特許第6596008号(P6596008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596008
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】液体安定なブタウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20191010BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20191010BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20191010BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20191010BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20191010BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61K39/12
   A61P31/14
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61K39/02
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-552582(P2016-552582)
(86)(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公表番号】特表2017-506643(P2017-506643A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2015053364
(87)【国際公開番号】WO2015124594
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】61/941,720
(32)【優先日】2014年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オコネル,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ツィソン
(72)【発明者】
【氏名】エディ,ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】ストレート,エリン
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/110489(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00028563(EP,A1)
【文献】 特表2009−516519(JP,A)
【文献】 American Journal of Animal and Veterinary Sciences,2012年,Vol.7(4),pp.149-158
【文献】 The APPS Journal,2011年,Vol.13, No.2,pp.191-200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/12
A61K 9/08
A61K 39/02
A61K 47/18
A61K 47/26
A61P 31/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生弱毒化ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)と、10〜30%(w/v)の糖アルコールと、アルギニン、グルタミン酸およびグリシンからなる群から選択される0.15〜0.75Mのアミノ酸とを含む液体安定ワクチンであって、
pHが6.0〜8.0である、液体安定ワクチン。
【請求項2】
前記糖アルコールがソルビトールである、請求項1記載の液体安定ワクチン。
【請求項3】
前記アミノ酸がアルギニンである、請求項1または2記載の液体安定ワクチン。
【請求項4】
非アルコール糖である糖添加物を更に含み、
液体安定ワクチン中の前記糖アルコールと前記非アルコール糖との総量が15〜40%(w/v)である、請求項1〜のいずれかに記載の液体安定ワクチン。
【請求項5】
前記非アルコール糖が、スクロースおよびトレハロースからなる群から選択される、請求項に記載の液体安定ワクチン。
【請求項6】
バッファーを更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の液体安定ワクチン。
【請求項7】
死滅ブタウイルスを更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の液体安定ワクチン。
【請求項8】
細菌を更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の液体安定ワクチン。
【請求項9】
前記細菌が、生弱毒化パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、生弱毒化サルモネラ属種(Salmonella ssp.)、生弱毒化マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、生弱毒化クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、生弱毒化ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)、生弱毒化マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、生弱毒化エリシペラス属種(Erysipelas ssp.)およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項記載の液体安定ワクチン。
【請求項10】
10〜20%(w/v)の糖アルコールと5〜15%(w/v)の非アルコール糖とを含む、請求項1〜のいずれか記載の液体安定ワクチン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載の液体安定ワクチン0.2〜2.0mLをブタに投与することを含む、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)からブタを保護することを補助する方法。
【請求項12】
経口、注射または鼻腔内経路により前記投与を行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記注射経路が、皮下、筋肉内および皮内からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
治療的有効量の生弱毒化ブタウイルスを、10〜30%(w/v)糖アルコールと、アルギニン、グルタミン酸およびグリシンからなる群より選択される0.15〜0.75Mのアミノ酸と組み合わせることを含む、pH6.0〜8.0の、請求項1〜10のいずれか記載の液体安定ワクチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2014年2月19日付け出願の米国仮特許出願第61/941,720号(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の、35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、生ブタウイルスを含む液体安定ブタワクチンに関する。本発明はまた、かかるワクチンの製造および動物対象にワクチン接種する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ブタに感染する可能性のあるウイルスは、相当数存在する。そのようなウイルスには、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)、ブタ仮性狂犬病ウイルス(PPRV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタロタウイルス(PRV)およびブタ流行性下痢ウイルス(PED)が含まれる。また、ブタに感染しうる多数の細菌も存在し、それらには、複数の血清型のパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属種(Salmonella ssp.)、複数の線毛型の大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)、マイコプラズマ属種(Mycoplasma ssp.)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、エリシペラス属種(Erysipelas ssp.)、カンピロバクター属種(Campylobacter ssp.)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)が含まれる。
