(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気テープに張力が与えられた状態において、磁気ヘッドに接触している前記磁気テープを、前記磁気テープを損耗させることなく前記磁気ヘッドから離すことが可能な形状を成すホルダと、
前記磁気テープを前記磁気ヘッドから離した状態において、前記磁気テープが接触していた前記磁気ヘッドの接触面に接触可能なクリーニング部と
を含むクリーニングアームと、
前記磁気テープに張力が与えられた状態において、前記磁気ヘッドに接触している前記磁気テープを、前記磁気テープを損耗させることなく前記磁気ヘッドから離すように、前記クリーニングアームを駆動し、
前記磁気テープを前記磁気ヘッドから離した状態において、前記磁気テープが接触していた前記磁気ヘッドの前記接触面に前記クリーニング部を接触させるように前記クリーニングアームを駆動する
クリーニングアーム駆動部と
を備え、
前記ホルダは、前記クリーニングアームの一端に配置され、前記磁気テープを損耗させることなく摺動可能な滑らかな操作面を有し、
前記クリーニング部は、前記操作面の裏側に配置され、
前記クリーニングアーム駆動部は、
前記磁気ヘッドの前記接触面と反対側の側方から、前記操作面により前記磁気テープを押し離し、
前記クリーニング部を、前記接触面に対向する位置に移動させ、前記接触面に接触させ、
前記クリーニングアーム駆動部は、動力源から提供された他の駆動機構と共通な駆動力により前記クリーニングアームを駆動し、
前記クリーニングアーム駆動部は、表面に突起が形成され、前記動力源から提供された駆動力により、前記磁気テープが搬送される経路面に垂直な第1の回転軸の周りに回転可能なカムギアを備え、
前記クリーニングアームは、
前記クリーニングアームの前記一端の反対側にある他端が、前記第1の回転軸に平行な第2の回転軸の周りに回転可能に係止され、
前記カムギアが回転させられると前記突起に係合し、前記突起に係合した状態において、前記カムギアが更に回転させられると、前記クリーニング部が、前記接触面に対向する位置に移動させられ、前記接触面に接触させられ、
前記カムギアは、
前記磁気テープのスレッディングにおいて回転することにより駆動力を伝達すると共に、
前記スレッディングにおける回転範囲を超えて回転することにより、前記クリーニング部が、前記接触面に対向する位置に移動させられ、前記接触面に接触させられる
磁気ヘッドクリーニング機構。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ装置においてデータを読み書きする際には、磁気テープを磁気ヘッド上で走行させる。この際、磁気ヘッドや磁気テープが摩耗し、磁気ヘッドの表面に摩耗粉が溜まる。摩耗粉は、磁気ヘッドにおけるデータ読み書きに関する性能を低下させる。この性能低下は、磁気ヘッドをブラシ等でクリーニング(清掃)することによって回復可能である。磁気ヘッドのクリーニングは、データの読み書き中に磁気ヘッドの性能低下が感知された際に、オンデマンドで行われることが多い。しかしながら、磁気テープをカートリッジへ格納した(アンスレッドした)状態で行う場合には、データの読み書き中に磁気ヘッドの性能低下が感知された際に、データの読み書きを比較的長い時間中断して磁気ヘッドのクリーニングを行わなければならない。そこで、磁気ヘッドのクリーニングは、磁気テープをカートリッジから引き出した(スレッドした)状態においても実行可能であることが望ましい。尚、アンスレッドする動作とスレッドする動作とを合わせて、「スレッディング」動作と称する。スレッディング動作を行う機構を「スレッディング機構」と称する。
【0003】
一方、磁気ヘッドの摩耗を軽減して、磁気ヘッドの寿命を延ばすためには、データの読み書きを行わない磁気テープの走行時(データの頭出しや磁気テープの取り出しのための巻き戻し等)には、磁気テープを磁気ヘッドから浮かせる(リフトする)ことが望ましい。又、磁気テープの長時間の停止時(磁気テープの一時停止等)に磁気ヘッドと磁気テープとの吸着を抑止して、磁気ヘッド及び磁気テープの寿命を延ばすためにも、磁気テープの停止時には、磁気テープを磁気ヘッドからリフトすることが望ましい。尚、磁気テープを磁気ヘッドからリフトする機構を「テープリフタ機構」と称する。
【0004】
