(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596086
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】自動車用ローリング安定化システム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20191010BHJP
B60G 21/055 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B60G17/015 Z
B60G21/055
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-525083(P2017-525083)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2017-538616(P2017-538616A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015076123
(87)【国際公開番号】WO2016091509
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年7月10日
(31)【優先権主張番号】102014225288.1
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】トリーベル・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】トーメ・アヒム
(72)【発明者】
【氏名】バールマン・ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ラッペルト・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】オスヴァルト・エルンスト
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−195331(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/044348(WO,A1)
【文献】
特開2008−048526(JP,A)
【文献】
特表2010−530206(JP,A)
【文献】
特開2002−264682(JP,A)
【文献】
特開2004−304936(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/104821(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0013433(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/086058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧変換器(6)が配備された電気ローリング安定化部(2)を有し、この直流電圧変換器(6)によって、供給電源電圧を電気ローリング安定化部(2)の供給電圧に変換することが可能である、自動車用のローリング安定化システム(1)において、
この直流電圧変換器(6)が電気ローリング安定化部(2)の制御機器(8)に統合され、この制御機器が、更に、電気ローリング安定化部(2)の旋回モータ(3)に収容されていることを特徴とするローリング安定化システム。
【請求項2】
請求項1に記載のローリング安定化システム(1)において、
前記の制御機器(8)から旋回モータ(3)に延びるケーブル(10)が、外被に金属コイルが配備された管内に収容されていることを特徴とするローリング安定化システム。
【請求項3】
請求項1に記載のローリング安定化システム(1)において、
前記の直流電圧変換器(6)は、供給電源電圧を計測することが可能であるとともに、その供給電源電圧が前記の供給電圧と異なる場合にのみ、変換を始動させる制御ユニット(9)を有することを特徴とするローリング安定化システム。
【請求項4】
請求項1に記載のローリング安定化システム(1)において、
前記の直流電圧変換器(6)が、変圧器方式の変換器として、或いはストレージチョークを備えた変換器として実現されていることを特徴とするローリング安定化システム。
【請求項5】
請求項1に記載のローリング安定化システム(1)において、
前記の供給電圧が40〜48ボルトであることを特徴とするローリング安定化システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のローリング安定化システム(1)用の制御機器(8)であって、
この制御機器(8)が、電気ローリング安定化部(2)の旋回モータ(3)に収容されており、この制御機器(8)に、入力側の供給電源電圧を出力側の供給電圧に変換することが可能な直流電圧変換器(6)が統合されている制御機器。
【請求項7】
請求項6に記載の制御機器において、
