(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596104
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】運動用被服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
A41D13/005 106
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-558488(P2017-558488)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公表番号】特表2018-517072(P2018-517072A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016000458
(87)【国際公開番号】WO2017157403
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ベネイト−フェーレ、ヨルディ
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ヒュー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ミレス、バルジンダー カウアー
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公告第00104057(GB,A)
【文献】
特開2005−146497(JP,A)
【文献】
米国特許第04195364(US,A)
【文献】
特開2000−158577(JP,A)
【文献】
実公昭38−006702(JP,Y1)
【文献】
独国実用新案第202008001340(DE,U1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0204449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 − 13/12
27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被服の所期の使用時に着用者の上半身を覆う部分(2)を有し、所期の使用時にクライメート区画(3)が着用者の各脇下部分(4)を覆う領域に配置され、前記クライメート区画(3)は、相互に平行に配置され、被服の所期の使用時に着用者の肌に接触する複数のフィン(5)を備え、前記フィン(5)は前記被服の基材(6)上に規定の高さ(hF)で延在する運動用被服であって、
前記フィン(5)は全部のフィン(5)に関する包絡面(7)が前記被服の前記基材(6)に対して直角な方向から視て凧形または菱形を有するように配置され、
所定の距離(b)で隣接し合う2本のフィン(5)の組みから成る2本フィン組の群(5’)または所定の距離(b)で隣接し合う3本のフィン(5)の組みから成る3本フィン組の群(5’’)が前記クライメート区画(3)に配置され、前記2本フィン組の群(5’)とその2本フィン組の群(5’)に隣接する他の前記2本フィン組の群(5’)との間の間隔である群間距離(a)または前記3本フィン組の群(5’’)とその3本フィン組の群(5’’)に隣接する他の前記3本フィン組の群(5’’)との間の間隔である距離(a)は少なくとも7mmであり、前記距離(a)は前記距離(b)より大きい
ことを特徴とする運動用被服(1)。
【請求項2】
前記凧形または菱形の包絡面(7)は垂直方向(V)に高さ(HE)及び水平方向(H)に幅(WE)を有し、前記高さ(HE)は前記幅(WE)の120%〜160%である
請求項1に記載の運動用被服。
【請求項3】
前記クライメート区画(3)を含む着用者の上半身を覆う部分全体は編成工程により作製される
請求項1または2に記載の運動用被服。
【請求項4】
単一フィン(5)が前記クライメート区画(3)に配置され、前記単一フィン(5)は、隣接する他の単一フィン(5)と前記2本フィン組の群(5’)と前記3本フィン組の群(5’’)のいずれとも、少なくとも7mmの距離(a)だけ離間される
請求項1ないし3のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項5】
前記2本フィン組の群(5’)の前記フィン(5)は水平方向(H)に延び、その水平方向(H)の長さ(L)は50mm〜90mmである
請求項1ないし4のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項6】
前記3本フィン組の群(5’’)の前記フィン(5)は水平方向(H)に延び、その水平方向(H)の長さ(L)は80mm〜120mmである
請求項1ないし5のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項7】
単一フィン(5)が前記包絡面(7)の上側領域(U)及び/または下側領域(B)に配置され、2本フィン組の群(5’)は、前記包絡面(7)の中央領域(C)に配置されるとき、前記単一フィン(5)に続いて位置し、少なくとも1つの3本フィン組の群(5’’)が前記包絡面(7)の前記中央領域(C)に配置される
請求項4ないし6のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項8】
2本フィン組の群(5’)または3本フィン組の群(5’’)の場合、該群(5’、5’’)中の前記フィン(5)は最大で2mmの距離で隣接して配置される
請求項1ないし7のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項9】
前記フィン(5)はユーザの肌に面する側の前記基材(6)の側面に連続状に延びる
