特許第6596089号(P6596089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許6596089アレルギー検査で使用するための方法及び機器
<>
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000002
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000003
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000004
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000005
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000006
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000007
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000008
  • 特許6596089-アレルギー検査で使用するための方法及び機器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596089
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】アレルギー検査で使用するための方法及び機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20191010BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20191010BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61B10/00 V
   A61B5/00 M
   A61B5/00 101A
   A61B5/02 310A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-532024(P2017-532024)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公表番号】特表2018-504174(P2018-504174A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】EP2015079217
(87)【国際公開番号】WO2016096591
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】14198854.3
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】メナ ベニト マリア エストレラ
(72)【発明者】
【氏名】キレンコ イホール オレホビッチ
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−275992(JP,A)
【文献】 特開2004−065675(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/182932(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/147149(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0276196(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104116525(CN,A)
【文献】 BLANIK, N. et al.,Frequency-selective quantification of skin perfusion behavior during allergic testing using photoplethysmography imaging,PROCEEDINGS OF SPIE : PROGRESS IN BIOMEDICAL OPTICS AND IMAGING,米国,SPIE,2014年 3月21日,VOL:9034,,PAGE(S):903429/1-6,URL,http://dx.doi.org/10.1117/12.2043567
【文献】 NISHINO, K. et al.,Detection and visualization of intracutaneous allergic type-specific elements using long-wavelength near-infrared hyperspectral imaging,Skin Research and Technology,2013年 2月,Vol.19,e157-166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00−5/0295
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するための処理ユニットで実施される方法であって、前記方法は、
前記物質が付与された位置を含む前記対象者の皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第1の組を受信するステップであって、前記第1の組の光強度値は可視光の強度である、ステップと、
前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第2の組を受信するステップであって、前記第2の組の光強度値は赤外(IR)光の強度である、ステップと、
前記光強度値の第1の組に基づいて光動脈波(PPG)パルス振幅の第1の空間分布を生成するステップと、
前記光強度値の第2の組に基づいてPPGパルス振幅の第2の空間分布を生成するステップと、
前記第1の空間分布を前記第2の空間分布と比較し、前記第1の空間分布及び前記第2の空間分布の各々について、前記物質が付与された前記位置に対応するPPGパルス振幅を、前記物質が付与されていない位置に対応するPPGパルス振幅と比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて、前記対象者が前記物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうか、及び前記アレルギー反応の激しさの指示を出力するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の空間分布を前記第2の空間分布と比較するステップは、
前記第1の空間分布内の前記PPGパルス振幅を第1の閾値と比較することによって前記第1の空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
前記第2の空間分布内の前記PPGパルス振幅を第2の閾値と比較することによって前記第2の空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
