制限のため、永久磁石の追加によって得られる利点も制限されることになる。
【0007】
本出願が包含する2014年1月9日出願の米国特許出願第14/151,333号は、電気モータであって、アウターステータと、モータシャフトに固定されたバーを備えるインナーロータと、永久磁石及びバーを備え、インナーロータとステータの間に配置される自由回転アウターロータを有する電気モータを開示している。始動時、回転ステータ磁場が自由回転アウターロータを加速し、この加速によって、自由回転アウターロータの永久磁石も加速してインナーロータにロックして効率的な永久磁石の動作を実現することができる。
【0008】
出願第14/151,333号の設計は一部のモータの設計には適するものであるが、設計によっては、インナーロータの表面における表面効果により、インナーロータと回転永久磁場の結合が弱められたり妨げられたりする。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、前述した要求やそれ以外の要求に対して、ハイブリッド誘導モータを提供することで対応する。このモータは、固定ステータ、独立回転アウターロータ、モータシャフトに固定されたインナーロータを備える。ある実施形態では、アウターロータは、離隔して配された第1のバーと永久磁石を備え、インナーロータは、離隔して配された第2のバーを備える。別の実施形態では、アウターロータは、角度方向に離隔して配された第1のバーを備えるが、永久磁石は備えず、インナーロータが永久磁石を備え、角度方向に離隔して配された第2のバーを備えることもある。アウターロータは始めに、回転ステータ磁場と第1のバーの協働によって加速される。アウターロータが同期回転速度に向けて加速すると、インナーロータが加速され、効率的な同期動作に遷移する。こうして、アウターロータは、始動時にはインナーロータを回転ステータ磁場から分離し、同期速度ではインナーロータを回転ステータ磁場に結合するクラッチとして動作する。
【0010】
本発明のある実施形態に従って提供されるハイブリッド誘導モータは、固定ステータ、独立回転ハイブリッド永久磁石籠型(Hybrid Permanent Magnet/Squirrel Cage, HPMSC)アウターロータ、モータシャフトに固定された籠型(Squirrel Cage, SC)インナーロータを備える。HPMSCロータは、角度方向に離隔して配されたN個の永久磁石と、連続する永久磁石の間を角度方向に離隔して配された複数の第1のバーをN組備える。SCロータは、角度方向に離隔して配された第2のバーN組と、SCロータの外周で連続する第2のバーの群の間に溝を備える。HPMSCアウターロータは始めに、ステータと第1のバーの協働によって加速される。永久磁石は、SCロータに回転ステータ磁場を生成し、この磁場が第2のバーを協働してSCロータを加速する。HPMSCアウターロータが同期回転速度に向けて加速すると、ステータ磁場はHPMSCロータ内部に到達し、永久磁石と協働して同期動作に遷移する。永久磁石とSCロータの溝との協働によって、突極が形成され、2つのロータを同期回転速度にロックする。
【0011】
本発明の別の態様に従って提供されるインナー籠型(SC)ロータは、ロータ外周に、角度方向に離隔して配された軸方向に延在する溝を備える。独立回転ハイブリッド永久磁石籠型(HPMSC)アウターロータでは、溝の間隔は永久磁石の間隔と一致している。同期速度では、溝と永久磁石は協働して突極を形成し、この突極がSCインナーロータの回転をHPMSCアウターロータに結合する。これにより、SCインナーロータとHPMSCアウターロータの機械的連結が不要となる。
【0012】
本発明のまた別の態様に従って提供されるモータは、改良された誘導始動シーケンスと効率的な同期動作を有する。HPMSCアウターロータの第1のバーの設計により、十分大きなトルクが生み出され、永久磁石が生じさせるSCインナーロータの抵抗を克服することができる。その結果、HPMSCアウターロータは早く同期回転速度に到達することができる。HPMSCアウターロータはSCインナーロータよりも速く加速するほど、永久磁石とSCインナーロータの第2のバーとの協働がSCインナーロータに生み出すトルクは大きくなり、SCインナーロータを加速する。第1のロータが同期回転速度に近づくと、ステータの磁束はSCインナーロータの第2のバーを貫いて更なるトルクを加え、それが更にSCインナーロータを同期回転速度まで加速する。
【0013】
本発明のまた更に別の態様に従って提供されるモータは、HPMSCアウターロータ及びSCインナーロータを備え、これらは、HPMSCアウターロータの永久磁石とSCインナーロータの表面で軸方向に延在する溝との協働によって結合される。溝の深さは、モータの用途に応じて、SCインナーロータとHPMSCアウターロータのロックを最適化するように変更することができる。
【0014】