ブラシにより磁気ヘッドをクリーニングする技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の磁気ヘッド清掃機構は、固定歯車と、アームと、遊び歯車と、ブラシ駆動歯車と、回転ブラシとを含む。固定歯車は、磁気テープの走行面に対して磁気ヘッド側に取り付けられる。アームは、固定歯車を中心に回転する。遊び歯車は、固定歯車と噛み合うようにアームに回転可能に取り付けられ、アームの移動時に回転する。ブラシ駆動歯車は、遊び歯車と噛み合うようにアームに回転可能に取り付けられる。回転ブラシは、ブラシ駆動歯車の回転軸に取り付けられ、外周の一部を清掃面とする。上記構成の結果、特許文献1の磁気ヘッド清掃機構では、アームの回転により、回転ブラシが自転しながら磁気ヘッドの周りを公転する。そして、回転ブラシは、磁気ヘッドの表面をクリーニングする。
【0005】
ブラシにより磁気ヘッドをクリーニングする技術の別の一例が、特許文献2に開示されている。特許文献2の磁気ヘッドクリーニング機構は、スレッディングアームと、磁気ヘッドと、ブラシリンクアームと、カムギアとを含む。スレッディングアームは、リーダブロックをリーダピンと係合させると共に、リーダピンを保持したリーダブロックを牽引する。ブラシリンクアームは、先端にブラシを有し、回転可能に支持される。カムギアは、磁気テープの搬送経路であるスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に設置され、スレッディングアームを駆動する。ブラシリンクアームは、常態においてスレッダ軌道よりも磁気ヘッド側に位置する。ブラシリンクアームは、リーダブロックがリーダピンの近傍まで搬送された際には、カムギアの回転と連動して回転し、ブラシをスレッダ軌道上にて磁気ヘッドと当接させる。上記構成の結果、特許文献2の磁気ヘッドクリーニング機構では、カムギアの回転により、ブラシが磁気ヘッドの表面をクリーニングする。
【0006】
ブラシにより磁気ヘッドをクリーニングする技術の更に別の一例が、特許文献3乃至8に開示されている。
【0007】
特許文献1乃至8の技術では、磁気ヘッドクリーニング機構は、磁気テープ装置にスレッドされた磁気テープを磁気ヘッドからリフトする機能を持たないか、又は磁気テープに張力(テンション)が与えられている状態(ロード状態)では機能しない。そのため、特許文献1乃至8の技術では、磁気ヘッドをクリーニングする際に、磁気テープをアンスレッドするか、又は磁気テープを弛緩させる必要がある。しかしながら、近年の磁気テープ装置では、磁気テープをすぐに走行させられるように、又は磁気テープが搬送経路から外れて付近の部品により損傷されないように、磁気テープには常に張力が与えられている。従って、特許文献1乃至8の技術には、磁気テープが磁気テープ装置にスレッドされた状態において、ヘッドをクリーニングできないという問題点がある。
【0008】
磁気テープをリフトする技術の一例が、特許文献9及び特許文献10に開示されている。特許文献9及び特許文献10の技術では、ローテータ又はラックピニオンにより磁気テープをリフトする。しかしながら、特許文献9及び特許文献10の技術は、磁気テープをリフトする技術であり、磁気ヘッドのクリーニングを考慮しておらず、専用のテープリフタ機構を必要とする。
【0009】
磁気テープをリフトする技術の別の一例が、特許文献11及び特許文献12に開示されている。特許文献11及び特許文献12の技術では、アクチュエータに接続されたテープクリーニング手段により磁気テープをリフトする。しかしながら、特許文献11及び特許文献12の技術では、清掃対象が磁気テープであり、磁気ヘッドをクリーニングできない。
【0010】
磁気ヘッドをクリーニングする際に磁気テープをリフトする技術の一例が、特許文献13に開示されている。特許文献13の情報記録システムは、記録テープと、磁気ヘッドと、テープ離隔機構と、クリーニング装置とを含む。記録テープは、ケース内に設けられた一対のリールの回転によって、ケース内において走行させられる。テープ離隔機構は、記録テープを磁気ヘッドから厚み方向に離隔させる。クリーニング装置は、記録テープが磁気ヘッドから離隔されている状態において、供給リールに巻き取られたクリーニングテープを巻き出しつつ、クリーニングテープにより磁気ヘッドをクリーニングする。上記構成の結果、特許文献13の情報記録システムは、磁気テープをアンスレッドすることなく磁気ヘッドをクリーニングする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1の実施形態)