前記第1の空間分布内の前記識別された高パルス振幅領域を前記第2の空間分布内の前記識別された高パルス振幅領域と比較するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第1のベースラインの組を受信するステップであって、前記第1のベースラインの組の光強度値は可視光の強度である、ステップと、
前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第2のベースラインの組を受信するステップであって、前記第2のベースラインの組の光強度値は赤外(IR)光の強度である、ステップと、
光強度値の前記第1のベースラインの組に基づいてPPGパルス振幅の第1のベースライン空間分布を生成するステップと、
光強度値の前記第2のベースラインの組に基づいてPPGパルス振幅の第2のベースライン空間分布を生成するステップと
を更に含み、
前記物質が前記皮膚領域に付与される前に、前記第1のベースラインの組及び前記第2のベースラインの組の光強度値が得られている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
PPGパルス振幅の前記第1の空間分布からPPGパルス振幅の前記第1のベースライン空間分布を減算して、PPGパルス振幅の補正済みの第1の空間分布を生成するステップと、
PPGパルス振幅の前記第2の空間分布からPPGパルス振幅の前記第2のベースライン空間分布を減算して、PPGパルス振幅の補正済みの第2の空間分布を生成するステップと
を更に含み、
前記第1の空間分布を前記第2の空間分布と比較するステップは、前記補正済みの第1の空間分布を前記補正済みの第2の空間分布と比較するステップを含み、前記物質が付与された前記位置に対応するPPGパルス振幅を、前記物質が付与されていない位置に対応するPPGパルス振幅と比較するステップは、前記物質が付与された前記位置に対応する補正済みのPPGパルス振幅を、前記物質が付与されていない前記位置に対応する補正済みのPPGパルス振幅と比較するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のベースライン空間分布内の前記PPGパルス振幅を閾値と比較することによって前記第1のベースライン空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
前記第2のベースライン空間分布内の前記PPGパルス振幅を閾値と比較することによって前記第2のベースライン空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
前記第1のベースライン空間分布及び前記第2のベースライン空間分布内の識別された前記高パルス振幅領域に基づき、前記物質を付与するための皮膚の位置を選択するステップと
を更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記物質を付与するための皮膚の位置を選択するステップは、前記識別された高パルス振幅領域の何れにも含まれない皮膚の位置を選択するステップを含み、及び/又は、前記方法は、前記選択された位置において前記対象者の皮膚に印を施すステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記空間的に分布した光強度値の第1の組は、第1の時点において得られる前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値と、後の第2の時点において得られる前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値とを含み、
前記空間的に分布した光強度値の第2の組は、前記第1の時点において得られる前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値と、前記第2の時点において得られる前記皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値とを含み、
前記光強度値の第1の組に基づいてPPGパルス振幅の第1の空間分布を生成するステップは、前記第1の時点に対応するPPG振幅の初期の第1の空間分布と、前記第2の時点に対応するPPG振幅の後の第1の空間分布とを生成するステップを含み、
前記光強度値の第2の組に基づいてPPGパルス振幅の第2の空間分布を生成するステップは、前記第1の時点に対応するPPG振幅の初期の第2の空間分布と、前記第2の時点に対応するPPG振幅の後の第2の空間分布とを生成するステップを含み、
前記第1の空間分布を前記第2の空間分布と比較するステップは、前記初期の第1の空間分布を前記初期の第2の空間分布と比較し、且つ前記後の第1の空間分布を前記後の第2の空間分布と比較するステップを含む、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記初期の第1の空間分布を前記後の第1の空間分布と比較し、且つ前記初期の第2の空間分布を前記後の第2の空間分布と比較するステップを更に含み、前記対象者が前記物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの判定を出力するステップは、前記初期の空間分布と前記後の空間分布との前記比較に更に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象者がアレルギー反応を経験しているかどうかの前記判定は、アレルギー反応の激しさの指示及び/又は前記対象者が前記物質に対するアレルギー反応を経験している尤度を含む、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記皮膚領域は、第1の物質が付与された第1の位置と、第2の物質が付与された第2の位置とを含み、前記対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの指示を出力するステップは、前記対象者が第1の物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの第1の指示と、前記対象者が第2の物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの第2の指示とを出力するステップを含む、請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するための機器であって、
請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法を実施する処理ユニット
を含む、機器。
【請求項12】
対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するためのシステムであって、
請求項11に記載の機器と、
少なくとも1つの波長の可視光及び少なくとも1つの波長の赤外(IR)光を放つ光源と、
前記機器と通信するカメラであって、
前記少なくとも1つの波長の可視光の強度及び前記少なくとも1つの波長のIR光の強度を検出し、