本発明の別の実施形態に従って提供されるハイブリッド誘導モータは、固定ステータ、独立回転籠型(SC)アウターロータ、モータシャフトに固定された永久磁石(PM)インナーロータを備える。SCアウターロータは、角度方向に離隔して配された第1のバーを備える。PMインナーロータは、永久磁石の間に離隔して配された第2のバーの組を備えてもよい。SCアウターロータは始めに、回転ステータ磁場と第1のバーの協働によって加速される。SCアウターロータが同期回転速度に向けて加速すると、ステータ磁場はSCアウターロータを貫いて到達し、永久磁石と協働してPMインナーロータを加速し、同期動作に遷移する。こうして、SCアウターロータは、始動時にはPMインナーロータを回転ステータ磁場から分離し、同期速度ではPMインナーロータを回転ステータ磁場に結合するクラッチとして動作する。SCアウターロータが加速すると、PMインナーロータにおける永久磁石の磁束はSCアウターロータの第1のバーと協働してトルクを生み出し、同時にPMインナーロータも加速する。SCアウターロータの回転速度が上がってステータ磁束の回転速度に近づくと、ステータ磁束はSCアウターロータを貫いてPMインナーロータに磁束を分け与え、PMインナーロータに更なるトルクを加える。これにより、PMインナーロータが同期動作になるまで加速される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明における上記及び他の態様、特徴、利点は、次の添付図面と共に示される以下の詳細な説明によって十分に明らかにされる。
【
図1A】本発明に従う、独立回転ハイブリッド永久磁石籠型(HPMSC)アウターロータ及びモータシャフトに連結固定された籠型(SC)インナーロータを備える電気モータの端面図を示す。
【
図1B】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定された籠型(SC)インナーロータを備える電気モータの側面図を示す。
【
図2】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図3】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの、
図1A線3−3による断面図を示す。
【
図4】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータのハウジング及び固定されたステータ部の、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図5】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータのハウジング及び固定されたステータ部の、
図4線5−5による断面図を示す。
【
図6】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの独立回転HPMSCアウターロータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図7】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの独立回転HPMSCアウターロータの、
図6線7−7による断面図を示す。
【
図8】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータのSCインナーロータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図9】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータのSCインナーロータの、
図8線9−9による断面図を示す。
【
図10】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータであって、始動時の磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図11】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータであって、同期速度での磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図12】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータの第2実施形態を備える電気モータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図13】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータの第2実施形態を備える電気モータの、
図1A線3−3による断面図を示す。
【
図14】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータの第3実施形態を備える電気モータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図15】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータの第2実施形態を備える電気モータの、
図1A線3−3による断面図を示す。
【
図16】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータの第2実施形態の、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図17】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータの第2実施形態の、
図16線17−17による断面図を示す。
【