【0004】
ブタにおいて細菌またはウイルス感染による疾患を予防する最良の方法は、これらの生物に対するワクチンをブタに接種することである、と現在広く受け入れられている。更に、必要なワクチン注射の回数を減らす多価生弱毒化ウイルスまたは細菌ワクチンは、安全に投与することができる。したがって、複数の病原体に対して防御する多数の、商業的に入手可能な多価生ウイルスワクチンが存在する。しかし、現在のところ、生弱毒化ブタウイルスは、液体溶液中で貯蔵された場合、不安定である。したがって、ほとんどの生弱毒化ブタウイルスワクチンはそれらの長期貯蔵の前に凍結乾燥、すなわち冷凍乾燥または凍結される。生弱毒化ブタウイルスは一般に水中の懸濁液として保護剤と混合され、凍結された後、凍結乾燥プロセス中に昇華および二次乾燥により脱水される。昇華による乾燥および凍結の低温は、関与する低い表面積対体積比と相まって、長い乾燥時間を要求することがあり、それにより製造時間およびコストを大幅に増加させうる。
【0005】
また、製品負荷の全体にわたって貯蔵温度を調節し得ないこと、乾燥機の全体で凍結速度が一様でないこと、エッジ効果、および放射エネルギー効果により、大規模な商業的乾燥プロセスにおいては固有の非一貫性が生じる。乾燥時間の短縮のために乾燥温度を増加させることは選択肢にならないことが多い。なぜなら、乾燥温度は保護タンパク質マトリックスのガラス転移温度より有意に低く保たれる必要があるからである。更に、長い一貫しない乾燥時間および/または高い乾燥温度は、生弱毒化ウイルスに対する構造的損傷をそれらの生物活性の有意な喪失と共に招くことが多い。
【0006】
したがって、効力における固有の低下を相殺するために、生弱毒化ウイルスを含む凍結乾燥ブタワクチンは、力価を増加させて製造される。しかし、該凍結乾燥プロセスが、予想されるものより低い活性喪失を実際に招くならば、そのような力価の増加は有意な有害事象を招きうる。これは養豚業者に特に問題である。なぜなら、少なくとも、そのような有害事象は、しばしば、ブタの1日の体重増加を低下させ、より低い販売利益につながる。したがって、有害事象を招く量を安全に下回るだけでなく、凍結乾燥および後続の貯蔵によるウイルス力価低下を考慮して十分な効力をも維持するウイルス力価を含有するワクチンを製剤化するためには、細心の注意が要求される。
【0007】
更に、凍結乾燥バイアルのサイズおよび/またはそのようなバイアル内に含有される用量数は、これらのバイアルの蓋の標準的な栓のサイズが比較的小さいため制限される。したがって、比較的小さな開口部から大容量の液体が昇華することは困難となる。したがって、ウイルス力価を安全かつ有効なレベルで高い信頼性で保有することのできる新規生弱毒化ブタウイルスワクチンが必要とされている。
【0008】
また、単一用量バイアル内でブタワクチンを製造することは経済的でない。しかし、凍結乾燥ワクチンのバイアルは、凍結乾燥ケークの再水和の後、その全体が使用される必要がある。これは、増加しつつある小規模養豚業者が、少数のブタだけにワクチン接種することを困難にする。そのような小規模養豚業者は、より大きな用量数を有する、より大きなパッケージ形態の経済性を享受し得ないのである。したがって、複数日、複数週または更には複数月にわたって単一バイアルが使用可能であり、それによりコストが削減され、より小さな群れのワクチン接種が促進されるブタワクチンが必要とされている。
【0009】
最後に、リオバイアル(lyovial)の性質ゆえ、バイアルのサイズおよびその中で凍結乾燥されうる液体の量が制限される。これは、数千頭とまではいかなくても数百頭のブタに一度にワクチン接種するためには、大規模製造施設が複数のボトルを再水和しなければならないことを意味する。ガラスバイアル内で再水和されると、生ワクチン生物に関する規制により、ガラスバイアル自体は有害廃棄物となり、滅菌もしくは消毒され、埋められ、または焼却される必要がある。滅菌は養豚場では困難となり、これらのバイアルは単にゴミ箱に廃棄されることが多い。一方、液体安定ワクチンの使用は、小さなガラス容器内に配置されることによっては制限されず、該ワクチンは、大きなサイズ範囲を有しうるプラスチック袋内で保存されうるであろう。更に、ブタにワクチンを投与した後、プラスチック袋は、小さな抑制された火の中で焼却することにより容易に処分されうる。
【0010】
本明細書におけるいずれの参考文献の引用も、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを自認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0011】
発明の概括
現在のワクチンの欠点を克服するべく、本発明は新規液体安定生ブタウイルスワクチンおよびそれらの対応免疫原性組成物を提供する。本発明の液体安定生ブタウイルスワクチンは、長期間、例えば6、7、9カ月またはそれ以上(例えば、約1〜3年)にわたって有効であり続けることが可能である。本発明はまた、そのようなワクチンをブタに投与する方法を提供する。本発明は更に、本発明のワクチンを投与することにより動物、例えばブタにおける疾患を予防する方法を提供する。
【0012】
したがって、本発明は、生ウイルスを含む多価ワクチンを包含する液体安定ワクチンを提供する。ある実施形態では、該生ウイルスは弱毒化ウイルスである。他の実施形態では、該生ウイルスは組換えウイルスである。特定の実施形態では、該生ウイルスは弱毒化体かつ組換え体である。本発明の組換えウイルスは異種タンパク質をもコードしうる。このタイプの特定の実施形態では、該異種タンパク質はウイルス、寄生生物または細菌抗原である。
【0013】
特定の実施形態においては、該ワクチンは、糖アルコールである糖添加物および/またはアミノ酸を含む。ある実施形態では、該ワクチンは5〜40%(w/v)の糖アルコールを含む。特定の実施形態では、該ワクチンは10〜30%(w/v)の糖アルコールを含む。特定の実施形態では、該ワクチンは15〜25%(w/v)の糖アルコールを含む。関連実施形態において、該ワクチンは10〜20%(w/v)の糖アルコールを含む。他の実施形態では、該ワクチンは20〜25%(w/v)の糖アルコールを含む。更に他の実施形態では、該ワクチンは25〜40%(w/v)の糖アルコールを含む。
【0014】
より詳細な実施形態では、該ワクチンは12〜18%(w/v)の糖アルコールを含む。より一層詳細な実施形態においては、該ワクチンは約15%(w/v)の糖アルコールを含む。関連実施形態においては、該ワクチンは約23%(w/v)の糖アルコールを含む。ある実施形態においては、本発明の液体安定ウイルスワクチンは2以上の糖アルコールを含み、該液体安定ワクチン中の糖アルコールの総量は5〜40%(w/v)である。他のそのような実施形態においては、本発明の液体安定ウイルスワクチンは2以上の糖アルコールを含み、該液体安定ワクチン中の糖アルコールの総量は25〜40%(w/v)である。
【0015】
本発明の液体安定ウイルスワクチンの特定の実施形態においては、糖アルコールはソルビトールである。このタイプのもう1つの実施形態においては、糖添加物はマンニトールである。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンは、非糖アルコールである糖添加物を更に含み、ここで、該液体安定ワクチン中の糖アルコールと非糖アルコールとの総量は15〜40%(w/v)である。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンは、非糖アルコールである糖添加物を更に含み、ここで、該液体安定ワクチン中の糖アルコールと非糖アルコールとの総量は25〜40%(w/v)である。特定の実施形態においては、非糖アルコールである糖添加物はトレハロースである。更に他の実施形態においては、非糖アルコールである糖添加物はスクロースである。このタイプの特定の実施形態においては、糖添加物はスクロース(非糖アルコール)とソルビトール(糖アルコール)との組合せである。このタイプのより詳細な実施形態においては、糖添加物は10〜25% ソルビトールと5〜20% スクロースとの組合せである。このタイプの他の実施形態においては、糖添加物は15〜30% ソルビトールと10〜25% スクロースとの組合せである。このタイプの更に詳細な実施形態においては、糖添加物は15% ソルビトールと10% スクロースとの組合せである。特定の実施形態においては、非糖アルコール糖添加物は実際には2以上の非糖アルコール糖添加物の組合せである。
【0016】
