特許第6596088号(P6596088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596088磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596088
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   A61B5/055 390
   A61B5/055 382
   A61B5/055ZDM
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-527860(P2017-527860)
(86)(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公表番号】特表2017-535363(P2017-535363A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2015076635
(87)【国際公開番号】WO2016083166
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】14195174.9
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アムソー トーマス エリック
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー サシャ
(72)【発明者】
【氏名】ドネヴァ マリヤ イワノワ
(72)【発明者】
【氏名】コーケン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セネガス ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケアップ ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】ボルネート ペーター
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0265047(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0262165(US,A1)
【文献】 特開2010−082025(JP,A)
【文献】 国際公開第01/069474(WO,A1)
【文献】 特開2007−020829(JP,A)
【文献】 Dan Ma et al.,Magnetic Resonance Fingerprinting,NATURE,英国,Springer Nature Publishing AG,2013年 3月14日,Vol.495, No.7440,187-192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴フィンガープリント測定による組織の特性化を支援するために中央コンピュータデータベースを用いる方法であって、前記中央コンピュータデータベースは、
複数の関連医療データセットであって、前記複数の関連医療データセットの各関連医療データセットは、少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの関連値又は関連値のセットを含む、複数の関連医療データセットと、
複数の事前定義ディクショナリであって、前記複数の事前定義ディクショナリの各事前定義ディクショナリは、特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、前記特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各磁気共鳴信号エボリューションは、前記少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づく、複数の事前定義ディクショナリと、を含み、
前記方法は、
静磁場Bが生成されている磁気共鳴イメージングシステムの検査空間に、対象となっている被験者の少なくとも一部を配置するステップと、
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って生成された無線周波数励起場Bを印加することによって、前記対象となっている被験者の少なくとも一部の核又は前記対象となっている被験者の少なくとも一部の内部の核を励起するステップと、
前記対象となっている被験者の少なくとも一部の又は少なくとも一部内の励起された核によって放射された放射線から磁気共鳴イメージング信号データを取得するステップと、
少なくとも取得された前記磁気共鳴イメージング信号データと前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスとを含む磁気共鳴フィンガープリントデータセットを前記中央コンピュータデータベースに転送するステップと、
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、前記中央コンピュータデータベース内に既に存在する場合には、前記複数の事前定義ディクショナリの内の、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づく事前定義ディクショナリを取り出すステップと、
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づく前記事前定義ディクショナリが、前記中央コンピュータデータベースにおいて入手できない場合には、前記中央コンピュータデータベースへの事前定義ディクショナリの新しい登録として、前記複数の事前定義ディクショナリに追加される新しいディクショナリを作成し、前記新しく作成されたディクショナリを取り出すステップであって、新しく作成されたディクショナリは、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各可能性のある磁気共鳴信号エボリューションは、前記少なくとも1つの物理量に関する前記異なる値又は前記異なる値のセットに基づく、ステップと、
パターン認識アルゴリズムを適用することによって、取り出された前記ディクショナリに対して、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行い、前記少なくとも1つの物理量の決定された値又は決定された値のセットに基づく前記磁気共鳴信号エボリューションと、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データとの間の差を示す事前定義された数学的測定関数に関して、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの内の、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データと最もマッチする可能性のある磁気共鳴信号エボリューションから、前記少なくとも1つの物理量に関する1つの値又は値のセットを決定するステップと、
前記少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの前記決定された値又は前記決定された値のセットを、関連医療データセットの新しい登録として、複数の関連医療データセットに追加するステップであって、前記少なくとも1つの物理量の各物理量は、前記対象となっている被験者の少なくとも一部の組織型の物理的特性、又は前記磁気共鳴イメージングシステムの物理的特性に関係する、ステップと、