本実施形態における構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態における磁気テープ装置の構成の一例を示す模式図である。より具体的には、
図1(A)はクリーニングの待機状態を、
図1(B)は磁気テープのリフト状態を、
図1(C)はクリーニングの実行状態を表す、磁気テープ装置の模式的な透視平面図である。尚、
図1以降の各図において、磁気テープ装置の奥行き方向を「X軸方向」、幅方向を「Y軸方向」、厚み方向を「Z軸方向」(
図1では紙面上向き)と称することとするが、空間における磁気テープ装置の配置は限定されない。
【0020】
本実施形態における磁気テープ装置950は、磁気ヘッド150と、クリーニングアーム450と、クリーニングアーム駆動部550とを含む。
【0021】
磁気ヘッド150は、磁気テープ850に対して、データの読み書きを行う。
【0022】
クリーニングアーム450は、ホルダ350と、クリーニング部250とを含む。
【0023】
ホルダ350は、磁気テープ850に張力が与えられた状態において、磁気ヘッド150に接触している磁気テープ850を、磁気テープ850を損耗させることなく磁気ヘッド150から離すことが可能な形状を成す。例えば、ホルダ350は、クリーニングアーム450の一端に配置され、磁気テープ850を損耗させることなく摺動可能な滑らかな操作面351を有する。
【0024】
クリーニング部250は、磁気テープ850を磁気ヘッド150から離した状態において、磁気テープ850が接触していた磁気ヘッド150の接触面151に接触可能である。例えば、クリーニング部250は、操作面351の裏側に配置される。クリーニング部250は、例えば、ブラシ又は不織布である。
【0025】
クリーニングアーム駆動部550は、クリーニングアーム450を駆動する。ここで、クリーニングアーム駆動部550は、動力源(モータ等)から提供された、他の駆動機構(スレッディング機構等)と共通な駆動力により、クリーニングアーム450を駆動してもよい。あるいは、クリーニングアーム駆動部550は、動力源から提供された、他の駆動機構と独立な駆動力により、クリーニングアーム450を駆動してもよい。
【0026】
図1を再び参照して、本実施形態における動作について説明する。
【0027】
クリーニングアーム駆動部550は、磁気テープ850に張力が与えられた状態において、磁気ヘッド150に接触している磁気テープ850を、磁気テープ850を損耗させることなく磁気ヘッド150から離すように、クリーニングアーム450を駆動する。例えば、クリーニングアーム駆動部550は、磁気ヘッド150の接触面151と反対側の側方から、操作面351により磁気テープ850を押し離す(
図1(B))。
【0028】
そして、クリーニングアーム駆動部550は、磁気テープ850を磁気ヘッド150から離した状態において、磁気テープ850が接触していた磁気ヘッド150の接触面151にクリーニング部250を接触させるようにクリーニングアーム450を駆動する。例えば、クリーニングアーム駆動部550は、クリーニング部250を、接触面151に対向する位置に移動させ、接触面151に接触させる(
図1(C))。
【0029】
クリーニングアーム450は、磁気ヘッド150のクリーニングを伴わないテープリフタ機能として用いられてもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態における磁気テープ装置950では、磁気テープ850にテンションが与えられたスレッド状態(磁気テープ850が磁気テープ装置950内に巻き取られた状態)において、クリーニングアーム450が駆動される。そのため、磁気テープ850をアンスレッド(磁気テープ850が磁気テープ装置950内に巻き取られていない状態にする)したり、磁気テープ850のテンションを緩めたりすることなく、クリーニングアーム450により、磁気テープ850を磁気ヘッド150からリフトする(離す)ことができる。これによって、磁気テープ850の高速走行状態又は停止状態を維持したままで、磁気ヘッド150をクリーニングすることができる。しかも、磁気テープ装置950では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とは、単純な構造を有する一体なクリーニングアーム450を用いて実現される。従って、本実施形態における磁気テープ装置950には、単純な機構により磁気テープをアンスレッドすることなく磁気ヘッドのクリーニングを行うことができるという効果がある。
