特許第6596108号(P6596108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クノール−ブレミゼ ジュステーメ フューア ヌッツファーツォィゲ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6596108-商用車用のディスクブレーキ 図000002
  • 特許6596108-商用車用のディスクブレーキ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596108
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】商用車用のディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/097 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F16D65/097 E
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-564439(P2017-564439)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公表番号】特表2018-528360(P2018-528360A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016000910
(87)【国際公開番号】WO2016202433
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】102015109541.6
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597166361
【氏名又は名称】クノール−ブレミゼ ジュステーメ フューア ヌッツファーツォィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KNORR−BREMSE System fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シェフベルガー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】アダムチク,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ペシェル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リーク,カイ
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−344058(JP,A)
【文献】 特開2012−202528(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013016779(DE,A1)
【文献】 特開平08−226472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動キャリパとして形成されていて、不動のブレーキ支持体(3)に取り付けられた、ブレーキディスク(2)を跨ぐブレーキキャリパ(1)と、
前記ブレーキキャリパ(1)内に配置されていて、それぞれ1つのライニング支持プレート(5)と、該ライニング支持プレート(5)に固定された摩擦ライニング(6)とを有する、互いに逆方向に運動可能な2つのブレーキパッド(4)であって、両ブレーキパッド(4)のうち、作用側のブレーキパッドは、作動装置によって少なくとも1つのブレーキピストンを介して前記ブレーキディスク(2)に向かって押圧可能である、ブレーキパッド(4)と、
前記ブレーキキャリパ(1)を制動に起因して移動させ、ブレーキを解除した後に戻すことができる少なくとも1つの戻し装置(7)と
を備える、商用車用のディスクブレーキにおいて、
前記戻し装置(7)は、前記ブレーキパッドの各作動方向と逆方向にばね荷重を加えた状態で該ブレーキパッドに接触している少なくとも2つのロッドを有し、
前記ロッドのうち、一方のロッドはプルロッド(9)として形成されており、他方のロッドはプッシュロッド(10)として形成されており、前記プルロッドと前記プッシュロッドは、各々が引張りばねまたは圧縮ばねと相互作用関係にあって、各々機能ユニットを構成し、該各機能ユニットはハウジング(8)内に支持されていることを特徴とする、商用車用のディスクブレーキ。
【請求項2】
前記プルロッド(9)と前記プッシュロッド(10)とは、それぞれの前記ブレーキパッド(4)の前記ライニング支持プレート(5)に接触していることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記プルロッド(9)が、作用側の前記ブレーキパッド(4)の前記ライニング支持プレート(5)に保持されているのに対して、前記プッシュロッド(10)は、反作用側のブレーキパッド(4)の前記ライニング支持プレート(5)に支持されていることを特徴とする、請求項1または2記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記プルロッド(9)と前記プッシュロッド(10)とは、前記ライニング支持プレート(5)の、前記ブレーキパッド(4)のそれぞれの前記摩擦ライニング(6)側の面に接触していることを特徴とする、請求項1から3いずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記引張ばねまたは前記圧縮ばね(11)は、コイルばねとして形成されていて、前記プルロッド(9)と前記プッシュロッド(10)とに部分的にガイドされていることを特徴とする、請求項1から4いずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ハウジング(8)は前記ブレーキキャリパ(1)内に位置決めされていることを特徴とする、請求項1から5いずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記引張ばねまたは前記圧縮ばね(11)は互いに同一であることを特徴とする、請求項からいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記プルロッド(9)と前記プッシュロッド(10)とは互いに軸線平行に延在していることを特徴とする、請求項1からいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
