(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596021
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】制振自動車駆動部品
(51)【国際特許分類】
F16F 15/12 20060101AFI20191010BHJP
F16C 3/02 20060101ALI20191010BHJP
F16F 15/10 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
F16F15/12 Q
F16C3/02
F16F15/10 B
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-564039(P2016-564039)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-517690(P2017-517690A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015027324
(87)【国際公開番号】WO2015164621
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】61/982,918
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】393002852
【氏名又は名称】ジーケーエヌ・ドライブライン・ノースアメリカ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,クレイグ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ボール,アーサー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マイケル・ジェイ
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−157429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C3/00−9/06
F16F7/00−7/14
15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体により支持され、複数の金属撚線を有する制振部と、
前記制振部を前記筐体に支持する振動伝達取り付け部材と、
を有する制振自動車部品であって、
前記制振部は、複数の金属撚線から構成されるワイヤを複数備え、
前記振動伝達取り付け部材は、前記筐体の外表面の複数の位置に前記複数のワイヤを保持するよう構成されており、
前記筐体が、自動車駆動部品の使用中に振動を受けると、前記振動は、前記振動伝達取り付け部材を介して、前記複数のワイヤの前記複数の金属撚線に伝達され、かつ、前記複数の金属撚線間における相対運動は、前記筐体の受けた前記振動を抑制する、制振自動車駆動部品。
【請求項2】
前記振動伝達取り付け部材は、少なくとも1つの締め具を有する、請求項1に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項3】
前記筐体が、前記自動車駆動部品の使用中に振動を受けると、前記複数の金属撚線間における相対運動は、前記筐体のたわみモードを抑制する、請求項1に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項4】
前記筐体は壁を有し、
前記振動伝達取り付け部材は、前記壁により支持され、かつ、前記金属撚線が収容されるケーシングを有する、請求項1に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項5】
前記壁により支持され、かつ、相互に離れて配置された複数のケーシングを更に有し、
前記複数のケーシングの各々は、複数の金属撚線を支持し、
前記壁が、前記筐体の使用中に振動を受けると、前記複数のケーシングの各々の内部での前記複数の金属撚線間における相対運動は、前記壁のたわみモードを抑制する、請求項4に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項6】
前記壁は、第1金属材料から成り、
前記ケーシングは、第2金属材料から成り、
前記第2金属材料は、前記第1金属材料よりも高い融解温度を有する、請求項4に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記壁内への場所打ち工程を用いて、前記壁により支持され、