【0031】
又、本実施形態における磁気テープ装置950では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とは、一体なクリーニングアーム450を用いて実現される。そして、クリーニングアーム駆動部550は、テープリフタ機能と磁気ヘッドクリーニング機能とを実現するために、一体なクリーニングアーム450を駆動すればよい。そのため、磁気テープ装置950では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とが独立した駆動機構を有する必要が無い。従って、本実施形態における磁気テープ装置950には、製造コストの増加や、装置サイズの増大を抑制できるという効果がある。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態を基本とする、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態における磁気テープ装置は、スレッディング機構を利用して磁気ヘッドをクリーニングする。
【0032】
本実施形態における構成について説明する。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施形態における磁気テープ装置の構成の一例を示す斜視図である。より具体的には、
図2は、本実施形態における、カバーが外された磁気テープ装置900を斜め上方から見た斜視図である。
図2は、磁気テープ装置900に磁気テープカートリッジが挿入されていない状態(アンスレッド状態)を示す。
【0034】
図2に示すように、磁気テープ装置900は、装置内磁気テープ巻取りリール901と、カートリッジ内磁気テープ巻取りリール902と、カートリッジロード機構903と、スレッディング機構904と、磁気ヘッド機構905と、磁気ヘッドクリーニング機構906とを含む。
【0035】
図3は、本発明の第2の実施形態における磁気テープ装置の構成の一例を示す斜視図である。より具体的には、
図3は、磁気テープ装置900に磁気テープカートリッジ907が挿入され、磁気テープ800が
図2で示した装置内磁気テープ巻取りリール901(
図3では不図示)に巻き取られた状態(スレッド状態、スレッド完了状態)を示す。
【0036】
磁気テープ装置900は、磁気テープカートリッジ907が挿入されると、カートリッジロード機構903によって磁気テープカートリッジ907を装置内へと搬送する。そして、磁気テープ装置900は、磁気テープカートリッジ907の底部に配置されたギア(不図示)が、カートリッジ内磁気テープ巻取りリール902に含まれるギアに係合するように、磁気テープカートリッジ907をマウントする。
【0037】
スレッディング機構904は、駆動源(モータ等、動力源)の回転駆動力をギア列を介して伝達することにより、スレッディングアーム部品701を、磁気テープ装置900内にマウントされた磁気テープカートリッジ907の内部に移動させる。
【0038】
スレッディングアーム部品701は、磁気テープ800の先端に備えられたピン(不図示)を把持し、続いて、装置内磁気テープ巻取りリール901の中心まで磁気テープ800を牽引しながら移動させられる。装置内磁気テープ巻取りリール901の中心まで牽引された磁気テープ800は、装置内磁気テープ巻取りリール901とカートリッジ内磁気テープ巻取りリール902とが回転させられることによって、磁気テープカートリッジ907内から磁気テープ装置900内へと、又は逆方向へと巻取り及び巻き戻しされる。ここで、磁気テープ800に所定のテンションが与えられるように、装置内磁気テープ巻取りリール901とカートリッジ内磁気テープ巻取りリール902とは、互いに引き合うように連動して回転するように制御される。
