【文献】
J. Bacteriol., 2013, Vol. 195, No. 21, pp. 4804-4815
【文献】
J. Biol. Chem., 2006, Vol. 281, no. 47, pp. 36149-36161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
L−トリプトファン(L-tryptophan)は、必須アミノ酸の一つで飼料添加剤、輸液剤などの医薬品原料及び健康食品素材などで広く使用されてきた。このような、L−トリプトファンは化学合成法、酵素反応法、発酵法などを介して生産されうるが、現在は微生物を利用した直接発酵法が主に利用されている。
【0003】
L−トリプトファン生産菌株の開発方向は初期では突然変異の選別として行ったり(特許文献1)、遺伝工学の発達と共に生合成経路酵素のトリプトファンフィードバック阻害を克服する方法、またはトリプトファン生合成酵素の発現強化のように代謝過程の酵素合成強化を通じてトリプトファン生産菌株の開発が進行された。しかし、まだ産業上に利用しようとする高効率の生産量を有するトリプトファン生産菌株の開発の必要性が要求されている。
【0004】
一方、微生物によるトリプトファン生合成において最終段階の反応に参与するトリプトファンシンターゼ(tryptophan synthase, EC 4.2.1.20)は、PLP(Pyridoxal Phosphate)を補酵素として使用すると知られている。また、トリプトファンシンターゼ反応に基質として使用されるセリンの場合も、serCによりコードされるホスホヒドロキシトレオニンアミノトランスフェラーゼ(phosphohydroxythreonine aminotransferase, EC 2.6.1.52)がPLPを補酵素として使用していて、トリプトファン生合成においてPLPは、重要な補酵素とすることができる。
【0005】
したがって、PLPの適切な濃度維持は当該当酵素の効率的反応及び目的産物の生合成反応に重要な役割をすると期待できる。しかし、前記補酵素はトリプトファン生産の他にも多様な反応に関与するため、適合にPLPを維持させる方法はまだなかった。また、PLPを適切にトリプトファン生産の微生物内で維持するとしてもL−トリプトファンの生産能が増加されるかどうかは不明である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記目的を達成するための本発明の一つの様態として、配列番号1のアミノ酸配列を含むホスファターゼ(phosphatase)の活性が不活性化されるように変異された、L−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属(Escherichia)微生物を提供する。例えば、前記L−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属微生物は、ホスファターゼの活性が不活性化されるように変異されないL−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属微生物に比べてトリプトファン生産能が増加された微生物であってもよい。
【0013】
本発明において用語、「L−トリプトファン(L-tryptophan)」は、α‐アミノ酸の一つであって、体内で合成されない必須アミノ酸であり、化学式がC
11H
12N
2O
2である芳香族L−アミノ酸をいう。微生物におけるL−トリプトファンの生産能を増加させるため、既存にはトリプトファン生産経路上の生合成酵素の発現を強化させたり、側枝経路を遮断させる方法などが利用されてきた。
【0014】
本発明において用語、「ホスファターゼ(phosphatase)」は、基質からリン酸基を除去する反応を触媒するタンパク質であってもよい。本発明での「配列番号1のアミノ酸配列を有するホスファターゼ」は、遺伝子yigLによりコードされるタンパク質としてPLPを基質とし、ピリドキサル及びリン酸に分解する反応を触媒するものと推定される。前記yigLによりコードされるタンパク質の場合、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)DBではPLPホスファターゼ(pyridoxal phosphate phsphatase)と命名されており(NCBI gene ID: 12930615)、EcoCyc DB(http://www.ecocyc.org)上では糖リン酸ホスファターゼ(phosphosugar phosphatase)と命名されていて、どちらがより主要な機能なのかは明らかにされていない。最近の研究によると、yigLの発現が熱ショックにより誘導されると報告されており(非特許文献1)、sRNAの一種であるsgrSによりyigLの翻訳(translation)が活性化されて細胞内糖リン酸(phosphosugar)を分解するという研究結果もあるが(非特許文献2)、まだ明確な機能が明らかにされたことはない。
