(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596151
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】車速制御方法及び車速制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20191010BHJP
B60W 30/184 20120101ALI20191010BHJP
B60W 50/10 20120101ALI20191010BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20191010BHJP
B60K 31/00 20060101ALI20191010BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20191010BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/184
B60W50/10
F02D29/02 301A
B60K31/00 Z
F16H61/02
B60T7/12 F
B60T7/12 D
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-511063(P2018-511063)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2018-532634(P2018-532634A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2015069727
(87)【国際公開番号】WO2017036491
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,アンダース
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】アンダースン,ヘンリック
【審査官】
菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−214976(JP,A)
【文献】
特開平09−060723(JP,A)
【文献】
特開2001−341546(JP,A)
【文献】
特開2005−263098(JP,A)
【文献】
特開平05−050902(JP,A)
【文献】
特開平09−039773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
B60K 31/00
B60T 7/12
F02D 29/02
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が降坂走行しているとき、クルーズコントロールを搭載した車両(100)の車速を制御する方法であって、
前記クルーズコントロールを第1の制動設定速度(VS1)値に設定した状態で車両を降坂走行させるステップと、
現在の車速を検出するステップと、
少なくとも1つの補助ブレーキ(111)を使用して現在の係合ギアに応じた制動トルクを印加し、前記第1の制動設定速度(VS1)を維持するステップと、
車速を低下させるために現在の係合ギアから低速ギアへのダウンシフトの手動要求を検出するステップと、
前記現在の車速でダウンシフトが許容できるか否かを判定するステップと、
を含み、
コントロールユニットが、ダウンシフトが許容できないと判定すると、
少なくとも車両のサービスブレーキ(131,132,133)を使用して制動トルクを印加して前記車速を低下させるステップと、
現在の第1の車速から低速ギアへのダウンシフトが許容できる低速な第2の車速に前記車両を減速させるステップと、
前記車速が前記第2の車速に到達すると、低速ギアへのダウンシフトを実行するステップと、
前記クルーズコントロールの制動設定速度を、前記クルーズコントロールの第1の制動設定速度値より低速な第2の制動設定速度(VS2)に設定するステップと、
検出された現在の車速が前記第2の制動設定速度(VS2)を超えると、少なくとも前記補助ブレーキ(111)を使用して制動トルクを印加するステップと、
を自動的に実行するように構成された、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補助ブレーキ(111)によって前記第2の制動設定速度が維持できるレベルに、前記第2の制動設定速度(VS2)を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サービスブレーキ(131,132,133)の断続的な作動と組み合わせて、前記少なくとも1つの補助ブレーキ(111)によって前記第2の制動設定速度が維持できるレベルに、前記第2の制動設定速度(VS2)を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サービスブレーキ(131,132,133)の温度が所定温度を超えると、前記サービスブレーキ(131,132,133)の作動を避ける、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
車両が降坂走行しているとき、クルーズコントロールを搭載した車両(100)の車速制御システムであって、
現在の車速を検出するように構成されたセンサと、
複数の選択可能なギアを有する変速機と、
サービスブレーキ(131,132,133)と、
現在の係合ギアに応じた制動トルクを有する少なくとも1つの補助ブレーキ(111)と、
前記現在の車速を第1の制動設定速度(VS1)と比較し、前記少なくとも1つの補助ブレーキ(111)を制御して前記第1の制動設定速度(VS1)を維持するように構成された、制動設定速度を受信するユーザ選択可能な入力部を有するクルーズ車速のコントロールユニットと、
