特許第6596169号(P6596169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフトの特許一覧

特許6596169バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法
<>
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000002
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000003
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000004
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000005
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000006
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000007
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000008
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000009
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000010
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000011
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000012
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000013
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000014
  • 特許6596169-バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596169
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20191010BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20191010BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20191010BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20191010BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G01N27/26 371A
   G01N27/30 A
   G01N27/416 338
   A61B5/1486
   C12Q1/26
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-548422(P2018-548422)
(86)(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公表番号】特表2019-513984(P2019-513984A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017055919
(87)【国際公開番号】WO2017157894
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年11月12日
(31)【優先権主張番号】16160136.4
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンゲマン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーダー、ヘルベルト
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/030346(WO,A2)
【文献】 特表2010-540934(JP,A)
【文献】 特表2007-514927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/26−27/49
A61B5/05−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法であって、前記バイオセンサは、第1電極(112)、第2電極、および第3電極(114)を有し、前記第1電極(112)および前記第2電極は、膜で被覆されており、前記第1電極(112)は酵素をさらに含むか、または前記第1電極(112)は酵素層で被覆されており、前記第1電極(112)、前記第2電極、および前記第3電極(114)は、ポテンショスタットを介して接続されており、通常動作モードにおいて、前記第1電極(112)が酸化プロセスを可能にし、前記第3電極(114)が還元プロセスを可能にするように、前記ポテンショスタットを介して前記第1電極(112)と前記第2電極との間に電位差が印加され、
前記方法は、
a)前記通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるステップであって、前記干渉物質検出モードにおいて、前記第1電極(112)と前記第2電極との間の前記電位差は、前記第3電極(114)が酸化プロセスを可能にするように、限られた期間において変更される、ステップと、
b)前記第3電極(114)の電流−電圧特性(110)を測定するステップと、
c)前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)を評価することによって、前記バイオセンサ中の前記干渉物質による寄与を判定するステップと
を含む、
方法。
【請求項2】
ステップa)による前記通常動作モードから前記干渉物質検出モードへの切り替えは、前記ポテンショスタットを使用することによる、前記限られた期間における、電位差の時間に応じて変わる変更を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップb)による前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)の測定は、前記限られた期間中に、前記第1電極(112)と前記第3電極(114)との間の電流を測定すること、および前記第3電極(114)の電圧を測定することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ステップa)による前記通常動作モードから前記干渉物質検出モードへの切り替えは、前記ポテンショスタットを使用することによる少なくとも1つの電位ステップ(128)の印加を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)による前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)の測定は、前記電位ステップ(128)の印加に続く測定期間において、前記第1電極(112)と前記第3電極(114)との間の電流を測定すること、および前記第3電極(114)の電圧を測定することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)に生じるゼロ電流遷移の位置(120、136、142、146)は、前記第1電極(112)の電位において判定される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ゼロ電流遷移の位置(120、136、142、146)を評価することによって、前記干渉物質の種類が判定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)に生じる少なくとも1つの電流プラトーの電流値がさらに判定される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記干渉物質の量は、電流プラトーにおける電流値を評価することによって判定される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのさらなる干渉物質が前記バイオセンサ中の寄与をもたらす場合、前記第3電極(114)の前記電流−電圧特性(110)に生じる2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つの位置は、前記第1電極(112)の電位において判定され、前記少なくとも1つのさらなる干渉物質の種類は、前記2つの異なる電流プラトー間における前記少なくとも1つの電圧遷移の位置を評価することによって判定される、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記バイオセンサは、分析物を連続的に監視するために、全体的にまたは部分的に埋め込み可能なバイオセンサである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記分析物はグルコースを含み、前記酵素はグルコースオキシダーゼである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記干渉物質は、内在性干渉物質および外在性干渉物質のうちの1つであり、前記干渉物質は、前記分析物のレベルに影響を及ぼすことが可能である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記外在性干渉物質は、医薬化合物またはその代謝産物である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
バイオセンサの動作を検証する、および/または前記バイオセンサを較正する方法であって、少なくとも1つの干渉物質の少なくとも1つの所定の項目に対し、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実行するステップ、および前記第3電極(114)の少なくとも1つの電流−電圧特性(110)、または前記電流−電圧特性(110)から得られる少なくとも1つの特性値を、対応する前記干渉物質の項目と共に記憶するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法、ならびにバイオセンサの動作を検証するための、および/またはバイオセンサを較正するための関連する方法に関する。本発明による方法は、体液中の分析物濃度の長期モニタリング、特に、血中グルコースレベルまたは体液中の1つまたは複数の他の種類の分析物の濃度の長期モニタリングに主に使用されてもよい。本発明は、在宅ケアの分野および病院などの専門的ケアの分野の両方において適用されてもよい。しかし、他の用途も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
