(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ピストン及び主弁室が配在された筒状の主弁ハウジング、複数のポートが開口せしめられた弁シート面を持つ主弁座、前記主弁室内に軸線方向に移動可能に配在されるとともに、前記弁シート面に摺動自在に対接せしめられたスライド式の主弁体、及び前記ピストンの往復移動に伴って前記主弁体を移動させるための連結体を備え、前記主弁室内で前記連結体を介して前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされた流路切換弁であって、
前記主弁ハウジングの軸線に対して反対側にそれぞれ複数のポートが開口せしめられるとともに、前記主弁体は、前記複数のポート間を選択的に連通させるUターン通路がそれぞれに設けられた一対のスライド弁体が前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向で背面合わせの状態で配在されて構成されており、
前記連結体は、前記主弁座の弁シート面に対して平行に且つ前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向で相互に離れて配置された一対の支持板部を有する一枚又は複数枚の板材からなり、前記一対の支持板部の各々に、前記一対のスライド弁体の各々が前記ピストンの往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられており、
前記連結体における前記支持板部と前記ピストンとの間に延在する接続板部に、別途の開口が形成されていることを特徴とする流路切換弁。
前記一対の支持板部の各々に、前記一対のスライド弁体の各々が前記ピストンの往復移動に伴って軸線方向に一体的に移動自在に押動されるとともに、前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向に摺動自在に嵌合せしめられる開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
前記一対の支持板部の各々は、前記一対のスライド弁体の各々における前記弁シート面寄りの部位で該一対のスライド弁体の各々に連結、嵌合、もしくは係合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路切換弁。
【背景技術】
【0002】
一般に、ルームエアコン、カーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムは、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、及び膨張弁等に加えて、流路(流れ方向)切換手段としての流路切換弁を備えている。
【0003】
この種の流路切換弁としては、四方切換弁がよく知られているが、それに代えて六方切換弁を用いることが考えられている。
【0004】
以下に六方切換弁を備えたヒートポンプ式冷暖房システムの一例を
図7(A)、(B)を参照しながら簡単に説明する。図示例のヒートポンプ式冷暖房システム100は、運転モード(冷房運転と暖房運転)の切り換えを六方切換弁180で行うようになっており、基本的には、圧縮機110、室外熱交換器120、室内熱交換器130、冷房用膨張弁150、及び暖房用膨張弁160を備え、それらの間に6個のポートpA、pB、pC、pD、pE、pFを有する六方切換弁180が配在されている。
【0005】
前記各機器間は導管(パイプ)等で形成される流路で接続されており、冷房運転モードが選択されたときには、
図7(A)に示される如くに、圧縮機110から吐出された高温高圧の冷媒は、六方切換弁180のポートpAからポートpBを介して室外熱交換器120に導かれ、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の気液二相又は液冷媒となって冷房用膨張弁150に導入される。この冷房用膨張弁150により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、六方切換弁180のポートpEからポートpFを介して室内熱交換器130に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、室内熱交換器130からは低温低圧の冷媒が六方切換弁180のポートpCからポートpDを介して圧縮機110の吸入側に戻される。
【0006】
それに対し、暖房運転モードが選択されたときには、
図7(B)に示される如くに、圧縮機110から吐出された高温高圧の冷媒は、六方切換弁180のポートpAからポートpFを介して室内熱交換器130に導かれ、ここで室内空気と熱交換(暖房)して凝縮し、高圧の気液二相又は液冷媒となって暖房用膨張弁160に導入される。この暖房用膨張弁160により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、六方切換弁180のポートpCからポートpBを介して室外熱交換器120に導入され、ここで室外空気と熱交換して蒸発し、室外熱交換器120からは低温低圧の冷媒が六方切換弁180のポートpEからポートpDを介して圧縮機110の吸入側に戻される。
【0007】