この制御機器が符号を配備されていることを特徴とする制御機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧変換器が配備された電気ローリング安定化部を有する、自動車用のローリング安定化システムに関し、この直流電圧変換器によって、供給電源電圧をローリング安定化部の供給電圧に変換することが可能である。更に、本発明は、上記のローリング安定化システム用の制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ローリング安定化システムは、自動車において、カーブ走行時のローリングを制御するとともに、車体の傾斜を低減する役割を果たしている。パッシブシステムとも呼ばれる、U字形状に延びるアンチロールバーを備えた従来の実施形態の外に、アクティブローリング安定化システムが知られている。そのシステムでは、ローリング軸の周りに所定の復元モーメントを発生させるために、互いに分離された二つのアンチロールバーを、それらの間に有る旋回モータによって、互いに相対的に回転させることができる。それによって、カーブ走行時でも、車両構造をほぼ水平に向けることが実現可能である。しかし、旋回モータによる復元モーメントの発生は、極めて短い時間スロットで実施しなければならず、それは、各旋回モータの高い性能を前提としている。電気機械式旋回モータの場合、自動車の従来の12V車載供給電源網を使用すると、そのためには電流が極めて大きくなり、その結果、旋回モータへの配線を、それに応じて負荷に耐えるサイズとしなければならない。その理由から、時として、より高い供給電圧のサブ車載供給電源網でも、ローリング安定化システムを動作させている。
【0003】
特許文献1により、間に有る直流電圧変換器を介して、発電機を更に備えたメイン車載供給電源網と接続された、自動車のサブ車載供給電源網に電気ローリング安定化部を組み込んだ、ローリング安定化システムが明らかである。その場合、直流電圧変換器を用いて、メイン車載供給電源網の供給電源電圧をローリング安定化部の好適な供給電圧に変換できている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102006016186号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術を出発点として、本発明の課題は、自動車用のローリング安定化システムを実現することであり、このシステムは、コンパクトな構造を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1の上位概念を出発点として、それを特徴付ける特徴と関連して解決される。それに続く従属請求項は、それぞれ本発明の有利な改善構成を記述している。更に、ローリング安定化システム用の制御機器は請求項8及び9の対象である。
【0007】
本発明は、直流電圧変換器が配備された電気ローリング安定化部を有するローリング安定化システムに関する。この場合、直流電圧変換器によって、供給電源電圧をローリング安定化部の供給電圧に変換することができる。この場合、特に有利には、電気ローリング安定化部は、二つの安定化部分とそれらの間の有る一つの電気機械式旋回モータから構成され、このモータによって、所定の復元モーメントを発生させるために、二つの安定化部分を互いに回転させることができる。この場合、電気機械式旋回モータには、そのモータへの電流供給を制御し、それに応じて復元モーメントの発生も調整するための制御機器が配備されている。
【0008】
本発明の意味において、供給電源電圧とは、有利には、各自動車のメイン車載供給電源網内の電圧であり、その電源網には、電気ローリング安定化部のサブ電源網が、間に有る直流電圧変換器を介して接続されている。それに対して、ローリング安定化部の供給電圧とは、電気ローリング安定化部を動作させるための電圧である。
【0009】
本発明は、直流電圧変換器を電気ローリング安定化部に統合するとの技術的な教示を有する。即ち、言い換えると、直流電圧変換器が電気ローリング安定化部内に配置される。
【0010】
この場合、そのようなローリング安定化システムの実現形態は、電気ローリング安定化部への直流電圧変換器の統合によって、自動車の各シャフトの領域内にユニットとして配備できるコンパクトな構造体を実現できるとの利点を有する。更に、供給電圧への供給電源電圧の変換は、それに対応した電圧の上昇により、電気ローリング安定化部の側での電流の低下を可能とし、それによって、配線の横断面を、より小さく実現することができ、そのため、構造空間の更なる節約が可能となる。即ち、直流電圧変換器は、所謂、昇圧変圧器として使用され、それを用いて、供給電源電圧を、より高い供給電圧に変換することができる。
【0011】
それに対して、特許文献1の場合、直流電圧変換器が二つのサブ車載供給電源網の間の何処に配置されているのか詳しく記載されていない。その点と関連して、その文献では、直流電圧変換器を電気ローリング安定化部に統合し、それにより構造空間を節約することも提案されていない。
【0012】
本発明の実施構成では、直流電圧変換器が電気ローリング安定化部の制御機器に統合される。そして、この実施構成の改善構成では、制御機器が、更に、電気ローリング安定化部の旋回モータに統合される。両方の場合に、所要の構造空間の更なる低減を実現することができる。
【0013】
しかし、前記の実施形態に代わって、制御機器を旋回モータの外に配置することもでき、その場合、走行路上の障害物との接触を、そのため、損傷を防止するために、制御機器の筐体を出来る限り平坦に実現することが必要である。そして、電子回路基板は、有利には、基板上の冷却すべき構成部品が下方の筐体壁に直に連結され、それにより過剰な熱を速く排出できるように、制御機器の筐体内に配置される。この場合、排熱を一層改善するために、冷却フィン又は折り畳まれた金属薄板を筐体に配備することもできる。電磁気的な適合性のために、上方の筐体壁を、例えば、アルミニウム板又は金属メッキしたプラスチックから構成して、下方の筐体壁と密閉した形で組み合わせるべきである。最後に、制御機器から車両への振動の伝播を防止するために、車体と制御機器の間に、並びに制御機器内における基板と筐体壁の間及び配線に、緩衝材部分を配備すべきである。