前記ケーシングは、該ケーシングの全ての側面が前記壁の第1金属材料に隣接する、請求項6に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項8】
前記ケーシングは、少なくとも1つの挟まれた窪みを有し、
前記複数の金属撚線は、前記ケーシングの前記少なくとも1つの挟まれた窪みに位置する、少なくとも1つの圧迫部を有する、請求項4に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項9】
前記複数の金属撚線は、鋼綿を有する、請求項1に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項10】
前記筐体は、管を有し、
前記振動伝達取り付け部材は、前記管の内部に位置し、かつ、支持部を有し、
前記複数の金属撚線は、前記管の前記内部に位置し、かつ、前記振動伝達取り付け部材の前記支持部により支持され、
前記管が、前記筐体の使用中に振動を受けると、前記複数の金属撚線間における相対運動は、前記管の受けた前記振動を抑制する、請求項1に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項11】
前記筐体の前記管は、プロップシャフト管である、請求項10に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項12】
前記支持部は、前記管の内表面に対して表面同士を直接接触させる外表面を有し、
前記管が、前記筐体の使用中に振動を受けると、該振動は、前記支持部を介して、前記管から前記複数の金属撚線へ伝達される、請求項10に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項13】
前記振動伝達取り付け部材は、前記支持部の外表面及び前記管の内表面間の接触を維持するために、前記支持部に対して半径方向外向きの力を付与する、半径方向に拡張可能な締め具を、少なくとも1つ有する、請求項10に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項14】
前記複数の金属撚線は、複数のワイヤにより提供される、請求項10に記載の制振自動車駆動部品。
【請求項15】
前記支持部は、高分子ブランケットまたはプラスチックチューブである、請求項10に記載の制振自動車駆動部品。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書に援用された、2014年4月23日付けの米国仮特許出願番号61/982,918の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、自動車駆動部品に関し、より具体的には、自動車駆動部品における振動及び他の揺れを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車駆動部品は、自動車の運転中にしばしば、振動及び他の揺れを受ける。この様な振動及び揺れは、より大きな駆動部品において通常望ましくない騒音及び他の状態を引き起こすことがある。製造会社は、振動及び他の揺れに対し、幾度も消散させようとし、場合によっては取り除こうとしてきたが、その成功度合いは様々であった。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、制振された自動車駆動筐体は、壁、ケーシング、及び複数の金属撚線を有してよい。ケーシングは、壁により支持される。金属撚線は、ケーシング内に保持される。自動車駆動筐体の使用中に、壁が振動を受けると、金属撚線間における相対運動が、壁の受けた振動を抑制する働きをする。
【0005】
別の実施形態においては、制振された自動車駆動筐体は、管(チューブ)、振動伝達取り付け部材、及び複数の金属撚線を有してよい。振動伝達取り付け部材は、管の内部に位置し、支持部を有する。金属撚線は、管の内部に位置し、振動伝達取り付け部材の支持部により保持される。自動車駆動筐体の使用中に、管が振動を受けると、金属撚線間における相対運動が、管の受けた振動を抑制する働きをする。
【0006】
更に別の実施形態においては、制振された自動車駆動部品は、筐体、制振部、及び振動伝達取り付け部材を有してよい。制振部は、筐体により支持され、複数の金属撚線を有する。振動伝達取り付け部材は、制振部を筐体に保持する。自動車駆動部品の使用中に、筐体が振動を受けると、振動は、振動伝達取り付け部材を介して、金属撚線に伝達され、金属撚線間における相対運動が、筐体の受けた振動を抑制する働きをする。
【0007】