前記した如くのヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれる六方切換弁(流路切換弁)として、特許文献1に所載の如くの、スライド式のものが知られている。このスライド式の六方切換弁は、スライド式主弁体を内蔵する弁本体(主弁ハウジング)と電磁式のパイロット弁(四方パイロット弁)とを有し、主弁ハウジングに、前記ポートpA〜pFが設けられるとともに、スライド式主弁体が左右方向に摺動可能に配在されている。主弁ハウジングにおけるスライド式主弁体の左右には、パイロット弁を介して圧縮機吐出側及び圧縮機吸入側に接続される、それぞれスライド式主弁体に結合された左右一対のピストン型パッキンにより画成される二つの作動室が設けられ、この二つの作動室への高圧流体(冷媒)の導入・排出を前記パイロット弁で選択的に行い、この二つの作動室の圧力差を利用して前記スライド式主弁体を左右方向に摺動させることで前記流路切換を行うようにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した如くの従来の流路切換弁においては、次のような解決すべき課題がある。
【0010】
すなわち、特許文献1に所載のスライド式の六方切換弁(流路切換弁)では、前記6個のポートpA〜pFのうち5個のポートpB〜pFが軸線方向に並んで設けられているので、前記5個のポートpB〜pFが設けられる主弁座やスライド式主弁体が(軸線方向で)長くなり、スライド式主弁体が摺動自在に対接せしめられる主弁座の弁シート面やスライド式主弁体のシール面の面精度(平面度)の確保が難しく、初期漏れや耐久劣化による漏れ(弁漏れ)が増加するおそれがある。
【0011】
また、内容積が比較的小さな主弁ハウジング内において高圧流体(冷媒)が内壁面等に衝突するとともに、その流れ方向がクランク状に大きく変わるので、圧力損失が大きくなる嫌いがある。
【0012】
上記に加えて、従来の流路切換弁、特に、前記したヒートポンプ式冷暖房システムに使用される流路切換弁では、主弁ハウジング内において高温高圧の冷媒(ポートpAからポートpB、ポートpAからポートpFへ流れる冷媒)と低温低圧の冷媒(ポートpCからポートpD、ポートpEからポートpDへ流れる冷媒)とが近接した状態で流される。詳しくは、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが、冷房運転時には主弁座を介して隣接するポートpBとポートpCとに流され、暖房運転時には主弁座を介して隣接するポートpFとポートpCとに流されるが、その各ポートが設けられる主弁座は、一般に熱伝導率の高い金属で作製されているので、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)が大きくなって、システムの効率が悪くなるという問題もある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、弁漏れし難くできるとともに、圧力損失を効果的に抑えることのできる流路切換弁を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的とするところは、ヒートポンプ式冷暖房システム等の高温高圧の流体と低温低圧の流体が流される環境で使用される場合において、熱損失を低減し得てヒートポンプ式冷暖房システムの効率を向上させることのできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的には、ピストン及び主弁室が配在された筒状の主弁ハウジング、複数のポートが開口せしめられた弁シート面を持つ主弁座、前記主弁室内に軸線方向に移動可能に配在されるとともに、前記弁シート面に摺動自在に対接せしめられたスライド式の主弁体、及び前記ピストンの往復移動に伴って前記主弁体を移動させるための連結体を備え、前記主弁室内で前記連結体を介して前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされ、前記主弁ハウジングの軸線に対して反対側にそれぞれ複数のポートが開口せしめられるとともに、前記主弁体は、前記複数のポート間を選択的に連通させるUターン通路がそれぞれに設けられた一対のスライド弁体が前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向で背面合わせの状態で配在されて構成されており、前記連結体は、前記主弁座の弁シート面に対して平行に且つ前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向で相互に離れて配置された一対の支持板部を有する一枚又は複数枚の板材からなり、前記一対の支持板部の各々に、前記一対のスライド弁体の各々が前記ピストンの往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられて
おり、前記連結体における前記支持板部と前記ピストンとの間に延在する接続板部に、別途の開口が形成されていることを特徴としている。
【0016】
好ましい態様では、前記一対の支持板部の各々に、前記一対のスライド弁体の各々が前記ピストンの往復移動に伴って軸線方向に一体的に移動自在に押動されるとともに、前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向に摺動自在に嵌合せしめられる開口が形成される。
【0017】
他の好ましい態様では、前記一対の支持板部の各々は、前記一対のスライド弁体の各々における前記弁シート面寄りの部位で該一対のスライド弁体の各々に連結、嵌合、もしくは係合する。
【0019】
別の好ましい態様では、前記連結体は、それぞれが前記支持板部を有する、逆向きに配置された同一寸法及び同一形状の一対の板材で構成される。
【0020】
更に好ましい態様では、前記一対の板材には、該一対の板材を相互に位置合わせするための突き合わせ段部が設けられる。
【0021】
