【課題を解決するための手段】
【0021】
この問題は、独立請求項の特徴を有する、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法、ならびにバイオセンサの動作を検証するおよび/またはバイオセンサを較正する方法によって解決される。個別の方法で、または任意の組み合わせで実現され得る本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示される。
【0022】
以下に使用されるように、用語「有する」、「備える」または「含む」またはその任意の文法的な変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、この文脈において記述される実体には、これらの用語によって導入された特徴に加えて、さらなる特徴は存在しないという状況、および複数のさらなる特徴が存在するという状況の両方を言及してもよい。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、「AはBを含む」という表現は、Bに加えて、他の要素はAに存在しないという状況(すなわち、Aが単独かつ独占的にBに構成されている状況)、およびBに加えて、要素C、要素CとDまたはそれ以上の要素など、1つまたは複数の他の要素が実体Aに存在する状況の両方を言及してもよい。
【0023】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つまたは複数の」という用語、または特徴もしくは要素が1度以上存在し得ることを示す類似の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入する際に1度だけ使用されることに留意されたい。以下では、多くの場合、それぞれの特徴または要素を言及する際に、それぞれの特徴は1度以上存在し得るという事実にもかかわらず、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という表現は繰り返されない。
【0024】
さらに、以下に使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「具体的には」、「より具体的には」、「詳細には」、「より詳細には」、または類似の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の機能と関連して使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は任意の特徴であり、請求項の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が理解するように、代替の特徴を使用して実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現において紹介される特徴は、本発明の代替の実施形態に関して制限することのない、本発明の範囲に関して制限することのない、およびこのようにして導入された特徴を、本発明の他の任意の特徴または非任意の特徴と組み合わせることに関して制限することのない任意の特徴であることが意図されている。
【0025】
本発明の第1の態様では、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法が開示される。ここでは、バイオセンサは、第1電極、第2電極および第3電極を有し、第1電極および第2電極は膜で被覆されており、第1電極は酵素をさらに含むか、または第1電極は酵素層で被覆されており、第3電極も膜で被覆されていてもよいが、必ずしもそうである必要はない。換言すれば、本明細書で使用される第1電極、第2電極、および第3電極は、以下のように、
−第1電極は作用電極と、
−第2電極は参照電極と、そして
−第3電極は補助電極または対抗電極と
呼称されてもよい。しかし、他の種類の名称も実現可能である。
【0026】
さらに本発明によると、第1電極、第2電極および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続され、通常の動作モードでは、第1電極は酸化プロセスを可能にし、第3電極は還元プロセスを可能にするように、ポテンショスタットを介して第1電極と第2電極との間に電位差が印加される。
本明細書において、方法は、以下の、
a)通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるステップであって、干渉物質検出モードにおいて、電位差は、第3電極が酸化プロセスを可能にするように、限られた期間において変更される、ステップと、