空間的に分布した可視光強度値及び空間的に分布したIR光強度値を出力する、
カメラと、
前記物質を前記対象者の皮膚に接触させておくための皮膚パッチであって、前記少なくとも1つの波長の可視光に対して少なくとも部分的に透過的であり且つ前記少なくとも1つの波長のIR光に対して少なくとも部分的に透過的である材料を含む皮膚パッチと
を含む、システム。
【請求項13】
前記機器と通信するプロジェクタを更に含み、前記プロジェクタは、前記機器によって選択される位置において前記対象者の皮膚上に印を投影する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
適切なコンピュータ又はプロセッサによって実行されると、前記コンピュータ又はプロセッサが請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法を実施するコンピュータ可読コードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者が所与の物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するための方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーは免疫システムの過敏性の疾患である。症状は目の充血、痒み、鼻水、湿疹、蕁麻疹、又は喘息発作を含む。環境内の通常は無害の物質に人の免疫システムが反応すると、アレルギー反応が起こる。アレルギー反応を引き起こす物質はアレルゲンと呼ばれる。例えば、回避及び環境制御手段によるアレルギーの有効な管理は、対象者によって経験される症状に関与するアレルゲンを正確に診断することに依存する。アレルギー状態を診断するための様々な検査が存在する。
【0003】
皮膚検査は、アレルギー症状を引き起こす物質を識別するための最も高感度な態様の1つである。そのような1つの検査は皮膚プリック検査であり、この検査はハウスダストダニ、花粉、及びネコのふけに対するアレルギーを診断するために一般に使用される。この検査は、皮膚領域をペンで印付けし、検査される各アレルゲンを識別することを含む。潜在的な各アレルゲンの抽出物の小滴が対応する印上に配置され、抽出物が皮膚の外層(表皮)内に入ることができるように皮膚が穿刺される。30分後に皮膚の反応が評価される。皮膚プリック検査の不利点は、湿疹又は皮膚描記症を有する患者で結果の解釈が困難なことである。
【0004】
別の種類のアレルギー皮膚検査は皮内検査である。この検査は、皮下注射針を使用して少量のアレルゲンを皮膚内に注射することを含む。皮内検査は専門家の総合施設内のアレルギー専門家によってのみ行うことができ、従って比較的稀にのみ使用される。
【0005】
パッチ検査は、接触アレルギー皮膚炎を診断するために広く使用されている。パッチ検査は、皮膚に接触する物質が皮膚の炎症を引き起こしているかどうかを識別することができる。患者の皮膚の健康な領域に対し、あり得るアレルゲンが標準化された形式(例えば、それぞれが異なるアレルゲンを含む複数の別個の空間領域に分けられた粘着パッチ)で付与される。パッチは48時間にわたりそのままにされ、それにより、様々な潜在的なアレルゲンがその期間中に対象者の皮膚に絶えず付けられる。パッチがなくなってから検査領域が再試験され得るように、対象者の皮膚上のパッチの位置を印付けするために油性マジック又は手術用マーカが使用される。典型的には、パッチが除去されると直ちに検査の最初の読取りが行われ、最初に配置してから3〜4日後(即ち、除去してから1〜2日後)に追加の読取りが行われる。
【0006】
パッチ検査は、疑わしい化学物質を使って又は標準的な一連のアレルゲンを使って行われ得る。図1aは、対象者に使用されている検査パッチ10を示す。検査パッチ10は、それぞれが異なる潜在的なアレルゲンを含む10個の物質含有領域11を含む。図1bは、パッチ10が除去された直後の対象者の皮膚を示す。赤い皮膚の腫れの形態を取る反応12が、パッチ10に含まれる物質の1つによって引き起こされたことが見て取れる。
【0007】
パッチ検査反応の分類及び点数付けは描写的形態によって決まる。アレルギー(即ち、陽性)検査応答の典型的な形態学的特徴は、紅斑(赤さ)、浮腫(腫れ)、丘疹(立体隆起)、及び小嚢(液体で満たされた隆起)である。反応がアレルギー性であると見なされるには、紅斑性の浸潤及び/又は丘疹の両方が生じる必要がある。対照的に、浸潤なしに紅斑のみを示す反応(疑わしい反応として知られる)は非特異的であり、且つ/又はアレルギーではなく刺激によって引き起こされることが多い。腫れ/炎症を起こした領域の大きさも考慮される。アレルギーパッチ検査反応は、従来、1+〜3+の評価尺度を使用して強さに関してスコアが付けられている(1+は弱い陽性反応に対応し、3+は極度の陽性反応に対応する)。図2は、パッチ検査反応の例を示す。図示の反応は(左上から時計回りに)陰性、陰性(刺激性反応)、疑わしい、1+陽性、2+陽性、及び3+陽性として分類され得る。ときとして、これらの結果は不確かであり又は誤解を招くことがある。例えば一部の事例では、1つ又は2つの陽性反応ではなく、ほぼ全ての検査領域が赤くなり痒くなる(従って、偽陽性の結果を生む)こともある。これは「アングリーバック(angry back)」として知られており、非常に激しい皮膚炎を有する対象者で起こる可能性が最も高い。他の事例では、通常はその人の皮膚炎を引き起こす物質に対して明確な反応が殆どない又は全くない場合がある(偽陰性の結果)。アレルギー反応と刺激性反応とを区別することは、主としてパッチ検査を解釈する際に重要であることが理解されるであろう。
【0008】
パッチ検査反応の読取りは、医療専門家による検査応答の視診及び触診に基づき主観的である。従って、パッチ検査の結果を確実に解釈できるようになるために、アレルギー専門家は完全に訓練を受けていなければならない。実際には、パッチ検査が臨床医によってどのように読み取られ、且つまたその後で解釈されるかにおいて個人間の著しいばらつきがある。アレルギー専門家の背景知識及び経験が結果に大きく影響し得る。例えば、一部のアレルギー専門家は、検査領域のごく一部における均一の赤さを1として評価し得る一方、他のアレルギー専門家にとって1のスコアは全検査領域内の均一の赤さを含意する。
【0009】
パッチ検査の更なる不利点は、パッチが対象者に取り付けられている間、パッチが乾いたままにされなければならないことである。これは、スポンジパッチのみを取り得ること、及び過度の発汗が回避されるべきことを意味する。更に、パッチは、日光又は他の紫外線(UV:ultraviolet)光源に曝されるべきでない。従って、パッチ検査は、対象者の日常作業に数日にわたってかなりの混乱を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、対象者が所与の物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定するための迅速であり、便利であり、且つ信頼できる態様が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するための方法が提供される。この方法は、