ある特定の身体機能を監視すること、より具体的には1つまたは複数のある特定の分析物の濃度を監視することは、様々な疾患の予防および治療において重要な役割を果たす。本発明は、さらなる可能な適用を制限することなく、間質液中のグルコースモニタリングに関連して以下に説明される。しかし、本発明は、他の種類の分析物にも適用することができる。血糖モニタリングは、具体的には、光学測定の他に電気化学式バイオセンサを使用することによって実行されてもよい。グルコース、特に血液または他の体液中のグルコースを測定するための電気化学式バイオセンサの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4または特許文献5により公知である。
【0003】
体液の試料が使用者、すなわち人間または動物から標的様式で採取され、分析物濃度に関して検査される「スポット測定」に加えて、連続測定がますます確立されている。したがって、最近では、間質組織中のグルコースの連続測定(「連続グルコースモニタリング」または略して「CGM」とも呼ばれる)が、糖尿病の管理、モニタリング、および制御のためのもう一つの重要な方法として確立されている。ここでは、活性センサ領域が、一般的に間質組織内に配置された測定部位に直接適用され、たとえば、酵素、特にグルコースオキシダーゼ(一般的に「GOD」と略記される)を用いてグルコースを電気的に荷電した実体に変換してもよい。結果として、検出可能な電荷はグルコース濃度に関連し、測定変数として使用されてもよい。そのような経皮測定システムの例は、特許文献5または特許文献6に記載されている。
【0004】
典型的には、現在の連続モニタリングシステムは、経皮システムまたは皮下システムである。したがって、実際のバイオセンサまたは少なくともバイオセンサの測定部分は、使用者の皮膚下に配置されてもよい。しかし、システムの評価および制御部分(「パッチ」とも呼称され得る)は、一般的に、使用者の体外に位置してもよい。ここでは、一般的に、バイオセンサは、挿入器具を使用することによって適用され、これは、例示的な方法で特許文献6に記載されている。しかし、他の種類の挿入器具も知られている。さらに、典型的には、生体組織の外部に位置し、バイオセンサと通信しなければならない制御部分が必要とされてもよい。一般的に、通信は、バイオセンサと制御部分との間に少なくとも1つの電気的接触を設けることによって確立され、接触は永久的な電気的接触または解放可能な電気的接触であってもよい。適当なバネ接点などによる、電気接点を設けるための他の技術が一般的に知られており、適用されてもよい。
【0005】
連続グルコース測定システムでは、少なくとも作用電極および対抗電極を有する電気化学セルを含む電気化学センサを利用することによって、分析物であるグルコースの濃度が決定されてもよい。ここで、作用電極は、体液中の分析物の酸化を補助するように適合された酸化還元活性酵素補因子を有する酵素を含む試薬層を有してもよい。しかし、体液はさらに、同様の方法で酸化され得る追加の酸化還元活性物質を含んでもよく、したがって、追加の電流として検出可能なさらなる電子を生成してもよく、「バックグラウンド電流」または「ゼロ電流」として示されてもよい。一般的に、体液中に存在し、そしてこのような測定に影響を及ぼし得る追加の酸化還元活性物質は、通常「干渉物質」と呼称される。一方では、第1の種類の干渉物質が酸化還元メディエータと同様に作用してもよく、作用電極にて直接酸化され、それにより追加の電流を提供することができる。一方、第2の種類の干渉物質は、グルコース反応の場合に存在する過酸化水素(H22)のような中間生成物と反応してもよく、それにより体液中の中間生成物の濃度が低下してもよく、結果として、電流測定装置の感度が低下し得る。
【0006】
体液内に1つまたは複数の干渉物質が存在する結果として、未知の程度の測定誤差が、グルコースセンサ内の追加の電流のために生じる可能性がある。一例として、いくつかの種類のバイオセンサでは、特に測定シーケンスの開始時に大きな測定誤差が発生する可能性がある。一般的に固定値がバックグラウンド電流に対して提供されている、工場で較正されたバイオセンサの全動作中に同様の結果が生じる可能性がある。したがって、バックグラウンド電流の変更は、容易に測定誤差をもたらす可能性がある。
【0007】
これまで、体液に含まれる干渉物質のバイオセンサへの影響を低減し得る数多くの技術的な解決策が提供されている。
【0008】
第1に、干渉物質膜、すなわち分析物に対して選択的であり、同時に干渉物質に対して障壁効果をもたらす膜を利用することが提案されている。したがって、干渉物質膜は、好ましくは、分析物のみがバイオセンサまたは少なくともその中の分析物検出ユニットに到達するように、分析物と干渉物質とを区別することができる。知られているほとんどの干渉物質膜は、陰イオン性干渉物質の静電反発を達成することを意図した陰イオン基を含むため、一般的に、すべての干渉物質の効果を完全に抑制することは不可能である。
【0009】
第2に、低作用電位を含み得る酸化還元メディエータを提供することが実現可能であってもよい。したがって、酸化還元メディエータが酸化され得る電位の値は、体液中の既知の干渉物質の酸化プロセスが起こり得る電位の値よりも低くてもよい。しかし、この種の修正は、典型的には、バイオセンサの動作に適合した概念を必要とするため、一般的には既存のバイオセンサには適用できない。さらに、一方では長期安定性、非毒性および不溶性の特性を備えつつ、他方では望ましい低作用電位を示す酸化還元メディエータは、少数のみが利用可能である。
【0010】
代替的に、体液に含まれる干渉物質のバイオセンサへの影響を判定することを可能にする多くの技術的解決法が提供されている。
【0011】
第1に、干渉物質の存在および好ましくは量を差し引くことができるように、バイオセンサ中の電流の印加された電位に対する依存性を観察する方法に関連するアイデアが提案されている。しかし、既知の方法は不明瞭な結果をもたらす傾向があり、一般的には、1種類を超える干渉物質が存在する場合には適用できない。
【0012】
第2に、干渉電極、特に、酵素を含まない追加の作用電極を提供することは有望となり得る。結果として、干渉物質、すなわち体液中の他の酸化還元活性物質のみが追加の作用電極と反応し得る。この目的のために、追加の作用電極は、好ましくは、第1の作用電極と、同じ構成を備え、同じ作用電位で動作してもよい。しかし、この提案は、追加の作用電極の製造および動作と共に、バイポテンショスタットおよび1つまたは複数のリレー回路のような補足的な回路構成要素を必要とする。
【0013】
特許文献8は、連続グルコースセンサなどの連続分析物センサのシステムおよび方法を開示している。このようなシステムの1つは、その両方の電極が干渉物領域を含む第1および第2の作用電極を利用して、分析物または非分析物関連信号を測定する。
【0014】
特許文献9は、電気化学センサを使用して分析物を測定する際に、体液中の干渉性化合物の影響を低減する方法を開示している。特に、本方法は、センサが基板、第1および第2の作用電極、および参照電極を含み、第1および第2の電極のいずれかが、または第2の作用電極のみが酵素の無い領域を含んでいる電気化学的センサに適用可能である。この発明では、本発明のテストストリップの実施形態を使用しての干渉効果の数学的補正と共にアルゴリズムが記載されている。
【0015】
特許文献10は、グルコースの皮下インビボ電流測定のために設計された小径の可撓性電極を開示している。電極は、血清または血液の他の電気反応性の種の存在下であっても、「ワンポイント」インビボ較正を可能にするように、すなわちゼログルコース濃度においてはゼロ出力電流を有するように設計されている。電極は、好ましくは、3層または4層であり、層がポリアミド絶縁金ワイヤの先端の凹部内に連続的に堆積されている。第1のグルコース濃度電流変換層は、電気絶縁性がありグルコースフラックスを制限する層(第2の層)でオーバーコートされ、その上に、任意で、固定化された、干渉を除去するための西洋ワサビペルオキシダーゼベースの膜(第3の層)が堆積されている。外側(第4)層は生体適合性を有する。
【0016】
特許文献11は血液中の成分を測定する方法を開示しており、方法は、血球および干渉物質の量を高精度かつ高信頼度で測定することができ、成分の量を血球および干渉物質の量を基に正確に修正することができる。血液成分を測定するセンサにおいて、第1の作用電極は血液成分の酸化還元反応中に流れる電流を測定し、第2の作用電極は血球の量を測定し、第3の作用電極は干渉物質の量を測定する。次に、測定結果に基づいて、測定対象の血液成分の量を修正する。これにより、より正確かつ精密な血液成分の量の測定が可能となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,413,690号明細書
【特許文献2】米国特許第5,762,770号明細書
【特許文献3】米国特許第5,798,031号明細書
【特許文献4】米国特許第6,129,823号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0013731号明細書
【特許文献6】米国特許第6,360,888号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0242962号明細書
【特許文献8】米国特許第7,896,809号明細書
【特許文献9】米国特許第7,653,492号明細書
【特許文献10】米国特許第6,121,009号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2014/0158552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法ならびにバイオセンサの動作を検証するため、および/またはバイオセンサを較正するための関連する方法を提供することであり、これによって、この種の既知の装置および方法の欠点が少なくとも部分的に回避され、上記の課題が少なくとも部分的に解決される。
【0019】
特に、これらの方法は、体液内の干渉物質の有無に関する情報、および好ましくは測定電流へのそれらの影響の程度に関する情報を簡単かつ効率的な方法で提供することができることが望ましい。特に、バイオセンサ中のバックグラウンド電流の判定は、簡単かつ効率的に達成され得る。
【0020】