前記関連医療データセットの前記新しい登録に前記中央コンピュータデータベースのユーザがアクセスできるようにするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の関連医療データセットの各前記関連医療データセットは、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを更に含み、前記複数の関連医療データセットに新しい登録を追加するステップにおいて、前記関連医療データセットの前記新しい登録が、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って生成された前記無線周波数励起場Bを印加するステップは、前記磁気共鳴イメージングシステムから受信された特定の要求により、前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを提供する先行ステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップは、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データに対応する磁気共鳴画像の少なくともサブセットを形成する複数のボクセルの中から各ボクセルに対して実行される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの物理量が、励起された核の縦緩和時間、励起された核の横緩和時間、励起された核のオフレゾナンス周波数、組織の陽子密度、組織の導電率、組織の拡散係数、組織のかん流係数及び核に印加された静磁場の大きさによって形成されるグループから選択される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
関連医療データセットの新しい登録を前記複数の関連医療データセットに追加する前記ステップは、臓器、組織型又は特定の状態の腫瘍の少なくとも1つへの割り当てを、関連医療データセットの関連する新しい登録に追加するステップを更に含む、請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
関連医療データセットの前記新しい登録への割り当てを前記複数の関連医療データセットに追加する前記ステップは、肯定認証を必要とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
新しく作成されたディクショナリを前記複数の事前定義ディクショナリに追加する前記ステップは、肯定認証を必要とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記関連医療データセット間の相関関係及び/又は関係性を決定するため、機械学習アルゴリズムを前記複数の関連医療データセットに適用するステップと、
決定された前記相関関係及び/又は前記関係性を示すデータを前記複数の関連医療データセットの前記関連医療データセットに追加するステップと、
追加された前記データを前記中央コンピュータデータベースのユーザがアクセスできるようにするステップと、
を更に含む、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
異なるソースから転送された前記磁気共鳴フィンガープリントデータセットから得られた関連医療データセット間に相関関係及び/又は関係性が見つかった場合、転送された前記磁気共鳴フィンガープリントデータセットの信頼性及び/又は確実性を説明するため、前記機械学習アルゴリズムを適用するステップ内で、前記相関関係及び/又は前記関係性が決定される、関連医療データセットに重み付け係数を割り当てるステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の関連医療データセットであって、前記複数の関連医療データセットの各関連医療データセットは、少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの関連値又は関連値のセットを含む、複数の関連医療データセットと、
複数の事前定義ディクショナリであって、前記複数の事前定義ディクショナリの各事前定義ディクショナリは、特定の前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、特定の前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各磁気共鳴信号エボリューションは、前記少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づく、複数の事前定義ディクショナリと、
を保存する中央コンピュータデータベースと、
複数の磁気共鳴イメージングシステムから、対象となっている被験者の少なくとも一部の又は少なくとも一部内の励起された核から取得された取得磁気共鳴イメージング信号データ、及び磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを少なくとも含む磁気共鳴フィンガープリントデータセットを受信し、受信された前記磁気共鳴フィンガープリントデータセットを前記中央コンピュータデータベースに転送する、データ受信ユニットと、
前記中央コンピュータデータベースのデータを磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのユーザがアクセスできるようにする、データ出力ユニットと、
少なくとも1つのプロセッサユニット及び少なくとも1つのデジタルメモリユニットを含み、ス前記複数の関連医療データセット及び前記複数の事前定義ディクショナリへのデータアクセスを有する、データ分析デバイスと、
を含む当該磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムであって、
前記データ分析デバイスは、
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、前記中央コンピュータデータベース内に既に存在する場合には、前記複数の事前定義ディクショナリの内の、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づく事前定義ディクショナリを取り出し、
前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、前記中央コンピュータデータベースにおいて入手できない場合には、前記データ分析デバイスは、新しいディクショナリを作成し、前記中央コンピュータデータベースへの事前定義ディクショナリの新しい登録として、新しく作成されたディクショナリを前記複数の事前定義ディクショナリに追加し、前記新しく作成されたディクショナリを取り出し、前記新しく作成されたディクショナリは、前記磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、前記磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各可能性のある磁気共鳴信号エボリューションは、前記少なくとも1つの物理量に関する前記異なる値又は前記異なる値のセットに基づいていて、
パターン認識アルゴリズムを適用することによって、取り出された前記新しく作成されたディクショナリに対して、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行い、前記少なくとも1つの物理量に関する決定された値又は決定された値のセットに基づく磁気共鳴信号エボリューションと、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データとの間の差を示す事前定義された数学的測定関数に関して、前記複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの内の、取得された前記磁気共鳴イメージング信号データと最もマッチする可能性のある磁気共鳴信号エボリューションから、前記少なくとも1つの物理量に関する1つの値又は値のセットを決定し、
前記少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの前記決定された値又は前記決定された値のセットを、前記関連医療データセットの新しい登録として、前記中央コンピュータデータベース内の前記複数の関連医療データセットに追加し、前記少なくとも1つの物理量の各物理量は、前記対象となっている被験者の少なくとも一部の組織型の物理的特性、又は前記複数の磁気共鳴イメージングシステムの1つの磁気共鳴イメージングシステムの物理的特性に関係し、
前記データ出力ユニットを介して、関連医療データセットの前記新しい登録を前記複数の磁気共鳴イメージングシステムがアクセスできるようにする、
磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム。
【請求項12】
前記中央コンピュータデータベースは、サーバベース又はクラウドベースである、請求項11に記載の磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム。
【請求項13】
前記データ受信ユニットは、臓器、組織型又は特定の状態の腫瘍の少なくとも1つへの割り当てを、前記複数の関連医療データセットの1つの関連医療データセットに追加することを可能にする、請求項11又は12に記載の磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム。
【請求項14】
前記追加することを可能にすることは、肯定認証を必要とする、請求項13に記載の磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム。
【請求項15】
前記データ受信ユニットは、前記複数の関連医療データセットの中の1つの磁気共鳴フィンガープリントシーケンス及び前記複数の事前定義ディクショナリの内の1つの事前定義ディクショナリの少なくとも一方に関して、外部デバイスから要求を受信し、前記データ出力ユニットは、受信された前記要求により、要求されたデータを前記外部デバイスがアクセスできるようにする、請求項11乃至14の何れか一項に記載の磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム。
【請求項16】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法を実行するためのソフトウェアモジュールであって、実行される前記方法のステップは、ソフトウェアモジュールのプログラムコードに変換され、前記プログラムコードは、前記磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのメモリユニットにおいて実装可能であり、磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのプロセッサユニットによって実行可能である、ソフトウェアモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴フィンガープリント測定による組織の特性化を支援するために中央コンピュータデータベースを用いる方法、並びにそのような中央コンピュータデータベースを含む磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングの分野では、磁気共鳴フィンガープリントと呼ばれる技術が、Dan Maらによる論文、Magnetic resonance fingerprinting, Nature 495(7440), p. 187-192, 2013, doi: 10.1038/nature11971において、最近提案された。その中で、磁気共鳴フィンガープリント(MRF:magnetic resonance fingerprinting)の概念は、MRFシーケンスと呼ばれる適切な取得スキームを用いて、異なる物質又は組織に対して固有の信号エボリューション又はフィンガープリントを生成することができるという事実を利用すると記載される。これは、データ収集全体を通した取得パラメータの連続的変化により可能である。MRFにおいて必要とされる時間的及び空間的非一貫性は、無線周波数パルスのフリップ角及び位相、繰り返し時間、エコー時間及びサンプリングパターン等の取得パラメータを疑似乱数的に変化させることによって達成することができる。まず、MRF励起シーケンスに基づいて、物質及びシステム関連パラメータのあらゆる予測可能な組み合わせによる信号エボリューションを含むディクショナリが構築される。データが取得された後、異なる物質又は組織型への信号の分離が、マッチング又はパターン認識アルゴリズムを適用して、観察された信号エボリューションに最も良く一致するディクショナリから信号ベクトル又は重み付けされた信号ベクトルのセットを選択することによって達成することができる。次に、ディクショナリにおいてこの信号ベクトルを形成するために使用された全てのパラメータを、同時に取り出すことができる。この論文では、MRF対応励起パルスシーケンスに関して、無限に近い可能性が存在すると言及されている。
【0003】
米国特許出願公開第2013/0265047A1号には、核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)フィンガープリントに関連する装置、方法、及び他の実施形態が記載されている。1つのNMR装置例は、物体に関連する(k、t、E)空間を反復的及び可変的にサンプリングして、NMR信号セットを取得するように構成されたNMRロジックを含む。NMR信号セットの要素は、(k、t、E)空間内の異なる点に関連付けられる。サンプリングは、非一定的に変動するt及び/又はEを用いて行われる。変動するパラメータは、フリップ角、エコー時間、RF振幅、及び他のパラメータを含んでもよい。NMR装置は、NMR信号からNMR信号エボリューションを生成するように構成された信号ロジック、及び取得された信号を参照信号と比較した結果、物体の共鳴種を特性化するように構成された特性化ロジックも含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、磁気共鳴フィンガープリント測定によって組織を特性化するための向上した支援の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様では、目的は、磁気共鳴フィンガープリント測定による組織の特性化を支援するために中央コンピュータデータベースを用いる方法によって達成される。
【0006】
本出願において使用される「中央コンピュータデータベース」という表現は、具体的には、ローカルエリアネットワーク(但し、限定されない)等のデータ通信リンクを介して、又はインターネットへのルータ通信リンクを介して、複数の外部コンピュータデバイスからアクセス可能なコンピュータデータベースとして理解されるものとする。
【0007】
中央コンピュータデータベースは、複数の関連医療データセットを含む。複数の関連医療データセットの各関連医療データセットは、少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの関連値又は関連値のセットを含む。
【0008】
コンピュータデータベースは、複数の事前定義ディクショナリを更に含み、複数の事前定義ディクショナリの各事前定義ディクショナリは、特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、及び特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含む。複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各磁気共鳴信号エボリューションは、少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づく。
【0009】
この方法は、
− 静磁場Bが生成されている磁気共鳴イメージングシステムの検査空間に、対象となっている被験者の少なくとも一部を配置するステップと、
− 磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って生成された無線周波数励起場Bを印加することによって、対象となっている被験者の少なくとも一部の又はその内部の核を励起するステップと、
− 対象となっている被験者の少なくとも一部の又は少なくとも一部内の励起された核によって放射された放射線から磁気共鳴イメージング信号データを取得するステップと、
− 少なくとも取得された磁気共鳴イメージング信号データ及び磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを含む磁気共鳴フィンガープリントデータセットを中央コンピュータデータベースに転送するステップと、
を含む。
【0010】
更に、この方法は、