− 物質が付与された位置を含む対象者の皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第1の組を受信するステップであって、第1の組の光強度値は可視光の強度である、ステップと、
− 皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第2の組を受信するステップであって、第2の組の光強度値は赤外(IR)光の強度である、ステップと、
− 光強度値の第1の組に基づいて光動脈波(PPG)パルス振幅の第1の空間分布を生成するステップと、
− 光強度値の第2の組に基づいてPPGパルス振幅の第2の空間分布を生成するステップと、
− 第1の空間分布を第2の空間分布及び物質が付与された位置と比較するステップと、
− その比較に基づいて、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの指示を出力するステップと
を含む。
【0012】
従って、本発明によるシステムは、従来の皮膚パッチによるアレルギー検査よりも高感度且つ特異的でありながら、更に客観的且つ定量的である皮膚パッチによるアレルギー検査を可能にする。更なる利点は、本発明によるシステムが従来の検査よりもはるかに迅速に結果を与えることができ、従って対象者の不便さを著しく減らせることである。
【0013】
一部の実施形態では、空間的に分布した光強度値の第1の組は、空間的に分布した光強度値の第2の組と同時に得られる。他の実施形態では、空間的に分布した光強度値の第1の組及び空間的に分布した光強度値の第2の組は逐次的に得られる。
【0014】
一部の実施形態では、第1の空間分布を第2の空間分布と比較するステップは、第1の空間分布内のパルス振幅を第1の閾値と比較することによって第1の空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、第2の空間分布内のパルス振幅を第2の閾値と比較することによって第2の空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、第1の空間分布内の識別された高パルス振幅領域を第2の空間分布内の識別された高パルス振幅領域と比較するステップとを含む。一部の実施形態では、第2の閾値は第1の閾値と同じである。代替的実施形態では、第2の閾値は第1の閾値と異なる。
【0015】
一部の実施形態では、この方法は、
− 皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第1のベースラインの組を受信するステップであって、第1のベースラインの組内の光強度値は可視光の強度である、ステップと、
− 皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値の第2のベースラインの組を受信するステップであって、第2のベースラインの組内の光強度値は赤外(IR)光の強度である、ステップと、
− 光強度値の第1のベースラインの組に基づいてPPGパルス振幅の第1のベースライン空間分布を生成するステップと、
− 光強度値の第2のベースラインの組に基づいてPPGパルス振幅の第2のベースライン空間分布を生成するステップと
を含む。
【0016】
一部の実施形態では、空間的に分布した光強度値の第1のベースラインの組は、空間的に分布した光強度値の第2のベースラインの組と同時に得られる。他の実施形態では、空間的に分布した光強度値の第1のベースラインの組及び空間的に分布した光強度値の第2のベースラインの組は逐次的に得られる。
【0017】
かかる実施形態では、物質が皮膚領域に付与される前に、第1のベースラインの組及び第2のベースラインの組の光強度値が得られている。
【0018】
かかる一部の実施形態では、この方法は、
− PPGパルス振幅の第1の空間分布からPPGパルス振幅の第1のベースライン空間分布を減算して、PPGパルス振幅の補正済みの第1の空間分布を生成するステップと、
− PPGパルス振幅の第2の空間分布からPPGパルス振幅の第2のベースライン空間分布を減算して、PPGパルス振幅の補正済みの第2の空間分布を生成するステップと
を更に含む。
【0019】
かかる実施形態では、第1の空間分布を第2の空間分布及び物質が付与された位置と比較するステップは、補正済みの第1の空間分布を補正済みの第2の空間分布及び物質が付与された位置と比較するステップを含む。
【0020】
一部の実施形態では、この方法は、
− 第1のベースライン空間分布内のパルス振幅を閾値と比較することによって第1のベースライン空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
− 第2のベースライン空間分布内のパルス振幅を閾値と比較することによって第2のベースライン空間分布内の高パルス振幅領域を識別するステップと、
− 第1のベースライン空間分布及び第2のベースライン空間分布内の識別された高パルス振幅領域に基づき、物質を付与するための皮膚の位置を選択するステップと
を更に含む。
【0021】
一部の実施形態では、物質を付与するための皮膚の位置を選択するステップは、識別された高パルス振幅領域の何れにも含まれない皮膚の位置を選択するステップを含む。一部の実施形態では、この方法は、選択された位置において対象者の皮膚に印を施すステップを更に含む。
【0022】
一部の実施形態では、空間的に分布した光強度値の第1の組は、第1の時点において得られる皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値と、後の第2の時点において得られる皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値とを含む。かかる実施形態では、空間的に分布した光強度値の第2の組は、第1の時点において得られる皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値と、第2の時点において得られる皮膚領域に及ぶ空間的に分布した光強度値とを含む。かかる一部の実施形態では、光強度値の第1の組に基づいてPPGパルス振幅の第1の空間分布を生成するステップは、第1の時点に対応するPPG振幅の初期の第1の空間分布と、第2の時点に対応するPPG振幅の後の第1の空間分布とを生成するステップを含む。かかる一部の実施形態では、光強度値の第2の組に基づいてPPGパルス振幅の第2の空間分布を生成するステップは、第1の時点に対応するPPG振幅の初期の第2の空間分布と、第2の時点に対応するPPG振幅の後の第2の空間分布とを生成するステップを含む。かかる一部の実施形態では、第1の空間分布を第2の空間分布と比較するステップは、初期の第1の空間分布を初期の第2の空間分布と比較し、且つ後の第1の空間分布を後の第2の空間分布と比較するステップを含む。
【0023】
かかる一部の実施形態では、この方法は、初期の第1の空間分布を後の第1の空間分布と比較し、且つ初期の第2の空間分布を後の第2の空間分布と比較するステップを更に含む。かかる実施形態では、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの判定を出力するステップは、初期の空間分布と後の空間分布との比較に更に基づく。