b)第3電極の電流−電圧特性を測定するステップと、
c)第3電極の電流−電圧特性を評価することによって、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を判定するステップと、
を含む。
【0027】
本明細書において、示されたステップは、好ましくは、所定の順序で実行される、したがってステップa)から開始する。しかし、示されたステップのいずれかまたはすべて、特にステップb)およびc)は、一定期間において、など少なくとも部分的に同時に実行されてもよい。さらに、所定の時間後に、または所定の事象の発生の結果としてなど、バイオセンサ中の干渉物質による寄与のその後の検出を達成するために、示されたステップ全体が数回繰り返されてもよい。さらに、本明細書に記載されているか否かにかかわらず、追加の方法ステップも実行されてもよい。
【0028】
概して用いられるように、「バイオセンサ」という用語は、少なくとも1つの医学的分析を実施するように構成された任意の装置を指してもよい。この目的のために、バイオセンサは、少なくとも1つの診断目的を実行するように構成された任意の装置であってもよく、具体的には、少なくとも1つの医学的分析を実行するための少なくとも1つの分析物センサを含む。バイオセンサは、具体的には、医学的分析を行うためなど、1つまたは複数の診断目的を実行するために、互いに相互作用可能な1つまたは複数の構成要素からなるアセンブリを備えてもよい。具体的には、複数の構成要素は、体液中の少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの検出を実行することが可能であってもよい、および/または体液中の少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの検出に寄与してもよい。概して、バイオセンサは、センサアセンブリ、センサシステム、センサキット、またはセンサデバイスのうちの少なくとも1つの一部であってもよい。さらに、バイオセンサは、電子装置などの評価装置に接続可能であってもよい。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態では、バイオセンサは、全体的にまたは部分的に埋め込み可能なバイオセンサであってもよく、特に、皮下組織の体液中、特に間質液中の分析物の検出を行うために特に適合されていてもよい。本明細書で使用されるように、「埋め込み可能バイオセンサ」または「皮下バイオセンサ」という用語は、患者または使用者の身体組織内に全体的にまたは少なくとも部分的に配置されるように適合された任意のバイオセンサを指してもよい。この目的のために、バイオセンサは、挿入可能部分を備えてもよい。本明細書において、「挿入可能部分」という用語は、概して、任意の身体組織内へと挿入可能に構成された要素の一部または構成要素を指してもよい。好ましくは、バイオセンサは、生体適合性の表面、すなわち、少なくとも典型的な使用期間中は、使用者、患者、または身体組織に有害な影響を可能な限り及ぼさない表面を全体的または部分的に含み得る。この目的のために、バイオセンサの挿入可能部分は生体適合性の表面を有してもよい。一例として、バイオセンサ、具体的にはその挿入可能部分は、少なくとも1つのポリマー膜またはゲル膜などの少なくとも1つの生体適合性膜で全体的にまたは部分的に覆われていてもよく、生体適合性膜は、一方では体液に対して、または少なくともそこに含まれる分析物に対して浸透性であってもよく、他方ではセンサ内で1つまたは複数の試験化学物質のようなセンサ物質を保持し、それにより身体組織への移動を防止する。バイオセンサの他の部品または構成要素は、体組織の外部に留まってもよい。
【0030】
本発明において概して使用されるように、「患者」および「使用者」という用語は、それぞれ健康状態にあるか、または1つまたは複数の疾患を患っているかに関わらず、人間または動物を指してもよい。一例として、患者または使用者は、糖尿病を患う人間または動物であってもよい。しかし、追加的または代替的に、本発明は、他の種類の使用者または患者または疾患に適用されてもよい。
【0031】
本明細書でさらに使用されるように、「体液」という用語は概して液体、特に、典型的に使用者または患者の身体または身体組織中に存在し得る、および/または使用者または患者の身体によって生成され得る液体を指してもよい。好ましくは、体液は、血液および間質液からなる群から選択され得る。しかし、追加的または代替的に、唾液、涙液、尿または他の体液などの1つまたは複数の他の種類の体液が使用されてもよい。少なくとも1つの分析物の検出の間、体液は身体または身体組織内に存在し得る。したがって、バイオセンサは、具体的には、身体組織内の少なくとも1つの分析物を検出するように構成されてもよい。