図18】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータの第3実施形態の、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図19】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータの第3実施形態の、
図18線19−19による断面図を示す。
【
図20】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態であって、始動時の磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図21】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態であって、同期速度での磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図22】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの第3実施形態であって、始動時の
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図23】本発明に従う、独立回転HPMSCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータを備える電気モータの第3実施形態であって、同期速度での
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図24】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態の、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図25】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態の、
図1A線3−3による断面図を示す。
【
図26】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態のハウジング及び固定されたステータ部の、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図27】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態のハウジング及び固定されたステータ部の、
図26線27−27による断面図を示す。
【
図28】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態の独立回転SCアウターロータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図29】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第29実施形態の独立回転SCアウターロータの、
図28線29−29による断面図を示す。
【
図30】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態のHPMSCインナーロータの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図31】本発明に従う、独立回転SCアウターロータ及びモータシャフトに連結固定されたHPMSCインナーロータを備える電気モータの第2実施形態のHPMSCインナーロータの、
図30線31−31による断面図を示す。
【
図32】本発明に従う、電気モータの第2実施形態であって、始動時の磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図33】本発明に従う、電気モータの第2実施形態であって、同期速度での磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図34】本発明に従う、インナーロータ内にバーが無い電気モータの第2実施形態であって、始動時の
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図35】本発明に従う、インナーロータ内にバーが無い電気モータの第2実施形態であって、同期速度での
図1B線2−2による断面図を示す。
【
図36A】本発明に従う、PMインナーロータの第1実施形態を示す。
【
図36B】本発明に従う、PMインナーロータの第2実施形態を示す。
【
図36C】本発明に従う、PMインナーロータの第3実施形態を示す。
【
図37A】本発明に従う、PMインナーロータの第4実施形態を示す。
【
図37B】本発明に従う、PMインナーロータの第5実施形態を示す。 参照文字は複数の図面に亘って対応する要素を指し示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するために現在考慮されている最適な形態について、以下で説明する。ただし、こうした説明は限定的な意味で捉えられるべきではなく、本発明の1つ又は複数の好適な実施形態を説明する目的でのみ用いられる。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲を参照して決定されなくてはならない。
【0017】