さらに、本発明による方法は、標準的なバイオセンサのセンサ電子機器構造内で実施可能であり、特に既存のバイオセンサシステムに適用可能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この問題は、独立請求項の特徴を有する、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法、ならびにバイオセンサの動作を検証するおよび/またはバイオセンサを較正する方法によって解決される。個別の方法で、または任意の組み合わせで実現され得る本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示される。
【0022】
以下に使用されるように、用語「有する」、「備える」または「含む」またはその任意の文法的な変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、この文脈において記述される実体には、これらの用語によって導入された特徴に加えて、さらなる特徴は存在しないという状況、および複数のさらなる特徴が存在するという状況の両方を言及してもよい。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、「AはBを含む」という表現は、Bに加えて、他の要素はAに存在しないという状況(すなわち、Aが単独かつ独占的にBに構成されている状況)、およびBに加えて、要素C、要素CとDまたはそれ以上の要素など、1つまたは複数の他の要素が実体Aに存在する状況の両方を言及してもよい。
【0023】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つまたは複数の」という用語、または特徴もしくは要素が1度以上存在し得ることを示す類似の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入する際に1度だけ使用されることに留意されたい。以下では、多くの場合、それぞれの特徴または要素を言及する際に、それぞれの特徴は1度以上存在し得るという事実にもかかわらず、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という表現は繰り返されない。
【0024】
さらに、以下に使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「具体的には」、「より具体的には」、「詳細には」、「より詳細には」、または類似の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の機能と関連して使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意の特徴であり、請求項の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が理解するように、代替の特徴を使用して実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現において紹介される特徴は、本発明の代替の実施形態に関して制限することのない、本発明の範囲に関して制限することのない、およびこのようにして導入された特徴を、本発明の他の任意の特徴または非任意の特徴と組み合わせることに関して制限することのない任意の特徴であることが意図されている。
【0025】
本発明の第1の態様では、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法が開示される。ここでは、バイオセンサは、第1電極、第2電極および第3電極を有し、第1電極および第2電極は膜で被覆されており、第1電極は酵素をさらに含むか、または第1電極は酵素層で被覆されており、第3電極も膜で被覆されていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。換言すれば、本明細書で使用される第1電極、第2電極、および第3電極は、以下のように、
−第1電極は作用電極と、
−第2電極は参照電極と、そして
−第3電極は補助電極または対抗電極と
呼称されてもよい。しかし、他の種類の名称も実現可能である。
【0026】
さらに本発明によると、第1電極、第2電極および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続され、通常の動作モードでは、第1電極は酸化プロセスを可能にし、第3電極は還元プロセスを可能にするように、ポテンショスタットを介して第1電極と第2電極との間に電位差が印加される。
本明細書において、方法は、以下の、
a)通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるステップであって、干渉物質検出モードにおいて、電位差は、第3電極が酸化プロセスを可能にするように、限られた期間において変更される、ステップと、
b)第3電極の電流−電圧特性を測定するステップと、
c)第3電極の電流−電圧特性を評価することによって、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を判定するステップと、
を含む。
【0027】
本明細書において、示されたステップは、好ましくは、所定の順序で実行される、したがってステップa)から開始する。しかし、示されたステップのいずれかまたはすべて、特にステップb)およびc)は、一定期間において、など少なくとも部分的に同時に実行されてもよい。さらに、所定の時間後に、または所定の事象の発生の結果としてなど、バイオセンサ中の干渉物質による寄与のその後の検出を達成するために、示されたステップ全体が数回繰り返されてもよい。さらに、本明細書に記載されているか否かにかかわらず、追加の方法ステップも実行されてもよい。
【0028】
概して用いられるように、「バイオセンサ」という用語は、少なくとも1つの医学的分析を実施するように構成された任意の装置を指してもよい。この目的のために、バイオセンサは、少なくとも1つの診断目的を実行するように構成された任意の装置であってもよく、具体的には、少なくとも1つの医学的分析を実行するための少なくとも1つの分析物センサを含む。バイオセンサは、具体的には、医学的分析を行うためなど、1つまたは複数の診断目的を実行するために、互いに相互作用可能な1つまたは複数の構成要素からなるアセンブリを備えてもよい。具体的には、複数の構成要素は、体液中の少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの検出を実行することが可能であってもよい、および/または体液中の少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの検出に寄与してもよい。概して、バイオセンサは、センサアセンブリ、センサシステム、センサキット、またはセンサデバイスのうちの少なくとも1つの一部であってもよい。さらに、バイオセンサは、電子装置などの評価装置に接続可能であってもよい。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態では、バイオセンサは、全体的にまたは部分的に埋め込み可能なバイオセンサであってもよく、特に、皮下組織の体液中、特に間質液中の分析物の検出を行うために特に適合されていてもよい。本明細書で使用されるように、「埋め込み可能バイオセンサ」または「皮下バイオセンサ」という用語は、患者または使用者の身体組織内に全体的にまたは少なくとも部分的に配置されるように適合された任意のバイオセンサを指してもよい。この目的のために、バイオセンサは、挿入可能部分を備えてもよい。本明細書において、「挿入可能部分」という用語は、概して、任意の身体組織内へと挿入可能に構成された要素の一部または構成要素を指してもよい。好ましくは、バイオセンサは、生体適合性の表面、すなわち、少なくとも典型的な使用期間中は、使用者、患者、または身体組織に有害な影響を可能な限り及ぼさない表面を全体的または部分的に含み得る。この目的のために、バイオセンサの挿入可能部分は生体適合性の表面を有してもよい。一例として、バイオセンサ、具体的にはその挿入可能部分は、少なくとも1つのポリマー膜またはゲル膜などの少なくとも1つの生体適合性膜で全体的にまたは部分的に覆われていてもよく、生体適合性膜は、一方では体液に対して、または少なくともそこに含まれる分析物に対して浸透性であってもよく、他方ではセンサ内で1つまたは複数の試験化学物質のようなセンサ物質を保持し、それにより身体組織への移動を防止する。バイオセンサの他の部品または構成要素は、体組織の外部に留まってもよい。
【0030】
本発明において概して使用されるように、「患者」および「使用者」という用語は、それぞれ健康状態にあるか、または1つまたは複数の疾患を患っているかに関わらず、人間または動物を指してもよい。一例として、患者または使用者は、糖尿病を患う人間または動物であってもよい。しかし、追加的または代替的に、本発明は、他の種類の使用者または患者または疾患に適用されてもよい。
【0031】
本明細書でさらに使用されるように、「体液」という用語は概して液体、特に、典型的に使用者または患者の身体または身体組織中に存在し得る、および/または使用者または患者の身体によって生成され得る液体を指してもよい。好ましくは、体液は、血液および間質液からなる群から選択され得る。しかし、追加的または代替的に、唾液、涙液、尿または他の体液などの1つまたは複数の他の種類の体液が使用されてもよい。少なくとも1つの分析物の検出の間、体液は身体または身体組織内に存在し得る。したがって、バイオセンサは、具体的には、身体組織内の少なくとも1つの分析物を検出するように構成されてもよい。
【0032】
本明細書でさらに使用されるように、「分析物」という用語は、体液中に存在する任意の要素、成分または化合物を指してもよく、分析物の有無および/または濃度が、使用者、患者、または医者などの医療スタッフの関心の対象であってもよい。特に、分析物は、少なくとも1つの代謝産物のような、使用者または患者の代謝に関与し得る少なくとも1つの任意の化学物質または化学化合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。一例として、少なくとも1つの分析物は、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸塩からなる群から選択されてもよい。しかし、それに加えて、または代替的に、他の種類の分析物が使用されてもよい、および/または、分析物の任意の組み合わせが判定されてもよい。特に、少なくとも1つの分析物の検出は、具体的には、分析物特異的検出であってもよい。さらなる可能な適用を制限することなく、特に間質液中のグルコースのモニタリングを参照して本発明を以下に記載する。
【0033】