以下、好適な実施形態及び最良の態様について、下記の添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る制振部を有する自動車駆動部品、具体的には、プロップシャフト管を示す;
【
図2】
図2は、別の実施形態に係る制振部を有するプロップシャフト管を示す;
【
図4】
図4は、別の実施形態に係る制振部を有する自動車駆動部品、具体的には、バーシャフトを示す;
【
図5】
図5は、別の実施形態に係る制振部を有するバーシャフトを示す;
【
図6】
図6は、
図5のバーシャフト及び制振部を別の描写により示す;
【
図7】
図7は、別の実施形態に係る制振部を有する自動車駆動部品、具体的には、トルク管筐体を示す;
【
図8】
図8は、
図1のプロップシャフト管及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のプロップシャフト管の振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図9】
図9は、
図2のプロップシャフト管及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のプロップシャフト管の振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図10】
図10は、
図4のバーシャフト及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図11】
図11は、
図4のバーシャフト及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図12】
図12は、
図4のバーシャフト及び制振部の第1曲げモード(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの第1曲げモード(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図13】
図13は、
図4のバーシャフト及び制振部の第2曲げモード(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの第2曲げモード(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図14】
図14は、
図5及び
図6のバーシャフト及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図15】
図15は、
図5及び
図6のバーシャフト及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のバーシャフトの振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図16】
図16は、
図7のトルク管筐体及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のトルク管筐体の振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図17】
図17は、
図7のトルク管筐体及び制振部の振動レベル(実線)を、制振部を有さない同一のトルク管筐体の振動レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図18】
図18は、一実施形態に係る制振部を有するトルク管筐体の全音域音圧レベル(実線)を、制振部を有さない同一のトルク管筐体の全音域音圧レベル(破線)と比較したグラフであり、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている;
【
図19】
図19は、制振部を有さない自動車駆動部品、具体的には、後部駆動装置(RDU)の振動加速度を示すグラフである;
【
図20】
図20は、
図19のRDUであるが、制振部を有する場合の振動加速度を示すグラフである;
【
図21】
図21は、別の実施形態に係る制振部を有する自動車駆動部品、具体的には、プロップシャフト管を示す断面図である;
【
図22】
図22は、自動車駆動部品の壁内に埋め込まれた、別の実施形態に係る制振部の拡大図である;
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を更に詳細に参照すると、自動車駆動部品10は、自動車内におけるその使用中に、振動及び他の揺れを受ける。部品に応じて、振動及び揺れは、主として、曲げモード及び呼吸モードを有する曲げ振動を含む。自動車駆動部品10は、該部品の受けた少なくとも幾つかの振動及びモードを消散させ、場合によっては、実質的に取り除くために、制振部を備える。自動車駆動部品10は、プロップシャフト(