別の好ましい態様では、前記連結体は、前記一対の支持板部を有する一枚の板材で構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る六方切換弁では、主弁ハウジングの軸線に対して反対側にそれぞれ複数のポートが開口せしめられ、主弁体は、前記複数のポートを選択的に連通させるUターン通路がそれぞれに設けられた一対のスライド弁体が主弁座の弁シート面に対して直交する方向で背面合わせの状態で配在されて構成されており、主弁室内で主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされている。そのため、従来のスライド式主弁体を使用した流路切換弁と比べて、ポートが設けられる主弁座や主弁体を(軸線方向で)短くできるので、主弁座の弁シート面や主弁体のシール面の面精度(平面度)が確保しやすくなり、弁漏れを抑えられるとともに、流体(例えば高圧流体(冷媒))がUターン通路を介して流されるので、圧力損失を低減することもできる。
【0023】
上記に加えて、本発明に係る流路切換弁をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、高温高圧の冷媒が流されるUターン通路と低温低圧の冷媒が流されるUターン通路が、例えば金属製の主弁座を介することなく比較的大きく離されて設けられるので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが金属製の主弁座を介して近接した状態で流される従来のものに比べて、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0024】
また、本発明に係る流路切換弁では、連結体が、主弁座の弁シート面に対して平行に且つ前記主弁座の弁シート面に対して直交する方向(弁シート面の高さ方向)に離れて配置された一対の支持板部を有し、その一対の支持板部の各々に、一対のスライド弁体の各々がピストンの往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられる。そのため、例えば連結体が主弁座の弁シート面に対して平行に配置された一枚の板材から構成される従来の流路切換弁と比べて、主弁体(詳しくは、主弁体を構成する各スライド弁体)を弁シート面に近い位置で押すことができ、主弁体の傾きを抑えてスムーズに移動(スライド)させられるので、これによっても、弁漏れを抑えられるとともに、摺動抵抗を抑えられるので、動作性を高めることができる。
【0025】
また、本発明に係る流路切換弁では、主弁体を構成する各スライド弁体は、弁シート面に対して上下動できるように各支持板部に支持されているので、シール性を確保しやすいといった利点もある。
【0026】
上記した以外の、課題、構成、及び作用効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1及び
図2は、本発明に係る流路切換弁としての六方切換弁の一実施形態を示す縦断面図であり、
図1は、第1連通状態(冷房運転時)、
図2は、第2連通状態(暖房運転時)を示す図である。
図3は、
図1のU−U矢視線に従う断面図である。
【0030】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0031】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0032】
図示実施形態の六方切換弁1は、例えば前述した
図7(A)、(B)に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における六方切換弁180として用いられるスライド式のもので、基本的に、シリンダ型の六方弁本体10と、パイロット弁としての単一の電磁式四方パイロット弁90とを備える。なお、本実施形態の六方切換弁1に備えられている6個のポートは、上記六方切換弁180の各ポートpA〜pFに対応させて同一の符号が付されている。
【0033】
[六方弁本体10の構成]
六方弁本体10は、真鍮あるいはステンレス等の金属製とされた筒状の主弁ハウジング11を有し、この主弁ハウジング11に、一端側(上端側)から順次、第1作動室31、第1ピストン21、主弁室12、第2ピストン22、及び第2作動室32が配在されている。前記第1及び第2ピストン21、22にはいずれにも、主弁ハウジング11を気密的に仕切るべく、主弁ハウジング11の内周面にその外周部が圧接するばね付きパッキンが取り付けられている。
【0034】
主弁ハウジング11の上端には、容量可変の第1作動室31を画成する第1ピストン21の上方向への移動を阻止するストッパを兼ねる傘状の上端側蓋部材11Aが気密的に固着され、主弁ハウジング11の下端には、容量可変の第2作動室32を画成する第2ピストン22の下方向への移動を阻止するストッパを兼ねる逆立傘状の下端側蓋部材11Bが気密的に固着されている。上端側蓋部材11A及び下端側蓋部材11Bには、第1作動室31及び第2作動室32に高圧流体(冷媒)を導入・排出するためのポートp11、p12がそれぞれ取り付けられている。
【0035】
前記主弁ハウジング11(の主弁室12)には、合計で6個のポートが設けられている。
【0036】
詳しくは、前記主弁室12の左部中央には、その表面(右面)が平坦な弁シート面とされた例えば金属製の第1主弁座(弁シート)13がろう付け等により主弁ハウジング11(の内周)に気密的に固着され、その第1主弁座13の弁シート面に、左方に向けて延びる管継手からなる3個のポート(上端側から順次、ポートpB、ポートpA、ポートpF)が縦並びで(軸線O方向に並んで)略等間隔に開口せしめられている。
【0037】
また、前記主弁室12の右部中央(第1主弁座13に対向する位置、言い換えれば、軸線Oに対して第1主弁座13の反対側の位置)には、その表面(左面)が平坦な弁シート面とされた例えば金属製の第2主弁座(弁シート)14がろう付け等により主弁ハウジング11(の内周)に気密的に固着され、その第2主弁座14の弁シート面に、右方に向けて延びる管継手からなる3個のポート(上端側から順次、ポートpC、ポートpD、ポートpE)が縦並びで(軸線O方向に並んで)略等間隔に開口せしめられている。