を備え、
前記コントロールユニットは、車速を低下させるために現在の係合ギアから低速ギアへのダウンシフトの手動要求を受信するユーザ選択可能な入力部を有し、前記現在の車速でダウンシフトが許容できるか否かを判定するように構成され、
前記コントロールユニットは、ダウンシフトが許容できなければ、前記サービスブレーキ(131,132,133)を作動させて現在の第1の車速から低速な第2の車速へと前記車速を低下させ、前記車速が前記第2の車速に到達すると、低速ギアへのダウンシフトを実行し、前記クルーズコントロールの制動設定速度を、前記クルーズコントロールの第1の制動設定速度値より低速な第2の制動設定速度(VS2)に設定し、前記現在の車速が前記第2の制動設定速度(VS2)を超えると、少なくとも前記補助ブレーキ(111)を使用して制動トルクを印加するように構成された、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項6】
前記コントロールユニットは、前記少なくとも1つの補助ブレーキ(111)によって前記制動設定速度が維持できるレベルに、前記第2の制動設定速度(VS2)を設定するように構成された、ことを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記コントロールユニットは、前記サービスブレーキ(131,132,133)の断続的な作動と組み合わせて、前記少なくとも1つの補助ブレーキ(111)によって前記制動設定速度が維持できるレベルに、前記第2の制動設定速度(VS2)を設定するように構成された、ことを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項8】
前記コントロールユニットは、前記サービスブレーキ(131,132,133)の温度が所定温度を超えると、前記サービスブレーキ(131,132,133)の作動を避けるように構成された、ことを特徴とする請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
コンピュータで実行されたとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータで実行されたとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の方法ステップを実行するように構成され、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御するコントロールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が降坂走行しているとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する方法及びシステムに関する。本発明は、トラック、バス及び建設機械などの大型車両に適用することができる。大型車両に関して本発明を説明するが、本発明は、この特定車両に限定されず、多関節型ホーラー、ホイールローダー、他の作業機械又は自動車など、他の車両にも適用することができる。
【背景技術】
【0002】
クルーズコントロールシステムと呼ばれることが多い、車速を自動制御する運転者支援システムは、運転者が作動手段(actuating means)を介して選択可能な走行速度を指定することを可能にする。そして、設定速度は、車両のアクセルペダルの操作に関係なく維持される。この速度は、運転者が設定することができ、登坂走行又は降坂走行などの走行状況に関係なく保持することもできる。車両は、補助ブレーキ又はサービスブレーキなどの適切な手段を使用して設定速度を維持する。
【0003】
独国特許出願公開第10200605179号明細書は、傾斜によって自動的に生じるエネルギーを吸収できる、クルーズコントロールとして一般的に知られている、下方に向かう速度を自動的に制御する方法に関する。この方法により、運転者は、積極的に走行速度を略一定に維持する必要がない。アクセルペダルが解放されて車両が降坂路を加速し始めると、下方に向かう速度制御が開始される。運転者によって設定された所望の所定の一定車速である目標車速に向けて、車速が制御される。
【0004】
クルーズコントロールを使用して車両が降坂走行しているとき、補助ブレーキのみを使用して設定速度を維持することは必ずしも可能ではない。長い降坂状態又は急な降坂状態において、車速を低下させるか、設定速度を手動でリセットさせるか、その両方を行うことによって、サービスブレーキの過度な使用を避ける必要がたびたびある。サービスブレーキを長時間作動させると、サービスブレーキの摩耗が増えて損傷することさえある、サービスブレーキの過熱を引き起こす可能性がある。
【0005】
従来の車両では、運転者が手動でダウンシフトを行うか、運転者が手動で設定速度を調整し、ブレーキペダルを踏み込んでサービスブレーキを作動させるかのいずれかによって、車速を所望の速度まで低下させて、サービスブレーキの過度な使用を避けなければならない。どちらの操作によっても、クルーズコントロールシステムが自動的に無効になり、運転者が手動でクルーズコントロールシステムを再起動して、補助ブレーキが維持できる速度より低い速度に再設定しなければならない。その代わりに、運転者はサービスブレーキを作動させて車速を維持することによって、補助ブレーキを積極的にサポートし続けなければならず、サービスブレーキの過熱をもたらすおそれがある。降坂路区間の終わりには、運転者は設定速度を本来の設定値に手動で戻さなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決した、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する方法及びシステムを提供することにある。本発明によって、運転者による最小限の介入を必要とし、かつ、高レベルの快適性を提供する、車速の自動制御が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する方法及びシステムを提供することにある。この目的は、添付の特許請求の範囲に記載された方法及びシステムによって達成される。