【0024】
一部の実施形態では、対象者がアレルギー反応を経験しているかどうかの判定は、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験している尤度を含む。一部の実施形態では、対象者がアレルギー反応を経験しているかどうかの判定は、アレルギー反応の激しさの指示を含む。
【0025】
一部の実施形態では、皮膚領域は、第1の物質が付与された第1の位置と、第2の物質が付与された第2の位置とを含む。かかる一部の実施形態では、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの指示を出力するステップは、対象者が第1の物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの第1の指示と、対象者が第2の物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの第2の指示とを出力するステップを含む。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するための機器も提供される。この機器は、第1の態様の方法を実施するように構成される処理ユニットを含む。
【0027】
上記の方法ステップの何れかを実施するように処理ユニットが更に構成される、この機器の他の様々な実施形態も考えられる。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定する際に使用するためのシステムも提供される。このシステムは、第2の態様による機器と、可視光の少なくとも1つの波長及び赤外(IR)光の少なくとも1つの波長を放つように構成される光源と、機器と通信するカメラと、物質を対象者の皮膚に接触させておくための皮膚パッチとを含む。カメラは、少なくとも1つの波長の可視光の強度及び少なくとも1つの波長のIR光の強度を検出するように構成される。カメラは、空間的に分布した可視光強度値及び空間的に分布したIR光強度値を出力するように更に構成される。皮膚パッチは、少なくとも1つの波長の可視光に対して少なくとも部分的に透過的であり且つ少なくとも1つの波長のIR光に対して少なくとも部分的に透過的である材料を含む。
【0029】
一部の実施形態では、システムは、機器と通信するプロジェクタを更に含む。かかる一部の実施形態では、プロジェクタは、機器によって選択される位置において対象者の皮膚上に印を投影するように構成される。
【0030】
一部の実施形態では、機器は、モニタリング期間中、カメラに少なくとも1つの波長の可視光の強度の連続した時系列を出力させ、且つ少なくとも1つの波長のIR光の強度の連続した時系列を同時に出力させるように構成される。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様のシステム内で使用するための皮膚パッチも提供される。皮膚パッチは、物質を対象者の皮膚に接触させておくように構成される。皮膚パッチは、少なくとも1つの波長の可視光に対して少なくとも部分的に透過的であり且つ少なくとも1つの波長のIR光に対して少なくとも部分的に透過的である材料を含む。
【0032】
本発明の第5の態様によれば、コンピュータプログラム製品であって、その中に実装されるコンピュータ可読コードを含むコンピュータプログラム製品も提供され、コンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ又はプロセッサによって実施されると、コンピュータ又はプロセッサが第1の態様の方法を実施するように構成される。
【0033】
本発明をより良く理解するために、及び本発明がどのように実施され得るかをより明確に示すために、ここで、添付図面が単なる実施例として参照される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a】対象者に取り付けられた従来技術のアレルギー検査パッチを示す。
図1b】検査パッチが除去された後の図1aの対象者を示す。
図2】パッチ検査に対する皮膚反応の例を示す。
図3】本発明の第1の特定の実施形態による、対象者が所与の物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定するための機器を示す。
図4】本発明の全般的な実施形態による、対象者が所与の物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定するための方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の全般的な実施形態による、解析プロセスを示すフローチャートである。
図6a】アレルギー検査に対する皮膚反応の写真である。
図6b図6aの皮膚反応のPPG画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態による、対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定するための機器30を示す。機器30は、カメラ31、光源32、及び通信リンク34によってカメラ31と通信するコントローラ33を含む。一部の実施形態では、単一のカメラ31の代わりにカメラの組が使用される。一部の実施形態では、単一の光源32の代わりに光源の組が使用される。機器30は、少なくとも1つの潜在的にアレルギー性の物質を対象者の皮膚に接触させておくための皮膚パッチ35も含む。
【0036】
コントローラ33は、機器30の動作を制御し、機器30を制御して対象者がある物質に対してアレルギーがあるかどうかを以下に記載のように判定するように構成又はプログラムされる、1個又は複数個のプロセッサ、処理ユニット、マルチコアプロセッサ、若しくはモジュールとすることができ、又はそれらを含み得る。
【0037】
光源32は、可視光36の少なくとも1つの波長及び赤外(IR:infrared)37の少なくとも1つの波長を含む少なくとも2つの波長の光を放つように構成される。好ましい実施形態では、光源32は、可視スペクトル及び近IRスペクトルに及ぶ広範囲の波長にわたって発光する。一部の実施形態では、光源32は、可視光源及び別個のIR光源を含む。一部の実施形態では、光源32は可視光及びIR光を同時に放ち、他の実施形態では、光源32は可視光及びIR光を逐次的に放つ。カメラ31は、光源32によって放たれる波長に対応する少なくとも2つのフィルタ(即ち、少なくとも1つの可視波長フィルタ及び少なくとも1つのIR波長フィルタ)を備え得る。従って、カメラ31は、反射される可視光38及び反射されるIR39を検出することができる。好ましい実施形態では、カメラ31は、高ダイナミックレンジを有する電荷結合素子(CCD:charge-coupled device)カメラである。一部の実施形態では、カメラ31は、光強度値が両方の波長において同時に検出されることを可能にするために、反射される可視光及び反射されるIRを一緒に検出するように構成される。他の実施形態では、複数のカメラ31が設けられ得、光強度値が両方の波長において同時に検出されることを可能にするために、それぞれのカメラが個々の波長(例えば、可視及びIR)において光強度値を検出する。更に他の実施形態では、可視波長及びIR波長における光強度値を逐次的に得るために、カメラ31は、可視波長及びIR波長における光を交互に又は逐次的に検出するように構成され得る。