【0039】
磁気ヘッド機構905は、磁気テープ800に記録されたデータを読み書きできるように、テンションの与えられた磁気テープ800が磁気ヘッド100(不図示、後述)の接触面に接触するように配置されている。磁気ヘッド機構905は、磁気ヘッド100を磁気テープ800の巻取り方向と垂直に平行移動させることにより、磁気テープ800に複数のデータ列を記録するか又は読み出しを行う。
【0040】
磁気ヘッドクリーニング機構906は、スレッディング機構904と磁気ヘッド機構905との間に配置される。磁気ヘッドクリーニング機構906は、スレッディング機構904の駆動力を利用して、磁気ヘッド清掃部材であるブラシ200(不図示、後述)と、これを保持するホルダ300(不図示、後述)とを移動させる。ブラシ200及びホルダ300は、磁気テープ800が磁気テープ装置900内に巻き取られ、磁気テープ800にテンションが与えられている状態において、磁気テープ800を磁気ヘッド100から離す(リフトする)ように移動する。その移動の結果、ブラシ200及びホルダ300は、磁気テープ800のリフトと磁気ヘッドの清掃とを並行して行う。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施形態における磁気ヘッドクリーニング機構の構成の一例を示す斜め上方から見た斜視図である。より具体的には、
図4は、
図2におけるスレッディング機構904の一部と磁気ヘッドクリーニング機構906とを抽出して
図2と同じ方向から見た要部概観図である。
【0042】
図5は、本発明の第2の実施形態における磁気ヘッドクリーニング機構の構成の一例を示す斜め下方から見た斜視図である。より具体的には、
図5は、
図4をそれと正反対の方向から見た要部概観図である。
【0043】
磁気ヘッドクリーニング機構906は、カムギア700と、ブラシアーム部品400と、カムプレート600とを含む。磁気ヘッドクリーニング機構906は、スレッディング機構904の一部であるベース500に設置される。
【0044】
カムギア700は、磁気テープ800の搬送を行うスレッディングアーム部品701を駆動する。
【0045】
ブラシアーム部品400は、ブラシ200を移動させるリンク機構である。
【0046】
カムプレート600は、ブラシ200の移動をガイドする。
【0047】
ブラシ200は、ホルダ300を介して、ブラシアーム部品400の先端に取り付けられている。
【0048】
ホルダ300は、ブラシ200を保持する部分の背面に、磁気テープ800が損傷することなく摺動可能な、平滑な表面を有する。
【0049】
カムギア700は、ベース500に圧入されたカムギアシャフト501を中心に、上方から見て時計回り及び反時計回りに回転自在に取り付けられている。カムギア700は、駆動源(モータ等、不図示)からの回転力をギア等により伝達されることにより回転する。又、カムギア700は、スレッディングアーム部品701をスレッド側オーバードライブ用バネ702とアンスレッド側オーバードライブ用バネ703とを介して保持する。
【0050】
スレッドストッパ704は、カムギア700が反時計回りに回転した際に、スレッディングアーム部品701が突き当たることによって、スレッド完了位置を規定する。
【0051】
スレッド側オーバードライブ用バネ702は、スレッディングアーム部品701がスレッドストッパ704に突き当たった位置から反時計回りに更に回転(オーバードライブ:スレッディングにおける回転範囲を超えて回転)された際に弾性変形する。これにより、スレッド側オーバードライブ用バネ702は、カムギア700がスレッド完了位置からオーバードライブすることを許容する。
【0052】
アンスレッドストッパ(不図示)は、カムギア700が時計回りに回転した際に、スレッディングアーム部品701が突き当たることによって、アンスレッド完了位置を規定する。
【0053】
アンスレッド側オーバードライブ用バネ703は、スレッディングアーム部品701がアンスレッドストッパに突き当たった位置から時計回りに更に回転(オーバードライブ)された際に弾性変形する。これにより、アンスレッド側オーバードライブ用バネ703は、カムギア700がアンスレッド完了位置からオーバードライブすることを許容する。
