【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は独立項によって定義される。従属項は有利な実施形態を提供する。
【0009】
本発明によれば、アクチュエータデバイス、このアクチュエータデバイスの製造、及びこのアクチュエータデバイスによって少なくとも部分的に制御される装置におけるデバイスの使用が提供される。アクチュエータデバイスは、その作動が温度変化に依存するという点で感熱性である。アクチュエータデバイスは少なくとも2つの作動ステップを有することができる。
【0010】
本発明は、各々が少なくとも1つの形状記憶材料を含むか又はこの形状記憶材料から成る2つの層を有する構造を利用する。これら2つの層の相変化温度が相互に異なる限り、これらの層の形状記憶材料は同一の材料であってもそうでなくてもよい。第1の温度では、第1の層の形状記憶材料はその低温記憶形状であるので、第1の層はその第1の記憶形状にある。第1の温度から第2の温度への到達時に第1の層がその第1の形状から第2の形状に転移(変化)する際に与える力は、この第2の温度への加熱中に第2の層が与える抵抗力を上回っている。この上回った力を用いて、アクチュエータデバイスのこの第1の作動ステップ中にアクチュエータデバイスは仕事を行うことができる。
【0011】
デバイスは更に、第2の温度から第3の温度に加熱されると第2の層がその形状を転移(変化)させることで、アクチュエータデバイスの第2の作動ステップ中、第1の層がその第1の形状に変化するようにすなわち元の形状に戻るように構成されている。このため、第2の層は第1の層に対して直接に又は移送機構/層を介して結合されている。更に、この結合は、第1の層がその第2の形状に形状を変化させた場合に第2の層がその第3の形状に形状を変化させるようになっている。この第3の温度で第2の形状が与える力は、第1の層が与える(対抗する)力を上回っているので、アクチュエータシステムを「リセット」してその元の形状に戻すことができる。
【0012】
デバイス内で各層はその形状記憶材料に基づく一方向記憶効果を有するが、組み合わせたデバイスは、制御入力として温度だけを用いる2方向記憶効果デバイスとして動作できるので、別個の作動機構は必要ない。従って本発明は、システムをその元の作動状態(形状)に戻すための外部作動の必要性が完全になくなった一体型センサ、アクチュエータ、及びコントローラを提供する。これにより、仕事を行う能力を有する小型アクチュエータとして形状変化材料を用いることに、非常に多くの適用範囲がもたらされる。
【0013】
本発明において、第1の層及び第2の層は少なくとも部分的に相互に結合され(取り付けられ)、一方の層の形状変化が他方の層の形状変化の結果として引き起こされる。そのような結合は好ましくは、第1の層の少なくとも1つの表面層が、1つ以上の接合(中間)層なしで直接第2の層の少なくとも1つの表面層に固定して取り付けられる形態である。あるいは、第1及び第2の層を接合するため中間層がそこに存在してもよい。実際、一方の層から他方の層へ所望の形状変化を伝達可能である限り、完全に機械的な機構を用いて双方の層を機械的に接続することができる。双方の層を継ぎ合わせるような究極の(ultimate)場合、デバイスのいかなる作動ステップ中も双方の層が同一の形状を取るようにそれらを結合すればよい。
【0014】
第1の温度は第1の形状記憶材料の相変化温度未満とすればよく、第2の温度は第1の形状記憶材料の相変化温度よりも高くすればよい。
【0015】
更に、第2の温度は前記第2の形状記憶材料の相変化温度未満とすればよく、第3の温度は第2の形状記憶材料の相変化温度よりも高くすればよい。
【0016】
この構成を用いて、第1の形状から第2の形状へのアクチュエータの第1の移動は、第1の温度から第2の温度へシステムを加熱することによって刺激される。システムをその元の形状にリセットすることは、システムを更に第3の温度に加熱することによって刺激される。以降の作動及びリセットは、第1及び第3の温度間の更なる循環により刺激することができ、これによって第1の作動ステップ又はアクチュエータデバイスをその元の状態にリセットできる第2の作動ステップをそれぞれ引き起こす。
【0017】