【0008】
本明細書において、「サービスブレーキ」という用語は、大型車両で使用される常用ブレーキ又は主ブレーキを表すために使用され、通常、運転者がサービスブレーキペダルを踏み込むことによって作動する。サービスブレーキは必ずしも必要ではないが、しばしば、各車輪に備えられた摩擦ブレーキを制御して車両を制動させる、圧縮エアで作動するエアブレーキである。「補助ブレーキ」という用語は、車両の制動をアシストする付加手段を表すために使用される。補助ブレーキは、サービスブレーキのアシストを必要とせずに、サービスブレーキに加えて使用され、長時間ブレーキを作動させることを可能にする。このようにして、サービスブレーキの摩耗及び不必要な加熱を回避することができる。このような補助ブレーキとしては、エンジン速度及びギア選択に依存する、排気ブレーキを作動させる排気バルブと、圧縮開放エンジンブレーキを作動させるエンジンブレーキバルブと、を含むことができる。他の補助ブレーキとしては、プロペラシャフトに制動力を発生させる流体リターダか、コンプレッサ若しくは発電機を駆動して制動力を発生させる手段とすることができる。以下の説明においては、補助ブレーキへの言及は、特に明記しない限り、上記のタイプのブレーキのみを含むものとする。
【0009】
本発明は、クルーズコントロールシステムを備えた車両に適用可能である。このクルーズコントロールシステムは、降坂走行前又は降坂走行中に、運転者が作動させることができる。実際の車速又は現在の車速が運転者によって設定された制動設定速度を超えると、エンジンブレーキなどの補助ブレーキが作動(engage)して、その速度をエンジンブレーキの限度内に維持する。このタイプの補助ブレーキによって与えられた制動トルクは、エンジン速度に直接依存する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、添付の方法クレームに記載の方法によって達成される。本発明は、車両が降坂走行しているとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する方法に関する。この方法は、クルーズコントロールを第1の制動設定速度(V
S1)に設定した状態で車両を降坂走行させるステップと、現在の車速を検出するステップと、少なくとも補助ブレーキを使用して現在の係合ギアに応じた制動トルクを印加し、第1の制動設定速度(V
S1)を維持するステップと、車速を低下させるために現在の係合ギアから低速ギアへのダウンシフトの手動要求を検出するステップと、現在の車速でダウンシフトが許容できるか否かを判定するステップと、を含み、コントロールユニットが、ダウンシフトが許容できないと判定したとき、少なくとも車両のサービスブレーキを使用して制動トルクを印加して車速を低下させるステップと、現在の第1の車速から低速ギアへのダウンシフトが許容できる低速な第2の車速に車両を減速させるステップと、車速が第2の車速に到達すると、低速ギアへのダウンシフトを実行するステップと、クルーズコントロールの第1の制動設定速度値より低い第2の制動設定速度(V
S2)にクルーズコントロールの制動設定速度を設定するステップと、検出された現在の車速が第2の制動設定速度(V
S2)を超えると、少なくとも補助ブレーキを使用して制動トルクを印加するステップと、を自動的に実行するように構成されている。
【0011】
この方法の利点は、低速の制動設定速度に車速を低下させるダウンシフトを要求することを除いて、運転者が何らかの操作を行う必要がないことにある。ダウンシフトの要求には、1つ以上のギア、低速レンジへのダウンシフトが含まれる。変速レバーを使用した実際の変速は必要なく、追加のスイッチ又はコントロールを操作する必要はなく、運転者が新たな設定速度を選択する必要がない。この目的を要求する手動操作を減らすことによって、運転者が道路に集中することができ、運転の快適性が向上する。
【0012】
第1の代替例によれば、コントロールユニットは、補助ブレーキによって第2の制動設定速度が維持できるレベルに、第2の制動設定速度値を自動的に設定するように構成されている。
【0013】
第2の代替例によれば、コントロールユニットは、サービスブレーキの断続的な作動と組み合わせて、補助ブレーキによって第2の制動設定速度が維持できるレベルに、第2の制動設定速度値を自動的に設定するように構成されている。コントロールユニットは、サービスブレーキの温度が所定温度を越えると、サービスブレーキの作動を自動的に避けるように構成することができる。
【0014】
この方法は、降坂状態の終了が検出されるまで、即ち、傾斜が水平になって通常のクルーズコントロールが再開されるまで、上述のステップを繰り返すように構成されている。従って、第2の制動設定速度に設定された速度で降坂走行するとき、必要に応じてさらなる速度低下を行うことができる。コントロールユニットが、例えば、予想より急な傾斜によってもたらされるダウンシフトのさらなる手動要求を検出した場合、第2の制動設定速度より低速な第3の制動設定速度に制動設定速度が設定される。
【0015】
コントロールユニットが降坂状態の終了を検出すると、クルーズコントロールの制動設定速度が第1の制動設定速度に戻され、1つ以上のアップシフトが実行される。第1の代替例によれば、傾斜センサ、加速度計、車載の地形データベース、GPS受信機、同様な適切なデバイスによって、コントロールユニットに送信された1つ以上の信号に応答して、これらのステップが自動的に実行される。