前記プルロッド(9)は一方の端部に、前記ライニング支持プレート(5)に接触している駆動部(12)を有することを特徴とする、請求項1からいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記プルロッド(9)は、前記駆動部(12)と反対の端部側に駆動リング(13)を有し、該駆動リング(13)に圧縮ばね(11)が接触しており、該圧縮ばね(11)は、他方でハウジング壁に支持されていることを特徴とする、請求項記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
前記プッシュロッド(10)は、少なくとも部分的に周方向に延在するストッパ(14)を有し、該ストッパ(14)に前記圧縮ばね(11)が一方の端部で接触しているのに対して、他方の端部は、前記ハウジング(8)の基部に支持されていることを特徴とする、請求項1から6いずれか1項記載のディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の商用車用のディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載した、摺動キャリパ型ブレーキとしても公知のディスクブレーキでは、制動の際、空気圧または電動モータにより操作可能な作動装置によって、作用側のブレーキパッドが車両側のブレーキディスクに向かって押圧される。制動動作の続く過程では、ブレーキキャリパが、ブレーキディスクに関して、作用側のブレーキパッドの作動方向と逆方向に移動させられて、反対側に位置する反作用側のブレーキパッドを駆動し、このブレーキパッドをブレーキディスクの他方の面に押し付ける。
【0003】
公知のディスクブレーキでは、ブレーキを解除した後、両ブレーキパッドのうちの少なくとも反作用側のブレーキパッドがブレーキディスクに、確かに無圧ではあるものの引きずり接触している位置に、ブレーキキャリパがとどまっている。これにより走行運転中に生じるブレーキパッドの残留引きずりトルクが不都合な結果を招くことになり、燃料消費量を増加させ、関与し合う構成部材、つまり、ブレーキディスクおよびブレーキパッドの寿命を縮めてしまう。
【0004】
確かに、走行運転中、例えばブレーキディスクの横振れや振動およびカーブ走行時の横方向加速によって、ブレーキパッドの僅かな離反は生じる。しかしながら、これらの作用は、前述した残留引きずりトルクを有効に阻止するために十分であるとは云えない。
【0005】
この問題に対処するために、冒頭に記載した特許文献1には、戻し装置を備えたディスクブレーキが開示されている。戻し装置は、ブレーキキャリパを移動可能にブレーキ支持体に保持する複数のガイドバーのうちの1つに配置されていて、ブレーキキャリパを出発位置に移動させるばね弾性的な戻し要素を有している。
【0006】
原理的にこの構造は好適であると判った。しかしながら、公知の戻し装置の使用は、重商用車の圧縮空気操作式のディスクブレーキの場合には問題を招いてしまう。なぜならば、特許文献1では、構成部材誤差や構成部材変形による影響の変動が、広い範囲に波及してしまい、これによって、公知の戻し要素の確実な機能がいずれにせよ不可能となってしまうからである。
【0007】
同様の問題が、特許文献2のなかで主題として扱われているようなディスクブレーキにおいても生じる。このディスクブレーキでは、戻し装置が、作動装置と反対側に位置する反作用側のブレーキパッドの側に配置されている。これによって、ブレーキキャリパの有効な、特に自動的な戻しと同時に、システム剛性への最低限の干渉が達成される。
【0008】
いずれにせよ、戻し装置はブレーキキャリパに作用する。このとき、ブレーキ支持体はマウンティングブラケットとして機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007001213号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102012006111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭に記載した形態のディスクブレーキを改良して、構造的に最も簡単な手段により、特にブレーキパッドおよびブレーキディスクの寿命を延ばし、運転コストを全体的に減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有するディスクブレーキによって解決される。
【0012】
ディスクブレーキの本発明による構成によって、ブレーキを解除した際に両ブレーキパッドの戻しが達成される。このとき、戻し力は、ブレーキディスクに対して間隙を形成しながら、両ブレーキパッドの各作動方向と逆方向に作用する、つまり、反作用側のブレーキパッドではキャリパ背部に向かって作用し、作用側のブレーキパッドではキャリパ頭部に向かって作用する。
【0013】
両ブレーキパッドへの本発明による戻し装置のロッドの作用は、好適には、両ブレーキパッドのライニング支持プレートにおいて生じ、しかも、このライニング支持プレートに固定された摩擦ライニングの側の面に対して生じる。
【0014】
戻し時の各ブレーキパッドの引っ掛かりを回避するために、ロッドはそれぞれ対を成して、ブレーキディスクの回転軸線に関して左右でブレーキパッドに、つまり、このブレーキパッドのライニング支持プレートに作用する。
【0015】
ロッドは、形状安定性の材料、好ましくは金属から成っていて、ほぼ不変の横断面寸法を有して棒状に形成されている。各ロッドに鍔部が一体成形されている点において、「ほぼ不変」と云える。この鍔部は、プルロッドでは駆動部として働き、プッシュロッドではストッパとして働く。
【0016】
プルロッドの駆動部は、プルロッドの一方の端部に一体成形されていて、作用側のライニング支持プレートにおいて摩擦ライニングの側の面に接触している。
【0017】
これに対して、プッシュロッドのストッパは、割り当てられたばねに対応していて、ブレーキを解除してブレーキパッドをその出発位置に押し戻す際のばねの弛緩時にプッシュロッドを移動させるために働く。
【0018】