【0038】
第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とは、対向する位置(軸線Oに対して反対側)に設定されるとともに、本例では、第1主弁座13及び第2主弁座14に設けられた各ポートpA〜pFの口径は略同径に設定されている。
【0039】
前記主弁室12内には、両側面(左面及び右面)が前記第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面にそれぞれ摺動自在に対接せしめられる、レーストラック形の環状シール面を持つ断面矩形状のスライド式の主弁体15が軸線O方向(上下方向)に移動可能に配在されている。
【0040】
前記主弁体15は、例えば合成樹脂製とされ、第1主弁座13側(左側)の第1スライド弁体15Aと、第2主弁座14側(右側)の第2スライド弁体15Bとが、背面合わせの状態で配在されて構成されている。
【0041】
第1スライド弁体15Aの左面側(第2スライド弁体15B側とは反対側)には、第1主弁座13の弁シート面に開口する3個のポートのうちの隣り合う2個のポート(ポートpBとポートpA、あるいは、ポートpAとポートpF)を選択的に連通させ得るような大きさの椀状窪みからなる第1Uターン通路(連通路)16Aが開設されている。また、第2スライド弁体15Bの右面側(第1スライド弁体15A側とは反対側)には、第2主弁座14の弁シート面に開口する3個のポートのうちの隣り合う2個のポート(ポートpCとポートpD、あるいは、ポートpDとポートpE)を選択的に連通させ得るような大きさの椀状窪みからなる第2Uターン通路(連通路)16Bが開設されている。
【0042】
一方、第2スライド弁体15Bの左面(第1スライド弁体15Aに対向する面)には、該第2スライド弁体15Bの外形とほぼ同形の筒状部15bが(左向きに)延設され、第1スライド弁体15Aの右面(第2スライド弁体15Bに対向する面)には、該第1スライド弁体15Aの外形(言い換えれば、第2スライド弁体15Bの外形)より若干小さい筒状の嵌合凸部15aが(右向きに)突設されている。前記嵌合凸部15aが前記筒状部15bに(間にOリング18を挟んで)摺動自在に内嵌されることにより、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとは、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向であって第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とが対向する方向)に相互に若干の移動自在、かつ、上下方向(軸線O方向)に一体的に移動自在とされている。
【0043】
なお、第1スライド弁体15Aの嵌合凸部15aと第2スライド弁体15Bの筒状部15bとの配置関係は逆でも良い。つまり、第1スライド弁体15Aに筒状部を設け、第2スライド弁体15Bに嵌合凸部を設け、第1スライド弁体15Aの筒状部に第2スライド弁体15Bの嵌合凸部を内嵌して、当該第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとを一体としても良い。
【0044】
また、図示例では、第1スライド弁体15Aの右面(における嵌合凸部15aより内側の部分)と第2スライド弁体15Bの左面(における嵌合凸部15aより内側の部分)との間に、若干の隙間が形成されるとともに、第1スライド弁体15A(における第1Uターン通路16Aの底部)に、第1Uターン通路16Aと前記隙間とを連通する横孔からなる連通孔16aが設けられており、前記嵌合凸部15aと前記筒状部15bとの間に(具体的には、嵌合凸部15aの外周に設けられた環状溝に)、シール部材としてのOリング18が介装されている。
【0045】
そのため、前記隙間を含む前記Oリング18より内側の部分は、ポート(吐出側高圧ポート)pAから第1Uターン通路16A及び連通孔16aを介して高圧流体(冷媒)が導入される圧力室17とされている。この圧力室17と主弁室12とは、その間に配在された前記Oリング18によりシール(封止)されている。
【0046】
ここでは、
図1〜
図3とともに
図4を参照すればよく分かるように、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向)で視て、第1スライド弁体15Aにおける圧力室17側(右面側)の受圧面積Sbは第1主弁座13側(左面側)の受圧面積Saより大きくされる。
【0047】
より詳しくは、左右方向に対して垂直な平面に対する前記圧力室17の投影面積であって、前記圧力室17内に導入された高圧冷媒によって第1スライド弁体15A(の右面)が左方向の圧力を受ける面の投影面積(受圧面積Sb)が、左右方向に対して垂直な平面に対する前記第1主弁座13側の環状シール面の投影面積であって、ポート(環状シール面の内側)を流れる高圧冷媒によって第1スライド弁体15A(の左面)が右方向の圧力を受ける面の投影面積(受圧面積Sa)より大きくされている。
【0048】
これにより、ポート(吐出側高圧ポート)pAを介して第1Uターン通路16Aに高圧冷媒が導入され、該第1Uターン通路16Aに導入された高圧冷媒の一部が前記連通孔16aを介して圧力室17に充填されたときに、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力(より詳細には、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力と第2Uターン通路16Bを流れる冷媒(低圧冷媒)から受ける圧力との差圧)によって、第2スライド弁体15Bの右面(の環状シール面)が第2主弁座14の弁シート面に押し付けられるとともに、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力と第1Uターン通路16Aを流れる冷媒(高圧冷媒)から受ける圧力との差圧によって、第1スライド弁体15Aの左面(の環状シール面)が第1主弁座13の弁シート面に押し付けられるようになっている。