【0015】
ここで、前記酵素は配列番号1に記載のアミノ酸配列だけでなく、前記配列と70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上、さらに具体的には95%以上、もっと具体的には98%以上、もっとも具体的には99%以上の相同性を示すアミノ酸配列として実質的に前記酵素と同一または相応する効能を現す酵素であれば、制限なく含むことができる。また、このような相同性を有しながら各酵素に相応する効能を現すアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有する酵素変異体も、本発明の範囲内に含まれるのは自明である。
【0016】
前記アミノ酸配列番号1に記載のホスファターゼをコードする遺伝子は、前記酵素をコードすることができる配列であれば、制限なく含まれることができ、yigL遺伝子と表すことができる。具体的に、前記酵素をコードする遺伝子は配列番号2に記載の塩基配列だけでなく、前記配列と80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には98%以上、もっと具体的には99%以上の相同性を示す塩基配列として実質的に前記酵素と同一または相応する効能を現す酵素をコードする遺伝子配列であれば、制限なく含むことができる。また、このような相同性を有する塩基配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換または付加された塩基配列も本発明の範囲内に含まれるのは自明である。
【0017】
本発明において用語、「相同性」は、二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド部分(moiety)間の同一性のパーセントをいう。一つの部分からもう一つの部分までの配列間の相同性は知られている当該技術により決定されうる。例えば、相同性は配列情報を整列して容易に入手可能なコンピュータプログラムを利用して、二つのポリヌクレオチド分子または二つのポリペプチド分子間の配列情報、例えば、スコア(score)、同一性(identity)及び類似度(similarity)などのパラメータ(parameter)を直接整列して決定されうる(例: BLAST 2.0)。また、ポリヌクレオチド間相同性は、相同領域間の安定した二本鎖を構成する条件下でポリヌクレオチドの混成化した後、一本鎖特異的ヌクレアーゼで分解させ、分解された断片のサイズを決定することにより、決定することができる。
【0018】
本発明において用語、「内在的活性」は、微生物が天然の状態または該当酵素の変形前に有していた酵素の活性状態を意味する。
【0019】
前記「活性が不活性化されるように変異された」は、酵素をコードする遺伝子の発現が天然型菌株または変形前の菌株に比べて全く発現されない場合及び/または発現されてもその活性がないか、減少されたことを意味する。
【0020】
このように活性が内在的活性に比べて不活性化されたことは、本来微生物が天然の状態または変形前の状態で有していた酵素の活性と比較する時、その活性がないか、減少されたことを意味する。前記減少は、前記酵素をコードする遺伝子の変異などにより酵素自体の活性が本来微生物が有していた酵素の活性に比べて低い場合と、これをコードする遺伝子の発現阻害または翻訳(translation)阻害などによい細胞内で全体的な酵素活性程度が天然型菌株または変形前の菌株に比べて低い場合、それらの組み合わせも含む概念である。
【0021】
このような酵素活性が不活性化されるように変異させる方法は、当該分野によく知られている多様な方法の適用により達成されうる。前記方法の例として、前記酵素の活性が除去された場合を含み、前記酵素の活性が減少されるように突然変異された遺伝子で、染色体上の前記酵素をコードする遺伝子を代替する方法;酵素をコードする遺伝子の一部または全体を欠失する方法;前記酵素をコードする遺伝子の発現調節配列を活性が弱いか、またはない配列に交替する方法;前記酵素をコードする染色体上の遺伝子の発現調節配列に変異を導入する方法;前記酵素をコードする染色体上の遺伝子の全体または一部を欠失させる方法;前記染色体上の遺伝子の転写体に相補的に結合して前記mRNAから酵素への翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)を導入する方法;前記酵素をコードする遺伝子のSD配列の上流にSD配列と相補的な配列を人為的に付加して2次構造物を形成させリボソーム(ribosome)の付着が不可能にする方法及び該当配列のORF(open reading frame)の3’末端にプロモーターを付加して逆転写させるRTE(Reverse transcription engineering)方法などがあり、これらの組み合わせによっても達成できるが、前記例により特別に制限されるものではない。
【0022】