本発明の液体安定ワクチンはpH6.0〜8.0のpH範囲でありうる。ある実施形態においては、pH範囲はpH6.5〜pH7.8である。特定の実施形態においては、pH範囲はpH6.8〜pH7.5である。他の特定の実施形態においては、pH範囲はpH6.6〜pH7.4である。より詳細な実施形態においては、pH範囲はpH7.0〜pH7.4である。より一層詳細な実施形態においては、pHは7.2である。
【0017】
本発明の液体安定ワクチンはバッファーを含みうる。このタイプの特定の実施形態においては、バッファーは2.5〜50mM ホスファート、例えばリン酸ナトリウム(NaPHOS)またはリン酸カリウム(KPHOS)を含む。関連実施形態においては、バッファーは5〜25mM ホスファートを含む。特定の実施形態においては、バッファーは10〜20mM ホスファートを含む。
【0018】
更に他の実施形態においては、バッファー(すなわち、バッファー溶液)は0.15〜0.75M アルギニンを更に含みうる。特定の実施形態においては、バッファーは2.5〜50mM ホスファートおよび0.15〜0.75M アルギニンを含む。より詳細な実施形態においては、バッファーは5〜25mM ホスファートおよび0.15〜0.75M アルギニンを含む。更に詳細な実施形態においては、バッファーは10〜20mM ホスファートおよび0.3〜0.5M アルギニンを含む。他の実施形態においては、バッファーは2.5〜50mM ホスファートを含む。関連実施形態においては、バッファーは5〜25mM Tris(トリス)を含む。特定の実施形態においては、バッファーは10〜20mM Trisを含む。関連実施形態においては、Trisバッファーはヒスチジンを含む。
【0019】
本発明の液体安定ワクチンはアミノ酸を含みうる。前記の或る実施形態においては、アミノ酸はアルギニンである。他の実施形態においては、アミノ酸はメチオニンである。更に他の実施形態においては、アミノ酸はグリシンである。更に他の実施形態においては、アミノ酸はグルタミン酸である。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニンとメチオニンとの両方を含む。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニンとグリシンとの両方を含む。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはグリシンとメチオニンとの両方を含む。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンはグルタミン酸とメチオニンとの両方を含む。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはグルタミン酸とグリシンとの両方を含む。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはグルタミン酸とアルギニンとの両方を含む。
【0020】
関連実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グルタミン酸およびメチオニンを含む。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グルタミン酸およびグリシンを含む。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グルタミン酸およびメチオニンを含む。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グリシンおよびメチオニンを含む。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グリシンおよびメチオニンを含む。特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンはアルギニン、グリシン、メチオニンおよびグルタミン酸を含む。
【0021】
特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.15〜0.75Mである。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.25〜0.75Mである。より詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.2〜0.6Mである。より詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.2〜0.5Mである。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.25〜0.45Mである。より一層詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は0.45Mである。他の特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンまたはグルタミン酸またはグリシンの最終濃度は約0.3Mである。
【0022】
特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終組合せ濃度は0.15〜0.75Mである。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終組合せ濃度は0.25〜0.75Mである。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終組合せ濃度は0.2〜0.6Mである。より詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終組合せ濃度は0.3〜0.5Mである。更に他の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるアルギニンおよびグルタミン酸またはグリシン最終濃度は0.25〜0.45Mである。より一層詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終組合せ濃度は0.45Mである。他の特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるグルタミン酸および/またはグリシンとのアルギニンの最終濃度は約0.3Mである。
【0023】
特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるメチオニンの最終濃度は0.025〜0.3Mである。関連実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるメチオニンの最終濃度は0.04〜0.15Mである。より詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるメチオニンの最終濃度は0.06〜0.09Mである。より一層詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンにおけるメチオニンの最終濃度は約0.07Mである。
【0024】
本発明の液体安定ワクチンは安定化タンパク質をも含みうる。安定化タンパク質は無傷タンパク質および/またはタンパク質加水分解物でありうる。特定の実施形態においては、安定化タンパク質はゼラチンである。より詳細な実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンに含有される安定化タンパク質は0.4〜1.6% ゼラチンである。代替的実施形態においては、安定化タンパク質は全カゼインの加水分解物である。このタイプの特定の実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンに含有される安定化タンパク質は全カゼインの加水分解物0.5〜2.0%である。ある実施形態においては、全カゼインの加水分解物は全カゼインのタンパク質加水分解物である。更に他の実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンに含有される安定化タンパク質はラクトグロブリンまたはラクトアルブミン加水分解物である。
【0025】
また、本発明の液体安定ワクチンはキレート剤をも更に含みうる。そのようなキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および2,3−ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)が含まれうるが、これらに限定されるものではない。本発明の液体ワクチンにおけるそのようなキレート剤の濃度は約50μM〜10mMの様々な値となりうる。
【0026】