【0016】
第2の代替例によれば、運転者がレジューム命令(resume command)を発行すると、クルーズコントロールの制動設定速度が第1の制動設定速度に戻され、1つ以上のアップシフトが実行される。そのようなレジューム命令は、ダッシュボード上又はステアリングホイール上若しくはその付近の加速手段又はレジュームスイッチを運転者が操作することを必要とする。
【0017】
第2の代替例の方法ステップの利点は、車両の第1の制動設定速度に戻すために、運転者が任意の操作、又は、アクセルペダルの短時間の操作若しくは1つのスイッチの操作を伴う単一の操作のみを行う必要がないことにある。追加のスイッチ又はコントロールを操作する必要がなく、運転者が新たな設定速度、以前の設定速度、その両方を選択する必要がない。これにより、必要な手動操作がさらに減り、運転者が道路に集中することができ、運転の快適性が向上する。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、この目的は、添付の装置クレームに記載の装置によって達成される。本発明は、車両が降坂走行しているとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速制御システムに関する。このシステムは、現在の車速を検出するように構成されたセンサと、複数の選択可能なギアを有する変速機と、サービスブレーキと、現在の係合ギアに応じた制動トルクを有する少なくとも1つの補助ブレーキと、現在の車速を第1の制動設定速度と比較し、少なくとも1つの補助ブレーキを制御して第1の制動設定速度を維持するように構成された、制動設定速度を受信するユーザ選択可能な入力部を有するクルーズ車速のコントロールユニットと、を備えている。
【0019】
コントロールユニットは、車速を低下させるために、現在の係合ギアから低速ギアへのダウンシフトの手動要求を受信するユーザ選択可能な入力部を有している。コントロールユニットは、この要求を受信すると、現在の車速でダウンシフトが許容できるか、即ち、現在の車速において現在の選択ギアから要求ギアへのダウンシフトの要求が安全に実行できるか否かを判定するように構成されている。
【0020】
コントロールユニットは、ダウンシフトが許容できないと判定した場合、多数の所定の動作を自動的に開始するように構成されている。第1に、コントロールユニットは、サービスブレーキを作動させて、現在の第1の車速から低速な第2の車速に車速を低下させるように構成されている。第2に、コントロールユニットは、車速が第2の車速に到達すると、低速ギアへのダウンシフトを実行するように構成されている。第3に、コントロールユニットは、クルーズコントロールの第1の制動設定速度値より低速な第2の制動設定速度値に、クルーズコントロールの制動設定速度を設定するように構成されている。最後に、コントロールユニットは、現在の車速が第2の制動設定速度値を超えると、少なくとも補助ブレーキを使用して制動トルクを印加するように構成されている。最後のステップにおいて、印加される制動トルクは、サービスブレーキと組み合わされて少なくとも補助ブレーキによって与えることができる。
【0021】
この車速制御システムの利点は、低速の制動設定速度に車速を低下させるダウンシフトを要求することを除いて、運転者が何らかの操作を行う必要がないことにある。ダウンシフトの要求には、1つ以上のギア、低速レンジへのダウンシフトが含まれる。変速レバーを使用した実際の変速は必要なく、追加のスイッチ又はコントロールを操作する必要がなく、運転者が新たな設定速度を選択する必要がない。この目的を要求する手動の操作を減らすことによって、運転者が道路に集中することができ、運転の快適性が向上する。
【0022】
第1の代替例によれば、コントロールユニットは、補助ブレーキによって制動設定速度を維持できるレベルに、第2の制動設定速度値を設定するように構成されている。
【0023】
第2の代替例によれば、コントロールユニットは、サービスブレーキの断続的な作動と組み合わされて、補助ブレーキによって制動設定速度を維持できるレベルに、第2の制動設定速度値を設定するように構成されている。この明細書において、コントロールユニットは、サービスブレーキの温度が所定温度を超えると、サービスブレーキの作動を避けるように構成することができる。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、この目的は、コンピュータで実行されたとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する、上述の方法ステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムによって達成される。本発明はまた、コンピュータで実行されたとき、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御する、上述の方法ステップを実行するプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体に関する。最後に、本発明はさらに、上述の方法ステップを実行するように構成された、クルーズコントロールを搭載した車両の車速を制御するコントロールユニットに関する。
【0025】