図1Aには、本発明に従う電気モータ10であって、独立回転ハイブリッド永久磁石籠型(Hybrid Permanent Magnet/squirrel Cage, HPMSC)アウターロータ20及びモータシャフト14に連結固定された籠型(Squirrel Cage, SC)インナーロータ30を備える電気モータ10の端面図が示されている。電気モータ10の側面図は
図1Bに示されている。
図2には、電気モータ10の
図1B線2−2による断面図が示され、
図3には、電気モータ10の
図1A線3−3による断面図が示されている。電気モータ10は、ハウジング12とハウジング12に連結固定されたステータ部16、ベアリング29(
図7を参照)で支持される独立回転HPMSCアウターロータ20、モータシャフト14に固定されたSCインナーロータ30を備える。
【0018】
図2には、電気モータ10のハウジング12及び固定されたステータ部16の、
図1B線−2−2による断面図が示され、
図5には、ハウジング12及び固定されたステータ部16の、
図4線5−5による断面図が示されている。固定されたステータ巻線18はステータコア19に内在する。ステータ巻線18は交流電流(AC)信号が供給されると、回転ステータ磁場を生成する。ハウジング12はシャフト14を支えるベアリング13を備える。
【0019】
図2には、独立回転HPMSCアウターロータ20の
図1B線−2−2による断面図が示され、
図7には、独立回転HPMSCアウターロータ20の
図6線7−7による断面図が示されている。HPMSCアウターロータ20は、角度方向に離隔して配された永久磁石22と、第1のロータコア23に内在する、角度方向に離隔して配された第1のバー26を備える。HPMSCアウターロータ20は永久磁石22を幾つでも備えることができ、永久磁石22の個数が、例えば2、4、6、8等でもよい。ロータコア23には、各永久磁石22の両端部に非鉄間隙24があり、連続する磁石22と間隙24の間の角度幅が角度セグメントSである。間隙24は、磁束の漏洩を最小化する空隙又は非鉄材料である。磁石22の両端部に鉄材料がある場合、磁束は磁石22に引き戻され、磁束線の大部分が磁石22に戻って短くなる。コア23は積層コア38であることが望ましいが、互いに積層部を保持するコア23の薄部23aは磁束漏洩領域と見做される。領域23aの厚さは、漏洩を最小にしつつもロータコア23の機械的完全性を保持するように最適化されることが望ましい。バー26は必須ではないが、磁石22の間が角度方向に等間隔で離隔して配されることが望ましい。
【0020】
ロータエンドキャップ28はHPMSCアウターロータ20の両端部に取り付けられ、HPMSCアウターロータ20がモータシャフト14の周りを自由に回転できるようにするベアリング29を備える。ベアリング29は低摩擦ベアリング(例えば、ボールベアリング)が望ましいが、単なるブッシュ(例えば、青銅ブッシュやオイライトブッシュ)でもよい。
【0021】
図8には、電気モータ10のSCインナーロータ30の、
図1B線−2−2による断面図が示され、
図9には、電気モータ10のSCインナーロータ30の、、
図8線9−9による断面図が示されている。SCインナーロータ30はモータシャフト14に固定され、HPMSCアウターロータ20をモータシャフト14に連結する。第2のロータコア36には第2のバー36が内在する。バーは必須ではないが、角度方向に等間隔で離隔して配されるのが望ましい。しかも、左右対称であれば(即ち、両端部で対称な組になっていれば)より望ましい。バー26の抵抗とロータコア23の飽和との間の均衡は最適化することができ、バー26の形状や本数、寸法が、例えばモータ始動時の性能に大きな影響を及ぼすことになる。
【0022】
ロータコア36の円筒外面36aには、角度方向に離隔して配され軸方向に延在する溝34が形成される。溝34の個数及び間隔は、HPMSCアウターロータ20の磁石22の個数及び間隔と一致する。溝34の大きさ、特に深さは、突極50(
図11参照)に作用することによってHPMSCアウターロータ20とSCインナーロータ30の結合を実質的に決定する。次いで突極50は、モータ10が同期速度で動作するとき、HPMSCアウターロータ20とSCインナーロータ30の間の結合を決定する。
【0023】
図10には、始動時における電気モータ10の
図1B線2−2による断面図が示されている。ステータ16に交流電力が供給されると、回転ステータ磁場が誘導的にHPMSCアウターロータ20の第1のバー26と協働して第1のバー26に電流を生成し、磁束線40が生じる。しかし始動時では、回転ステータ磁場と静止しているロータバーとの相互作用により、表面効果を起こすロータ周波数が生じる。そして、回転ステータ磁場はHPMSCアウターロータ20の深部まで入り込まないため、HPMSCアウターロータ20の表面より下にある第1のロータバー26の部分にまで到達しない。したがって、回転ステータ磁場はHPMSCアウターロータ20を加速させる。SCインナーロータ30の第2のバー32は、HPMSCアウターロータ20の磁石22と協働してSCインナーロータ30を加速させる。
【0024】