第1及び/又は第2の層は、第3の温度における第2の層の弾性率と厚さとの第1の積が、第2の温度における第1の層の弾性率と厚さとの第2の積よりも大きいように構成すればよい。
【0018】
これはつまり、システムが第2の層の相変化温度よりも高い(第3の温度よりも高い)温度である場合に第2の層により与えられる固有の力が第1の層により与えられる力を上回るので、第2の層の形状転移が第1の層の抵抗力を克服することができ、システム全体をその第1の形状に戻せるということである。
【0019】
第1及び第2の層がそれぞれ第1及び第2の形状記憶材料から成る場合、公表されている表から、各材料の高温相によって表される弾性率を取得することができる。
【0020】
これら2つの層について、様々な厚さ及び弾性率の組み合わせを使用できる。好ましくは、第1の積は第2の積の1から1.5倍の範囲内である。これにより、この範囲について本明細書で以下に記載される利点のいずれか1つがデバイスを用いて達成可能となる。
【0021】
一例において、第1の積は第2の積の1から1.1倍の範囲内、例えば1から1.05倍の範囲内である。第1の形状から第2の形状への相変化は、例えば1から2度のような狭い温度範囲で生じ得ることに留意すべきである。この構成により、残留力(抵抗力の克服を考慮した後に仕事を行うため残された力)は、第1の作動ステップでは最大となり、第2の戻りの作動ステップでは最小となる。そのような実施形態は、作動移動時に最大の有効な仕事を行うと共に戻り移動時にほぼゼロの仕事を行うように調整される。これは、積の値の間の差を小さくすることによって達成される。
【0022】
別の例では、第1の積は第2の積の1.1から1.5倍の範囲内、例えば1.2から1.4倍の範囲内である。この構成は、いずれか1つの作動ステップで行われ得る最大の仕事に合わせるのではなく、双方の作動ステップでアクチュエータによって行われる仕事に備えている。行われ得る仕事全体は2つの作動ステップ間で分配され得る。厚さ−弾性率の積の様々な比によって、この仕事の分配を調整することができる。
【0023】
代替的な例では、第2の温度における第2の層の弾性率と厚さとの第3の積は、第1の層の第2の温度における弾性率と厚さとの第4の積の0.9から1倍の範囲内、例えば0.95から1倍の範囲内とすればよい。この例は、第2の(戻り)作動ステップでは利用可能な仕事を最大にし、第1の作動ステップでは利用可能な仕事を最小にする。この場合、第1の形状から第2の形状へ形状を変化させる際、第1の層が第2の層の抵抗(反)力を辛うじて克服できるだけの大きさの力が第2の層によって与えられる。対応する温度(第2の温度)において第2の層は低弾性率を有し、その結果として第2の層は第3の温度において弾性率と厚さとの積が著しく大きい。例えば第2の層は第1の層よりも大幅に厚い必要があり、第2の層の戻り移動では力が最大になる。
【0024】
この例における第1の積は、第2の積の1.5から2倍の範囲内とすることができる。
【0025】
第1及び第2の層は各々、第1及び第2の相変化材料の相変化温度における最大弾性率に対する相変化温度未満の最小弾性率の比を0.6から0.3の間とすればよい。これは、第1及び第2の相変化材料の相変化温度における著しい形状変化を与え、この変化によって、第1及び第2の作動ステップ中に仕事の実行が可能となる。
【0026】
2つの層の相変化温度間の様々な関係を用いることができる。
【0027】
一例では、相変化温度間の比較的小さい差を用いる。例えば、温度間の差は10度未満、又は5度未満である。そのような構成は、極めて高感度の自己調整アクチュエータが必要とされる用途において有用である。ここで、アクチュエータはセンサのような機能性を与えることができる。システムは、第2の温度に到達すると第2の形状に転移し、温度が第2の温度を維持するか又は第2の温度付近にある間のみ前記の形状を維持し、いったん温度が第3の温度超に上昇したら転移して第1の形状に戻る。
【0028】
代替的な例では、温度間の差は10度より大きく、例えば20度より大きい。そのような構成は、2方向検知が必要とされる用途において有用である。
【0029】
使用できる様々な形状がある。
【0030】