特定の実施形態において、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。このタイプの或る実施形態においては、該液体安定ワクチンは0.050〜1mM EDTAを含む。特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは0.25〜0.75mM EDTAを含む。より詳細な実施形態においては、該液体安定ワクチンは約0.5mM EDTAを含む。
【0027】
ある実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンは1以上のフリーラジカルスカベンジャーおよび/または抗酸化剤を成分として更に含みうる。このタイプの特定の実施形態においては、本発明のワクチンはアスコルビン酸を含む。このタイプの特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは約0.5mM アスコルビン酸を含む。関連実施形態においては、該ワクチンはアルファ−トコフェロールを含む。このタイプの特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは約0.5mM アルファ−トコフェロールを含む。更にもう1つの実施形態においては、該ワクチンはグルタチオンを含む。このタイプの特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは約3mM グルタチオンを含む。更にもう1つの実施形態においては、該ワクチンはアルファ−トコフェロールとアスコルビン酸との両方を含む。更にもう1つの実施形態においては、該ワクチンはアルファ−トコフェロールとグルタチオンとの両方を含む。更にもう1つの実施形態においては、該ワクチンはグルタチオンとアスコルビン酸との両方を含む。更にもう1つの実施形態においては、該ワクチンはアスコルビン酸、アルファ−トコフェロールおよびグルタチオンを含む。
【0028】
関連実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンは密閉容器内に維持される。このタイプの特定の実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンは、不活性ガス、例えばアルゴン、窒素またはヘリウムを該液体の上部に含有する(例えば、不活性ガスで逆充填(back−fill)された)密閉容器内に維持される。
【0029】
本発明の液体安定ワクチンはアジュバントを更に含みうる。このタイプの特定の実施形態においては、アジュバントはリン酸アルミニウムである。他のそのような実施形態においては、アジュバントは水酸化アルミニウムである。更に他の実施形態においては、アジュバントは、溶液中で架橋を形成して高分子量ゲルになりうる低分子量共重合体アジュバントである。更に他の実施形態においては、アジュバントは水中においてアクリル酸ナトリウムのゲル粒子から構成される。更に他の実施形態においては、アジュバントは2以上のそのようなアジュバントの組合せである。
【0030】
特定の実施形態においては、本発明の液体安定ワクチンは洗剤および/または界面活性剤を更に含みうる。このタイプの或る実施形態においては、界面活性剤はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体である。このタイプの特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは約0.01% ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を含む。このタイプの特定の実施形態においては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体はPLURONIC(登録商標)F−68である。
【0031】
本発明の液体安定ワクチンは1以上の生弱毒化ブタウイルスを含みうる。ある実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスは伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)である。他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)である。更に他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタ流行性下痢ウイルス(PED)である。更に他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタインフルエンザウイルス(SIV)である。更に他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタロタウイルス(PRV)である。更に他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタパルボウイルス(PPV)である。更に他の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスはブタ仮性狂犬病ウイルス(PPRV)である。本発明は更に、これらの生弱毒化ブタウイルスの2以上の任意の組合せを提供する。
【0032】
したがって、本発明は、多価ワクチンである液体安定ワクチンを提供する。本発明の多価ワクチンはブタウイルスの任意の組合せを含有しうる。ある実施形態においては、本発明の多価ワクチンは不活化(死滅)ブタウイルスと生弱毒化ブタウイルスとの両方を含む。特定の実施形態においては、多価ワクチンは生弱毒化ブタ流行性下痢ウイルス(PED)および/または死滅ブタサーコウイルス抗原(PCV)および/またはPCV組換えサブユニットと共に生ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)を含む。特定の実施形態においては、多価ワクチンは生弱毒化伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)および生弱毒化ブタパルボウイルス(PPV)と共に死滅SIV、死滅および/またはサブユニットブタサーコウイルス(PCV)を含む。関連実施形態においては、多価ワクチンは死滅ブタサーコウイルス抗原(PCV)および/またはその組換えサブユニット、複数の血清型の死滅ブタインフルエンザウイルス、生および/または死滅弱毒化伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)および生弱毒化ブタロタウイルス(PRV)を含む。
【0033】
本発明の液体安定ワクチンは、死滅ウイルスおよび/または死滅細菌(例えば、バクテリン)および/またはバクテリンの亜画分を更に含みうる。したがって、1以上の生ウイルスワクチンを含む本発明の液体安定ワクチンのいずれかは死滅ウイルスおよび/または死滅細菌および/またはバクテリンの亜画分を更に含みうる。あるそのような実施形態においては、これらのワクチンはアジュバント(例えば、本明細書に示されているもの)を更に含みうる。特定の実施形態においては、多価ワクチンは、生弱毒化伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)および生弱毒化ブタパルボウイルス(PPV)と共に、1以上のクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)不活化トキソイド、大腸菌(E.coli)細菌から、例えば以下の血清型:K99、K88、987PまたはF41から抽出された線毛抗原を含む。代替的実施形態においては、多価ワクチンは生ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)および死滅マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)(M.hyo)および/または不活化ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)バクテリンを含む。関連実施形態においては、多価ワクチンは、生ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)と共に、死滅ブタサーコウイルス抗原(PCV)および/またはPCV組換えサブユニット、死滅マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)(M.hyo)、不活化ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)バクテリンを含む。
【0034】