図1、
図2、
図21)、バーシャフト(
図4、
図5、
図6)、及びトルク管筐体(
図7、
図22、
図23)であってもよい。また、自動車駆動部品10は、ハーフシャフト、出力伝達装置(PTU)筐体(
図22、
図23)、最終駆動装置(FDU)筐体(
図22、
図23)、差動筐体、または自動車運転中の望まない振動を受ける自動車駆動部品内に設けられた他の部品であってもよい。
【0010】
図1に示す実施形態を参照すると、自動車駆動部品10は、筐体12、制振部14、及び振動伝達取り付け部材16を有するプロップシャフトである。筐体12は、使用中に不必要に振動することにより、制振を受け易いプロップシャフトの構造を有する。ここで、筐体12は、中空金属管18であるが、とりわけ影響する可能性のあるプロップシャフトの設計及び構造、並びにより大きな駆動部品内に設けられた他の部品の設計及び構造に応じて、異なる設計及び構造を有することもできる。
【0011】
制振部14は、筐体12から発せられる振動を受け、該振動を消散させるか、または完全に取り除く。本実施形態では、制振部14は、管18の外表面22上に支持された複数のワイヤ20を有する。各ワイヤ20は、外部絶縁体内に含まれる多くの個別の金属撚線から構成される。金属撚線は、アルミニウム(Al)または銅(Cu)または他の金属材料から成り得、外部絶縁体は、プラスチック材料から成り得る。
図1は、管18の軸と平行に配列された2本のワイヤ20を示す。ワイヤ20を管の軸に沿って配列することは、管18の第1及び第2の曲げ振動モードを抑制する上で、特に効果的であることが判明している。依然として、異なる数量のワイヤが存在し得、これらのワイヤは、管に対して、及び互いのワイヤに対して、異なった配置にされ得る。例えば、1本または4本以上のワイヤ20が、管18の周囲に位置してもよい。ワイヤ20は、幾つかの実施形態において、製造部品にとって好適な位置である、管18の内表面上に、支持可能である。また、異なる長さ及び他のサイズを有するワイヤ20を供給可能である。他の回転駆動部品に加えて、本明細書に記載のプロップシャフトの場合、自動車駆動部品10の質量中心が不安定となるのを防止するために、制振部14は、筐体12上において、対称的に配置されてもよい。
【0012】
振動伝達取り付け部材16は、振動を筐体12から及び制振部14へ通過させる機能を有すると共に、制振部及び筐体を連結させる構造を有する。本実施形態において、振動伝達取り付け部材16は、管18の周囲及びワイヤ20の周囲に固定された複数のジップタイ24を有する。ジップタイ24は、プラスチック材料または金属材料により構成することができる。
図1は、管18の周囲に架けられ、かつ、互いに軸方向に間隔を置いて配設された複数のジップタイ24を示す。更に、ジップタイ24は、管に対して及び相互に対して、異なった配置にされ得る。上述した様に、振動伝達取り付け部材16は、運転中に回転した時に、自動車駆動部品10の質量中心が不安定となるのを防止するために、筐体12上において、対称的に配置されてもよい。
【0013】
管18が、使用中に振動すると、振動は、ジップタイ24を通過してワイヤ20へ達し、そこで、振動は、個別の撚線により、消散されるか、または完全に取り除かれる。特定の因果関係説に縛られるものではないが、個別の金属撚線間における相対運動は、摩擦を生じさせ、振動エネルギーを熱エネルギーへ変換するものと現在考えられている。このエネルギー変換は、管18及びプロップシャフトにおける振動及び揺れを低減させるか、または完全に取り除くと考えられている。
【0014】
ここで、
図2及び
図3に示す実施形態を参照すると、制振部14は、
図1のワイヤの代わりに、複数の撚線の束26を有する。撚線の束26の各々は、
図3の断面図により恐らく最も良く示される様に、外部絶縁体を有さない一纏めにされた多くの個別の金属撚線から成る。前述した様に、金属撚線は、例えば、アルミニウムまたは銅等の金属材料により、構成されてもよい。また、撚線の束26は、
図2に示す数量とは異なる数量であってもよく、上述した様に、管に対して及び相互に対して、異なった配置にされてもよい。更に、本実施形態においては、振動伝達取り付け部材16は、
図1のジップタイの代わりに設けられた接着剤28である。接着剤28は、束の長手方向の領域に沿った多数の位置において、管18に直接塗布され、撚線の束26に直接塗布される。接着剤28は、強力瞬間接着材、熱溶融性(ホットメルト系)材料、または幾つかの他の接着剤であってもよい。接着剤28は、
図2に示す数量とは異なる数量であってもよく、上述した様に、管18に対して及び相互に対して、異なった配置にされてもよい。接着剤28が固化すると、振動は、硬化した接着剤28の構造を通過して、撚線の束26へ到達可能となる。