【0038】
皮膚パッチ35は、光源32によって放たれる波長に対して少なくとも部分的に透過的である。光源32によって放たれる光がパッチ材料を介して皮膚に到達するために、更に反射光がパッチ材料を通過した後でカメラ31によって検出可能であるために、皮膚パッチ35が十分透過的でなければならないことが理解されるであろう。様々な適切な生体適合性材料及び低アレルギー性材料が当技術分野で知られている。対象者の皮膚に取り付けることができるように、皮膚パッチ35は粘着層で少なくとも部分的に表面を覆われる。通信リンク34は、コントローラ33がカメラ31に制御信号を送信し、カメラ31から画像データを受信することを可能にする双方向通信リンクである(但し、代替的実施形態では、コントローラ33からカメラ31への制御信号の送信のみを可能にする単方向通信リンクが代わりに使用され得ることが理解されるであろう)。通信リンク34は無線通信リンクであるが、通信リンク34がケーブル及び/又は回路を含む代替的実施形態が考えられる。
【0039】
一部の実施形態では、機器30は、例えば対象者の皮膚上への皮膚パッチ35の最適な配置を実現するのを支援するために、対象者の皮膚領域上に画像又は印を投影するためのプロジェクタを更に含む。かかる実施形態では、プロジェクタは、コントローラ33からプロジェクタに制御信号が送信されることを可能にする通信リンクによってコントローラ33に接続される。
【0040】
機器30は、対象者の皮膚の特性を検出して解析するために光動脈波(PPG:photoplethysmography)を使用する。従来のPPGは、少なくとも1つの可視波長における光が関心のある皮膚領域内に放たれ、放射波長における反射光(或いは透過光)が光検出器によって測定される単純且つ安価な光学技法である。反射光の変化する強度は、関心のある皮膚領域の灌流の変化に対応する。従来のPPGシステムは、光源及び光検出器が皮膚に直接接触することを必要とし、従ってセンサの真下の皮膚領域のみを測定することを可能にする。従来の多くのPPGシステムは2つ以上の可視波長において発光し、これは、雑音、皮膚の動き、及び周辺光レベルの変化に対する測定のロバスト性を改善する。
【0041】
対照的に本発明の実施形態は、関心のある皮膚領域(即ち、アレルギー検査パッチ35を含む領域)が皮膚表面から離れて位置するカメラによって撮影される、カメラによる反射モードのPPGを使用する。カメラと皮膚表面との間の距離は、関心のある全皮膚領域(例えば、物質が付与されている全域)がカメラの視野内にあるのに十分なものである。更に、関心のある皮膚領域はIR並びに可視光によって照らされる(カメラ31はIR並びに可視光の反射を検出する)。全ての画素内の検出光強度、又は画素群の平均検出光強度がPPG時間信号と見なされ得る。PPG時間信号は、関心のある皮膚領域内の灌流の推移を表す。図1の実施形態では、コントローラ33は、個々の画素ではなく小さい画素群(ブロック)を解析するように構成され、そのため、PPG時間信号が各画素群の平均強度に基づいて生成される。ブロック内の画素数は特定の応用に応じて選択可能である。より大きい(即ち、より多くの画素を含む)ブロックはより優れた信号対雑音比(SNR:signal-to-noise ratio)をもたらすが、より小さい(即ち、より少ない画素を含む)ブロックはより優れた空間分解能を与える。代替的実施形態では、コントローラ33が、それぞれの画素を解析するように構成される。機器30がIR並びに可視光を使用するため、反射されるIR光及び反射される可視光に基づいて別個のPPG信号が生成される。
【0042】
各PPG時間信号は、各心拍による血液量の心臓同期変化に起因する拍動(「AC」)生理学的波形を含み、呼吸、交感神経系の活動、及び体温調節に起因する様々な低周波数成分を有する、ゆっくりと変化する(「DC」)ベースライン上に重畳される。コントローラ33は、従来のPPGシステム(パルス酸素濃度計等)内でPPG信号が処理されるのと同様にカメラ31によって取得される信号を処理し、それによりパルス振幅の空間マップを生成する。コントローラ33は、IR PPG信号を可視光PPG信号と別々に処理し、それにより2つの別個の空間マップ(即ち、IRに基づくマップ及び可視光に基づくマップ)が生成される。
【0043】
PPG信号のパルス振幅(拍動性)は、局所的な皮膚の特性の影響を受ける。例えば、アレルギー反応又は力学的衝突による皮膚の炎症は、炎症領域内の皮膚表面下から抽出されるPPG信号の振幅を高める。有利には、反応が皮膚表面上で目に見えるようになる前に、かかる変化がカメラベースのPPGシステム(機器30等)によって検出され得る。即ち、本発明の実施形態は、従来の皮膚パッチによる検査方法よりもはるかに迅速にアレルギー検査結果を生成することができる。更に本発明の実施形態は、皮膚反応の推移を実時間でモニタすることを可能にする。
【0044】
次に、対象者が所与の物質に対してアレルギーがあるかどうかを判定するための一例示的方法が図4に関して説明される。最初のステップ401で、対象者の皮膚領域(即ち、検査パッチ35を配置するのが望ましい領域)のベースラインIRマップ及び可視PPGマップが作成される。上記のように、ベースラインマップを作成することは、コントローラ33が少なくとも1つの可視波長及び少なくとも1つのIR波長についてPPGの拍動性を画素ブロックごとに解析することを含む。ベースラインマップは、PPG振幅の空間分布をそれぞれ含む。PPG振幅がより高い局部は、局所的な炎症、日焼け、傷等を既に有する皮膚領域に対応する。好ましい実施形態では、コントローラ33は、(例えば、当技術分野で知られている任意の適切な画像解析技法を使用して)既存の炎症等の領域を自動で検出するように構成される。理想的には、PPG信号の振幅を高める効果を有する炎症又は別の皮膚特性を既に示している領域上に検査パッチが配置されるべきではなく、その理由は、かかる既存の炎症が検査パッチによって引き起こされる反応を解析し解釈するのを困難にし得るからである。しかし、(例えば、対象者が広範囲にわたる皮膚疾患を患う場合又は広い傷を有する場合に)かかる領域上に検査パッチを配置しないことは必ずしも可能とは限らない。本発明の実施形態は、とりわけそのような状況に有利であり、それは検査パッチが施された後で得られるPPG振幅からベースラインPPG振幅が減算され、検査パッチに対する観察される反応に既存の皮膚疾患がどのように寄与しているかが推定されることを可能にし得るからである。
【0045】