− 磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベース内に既に存在する場合には、複数の事前定義ディクショナリの内の、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づく事前定義ディクショナリを取り出すステップと、
− 磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベースにおいて入手できない場合には、中央コンピュータデータベースへの事前定義ディクショナリの新しい登録として、複数の事前定義ディクショナリに追加される新しいディクショナリを作成し、新しく作成されたディクショナリを取り出すステップであって、新しいディクショナリは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各可能性のある磁気共鳴信号エボリューションは、少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づくステップと、
− パターン認識アルゴリズムを適用することによって、取り出されたディクショナリに対して、取得された磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行い、少なくとも1つの物理量の決定された値又は決定された値のセットに基づく磁気共鳴信号エボリューションと、取得された磁気共鳴イメージング信号データとの間の差を示す事前定義された数学的測定関数に関して、複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの内の、取得された磁気共鳴イメージング信号データと最もマッチする可能性のある磁気共鳴信号エボリューションから、少なくとも1つの物理量に関する1つの値又は値のセットを決定するステップと、
− 少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの決定された値又は決定された値のセットを、関連医療データセットの新しい登録として、複数の関連医療データセットに追加するステップであって、少なくとも1つの物理量の各物理量は、対象となっている被験者の少なくとも一部の組織型の物理的特性、又は磁気共鳴イメージングシステムの物理的特性に関係する、ステップと、
− 関連医療データセットの新しい登録に中央コンピュータデータベースのユーザがアクセスできるようにするステップと、
を含む。
【0011】
このようにして、様々なソース、即ち磁気共鳴イメージングシステムを用いた測定から得られた多数の関連医療データセットは、収集され、及び中央コンピュータデータベースに保存することができ、潜在的ユーザがアクセスできるようにすることができ、並びに更なる分析に利用可能であり、この分析は、原則的に、完全な複数の関連医療データセットに関与し得る。中央コンピュータデータベースに寄与する可能なソースは、同様に、他の臨床検査中に、及びワークフロー又は画質に影響を与えることなく、「オンザフライ」で磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを用いて磁気共鳴イメージング信号データを取得する磁気共鳴イメージングシステムでもよい。
【0012】
ある実施形態では、複数の関連医療データセットの関連医療データセットは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを更に含み、複数の関連医療データセットに新しい登録を追加するステップにおいて、関連医療データセットの新しい登録が、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを更に含む。このようにして、例えば少なくとも1つの物理量に関する値又は値のセットを決定する精度に対する異なる磁気共鳴フィンガープリントシーケンスの影響が、完全な複数の関連医療データセットのサブセットから又は完全な複数の関連医療データセットから分析することができる。
【0013】
関連医療データセットの新しい登録にユーザがアクセスできるようにするステップは、そこから磁気共鳴フィンガープリントデータセットが中央コンピュータデータベースに転送された磁気共鳴イメージングシステムをユーザに知らせることを包含してもよく、このようにして、ユーザへのフィードバックの道を確立する。それは同様に、そこから磁気共鳴フィンガープリントデータセットが中央コンピュータデータベースに転送された磁気共鳴イメージングシステムによる特定の要求により、又は磁気共鳴フィンガープリントデータセットを転送するように構成された磁気共鳴イメージングシステムの何れかのユーザの特定の要求によって、関連医療データセットの新しい登録を提供することを包含してもよい。
【0014】
ある好適な実施形態では、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って生成された無線周波数励起場Bを印加するステップは、磁気共鳴イメージングシステムから受信された特定の要求により、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを提供する先行ステップを含む。このようにして、磁気共鳴イメージングシステムのユーザは、中央コンピュータデータベースの他のユーザによって適用された磁気共鳴フィンガープリント測定から得られた経験から恩恵を受けることができる。例えば、特定の要求は、要求を送ったユーザにとって特に関心のある1つの物理的特性又は複数の物理的特性に関して、他の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスと比べて高識別性を有する磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに関連し得る。
【0015】
別の好適な実施形態では、ステップは、取得された磁気共鳴イメージング信号データに一致する磁気共鳴画像の少なくともサブセットを形成する複数のボクセルの中から各ボクセルに対して実行される。このようにして、異なる組織型間の効果的な識別を、高空間分解能で達成することができる。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの物理量が、励起された核の縦緩和時間、励起された核の横緩和時間、励起された核のオフレゾナンス周波数、組織の陽子密度、組織の導電率、組織の拡散係数、組織のかん流係数及び核に印加された静磁場の大きさによって形成される群から選択される。このようにして、臨床適用例の大部分において、組織を識別することを可能にする多次元特性化を達成することができる。
【0017】
本方法の別の好適な実施形態では、関連医療データセットの新しい登録を複数の関連医療データセットに追加するステップは、臓器、組織型又は特定の状態の腫瘍の少なくとも1つへの割り当てを、関連医療データセットの関連する新しい登録に追加することを更に含む。例えば、磁気共鳴フィンガープリント信号データの取得後に、十分に準備することのできた組織学的報告書の結果が、割り当てとして追加されてもよい。割り当ては、磁気共鳴イメージングシステムのユーザによって、手作業で追加されてもよい。このようにして、少なくとも1つの物理量に関する決定された値又は決定された値のセット、特定の組織型に対する組織の追加の割り当て、及び場合によっては、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスは、関連医療データセットの新しい登録においてリンクさせることができ、並びに更なる分析に利用可能である。追加の割り当てが行われた組織は、磁気共鳴画像のボクセルでもよく、又はそれは、磁気共鳴画像のセグメント化領域でもよい。
【0018】
好ましくは、関連医療データセットの新しい登録への割り当てを複数の関連医療データセットに追加するステップは、肯定認証を必要とする。これは、関連医療データセットの新しい登録が複数の関連医療データセットに追加される前に、データがダブルチェックされることを確実にし、これは、複数の関連医療データセットの信頼性及び確実性を向上させる。例えば、肯定認証は、そこから磁気共鳴フィンガープリントデータセットが中央コンピュータデータベースに転送された磁気共鳴イメージングシステムにおいて共通する二人の臨床医によって実行されてもよい。別の手法では、専門の臨床審査委員会が、診断値が最新の医療基準と合致することを確実にするために、肯定認証を行ってもよい。