クルーズコントロールシステムの自動制御を含む方法及びシステムを提供することによって、クルーズコントロールシステムの制御がコントロールユニットに移され、運転者が多くの手動操作から解放されるという利点がある。クルーズコントロールシステムを作動させると、運転者は、速度低下を望んでいることを示すダウンシフトを要求するだけでよい。ダウンシフトが実行されると、コントロールユニットは、制動設定速度をより低い値に自動的に設定する。この低い値は、降坂路区間の終わりまで、又は、運転者がさらなる速度低下を示すまで保持することができる。コントロールユニットは、降坂路区間の終わりに、制動設定速度を設定制動速度の初期値に自動的にリセットするように構成することができる。その代わりに、例えば、降坂走行前若しくは降坂走行中に運転者が、レジュームスイッチを操作するか、アクセルペダルを踏み込むか、前に係合していたギアに戻るアップシフトを単に要求することによって、レジューム命令を発行して制動設定速度の初期値にリセットすることを示すことができる。このようにして、運転者に要求される多くの手動操作が最小限に抑えられ、運転者が道路に集中して快適性を向上させることができる。
【0026】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、添付図面を参照して、例として挙げられる本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車速制御システムを備えた車両の概略図である。
【
図2】本発明に係るクルーズコントロールシステムを備えた車両の速度変動の一例を示す概略図である。
【
図3A】本発明に係る方法を実行するフローチャートの概略図である。
【
図3B】本発明に係る方法を実行するフローチャートの他の概略図である。
【
図4】コンピュータ装置に適用された本発明を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る車速制御システムを備えた車両の概略を示す。
図1は、クラッチ機構121を介して変速機120に連結された電子制御式の内燃機関110を有する、トラクタ−セミトレーラ車両のトラクタなどの車両100を示す。
図1に示す車両は、本発明のシステム及び方法のために適用可能な1つを表すにすぎないことに留意されたい。本発明は、本明細書で説明する車速制御システムを備えた、任意タイプの商用車又は産業車両に実装可能である。
【0030】
変速機120は、出力軸122を介して、一対の駆動輪124を駆動するドリブンアクスル123に連結された自動機械式変速機又は他の適切な変速機とすることができる。車両100は、少なくとも2つのアクスル、例えば、操舵可能なアクスル127と、少なくとも1つのリアドリブンアクスル123と、を含んでいる。
図1は、関連した車輪124,126を有するリアドリブンアクスル123及びトレーリングアクスル125、並びに、関連する車輪128を有する操舵可能なアクスル127を示している。各アクスル123,125,127は、特定用途及び作動状態に応じて手動又は自動で作動することができる、サービスブレーキコンポーネント131,132,133を有する、対応する車輪124,126,128を支持している。例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)を搭載した車両は、車両制動中にシステムが1つ以上の車輪に十分なスリップ差を検出するか、クルーズコントロールシステムの制御下で車両が降坂走行しているときなど、適切な状態下で制動の自動制御を行うことができる。サービスブレーキコンポーネント131,132,133は、車輪速センサ及び電子制御式の圧力バルブ(図示せず)を含み、車両の制動システムの制御を行う。サービスブレーキコンポーネント131,132,133は、
図1において入力部134及び出力部135で概略的に示されるように、適切な配線によって、中央電子制御ユニット(ECU)140に接続されている。車輪速センサ136は、
図1に概略的に示されている。そのような1つ以上のセンサからの出力信号は、車速を算出するために使用することができる。
【0031】
車両100は、アクセルペダル141、ブレーキペダル142及び任意のクラッチペダル143(手動変速機用)などの従来のオペレータコントロール、並びに、ダッシュボードコントロールコンソール(図示せず)などのオペレータインタフェースを含んでいる。ダッシュボードコントロールコンソールは、ライト、ディスプレイ、ブザー、計器などの多くの出力デバイスの任意の1つ、スイッチ、プッシュボタン、ポテンショメータなどの様々な入力デバイスを含むことができる。入力デバイスの例としては、クルーズコントロールシステムにおいて、クルーズコントロールの制動設定速度を設定、復帰又はその両方を行うコントローラ144,145とすることができる。クルーズコントロールの制動設定速度を設定するコントローラ144及びクルーズコントロールの制動設定速度を復帰するコントローラ145の両方は、ECU140に接続されている。
【0032】
車両制御システムは、エンジン110及び変速機120の電子制御モジュール146,147に夫々接続された中央ECU140を含んでいる。ECU140はまた、入力部148を介して様々なセンサと通信し、出力部149を介して多数のアクチュエータと通信する。センサ(図示せず)としては、操舵角センサ、車輪速センサ(サービスブレーキコンポーネント131,132,133に含まれる)、電子式アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ若しくはスイッチ、クラッチ制御若しくはセンサ、出力速度センサ、少なくとも車両の前後方向の傾斜を示すセンサ若しくは加速度計151、及び、様々なエンジンパラメータのセンサ152を含むことができる。
【0033】
クルーズコントロールが起動された状態での降坂走行中、ECU140は、複数のセンサからの情報を監視してそれらの入力値を評価し、多くのなかから、現在のエンジン速度、エンジントルク、ブレーキペダル位置、アクセルペダル位置、路面速度、クルーズコントロール状態、クルーズコントロールの制動設定速度、クルーズコントロールの複数のスイッチ、クラッチペダル位置などのパラメータを特定する。