ベースラインPPGマップの作成が本発明にとって必須ではないことに留意すべきである(従って、図4ではステップ401が破線の囲いで表わされている)。ベースラインマップが作成されない本発明の実施形態が考えられる。かかる実施形態は、検査パッチを施すことが意図される皮膚領域内に既存の皮膚疾患を一切有さないことが分かっている対象者に使用するのに適している。ベースラインマップの作成ステップを省略することは、この方法を実行するのにかかる時間、従ってかかる状況内で対象者に引き起こされる不便さを有利に減らし得る。
【0046】
ステップ402で、例えば医療専門家により、検査パッチ35が対象者に皮膚に取り付けられる。検査パッチ35の位置を選択するために、ステップ401で作成されるベースラインマップが使用される(ベースラインマップが作成されない実施形態では、パッチの位置を選ぶ際に医療専門家の専門知識が依拠される)。理想的には、選択される位置は、PPG振幅を高める既存の特性(炎症、日焼け等)を有する領域を一切含まない。機器30がプロジェクタを更に含む一部の実施形態では、コントローラ33は、検査パッチ35を最適な位置に取り付けるのを支援するために患者の皮膚上に画像又は印を投影することをプロジェクタに行わせる。かかる一部の実施形態では、プロジェクタが既存のPPG振幅上昇特性を有する領域の位置を強調表示する印を投影し、それにより、検査パッチ35を取り付ける医療専門家はそれらの領域を容易に回避することができる。或いは又は加えて、かかる実施形態では、プロジェクタが最適な位置において検査パッチの輪郭を投影することができる。一部の実施形態では、(例えば、当技術分野で知られている任意の適切な画像解析技法を使用して)最適な位置がコントローラ33によって自動で決定される。
【0047】
ステップ403で、例えば光源32及びカメラ31を使用し、検査パッチ35の下にある皮膚領域のPPG測定が取得される。一部の実施形態では、この測定はパッチが取り付けられてから(任意選択的にパッチが取り付けられる間及び/又はその後の)所与の期間(以下、測定期間と呼ばれる)中に継続的に行われる。代替的実施形態では、所定の間隔で無作為抽出検査が行われる。好ましくは、パッチが取り付けられてから24時間の時点に及ぶように測定が取得される。有利には、これは、アレルギー反応及び非アレルギー反応をそれぞれ示唆する漸増性又は漸減性のスコアリングパターンを検出できるようにする。一部の実施形態では、国際接触皮膚炎研究班(International Contact Dermatitis Research Group)のガイドラインに従って測定が取得される。継続的測定が行われる実施形態では、ステップ403の出力は、可視光に関する空間的に分布した光強度値の時系列(即ち、単位時間当たりカメラ31の画素ごとに1つの値)及びIR光に関する空間的に分布した光強度値の時系列を含む。一連の無作為抽出検査が行われる実施形態では、このステップの出力は、単一時点の光強度値(可視及びIR)の空間分布を含む。作り出されるかかる分布の数は、当然ながら、行われる無作為抽出検査の回数に依存する。
【0048】
ステップ404で、ステップ403で作成されたPPGデータが例えばコントローラ33によって解析される。図5は、この解析に使用されるプロセスを示す。最初のステップ501で、光強度値が例えばカメラ31からコントローラ33によって受信される。受信される光強度値は、物質が付与されている位置を含む対象者の皮膚領域に及ぶ空間的に分布した可視光強度値の第1の組と、同じ皮膚領域に及ぶ空間的に分布したIR光強度値の第2の組とを含む。上記のように、カメラ31は可視光強度値及びIR光強度値を同時に取得することができ、そのため可視光の値とIRの値とが同じ時点に対応する。或いは、カメラ31は可視光強度値及びIR光強度値を逐次的に取得することができる(例えば、交互の可視光値及びIR光強度値)。強度値が逐次的に取得される場合、心拍信号の拍動性(振幅)が生理学的に変わるため、各波長において強度値を得る間隔が例えば鼓動間のタイミングによって限定されるべきである。
【0049】
ステップ502で、受信される可視光強度値に基づいてPPGパルス振幅の第1の(可視)空間分布が(例えば、コントローラ33によって)生成される。受信されるIR光強度値に基づいて、PPGパルス振幅の第2の(IR)空間分布も生成される。一部の実施形態では、PPGパルス振幅値が画素ごとに(即ち、光強度値ごとに)計算される。代替的実施形態では、ブロック内の画素の光強度値の平均を使用し、PPGパルス振幅値が画素ブロックごとに計算される。一部の実施形態(例えば、測定期間の持続時間にわたってカメラが皮膚領域を継続的にモニタする実施形態)では、生成される空間分布が経時変化し、測定期間の一部又は全てに及ぶ。他の実施形態(例えば、1回又は複数回の無作為抽出検査が行われる実施形態)では、生成される空間分布が静的である。
【0050】
ベースラインマップが作成されている実施形態では、プロセッサ33がベースラインマップも(例えば、それをメモリから取り出し又は遠隔サーバから受信することによって)得る。次いで、生成される各空間分布が対応するベースラインマップと比較される(即ち、ステップ502で生成されるIR空間分布がステップ401で作成されるIRベースラインマップと比較され、ステップ502で生成される可視空間分布がステップ401で作成される可視ベースラインマップと比較される)。生成される空間分布が経時変化する場合、測定期間の全ての時点について又は測定期間にわたって分散される所定数の時点において、各分布がその対応するベースラインマップと比較され得る。生成される各分布と対応するベースラインマップとの間のPPGパルス振幅の差が画素ごとに(又はブロックごとに)計算される(即ち、「ベースライン皮膚疾患」の寄与が減算される)。これにより、生成される分布ごとに「差異マップ」が作成される。差異マップは、検査パッチ35に対する対象者の皮膚反応を表す。従って、差異マップはPPGパルス振幅の補正済みの空間分布と見なされ得る。元の(即ち、補正されていない)PPG振幅分布と同様に、補正済みの空間分布は静的である(即ち、特定の時点における皮膚反応を表す)か、又は経時変化し得る。
【0051】
IR光は可視光よりも皮膚組織の奥深くに侵入する。従って、IR光を使用して取得されるPPGデータは、可視光を使用して取得されるPPGデータよりも皮膚表面の更に下における組織内灌流を示す。IR光を使用して取得されるPPGデータは、PPGパルス振幅に影響する皮膚反応がIR PPGデータ内で、可視光PPGデータ内よりも早い時点において検出可能になることも意味する。より深刻な皮膚反応は、より深刻でない反応よりも皮膚表面下のより奥深くに延在する。従って、反応のIR PPGマップ及び可視光PPGマップを様々な時点について解析することにより、2つの異なる深度における皮膚反応の推移が観察され得る。これは、可視光のPPGデータのみを使用して可能であるよりも著しく正確に反応の激しさが明らかにされること、従って反応がアレルギー性(又はその他)に分類されることを可能にする。
【0052】