【0049】
なお、本例では、第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16A及び第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bの略中央に、形状保持のための補強ピン15c、15dが前後方向に向けて架設されている。
【0050】
また、本例では、主弁体15(を構成する第1スライド弁体15A及び第2スライド弁体15B)の外周面(上下面及び前後面)に、後述する連結体25の連結板25A、25Bの矩形開口25d(の上下の端縁部)に嵌合せしめられる窪み面15eが形成されている。
【0051】
前記主弁体15は、前述のように、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが一体となって軸線O方向に移動せしめられ、
図1に示される如くの、ポートpFを開きかつポートpBとポートpAとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させるとともに、ポートpEを開きかつポートpCとポートpDとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させる冷房位置(上端位置)と、
図2に示される如くの、ポートpBを開きかつポートpAとポートpFとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させるとともに、ポートpCを開きかつポートpDとポートpEとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させる暖房位置(下端位置)とを選択的にとり得るようにされている。
【0052】
主弁体15の第1スライド弁体15Aは、移動時以外は3個のポートのうちの2個のポート(ポートpBとポートpA、あるいは、ポートpAとポートpF)の真上に位置し、主弁体15の第2スライド弁体15Bは、移動時以外は3個のポートのうちの2個のポート(ポートpCとポートpD、あるいは、ポートpDとポートpE)の真上に位置し、このときは、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとの間に設けられた圧力室17(に導入された高圧冷媒)からの圧力や圧縮コイルばね19の付勢力によりそれぞれ左右に押圧されて第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面に圧接せしめられている。
【0053】
第1ピストン21と第2ピストン22とは、連結体25により一体移動可能に連結されており、この連結体25に、前記主弁体15の第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが左右方向に若干の摺動自在かつ前後方向及び上下方向での移動はほぼ阻止された状態で嵌合せしめられて支持されている。
【0054】
前記連結体25は、本例では、例えばプレス成形等で作製された、同一寸法及び同一形状の一対の板材で構成されており、各板材が、左右方向に直交するように(言い換えれば、第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面に平行となるように)配置されるとともに、それら一対の板材が、左右方向(弁シート面に直交する方向)で相互に離れて対向配置されている。なお、以下、左側(第1スライド弁体15A側)に配置される板材を連結板25A、右側(第2スライド弁体15B側)に配置される板材を連結板25Bと称する。
【0055】
より詳しくは、
図1〜
図3とともに
図5を参照すればよく分かるように、各連結板25A、25Bは、その中心から左右方向に延びる中心線(対称線)に対して対称な縦長矩形状の板材で構成されている。各連結板25A、25Bの(上下方向の)中央部は、前記主弁体15(の第1スライド弁体15A、第2スライド弁体15B)を軸線O方向に一体的に移動自在に係合支持するための支持板部25aとされ、この支持板部25a(つまり、連結板25A、25Bの中央部)に、主弁体15の第1スライド弁体15A、第2スライド弁体15Bが左右側から摺動自在に嵌合せしめられる例えば角部が丸み付け(R付け)された矩形開口25dが形成されている。主弁体15の第1スライド弁体15A、第2スライド弁体15Bは、第1及び第2ピストン21、22の往復移動に伴って前記連結体25の各連結板25A、25Bの矩形開口25d部分に押動されて冷房位置(上端位置)と暖房位置(下端位置)との間を行き来するようにされている。本例では、各連結板25A、25Bの矩形開口25d部分が、主弁体15の第1スライド弁体15A、第2スライド弁体15Bにおける第1主弁座13、第2主弁座14の弁シート面寄りの部位を押動するように、前記各連結板25A、25B(の支持板部25a)が(左右方向で)離間配置される。
【0056】
各連結板25A、25Bにおける前記支持板部25aの上下は、第1ピストン21又は第2ピストン22まで延在する接続板部25bとされ、この接続板部25b(言い換えれば、矩形開口25dの上下)に、より詳しくは、主弁体15が冷房位置(上端位置)をとるときに第1主弁座13の下側のポートpFと第2主弁座14の下側のポートpEの略真横に位置する部位に(ポートpF、pEと略同径の)円形開口25eが形成されるとともに、主弁体15が暖房位置(下端位置)をとるときに第1主弁座13の上側のポートpBと第2主弁座14の上側のポートpCの略真横に位置する部位に(ポートpB、pCと略同径の)円形開口25eが形成されている。