【0015】
ここで、
図4に示す実施形態を参照すると、自動車駆動部品10は、バーシャフトであり、筐体12は、金属体30である。金属体30は、一体構造を有してもよく、幾つかの部分に窪みを有してもよい。バーシャフトは、より大きなハーフシャフト部品の一部分であってもよい。上述した様に、本実施形態に係る制振部14は、外部絶縁体内に含まれる多くの個別の金属撚線を有する複数のワイヤ32を有する。また、振動伝達取り付け部材16は、金属体30の周囲及びワイヤ32の周囲に固定された複数のジップタイ34を有する。
【0016】
ここで、
図5及び
図6に示す実施形態を参照すると、制振部14は、外部絶縁体内に含まれる多くの個別の金属撚線を有する複数のワイヤ36を有する。ここで、複数のワイヤ36は、金属体30の外表面38上に支持され、かつ、互いに接して近い位置で共に保持された、合計12本のワイヤ36であってもよい。各ワイヤ36は、約16.5センチ(6.5インチ)の長さを有してもよく、個別の金属撚線は、銅から成る8ゲージのワイヤとして提供されてもよい。勿論、他の長さ、他のゲージ、他の材料も可能である。更に、本実施形態においては、振動伝達取り付け部材16は、ワイヤ36の上から金属体30を締め付ける複数の締め具(クランプ)40を有する。締め具40は、
図5及び
図6の金属材料から成り、締め具40は、4つ設けられてもよい。かかる特定の実施形態においては、振動は、締め具40により実現される強固な固定により、金属体30からワイヤ36へ直接伝達される。更に、振動は、締め具40を介してワイヤ36間を通過することができる。締め具40は、異なる数量であってもよく、上述した様に、金属体30に対して及び相互に対して、異なった配置にされるものとしてもよい。
【0017】
ここで、
図7に示す実施形態を参照すると、自動車駆動部品10はトルク管であり、筐体12はトルク管筐体42である。トルク管筐体42は、鋳造工程または他の金属加工工程により製造可能であり、アルミニウム材料または他の材料から構成可能である。上述した様に、本実施形態においては、制振部14は、外部絶縁体内に含まれる多くの個別の金属撚線を有する複数のワイヤ44を有する。ここで、合計4本のワイヤ44及び個別の金属撚線は、銅から成る8ゲージのワイヤとして提供されるものとしてもよい。本実施形態に係る振動伝達取り付け部材16は、トルク管筐体42の外表面に直接塗布され、かつ、ワイヤ44に直接塗布される接着剤46である。接着剤46は、熱溶融性材料であってもよい。場合によっては、複数の分離したワイヤ44を複数の箇所に設けることにより、制振部14の振動消散能力が向上し得る。
【0018】
ここで、
図21に示す実施形態を参照すると、自動車駆動部品10はプロップシャフトであってもよく、筐体12は中空金属管18であってもよい。自動車駆動部品10は、中空金属管を筐体として使用する他の駆動部品であってもよい。本実施形態に係る制振部14は、3本のワイヤ48を有し、その各々は、外部絶縁体内に含まれるか、または含まれない多くの個別の金属撚線を有する。ワイヤ48は、中空金属管18の周囲に設けられてもよく、相互に約120度(120°)の間隔が空いてもよい。
図21に示す断面図によっては容易に判別できないが、ワイヤ48は、中空金属管18の中心軸Aに沿って平行に配置される。更に、本明細書内の他の箇所において詳述される他の実施形態の様に、異なる数量のワイヤが提供されてもよく、ワイヤは、相互に異なる間隔を有してもよい。また、ワイヤは、中空金属管18に対して、異なった配置にされてもよい。前述した様に、中心軸Aに沿ってワイヤ48を配置することにより、特に、中空金属管18の第1及び第2の曲げ振動モードを抑制可能となる、という効果が得られることが判明している。また、上記配置により、特に、中空金属管18の呼吸振動モードが抑制可能となる、という効果も得られることがある。既に周知の例では、制振装置は、管の周りに螺旋状に巻かれていた。この様な配置は、場合によっては適するかもしれないが、
図21に示す直列配置は、曲げ振動モードに対して、更なる制振効果をもたらすものと考えられる。
【0019】
本実施形態に係る振動伝達取り付け部材16は、1つ以上の部品:支持部50及び複数の締め具52により提供される。支持部50が中空金属管18内に組みたてられる前においても、支持部50は、ワイヤ48を適切な位置に支持すると共に、該ワイヤを、相互に対して適切な位置に配置する。支持部50は、中空金属管18の内部54に、ワイヤ48を配置して順に嵌め込むために用いることができる。かかる状況においては、支持部50は、支持部を用いることなく個別の分離したワイヤを配置する場合と比較して、内部54の適切な位置にワイヤ48を設けることを容易にすることができる。該内部に位置させることは、幾つかの自動車駆動装置内において好適であり得る。なぜなら、外部の位置にあると、より大きな駆動システム内の他の部品を物理的に妨害する可能性がある、あるいは、外部に追加的に設ける構造は、梱包容器の制約上、困難であるからである。