体液は、分析物に加えて、体液中に存在し、それによって、体液中の分析物の検出に影響を及ぼす可能性のある追加の物質を含み得る。体液中のこの種の追加の物質は、通常、「干渉性物質」または「干渉物質」と称される。これに関して、「内在性干渉物質」と「外在性干渉物質」との間の区別がなされてもよい。内在性干渉物質は、概して体内で自然に生み出されると考えられる追加の物質を指すが、外在性干渉物質は、概して体の外部から体液に供給された後の体内にのみ存在する追加の物質に関する。特に、内在性干渉物質は、特に、尿酸またはシステインを含み得るが、外在性干渉物質は、特にアスコルビン酸、アセチルサリチル酸、パラセタモールまたはアセトアミノフェンなどの医薬品および薬物を含み得る。さらに、以下の物質、すなわち、電気活性酸性の、アミンまたはスルフヒドリル基を有する化合物、尿素、過酸化物、アミノ酸、アミノ酸前駆体または分解生成物、一酸化窒素(NO)、NO供与体、NO前駆体、ビリルビン、クレアチニン、ドーパミン、エフェドリン、イブプロフェン、Lドーパ、メチルドーパ、サリチレート、テトラサイクリン、トラザミド、トルブタミド、細胞代謝中および/または創傷治癒中に生成される電気活性種、ならびに身体のpH変化の間に生じ得る電気活性種などの物質のうちの1つまたは複数は、状況に応じて干渉物質の1つとみなすことができる。しかし、ここで言及されていないさらなる種類の物質もまた、干渉物質の1つとして作用し得る。
【0034】
本明細書でさらに使用されるように、「測定する」という用語は、測定の結果を特徴付ける少なくとも1つの信号、特に少なくとも1つの測定信号を生成するプロセスを指す。具体的には、少なくとも1つの信号は、少なくとも1つの電圧信号および/または少なくとも1つの電流信号などの少なくとも1つの電子信号であってもよく、またはそれを含んでもよい。少なくとも1つの信号は、少なくとも1つのアナログ信号であってもよい、もしくは少なくとも1つのアナログ信号を含んでもよく、および/または、少なくとも1つのデジタル信号であってもよい、もしくは少なくとも1つのデジタル信号を含んでもよい。特に電気システムでは、所望の測定信号を記録することを可能とするために、特定の装置に所定の信号を印加する必要があり得る。一例として、電流信号の測定には、デバイスに電圧信号を印加する必要があり、逆もまた同様である。
【0035】
本明細書でさらに使用されるように、「判定する」という用語は、特に、少なくとも1つの測定信号を評価することによって取得され得る複数の代表的な結果のような、少なくとも1つの代表的な結果を生成するプロセスに関し、「評価する」という用語は、少なくとも1つの測定信号を表示し、そこからの少なくとも1つの代表的な結果を導き出す方法を適用することを指してもよい。特に、電極の電流−電圧特性は、第1に、ポテンショスタットによってもたらされるように、特性化される電極と参照電極との間に電圧を印加し、それにより生じる電流信号を、その後または同時に測定することによって、第2に、印加された電圧の対応する値に対する電流信号の記録された値を表示することによって取得されてもよい。
【0036】
本明細書でさらに使用されるように、「検出する」という用語は、分析物または干渉物質などの体液中の少なくとも1つの物質の有無および/または量および/または濃度を確証するプロセスを指す。したがって、検出は、少なくとも1つの物質の有無を導き出すことができる定性的な検出であってもよい、もしくはそれを含んでもよく、ならびに/または少なくとも1つの物質の量および/もしくは濃度を得ることができる定量的な検出であってもよい、もしくはそれを含んでもよい。
【0037】
本明細書でさらに使用されるように、「モニタリング」という用語は、データを連続的に取得し、使用者との相互作用なしでそこから所望の情報を導き出すプロセスを指す。この目的のために、複数の測定信号が生成および評価され、そこから所望の情報が判定される。ここで、複数の測定信号は、固定または可変の時間間隔内に、もしくは代替的または追加的に少なくとも1つの所定の事象の発生時に記録されてもよい。特に、本発明によるバイオセンサは、特に、糖尿病状態を管理、監視、および制御するなどのため、1つまたは複数の分析物、特にグルコースの連続的なモニタリングに適合されてもよい。
【0038】
本発明によるバイオセンサは、電気化学センサである。本明細書で使用されるように、「電気化学センサ」という用語は、体液に含まれる少なくとも1つの物質を検出するために、少なくとも1つの電気化学測定、特に複数または一連の電気化学測定を行うように適合されるセンサを指す。特に、「電気化学測定」という用語は、電気化学検出反応のような、物質の電気化学的に検出可能な特性の検出を指す。したがって、たとえば、1つまたは複数の電極電位を印加し比較することによって、電気化学検出反応が検出されてもよい。具体的には、電気化学センサは、少なくとも1つの電流信号および/または少なくとも1つの電圧信号のような、電気化学検出反応の有無および/または程度を直接的または間接的に示す少なくとも1つの電気センサ信号を生成するように適合される。測定は、定性的および/または定量的測定であってもよい。さらに、他の実施形態も実現可能である。
【0039】
この目的のために、本明細書で使用される電気化学センサは、電気化学セルの形態で配置され、したがって、少なくとも1対の電極を使用する。概して使用されるように、「電極」という用語は、直接的、または少なくとも1つの半浸透性の膜もしくは層を介して、のいずれかで体液と接触するように適合される試験要素の実体を指す。本発明に関して、電極は膜によって被覆されている。各電極は、電極の少なくとも1つの表面にて電気化学反応が起こるように具現化されてもよい。特に、電極は、酸化プロセスおよび/または還元プロセスが電極の選択された表面で行われるように具現化されてもよい。概して、「酸化プロセス」という用語は、第1の化学的または生化学的反応を指し、その反応中に原子、イオンまたは分子などの第1の物質から電子が放出され、それにより酸化される。さらなる物質が放出された電子を受け取る、さらなる化学的または生化学的反応は、概して、「還元的プロセス」という用語で呼称される。まとめて、第1の反応およびさらなる反応を「酸化還元反応」と呼称されてもよい。その結果、概して電荷の移動に関係する電流がこれにより生成される。さらに、酸化還元反応の詳細な推移は、電位の印加により影響を受けてもよい。
【0040】
本発明によれば、第1電極は酵素をさらに含むか、あるいは酵素層によって被覆されており、酵素または酵素層はこの場合は試験化学物質として作用し、同時に、第2電極および第3電極は試験化学物質がないように維持される。概して、「試験化学物質」という用語は、少なくとも1つの分析物の存在下で少なくとも1つの検出可能な特性を変化させるように適合される任意の材料または複数の材料からなる組成物を指し、ここでは検出可能な特性は、上記の電気化学的に検出可能な特性から選択される。具体的には、少なくとも1つの試験化学物質は、高選択性の試験化学物質であってもよく、試験要素に適用された体液の試料中に分析物が存在する場合にのみその特性は変化し、分析物が存在しない場合、変化は生じない。より好ましくは、少なくとも1つの特性の程度または変化は、分析物の定量的検出を可能にするために、体液中の分析物の濃度に依存してもよい。
【0041】
本明細書中で使用されるように、試験化学物質は、グルコースオキシダーゼ(GOD)および/またはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)などの1つまたは複数の酵素を含んでもよく、好ましくはそれ自体および/または検出物質の他の成分と組み合わせで、検出すべき少なくとも1つの分析物とともに酸化プロセスまたは還元プロセスを行うように適合されている酵素を含んでもよい。加えて、またはこれに代えて、試験化学物質は、1つまたは複数の補助酵素などの1つまたは複数の補助成分を含んでもよい、および/または上記の1つまたは複数の酸化還元メディエータを含んでもよい。さらに、試験化学物質は、1つまたは複数の色素を含んでもよく、その色素は、好ましくは1つまたは複数の酵素と相互作用し、検出すべき少なくとも1つの分析物の存在下でその色が変化してもよい。
【0042】
既に上述したように、バイオセンサ内で起こり得る酸化還元反応の推移は、電位の印加によって影響され得る。したがって、酸化還元反応の詳細な推移は、ここでは、1つまたは複数の電極電位、特に第1電極と第2電極との間の電位差を比較することによって検出されてもよい。この目的のために、バイオセンサの第1電極、第2電極および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続される。本明細書で使用されるように、「ポテンショスタット」という用語は、電気化学セル内の第1電極と第2電極との間の電位差を調節および/または測定するように適合される電子装置を指す。この目的のために、ポテンショスタットは、第3電極を介して電気化学セルに電流を注入することを可能とするために実装されており、この理由から補助電極または対抗電極とも呼称される。ポテンショスタットのこの設定により、電気化学的セル内の第1電極と第2電極との間の電位差を調節すること、そして代替的に、または追加的に第1電極と第3電極との間の電流を測定することが可能になる。さらなる利点の中でも、ポテンショスタットは、事実上電流のない方法で電圧を測定することを可能にし、これは、装置のかなり高い入力インピーダンスとして説明することができ、GΩレンジの値を達成してもよい。さらに、ポテンショスタットは電流を測定するために等しく使用されてもよく、それにより、装置によって実行される有効電流調整による電位降下が生じない。
【0043】
結果として、ポテンショスタットは、ここでは、ステップb)に従って、第3電極の電流−電圧特性を測定するために利用され、この電流−電圧特性は、好ましくは、第1に、第1電極と第2電極との間に電圧を印加し、好ましくは同時に、それにより第1電極と第3電極との間に生じる電流を測定することによって、第2に、印加された電圧の対応する値に対する電流信号の記録された値を表示することによって取得される。
【0044】
代替的または追加的に、ガルバノスタット法を適用することによって、第3電極の電流−電圧特性が測定されてもよい。この目的のためにガルバノスタットが使用されてもよく、概して、「ガルバノスタット」という用語は、特に、非常に高い内部抵抗の影響により電気化学セルを流れる電流を一定に維持することが可能である制御および測定装置を指す。したがって、第1電極と第3電極との間にガルバノスタットによって供給される所定の電流を印加することによって、そして、好ましくは同時に、第1電極と第2電極との間の電位差を測定することによって、同様に第3電極の電流−電圧特性が取得されてもよい。
【0045】
さらに、本発明による方法の実行中に、電気化学セルに印加される電位差は、所定の方法で変更される。その結果、ここでは「通常動作モード」および「干渉物質検出モード」と呼ばれる2つの動作モードが区別されてもよい。したがって、通常動作モードでは、第1電極と第2電極との間に電位差が印加される。ここでは、電気化学セル内の第1電極と第2電極との間の電位差は、酸化プロセスが第1電極の表面で起こる一方で、還元プロセスが第3電極の表面で起こるように調節される。本明細書では、この種の動作モードは、バイオセンサの主要タスクである、体液中に存在する少なくとも1つの分析物の有無および/または量および/または濃度を検出することに関連するため、「通常動作モード」という用語が用いられる。