請求項1ないし8のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項10】
接続布部(8)がユーザの肌から離反する側の前記基材(6)の側面に配置され、前記接続布部(8)は前記フィン(5)の底面を橋絡する
請求項1ないし9のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項11】
前記包絡面(7)の前記高さ(HE)は140mm〜200mmである
請求項1ないし10のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項12】
前記包絡面(7)の前記幅(WE)は120mm〜150mmである
請求項1ないし11のいずれかに記載の運動用被服。
【請求項13】
前記フィン(5)はポリエステル糸及びポリアミド糸で作製される
請求項1ないし11のいずれかに記載の運動用被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被服の所期の使用時に着用者の上半身を覆う部分を有し、所期の使用時にクライメート区画が着用者の各脇下部分を覆う領域に配置される、運動用被服に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な種類の運動用被服は特許文献1により公知となっている。この文献中、着用者の上半身を覆う被服小片には、クライメート区画が異なる部分に設けられている。クライメート区画はまた、脇下部分に提供されている。脇下部分のクライメート区画の形状に関して、特有のデザインは何ら示唆されていない。
【0003】
特に脇下部分では緩冷効果があらゆる場合に十分ではないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案出願公開第202006001380(U1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、効率的な緩冷効果が得られるように脇下部分、即ち腋下領域、での向上した冷却効果を可能にする上述の種類の運動用被服を提案することにある。汗の蒸発は身体の緩冷が向上するように容易でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの目的に対する解決手段は、脇下部分のクライメート区画は、相互に平行に配置され、被服の所期の使用時に着用者の肌に接触する複数のフィンを備え、フィンは被服の基材上に規定の高さに沿って延在し、フィンは全部のフィンに関する包絡面が被服の基材に対して直角な方向から視て凧形または菱形(ダイヤモンド形)を有するように配置されることを特徴とする。
【0007】
フィンの包絡面は、単一フィンの全端部箇所を仮想線により接続したときに得られる形状として理解するべきである;この仮想線の形状は更に凧形または菱形(ダイヤモンド)を形成する。
【0008】
好ましくは、凧形または菱形の包絡面は垂直方向に高さ及び水平方向に幅を有し、高さは幅の120%〜160%、特に130%〜150%である。
【0009】
クライメート区画を含む着用者の上半身を覆う部分全体は編成工程により作製可能である。
【0010】
単一フィンがクライメート区画に配置可能であり、単一フィンは少なくとも7mmの距離だけこれに続くフィンから離間される。
【0011】
更に、少なくとも1つの2本フィン群がクライメート区画に配置可能であり、該2本フィン群は少なくとも7mmの距離だけこれに続くフィンから離間される。それにより、2本フィン群のフィンの水平方向長さは、好ましくは50mm〜90mmである。
【0012】
更なる代替的実施例では、少なくとも1つの3本フィン群がクライメート区画に配置され、3本フィン群は少なくとも7mmの距離だけこれに続くフィンから離間されることが提供される。それにより、3本フィン群のフィンの水平方向長さは、好ましくは80mm〜120mmである。
【0013】
本発明の好ましい特有の実施形態では、単一フィンが包絡面の(垂直方向の)上側領域及び/または(垂直方向の)下側領域に配置され、2本フィン群は、包絡面の(垂直方向の)中央領域に向かって前方に移動するとき、単一フィンに続いて位置し、少なくとも1つの3本フィン群が包絡面の中央領域に配置されることが示唆される。
【0014】
2本フィン群または3本フィン群の場合、群中のフィンは最大で2mm、好ましくは最大で1mmの距離で隣接して配置可能である。
【0015】
フィンは好ましくは、ユーザの肌に面する側の基材の側面に連続状に延びる。
【0016】
他方、接続布部をユーザの肌から離反する側の基材の側面に配置し、接続布部がフィンの底面を橋絡することも可能である。そうすることにより、フィンは布部によって適所に保持される織布の襞部分により形成し得る。
【0017】
包絡面の高さは好ましくは、140mm〜200mmである。包絡面の幅は好ましくは、120mm〜150mmである。
【0018】
フィンは好ましくは、ポリエステル糸及びポリアミド糸で作製される。
【0019】
好ましくは、被服は着用者の身体にぴったりまたはきっちりと合うように生成される。更に、被服の縫い目無しのデザイン(袖を除く)が好ましい。
【0020】
本発明はこのように水分蓄積フィンまたは突出部を提供するものであり、これらは好ましくは編成に(そういうものとして公知である)電子式円形シームレス機械装置を使用して構築され;フィンは、好ましくはダイヤモンド形状の完全な脇下部分上に位置付けられ、この区画の高さは好ましくはその幅の1.4倍である。
【0021】
クライメート区画は好ましくは、追加の編成構成体を作成して織布に基本的にはその中に襞としてのフィンを作成するように表糸を保持することにより構築される。
【0022】