本発明の有利な改良形態によれば、ロッド対、つまり、プルロッドとプッシュロッドとが、ブレーキキャリパに接してまたはブレーキキャリパ内に配置されたハウジング内に保持されている。このハウジングは、車両側のブレーキ支持体に対して調整可能である。このブレーキ支持体には、摺動キャリパとしてのブレーキキャリパが、やはりブレーキディスクの回転軸線に関して軸線方向に移動可能に支持されている。
【0019】
また、それぞれ1つのばねに複数のロッド、つまり、複数のプルロッドおよび/またはプッシュロッドを割り当てることも可能である。
【0020】
戻し装置の製造のコストを最適化するために、ロッドに対して同じ形態のばね、例えば等しいばね特性を有する圧縮ばね、特にコイルばねが設けられている。このコイルばねはロッドにガイドされている。特にプルロッドは引張ばねに結合されてもよい。
【0021】
有利には、プッシュロッドもしくはプルロッドとブレーキパッドとの間の作用点は、各ブレーキパッドとブレーキ支持体との間の支持力により結果的に生じる抵抗力の近くに位置している。
【0022】
本発明の別の有利な構成は、従属請求項に記載してある。
【0023】
以下に、本発明の実施例を添付の図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による戻し装置を備えたディスクブレーキの一部を抜粋して斜視的に示す図である。
図2】ディスクブレーキの個別部分の概略的な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、商用車用のディスクブレーキの一部が示してある。このディスクブレーキは、ブレーキディスク2を跨ぐブレーキキャリパ1を備えている。このブレーキキャリパ1は、ブレーキディスク2の回転軸線に関して軸線方向に移動可能に、車両側のブレーキ支持体3、つまり、不動のブレーキ支持体3に接続されている。このために、ブレーキキャリパ1は、ブレーキ支持体3に結合されたガイドバー16に支持されている。
【0026】
ブレーキ支持体3には、複数のブレーキパッド4が配置されている。これらのブレーキパッド4は、制動の際に両側からブレーキディスク2に押圧可能である。各ブレーキパッド4は、ライニング支持プレート5と、このライニング支持プレート5の、ブレーキディスク2の側の面に固定された摩擦ライニング6とを有している。この摩擦ライニング6は、機能中、つまり、制動の際、ブレーキディスク2に向かって押圧されている。
【0027】
制動は、ブレーキキャリパ1内に配置された作動装置(図示せず)によって行われる。この作動装置はブレーキレバーを備えている。このブレーキレバーは、空気圧または電気機械により旋回可能に支持されている。また、ブレーキレバーの操作時には、作用側のブレーキパッドとして割り当てられたブレーキパッド4がブレーキディスク2に接触する。続く過程では、反力の発生によって、ブレーキキャリパ1が逆方向に移動させられ、反作用側のブレーキパッド4を駆動して、このブレーキパッド4を同じくブレーキディスク2に摩擦接触させる。
【0028】
ブレーキを解除した後には、互いに反対側に位置する両ブレーキパッド4が、戻し装置7によってブレーキディスク2から離反させられ、このブレーキディスク2が、ブレーキパッド4に対して自由に回転する。
【0029】
図2には、戻し装置7が個別部分として概略的に示してある。この戻し装置7は、本発明によれば、各作動方向と逆方向にばね荷重を加えた状態でブレーキパッド4に接触している2つのロッドを有している。両ロッドのうち、一方のロッドはプッシュロッド10として形成されており、他方のロッドはプルロッド9として形成されている。
【0030】
特に図1に極めて明瞭に示したように、プッシュロッド10がその自由端部でもって反作用側のブレーキパッド4のライニング支持プレート5の縁部に接触しているのに対して、プルロッド9は作用側のブレーキパッド4のライニング支持プレート5に接触している。どちらの場合も、ライニング支持プレート5上に摩擦ライニング6が直面している。
【0031】
プルロッド9とプッシュロッド10とにばね荷重を加えるために、コイルばねとして形成されたそれぞれ1つの圧縮ばね11が設けられている。この圧縮ばね11は、本例では互いに同一に形成されていて、プルロッド9とプッシュロッド10とに部分的に巻き付けられている。これらの各機能ユニットは、ブレーキキャリパ1に設けられた収容部内に挿入されたハウジング8内に支持されている。
【0032】
プルロッド9は一方の端部に鍔部の形態の駆動部12を有している。この駆動部12は作用側のライニング支持プレート5に接触している。プルロッド9の他方の端部には、駆動リング13が固定されている。この駆動リング13によって、圧縮ばね11が、軸線方向へのプルロッド9の相応の移動の際に緊縮される。圧縮ばね11はその他方の端面でもってハウジング8の内壁に支持されている。
【0033】
プッシュロッド10は、周方向に延在するストッパ14を備えている。このストッパ14が、割り当てられた圧縮ばね11の一方の端面に接触しているのに対して、圧縮ばね11の他方の端面は、ハウジング8の基部に支持されている。
【0034】
図2には、出発位置、つまり、圧縮ばね11が実質的に弛緩されているディスクブレーキの解除された位置が示してある。制動の際には、ブレーキパッド4が、ブレーキディスク2に摩擦接触するまで、互いに近づく方向に移動させられる。このとき、プルロッド9にガイドされた圧縮ばね11が緊縮される。このために、駆動リング13が係合している。プッシュロッド10にガイドされた圧縮ばね11も同様に圧縮によって緊縮される。上回るべきばね力は作動力によって容易に加えられる。
【0035】
ブレーキを解除する際には、プルロッド9とプッシュロッド10とが、圧縮ばね11の力によって軸線方向に運動させられ、しかも、プルロッド9が、作用側のブレーキパッド4を駆動する、つまり、引き戻すように運動させられるのに対して、図2の左側に認めることができる反作用側のブレーキパッド4は、プッシュロッド10によって、図2に示した矢印に相応して、ブレーキディスク2との作用領域から押し出される。
【0036】
続く過程では、接触して引き続きばね圧下にあるプッシュロッド10によって、ブレーキキャリパ1が出発位置に移動させられる。
【符号の説明】
【0037】
1 ブレーキキャリパ
2 ブレーキディスク
3 ブレーキ支持体
4 ブレーキパッド
5 ライニング支持プレート
6 摩擦ライニング
7 戻し装置
8 ハウジング
9 プルロッド
10 プッシュロッド
11 圧縮ばね
12 駆動部
13 駆動リング
14 ストッパ
16 ガイドバー
図1
図2