【0046】
しかし、これとは対照的に、干渉物質検出モードは、バイオセンサ内で干渉物質による寄与を検出するために使用される。したがって、本発明による方法は、ステップa)に従って通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるプロセスを含む。本明細書で使用するように、「切り替える」という用語は、第1の種類の動作からさらなる種類の動作に移行させ、それによって第1の種類の動作に戻る機会を提供するプロセスを指す。後により詳細に説明するように、ある種の動作から別の種類の動作への移行は、瞬間的、特に限られた期間の後に、または、連続的、特に限られた期間中に実行されてもよい。「限られた期間」という用語は、概して使用されるように、開始点と終了点との間で持続してもよい一時的な持続時間を指してもよい。本明細書においては、開始点とは、さらなる種類の動作が開始する時点を指し、一方で、終了点とは、さらなる種類の動作が終了する別の時点に関連してもよい。一例として、体液内の分析物を検出するために、バイオセンサは通常動作モードで動作させられてもよい。一定の時間間隔または可変の時間間隔によって促されるか、あるいは代替的にまたは追加的に、少なくとも1つの所定の事象の発生によって促される場合、バイオセンサは、干渉物質による寄与を検出するための干渉物質検出モードで動作され得る。しかし、限られた期間の後、バイオセンサは、その主要タスクである体液内の分析物の検出を再開するために通常動作モードに戻る。
【0047】
干渉物質による寄与を検出する目的で、第1電極と第2電極との間の電位差は、ステップa)の間、限られた期間において変更される。概して使用されるように、「変更する」という用語は、第1の値から、一定のさらなる値またはさらなる値の範囲のような、少なくとも1つのさらなる値へ特性を修正することを指す。本発明によれば、干渉物質検出モードでは、第1電極と第2電極との間の電位差が、酸化プロセスがこの場合は第3電極の表面で行われるように修正される。さらに、還元プロセスは、この場合は第1電極の表面で行われてもよいが、還元プロセスの正確な位置は、電極配置の詳細、それぞれの対応する電極の容量、および第1電極と第2電極との間の電位差を変更する方法に依存し得る。特定の実施形態とは無関係に、酸化プロセスおよび還元プロセスは、いずれの場合も、特に第1電極を通じて負の電流を観察することによって、電極配置内の電気回路を閉じ得るように進行してもよい。以下でより詳細に説明するように、少なくとも1つの電位ステップの印加は、負の充電電流をもたらしてもよい。その結果、負電位ステップは、第1電極での充電電流の発生をもたらし、一方で、還元プロセスは第3電極で既に起こってもよい。したがって、ここで第1電極と第2電極との間の電位は、通常動作モードに対して逆の極性を示し得るが、電位は能動的に以前の極性に戻るように設定されてもよい、または、代替的もしくは追加的に、限られた期間内またはその直後に以前の極性を回復するために緩和プロセスを受けてもよい。
【0048】
この種の配置の結果として、バイオセンサは、干渉物質検出モードにおいて、分析物に関連する変数を測定することができないが、むしろ体液中の干渉物質の有無および/または量および/または濃度に関連する変数を測定するように適合され得る。しかし、上述したように、バイオセンサは、限られた期間の後、リセットおよび/または緩和プロセスなどによって通常動作モードに戻り、第1電極と第2電極との間の電位は、バイオセンサが分析物に関連する変数を再び測定することが可能であるように、通常の極性を回復することができる。
【0049】
概して、ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、第1電極と第2電極との間の電位差の時間に応じて変わる変更によって実施されてもよい。
【0050】
特に好ましい実施形態では、通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、少なくとも1つの電位ステップを第1電極と第2電極との間の電位差に印加することによって実施されてもよい。この目的のために、好ましくは、ポテンショスタットが使用されてもよい。しかし、他の手段も実行可能である。本明細書で使用されるように、「電位ステップ」という用語は、電気パルスの形態で提供されてもよい追加の電位による、第1電極の瞬間的な衝撃を指してもよい。それにより、この手順の適用によって流すことのできる電流範囲を画定するために、電位ステップの高さが選択されてもよい。本明細書では、追加の電位は、電位ステップの印加後、少なくとも能動的に以前の極性に戻るように設定される前に、および/または緩和プロセスの完了の前に、第1電極の極性が第2電極に対して逆の符号を示すことを達成する符号および強度を示してもよい。
【0051】
既に上述したように、負の電位ステップにより、第1電極に負の充電電流が生じ、それは、充電プロセスの終了後、バイオセンサの通常のプロセスに従って正の電流に戻ってもよい。結果として、第1電極における観測可能な電流は、負の電流範囲を、分析物の濃度に応じて、正の電流範囲に戻るまで掃引してもよい。同様に、第3電極における観測可能な電流は、分析物の濃度に応じて、正の電流範囲を負の電流範囲に戻るまで掃引してもよい。したがって、対抗電極における電流が、分析物および/または干渉物質によって提供され得る酸化可能な物質の有無および濃度に応じて生成される。このようにして、好ましくは、第3電極の電流−電圧特性が達成されてもよい。さらに、より詳細に後述するゼロ電流遷移が取得され得る。
【0052】
この処理の結果として、バイオセンサは、体液中の干渉物質に関連する変数を検出すること、特に、ステップb)に従って第3電極の電流−電圧特性を測定することが可能であってもよい。電位ステップの適用に続いて、これによって不平衡になった第1電極は、特に上述の緩和プロセスを通して、限られた期間内に通常動作モードに戻ってもよい。時定数RCは、この特定の効果に起因し得るものであり、膜の厚さのような、第1電極の特徴に依存してもよい。限られた期間中、第1電極と第3電極との間の電流および第3電極の電圧が測定されてもよく、限られた期間は、たとえば0.5秒から20秒、好ましくは1秒から10秒の時間間隔であってもよいが、関与する電極の容量に依存し得る測定期間を含んでもよい。
【0053】
代替の実施形態では、通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、限られた期間中の電位差の段階的または連続的な変更によって実施されてもよい。また、好ましくは、この目的のためにポテンショスタットが使用されてもよい。しかし、他の手段も実行可能である。本明細書で使用されるように、「段階的な変更」という用語は、特に、所定の振幅の増加を複数設定することによる電位の変化を指してもよく、そのそれぞれは、限られた持続時間、たとえば限られた一定の持続時間に亘り一定であってもよい。「連続的な変更」という用語は、特に、振幅が所定の電位範囲内で変化し得る、連続的に変化する電位を指してもよい。好ましくは、電位差は電位走査を行ってもよく、走査は、通常動作モードにおける電位差の値で開始点にて開始してもよく、限られた期間の後に、変更された値で終了点にて終了してもよい。一例として、電位差は、開始点と終了点との間における連続的な修正に伴う上昇に沿って変化してもよい。しかし、電位差の時間に応じて変わる他の種類の時間的推移も可能である。電位走査中の電位の変化の間に、第1電極と第3電極との間の電流と、第3電極の電圧の両方が、限られた期間中に測定されてもよく、限られた期間は、1分〜30分、好ましくは5分〜15分の時間間隔を含んでもよい。
【0054】
結果として、電位走査は、特に、上記の電位ステップの印加に続く測定期間に適用され得る好ましい時間間隔と比較して、かなりの時間を必要としてもよい。この種の性能は、電位走査が、好ましくは実際の測定値が記録される前に、バイオセンサの定常状態が達成されるような方法で実行されてもよいという、典型的なアプローチによって説明することができる。さらに、電位走査の適用中に、酸化還元反応に関する平衡を可能な限り維持し得ることを保証することは有利であってもよい。
【0055】
さらに、ステップc)に従って第3電極の電流−電圧特性を評価することにより、バイオセンサ中の干渉物質による寄与が判定される。本明細書で使用されるように、「寄与」という用語は、体液内の干渉物質の存在によって生じる測定可能な影響を指し、測定可能な影響は、好ましくは、第3電極の電流−電圧特性において検出可能であり得る。特に、分析物に関連する酸化還元活性物質と同様の方法で酸化され得る追加の酸化還元活性物質である、またはそれを含む干渉物質は、追加の電流として検出可能なさらなる電子を生成し得る。追加の電流は、分析物が存在しない場合でも取得され得るため、追加の電流は、「バックグラウンド電流」または「ゼロ電流」とも呼称されてもよい。既に上述したように、第1の種類の干渉物質は、追加の酸化還元活性物質を含んでもよく、追加の酸化還元活性物質は、酸化還元メディエータと同様に作用してもよく、したがって第1電極で直接酸化され、それによって追加の電流部分を提供し得る。これに代えてまたは加えて、さらなる種類の干渉物質は、体液中の中間生成物の濃度が減少するように、グルコース反応中に生成される、過酸化水素(H22)などの中間生成物と反応し得る。その結果、ポテンショスタットの感度が低下し得る。
【0056】
さらに好ましい実施形態では、第3電極の電流−電圧特性は、バイオセンサ中の干渉物質の種類および/または量を検出するために、以下で説明する特定の方法で、ステップc)の間に評価されてもよい。
【0057】
最初に、好ましくは、この目的のために、第3電極の電流−電圧特性において生じ得るゼロ電流遷移の位置が判定されてもよい。本明細書で使用されるように、「ゼロ電流遷移」という用語は、電流−電圧特性における少なくとも1つの観察可能な電圧値を指し、この電圧値において、電流は消滅する、またはより具体的には、電流が負の電流値から正の電流値に変化するように、またはその逆に、正の電流値から負の電流値に変化するように、電圧は電流‐電圧特性におけるゼロ電流軸を通る遷移が起こる。特に、ゼロ電流遷移の位置に影響を及ぼすことが可能である特定の種類の干渉物質の有無がこのように判定されてもよい。
【0058】