本発明は更に、本発明のワクチンを動物に投与することを含む、ブタウイルス感染から生じる臨床疾患に対するブタの防御を補助する方法を提供する。したがって、本発明は、本発明の液体安定ワクチンのいずれかをブタに投与することを含む方法を提供する。ある実施形態においては、投与を経粘膜的に(鼻腔内または経口経路により)行う。他の実施形態においては、投与を非経口的に行う。更に他の実施形態においては、投与を皮内に行う。更に他の実施形態においては、投与を経皮的に行う。他の特定の実施形態においては、本発明のワクチンをブタに筋肉内に投与する。本発明は初回(一次)および/または追加(ブースター)ワクチンの使用をも含む。
【0035】
特定の実施形態においては、該方法は、1以上の生ウイルス、例えば生弱毒化ウイルスを含む本発明の液体安定ワクチンをブタに投与することを含む。特定の実施形態においては、該液体安定ワクチンは生弱毒化PRRS、生弱毒化TGE、生PRV、生弱毒化PEDおよび/または生弱毒化PPRVを含む。他の実施形態においては、該液体安定ワクチンは、生弱毒化PRRS、2つのPRV血清型、生弱毒化TGEおよび生弱毒化PPRVを他のワクチン抗原のための発現ベクターとして含む。
【0036】
また、本発明の液体安定ワクチンのいずれかの投与の前、該投与と共に、または該投与の後、1以上の弱毒化または死滅細菌抗原、例えばパスツレラ・マルトシダ(P.multocida)、サルモネラ属種(Salmonella ssp.)、大腸菌(E.coli)、例えば線毛型K99、K88、987P、P41、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(A.pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(B.bronchiseptica)、ローソニア・イントラセルラーリス(L.intracellularis)、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(M.hyopneumoniae)、A、Cおよび/またはD型からのクロストリジウム・パーフリンジェンス(C.perfringens)トキソイドも投与されうる。本発明の液体安定ワクチンに含まれる抗原および抗原の組合せを含有するブタワクチン(一価および多価)の例は後記の表1A〜1Cに見出されうる。
【0037】
本発明のあらゆる液体安定ワクチンの製造方法も提供する。ある実施形態においては、該方法は、生弱毒化ウイルスの治療的有効量を例えば5〜40%(w/v)または15〜40%(w/v)糖添加物(例えば、糖アルコールまたは糖アルコールと非糖アルコールとの組合せ)、アミノ酸およびpH6.0〜pH8.0の緩衝液(バッファー)と一緒にして液体安定ワクチンを得ることを含む。アミノ酸はアルギニン、グリシン、グルタミン酸、メチオニン、またはアルギニン、グリシン、グルタミン酸および/もしくはメチオニンの組合せでありうる。特定の実施形態においては、アルギニンおよび/またはグリシンおよび/またはグルタミン酸は該液体安定ワクチンにおいて0.15〜0.75Mの最終濃度を有する。ある実施形態においては、該ワクチンは該液体安定ワクチン中に0.025〜0.3Mの最終濃度のメチオニンを更に含む。特定の実施形態においては、生弱毒化ウイルスの治療的有効量は生弱毒化ブタウイルスの治療的有効量である。このタイプの特定の実施形態においては、生弱毒化ブタウイルスの治療的有効量は生弱毒化TGEウイルス、生弱毒化PRRSウイルス、生弱毒化PRV、生弱毒化PEDウイルス、生弱毒化PPRVおよび生弱毒化SIVウイルス、またはSIVタンパク質を発現する生弱毒化ウイルスの治療的有効量を含む。
【0038】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下の詳細な説明および実施例を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明の液体安定ブタウイルスワクチンは生ウイルス、例えば生弱毒化ウイルスを含むため、従来であれば、該ワクチンの製剤化中に、有意な有害事象を招きうるレベルを安全に下回るレベルに弱毒化ウイルスの力価を維持するために、格別の注意が必要とされたであろう。実際、ほとんどの生弱毒化ブタウイルスワクチンは凍結乾燥され、凍結乾燥プロセス自体と長期貯蔵中の経時的影響との両方により、凍結乾燥は弱毒化生ウイルスワクチンの効力における相当な低下を招きうる。
【0040】
本発明は、信頼可能に安全なレベルより高いレベルに生弱毒化ウイルス抗原の初期力価を増加させる必要性を伴うことなく、貯蔵中でさえも依然として有効である液体安定ブタワクチンを提供することにより、この問題を克服した。追加的な利点として、本発明は、そのような安全かつ有効なワクチンを製造するのに必要な生弱毒化ブタウイルスの量を有意に減少させることによりもたらされる該ワクチンの製造のコストを低下させるための手段を提供する。また、本発明の生弱毒化ブタウイルスワクチンはそれらの凍結乾燥対応物より簡便に使用される。したがって、本発明は、冷凍温度で液体として貯蔵され5〜7カ月間、6〜9カ月間、9〜12カ月間、12〜18カ月間、18〜24カ月間または/または更にはそれより長期にわたって尚も安定なままでありうる安全かつ有効な生弱毒化ブタウイルスワクチンを提供する。その凍結乾燥対応物とは異なり、本発明の液体安定ワクチンは、それが再水和された直後に使用される必要はない。なぜなら、それは常に水和されているからである。ブタワクチンは、しばしば、最大表示として100用量バイアルとして入手されるため、大規模養豚場を有する者は数百個のガラスバイアルを使用し、これらのワクチンからの残りの有害廃棄物をゴミ箱に廃棄する。該液体安定ブタワクチンでは、より大きな養豚場はより大きなワクチンパッケージ(例えば、プラスチックから構成されるもの)を購入し、該ワクチンが適切に取り扱われ、汚染されていなければ、該養豚場はそれらを数週間または数か月にわたって使用することが可能であり、ワクチンが使い果たされたら、残存プラスチック容器を焼却して、容器を除染する。これは、より大きな養豚場に簡便な全く新しい独占市場を切り開くものである。
【0041】
更に、驚くべきことに、本発明の液体安定生生ブタウイルスワクチンは任意のタイプのブタウイルスを含みうる。したがって、本発明の液体安定生ウイルスワクチンは包膜ブタウイルスおよび非包膜ブタウイルスの両方を含みうる。また、本発明の液体安定生ウイルスワクチンは、一本鎖RNAゲノム、一本鎖DNAゲノムまたは二本鎖DNAゲノムを有する生弱毒化ブタウイルスを含みうる。
【0042】
本明細書においては簡便のために単数形の用語が用いられているが、これは何らそのように限定的であるとは意図されない。したがって、例えば、「糖添加物」に対する言及は、特に示されていない限り、そのような糖添加物の1以上に対する言及を含む。複数形の用語の使用も、特に示されていない限り、限定的であるとは意図されない。同様に、酸またはその対応塩基と称されうる化合物は、特に示されていない限り、本明細書においてそのいずれかとして示されている場合、該化合物のいずれもの形態を意味すると意図される。したがって、グルタミン酸なる語の使用はグルタマートを含むと意図され、その逆も言える。
【0043】
本明細書中で用いる「ワクチン」は、動物(ある実施形態においては、ヒトを含む)への適用に適した組成物であり、野生型微生物による感染から生じる臨床疾患からの防御を少なくとも補助するのに十分な程度に強力な、すなわち、該臨床疾患の予防を補助するのに、および/または該臨床疾患を予防、改善もしくは治癒するのに十分な程度に強力な免疫応答を、動物への投与に際して誘導する。特に明示されていない限り、ワクチンなる語の使用は多価ワクチンを含む。
【0044】
本明細書中で用いる「多価ワクチン」は、2以上の異なる抗原を含むワクチンである。このタイプの特定の実施形態においては、多価ワクチンは2以上の異なる病原体に対して被投与者の免疫系を刺激する。
【0045】
本明細書中で用いる「液体安定」ワクチンは、7℃以下で(例えば、標準的な冷凍庫において、および/または0℃〜7℃で)貯蔵された場合に少なくとも6カ月間にわたって有効なままである液体として維持されるワクチン(液体多価ワクチンを含む)である。特定の実施形態においては、液体安定ワクチンは、少なくとも6カ月間にわたって7℃以下で貯蔵された場合に有効なままである。より詳細な実施形態においては、液体安定ワクチンは、少なくとも9カ月間にわたって7℃以下で貯蔵された場合に有効なままである。更により詳細な実施形態においては、液体安定ワクチンは、少なくとも1年間にわたって7℃以下で貯蔵された場合に有効なままである。更により詳細な実施形態においては、液体安定ワクチンは、少なくとも1.5年間にわたって7℃以下で貯蔵された場合に有効なままである。更により詳細な実施形態においては、液体安定ワクチンは、少なくとも2.0〜3年間にわたって7℃以下で貯蔵された場合に有効なままである。
【0046】