図21の断面図からは容易に分からないが、支持部50は、その少なくとも一部が、中空金属管18の縦方向及び軸方向の領域に沿って広がる、縦方向及び軸方向の領域を占めてもよい。支持部50は、支持部を組み立てるための特定の自動車駆動部品によりある程度決定される、異なった設計及び構造を有してもよい。
図21に示す実施形態においては、支持部50は、高分子ブランケットまたはプラスチックチューブであってもよく、ワイヤ48は、その中に埋め込まれてもよい。高分子ブランケットの例では、支持部50は、より容易に内部54内に配置可能な様に、幾分かの柔軟性を示し得る。また、高分子ブランケットの例は、
図4のバーシャフトと共に使用され得る。プラスチックチューブの例では、支持部 50は、内部54内に挿入可能な形状及びサイズを有してもよい。更に、他の実施例に係る、完全に固体の円柱である支持部を有する支持部の構造も可能である。組み立てに際して、支持部50の外表面56は、中空金属管18の内表面58に対して、各々の表面同士を直接接触させるものとしてもよい。該接触により、振動は、中空金属管18から支持部50へ伝達される。
【0020】
締め具52は、支持部50に対して半径方向外向きの力を付与する、半径方向に拡張可能な締め具である。これにより、支持部50は、中空金属管18の内表面58に固定される。振動は、一部は締め具52を介して、一部は支持部50の構造を介して、ワイヤ48の間を通過することができる。この種の締め具は、紐、及び例えば、ウォーム歯車機構等の締め付け機構を有することがある。また、締め具は、例えば、止め輪の様な、他の種類の内部保持装置を有することもある。
図21の断面図には、単一の締め具52の単一の紐60のみが例示されている。しかしながら、組立て品においては、支持部50に沿った異なる軸方向の部位において支持部50を中空金属管18に固定するために、複数の締め具52が、支持部50の縦方向及び軸方向の領域に沿って軸方向に間隔を空けて使用さてもよい。更に、締め具の代わりに、ワイヤ48自体が、内部54内に設けられた後、別の方法により波形にされるか、または変形されてもよい。かかる波形または変形により、内部54内の適切な位置に、ワイヤ48が維持されるであろう。
【0021】
ここで、
図22及び
図23に示す実施形態を参照すると、自動車駆動部品10は、トルク管筐体62、PTU筐体64、またはFDU筐体66であってもよい。筐体62、64、66は、アルミニウム材料から構成可能な壁67を有する。壁67は、筐体62、64、66の本体またはカバーの一部であってもよい。本実施形態に係る制振部14は、メッシュ状金属撚線68の形態を有する金属撚線を有する。メッシュ状金属撚線68は、銅、アルミニウム、または他の金属材料から構成可能である。1つの実施形態においては、メッシュ状金属撚線68は、鋼綿束により構成される。メッシュ状金属撚線68は、きつく詰められ、かつ、共に絡み合った多数の個別の金属撚線を有してもよい。
【0022】
本実施形態に係る振動伝達取り付け部材16は、ケーシング70を有する。ケーシング70は、壁67により支持され、メッシュ状金属撚線68をその内部に支持する。メッシュ状金属撚線68は、支持されるが、振動を受けても、依然として、相互に対して自由に移動することができる。ケーシング70は、壁67よりも融解温度の高い金属材料から構成可能である。1つの実施例では、ケーシング70は、鉄材から成るが、壁は、アルミニウム材料から成る。
図22及び
図23に示す様に、ケーシング70は、壁67内に埋め込まれることにより、筐体62、64、66内に設けることができる。従って、ケーシング70は、壁の材料及び厚みの中に埋め込むことができる。また、ケーシング70は、全ての側面が壁67に隣接することができる。この種の埋め込みを実行可能な1つの方法として、場所打ち工程があるが、他の工程を採ることも可能である。ケーシング70の材料は、壁67の材料よりも融解温度が高いので、壁67の溶融物質が固化する前にケーシング70を囲む時に、ケーシング70は、原形を維持してメッシュ状金属撚線68を保護する。
【0023】
更に、
図22及び
図23には示さないが、ケーシング70は、概して細長く管状の形状を有してもよく、また、終端が閉じていてもよい。複数の分離した各々のケーシング70は、筐体62、64、66内の異なる部位に配置されて設けられたメッシュ状金属撚線68を、その中に有してもよい。