【0019】
同様の利点を、新しく作成されたディクショナリを複数の事前定義ディクショナリに追加するステップが、上記のように実行されてもよい肯定認証を必要とする、別の好適な実施形態において達成することができる。代替的に、当業者にとって適切であると思われるその他の肯定認証ステップが、適用されてもよい。
【0020】
更に別の好適な実施形態では、本方法は、
− 関連医療データセット間の相関関係及び/又は関係性を決定するための機械学習アルゴリズムを複数の関連医療データセットに適用するステップと、
− 決定された相関関係及び/又は関係性を示すデータを複数の関連医療データセットの関連医療データセットに追加するステップと、
− 追加されたデータを中央コンピュータデータベースのユーザがアクセスできるようにするステップと、
を更に含む。
【0021】
例えば、機械学習アルゴリズムは、複数の関連医療データセットの内の、特定の状態の腫瘍に対して実質的に同じ割り当てを含む関連医療データセットを分析し、少なくとも1つの物理量に関する関連値又は関連値のセットに関する統計分析を提供してもよい。中央コンピュータデータベースのあらゆるユーザは、この統計分析にアクセスすることができ、及び特定の状態の腫瘍に関係した少なくとも1つの物理量に関する関連値又は関連値のセットの統計的有意性に関する情報を与えられることが可能である。
【0022】
例として、機械学習アルゴリズムは、複数の関連医療データセットの内の、特定の組織型に対して実質的に同じ割り当てを含む関連医療データセットを分析し、少なくとも1つの物理量を決定する関連医療データセットの磁気共鳴フィンガープリントシーケンスの能力に関する統計分析を提供してもよい、即ち、決定された少なくとも1つの物理量の測定エラーに関する統計情報を提供してもよい。次に、機械学習アルゴリズムは、特定の組織型の少なくとも1つの物理量の正確な決定に特に適した磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを識別し、及び識別された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを中央コンピュータデータベースのユーザがアクセスできるようにしてもよい。
【0023】
ある実施形態では、本方法は、機械学習アルゴリズムを適用するステップ内で、相関関係及び/又は関係性が決定され、異なるソースから転送された磁気共鳴フィンガープリントデータセットから得られた関連医療データセット間に相関関係及び/又は関係性が見つかった場合、転送された磁気共鳴フィンガープリントデータセットの信頼性及び/又は確実性を説明する関連医療データセットに重み付け係数を割り当てるステップを更に含む。
【0024】
このようにして、磁気共鳴イメージングシステムの様々な種類及び機能が、機械学習アルゴリズムを適用することによって実行される分析において、説明されることを確実にすることができる。
【0025】
本発明の別の態様では、磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムが提供される。磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムは、中央コンピュータデータベース、データ受信ユニット、データ出力ユニット及びデータ分析システムを含む。
【0026】
中央コンピュータデータベースは、複数の関連医療データセットを保存するように構成される。複数の関連医療データセットの各関連医療データセットは、少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの関連値又は関連値のセットを含む。中央コンピュータデータベースは、複数の事前定義ディクショナリを保存するように更に構成される。複数の事前定義ディクショナリの各事前定義ディクショナリは、特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、及び特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含む。複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各磁気共鳴信号エボリューションは、少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づく。
【0027】
データ受信ユニットは、複数の磁気共鳴イメージングシステムから、少なくとも、対象となっている被験者の少なくとも一部の又は少なくとも一部内の励起された核から取得された取得磁気共鳴イメージング信号データ、及び磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを含む磁気共鳴フィンガープリントデータセットを受信し、並びに受信された磁気共鳴フィンガープリントデータセットを中央コンピュータデータベースに転送するように構成される。
【0028】
データ出力ユニットは、中央コンピュータデータベースのデータを磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのユーザがアクセスできるようにするように構成される。
【0029】
データ分析デバイスは、少なくとも1つのプロセッサユニット及び少なくとも1つのデジタルメモリユニットを含む。データ分析デバイスは、複数の関連医療データセット及び複数の事前定義ディクショナリへのデータアクセスを有する。データ分析デバイスは、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベース内に既に存在する場合には、複数の事前定義ディクショナリの内の磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づく事前定義ディクショナリを取り出すように構成される。
【0030】
磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベースにおいて入手できない場合には、データ分析デバイスは、新しいディクショナリを作成し、中央コンピュータデータベースへの事前定義ディクショナリの新しい登録として、新しいディクショナリを複数の事前定義ディクショナリに追加するように構成される。新しいディクショナリは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに特化され、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスに従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含む。複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各可能性のある磁気共鳴信号エボリューションは、少なくとも1つの物理量に関する異なる値又は異なる値のセットに基づく。この場合、データ分析デバイスは、新しく作成されたディクショナリを取り出すように構成される。
【0031】
更に、データ分析デバイスは、パターン認識アルゴリズムを適用することによって、取り出されたディクショナリに対して取得された磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行い、少なくとも1つの物理量に関する決定された値又は決定された値のセットに基づく磁気共鳴信号エボリューションと、取得された磁気共鳴イメージング信号データとの間の差を示す事前定義された数学的測定関数に関して、複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの内の取得された磁気共鳴イメージング信号データと最もマッチする可能性のある磁気共鳴信号エボリューションから、少なくとも1つの物理量に関する1つの値又は値のセットを決定するように構成される。
【0032】