「ブタ」または「豚」なる語は全て互換的に用いられ、特に示されていない限り、全ての家畜化ブタ種を含む。
【0047】
本明細書中で用いる「防御する」、「防御」、「防御をもたらす」、「防御をもたらし」および「防御を補助する」なる語は感染の任意の徴候からの完全な防御を必要とするわけではない。例えば、「防御を補助する」は、チャレンジ後、根本的な感染の症状が少なくとも低減するように、ならびに/または症状を引き起こす細胞的、生理的もしくは生化学的な根本原因もしくはメカニズムの1以上が低減および/もしくは排除されるように、防御が十分であることを意味しうる。この文脈で用いられる「低減」は、感染の生理的状態だけではなく、感染の分子状態を含む、感染の状態に関連したものを意味すると理解される。
【0048】
「予防的有効量」なる語は、ブタに投与された場合に、与えられた病原体による感染/寄生の可能性および/または度合を有意に低減する組成物の量を意味する。
【0049】
「メタフィラキシス(metaphylaxis)」は、例えば、感染/寄生の高いリスクを有する1以上の動物における、予想される突発的発生を排除または最小化するための、動物の群全体の適時大規模投薬である。
【0050】
「化学的予防」なる語は、ウイルス、細菌および/もしくは寄生生物の感染/寄生を予防もしくは低減すること、ならびに/またはその感染/寄生に関連した疾患および/もしくは症状を予防もしくは低減することを目的とした、薬物/治療、例えば1以上の予防用組成物の投与を意味する。
【0051】
「予防用組成物」なる語は、ブタにおける与えられた病原体による感染/寄生の可能性および/もしくは度合を有意に低減する他の物質と組合せて、または単独で使用されるいずれかの物質を意味する。1つのそのような実施形態においては、該物質または物質の組合せにより標的化される、ブタに一般に関連したウイルス、細菌または寄生病原体の存在に関連した症状および/または疾患を開始しうる混合(commingling)、天候の変化、栄養の変化および/または他のストレッサーによりブタ腸疾患を発生する高いリスクを、ブタは有する。
【0052】
本明細書中で用いる「治療的有効量」なる語は、与えられた抗原、例えば、生弱毒化ブタウイルスの量であって、単一投与で与えられた場合、ならびに/または所望により、初回投与およびそれに伴う1以上の後続の追加(ブースター)投与として与えられた場合、該抗原を投与して防御する対象である病原体に対する防御をもたらすのに、および/または該病原体からの防御を補助するのに十分である量である。
【0053】
本明細書中で用いる「有効」なワクチンは、与えられた抗原の治療的有効量を含む。「有効」なワクチンは、該ワクチンが投与される管轄区域におけるその抗原に関する規制要件(例えば、米国におけるワクチンの投与は米国農務省(USDA)により規制される)を所与抗原が満足するのに十分な力価を保有する。
【0054】
本明細書中で用いる「医薬上許容される」なる語は、修飾される名詞が医薬品における使用に適していることを意味するものとして形容詞的に用いられる。それが、例えば、医薬ワクチンにおける賦形剤を示すために用いられる場合、それは、該組成物のその他の成分に適合しており意図される被投与者に有害でないものとして該賦形剤を特徴づける。
【0055】
「担体」なる語は、該化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを意味する。医薬上許容される担体は無菌液、例えば水、および/または油、例えば石油、動物、植物または合成由来の油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などでありうる。水または水溶液 塩類溶液および水性糖、例えばデキストロースおよび/またはグリセロールの溶液が担体、特に注射用溶液のための担体として使用されうる。また、例えば、ブタへの噴霧のためにブタワクチンを濃厚化するために、担体は親水コロイドおよび/または重合体溶液であることが可能であり、および/またはそれらを含むことが可能である。
【0056】
本明細書中で用いる「アジュバント」は、免疫学的事象のカスケードを促進または増幅して、より良好な免疫応答、すなわち、抗原に対する統合された身体応答を最終的に招きうる物質である。アジュバントは、一般に、免疫応答の生成に要求されないが、この応答を促進または増幅する。
【0057】
本明細書中で用いる「全身投与」は、胃腸管(例えば、経口投与によるもの)および呼吸系(例えば、鼻腔内投与によるもの)のような特定の部位ではなく身体全体に影響を及ぼす(心血管およびリンパ系を含む)身体の循環系内への投与である。全身投与は、例えば、筋肉組織内(筋肉内)、皮膚内(皮内、経皮または皮膚上)、皮膚の下(皮下)、粘膜の下(粘膜下)、静脈(静脈内)などに投与することにより行われうる。
【0058】
「非経口投与」は皮下注射、粘膜下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射および注入を含む。
【0059】
本明細書中で用いる「糖添加物」は5〜12炭素の糖(例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、デキストロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース)または糖アルコール/ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、イノシトール、マルチトール)である。特に示されていない限り、糖添加物の比率(%)はワクチンの体積(v)に対する糖添加物の重量(w)、すなわち、ワクチンにおける(w/v)として示される。
【0060】
本明細書中で用いる「非還元糖」は、アルデヒド基を含有するいずれの化合物をも塩基性水性媒体中で生成しない糖添加物である。本発明の非還元糖の例には、スクロースおよびトレハロースが含まれる。
【0061】
本明細書中で用いる「非糖アルコール」および「非アルコール糖」なる語は互換的に用いられる。本明細書中で用いる「非糖アルコール」(または「非アルコール糖」)である糖添加物は、例えば非還元糖のような糖アルコールではないいずれかの糖添加物でありうる。
【0062】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる、ワクチンにおける固体添加物、例えば糖添加物またはゼラチンの比率(%)は、100mlのワクチン体積当たりの1gの固体である1%(w/v)溶液に基づく。
【0063】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる、ワクチンにおける液体添加物、例えばエタノールの比率(%)は、100mlのワクチン体積当たりの1mlの液体添加物である1%(v/v)溶液に基づく。
【0064】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる「およそ」なる語は「約」なる語と互換的に用いられ、値が、示されている値の25%以内であることを示す。すなわち、「約」2mM EDTAの濃度は1.5mM〜2.5mM EDTAでありうる。
【0065】
特に示されていない限り、本明細書中で用いる、示されているpH値は、25℃で決定/測定されたpH値である。
【0066】
本発明の液体安定ワクチンは理想的にはpH6.0〜pH8.0のpH範囲であるため、本発明の液体安定ワクチンはバッファーを含みうる。本発明の液体安定ワクチンにおいて使用されるバッファーには、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、Tris(トリス)、Tris−ヒスチジン、BIS−Tris、BIS−Tris−プロパン、ピロリン酸ナトリウムまたはカリウム、イミダゾール、PIPES、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、トリシン、グリシルグリシンおよびHEPESが含まれるが、これらに限定されるものではない。バッファーは、いずれかの適当な対イオンの使用により、所望のpHに調整されうる。
【0067】
本発明の液体安定ワクチンにおいて使用されうる全カゼインの加水分解物は幾つかの方法により得られうる(例えば、酸加水分解物または酵素加水分解物を含む)。そのような加水分解物は、カゼインに元々存在するアミノ酸を混合アミノ酸およびペプチドの形態で含有する。本発明の液体安定ワクチンにおいて使用されうる全カゼインの1つの膵加水分解物はMP BiomedicalsによりCASEIN HYDROLYSATE ENZYMATIC(登録商標)として販売されている。同等の製品はNZ−AMINE(登録商標)、NZ AMINE(登録商標)A、NZ−AMINE(登録商標)ASおよびNZ−AMINE(登録商標)BおよびTryptoneの名称でSigma−Aldrichにより販売されている。
【0068】