【0034】
複数のアクチュエータとしては、変速機120内で変速を自動的に行う変速アクチュエータ、電子制御式の圧力バルブ(サービスブレーキコンポーネント131,132,133に含まれる)、エンジンリターダ111などの1つ以上の補助ブレーキを含むことができる。エンジンリターダは、長時間の降坂時にサービスブレーキ131,132,133を補助し、高頻度な発進操作及び停止操作においてサービスブレーキの寿命を延長するために利用されるデバイスである。複数のリターダは、エンジンブレーキ、排気ブレーキ、油圧リターダ及び電気リターダに分類することができる。エンジンリターダの一例は、生み出されたディーゼルエンジンの動力をエアコンプレッサの動力に変換する、公知の「ジェイクブレーキ」などのエンジンブレーキである。これは、圧縮行程中にピストンが上死点に近づくと、燃料を遮断して排気バルブを油圧で開弁することによって達成される。クルーズコントロールが作動すると、多くのエンジンメーカーがエンジンブレーキを無効にする。しかしながら、本発明は、クルーズコントロールが作動したときにエンジンリターダを利用して、車両の減速を高めることができる。これは、降坂走行中に、エンジンリターダを直接制御することによって達成することができる。
【0035】
ECU140は、ハードウエア回路コンポーネントとプログラムされたマイクロプロセッサとの様々な組み合わせで実装される論理規則又はアルゴリズムを含み、様々な車両のシステム及びサブシステムの制御を行う。クルーズコントロール機能は、クルーズコントロール機能を実装するのに必要な論理規則を表す、ECU140内のクルーズコントロールブロックとして組み込むことができる。このシステムの動作は、以下で詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明に係るクルーズコントロールシステムを備えた車両の速度変動の一例を示す概略図である。図示するように、クルーズコントロールを搭載した車両200は、初期道路区間X
0に沿って走行して降坂路に近づいている。第1の地点Aにおいて、車両200は、第1の制動設定速度V
S1と等しい速度で走行している。第1の降坂路区間X
1の間、車両は加速し始め、現在の車速を監視するように構成されたクルーズコントロールシステムは、速度を低下させて第1の制動設定速度V
S1を維持しようと試みる。速度低下は、最初、少なくとも1つの補助ブレーキ、望ましくは、エンジンリターダによって行われる。降坂路の傾斜が過度でない場合、車速は、
図2において破線曲線で示されるように、所定の超過速度(overspeed)V
LIM未満に維持することができる。しかしながら、より急な傾斜では、車速は、
図2において実線曲線で示されるように、超過速度V
LIMを超えることができる。車速が超過速度V
LIMを超える場合には、クルーズコントロールシステムは、サービスブレーキを自動的に作動させて、補助ブレーキをアシストして速度を制限することができる。このような状態下でのサービスブレーキの作動は、急な降坂路又は長い降坂路でのサービスブレーキの長時間使用が望ましくないため、運転者に警告する契機となり得る。
【0037】
第2の地点Bにおいて、運転者が介入、例えば、スイッチ又はボタンを押すか、変速レバーを使用して所望のギアを指示して、ダウンシフトの手動要求によって速度を低下させる。車両に備えられた電子制御ユニット(ECU)(
図1参照)がダウンシフトの手動要求を検出すると、ECUは、運転者のさらなる操作が不要である、多くのステップを自動的に実行して速度を低下させるように構成されている。
【0038】
第1のステップでは、ECUは、現在のエンジン速度において、現在選択されているギアからのダウンシフトが許容できる否かを判定する。ダウンシフトが可能であれば、コントロールユニットは、変速機に信号を送信して要求されたダウンシフトを実行する。ダウンシフトが許容できないと判定されると、コントロールユニットは、自動的に、サービスブレーキを使用して制動トルクを印加して、少なくとも1つの補助ブレーキをアシストする。ダウンシフトが可能な所望の速度までの車両の自動制動は、降坂路区間X
2に亘って行われる。点Cで示される位置において、所望の速度が得られ、ECUは、変速機に信号を送信して要求されたダウンシフトを実行する。第3の降坂路区間X
3に亘って、補助ブレーキが車両を減速するために使用され、第2の制動設定速度V
S2を維持することができる。
【0039】
第2のステップでは、点Cで要求されたダウンシフトの直後に、ECUは、第1の制動設定速度V
S1より低速な第2の制動設定速度V
S2に制動設定速度を設定する。第2の制動設定速度V
S2は、補助ブレーキのみによって低速を維持できるレベルに、ECUによって選択される。制動設定速度が現在低下しているが、ダウンシフトがエンジン速度を上昇させたので、クルーズコントロールシステムは、補助ブレーキを使用して新たな設定速度に車速を維持することができる。エンジン速度の上昇によって、補助ブレーキがより高い制動トルクを与えることができる。
【0040】
公道の標準化された基準よりも傾斜が大きな特定状態下では、運転者がさらに速度を低下させるさらなるダウンシフトを要求すれば、上述のステップを繰り返すことができる。
【0041】
点Dにおいて、コントロールユニットは、降坂状態の終了を検出する。第1の代替例によれば、ECUは、クルーズコントロールの制動設定速度を第1の制動設定速度V
S1に戻すように構成されている。ここで、第4の道路区間X
1に亘って、クルーズコントロールシステムによって車速が第1の制動設定速度V
S1まで増加する。コントロールユニットは、傾斜センサ、加速度計、車載の地形データベース、GPS受信機又は同様な適切なデバイスによって、コントロールユニットに送信された1つ以上の信号に応答して、この動作を実行するように構成されている。1つ以上のこれらの信号は、補助ブレーキの作動がないことを検出したことと組み合わされて、降坂状態の終了を検出するために使用することができる。