図22に1つの例を示す様に、ケーシング70は、筐体62、64、66の縦方向及び軸方向の領域に沿った異なる位置に、ケーシングの本体内に挟まれ、または別の方法により形成された1つ以上の窪み72を有してもよい。窪み72は、ケーシング70の周囲を完全に包囲する様に広がるものとしてもよいが、必ずしもその必要はない。窪み72がケーシング70内に形成される時、メッシュ状金属撚線68は、既に、ケーシングの内部に挿入されているものとしてもよい。この様に、上記構成の影響下にある領域を占めるメッシュ状金属撚線68は、より一層近接する様に圧迫される。メッシュ状金属撚線68の圧迫部74は、窪み72から離れて位置する圧迫されないメッシュ状金属撚線68と比較して、よりきつく詰められた状態となる。圧迫部74は、メッシュ状金属撚線68の振動抑制機能を増強させると、現在考えられている。
【0024】
本明細書に詳述された幾つかの実施形態において、制振部14は、全てのたわみモードを抑制することができる。従来は、ある専用の制振装置は、第1曲げ振動モードを抑制するためにのみ使用されると共に、別の追加的な専用の制振装置は、第2曲げ振動モードを抑制するためにのみ使用されることがあった。制振部14は、2つの分離した制振装置に代わり、他のたわみモードだけでなく、第1及び第2の曲げ振動モードの双方を、効果的に抑制するために使用できる。同様に、例えば、
図1に示したプロップシャフト管の様な中空の部品を有する実施形態においては、制振部14は、第1及び第2の曲げ振動モード、並びに呼吸振動モードの双方を抑制できる。
【0025】
更に、本明細書に詳述された何れかの実施形態においては、振動の抑制及び消散の度合いが、特定のアプリケーション及び特定の振動モードに対して、調整可能である。異なる実施例においては、以下の内の1つ以上を、調整目的のために変更可能である。ワイヤの数、個別の金属撚線の数、ワイヤの長さ、ワイヤの配置、1つ以上または全てのワイヤの材料、及び振動伝達取り付け部材の数。正確な調整は、その全てが実行された場合、特定の駆動アプリケーションに依存するであろう。
【0026】
図8〜
図20は、他の実施形態だけでなく、
図1〜
図7に示した異なる実施形態において行われた試験の結果を示すグラフである。
図8〜
図18のグラフでは、y軸にはデシベル(dB)が記され、x軸にはヘルツ(Hz)が記されている。制振部及び振動伝達取り付け部材を有する実施形態における試験を実線により示し、制振部及び振動伝達取り付け部材を有さない実施形態における試験を破線により示し、これらの結果を比較する。各々の場合において、上記結果は、異なる制振部及び振動伝達取り付け部材による制振の能力及び効果を実証する。
図8のグラフは、
図1の実施形態における結果を示すと共に、曲げ振動モード及び呼吸振動モードを表す。
図9のグラフは、
図2の実施形態における結果を示すと共に、曲げ振動モード及び呼吸振動モードの双方を表す。
図10及び
図11のグラフは、
図4の実施形態における結果を示すと共に、第1及び第2の曲げ振動モードを表す。
図12は、
図11に示す第1曲げ振動モードの拡大図であり、
図13は、
図11に示す第2曲げ振動モードの拡大図である。
図14及び
図15のグラフは、
図5及び
図6の実施形態における結果を示すと共に、第1及び第2の曲げ振動モードを表す。
図16のグラフは、
図7の実施形態における結果を示すと共に、曲げ振動モード及び呼吸振動モードを表す。
図17は、
図7と同様のトルク管筐体における結果を示す。トルク管筐体と共に使用される制振部は、3つの金属ケーシング内に含まれ、該ケーシングの各々は、その中に挿入された鋼綿束を有する。該3つの金属ケーシングは、熱溶融性材料を介して、トルク管筐体の外表面に取り付けられた。
図18のグラフは、トルク管筐体により支持された3本のワイヤを有するトルク管筐体の自由野において測定された全音域音圧レベル(実線)を、該ワイヤも何れの制振装置も有さない同一のトルク管筐体における全音域音圧レベル(破線)と比較したものである。
図19のグラフは、制振装置を有さない後部駆動装置(RDU)の振動加速度を表し、
図20のグラフは、RDUと同一であるが、該RDU上に取り付けられた金属撚線の形態を有する制振部を有するRDUの振動加速度を表す。
【0027】
開示の形態は、現時点において好適な実施形態を表すものであるが、他の多くの形態も可能である。本明細書は、全ての可能な均等形態または開示内容の派生に言及することを意図するものではない。明細書において使用される用語は、単に説明のためのものであり、限定を意図するものではなく、本願発明の趣旨または範囲を逸脱することのない範囲内で、様々な変更が可能であることを理解されたい。