一例として、水相中において酸化プロセスおよび還元プロセスが起こる場合、たとえば、分析物を含まない典型的な体液の場合、第3電極が金である場合、確立されたゼロ電流遷移が約550mVの電圧で生じてもよく、これは、一般的に、金の電極における水相内の水分の酸化に起因する。しかし、ゼロ電流遷移の他の値は、異なる種類の第3電極の他の電圧で観測可能であってもよい。逆に、分析物であるグルコースが水相中に存在する場合、酵素グルコースオキシダーゼ(GOD)の反応から生じ得る過酸化水素(H22)が、第1電極では約275mVの電圧で酸化され得るが、異なる分析物は異なる電圧値で酸化されるということを観察することによって、グルコースの存在が検出可能である。なお、この種の反応は、バイオセンサの電極配置内において、酵素を含まない第3電極は第1電極から空間的に分離されているため、第3電極で起こらない。さらに、グルコースに加えて特定の干渉物質が水相中に存在する場合、干渉物質が、分析物、水および電極材料が酸化され得る電圧値より低い電圧で第1電極にて酸化されることを観察することによって、干渉物質の存在は検出可能であってもよい。結果として、第3電極の電流−電圧特性に生じるゼロ電流遷移の位置は、好ましくは、分析物が第1電極にて酸化される電圧より下に位置してもよい。以下の図にさらに示されるように、電圧値のデフォルト位置に対する、電流−電圧特性におけるゼロ電流遷移の位置の変位から導き出される値は、電気化学セル内に存在する干渉物質の種類に対する基準として用いられてもよい。
【0059】
また、第3電極の電流−電圧特性は、さらに、少なくとも1つの電流プラトーを示してもよい。本明細書で使用される「電流プラトー」という用語は、電流−電圧特性内における電流の推移の特定の挙動を指してもよく、それによって、電流は、限定された電圧範囲に亘って一定の値またはレベルを達成し得る。「一定値」という用語は、下限閾値および上限閾値のような限定された電流範囲に限定され得る電流の変動に関連してもよい。このように、代替的にまたは追加的に、第3電極の電流−電圧特性において生じる少なくとも1つの電流プラトーの電流値がさらに判定されてもよい。いくつかの試料において観察され得るように、第3電極の電流−電圧特性において生じ得る典型的な電流プラトーの電流値は、0.1nA〜20nA、特に0.5nA〜10nAの値を取る。その結果、電気化学セル内に存在し得る干渉物質の量が、少なくとも1つの電流プラトーにおける電流値の評価から判定され得る。
【0060】
また、少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサに寄与することが可能である場合、2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの遷移が、さらに、第3電極の電流−電圧特性において、少なくとも1つの特定の電圧で生じてもよい。したがって、少なくとも1つのさらなる干渉物質の種類は、2つの特定の異なる電流プラトーの間で少なくとも1つの電圧遷移が観察可能である少なくとも1つの特定電圧における少なくとも1つの位置を評価することによって判定されてもよい。
【0061】
上述したように、本明細書で使用されるバイオセンサは、全体的に埋め込み可能なバイオセンサ、またはその代わりに部分的に埋め込み可能なバイオセンサであってもよい。特に、バイオセンサは、体液中の分析物の連続的なモニタリングのために適合されてもよく、好ましくは、皮下組織中の、特に血液などの間質液中の分析物の連続測定のために適合されてもよい。しかし、他の種類のバイオセンサおよびバイオセンサの適用もまた実行可能であってもよい。
【0062】
さらに、上述したように、分析物は、好ましくはグルコースを含んでもよく、酵素はグルコースオキシダーゼ(GOD)であってもよい。代替的に、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)のような他の種類の酵素が使用されてもよい。ここで、作用電極として機能するバイオセンサの第1電極は、酸化プロセスを実行するために適合されてもよい。同様に、対抗電極として機能する第3電極は、還元プロセスを実行するように適合されてもよい。また、第2電極は参照電極として機能する。その結果、体液中のグルコース濃度などのグルコースレベルは、作用電極における酸化プロセスによって判定され得る。結果として、ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、追加の負電位を、特に、ポテンショスタットを使用することによって、作用電極に印加することを含んでもよい。これに関しては、作用電極に印加される追加の負電位は、単一の大きな負の値を含む負電位ステップから、または、段階的もしくは連続的に交互に繰り返す形で負電位の値が増える電位走査から選択され得ることが強調されてもよい。
【0063】
また、本発明により寄与が検出され得る干渉物質は、内在性干渉物質および外在性干渉物質のうちの1つであってもよく、干渉物質は、分析物レベルに影響を及ぼすことが可能であってもよい。以下において図面により詳細に示すように、本方法は、特に、内在性干渉物質である尿酸による寄与を検出するために適用可能である。さらなる可能な例は、上に提供された干渉物質のリストに見出すことができる。
【0064】
これに関して、ある種の干渉物質は、体液中に存在するが、それらによる寄与が第3電極の電流−電圧特性に影響を及ぼし得るような形で寄与をもたらさないため、本方法によって検出することができない可能性があることが強調されてもよい。一例として、内在性物質であるシステインは、調査した体液中に存在する濃度において、潜在的な干渉物質ではないことが判明した。詳細については、以下で参照される図がここでも参照される。
【0065】
また、本発明の方法は、特に、外在性干渉物質の寄与の検出に適用可能であってもよく、外在性干渉物質は、具体的には、医薬化合物、たとえば薬剤および/または薬品、またはその代謝産物であってもよい。特に好ましい例として、医薬物質であるアスコルビン酸および/またはアセチルサリチル酸および/またはパラセタモールによる寄与は、本方法によって検出されてもよい。さらなる可能な例は、上で提供された干渉物質のリストに見出すことができる。
【0066】
さらに、本方法は、1つまたは複数の医薬物質の有無の検出だけでなく、その量および/または濃度の判定にも適用可能であるため、本方法は、また、体液内の分析物レベル、特に血糖値に影響を及ぼし得る、選択された医薬物質の量および/または濃度の検出および/または監視に適用可能であってもよい。したがって、このさらなる機会は、患者の糖尿病状態の管理、監視、および制御におけるより完全な血液分析のために利用されてもよい。
【0067】
本発明のさらなる態様では、バイオセンサを較正するための方法が開示される。この方法は、上記および/または下記のようなバイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法を実行するステップを含む。これに関して、この方法は、少なくとも1つの較正測定として、少なくとも1つの干渉物質の種類や濃度など、少なくとも1つの所定の項目について、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法であり、好ましくはそれに引き続いて、特にさらなる参照のために、第3電極の電流−電圧特性またはそれから得られる少なくとも1つの特性値を、対応する干渉物質による寄与とともに記憶する方法の実行を含む。特に好ましい実施形態では、第3電極の電流−電圧特性におけるゼロ電流の電圧値が、少なくとも1つの特性値として判定される。代替的または追加的に、第3電極の電流−電圧特性における電流プラトーの電流値は、少なくとも1つの特性値として判定される。本明細書においては、電流プラトーについて判定される1つまたは複数の値、特に、第1電極の電位に相当する電位における電流プラトーの合計について判定される値が、バイオセンサの較正のためのバックグラウンドでの電流補正に使用されるためのゼロ電流を評価するために好適に使用されてもよい。
【0068】
少なくとも1つの較正測定において、少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性またはその少なくとも1つの特性値との間の一般的関係が取得されてもよい。一般的関係は、たとえば、1つまたは複数の較正曲線の形で報告されてもよい。これに関連して、一般的関係は、干渉物質の項目の複数の異なる値に対する規則を意味すると理解され、その規則は、干渉物質の項目の値が電流−電圧特性にどのように影響し得るかを記述する。この規則は、干渉物質濃度の値の連続した範囲で、または干渉物質濃度の値、たとえば互いに離れた干渉物濃度の値の量の不連続の範囲で確認できる。したがって、一般的関係は、たとえば、複数の干渉物質濃度値を、それぞれの場合に、電流−電圧特性への対応する影響に点ごとに割り当てることを含んでもよい。代替的または追加的に、規則は、較正曲線または較正関数とも呼ばれ、干渉物質の項目による電流−電圧特性への影響を分析的に記述する、分析関数の形の法則を含むこともできる。
【0069】
較正測定は、たとえば、干渉物質の項目が分かっている複数の試験試料または較正試料における少なくとも電流−電圧特性をそれぞれの場合において検出することによって行われ得る。たとえば、特定の濃度の既知の干渉物質を有する試験試料を調製することが可能である。試験試料に関して、それぞれの場合に、少なくとも1つの電流−電圧特性またはそこから導き出される特性値を確認することが可能である。このようにして、それぞれが干渉物質の項目および関連の特性値を含む一対の値の量を判定することが可能であってもよい。上記一対の値は、それ自体が一般的関係を記述することができ、または上記一般的関係は、たとえば当てはめ(fit)によって一対の値から確認され得る。場合によっては、一般的関係を直線で記述することが可能であってもよく、その傾きと軸の切片は、適切な当てはめを使用して一対の値から判定され得る。上記直線は、較正曲線として使用され得る。より複雑な較正曲線、たとえば一対の値の関係を非常によく記述する指数関数および/または多項式も可能であってもよい。
【0070】
一般的関係、より具体的には較正曲線または較正関数は、具体的には、少なくとも1つのデータ記憶装置、たとえば、揮発性および/または不揮発性のデータ記憶装置に記憶されてもよく、データ記憶装置は、データ処理装置などの形態の少なくとも1つの評価ユニットに接続されてもよい。上記評価ユニットは、本発明による方法の方法ステップを完全にまたは部分的に実行するように構成されてもよい。較正測定は、評価ユニット内で実行することもでき、また評価ユニットから独立して実行することもできる。
【0071】
本発明のさらなる態様では、バイオセンサの動作を検証する方法が開示され、この方法は、上記のようなバイオセンサを較正する方法と比較すると、必要な変更を加えた上で同様である。本明細書においては、バイオセンサの動作を検証する方法は、特に、バイオセンサのフェイルセーフ動作のために利用されてもよい。概して使用されるように、「フェイルセーフ動作」という用語は、特に、連続的なグルコースモニタリングの適用中に、バイオセンサの故障の場合に、それにもかかわらずバイオセンサが少なくとも1つの信頼できる特性値を提供するように応答するバイオセンサの動作モードを指す。代替的または追加的に、バイオセンサの動作を検証する方法は、さらに、何らかの理由で電流測定値がバイオセンサによって提供できないが、依然として連続的グルコースモニタリングに必要とされる場合に、測定値を補うために使用されてもよい。これに関して、少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性、または、上述の、その少なくとも1つの特性値との間の一般的関係が、同様に使用されてもよい。