【0057】
また、各連結板25A、25B(の接続板部25b)の上下の端部は、対向配置される連結板25B、25A側に向けて略90°折り曲げられて形成された取付脚部25cとされ、その取付脚部25cに、当該連結板25A、25Bを第1ピストン21又は第2ピストン22に連結するボルト30を挿通するためのねじ穴29が螺設されている(特に、
図5(C)参照)。
【0058】
また、本例では、組立性を考慮して(後で詳述)、各連結板25A、25Bの取付脚部25cの端部に、対向配置される連結板25B、25Aに対して当該連結板25A、25B(の左右方向及び前後方向の位置)を当接させて位置合わせする(すなわち、一対の連結板25A、25Bを相互に位置合わせする)ための突き合わせ段部25fが形成されている(特に、
図5(C)参照)。
【0059】
本例では、前記したように、各連結板25A、25Bは、同一寸法及び同一形状の板材で構成されているので、2枚の連結板25A、25Bを左右方向で対向して配置するとともに、前記突き合わせ段部25fを介して逆向きで(詳しくは、上下逆さまにして)組み合わせて(相互に位置合わせした状態で)配置し、各連結板25A、25Bにおける支持板部25aの矩形開口25dに前記主弁体15の第1スライド弁体15A及び第2スライド弁体15Bを(それぞれ左右方向から)配置する。そして、ボルト30を介して各取付脚部25cを前記第1ピストン21又は第2ピストン22に固定することで、前記主弁体15の第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが、左右方向に若干の摺動自在かつ前後方向及び上下方向での移動はほぼ阻止された状態で当該連結体25に嵌合せしめられる。
【0060】
連結体25(の一対の連結板25A、25B)に嵌合されて支持された主弁体15は、第1及び第2ピストン21、22の往復移動に伴って前記連結体25の連結板25A、25Bにおける矩形開口25dの上端縁部又は下端縁部に押動されて(ここでは、主弁体15の第1スライド弁体15A及び第2スライド弁体15Bの上下面が押圧されて)冷房位置(上端位置)と暖房位置(下端位置)との間を行き来するようにされている。
【0061】
[六方弁本体10の動作]
次に、上記した如くの構成を有する六方弁本体10の動作を説明する。
【0062】
主弁ハウジング11内に配在された主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図2に示される如くの第2連通状態)にあるときにおいて、後述する四方パイロット弁90を介して、第2作動室32を吐出側高圧ポートであるポートpAに連通させるとともに、第1作動室31を吸入側低圧ポートであるポートpDに連通させると、第2作動室32に高温高圧の冷媒が導入されるとともに、第1作動室31から高温高圧の冷媒が排出される。そのため、主弁室12の他端側(下端側)の第2作動室32の圧力が主弁室12の一端側(上端側)の第1作動室31の圧力より高くなり、
図1に示される如くに、第1、第2ピストン21、22及び主弁体15が上方に移動して第1ピストン21が上端側蓋部材11Aに接当係止され、主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図1に示される如くの第1連通状態)をとる。
【0063】
これにより、ポートpAとポートpBとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpFとが(主弁室12を介して)連通せしめられるので、
図7(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、冷房運転が行われる。
【0064】
主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図1に示される如くの第1連通状態)にあるときにおいて、後述する四方パイロット弁90を介して、第1作動室31を吐出側高圧ポートであるポートpAに連通させるとともに、第2作動室32を吸入側低圧ポートであるポートpDに連通させると、第1作動室31に高温高圧の冷媒が導入されるとともに、第2作動室32から高温高圧の冷媒が排出される。そのため、主弁室12の一端側(上端側)の第1作動室31の圧力が主弁室12の他端側(下端側)の第2作動室32の圧力より高くなり、
図2に示される如くに、第1、第2ピストン21、22及び主弁体15が下方に移動して第2ピストン22が下端側蓋部材11Bに接当係止され、主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図2に示される如くの第2連通状態)をとる。
【0065】
これにより、ポートpAとポートpFとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpBとが(主弁室12を介して)連通せしめられるので、
図7(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転が行われる。
【0066】
[四方パイロット弁90の構成]
パイロット弁としての四方パイロット弁90は、その構造自体はよく知られているもので、
図6(A)、(B)に拡大図示されている如くに、基端側(左端側)外周に電磁コイル91が外嵌固定された円筒状のストレートパイプからなる弁ケース92を有し、該弁ケース92に、基端側から順次、吸引子95、圧縮コイルばね96、プランジャ97が直列的に配在されている。