具体的に、酵素をコードする遺伝子の一部または全体を欠失する方法は、細菌内染色体挿入用ベクターを介して染色体内の内在的目的タンパク的を暗号化するポリヌクレオチドを一部核酸配列が欠失されたポリヌクレオチドまたはマーカー遺伝子に交替することにより実行されうる。このような遺伝子の一部または全体を欠失する方法の一例として、相同組換えにより遺伝子を欠失させる方法を使用してもよい。
【0023】
前記において「一部」とは、ポリヌクレオチドの種類に応じて相異するが、具体的には1〜300個、具体的には1〜100個、より具体的には1〜50個であってもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0024】
前記において「相同組換え(homologous recombination)」とは、互いに相同性を有する遺伝子鎖の座位で連結交換を介して起こる遺伝子組換えを意味する。
【0025】
具体的に、発現調節配列を変形する方法は、前記発現調節配列の核酸配列に欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせで発現調節配列上の変異を誘導して行うか、より弱いプロモーターに交替するなどの方法により実行することができる。前記発現調節配列には、プロモーター、オペレーター配列、リボゾーム結合部位をコードする配列、及び転写と解読の終結を調節する配列を含む。
【0026】
また、染色体上の遺伝子配列を変形する方法は、前記酵素の活性がさらに減少されるように遺伝子配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせで配列上の変異を誘導して実行したり、さらに弱い活性を有するように改良された遺伝子配列または活性がないように改良された遺伝子配列に交替することにより実行することができる。
【0027】
本発明の具体的な実施例によると、配列番号1のアミノ酸配列を有するホスファターゼの内在的活性を不活性させるため、当該ホスファターゼをコードする遺伝子であるyigLを欠失させたトリプトファン生産能を有する多様な大腸菌が、yigLを欠失させない親菌株に比べてL−トリプトファンの生産能が増加することを確認して、内在的ホスファターゼの活性を不活性化させた変異されたL−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属微生物が、L−トリプトファンを効率的に生産することを確認した。
【0028】
本発明で前記L−トリプトファン生産能を有する微生物は、前記培地中の炭素源からL−トリプトファンを生産することができる微生物をいう。また、前記L−トリプトファンを生産する微生物は組換え微生物であってもよい。具体的に、L−トリプトファンを生産することができれば、その種類が特に制限されないが、エンテロバクター(Enterbacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、エルウィニア(Erwinia)属、セラチア(Serratia)属、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、及びブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物であってもよく、具体的にはエシェリキア(Escherichia)属に属する微生物であってもよい。
【0029】
より具体的にはエシェリキア属(Escherichia)微生物は具体的に大腸菌(Escherichia coli)であってもよいが、ホスファターゼ活性が不活性化されてL−トリプトファン生産能が増加されうるエシェリキア属に属する微生物は制限なく含まれてもよい。
【0030】
具体的に本発明における前記ホスファターゼの活性の不活性化によりL−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属微生物の親菌株はトリプトファン生産能を有する微生物であれば、特に制限されない。トリプトファン生産能を有する微生物は、その例として、トリプトファン生合成経路を強化するために、競争経路の遺伝子、トリプトファンオペロンの方向性経路の調節因子、トリプトファン流入遺伝子、トリプトファン流入及び分解遺伝子の活性を弱化または不活性化させたり、及び/またはトリプトファンオペロンの活性を過発現させた微生物であってもよい。前記活性の弱化または不活性化する方法は、前記で説明したとおりであり、公知の方法は制限なく含まれうる。また、トリプトファンオペロン活性の過発現は公知の方法は制限なく含まれるが、その例としてオペロン遺伝子の塩基配列一部または全部のそれ自体または外部から導入された発現調節部位を含むポリヌクレオチドをさらに染色体に挿入する方法、ベクターシステムに導入する方法によってコピー数を増加させる方法、遺伝子の発現を調節する発現調節部位を他の調節配列に置換、発現調節部位の塩基配列全体または一部突然変異が誘発された変形、遺伝子自体の変異導入によるオペロン活性強化などによる方法などを含むことができるが、それに限定されるものではない。具体的には、pheA、trpR、mtr及び/またはtnaAB遺伝子の全体または一部が欠失、及び/またはトリプトファンオペロンが過発現された大腸菌であってもよい。