次に、データ分析デバイスは、少なくとも1つの物理量に関する少なくとも1つの決定された値又は決定された値のセットを、関連医療データセットの新しい登録として、中央コンピュータデータベース内の複数の関連医療データセットに追加するように構成される。少なくとも1つの物理量の各物理量は、対象となっている被験者の少なくとも一部の組織型の物理的特性、又は複数の磁気共鳴イメージングシステムの1つの磁気共鳴イメージングシステムの物理的特性に関係する。
【0033】
最後に、データ分析デバイスは、データ出力ユニットを介して、関連医療データセットの新しい登録を複数の磁気共鳴イメージングシステムがアクセスできるように構成される。
【0034】
磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムの適宜の実施形態において、開示された方法に関して説明された利点が当てはまり、達成されることが可能である。
【0035】
ある実施形態では、関連医療データセットの新しい登録が、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス及び少なくとも1つの物理量に関する決定された値又は決定された値のセットを含むように、データ分析デバイスは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを、複数の関連医療データセットの関連医療データセットの新しい登録に更に追加するように構成される。このようにして、完全な複数の関連医療データセットのサブセット又は完全な複数の関連医療データセットが、例えば少なくとも1つの物理量に関する値又は値のセットを決定する精度に対する、異なる磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを使用する影響の分析に利用可能となることができる。
【0036】
磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムの好適な実施形態では、中央コンピュータデータベースは、サーバベース又はクラウドベースである。このようにして、データ受信ユニットによって磁気共鳴フィンガープリントデータセットを受信し、及びデータを複数の磁気共鳴イメージングシステムがアクセスできるようにする解決策を、容易に提供することができる。
【0037】
別の好適な実施形態では、データ受信ユニットは、臓器、組織型又は特定の状態の腫瘍の少なくとも1つへの割り当てを、複数の関連医療データセットの1つの関連医療データセットに追加することを可能にするように構成される。
【0038】
このようにして、少なくとも1つの物理量に関する決定された値又は決定された値のセット、特定の組織型に対する組織の追加の割り当て、場合によっては、磁気共鳴フィンガープリントシーケンスは、関連医療データセットの新しい登録においてリンクさせることができ、更なる分析に利用可能である。
【0039】
好ましくは、使用可能性が、肯定認証を必要とする。これは、関連医療データセットの新しい登録が複数の関連医療データセットに追加される前に、データがダブルチェックされることを確実にし、これは、複数の関連医療データセットの信頼性及び確実性を向上させる。
【0040】
磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムの更に別の好適な実施形態では、データ受信ユニットは、複数の関連医療データセットの中の1つの磁気共鳴フィンガープリントシーケンス及び複数の事前定義ディクショナリの内の1つの事前定義ディクショナリの少なくとも一方に関して、外部デバイスから要求を受信するように構成され、並びにデータ出力ユニットは、受信された要求により、要求されたデータを外部デバイスがアクセスできるように構成される。
【0041】
磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムの更なる技術的特徴及び利点に関して、これと共に、開示された方法、図面及びそれらの対応する図面キャプションに関連する説明が明示的に参照され、逆の場合も同様である。
【0042】
本発明の更に別の態様では、開示された中央コンピュータデータベースを用いる方法の一実施形態のステップを実行するソフトウェアモジュールが提供される。実施される方法ステップは、ソフトウェアモジュールのプログラムコードに変換され、プログラムコードは、磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのメモリユニットにおいて実装可能であり、並びに磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システムのプロセッサユニットによって実行可能である。プロセッサユニットは、データ分析デバイスのプロセッサユニットでもよい。プロセッサユニットは、代替的又は補足的に、方法ステップの少なくとも一部を実行するように特別に割り当てられた別のプロセッサでもよい。
【0043】
ソフトウェアモジュールは、方法のロバストな及び信頼性のある実行を可能にすることができ、並びに方法ステップの素早い変更を可能にすることができる。
【0044】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかとなり、それらを参照して解明されるだろう。しかしながら、このような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を示さず、従って本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本明細書が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明による磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム並びに潜在的ユーザとのインタラクションの一実施形態の概略構成を示す。
図2】取得された磁気共鳴イメージング信号データからの2つの異なる物理量に関する値のセットを決定した結果を概略的に示す。
図3】本発明による方法の一実施形態のフローチャートを示す。
図4】本発明による方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明による磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10並びにそれの潜在的ユーザとのインタラクションの一実施形態の概略構成を示す。潜在的ユーザは、複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12によって表される。磁気共鳴イメージングシステム12、12、12のオペレータ及び/又は検査目的で磁気共鳴イメージングシステム12、12、12を使用している若しくはこれらに関与している臨床医が、実際は潜在的ユーザであることが理解される。
【0047】
データ収集及び分析システム10は、クラウドベースの中央コンピュータデータベース18、データ受信ユニット20、データ出力ユニット22、並びに更にはプロセッサユニット28及びデジタルメモリユニット30を含むデータ分析デバイス26を含む。
【0048】
中央コンピュータデータベース18は、複数の関連医療データセットを保存するように構成される。複数の関連医療データセットの各関連医療データセット36は、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38及び少なくとも2つの異なる物理量に関する関連値のセット40(図2)を含む。
【0049】
中央コンピュータデータベース18は、複数の事前定義ディクショナリを保存するように更に構成される。複数の事前定義ディクショナリの各事前定義ディクショナリは、特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に特化され、特定の磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含み、複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各磁気共鳴信号エボリューションは、少なくとも2つの異なる物理量に関する異なる値のセット40に基づく。
【0050】