【0067】
弁ケース92の左端部は、吸引子95の鍔状部(外周段丘部)に溶接等により密封接合されており、吸引子95は、通電励磁用の電磁コイル91の外周を覆うカバーケース91Aにボルト92Bにより締結固定されている。
【0068】
一方、弁ケース92の右端開口部には、高圧冷媒を導入するための細管挿着口(高圧導入ポートa)を有するフィルタ付き蓋部材98が溶接、ろう付け、かしめ等により気密的に取着されており、蓋部材98とプランジャ97と弁ケース92とで囲まれる領域が弁室99となっている。弁室99には、蓋部材98の細管挿着口(高圧導入ポートa)に気密的に挿着された可撓性を有する高圧細管#aを介して前記ポート(吐出側高圧ポート)pAから高温高圧の冷媒が導入されるようになっている。
【0069】
また、弁ケース92におけるプランジャ97と蓋部材98との間には、その内端面が平坦な弁シート面とされた弁座93がろう付け等により気密的に接合されており、この弁座93の弁シート面(内端面)には、先端側(右端側)から順次、前記した六方弁本体10の第1作動室31に細管#bを介して接続されるポートb、ポート(吸入側低圧ポート)pDに細管#cを介して接続されるポートc、第2作動室32に細管#dを介して接続されるポートdが弁ケース92の長手方向(左右方向)に沿って所定間隔をあけて横並びに開口せしめられている。
【0070】
吸引子95に対向配置されたプランジャ97は、基本的には円柱状とされ、弁ケース92内を軸方向(弁ケース92の中心線Lに沿う方向)に摺動自在に配在されている。そのプランジャ97の吸引子95側とは反対側の端部には、弁体94をその自由端側で厚み方向に摺動可能に保持する弁体ホルダ94Aがその基端部を取付具94Bと共に圧入、かしめ等により取付固定されている。この弁体ホルダ94Aには、弁体94を弁座93に押し付ける方向(厚み方向)に付勢する板ばね94Cが取り付けられている。弁体94は、弁座93の弁シート面に開口するポートb、c、d間の連通状態を切り換えるべく、当該弁座93の弁シート面に対接せしめられた状態で、弁座93の弁シート面をプランジャ97の左右方向の移動に伴って摺動するようになっている。
【0071】
また、弁体94には、弁座93の弁シート面に開口する3個のポートb〜dのうちの隣り合うポートb−c間、c−d間を選択的に連通させ得るような大きさの凹部94aが設けられている。
【0072】
また、圧縮コイルばね96は、吸引子95とプランジャ97との間に縮装されてプランジャ97を吸引子95から引き離す方向(図では、右方)に付勢するようになっているが、本例では、弁座93(の左端部)が、プランジャ97の右方への移動を阻止するストッパとされている。なお、このストッパの構成としては、その他の構成を採用し得ることは言うまでも無い。
【0073】
なお、上記四方パイロット弁90は、取付具92Aを介して六方弁本体10の背面側等の適宜の箇所に取付けられる。また、上記四方パイロット弁90では、吸入側低圧ポートであるポートpDに細管#cを接続しているが、中圧冷媒が流されるポートpCに細管#cを接続してもよい。
【0074】
[四方パイロット弁90の動作]
上記した如くの構成とされた四方パイロット弁90においては、電磁コイル91への通電OFF時には、
図1及び
図6(A)に示される如くに、プランジャ97は圧縮コイルばね96の付勢力により、その右端が弁座93に接当する位置まで押し動かされている。この状態では、弁体94がポートbとポートc上に位置し、その凹部94aによりポートbとポートcが連通するとともに、ポートdと弁室99とが連通するので、ポート(吐出側高圧ポート)pAに流入する高圧流体が高圧細管#a→弁室99→ポートd→細管#d→ポートp12を介して第2作動室32に導入されるとともに、第1作動室31の高圧流体がポートp11→細管#b→ポートb→凹部94a→ポートc→細管#c→ポート(吸入側低圧ポート)pDへと流れて排出される。
【0075】
それに対し、電磁コイル91への通電をONにすると、
図2及び
図6(B)に示される如くに、プランジャ97は吸引子95の吸引力により、その左端が吸引子95に接当する位置まで(圧縮コイルばね96の付勢力に抗して)引き寄せられる。このときには、弁体94がポートcとポートd上に位置し、その凹部94aによりポートcとポートdが連通するとともに、ポートbと弁室99とが連通するので、ポート(吐出側高圧ポート)pAに流入する高圧流体が高圧細管#a→弁室99→ポートb→細管#b→ポートp11を介して第1作動室31に導入されるとともに、第2作動室32の高圧流体がポートp12→細管#d→ポートd→凹部94a→ポートc→細管#c→ポート(吸入側低圧ポート)pDへと流れて排出される。
【0076】
したがって、電磁コイル91への通電をOFFにすると、六方弁本体10の主弁体15が暖房位置(第2連通状態)から冷房位置(第1連通状態)に移行し、前記した如くの流路切換が行われる一方、電磁コイル91への通電をONにすると、六方弁本体10の主弁体15が冷房位置(第1連通状態)から暖房位置(第2連通状態)に移行し、前記した如くの流路切換が行われる。
【0077】
このように、本実施形態の六方切換弁1では、電磁式四方パイロット弁90への通電をON/OFFで切り換えることで、六方切換弁1内を流通する高圧流体(高圧部分であるポートpAを流れる流体)と低圧流体(低圧部分であるポートpDを流れる流体)との差圧を利用して六方弁本体10を構成する主弁体15を主弁室12内で移動させることにより、主弁ハウジング11に合計で6個設けられたポート間の連通状態が切り換えられ、
図7(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転から冷房運転への切り換え、及び、冷房運転から暖房運転への切り換えを行うことができる。