【0031】
本発明におけるpheA、trpR、mtr、tnaAB遺伝子及びトリプトファンオペロン及びこれらがコードするタンパク質配列を始めに、本発明で使用される遺伝子及びタンパク質配列は、公知のデータベースから得ることができ、その例としてNCBIのGenBankなどから得ることができるが、これに制限されない。また、pheA、trpR、mtr及びtnaAB遺伝子などに対する具体的な内容は特許文献2、特許文献3に記載された内容を参考することができ、前記特許の明細書全体は本発明の参考資料として含まれることができる。
【0032】
本発明の具体的な実施例に照らして、多様な親菌株で前記ホスファターゼの活性を不活性化させた結果、トリプトファン生産能を有しているエシェリキア属微生物であれば、親菌株の種類に関係なく前記ホスファターゼ活性を不活性化させる場合はL−トリプトファンの生産能が有意に向上されることを確認した。
【0033】
本発明のもう一つの様態として、本発明の配列番号1のアミノ酸配列を含むホスファターゼの活性が不活性化されるように変異された、L−トリプトファン生産能を有するエシェリキア属微生物を培地で培養する段階;及び前記培養による培地または前記微生物からL−トリプトファンを回収する段階を含む、L−トリプトファンの製造方法を提供する。
【0034】
本発明の微生物の培養に使用される培地及びその他の培養条件は、通常のエシェリキア属微生物の培養に使用される培地であれば、特に制限なくいずれも使用してもよいが、具体的には、本発明の微生物を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/またはビタミンなどを含有した通常の培地内における好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら培養してもよい。
【0035】
本発明における前記炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、ソルビトールなどのような炭水化物;糖アルコール、グリセロール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのようなアルコール;有機酸、グルタミン酸、メチオニン、リジンなどのようなアミノ酸などが含まれてもよい。また、デンプン加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米糠、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源を使用してもよく、具体的には、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(すなわち、還元糖に転換された糖蜜)などの炭水化物を使用してもよく、その他の滴定量の炭素源を制限なく多様に利用してもよい。これらの炭素源は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム 、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのアミノ酸;ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などの有機窒素源を使用してもよい。これらの窒素源は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記リン源には、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはこれに対応するナトリウム含有塩などが含まれてもよい。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが使用されてもよく、その他にアミノ酸、ビタミン及び/または適切な前駆体などが含まれてもよい。これらの培地または前駆体は培養物に回分式または連続式で添加することができる。
【0038】
本発明において、微生物の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培養物に適切な方法で添加し、培養物のpHを調整してもよい。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を使用して気泡の生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を維持するため、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するため、気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。
【0039】