【0042】
第2の代替例によれば、ECUは、運転者がレジューム命令を発行すると、クルーズコントロールの制動設定速度を第1の制動設定速度V
S1に戻すように構成されている。そのような手動のレジューム命令は、ダッシュボード上又はステアリングホイール上若しくはその付近の加速手段又はレジュームスイッチ(
図1参照)を運転者が操作する必要がある。
【0043】
図3Aは、クルーズコントロールシステムを搭載した車両において、本発明に係る方法を実行する概略的なフローチャートを示す。
図3Aから理解できるように、第1のステップ301で処理が開始され、これに続くステップ302において運転者が第1の制動設定速度を設定する。第3のステップ303において降坂状態が監視される。このステップ303では、車速や道路傾斜などの多くのパラメータが監視される。降坂状態が検出されなければ、処理は最後のステップ311へと進む。
【0044】
降坂状態が検出されると、クルーズコントロールシステムは、第4のステップ304へと進み、ブレーキクルーズコントロールを行い、車速を制御して第1の制動設定速度を維持する。このステップ304の間、速度が第1の制動設定速度を超えると、少なくとも補助ブレーキが作動される。第5のステップ305において、追加のチェックが行われ、ダウンシフトの手動要求がなされたか否かを判定する。運転者がダウンシフトを要求しなければ、処理は第3のステップ303を経て第4のステップ304へと戻り、第1の制動設定速度を維持するクルーズコントロールの実行を継続する。
【0045】
一方、運転者がダウンシフトの要求を行ったならば、第6のステップ306において、現在の車速が検出される。処理は第7のステップ307へと進み、コントロールユニットは、現在のエンジン速度で現在選択されているギアからのダウンシフトが可能であるか否かを判定する。ダウンシフトが許容できなければ、コントロールユニットは、第8のステップ308へと進み、自動的にサービスブレーキを作動させて、ダウンシフトが可能なレベルまで車速を低下させる。エンジン速度が要求されたダウンシフトを可能にするレベルまで車速が低下すると、コントロールユニットは、第9のステップ309において、ダウンシフトを実行するための信号を送信することによって、変速機を作動させる。しかしながら、第7のステップ307においてダウンシフトが許容されるのであれば、コントロールユニットは、第8のステップ308をバイパスして第9のステップ309へと直接進み、変速機に信号を送信して要求されたダウンシフトを実行する。
【0046】
要求されたダウンシフトが順調に実行されると、コントロールユニットは、第10のステップ310へと進み、第1の制動設定速度より低速な第2の制動設定速度に制動設定速度を調整する。第2の制動設定速度は、格納されたテーブル若しくはマトリックスからか、現在の道路傾斜のようなパラメータに応じてか、その両方から、クルーズコントロールシステムによって自動的に選択することができる。その後、処理は第3のステップ303へと戻り、降坂状態が依然として検出されているかをチェックする。降坂状態が依然として検出されていれば、処理は第4のステップ304へと進み、クルーズコントロールを行って、低速な第2の制動設定速度を維持する。制動設定速度が現在低下しているが、ダウンシフトがエンジン速度を上昇させるため、クルーズコントロールシステムは、補助ブレーキを使用して新たな制動設定速度に車速を維持することができる。上昇したエンジン速度によって、補助ブレーキがより高い制動トルクを与えることができる。その後、上述したように、処理が再開される。
【0047】
上述のような処理は、第3のステップ303において、降坂状態が検出される限り継続される。クルーズコントロールシステムが降坂状態の終了を検出すると、処理は制御ループを抜けて、第3のステップ303から最後のステップ311へと進む。降坂状態の終了は、望ましくは、例えば、道路傾斜を監視することによって、クルーズコントロールシステムが自動的に検出する。その代わりに、運転者がアクセルペダル又はこの目的のために設けられたスイッチを操作すると、降坂状態の終了が検出される。最後のステップ311で処理が終了し、検出されたパラメータを定期的に監視することに戻って、次の降坂状態が検出された場合にのみ再開される。以前の降坂路区間の間に制動設定速度が変更されると、次の降坂路区間に先立って制動設定速度が第1の制動設定速度に自動的にリセットされる。
【0048】
図3Bは、クルーズコントロールシステムを搭載した車両において、本発明に係る方法を実行する他の概略的なフローチャートを示す。
図3Bから理解できるように、この方法は第1のステップ321で処理が開始され、これに続く第2のステップ322において運転者が第1の制動設定速度を設定する。第1の制動設定速度は、運転者によって一度設定され、その後の使用のためにコントロールユニットに格納される。その代わりに、システムは、例えば、現在格納されている制動設定速度値を表示することによって運転者に入力を促し、運転者が入力しなければ、格納されている第1の制動設定速度が使用される。第3のステップ323において、降坂状態が監視される。このステップ323において、車速や道路傾斜などの多くのパラメータが監視される。降坂状態が検出されなければ、処理は最後のステップ332へと進む。
【0049】
降坂状態が検出されると、クルーズコントロールシステムは第4のステップ324へと進んでブレーキクルーズコントロールを行い、車速を制御して第1の制動設定速度を維持する。このステップ324の間、速度が第1の制動設定速度を超えると、少なくとも補助ブレーキが作動される。第5のステップ325において、追加のチェックが行われ、ダウンシフトの手動要求がなされたか否かを判定する。運転者がダウンシフトを要求しなければ、処理は第3のステップ323を経て第4のステップ324へと戻り、第1の制動設定速度を維持するクルーズコントロールの実行を継続する。