はじめにHPMSCアウターロータ20が加速するため、SCインナーロータ30の溝34は磁石22と揃っていない。これにより、磁石22(及びそれによる磁場)は突極50を飛ばしていくが、SCインナーロータ30が同期回転速度(毎分回転数)近くに達するまで、SCインナーロータ30の第2のバー32と誘導的に協働する。ここで、突極50の磁石22への引力は、SCインナーロータ30をHPMSCアウターロータ20と同じ回転速度に維持するのに十分な大きさを持つ。突極50の設計は結合トルクを決定する。結合トルクは、モータの定格トルクよりも若干大きくなるように設計され、通常動作ではSCインナーロータ30をHPMSCアウターロータ20と同じ回転速度に維持するようにする。こうした設計は、モータ10が過負荷で完全に失速するのを防止するため、利点も多い。その理由は、モータシャフト14の負荷とそれによるSCインナーロータ30の負荷がモータの設計トルクを超えると、SCインナーロータ30は、HPMSCアウターロータ20を同期回転速度にしたままHPMSCアウターロータ20から離脱することができるからである。
【0025】
HPMSCアウターロータ20の毎分回転数が上がると、ロータの周波数は下がり、それによって回転ステータ磁場はHPMSCアウターロータ20とSCインナーロータ30により深く入り込める。その結果、ロータ表面のバー部分で二重籠式ロータ効果(duel cage rotor effect)を生じさせる。バー部分が長いほどロータに深く浸透し、始動抵抗を大きくして電流スパイクを減らすことができる。
【0026】
図11には、同期速度時における電気モータ10の
図1B線2−2による断面図が示されている。HPMSCアウターロータ20とSCインナーロータ30が同期速度に到達すると、モータ周波数は下がり、HPMSCアウターロータ20と回転ステータ磁場との協働は誘導動作から永久磁石動作への遷移する。そして、磁束40・42が減少して、磁石22を通過してSCインナーロータ30に入り込む磁束52が増加することで、HPMSCアウターロータ20は同期動作に遷移する。HPMSCアウターロータ20は、同期速度に向かうまでSCインナーロータ30に対して引力を作用し続け、効率的な永久磁石同期動作のために、突極50がSCインナーロータ30とHPMSCアウターロータ20を結合する。
【0027】
図12には、独立回転HPMSCアウターロータ20a及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータ30aの第2実施形態を備える電気モータ10aの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図13には、電気モータ10aの
図1A線3−3による断面図が示されている。SCインナーロータ30aにはSCインナーロータ30のような溝34が無い。
【0028】
図14には、独立回転HPMSCアウターロータ20b及びモータシャフトに連結固定されたSCインナーロータ30bの第3実施形態を備える電気モータ10bの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図15には、電気モータ10bの
図1A線3−3による断面図が示されている。SCインナーロータ30bにもSCインナーロータ30のような溝34は無い。
【0029】
図16には、独立回転HPMSCアウターロータ20aの第2実施形態の、
図1B線2−2による断面図が示され、
図17には、ロータ20aの
図16線17−17による断面図が示されている。HPMSCアウターロータ20aは、連続する磁石22の間に4本のバー26を備える。
【0030】
図18には、独立回転HPMSCアウターロータ20bの第3実施形態の、
図1B線2−2による断面図が示され、
図19には、HPMSCアウターロータ20bの
図18線19−19による断面図が示されている。HPMSCアウターロータ20bは、連続する磁石22の間に5本のバー26を備える。
【0031】
図20には、電気モータ10aの第2実施形態であって、始動時の磁束線40a・42aを示しているものの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図21には、同期速度での磁束線52aを示す電気モータ10aの
図1B線2−2による断面図が示されている。磁束線は、
図10・11に描かれた遷移と同じ様に遷移する。
【0032】
図22には、始動時の磁束線40b・42bを示す電気モータ10bの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図23には、同期速度での磁束線を示す電気モータ10bの
図1B線2−2による断面図が示されている。磁束線は、
図10・11に描かれた遷移と同じ様に遷移する。
【0033】
このように、本発明の第1実施形態は、
モータハウジングと;
モータハウジングに固定され、回転ステータ磁場を生成するステータと;
モータハウジングに回転可能に連結され、負荷に取り付けられるようにモータハウジングの少なくとも1つの端部から延在するモータシャフトと;
モータシャフトと同軸のハイブリッド永久磁石籠型ロータであって、第1のロータコアと、角度方向に離隔して配されロータコアに組み込まれたN個の永久磁石と、ロータコアで各永久磁石の両端部に位置する非鉄間隙と、ロータコアに組み込まれた第1のバーを有し、モータシャフトと独立に回転可能な、前記ハイブリッド永久磁石籠型ロータと;
モータシャフトと同軸の籠型ロータであって、第2のロータコアと、第2のロータコアに組み込まれた第2のバーと、角度方向に等間隔で離隔して配され、第2のロータコアの表面に軸方向で設けられ、ハイブリッド永久磁石籠型ロータに向いているN個の溝を有し、モータシャフトと回転可能に固定された、前記籠型ロータを