培養物の温度は、具体的には27℃〜40℃、より具体的には30℃〜37℃であってもよいが、これに限定されない。培養期間は、有用物質の所望の生成量が得られるまで継続されてもよく、具体的には10時間〜100時間であってもよいが、これに限定されない 。
【0040】
前記L−トリプトファンを回収する段階は、本発明の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養方法などにより、当該技術分野において公知となった適切な方法を用いて培養液から目的とするL−トリプトファンを回収することができる。
【0041】
前記回収段階は、精製工程を含むことができる。前記精製工程は当該技術分野で公知となった適合した方法を利用して、回収されたL−トリプトファンを精製することができる。
【0042】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例により限定されると解釈されてはならない。
【0043】
実施例1:ホスファターゼ(phosphatase)が欠損された野生型菌株の製作
本実施例ではトリプトファン生産能を有する菌株でホスファターゼ活性が不活性化された菌株を製作しようとした。
【0044】
代表的なエシェリキア属微生物である大腸菌野生型菌株のW3110菌株に、トリプトファン生産能を強化させるためにコリスミ酸ムターゼ(chorismate mutase)/プレフェン酸脱水酵素(prephenate dehydratase、CM-PDT)をコードするpheA遺伝子(NCBI gene ID: 12934467)とトリプトファン分解酵素(Tryptophanase)をコードするtnaA遺伝子(NCBI gene ID: 12933600)、トリプトファンインポーター(importer)をコードするtnaB遺伝子(NCBI gene ID: 12933602)のオペロン形態であるtnaAB遺伝子が欠失されたW3110 trpΔ2菌株(特許文献3)から、ホスファターゼ(phosphotase)をコードするものと推定されるyigL遺伝子を相同組換えにより欠失させた。
【0045】
具体的に、配列番号2の塩基配列を有する遺伝子yigLの欠失のために、 Datsenko KAなどが開発したラムダレッド組換え酵素(lambda Red recombinase)を用いた、1−段階不活性化(one step inactivation)方法を使用した(非特許文献3)。遺伝子内部への挿入を確認するためのマーカーとして、pUC19(New England Biolabs (USA))にrmfプロモーターをライゲーションさせて、pACYC184(New England Biolab)から収得された突然変異loxP−CmR−loxPカセットをライゲーションさせて収得されたpUCprmfmloxPのクロラムフェニコール遺伝子を使用した(特許文献4)。
【0046】
まず、yigL遺伝子の一部とpUCprmfmloxP遺伝子のクロラムフェニコール(chloramphenicol)耐性遺伝子の一部塩基配列を有する配列番号3及び4のプライマー組み合わせを用いてpUCprmfmloxPを鋳型とし、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間伸長させたものからなるサイクルを30回繰り返す一次ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」)により約1.2kbのPCR産物ΔyigL1stを収得した。その後、PCRを介して収得された1.2kbのPCR産物ΔyigL1stを0.8%アガロースゲルでの電気泳動後に溶離して2次PCRの鋳型として使用した。2次PCRは1次PCRから収得されたPCR産物の5’及び3’領域の20bpの塩基配列を含む配列番号5及び6のプライマー組み合わせを用いて溶離された1次PCR産物を鋳型とし、94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間伸長させるものからなるサイクルを30回繰り返すことにより行い、約1.3kbのPCR産物ΔyigLを収得した。収得されたPCR産物を0.8%アガロースゲルでの電気泳動後、溶離して組換えに使用した。
【0047】
Datsenko KAなどが開発した1−段階不活性化方法(非特許文献3)によりpKD46ベクターで形質転換された大腸菌W3110trpΔ2をコンピテント(competent)の状態に製造した後、1次及び2次PCRを介して収得された1.3kbの断片ΔyigLを導入して形質転換させた。以後、クロラムフェニコールを含むLB培地で培養してクロラムフェニコール耐性を有する1次形質転換体を選別した。
【0048】
前記で収得されたクロラムフェニコール耐性を有する1次組換え菌株からpKD46を除去した後、pJW168ベクター(非特許文献4)を導入してクロラムフェニコールマーカー遺伝子を菌体から除去した(非特許文献4)。最終的に収得された菌体から配列番号7と8のプライマーを用いたPCRを介して収得された約0.6kbPCR産物によりyigL遺伝子が欠失されたことを確認して、W3110 trpΔ2yigLと命名した。