好ましくは、主要構成要素には、少なくとも裏面にポリエステル繊維及び表面にポリアミド繊維を含み;基材層はまた「エラスタン」糸を含み得る。
【0023】
好ましくは、完全な脇下部分は高通気性のメッシュ構成体を編成することにより構築される。フィンまたは突出部は好ましくは、高通気性のメッシュ材料によりそれらが全体的に包囲される。
【0024】
フィン(突出部)は好ましくは増加的な群中に配分され、ダイヤ形状部分、即ちフィンの包絡面、の中央に接近する方向に増加する数のフィンが共に束ねられ、最大で3本フィンが共に束ねられるが最小では1本フィンである。
【0025】
3本フィンが寄せ集められた束中であってフィン主軸の長手方向には、当該束の縁部には好ましくは2本のフィンが共に束ねられて、これに続く縫合ノードに3本のフィンが集められて、皺より効果が低減される。
【0026】
3本の隣接フィン(3本フィンを有する群)の場合、その長手方向長さは少なくとも90mmであることが好ましい。2本の隣接フィン(2本フィンを有する群)の場合、フィンの長さは50mm〜90mmであることが好ましい。
【0027】
フィンは、これらのフィン部分に水分を蓄積させるために作成されるものであって、被服の脇下部分にじかに位置する。最大量の汗を生じる身体のほてる部分はそれにより熱カメラ撮像法によって識別される。上述の精巧加工の脇下構成体と製品上のメッシュ部分領域との組合せにより、熱放散の向上は促進される。
【0028】
提案に係る解決手段により水分交換が向上し得るため、運動時の被服着用の快適さは増進されることになる。
【0029】
本発明の実施形態を図面に示すことにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】袖を上に上げた被服の脇下部分の領域(
図1中の「Y」視)の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
運動用被服1及びその詳細を図に示す。運動用被服1は本例では、被服1の所期の使用時に着用者の上半身を覆う部分2を有するシャツを対象とする。2本の袖9が設けられ;袖9の下方には脇下部分4が位置する。各脇下部分には単一のクライメート区画3が設けられる。
【0032】
図1中に水平方向Hと共に垂直方向Vを標記するが、これらは地上に直立した着用者により被服1が着用されたときの垂直及び水平方向として理解すべきである。
【0033】
被服1の外面の一部、特に脇下部分4の下方の部分を
図2に示すが、同図では袖9は上に上げられている。
【0034】
このように、脇下部分4下のクライメート区画3が相互に平行に配置された複数のフィン5を有することが
図2から見てとれる。フィン5は水平方向Hにある特定の延在範囲を有し;フィン5の長さはLで標記することとする。フィン5の端部を仮想線により接続すると、凧またはダイヤの形状を有する包絡面7が作成される。フィン5は被服1を構成する平坦な基材6上に配置される。フィン5は基材6から着用者の身体(肌)に突出する(
図4及び
図5も参照のこと)。
【0035】
図2中に、包絡面7、したがってフィン5のデザイン、のある特定の特徴が見てとれる。包絡面7は垂直方向Vに高さH
E及び水平方向Hに幅W
Eを有する。包絡面7の垂直方向延在範囲は上側領域U、下側領域B、及び中央領域Cとして区別し得る。各領域U、C、及びBは包絡面7の全高H
Eの約3分の1に沿って延在することになる。
【0036】
図3〜
図5はフィン5のデザイン詳細を示す。
図3は
図2の拡大図、即ち「X」部、したがって被服1のユーザの肌から離反する側に向いた被服1の外面を示す。
【0037】
このため、
図4及び
図5による断面図中、基材6の左側面は着用者の肌から離反する側に向いた側面である一方、基材6の右側面は着用者の肌(身体)に向いた側面である。
【0038】
図2中に見てとれるように、単一フィン5は2本フィン5の群5’及び3本フィン5の群5’’と共に配置し得る。
図3〜
図5中に、そのような3本フィン5の群5’’を詳細に示すが、これらの図に示すデザインは単一フィン及び2本フィンの群に対しても同様に適用される。
【0039】
図2中に見てとれるように、各場合に、単一フィン5、2本フィン5の群5’または3本フィン5の群5’’は距離「a」だけ相互に離間される。この距離の好ましい値は、少なくとも7mm、好ましくは10mmである。
【0040】
図4及び
図5で、各フィン5が、好ましくは1〜3mmである高さh
Fだけ基材6から突出していることが見てとれる。(
図3〜
図5に示すように)フィン群5’、5’’に関して、2本の隣接フィン5間の距離は小さく、好ましくは1mm未満である。
【0041】
フィン5はそれらの水平方向延在範囲に沿って連続状に着用者の肌に面する側面に延びるが、このことは被服1の外面に関しては該当しない。本例では、約1〜3mmの水平方向Hの延在範囲を有し、約2〜5mmの水平距離に配置される接続布部8が織成される。
【0042】
接続布部8はフィン群5’’のフィン5を橋絡する。
【0043】
着用者の上半身を覆う部分2及びクライメート区画3全体は、電子制御式編成工程により一体的に生成される。
【0044】
本提案に係る被服小片は、緩冷系として上下に着用する他の被服小片と組合せ得る。
【0045】
本発明の特有の実施形態は、一方でフィン5及び他方で基材6に対して、異なる材料を提示する。
【符号の説明】
【0046】
1 運動用被服
2 上半身を覆う部分
3 クライメート区画
4 脇下部分(腋の下)
5 フィン
5’ 2本フィン群
5’’ 3本フィン群
6 基材
7 全フィンに関する包絡面
8 接続布部
9 袖
h
F フィンの高さ
H
E 包絡面の高さ
W
E 包絡面の幅
a 距離
b 距離
L フィンの長さ
V 垂直方向
H 水平方向
U 包絡面の上側領域
B 包絡面の下側領域
C 包絡面の中央領域