備える、クラッチレス・ハイブリッド永久磁石籠型モータを開示する。
【0034】
第1実施形態は更に、
籠型ロータがハイブリッド永久磁石籠型ロータに内在するインナー籠型ロータであり;
籠型ロータはハイブリッド永久磁石籠型ロータと軸方向に揃えられ;
始動時には、ハイブリッド永久磁石籠型ロータの第1のバーが回転ステータ磁場と誘導的に協働してハイブリッド永久磁石籠型ロータにトルクを与え、籠型ロータの第2のバーがハイブリッド永久磁石籠型ロータの永久磁石をシャント(shunt)し、ハイブリッド永久磁石籠型ロータの初期加速を容易にし;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータが加速すると、永久磁石が回転磁場を生成し、その磁場が籠型ロータの第2のバーと誘導的に協働して籠型ロータを加速し;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータと籠型ロータの両方が同期動作に到達すると、
籠型ロータの表面の溝が永久磁石及びハイブリッド永久磁石籠型ロータの永久磁石の両端部にある非鉄間隙と協働して、籠型ロータの回転とハイブリッド永久磁石籠型ロータを磁気的に結合する突極を生成し;
永久磁石との同期動作で、回転ステータ磁場が永久磁石と結合して、永久磁石を貫いて籠型インナーロータに入り、
加えて、永久磁石の数は偶数であって;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータはベアリングを保持するエンドキャップを備え、ベアリングはモータシャフトに支えられ;
結合された永久磁石とハイブリッド永久磁石籠型ロータの永久磁石の両端部は、角セグメントSによって角度方向に離隔して配され、ハイブリッド永久磁石籠型ロータの第1のバーは角セグメントSの中で角度方向に等間隔で離隔して配され;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータの第1のバーは共有半径にある、又は、
ハイブリッド永久磁石籠型アウターロータは籠型ロータとステータの間にある、ものでもよい。
【0035】
第1実施形態は更に、クラッチレス・ハイブリッド永久磁石籠型モータの動作方法であって、
交流信号を停止中のロータに供給することと;
二重式ロータ(two part rotor)と協働する回転ステータ磁場を生成することを含み、二重式ロータは:
モータシャフトと同軸のハイブリッド永久磁石籠型アウターロータであって、第1のロータコアと、角度方向に離隔して配されロータコアに組み込まれたN個の永久磁石と、ロータコアで各永久磁石の両端部に位置する非鉄間隙と、ロータコアに組み込まれた第1のバーを有し、モータシャフトと独立に回転可能な、前記ハイブリッド永久磁石籠型ロータと;
モータシャフトと同軸の籠型インナーロータであって、第2のロータコアと、第2のロータコアに組み込まれた第2のバーと、角度方向に等間隔で離隔して配され、第2のロータコアの表面に軸方向で設けられ、ハイブリッド永久磁石籠型ロータに向いているN個の溝を有し、モータシャフトと回転可能に固定された、前記籠型インナーロータを備え、
前記回転ステータ磁場は、ハイブリッド永久磁石籠型ロータの第1のバーと誘導的に協働してハイブリッド永久磁石籠型ロータにトルクを与え;
籠型ロータに内在する第2のバーによって永久磁石の磁場をシャント(shunt)し、永久磁石によってハイブリッド永久磁石籠型ロータの加速が妨げられる影響を減らし;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータを同期回転速度まで加速し;
永久磁場を回転する永久磁石を生成し、
前記回転永久磁場は、籠型ロータの第2のバーと誘導的に協働して籠型ロータにトルクを与え;
ハイブリッド永久磁石籠型ロータと籠型ロータが同期回転速度に到達すると、籠型ロータの表面の溝が永久磁石及びハイブリッド永久磁石籠型ロータの永久磁石の両端部にある非鉄間隙と協働して、籠型ロータの回転とハイブリッド永久磁石籠型ロータを磁気的に結合する突極を生成し;
永久磁石との同期動作で、回転ステータ磁場が永久磁石と結合して、永久磁石を貫いて籠型インナーロータに入る、
前記方法としても記載することができる。
【0036】
図24には、独立回転SCアウターロータ20'及びモータシャフトに連結固定されたPMインナーロータ30'を備える電気モータ10'の第2実施形態の、
図1B線2−2による断面図が示され、
図25には、電気モータ10'の第2実施形態の、
図1A線3−3による断面図が示されている。
図26には、電気モータ10'の第2実施形態におけるハウジング12及び固定されたステータ16の
図1B線2−2による断面図が示され、
図27には、電気モータ10'の第2実施形態におけるハウジング12及び固定されたステータ16の
図26線27−27による断面図が示されている。
図28には、電気モータ10'の第2実施形態における独立回転SCアウターロータ20'の
図1B線2−2による断面図が示され、
図29には、独立回転SCアウターロータ20'の
図28線29−29による断面図が示されている。
図30には、SCインナーロータ30'の
図1B線2−2による断面図が示され、
図31には、SCインナーロータ30'の
図30線31−31による断面図が示されている。
【0037】