【0072】
本発明による方法は、先行技術に関して多くの利点を示す。干渉物質の影響を低減するために不十分な技術的解決法を使用する代わりに、体液中に存在する干渉物質がバイオセンサ上に及ぼし得る影響が積極的に検出される。これにより、提案された、バイオセンサ中の電流と電位との間の依存性を観察する方法は、干渉物質の存在および好ましくは量を明確な方法で推定することを可能にし、また、概して、1種類以上の干渉物質の場合に適用可能である。さらに、試薬を含まない電極のような追加の作用電極も、またはバイポテンショスタットおよび1つまたは複数のリレー回路のような補助回路構成要素も必要とされない。したがって、本方法は、標準的なバイオセンサのセンサ電子機器構造内で実施可能であってもよく、特に、既存のバイオセンサシステムに適用可能である。
【0073】
要約すると、以下の実施形態は、本発明の可能な実施形態である。しかし、他の実施形態も実施可能である。
【0074】
実施形態1:バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法であって、バイオセンサは、第1電極、第2電極、および第3電極を有し、第1電極および第2電極は、膜で被覆されており、第1電極は酵素をさらに含むか、または第1電極は酵素層で被覆されており、第1電極、第2電極、および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続されており、通常動作モードにおいて、第1電極が酸化プロセスを可能にし、第3電極が還元プロセスを可能にするように、ポテンショスタットを介して第1電極と第2電極との間に電位差が印加され、
方法は、
a)通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるステップであって、干渉物質検出モードにおいて、第1電極と第2電極との間の電位差は、第3電極が酸化プロセスを可能にするように、限られた期間において変更される、ステップと、
b)第3電極の電流−電圧特性を測定するステップと、
c)第3電極の電流−電圧特性を評価することによって、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を判定するステップと、
を含む、
方法。
【0075】
実施形態2:ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、ポテンショスタットを使用することによる、限られた期間における、電位差の時間に応じて変わる変更を含む、実施形態1の方法。
【0076】
実施形態3:電位差の連続的な変更は、所定の電位範囲内で電位差を段階的または連続的に変化させることを含む、実施形態2の方法。
【0077】
実施形態4:電位差を連続的に変化させることは、電位差を、所定の電位範囲の開始点と終了点との間における段階的または連続的な変更に伴う所定の電位の上昇に沿って変化させることを含む、実施形態3の方法。
【0078】
実施形態5:ステップb)による第3電極の電流−電圧特性の測定は、限られた期間において、第1電極と第3電極との間の電流を測定すること、および第3電極の電圧を測定することを含む、実施形態2〜4のいずれか1つの方法。
【0079】
実施形態6:限られた期間が、1分〜30分続く、実施形態5の方法。
【0080】
実施形態7:限られた期間が、5分〜15分続く、実施形態6の方法。
【0081】
実施形態8:ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、少なくとも1つの電位ステップを、ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差に印加することを含む、実施形態1〜7のいずれか1つの方法。
【0082】
実施形態9:ステップb)による第3電極の電流−電圧特性の測定は、電位ステップの印加に続く測定期間において、第1電極と第3電極との間の電流を測定すること、および第3電極の電圧を測定することを含む、実施形態8の方法。
【0083】
実施形態10:電位ステップの印加後の測定期間は、0.5秒〜20秒続く、実施形態9の方法。
【0084】
実施形態11:電位ステップの印加後の測定期間は、1秒〜10秒続く、実施形態10の方法。
【0085】
実施形態12:第3電極の電流−電圧特性に生じるゼロ電流遷移の位置は、第1電極の電位にて判定される、請求項1〜11のいずれか1つの実施形態の方法。
【0086】
実施形態13:第1電極の電位におけるゼロ電流遷移の位置を評価することによって、干渉物質の種類が判定される、実施形態11の方法。
【0087】
実施形態14:分析物は、デフォルト位置において、ある種の干渉物質が存在しない場合にゼロ電流遷移を示すことが知られており、デフォルト位置の電圧値は、ある種の干渉物質のゼロ電流遷移の位置の電圧値と異なる、実施形態13の方法。
【0088】
実施形態15:デフォルト位置に対する電流−電圧特性におけるゼロ電流遷移の位置の変位から導き出される値が、ある種の干渉物質の基準として使用される、実施形態14の方法。
【0089】
実施形態16:第3電極の電流−電圧特性に生じる少なくとも1つの電流プラトーの電流値が、第1電極の電位でさらに判定される、実施形態1〜15のいずれか1つの方法。
【0090】
実施形態17:干渉物質の量は、第1電極の電位において電流プラトーにおける電流値を評価することによって判定される、実施形態16の方法。
【0091】
実施形態18:少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサ中の寄与をもたらす場合、第3電極の電流−電圧特性に生じる2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つの位置は、第1電極の電位で判定される、実施形態16または17の方法。
【0092】
実施形態19:少なくとも1つのさらなる干渉物質の種類は、第1電極の電位の2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つの位置を評価することによって、および/または第1電極の電位における第1電極の電位に相当する電位での電流プラトーの合計について判定された値を評価することによって判定される、実施形態18の方法。
【0093】
実施形態20:バイオセンサは、全体的に埋め込み可能なバイオセンサまたは部分的に埋め込み可能なバイオセンサである、実施形態1〜19のいずれか1つの方法。
【0094】
実施形態21:バイオセンサは、分析物を連続的に監視するためのバイオセンサである、実施形態20の方法。
【0095】
実施形態22:バイオセンサは、皮下組織中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態21の方法。
【0096】
実施形態23:バイオセンサは、体液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態22の方法。
【0097】
実施形態24:バイオセンサは、間質液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態23の方法。
【0098】
実施形態25:バイオセンサは、血液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態24の方法。
【0099】
実施形態26:分析物はグルコースを含む、実施形態21〜25のいずれか1つの方法。
【0100】
実施形態27:酵素はグルコースオキシダーゼの1つである、実施形態26の方法。
【0101】
実施形態28:干渉物質は、内在性干渉物質および外在性干渉物質のうちの1つであり、干渉物質は、分析物のレベルに影響を及ぼすことが可能である、実施形態19〜27のいずれか1つの方法。
【0102】
実施形態29:内在性干渉物質は、尿酸である、実施形態28の方法。
【0103】
実施形態30:外在性干渉物質は、医薬化合物またはその代謝産物である、実施形態28または29の方法。
【0104】
実施形態31:外在性干渉物質が、アスコルビン酸、アセチルサリチル酸、パラセタモールまたはアセトアミノフェンのうちの1つである、実施形態30の方法。
【0105】
実施形態32:バイオセンサの動作を検証する、および/またはバイオセンサを較正する方法であって、少なくとも1つの干渉物質の少なくとも1つの所定の項目に対し、実施形態1〜31のいずれか1つの方法を実行するステップ、および第3電極の少なくとも1つの電流−電圧特性、または電流−電圧特性から得られる少なくとも1つの特性値を、対応する干渉物質の項目と共に記憶するステップを含む方法。
【0106】
実施形態33:ゼロ電流の電圧値と、少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサにおいて寄与をもたらす場合における、第3電極の電流−電圧特性における2つの異なる電流プラトー間の少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つのさらなる電圧値とは、少なくとも1つの特性値として判定される、実施形態32の方法。
【0107】
実施形態34:第3電極の電流−電圧特性における電流プラトーの電流値、および/または第1電極の電位に相当する電位における電流プラトーの合計について判定される値は、少なくとも1つの特性値としてさらに判定される、実施形態32または33の方法。
【0108】
実施形態35:少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性またはその少なくとも1つの特性値との間の関係が、少なくとも1つの較正関数として判定され、記憶される、実施形態32〜34のいずれか1つの方法。
【0109】
実施形態36:少なくとも1つの較正関数は、少なくとも1つの評価ユニットに接続されている少なくとも1つのデータ記憶装置に記憶され、評価ユニットは、実施形態1〜35のいずれか1つの方法ステップを完全にまたは部分的に実行するように構成される、実施形態35の方法の使用。
【0110】
本発明のさらなる詳細が、以下の好ましい実施形態の開示から得られてもよい。実施形態の特徴は、独立した方法で、または任意の組み合わせで実現されてもよい。本発明は、実施形態に限定されない。実施形態は、図面に概略的に示されている。図中の同一の参照符号は、同一の要素または機能的に同一の要素またはそれらの機能に関連して互いに対応する要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1A】第1電極と第3電極の両方の電流−電圧特性を示しており、それぞれは干渉物質のない比較試料で測定されており、ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差の段階的変更が提供されている。