少なくとも2つの異なる物理量の各物理量は、対象となっている被験者の少なくとも一部の組織型の物理的特性、又は複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の1つの磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の物理的特性に関係する。一例として、少なくとも2つの異なる物理量は、この特定の実施形態では、組織型を含む磁気共鳴画像のボクセルの縦緩和時間T及び横緩和時間Tとして与えられる。一般的に、少なくとも2つの異なる物理量は、ユーザによって、励起された核の縦緩和時間、励起された核の横緩和時間、励起された核のオフレゾナンス周波数、組織の陽子密度、組織の導電率、組織の拡散係数、組織のかん流係数及び核に印加された静磁場の大きさによって形成される群から選択されてもよい。
【0051】
複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の各磁気共鳴イメージングシステム12、12、12は、対象となっている被験者の少なくとも一部を内部に配置する検査空間、及び少なくともその検査空間において生成されている静磁場Bを含む。
【0052】
複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の各磁気共鳴イメージングシステム12、12、12は、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に従って生成された無線周波数励起場Bを印加することによって、対象となっている被験者の少なくとも一部の又はその内部の核を励起し、対象となっている被験者の少なくとも一部の又は少なくとも一部内の励起された核によって放射された放射線から磁気共鳴イメージング信号データを取得するように構成される。
【0053】
複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の各磁気共鳴イメージングシステム12、12、12は、少なくとも取得された磁気共鳴イメージング信号データ及び磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38を含む磁気共鳴フィンガープリントデータセット42を中央コンピュータデータベース18に転送するように更に構成される。
【0054】
このために、複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の各磁気共鳴イメージングシステム12、12、12は、データ通信のために、磁気共鳴イメージングシステム12、12、12をデータ受信ユニット20に接続するデータ通信リンク14、14、14を備える。データ受信ユニット20は、磁気共鳴イメージングシステム12、12、12とは異なり、磁気共鳴イメージングシステム12、12、12のオペレータ及び/又は臨床医によって使用されるコンピュータデバイス16(1つのコンピュータデバイス16が、図1に例示的に示される)からの更に別のデータ通信リンクを受信するようにも構成される。データ受信ユニット20は、受信された磁気共鳴フィンガープリントデータセット42を中央コンピュータデータベース18に転送するように構成される。
【0055】
磁気共鳴フィンガープリントデータセット42の一例が、図2の左部分に示される。取得された磁気共鳴イメージング信号データに対応する磁気共鳴画像において、2つの空間領域44、46に印が付けられ、2つの空間領域44、46に位置する組織型が、「組織A」及び「組織B」とそれぞれ表示される。2つの空間領域44、46は、磁気共鳴画像のセグメント化領域として示されるが、それらは、一般的に、単一ボクセル程の大きさとなり得る。磁気共鳴画像の下に示されるのは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38である。
【0056】
データ分析デバイス26は、磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10内に配置されたデータ通信リンク32を介して、複数の関連医療データセット36及び複数の事前定義ディクショナリへのデータアクセスを有する。
【0057】
データ出力ユニット22は、中央コンピュータデータベース18のデータにユーザがアクセスできるようにするために、中央コンピュータデータベース18と磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10のユーザとの間にデータ通信リンク24、24、24を設けるように構成される。更に、図1は、データ通信リンク24が、同様に、データ出力ユニット22とコンピュータデバイス16との間に設けられてもよいことを示す。
【0058】
以下では、磁気共鳴フィンガープリント測定による組織の特性化を支援するために中央コンピュータデータベース18を用いる方法の一実施形態が説明される。この方法のフローチャートが、図3及び4に提供される。中央コンピュータデータベース18の使用に備えて、全ての関与するユニット及びデバイスが動作状態にあり、及び図1に示されるように構成されていると理解されるものとする。
【0059】
この方法の部分を実行できるためには、データ分析デバイス26は、ソフトウェアモジュール34(図1)を含む。実施される方法ステップは、ソフトウェアモジュール34のプログラムコードに変換され、プログラムコードは、データ分析デバイス26のデジタルメモリユニット30に実装され、及びデータ分析デバイス26のプロセッサユニット28によって実行可能である。磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10が、動作準備の整った状態にあることが更に理解されるものとする。
【0060】
第1のステップ48において、データ分析デバイス26は、複数の磁気共鳴イメージングシステム12、12、12の1つの磁気共鳴イメージングシステム12、12、12による要求に応じて、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38を提供する。
【0061】
次のステップ50では、対象となっている被験者の一部の又はその内部の核を励起する無線周波数励起場Bを生成及び印加するために、提供された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38が使用される。
【0062】
別のステップ52では、磁気共鳴イメージングシステム12、12、12を用いて、対象となっている被験者の一部の又は一部内の励起された核によって放射された放射線から磁気共鳴イメージング信号データが取得される。
【0063】
その後の次のステップ54では、磁気共鳴フィンガープリントデータセット42が、磁気共鳴イメージングシステム12、12、12から中央コンピュータデータベース18に転送される。磁気共鳴フィンガープリントデータセット42は、取得された磁気共鳴イメージング信号データ、及び磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38を含む。
【0064】
次のステップ56では、データ分析デバイス26は、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベース18内に既に存在する場合には、複数の事前定義ディクショナリの内の磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に基づく事前定義ディクショナリを取り出す。
【0065】
磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に基づくディクショナリが、中央コンピュータデータベース18で入手できない場合には、データ分析デバイス26は、次のステップ58において、中央コンピュータデータベース18への事前定義ディクショナリの新しい登録として、複数の事前定義ディクショナリに追加される新しいディクショナリを作成する。この新しいディクショナリは、磁気共鳴イメージング信号データを得るために使用された磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に特化され、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38に従って励起された核の複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションを含む。複数の可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの各可能性のある磁気共鳴信号エボリューションは、縦緩和時間T及び横緩和時間Tによって与えられる、2つの異なる物理量に関する異なる値のセット40に基づく。新しく作成されたディクショナリは、その後、データ分析デバイス26によって取り出される。