【0014】
別の実施形態は、制御機器から電気旋回モータに延びるケーブルを、外殻に金属コイルが配備された管内に収容することである。それによって、ケーブル破損又はケーブル破断の危険性の低減の外に、それによりケーブルの切り取りが難しくなるので、窃盗に対する、より高い安全性を実現することができる。しかし、それに代わって、或いはそれに追加して、制御機器に符号を配備して、その制御機器を窃盗に対する車両特有の警報設備に組み入れることもできる。
【0015】
有利には、この直流電圧変換器は、供給電源電圧を計測することが可能であるとともに、供給電源電圧が供給電圧と異なる場合にのみ、変換を始動させる制御ユニットを有する。この利点は、構造ユニットとして実現された電気ローリング安定化部が、それにより車載供給電源網電圧が互いに異なる様々な車両に汎用的に配備できることであり、その際、供給電源電圧が電気ローリング安定化部の供給電圧と異なる場合にのみ、直流電圧変換器が、それに対応した変換を実施する。
【0016】
別の実施構成では、この直流電圧変換器は、変圧器方式の変換器として、或いはストレージチョークを備えた変換器として実現される。両方の場合に、直流電圧変換器の好適な実施形態を実現することができる。
【0017】
有利には、供給電圧は、40〜48ボルトであり、車載供給電源網の電圧に応じて、12又は24ボルトからの変圧が実行される。
【0018】
この直流電圧変換器に関する前記の実施構成は、電気ローリング安定化部の制御機器に直流電圧変換器を統合した場合でも、それに対応して実現することができる。
【0019】
本発明は、主請求項又はそれに従属する請求項の特徴のここで提示した組合せに限定されない。更に、個々の特徴は、それらが本発明の請求項、有利な実施構成の以下の記述から、或いは直に図面から判明する限り、それらを互いに組み合わせる手法が得られる。符号の使用により請求項を図面と関連付けることは、請求項の保護範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の有利な実施構成に対応して構成されたローリング安定化システム1を有する自動車の一部の模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
単一の図面が、本発明の有利な実施構成に対応して構成されたローリング安定化システム1を有する自動車の一部の模式図を図示している。ここでは、このローリング安定化システム1は、当業者に基本的に周知である、ここでは、別に詳しく図示されていない手法で、安定化部分とそれらの間に有る電気機械式旋回モータ3から構成された電気ローリング安定化部2を有する。
【0022】
旋回モータ3への電流の供給は、車両内において、車載供給電源網4とそこに配備された、ここでは別に図示されていない発電機とにより実現され、この車載供給電源網4は、有利には、12ボルトの車載供給電源網である。しかし、アクティブローリング安定化の枠組みにおいて旋回モータ3を極めて短い時間スロットで調整するとの課題を実現し、それにより、相応の復元モーメントを発生させるためには、旋回モータ3の高い性能を必要とするので、供給電源電圧が12ボルトの場合、そのような性能を発生できるためには、非常に高い電流を旋回モータ3に供給しなければならない。その理由から、旋回モータ3の電子コンポーネント5の前には、12ボルトの供給電源電圧を、例えば、48ボルトの供給電圧に変換する直流電圧変換器6が接続されている。この場合、直流電圧変換器6は、配線7を介して車載供給電源網4と接続されており、出力側を旋回モータ3のコンポーネント5と接続している。
【0023】
特に、ここでは、直流電圧変換器6が、ローリング安定化部2の制御機器8に統合されており、その制御機器は、更に、旋回モータ3に収容されている。更に、この直流電圧変換器6は、配線7の供給電源電圧を検出して、その供給電源電圧が所望の供給電圧と異なる場合にのみ変圧を始動させる制御ユニット9を備えている。従って、この場合、12ボルトの電圧は48ボルトに変換される。しかし、車載供給電源網4に、既に、より高い供給電源電圧が存在すれば、最良の場合、それどころか48ボルトの供給電源電圧が既に存在すれば、場合によっては、全く変圧が不要となる。この場合、直流電圧変換器6は、更に、ストレージチョークを備えた変換器として実現される。
【0024】
そして、直流電圧変換器6を出発点として、旋回モータ3への電流供給が制御機器8を用いて制御され、コンポーネント5に延びるケーブル10は、電流が小さいために、より小さい直径で実現することができる。この場合、ケーブル10は、更に、保護のために、ここでは別に図示されていない、外殻に金属コイルが配備された管内に収容されている。
【0025】
本発明によるローリング安定化システムの実施形態を用いて、電気ローリング安定化部のコンパクトな構造を実現することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ローリング安定化システム
2 電気ローリング安定化部
3 旋回モータ
4 車載供給電源網
5 コンポーネント
6 直流電圧変換器
7 配線
8 制御機器
9 制御ユニット
10 ケーブル