本発明のワクチンに含まれうる親水コロイドの例には、ゼラチン、デンプン重合体およびガム、例えばキサンタンガム、カラゲニンおよびアラビアゴム(アカシアガム)が含まれる。
【0069】
多価ワクチン:本発明は液体安定多価ワクチンを提供する。本発明の液体安定多価ブタワクチンは、以下の生弱毒化ブタウイルス:PRRS、PEDV、PRV、TGEV、PPRV、SIVおよび/または1以上の異種抗原をコードする組換えSIVの1以上を含む2以上の抗原を含みうる。前記のとおり、本発明の液体安定多価ブタワクチンは、1以上の死滅ブタウイルスと共に、以下の生弱毒化ウイルス:PRRS、PEDV、PRV、TGEV、PPRV、SIVおよび/または1以上の異種抗原をコードする組換えSIVの1以上をも含みうる。
【0070】
また、本発明の液体安定ワクチンは次いで、投与前に、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属種(Salmonella ssp.)、複数の線毛型の大腸菌(Escherichia coli)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ローソニア・イントラセルラーリス(Lawsonia intracellularis)、エリシペラス属種(Erysipelas ssp.)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のような抗原を含む1以上の生弱毒化または死滅細菌ワクチンと一緒にされうる。本発明の液体安定ワクチンにおいて使用されうる一価および多価ワクチンの例を以下の表1A〜1Cに示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0071】
アジュバント:本発明のワクチンはアジュバントを含有してもよく、またはアジュバントを含有しなくてもよく、これは、該ワクチンが含有する抗原に左右されることが多い。特定の実施形態において、該アジュバントはアルミニウム塩を含む。生ウイルスワクチンと共にアルミニウム塩を使用することが記載されている。特定の実施形態において、アルミニウム塩は、リン酸アルミニウム、リン酸アルミニウムカリウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される。1つのリン酸アルミニウムアジュバントはREHYDROPHOS(登録商標)(General Chemical,Parsippany,New Jersey)である。水酸化アルミニウムアジュバントの例には、REHYDROGEL(登録商標)、REHYDROGEL(登録商標)HPAまたはREHYDROGEL(登録商標)LV(General Chemical,Parsippany,New Jersey)が含まれる。他のよく知られたアジュバントには、炭化水素油、重合体、サポニンおよび/または水中のアクリル酸ナトリウムのゲル粒子から構成されるアジュバント、例えばMONTANIDE(商標)PET GEL A(商標)(Seppic,Paris France)が含まれる。1つの低分子量重合体アジュバントは溶液中で架橋を形成して高分子量ゲルになりうる[例えば、POLYGEN(商標)(MVP Laboratories,Omaha)]。添加される場合、アジュバントの量は、通常、ワクチンにおいて約1%〜20%(v/v)である。特定の実施形態においては、アジュバントの量は約2%〜10%(v/v)である。より詳細な実施形態においては、アジュバントの量は約3%〜6%(v/v)である。
【0072】
ワクチン投与:本発明の液体安定ウイルスワクチンは、いずれかの通常の手段により、例えば非経口投与、例えば皮下または筋肉内投与(これらに限定されるものではない)を含む全身投与により投与されうる。本発明の液体安定ウイルスワクチンは、粘膜投与により、例えば鼻腔内、経口および/または眼投与によっても投与されうる。あるいは、該ワクチンは皮膚パッチ、徐放インプラント、乱切または局所投与により投与されうる。本発明の液体安定ウイルスワクチンは被投与ブタの飲料水および/または食餌によっても投与されうると想定される。
【0073】
本発明のワクチン(多価ワクチンを含む)は、組合せ療法、すなわち、ワクチン自体に加えて1以上の追加的な活性な物質、療法などを投与することを含む療法の一部としても投与されうる。その場合、「治療的有効」量を構成するワクチンの量は、ワクチンを単独で投与しようとする場合の「治療的有効」量を構成するワクチンの量より多い又は少ないことが可能であると認識されるべきである。他の療法には、当技術分野で公知のもの、例えば、鎮痛剤、解熱薬、去痰剤、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬および/または流体の投与が含まれうる。
【0074】
免疫原性レベルは、当技術分野で一般に公知のワクチン用量力価およびチャレンジ研究技術により実験的に決定されうる。そのような技術は、典型的には、種々の投与量のワクチンを幾つかの動物対象にワクチン接種し、ついで該動物対象をビルレントウイルスでチャレンジして、最小防御用量を決定することを含む。
【0075】
好ましい投与レジメンに影響を及ぼす要因には、例えば、対象の種(例えば、ブタのもの)、年齢、体重、食餌、肺サイズおよび状態;投与経路;使用される個々のワクチンの効力、安全性および免疫持続プロファイル;運搬系が用いられるかどうか;ならびにワクチンが薬物および/またはワクチンの組合せの一部として投与されるかどうかが含まれうる。したがって、実際に使用される投与量は具体的な動物に関して変動することがあり、したがって、前記の典型的な投与量から逸脱しうる。そのような投与量調節の決定は、一般に、通常の手段を用いるワクチン開発の分野の当業者の技量の範囲内である。
【0076】
同様に、そのような用量が投与されうる体積は、典型的には、0.1mL(皮内適用)および2.0mLである。投与体積に関する典型的な範囲は0.2〜1.0mL、および0.2〜0.5mL(皮内投与の場合)である。
【0077】
ワクチンは、単一時点で、あるいは数日間、数週間、数か月間または数年間にわたる2以上の時点で、ワクチンの被投与者に投与されうると想定される。幾つかの実施形態においては、ワクチンは少なくとも2回投与される。あるそのような実施形態においては、例えば、ワクチンは2回投与され、第1用量の投与の少なくとも2週間後に第2用量(例えば、ブースター)が投与される。特定の実施形態においては、ワクチンは2回投与され、第1用量の投与の8週間以内に第2用量が投与される。他の実施形態においては、第2用量は第1用量の投与の1週間後〜2年後、第1用量の投与の1.5週間後〜8週間後、または第1用量の投与の2〜4週間後に投与される。他の実施形態においては、第2用量は第1用量の投与の約3週間後に投与される。
【0078】
前記実施形態においては、第1および後続投与は例えば量および/または形態において様々でありうる。しかし、しばしば、それらの投与は量および形態において同一である。単一用量のみが投与される場合、その用量のみにおけるワクチンの量は、一般に、ワクチンの治療的有効量を含む。しかし、2以上の用量が投与される場合、それらの用量におけるワクチンの総量が治療的有効量を構成しうる。また、前記のとおり、ワクチンは初回投与され、ついで2〜12週間後にブースター投与されうる。しかし、ワクチンの後続投与は、ブースターが投与されるか否かに無関係に、毎年(1年)または隔年(2年)で行われうる。
【0079】
本発明のワクチンは、抗細菌物質、例えば抗生物質をも含有しうる。そのような抗生物質の例には、10〜1000μ/ml ゲンタマイシン、0.5〜5.0μg/mL アンホテリシンB、10〜100μg/mL テトラサイクリン、10〜100単位/mL ナイスタチン(ミコスタチン)、10〜100単位/mL ペニシリン、10〜100μg ストレプトマイシン、10〜100μg ポリミキシンBおよび10〜100μg ネオマイシンが含まれうる。
【0080】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、より良く理解されうる。それらの実施例は本発明の典型例として記載されている。以下の実施例は、本発明の実施形態をより完全に例示するために記載されている。しかし、それらは、いかなる点においても、本発明の広範な範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0081】
実施例
液体ブタウイルスワクチンの安定性
材料および方法
バルク抗原の製造:凍結バルクPRRSウイルス抗原を得て、ワクチンを混合する時まで−50℃未満に維持した。該PRRSバルク抗原は約9のlog log10(EID50)の力価を有する。
【0082】