図1B】ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差の段階的変更が提供されている状態を示している。
図1C】ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差の段階的変更が提供されている状態を示している。
図1D】ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差の段階的変更が提供されている状態を示している。
図2】第1電極と第3電極の両方の電流−電圧特性を示しており、それぞれは干渉物質のない比較試料で、および干渉物質である尿酸を含む試料で測定されており、ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差の連続的変更が提供されている。
図3】第1電極と第3電極の両方の電流−電圧特性を示しており、それぞれは干渉物質である尿酸を含む試料で測定されており、ポテンショスタットを用いて電位ステップが電位差に印加されている。
図4A】第1電極における電流の時間依存推移を表示する図において、干渉物質を含まない比較試料に印加される一連の負電位ステップおよび正電位ステップを示している。
図4B】第3電極における電圧の時間依存推移を表示する図において、干渉物質を含まない比較試料に印加される一連の負電位ステップおよび正電位ステップを示している。
図5】干渉物質を含まない試料で測定された第3電極の電流−電圧特性を示しており、ポテンショスタットを使用することによってその後の電位ステップが印加されている。
図6】内在性干渉物質であるシステインを含む試料で測定された第3電極の電流−電圧特性を示しており、ポテンショスタットを使用することによってその後の電位ステップが印加されている。
図7】外在性干渉物質であるアスコルビン酸を含む試料で測定された第3電極の電流−電圧特性を示しており、ポテンショスタットを使用することによって電位ステップが印加されている。
図8】第1の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含む試料で測定された第3電極の電流−電圧特性を示しており、ポテンショスタットを使用することによって電位ステップが印加されている。
図9】第2の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含むさらなる試料で測定された第3電極の電流−電圧特性を示しており、ポテンショスタットを使用することによって電位ステップが印加されている。
図10】干渉物質を含まないか、または異なる種類の干渉物質を含むかのいずれかである様々な試料に引き続いて曝された第1電極における電流の時間依存推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1Aは、バイオセンサ中の第1電極112および第3電極114の両方の電流−電圧特性110を示し、バイオセンサは、第1電極112、第2電極および第3電極114が配置される電気化学セルを含む。ここで、電流−電圧特性110のそれぞれは、比較試料116、すなわちグルコースなどの分析物も干渉物質成分も含まない人工試料で測定された。ここでは、電流−電圧特性110は、干渉物質検出モードの適用によって得られ、干渉物質検出モードでは、通常動作モードとは対照的に、第1電極112が還元プロセスを可能にし、第3電極114が酸化プロセスを可能にしてもよい。干渉物質検出モードを達成するために、ポテンショスタットを用いて電位走査118が適用された。これは、第1電極112と第2電極との間の電位差が、限られた期間において段階的に変更されたことを意味する。
【0113】
図1Aから導き出すことができるように、第3電極114の電流−電圧特性110は、ポテンショスタットによって提供される参照電極REに対して約550mVのデフォルト電圧に対応する位置120で観察され得るゼロ電流遷移を示す。位置120でのゼロ電流遷移のこのような観察は、バイオセンサの電気化学セル内の酸化プロセスおよび還元プロセスが水相内で行われ得る典型的な場合に関連してもよく、確立されたゼロ電流遷移は、概して、水相中の水分の酸化に起因するデフォルト電圧で起こる。このように、図1に示す第3電極114の電流−電圧特性110は、比較試料116に干渉物質が、少なくともデフォルト電圧未満で起こる酸化ステップを示す干渉物質が存在しないことを実証している。
【0114】
図1B図1Dは、図1Aによる提示を達成するためにコンパイルされた生データを示している。ここでは、電位走査118の適用を示すそれぞれのデータを以下の図に示す。
図1Bは、時間(s)に対しての、第1電極(作用電極、WE)112と第2電極(参照電極)との間の電位差を電圧(V)で示している。
図1Cは、時間(s)に対しての、第3電極(対抗電極)114を流れる電流IをnAで示している。
図1Dは、時間(s)に対しての、第1電極(作用電極、WE)112と第3電極(対抗電極)114との間の電位差を電圧(V)で示す。
【0115】
図2は、第1電極112と第3電極114の両方の電流−電圧特性110を示しており、それぞれは、干渉物質を含まない比較試料116と、内在性干渉物質である尿酸を含む試料122で測定されている。図2から導き出すことができるように、第3電極114の電流−電圧特性110は、ゼロ電流遷移を示し、これは、図1の比較試料116の同じ位置120で、および内在性干渉物質である尿酸を含むためゼロ電流遷移の変位126をもたらす試料122の変位位置124で観測され得る。ゼロ電流遷移の位置120と位置124の間における変位126は、両方の試料116,122に含まれる水分と比較して酸化されやすい試料122中の内在性干渉物質である尿酸の存在によって説明されてもよい。ここでも、ポテンショスタットが、干渉物質検出モード中に電位走査118を実行するために使用された。
【0116】
図3は、第1電極112と第3電極114の両方の電流−電圧特性110を示しており、ここでもそれぞれは、内在性干渉物質である尿酸を含む試料122で測定されている。図2とは対照的に、ここでは、干渉物質検出モードを達成するために、ポテンショスタットを使用することによって、電位ステップ128が第1電極112と第2電極との間の電位差に印加された。ここでも、第3電極114の電流−電圧特性110は、内在性干渉物質である尿酸を含む試料122の変位位置124におけるゼロ電流遷移を示す。
【0117】
したがって、図3の電位ステップ128を印加することによって干渉物質検出モードを達成することは、概して、図2の電位走査118を適用することと同じ結果をもたらす。しかし、電位ステップ128の印加は、実際の測定値が記録される前に毎回バイオセンサ中の電気化学セルの定常状態を維持するために電位走査118の印加に典型的に使用される1分〜30分と比較して、0.5秒〜20秒といったかなり短い期間内に同じ結果を提供することが可能であることが強調されてもよい。
【0118】
図4は、干渉物質を含まない10mMのグルコース分析物を含む比較試料116を測定するための、バイオセンサ中の電気化学セルへの一連の負電位ステップおよび正電位ステップ128の印加を示す。ここでは、図4Aは、第1電極112における電流130の時間依存推移を表す図を示し、一方、図4Bは、第3電極114における電圧132の時間依存推移を表す別の図を示す。
【0119】
以下の図5図9のそれぞれは、バイオセンサ中の電気化学セルへの1つまたは複数の電位ステップ128、128’、128’’の印加後に取得される第3電極114の電流−電圧特性110を示している。本明細書では、以下の試料を用いた。
図5:10mMのグルコースを含む、すなわち干渉物質を含まない試料134であり、約275mVでゼロ電流遷移の位置136をもたらす
図6:10mMのグルコースおよび低濃度の内在性干渉物質であるシステインを含む試料138であり、約275mVでゼロ電流遷移の同じ位置136をもたらす
図7:10mMのグルコースおよび外在性干渉物質であるアスコルビン酸を含む試料140であり、約−50mVでゼロ電流遷移の変位位置142をもたらす
図8:10mMのグルコースおよび第1の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含む試料144であり、約70−100mVでゼロ電流遷移のさらなる変位位置146をもたらす
図9:10mMのグルコースおよび第2の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含む試料148であり、しかし、約70−100mVでゼロ電流遷移の同じ変位位置146をもたらす
【0120】
最後に、図10は、その後に、干渉物質を含まないか、または異なる種類の干渉物質を含むかのいずれかである様々な試料150〜160に曝された第1電極112における電流130の時間依存推移を示す。特に、以下の試料150〜160がこの目的のために使用された。
−10mMの分析物グルコースを含む、すなわち干渉物質を含まない試料150
−低濃度の内在性干渉物質であるシステインを含む試料152
−外在性干渉物質であるアスコルビン酸を含む試料154
−第1の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含む試料156
−さらなる外在性干渉物質サリチル酸塩を含む試料158
−第2の供給源からのさらなる内在性干渉物質である尿酸を含む試料160
【符号の説明】
【0121】
110 電流−電圧特性
112 第1電極
114 第3電極
116 比較試料
118 電位走査
120 ゼロ電流遷移の位置
122 内在性干渉物質である尿酸を含む試料
124 ゼロ電流遷移の変位位置
126 変位
128 電位ステップ
130 電流の時間依存推移
132 電圧の時間依存推移
134 10mMのグルコースを含む試料
136 ゼロ電流遷移の位置
138 10mMのグルコース+システインを含む試料
140 10mMのグルコース+アスコルビン酸を含む試料
142 ゼロ電流遷移のさらなる変位位置
144 10mMのグルコース+第1の供給源からの尿酸を含む試料
146 ゼロ電流遷移のさらなる変位位置
148 10mMのグルコース+第2の供給源からの尿酸を含む試料
150 10mMのグルコースを含む試料
152 システインを含む試料
154 アスコルビン酸を含む試料
156 第1の供給源からの尿酸を含む試料
158 サリチル酸塩を含む試料
160 第2の供給源からの尿酸を含む試料
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10