【0049】
本実施例で使用したプライマー配列は下記表1に示した。
【0051】
実施例2:ホスファターゼが不活性化されたトリプトファン生産菌株の製作
本実施例ではトリプトファンを生産するもう一つの代表的な大腸菌であるKCCM11166P(特許文献5)を親菌株とし、ホスファターゼをコードするものと推定されるyigL遺伝子を前記実施例1記述した方法と同様に相同組換えにより欠失させた。
【0052】
最終的に収得された菌体から配列番号7と8のプライマーを用いたPCRを介して収得された約0.6kbPCR産物によりyigL遺伝子が欠失されたことを確認し、CA04−2803と命名した。
【0053】
実施例3:yigL遺伝子が欠失された野生型菌株のトリプトファン生成能の評価
前記実施例1で製造したW3110 trpΔ2 yigLと親菌株であるW3110 trpΔ2のトリプトファン生成能を比較するためにそれぞれの菌株にpCL−Dtrp_att−trpEDCBAとpBAC−Dtrp_att−trpDCBAを形質転換方法により導入した。導入されたベクターはトリプトファンオペロン調節部位の調節機序が解除され、トリプトファンを過量生産することができるようにトリプトファンオペロン発現が強化されたベクターである(特許文献3)。ベクターが導入された菌株は下記表2の組成のとおりに製造されたトリプトファン評価培地で培養してL−トリプトファン生産能を比較した。
【0055】
37℃培養器(incubator)でLB固体培地上に一晩培養した菌株をそれぞれ前記表2の25ml評価培地に一白金耳ずつ接種した後、これを37℃、200rpmの培養器で48時間培養してトリプトファン濃度を比較した(表3)。
【0057】
前記のような結果は、遺伝子yigLによりコードされるホスファターゼの活性が不活性化された菌株のトリプトファン生成能が前記ホスファターゼの活性が不活性化されない菌株に比べて60%増加したもので、yigLによりコードされるホスファターゼの不活性化によりトリプトファン生成能が向上されうることを確認した。これはyigLによりコードされるホスファターゼの不活性によりトリプトファン生合成に重要な補酵素の役割をするPLPの濃度が高くなってトリプトファン生合成が増加された結果と解釈されうる。
【0058】
実施例4:yigL遺伝子が欠失された菌株のトリプトファン生成能評価
前記実施例2で製造したyigL欠損株(CA04-2803)と親菌株であるKCCM11166Pとのトリプトファン力価を測定するために、下記表4の組成のとおりに製造されたトリプトファン力価培地で培養してL−トリプトファン生産効率の向上を確認した。
【0060】
37℃培養器(incubator)でLB固体培地上に一晩培養した大腸菌KCCM11166P及びCA04−2803をそれぞれ前記表4の25ml力価培地に一白金耳ずつ接種した後、これを37℃、200rpmの培養器で48時間培養して糖消耗の速度及びトリプトファン濃度を比較した。
【0061】
その結果、下記表5に記載されたように、対照群であるKCCM11166Pに比べて遺伝子yigLによりコードされるホスファターゼの活性が不活性化された菌株であるCA04−2803のトリプトファン濃度が約30%増加する結果を示した。
【0063】
本発明者らはKCCM11166P菌株を基盤とする、ホスファターゼをコードするyigLが欠損された不活性化された菌株でトリプトファン生産能力が増加されたことを確認し、前記菌株を「CA04−2803」または「CA04−2803(KCCM11166P_ΔyigL)」と命名した後、ブダペスト条約の下、国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に2014年12月5日に寄託し、受託番号KCCM11635Pを与えられた。
【0064】
前記のような結果は、本発明のトリプトファン生産エシェリキア属微生物におけるホスファターゼの活性を不活性化させた菌株が、前記酵素を不活性化させない菌株よりL−トリプトファン生産能が増加されたことを示唆する。また、このようにトリプトファン生成量が増加した結果は、yigLによりコードされるホスファターゼの不活性化によるものであって、前記遺伝子によりコードされるホスファターゼの予想機能中の一つと推定されるPLPホスファターゼとしての機能が不活性化されたことによると推論され、これは細胞内の高まったPLP濃度による可能性が高い。
【0065】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形で実施されることができることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解するべきである。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。