ステップ503で、PPGパルス振幅の生成済みの可視光空間分布が、PPGパルス振幅の生成済みのIR空間分布と比較される。一部の実施形態では、この比較は各空間分布内の対応する画素(又はブロック)のパルス振幅を比較することによって行われる。一部の実施形態では、この比較は各空間分布内の対応する画素の画素値(又は対応するブロックの平均画素値)を比較することによって行われる。強い反応を経験している皮膚領域の画素値は、反応を経験していない皮膚領域の画素値と約10ポイント異なることが予期される。補正済みの空間分布が作成されている実施形態では、補正版がこの比較に使用される。一部の実施形態では、ブロックに対応する皮膚領域が反応を示しているかどうかを判定するために、PPGパルス振幅の空間分布内の画素(又はブロック)ごとに、その画素/ブロックのパルス振幅が既定の基準の組と比較される。好ましい実施形態では、PPGパルス振幅の可視光空間分布及びPPGパルス振幅のIR空間分布に対して同じ基準が付与される。同じ基準を使用することは、様々な深度における反応を客観的に比較することを可能にする。
【0053】
一部の実施形態では、既定の基準の組が既定の閾値の組を含む。一部の実施形態では、それらの閾値が画素値に関して定められる。一部の実施形態では、既定の閾値の組が最小画素値を含み、それにより閾値を上回る画素値を有する画素(又はブロック)は反応を経験している皮膚領域を表すと見なされる。かかる一部の実施形態では、既定の閾値の組が第1の最小画素値及び第2の最小画素値を含み、それにより第1の最小画素値を上回るが第2の最小画素値以下の画素値を有する画素(又はブロック)は、中程度の反応を経験している皮膚領域を表すと見なされ、第2の最小画素値を上回る画素値を有する画素(又はブロック)は、強い反応を経験している皮膚領域を表すと見なされる。
【0054】
PPGパルス振幅分布は、物質が付与された位置とも比較される。好ましい実施形態では、物質が付与されている皮膚領域に対応するPPGパルス振幅が、物質が付与されていない皮膚領域に対応するPPGパルス振幅と比較される。それにより、物質が付与されていない領域は基準又はベースラインの役割を果たす。人の皮膚の全体的なPPGパルス振幅は、血圧、心拍、体位等を含む様々な要因によって変わり得るため、基準又はベースラインを有することは有利である。従って、物質に対する皮膚反応によってのみ引き起こされるPPGパルス振幅の変化を検出するために、物質が付与されていることが分かっている皮膚領域のPPGパルス振幅を、同時に取得された物質が付与されていない皮膚領域のPPGパルス振幅と比較することが有益である。例えば、第1の時点と第2の時点との間で物質が付与されている皮膚領域によってPPGパルス振幅の変化が示されるが、同じ時点間で物質が付与されていない皮膚領域によっても同様の大きさの変化が示される場合、これは、物質が付与されている領域内の変化が恐らくその物質に対する反応によって引き起こされたのではないことを示す。
【0055】
次いで、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかを判定するために、その比較結果が使用される。例えば、対象者が所与の領域内で反応を示しており、その領域が物質の位置に対応しており、更に物質が付与されていない領域内で同じ反応が示されていないことを既定の基準との比較が示す場合、その結果として、一部の実施形態では対象者が物質に対するアレルギー反応を経験していると判定される。対照的に、かかる実施形態において対象者が所与の領域内で反応を示しており、その領域が物質の位置に対応しないことを既定の基準が示す場合、対象者は物質に対するアレルギー反応を経験していないと判定される(但し、当然ながら、対象者は別の物質に対するアレルギー反応を経験している可能性はある)。
【0056】
図6bは、3つの潜在的なアレルゲンが付与されている対象者の前腕の可視光PPGマップの一例を示す。この図面の右側の尺度によって示されているように、異なるPPGパルス振幅が異なる色によって表わされている。対象者が左側の物質及び右側の物質に対してアレルギー反応を経験しているが、中央の物質にはアレルギー反応を示していないことが図6bから明確に見て取れる。左側の反応が右側の反応よりも著しく激しいことも明確に見て取れる。図6aは同じ前腕の写真である。PPG振幅マップから評価することに比べ、3つの反応の異なる激しさを写真から正確に評価するのがはるかに困難であることが理解されるであろう。
【0057】
ステップ504で、対象者が物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかの判定が出力される。かかる一部の実施形態では、出力は、何れの皮膚領域がアレルギー反応を示していると見なされるかの指示を含む。一部の実施形態では、対象者がアレルギー反応を経験していると判定される場合、出力は、アレルギー反応の重症度の指示を更に含む。かかる一部の実施形態では、重症度の指示は数値スコアを含む。一部の実施形態では、出力は、所与の皮膚領域がアレルギー反応を示している可能性がどの程度あるかを示す尤度値を含む。かかる一部の実施形態では、尤度値は数値スコアを含む。
【0058】
図3及び図4の本発明の実施形態は、皮膚パッチによるアレルゲン付与技法と共にカメラによるPPG撮像を使用するが、本発明は対象者に潜在的なアレルゲンを付与する他の手段と共に使用され得ることが理解されるであろう。例えば、皮膚パッチ35が機器30から省略され得、代わりに潜在的なアレルゲン物質がプリック検査法、皮内注射、又はアレルギー検査の分野で知られている他の任意の物質付与技法を使用して付与され得る。
【0059】
従って、対象者がある物質に対するアレルギー反応を経験しているかどうかを確実に判定するために、物質に対する皮膚反応が迅速且つ客観的に評価されることを可能にする方法及び機器が提供される。
【0060】
本発明が図面及び上記の説明で詳細に図示され説明されてきたが、かかる図面及び説明は限定的ではなく説明的又は例示的と見なされるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0061】
特許請求の範囲に記載の本発明を実施する際、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態に対する改変形態が当業者によって理解及び実施され得る。特許請求の範囲では、「含む」という語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数形を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲で挙げられる幾つかのアイテムの機能を果たすことができる。ある手段が互いに異なる従属請求項で列挙されるという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用されてはならないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に供給されるか、又は他のハードウェアの一部として供給される、光学記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体上に記憶/分散され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムによって等、他の形態で分散され得る。特許請求の範囲のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b