【0054】
尚、スレッディングアーム部品701、及び、これにより磁気テープ800を磁気テープカートリッジ907から引出し、牽引する構成の詳細については、スレッディング方式として公知であるため説明を省略する。
【0055】
図6は、
図4においてカムギア700を透過させた上面図である。尚、
図6では、スレッディングアーム部品701、スレッド側オーバードライブ用バネ702、及びアンスレッド側オーバードライブ用バネ703は省略されている。
【0056】
図6に示すように、ブラシアーム部品400は、ネジ409の下部に位置し、ピボットシャフト406によって回転自在に軸支されている。ブラシアーム部品400は、ブラシ退避側バネ408によって、ピボットアーム401を介して退避位置の方向(ピボットシャフト406を中心に上方から見て反時計回り)に押圧されている。
【0057】
ピボットシャフト406は、ベース500に圧入されている。
【0058】
ブラシ退避側バネ408は、ベース500上に設けられたバネ保持部502によって一端を保持される。
【0059】
ブラシアーム押圧部705は、カムギア700の底面側に凸部(突起)として形成されている。ブラシアーム押圧部705は、カムギア700がスレッド完了側の所定位置まで反時計回りにオーバードライブされた際にピボットアーム401を押圧し、ブラシアーム部品400をピボットシャフト406中心に時計回りに回転駆動する。
【0060】
図7は、本発明の第2の実施形態におけるブラシアーム部品の構成の一例を示す斜視図である。
【0061】
図7に示すように、ブラシアーム部品400は、支持側アーム402と、ブラシ側アーム403と、ピボットアーム401とを含む。
【0062】
ブラシ側アーム403は、一端にブラシ200を保持するホルダ300を有する。ブラシ側アーム403は、他端に圧入されたジョイントシャフト404有する。即ち、ブラシアーム部品400は、中間にあるジョイントシャフト404において屈曲可能である。ジョイントシャフト404は、支持側アーム402の一端を回転可能に軸支している。ブラシ側アーム403は、途中(ブラシ側アーム403に対する位置が固定された位置)に圧入されたガイドシャフト405を有する。
【0063】
ガイドシャフト405は、カムプレート600に形成されたカム溝601(
図6)の幅とほぼ同一の外径を持つ円柱形状を成す。そのため、ブラシ側アーム403は、ガイドシャフト405がカム溝601に沿うように移動可能である。尚、カム溝601は、ブラシ200が磁気テープ装置900内の部品を避けて移動し、磁気ヘッド100に当接するような形状を成す。
【0064】
支持側アーム402は、ジョイントシャフト404によってブラシ側アーム403に軸支されていない側の端部を、ピボットシャフト406によって軸支されている。
【0065】
ピボットアーム401は、ピボットシャフト406によって支持側アーム402と同軸に軸支されている。
【0066】
スリーブ407は、ピボットシャフト406の外周に、ピボットシャフト406を中心に回転可能に設置されている。
【0067】
ブラシ退避側バネ408は、スリーブ407の外周に、ピボットシャフト406を中心に回転可能に設置されている。ブラシ退避側バネ408は、一端をベース500上のバネ保持部502(
図6)に、他端をピボットアーム401に保持されている。
【0068】
ピボットシャフト406は、ベース500に圧入されており、上端にネジ穴が設けられている。
図6に示すように、ピボットシャフト406上のネジ穴にはネジ409が螺合され、ピボットアーム401、支持側アーム402、及びブラシ退避側バネ408等は、ネジ409のネジ頭によってピボットシャフト406から外れないよう保持(係止)されている。
【0069】
スプリングシャフト410は、支持側アーム402に圧入されている。スプリングシャフト410は、外周にクリーニング側バネ411を同軸に回転可能に軸支している。
【0070】
Eリング412及びワッシャ413は、スプリングシャフト410上部に設置される。
【0071】
クリーニング側バネ411は、Eリング412及びワッシャ413により、スプリングシャフト410から外れないよう保持されている。クリーニング側バネ411は、一端をピボットアーム401に保持され、他端を支持側アーム402に保持されている。