一例では、第1及び第2の層はコイル状であるので、アクチュエータはばねのような構造を呈し得る。好適な実施形態では、第1及び第2の層は別個に製造され、コイル状の第1の形状に整えられる。次いで、これらの2つのコイルは相互により合わされて、上述のような二重記憶効果を有する1つのばねを形成する。
【0031】
好ましくは、第1の層及び/又は第2の層は、それぞれ第1の形状記憶材料及び第2の形状記憶材料から成る。このため、層(複数の層)に他の材料が存在しないので、層の形状は完全に当該の形状記憶材料の形状によって決定される。第1及び/又は第2の形状記憶材料は、1種類の純金属合金のような純形状記憶材料とすることができ、又は異なる金属合金のような異なる形状記憶材料の混合物とすることができる。形状記憶材料はポリマー等の有機材料とすることができるが、パワー増大を考慮すると、好ましくは金属合金のような無機材料である。
【0032】
本発明において、第1の形状記憶材料及び/又は第2の形状記憶材料は金属合金である。好ましくは、双方とも同じ金属の合金であるが、相対的な金属含有量が異なる。これによって、良好な層接合が可能となると共に、相対的な金属組成を変化させることによる相変化温度の比較的簡単な調整が可能となる。
【0033】
ある実施形態では、第1及び/又は第2の形状記憶材料は、Cu−Al−Ni、Ni−Tiを含むか又はこれらから成る金属合金の群から選択される。NiTiはその安定性、実用性、及び優れた熱−機械性能のため、ほとんどの用途に好適である。
【0034】
本発明において、第1の層及び第2の層はそれぞれ第1及び第2の形状記憶材料から成り、第1の層の厚さは第2の層の厚さよりも大きい。厚さの差は、第2の層の厚さの5%、10%、20%、50%、100%、200%、又は500%のうちいずれか1つの値よりも大きくすればよい。
【0035】
温度フィードバックに対するアクチュエータの応答として装置の1つ以上の機能を制御するため、アクチュエータデバイスはこの装置の一部であり得る。温度フィードバックは、アクチュエータ自体の又はその周囲からの加熱特性によるものとすることができる。従って装置は、動作時又はオンされた時に熱を与えるか、又は実行する特定の機能の結果として熱出力を変化させる装置であり得る。装置は、電気デバイス、又は電気モータもしくは燃焼モータ等の燃焼デバイス、照明デバイスもしくはディスプレイデバイス、バッテリ駆動デバイス、充電器、又は化学プラント等における製造機器であり得る。温度フィードバックが装置の周囲からの熱により生じる場合、装置は、例えばモータや更に多くのもの等の他の装置で使用される制御デバイスであり得る。そのような制御デバイスは、機械的な移動に基づき、温度フィードバックによる作動を必要とするモータ、バルブ、及びスイッチを含む。
【0036】
本発明は、本発明のアクチュエータデバイスを製造する方法を提供する。この方法において、第1の層(32)を設けることは、
犠牲基板(40)上に第1の形状記憶材料を含むか又は第1の形状記憶材料から成る第1の膜を堆積することと、
感熱アクチュエータの第1の層(32)によって示される形状記憶挙動を誘発するように、前記の第1の膜を熱処理することと、
前記の第1の膜を変形させて第1の形状に戻すことと、
を備えることができ、第2の層(34)を設けることは、
第1の膜上に第2の形状記憶材料を含むか又は第2の形状記憶材料から成る第2の膜を堆積すること、
を含むことができる。
【0037】
本発明は、本発明に従ったアクチュエータデバイスの作動方法又は使用も提供する。この作動方法又は使用では、第1の作動ステップを行うために、第1の形状記憶材料を含むか又は第1の形状記憶材料から成る第1の層(32)を第2の温度に加熱して、第1の温度における第1の形状から第1の温度よりも高い第2の温度における第2の形状へ形状を変化させ、
第2の形状記憶材料を含むか又は第2の形状記憶材料から成る少なくとも第2の層を第3の温度に加熱して、第2の温度における第3の形状から第2の温度よりも高い第3の温度における第4の形状へ形状を変化させ、
第2の層がその第4の形状に変化した場合に第1の層がその第1の形状に変化するように第2の層(34)が第1の層(32)に結合され、第1の層(32)がその第2の形状に変化した場合に第2の層(34)がその第3の形状に変化するように第2の層(34)が第1の層(32)に結合されている。