材料:米国薬局方(USP)以上の等級のスクロースおよびソルビトールをFisher Scientificから購入する。98%より高い純度を有する分子生物学等級のL−アルギニン一塩酸塩をSigmaから購入する。NZ Amine(ブルーム(Bloom)250)溶液を最良の入手可能な市販試薬から調製する。以下の溶液は調製され、高圧蒸気滅菌または0.2μm濾過により滅菌されている:80%(w/v)スクロース、70%(w/v)ソルビトール、2.3M L−アルギニン一塩酸塩(pH7.2)、5%(w/v)メチオニン塩酸塩溶液、45%(w/v)ポリビニルピロリドンK−60、0.5M エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、Pleuronic F−68、3M グルタミン酸、モノナトリウム塩、1.0Mリン酸カリウムバッファー(pH7.2)、リン酸トリプトースブロス(TPB)溶液および250mg/mL ゲンタマイシン。ストック溶液を表2Aに要約する。
【0083】
安定剤溶液およびワクチン混合pH調節:最終ワクチン混合物のpHは液体中の該ウイルスの安定性に決定的に重要でありうる。pHは、非常に高感度なpHプローブおよびメーターを使用して測定される。該メーターは小数点の右側に有効数字3桁でpHを表示する。メーターと共に別個の温度プローブが存在し、両方は該溶液中に存在し、安定でなければならない。このpHメーターは5点較正曲線の能力を有し、3点が最小限である。ワクチン混合物の製造中、ウイルス抗原を加える前に安定剤溶液のpHを目標pHに調節し、安定剤溶液とウイルス抗原とを混合した後に該pHを再び測定する。
【0084】
安定剤溶液の調製:初期pHの調節を行うとすぐに、0.2μMフィルターを使用して全ての製剤を濾過滅菌した(単に改良された濾過能力ゆえに、PESが、好ましいフィルターマトリックスである)。現在、濾過は、真空を用いて行われる。真空濾過のもう1つの利点は製剤の追加的な脱気である。製剤を濾過滅菌したら、それにアルゴンガスを注入して、Oの枯渇を促進させ、これは製剤の経時的反応性の低下もたらすと期待される。該注入が完了したら、貯蔵前にアルゴンのオーバーレイ(overlay)を配置し、密封を行う。該製剤を調製した後、所望の温度(例えば、4℃、15℃または25℃)(すなわち、本発明において行う多数の実験においては、所望の温度は4℃であった)でpHがpH7.2であることを確認し/そのように調節する。製剤化およびそれまでの手法が適切に行われていれば、pHは目標pHに近いはずである。事前のpH調節および更なる脱気に関連した化学反応の完了ゆえに、一晩のインキュベーションによりpHは若干変動しうる。
【0085】
ウイルスバルク抗原の解凍:室温(15〜30℃)または冷凍温度(2〜8℃)で凍結抗原をゆっくり解凍する。解凍抗原は使用前に僅か8時間、2〜8℃で維持されるべきである。
【0086】
ワクチン混合物の製造:100mLのワクチン混合物を製造するために、表2Bに挙げられている各成分の最終濃度に達するのに要する各ストック溶液の体積を計算し、ついで、まず、滅菌容器に加え、撹拌棒を使用して安定剤および賦形剤を混合した。該安定剤溶液および全ての賦形剤を十分に混合した後、示されている体積のウイルス抗原を該容器内に加え、十分に混合した。この混合工程中は気泡の生成を避けた。該ウイルスが非常に短い時間枠(数分間)で加えられると、該ウイルスは更なる問題を伴うことなく加えられうる。該ウイルスを直ちに加えない場合には、残留Oを追い出すために、アルゴンオーバーレイを導入する。該ウイルスを加えたら、新鮮なアルゴンオーバーレイを混合前に導入する。該アルゴンガスは、低い流速でボトル内に加える。該ワクチン混合が完了した後、該ワクチン混合物を、小さなアリコートに分注するまで、2〜8℃に維持する。
【0087】
ワクチンの充填:該ワクチン混合物をガラスアンプルバイアル内に1.8mL/バイアルで分注した。ついで各バイアルを逆充填し、アルゴンガスで上を覆った(オーバーレイ)。該アンプルバイアルを炎密封し、標識し、ついで箱内に移し、示されている温度でインキュベーター内で貯蔵した。
【0088】
高温およびリアルタイム条件での安定性試験:アンプルバイアル内の液体PRRSワクチンをそれぞれ27℃および4℃で対応インキュベーター内で貯蔵した。示されている時点で、各製剤からの2以上のバイアルを回収し、各抗原の力価を、組織細胞培養に基づくウイルス力価測定アッセイにより測定した。
【0089】
分析方法
PRRSv力価測定アッセイ:PRRSvを含有する試験サンプルの感染性を感受性組織培養細胞、好ましくはアフリカミドリザル腎細胞系、例えばMARC145またはMA104上の力価測定により決定する。該アッセイの3〜4日前に、細胞を適当な培養プレートまたはディッシュ、例えば96ウェル組織培養プレート内に播く。
【0090】
以下においては、標準的な96ウェル組織培養プレートに関して該アッセイを説明する。活発に増殖している細胞を5×10細胞/ウェルでアッセイ培地(例えば、10mM HEPES、2mM L−グルタミン、60μg/mL ゲンタマイシンおよび7% ウシ胎児血清で補足されたダルベッコ最小必須培地)内に播き、該アッセイにおける使用まで、加湿インキュベーター内で5% CO雰囲気下、37℃でインキュベートする。アッセイの当日、希釈チューブ、例えばガラス管またはポリプロピレンチューブにおけるアッセイ培地内で、試験サンプルの適当な系列希釈物を調製する。例えば、0.2mLの未希釈試験サンプルを1.8mLのアッセイ培地に加え、ボルテックスミキサーにより手短に混合し、1.8mLのアッセイ培地を含有する別の試験管内に該混合物の0.2mLを移すことにより、10倍希釈物を調製することなどが可能である。
【0091】
各試験サンプルに関して、1つの96ウェルプレートをインキュベーションから取り出し、該プレートを反転させ、該培地を適当な容器に無菌的に「ダンピング(dumping)(ドッと入れること)」により、培地を除去する。各希釈物の0.1mLを該プレート上の10ウェルのそれぞれに加えることにより、該サンプルを試験する。希釈物を最高希釈物から、試験すべき最低希釈物へと加える。ついでインキュベーションを更に7日間継続する。
【0092】
インキュベーション後、光学顕微鏡を100〜1000倍の倍率で使用して、またはクリスタルバイオレット(CV)での染色の後に肉眼により、細胞変性効果(CPE)を視覚的に観察することにより、該プレートを読取ることが可能である。CV法においては、100mLの95% エタノール当たり5gのCV粉末を溶解し、ついで等体積のホルムアルデヒド(37% ストック溶液)を加え、脱イオン水またはより良質の水を加えてエタノール100mL当たり1,000mLの最終体積とすることにより、ストック溶液を調製する。培地を96ウェルプレートから「ダンピング」により除去し、残りの単層を乱すことなくCVストック溶液を0.15mL/ウェルで注意深く加える。該プレートを外界温度で15分間放置し、ついでCV溶液を「ダンピング」により除去する。ついで、穏やかに流れる水道水で該ウェルを注意深く洗浄する。最後に、該水を「ダンピング」により除去する。
【0093】
CPE法およびCV法の両方についてPRRSv感染の指標となる特徴的なCPEの存在および無傷単層の非存在に関して、各ウェルを観察する。PRRSv感染の徴候に関して陽性または陰性としてウェルを評価する。SpearmanおよびKarberの方法に従いウイルス力価を計算し、Log10 TCID50/mLとして表す。
【0094】
結果および結論
以下の表2Bは、本発明のブタウイルスワクチンの、10個の液体安定製剤を示す。製剤11は、生ブタウイルスワクチンを安定化するために従来用いられた凍結乾燥法を考慮して設計されたトリプトン,ラクトース製剤である。27℃で行った加速試験においては、標準的な凍結乾燥製剤(製剤11)は直ちに劣化し始めた。以下の表3を参照されたい。2℃〜7℃における対応リアルタイム安定性研究においては、該製剤の全ての力価は製剤2に匹敵した(以下の表2Bを参照されたい)。この製剤の、10個の変異体の全ての力価は、少なくとも6カ月間(測定した最終時点)、2℃〜7℃で比較的安定なままのようである。全く対照的に、製剤11の力価は、この6カ月の時点で、測定可能な程度に減少しており、その力価において1.5 log近く低下している。以下の表4を参照されたい。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0095】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態によって範囲を限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて本発明の種々の改良が前記説明から当業者に明らかとなるであろう。そのような改良は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。