【0032】
本明細書でさらに使用されるように、「分析物」という用語は、体液中に存在する任意の要素、成分または化合物を指してもよく、分析物の有無および/または濃度が、使用者、患者、または医者などの医療スタッフの関心の対象であってもよい。特に、分析物は、少なくとも1つの代謝産物のような、使用者または患者の代謝に関与し得る少なくとも1つの任意の化学物質または化学化合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。一例として、少なくとも1つの分析物は、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸塩からなる群から選択されてもよい。しかし、それに加えて、または代替的に、他の種類の分析物が使用されてもよい、および/または、分析物の任意の組み合わせが判定されてもよい。特に、少なくとも1つの分析物の検出は、具体的には、分析物特異的検出であってもよい。さらなる可能な適用を制限することなく、特に間質液中のグルコースのモニタリングを参照して本発明を以下に記載する。
【0033】
体液は、分析物に加えて、体液中に存在し、それによって、体液中の分析物の検出に影響を及ぼす可能性のある追加の物質を含み得る。体液中のこの種の追加の物質は、通常、「干渉性物質」または「干渉物質」と称される。これに関して、「内在性干渉物質」と「外在性干渉物質」との間の区別がなされてもよい。内在性干渉物質は、概して体内で自然に生み出されると考えられる追加の物質を指すが、外在性干渉物質は、概して体の外部から体液に供給された後の体内にのみ存在する追加の物質に関する。特に、内在性干渉物質は、特に、尿酸またはシステインを含み得るが、外在性干渉物質は、特にアスコルビン酸、アセチルサリチル酸、パラセタモールまたはアセトアミノフェンなどの医薬品および薬物を含み得る。さらに、以下の物質、すなわち、電気活性酸性の、アミンまたはスルフヒドリル基を有する化合物、尿素、過酸化物、アミノ酸、アミノ酸前駆体または分解生成物、一酸化窒素(NO)、NO供与体、NO前駆体、ビリルビン、クレアチニン、ドーパミン、エフェドリン、イブプロフェン、Lドーパ、メチルドーパ、サリチレート、テトラサイクリン、トラザミド、トルブタミド、細胞代謝中および/または創傷治癒中に生成される電気活性種、ならびに身体のpH変化の間に生じ得る電気活性種などの物質のうちの1つまたは複数は、状況に応じて干渉物質の1つとみなすことができる。しかし、ここで言及されていないさらなる種類の物質もまた、干渉物質の1つとして作用し得る。
【0034】
本明細書でさらに使用されるように、「測定する」という用語は、測定の結果を特徴付ける少なくとも1つの信号、特に少なくとも1つの測定信号を生成するプロセスを指す。具体的には、少なくとも1つの信号は、少なくとも1つの電圧信号および/または少なくとも1つの電流信号などの少なくとも1つの電子信号であってもよく、またはそれを含んでもよい。少なくとも1つの信号は、少なくとも1つのアナログ信号であってもよい、もしくは少なくとも1つのアナログ信号を含んでもよく、および/または、少なくとも1つのデジタル信号であってもよい、もしくは少なくとも1つのデジタル信号を含んでもよい。特に電気システムでは、所望の測定信号を記録することを可能とするために、特定の装置に所定の信号を印加する必要があり得る。一例として、電流信号の測定には、デバイスに電圧信号を印加する必要があり、逆もまた同様である。
【0035】
本明細書でさらに使用されるように、「判定する」という用語は、特に、少なくとも1つの測定信号を評価することによって取得され得る複数の代表的な結果のような、少なくとも1つの代表的な結果を生成するプロセスに関し、「評価する」という用語は、少なくとも1つの測定信号を表示し、そこからの少なくとも1つの代表的な結果を導き出す方法を適用することを指してもよい。特に、電極の電流−電圧特性は、第1に、ポテンショスタットによってもたらされるように、特性化される電極と参照電極との間に電圧を印加し、それにより生じる電流信号を、その後または同時に測定することによって、第2に、印加された電圧の対応する値に対する電流信号の記録された値を表示することによって取得されてもよい。
【0036】
本明細書でさらに使用されるように、「検出する」という用語は、分析物または干渉物質などの体液中の少なくとも1つの物質の有無および/または量および/または濃度を確証するプロセスを指す。したがって、検出は、少なくとも1つの物質の有無を導き出すことができる定性的な検出であってもよい、もしくはそれを含んでもよく、ならびに/または少なくとも1つの物質の量および/もしくは濃度を得ることができる定量的な検出であってもよい、もしくはそれを含んでもよい。