SCアウターロータ20'は、第1のバー26'と、バー26'とSCアウターロータ20'の表面21との間にある小間隙27を備える。第1のバー26'は、始めに回転ステータ磁場と協働してSCアウターロータを誘導的に加速し、次いで永久磁石と協働する。間隙21は空隙又は非鉄材料でもよい。間隙21が存在しない場合、鉄ブリッジによって、磁極の役割を果たすバー26'の間に磁束漏洩が生じ、誘導効果を消してしまうかもしれない。これは、ロータ周波数が最大である始動時に極性が切り替わって、SCアウターロータの加速を弱めてしまうからである。しかし、鉄ブリッジの中には許容範囲のものもあり、複数の鉄ブリッジを実験している本発明に従うモータも、本発明の範囲内に入れるように意図されている。
【0038】
PMインナーロータ30'は永久磁石22'を備え、第2のバー32'を備えることもできる。SCアウターロータの加速によってインナーロータとアウターロータの間のロータ周波数が生じるため、第1のバー26'と永久磁石22'の間の誘導的協働によって、インナーロータ30'が同期回転速度まで加速される。
【0039】
図32には、電気モータ10'の第2実施形態であって、始動時の磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図33には、電気モータ10'の第2実施形態であって、同期速度での磁束線を示すものの、
図1B線2−2による断面図が示されている。周波数(例えば、ステータ磁場の毎分回転数とロータの毎分回転数との差)が最大である始動時には、磁束線40'は表面近くに留まる傾向を示し、表皮効果又は表面効果と呼ばれる。電気モータ10'は始動する際、この表皮効果を利用できる。表皮効果がPMインナーロータの永久磁石とSCアウターロータとの協働を弱めるため、SCアウターロータの第1のバーは、PMインナーロータの磁束からの永久磁束によって実質的に影響を受けずに、回転ステータ磁束と協働できるからである。
【0040】
同期状態に近づくとロータ周波数は下がり、同期動作時はロータ周波数はゼロになる。磁束線52'は剪断されずにロータ鉄材を深く貫通し、深部バー効果(deep bar effect)を呈する。SCアウターロータの毎分回転数が上がると、SCアウターロータ20'とPMインナーロータ30'の間での周波数も上がるため、表皮効果が、SCアウターロータ20'の第1のバー26'をPMインナーロータ30'の永久磁石22'と結合する役割も担うようになる。その結果、PMインナーロータ30'を加速するトルクが生み出される。
【0041】
図34には、インナーロータにバーが無い電気モータ10"の第2実施形態であって、始動時の磁束線を示しているものの、
図1B線2−2による断面図が示され、
図35には、電気モータ10"の第2実施形態であって、同期速度での磁束線を示すものの、
図1B線2−2による断面図が示されている。磁束線40"・52"は磁束線40'・52'に対応するが、第1のバー26'と第2のバー32'が存在しないため第1のバー26'と第2のバー32'の間の磁束線が無い点が異なる。電気モータ10"には、電気モータ10'と比べてより簡素で廉価な設計を提供できるという利点がある。
【0042】
図36A、
図36B、
図36Cにはそれぞれ、PMインナーロータの第1実施形態30'a、PMインナーロータの第2実施形態30'b、PMインナーロータの第3実施形態30'cが示されている。PMインナーロータ30'aは2個の永久磁石22'を備え、PMインナーロータ30'bは4個の永久磁石22'を備え、PMインナーロータ30'cは6個の永久磁石22'を備える。永久磁石22'の間にある第2のバー32'はあっても無くてもよい。
【0043】
図37A及び
図37Bにはそれぞれ、PMインナーロータの第4実施形態30'd、PMインナーロータの第5実施形態30'eが示されている。PMインナーロータ30'dは互いに接触している2個の永久磁石22"を備え、PMインナーロータ30'eでは互いに接触している4個の永久磁石22'を備える。永久磁石22"は廉価なフェライト磁石でもよい。
【0044】
以上の通り、ハイブリッド電気モータの複数の実施形態が説明されてきた。こうしたハイブリッド電気モータは、モータシャフトと同軸でモータシャフトに回転可能に固定されたインナーロータであって、第2のロータコアと、第2のロータコアに組み込まれた第2の導電性籠型バー、及び第2のロータコアに組み込まれたN個の永久磁石の少なくとも一方を備える、前記インナーロータと;モータシャフトと同軸でステータとインナーロータの間に配置され、モータシャフトとは独立に回転可能なアウターロータであって、第1のロータコアと、ロータコアに組み込まれた第1の導電性籠型バーを備える、前記アウターロータを備え、インナーロータ及びアウターロータのうち少なくとも一方には永久磁石がある。当業者であれば、磁石やバー、溝の個数が異なるが、本願に開示された原理に依存するような、本願に記載した以外の実施形態も認められよう。こうした実施形態も本発明の範囲内であることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電気モータの分野での産業適用性を追求している。
【0046】
本願において開示された発明は、特定の実施形態での手段とそこでの適用事例を用いて説明されてきたが、当業者であれば、本願の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更・変形を行うことができる。