【0050】
一方、運転者がダウンシフトを要求すると、第6のステップ326において、現在の車速が検出される。処理は第7のステップ327に進み、コントロールユニットが、現在のエンジン速度で現在選択されているギアからのダウンシフトが可能であるか否かを判定する。ダウンシフトが許容できないのであれば、コントロールユニットは、第8のステップ328へと進み、自動的にサービスブレーキを作動させて、ダウンシフトが可能なレベルまで車速を低下させる。エンジン速度が要求されたダウンシフトを可能にするレベルまで車速が低下すると、コントロールユニットは、第9のステップ329において、信号を送信することによって変速機を作動させてダウンシフトを実行する。しかしながら、第7のステップ327においてダウンシフトが許容されるのであれば、コントロールユニットは、第8のステップ328をバイパスして第9のステップ329へと直接進み、変速機に信号を送信して、要求されたダウンシフトを実行する。
【0051】
要求されたダウンシフトが順調に実行されると、コントロールユニットは、第10のステップ330へと進み、第1の制動設定速度より低速な第2の制動設定速度に制動設定速度を調整する。第2の制動設定速度は、格納されたテーブル若しくはマトリックスからか、現在の道路傾斜のようなパラメータに応じてか、その両方から、クルーズコントロールシステムによって自動的に選択することができる。その後、処理は第3のステップ323へと戻り、降坂状態が依然として検出されているか否かをチェックする。降坂状態が依然として検出されていれば、処理は第4のステップ324へと進み、クルーズコントロールを行って、低速な第2の制動設定速度を維持する。制動設定速度が現在低下しているが、ダウンシフトがエンジン速度を上昇させるため、クルーズコントロールシステムは、補助ブレーキを使用して新たな制動設定速度に車速を維持することができる。上昇したエンジン速度によって、補助ブレーキがより高い制動トルクを与えることができる。その後、上述したように、処理が再開される。
【0052】
上述のような処理は、第3のステップ323において、降坂状態が検出される限り継続される。クルーズコントロールシステムが降坂状態の終了を検出すると、処理は制御ループを抜けて、第3のステップ323から第11のステップ331へと進む。降坂状態の終了は、望ましくは、例えば、道路傾斜を監視することによって、クルーズコントロールシステムが自動的に検出する。その代わりに、運転者がアクセルペダル又はこの目的のために設けられたスイッチを操作すると、降坂状態の終了が検出される。第11のステップ331において、制動設定速度が変更されたか否かを判定する。制動設定速度が変更されていなければ、何の動作も必要なく、制動設定速度が変更されていれば、制動設定速度が第1の制動設定速度にリセットされる。
【0053】
最後のステップ332で処理が終了し、検出されたパラメータを監視することに戻って、次の降坂状態が検出された場合にのみ再開される。以前の降坂路区間の間に制動設定速度が変更されると、次の降坂路区間に先立って制動設定速度が第1の制動設定速度に自動的にリセットされる。
【0054】
本発明はまた、上述の実施例のいずれか1つに記載の方法を実行するため、コンピュータと共に使用される、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ記録媒体に関する。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態に係る装置400を示す。この装置400は、不揮発性メモリ420と、プロセッサ410と、読み書きメモリ460と、を備えている。メモリ420は、装置400を制御するためのコンピュータプログラムが格納された、第1のメモリ部430を有している。装置400を制御するためのメモリ部430のコンピュータプログラムは、オペレーティングシステムとすることができる。
【0056】
装置400は、例えば、コントロールユニット140のようなコントロールユニットを内蔵することができる(
図1参照)。データ処理ユニット410は、例えば、マイクロコンピュータを含むことができる。メモリ420は、本発明に係る上述の機能を制御するためのプログラムが格納される、第2のメモリ部440も有している。他の実施形態において、車速制御システムを制御するためのプログラムは、例えば、CD又は交換可能な半導体メモリなど、データのための別体の不揮発性記憶媒体450に格納される。このプログラムは、実行可能な形態又は圧縮状態で格納することができる。
【0057】
以下においてデータ処理ユニット410が特定機能を実行すると述べるとき、データ処理ユニット410がメモリ440に格納されたプロクラムの特定部分を実行、又は、不揮発性記憶媒体420に格納されたプログラムの特定部分を実行していることは明らかであろう。
【0058】
データ処理ユニット410は、データバス414を介して、記憶媒体450と通信するように適合されている。データ処理ユニット410はまた、データバス412を介して、メモリ420と通信するように適合されている。さらに、データ処理ユニット410は、データバス411を介して、メモリ460と通信するように適合されている。データ処理ユニット410はさらに、データバス415を使用して、データポート490と通信するように適合されている。
【0059】
本発明は、上述及び図示の実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正が可能であることを認識するであろう。