【0072】
この構成により、カムギア700からピボットアーム401に伝達された押圧力は、クリーニング側バネ411の復元力を介して支持側アーム402に伝達される。そのため、ピボットアーム401と支持側アーム402とは、連動して一体として駆動される。又、支持側アーム402の駆動力は、ジョイントシャフト404を介してブラシ側アーム403に伝達される。そのため、ブラシ側アーム403は、支持側アーム402と連動して駆動される。
【0073】
クリーニング側バネ411は、ガイドシャフト405がカム溝601の端部まで移動され突き当たった状態から更に駆動力を加えられた際に弾性変形し、ブラシアーム部品400がロックすることを回避する。この際のクリーニング側バネ411の復元力は、ガイドシャフト405をカム溝601の端部との接触部分に対して押圧するように働く。
【0074】
本実施形態における動作について説明する。
【0075】
図8乃至12は、本発明の第2の実施形態における磁気ヘッドクリーニング機構の動作を説明する図である。より具体的には、
図8乃至12は、時間経過に伴う磁気ヘッドクリーニング機構906の動作を示す。尚、
図8乃至12では、簡単のため、カムギア700については透過するように表示し、カムプレート600についてはカム溝601の外形のみを表示し、ベース500についてはバネ保持部502のみを表示することとする。又、スレッディングアーム部品701、スレッド側オーバードライブ用バネ702、アンスレッド側オーバードライブ用バネ703、スレッドストッパ704等の、磁気テープ装置900の他の部品の表示を省略することとする。
図8乃至12における磁気テープ800の成す曲線は、磁気テープ800が搬送される経路を示す。即ち、磁気テープ800が搬送される経路面は、Z軸に垂直である。
【0076】
図8は、磁気ヘッドクリーニング機構906の待機状態を示す。待機状態では、磁気テープ800を磁気テープカートリッジ907から牽引してきたスレッディングアーム部品701がスレッドストッパ704に接触し、スレッド動作が完了している。
【0077】
図8に示すように、待機状態では、カムギア700に形成されたブラシアーム押圧部705とピボットアーム401とは接触していない。又、ブラシアーム部品400は、ブラシ退避側バネ408の復元力によって退避位置に保持されている。
【0078】
図9は、
図8に示した待機状態から、カムギア700が反時計回りにオーバードライブされ、カムギア700のブラシアーム押圧部705とピボットアーム401の一端とが接触した時点を示す。
【0079】
図10は、
図9に示した状態から、カムギア700が更に反時計回りにオーバードライブされ、カムギア700のブラシアーム押圧部705がピボットアーム401の一端を押圧して回転駆動している時点を示す。この時点では、回転駆動力がクリーニング側バネ411を介して支持側アーム402及びブラシ側アーム403へ伝達され、カム溝601により規定される方向に沿って、ブラシ200及びホルダ300が移動している。
【0080】
この時点では、ホルダ300の移動経路上には磁気テープ巻取りモータ(不図示)によって所定のテンションが与えられた磁気テープ800が存在する。そのため、ホルダ300は、ブラシ保持部の背面側により磁気テープ800をテンションに逆らって押しながら移動する。その結果、
図10に示すように、磁気テープ800は、磁気ヘッド100から離された状態になっている。
【0081】
図11は、
図10に示した状態から、カムギア700が更に反時計回りにオーバードライブされ、ブラシ側アーム403のガイドシャフト405がカム溝601の端部に接触した時点を示す。
【0082】
図11に示すように、この時点では、ブラシ200がクリーニング位置に到達し、磁気ヘッド100に正面から当接している。この状態において、磁気ヘッド100がZ軸方向に平行移動されることにより、磁気ヘッド100がクリーニングされる。磁気テープ800は、ホルダ300の移動中にも磁気テープ巻取りモータ(不図示)により生成された所定のテンションによって、ホルダ300の背面に接触しながら、テンションを保ったままリフト位置へ到達する。
【0083】
図12は、
図11に示した状態から、カムギア700が更に反時計回りにオーバードライブされた時点を示す。
【0084】