【0078】
[六方切換弁(流路切換弁)1の作用効果]
以上の説明から理解されるように、本実施形態の六方切換弁1においては、主弁室12に、ポートpB、ポートpA、及びポートpFが軸線O方向に並んで開口せしめられるとともに、ポートpB、ポートpA、及びポートpFとは軸線Oに対して反対側に、ポートpC、ポートpD、及びポートpEが軸線O方向に並んで開口せしめられ、主弁体15は、前記3個のポート(ポートpB、ポートpA、及びポートpF、並びに、ポートpC、ポートpD、及びポートpE)を選択的に連通させる第1及び第2Uターン通路16A、16Bがそれぞれに設けられた一対の第1及び第2スライド弁体15A、15Bが主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)の弁シート面に対して直交する方向で背面合わせの状態で配在されて構成されており、主弁室12内で主弁体15を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされている。そのため、従来のスライド式主弁体を使用した流路切換弁と比べて、ポートが設けられる主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)や主弁体15を(軸線O方向で)短くできるので、主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)の弁シート面や主弁体15のシール面の面精度(平面度)が確保しやすくなり、弁漏れを抑えられるとともに、流体(例えば高圧流体(冷媒))が第1Uターン通路16Aを介して流されるので、圧力損失を低減することもできる。
【0079】
また、本実施形態では、六方弁本体10内を流れる流体(例えば低圧冷媒)が第2Uターン通路16Bを介して流されるとともに、流体(例えば中圧冷媒)が主弁室12内を左右方向に(ストレート状に)流されるので、これによっても、圧力損失を低減することが可能となる。
【0080】
上記に加えて、本実施形態の六方切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、高温高圧の冷媒が流される第1Uターン通路16Aと低温低圧の冷媒が流される第2Uターン通路16Bが、例えば金属製の主弁座を介することなく比較的大きく離されて設けられるので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが金属製の主弁座を介して近接した状態で流される従来のものに比べて、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0081】
また、本実施形態の六方切換弁1では、連結体25が、主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)の弁シート面に対して平行に且つ前記主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)の弁シート面に対して直交する方向(弁シート面の高さ方向)に離れて配置された一対の支持板部25aを有し、その一対の支持板部25aの各々に、一対の第1及び第2スライド弁体15A、15Bの各々がピストン21、22の往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられる。そのため、例えば連結体が主弁座の弁シート面に対して平行に配置された一枚の板材から構成される従来の流路切換弁と比べて、主弁体15(詳しくは、主弁体15を構成する各第1及び第2スライド弁体15A、15B)を弁シート面に近い位置で押すことができ、主弁体15の傾きを抑えてスムーズに移動(スライド)させられるので、これによっても、弁漏れを抑えられるとともに、摺動抵抗を抑えられるので、動作性を高めることができる。
【0082】
また、本実施形態の六方切換弁1では、主弁体15を構成する各第1及び第2スライド弁体15A、15Bは、弁シート面に対して上下動できるように各支持板部25aに支持されているので、シール性を確保しやすいといった利点もある。
【0083】
なお、上記実施形態では、主弁ハウジング11の軸線Oに対して反対側にそれぞれ3個ずつ合計6個のポートpA〜pFが開口せしめられた六方切換弁を例示して説明したが、主弁ハウジング11(の主弁室12)に設けられるポートの数や位置、主弁ハウジング11の構成や形状、主弁ハウジング11(の主弁室12)内に配在される主弁体15の構成や形状等は、図示例に限られないことは勿論である。
【0084】
また、上記実施形態では、連結体25として、それぞれが矩形開口25d付きの支持板部25aを有する、同一寸法及び同一形状の一対の板材で構成される例を説明したが、前記連結体25は、例えば一枚の板材を折り曲げ等して、左右方向で離間して対向配置された一対の支持板部25a等を形成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、連結体25を構成する各連結板25A、25Bにおける接続板部25bが、支持板部25aと同様に(左右方向で)離間して配置されているが、各連結板25A、25Bにおける接続板部25bの一部もしくは全部を相互に近づく方向に変形させて対接させてもよいことは当然である。
【0085】
また、上記実施形態の六方切換弁1では、四方パイロット弁90を用いて主弁室12内で主弁体15を駆動する構成について説明したが、例えば四方パイロット弁90に代えてモータを用いて主弁室12内で主弁体15を駆動する構成でも良い。
【0086】
また、本実施形態の六方切換弁1は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。