【0066】
別のステップ60では、データ分析デバイス26は、取り出されたディクショナリに対して取得された磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行うパターン認識アルゴリズムを適用する。2つの異なる物理量T及びTに関する値のセット40は、事前定義された数学的測定関数に関して、取得された磁気共鳴イメージング信号データと最もマッチする、可能性のある磁気共鳴信号エボリューションの1つから決定される。事前定義された数学的測定関数は、異なる物理量に関する決定された値のセット40に基づく磁気共鳴信号エボリューションと、取得された磁気共鳴イメージング信号データとの間の差を示す。適切な数学的測定関数は、当該技術分野でよく知られており、従って本明細書では、より詳細に説明されないものとする。
【0067】
取り出されたディクショナリに対して、取得された磁気共鳴イメージング信号データのマッチングを行うステップ60は、図2に示されるように「組織A」及び「組織B」と表示された2つの空間領域44、46によって形成された磁気共鳴画像のサブセットを形成する複数のボクセルの中から各ボクセルに対して実行される。このようにして、磁気共鳴画像のサブセットのボクセルが、各独立単位ベクトルが、2つの異なる物理量の一方を表す、独立単位ベクトルの線形スパンとして生成されるパラメータ空間にマッピングされる。図2では、独立単位ベクトルが、互いに垂直に配置され、生成されたパラメータ空間は、二次元デカルト座標空間に等しい。別の可能な実施形態において、値のセットが、異なる物理量に関する3つ以上の値を含む場合、同じ概念が、値のセット40内に存在する異なる物理量に関する値と同数の次元に拡大適用される。
【0068】
図2に示されるように、サブセットのボクセルのマッピングは、同様に記録され及びエラーバーによって示される不確実性をもたらす。
【0069】
次のステップ62では、データ分析デバイス26は、磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38及び決定された不確実性を含む2つの異なる物理量に関する決定された値のセット40を、関連医療データセット36の新しい登録として、中央コンピュータデータベース18内の複数の関連医療データセットに追加する。
【0070】
その後の別のステップ64において、データ分析デバイス26は、関連医療データセット36の新しい登録に中央コンピュータデータベース18のユーザがアクセスできるようにする。
【0071】
この方法の別のステップ66では、特定の状態の腫瘍への割り当てが、関連医療データセット36の新しい登録に追加される。データは、組織学的検査による結果、他の臨床モダリティを用いて得られたデータ、又は成功した治療後に遡及的に利用可能になったデータでもよい。データは、関連医療データセット36にアクセスし、手作業で割り当てを追加することによって、磁気共鳴フィンガープリント信号データを取得した磁気共鳴イメージングシステム12、12、12のユーザによって、関連医療データセット36の新しい登録に追加される。
【0072】
データ分析デバイス26は、割り当てが追加されたことを検出する。開始の幾つかの任意選択肢の1つとして、これは、複数の関連医療データセットの内の、特定の状態の腫瘍に対して同じ割り当てを含む関連医療データセット36を取り出し、分析するステップ68を開始する。このステップ68を開始するための他の任意選択肢(図4では不図示)は、磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10のユーザによる特定の要求を提示すること、並びにデータ分析デバイス26によって自動的に実行される定期的な更新プロシージャである。
【0073】
分析のステップ68の結果、データ分析デバイス26は、
− 2つの異なる物理量に関する取り出された関連値のセット40に関する統計データ、及び
− 2つの異なる物理量を決定する磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38の能力を示す統計データを決定する。
【0074】
更に、データ分析デバイス26は、別のステップ70において、決定された統計データにユーザがアクセスできるようにする。要求を磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10に送ることによって、ユーザは、特定の状態の腫瘍を示す磁気共鳴フィンガープリント信号データから得られた異なる物理量に関する値の特定の組み合わせの有意性に関する統計データを得ることができる。要求により、ユーザは、例えば異なる特定の状態にある腫瘍に関して高い識別性を提供することが知られている磁気共鳴フィンガープリントシーケンス38を与えられることが可能である。このようにして、開示された磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム10並びに開示された中央コンピュータデータベース18を用いる方法は、磁気共鳴フィンガープリント測定による組織の特性化の大きな支援を提供する。
【0075】
本発明は、図面及び上記の説明において詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び説明は、限定的なものではなく、説明のためのもの又は例示的なものと見なされるべきものであり、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求項に係る発明の実施において、当業者によって理解され、及びもたらされ得る。クレームにおいて、「含む(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除せず、及び不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。特定の手段が互いに異なる従属クレームに記載されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを意味しない。クレームにおける何れの参照符号も、範囲を限定するものと解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
10 磁気共鳴フィンガープリントデータ収集及び分析システム
12 磁気共鳴イメージングシステム
14 データ通信リンク
16 コンピュータデバイス
18 中央コンピュータデータベース
20 データ受信ユニット
22 データ出力ユニット
24 データ通信リンク
26 データ分析デバイス
28 プロセッサユニット
30 デジタルメモリユニット
32 データ通信リンク
34 ソフトウェアモジュール
36 関連医療データセット
38 磁気共鳴フィンガープリントシーケンス
40 値のセット
42 磁気共鳴フィンガープリントデータセット
44 領域
46 領域
48 磁気共鳴フィンガープリントシーケンスを提供するステップ
50 RF励起場を印加するステップ
52 磁気共鳴イメージング信号データを取得するステップ
54 磁気共鳴フィンガープリントデータセットを転送するステップ
56 事前定義ディクショナリを取り出すステップ
58 新しいディクショナリを作成するステップ
60 ディクショナリに対して磁気共鳴信号データのマッチングを行うステップ
62 関連医療データセットの新しい登録を追加するステップ
64 新しい登録をユーザがアクセスできるようにするステップ
66 割り当てを医療データセットに追加するステップ
68 関連医療データセットを取り出し、及び分析するステップ
70 統計データをアクセスできるようにするステップ
縦緩和時間
横緩和時間
図1
図2
図3
図4