この時点では、ガイドシャフト405がカム溝601の端部に突き当たっているので移動できないため、カムギア700から伝達される駆動力は、クリーニング側バネ411の弾性変形に使われる。その結果、カムギア700がクリーニング位置を超えて回転し過ぎた場合においても、カムギア700及びブラシアーム部品400がロック又は破損することを防止する。又、クリーニング側バネ411の復元力は、支持側アーム402をブラシ駆動方向に回転させる方向に働く。その結果、支持側アーム402とジョイントシャフト404との間、又はガイドシャフト405とカム溝601との間に生じるガタが抑制される。
【0085】
磁気テープ800は、
図12に示した状態を維持した状態において、停止又は高速走行させることが可能である。そのため、磁気テープ800の長期間停止による吸着や、磁気テープ800の高速走行による磁気ヘッド100の損耗を抑制すると共に、所望のタイミングで磁気ヘッド100をZ軸方向に平行移動させることにより、ブラシ200により磁気ヘッド100を清掃することが可能である。
【0086】
ブラシアーム部品400は、磁気ヘッド100のクリーニングを伴わないテープリフタ機能として用いられてもよい。
【0087】
本実施形態における効果について説明する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態における磁気テープ装置900では、磁気テープ800にテンションが与えられたスレッド状態において、ブラシアーム部品400が駆動される。そのため、磁気テープ800をアンスレッドしたり、磁気テープ800のテンションを緩めたりすることなく、ブラシアーム部品400により、磁気テープ800を磁気ヘッド100からリフトすることができる。これによって、磁気テープ800の高速走行状態又は停止状態を維持したままで、磁気ヘッド100をクリーニングすることができる。しかも、磁気テープ装置900では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とは、単純な構造を有する一体なブラシアーム部品400を用いて実現される。従って、本実施形態における磁気テープ装置900には、単純な機構により磁気テープをアンスレッドすることなく磁気ヘッドのクリーニングを行うことができるという効果がある。
【0089】
又、本実施形態における磁気テープ装置900では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とは、一体なブラシアーム部品400を用いて実現される。そして、磁気ヘッドクリーニング機構906は、テープリフタ機能と磁気ヘッドクリーニング機能とを実現するために、一体なブラシアーム部品400を駆動すればよい。そのため、磁気テープ装置900では、テープリフタ機構と磁気ヘッドクリーニング機構とが独立した駆動機構を有する必要が無い。従って、本実施形態における磁気テープ装置900には、製造コストの増加や、装置サイズの増大を抑制できるという効果がある。
【0090】
又、本実施形態における磁気テープ装置900では、テープリフタ機構及び磁気ヘッドクリーニング機構と、スレッディング機構とは、カムギア700やその駆動源を共有する。そのため、磁気テープ装置900では、駆動機構がより単純化又は小型化される。従って、本実施形態における磁気テープ装置900には、製造コストの増加や、装置サイズの増大を更に抑制できるという効果がある。
【0091】
本実施形態における変形例について説明する。
【0092】
上述した本実施形態では、テープリフタ機構及び磁気ヘッドクリーニング機構の駆動源として、スレッディング機構を利用した。しかしながら、本実施形態では、テープリフタ機構及び磁気ヘッドクリーニング機構の駆動源として、カートリッジローダー機構等、スレッディング機構以外の既存の機構を駆動源として利用してもよい。あるいは、本実施形態では、テープリフタ機構及び磁気ヘッドクリーニング機構の駆動源として、専用のアクチュエータ等を利用してもよい。
【0093】
又、上述した本実施形態では、ブラシアーム部品400は、2本のアームを連結させることにより形成されたが、3本以上のアームにより形成されてもよい。
【0094】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。