【0037】
本明細書でさらに使用されるように、「モニタリング」という用語は、データを連続的に取得し、使用者との相互作用なしでそこから所望の情報を導き出すプロセスを指す。この目的のために、複数の測定信号が生成および評価され、そこから所望の情報が判定される。ここで、複数の測定信号は、固定または可変の時間間隔内に、もしくは代替的または追加的に少なくとも1つの所定の事象の発生時に記録されてもよい。特に、本発明によるバイオセンサは、特に、糖尿病状態を管理、監視、および制御するなどのため、1つまたは複数の分析物、特にグルコースの連続的なモニタリングに適合されてもよい。
【0038】
本発明によるバイオセンサは、電気化学センサである。本明細書で使用されるように、「電気化学センサ」という用語は、体液に含まれる少なくとも1つの物質を検出するために、少なくとも1つの電気化学測定、特に複数または一連の電気化学測定を行うように適合されるセンサを指す。特に、「電気化学測定」という用語は、電気化学検出反応のような、物質の電気化学的に検出可能な特性の検出を指す。したがって、たとえば、1つまたは複数の電極電位を印加し比較することによって、電気化学検出反応が検出されてもよい。具体的には、電気化学センサは、少なくとも1つの電流信号および/または少なくとも1つの電圧信号のような、電気化学検出反応の有無および/または程度を直接的または間接的に示す少なくとも1つの電気センサ信号を生成するように適合される。測定は、定性的および/または定量的測定であってもよい。さらに、他の実施形態も実現可能である。
【0039】
この目的のために、本明細書で使用される電気化学センサは、電気化学セルの形態で配置され、したがって、少なくとも1対の電極を使用する。概して使用されるように、「電極」という用語は、直接的、または少なくとも1つの半浸透性の膜もしくは層を介して、のいずれかで体液と接触するように適合される試験要素の実体を指す。本発明に関して、電極は膜によって被覆されている。各電極は、電極の少なくとも1つの表面にて電気化学反応が起こるように具現化されてもよい。特に、電極は、酸化プロセスおよび/または還元プロセスが電極の選択された表面で行われるように具現化されてもよい。概して、「酸化プロセス」という用語は、第1の化学的または生化学的反応を指し、その反応中に原子、イオンまたは分子などの第1の物質から電子が放出され、それにより酸化される。さらなる物質が放出された電子を受け取る、さらなる化学的または生化学的反応は、概して、「還元的プロセス」という用語で呼称される。まとめて、第1の反応およびさらなる反応を「酸化還元反応」と呼称されてもよい。その結果、概して電荷の移動に関係する電流がこれにより生成される。さらに、酸化還元反応の詳細な推移は、電位の印加により影響を受けてもよい。
【0040】
本発明によれば、第1電極は酵素をさらに含むか、あるいは酵素層によって被覆されており、酵素または酵素層はこの場合は試験化学物質として作用し、同時に、第2電極および第3電極は試験化学物質がないように維持される。概して、「試験化学物質」という用語は、少なくとも1つの分析物の存在下で少なくとも1つの検出可能な特性を変化させるように適合される任意の材料または複数の材料からなる組成物を指し、ここでは検出可能な特性は、上記の電気化学的に検出可能な特性から選択される。具体的には、少なくとも1つの試験化学物質は、高選択性の試験化学物質であってもよく、試験要素に適用された体液の試料中に分析物が存在する場合にのみその特性は変化し、分析物が存在しない場合、変化は生じない。より好ましくは、少なくとも1つの特性の程度または変化は、分析物の定量的検出を可能にするために、体液中の分析物の濃度に依存してもよい。
【0041】
本明細書中で使用されるように、試験化学物質は、グルコースオキシダーゼ(GOD)および/またはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)などの1つまたは複数の酵素を含んでもよく、好ましくはそれ自体および/または検出物質の他の成分と組み合わせで、検出すべき少なくとも1つの分析物とともに酸化プロセスまたは還元プロセスを行うように適合されている酵素を含んでもよい。加えて、またはこれに代えて、試験化学物質は、1つまたは複数の補助酵素などの1つまたは複数の補助成分を含んでもよい、および/または上記の1つまたは複数の酸化還元メディエータを含んでもよい。さらに、試験化学物質は、1つまたは複数の色素を含んでもよく、その色素は、好ましくは1つまたは複数の酵素と相互作用し、検出すべき少なくとも1つの分析物の存在下でその色が変化してもよい。
【0042】
既に上述したように、バイオセンサ内で起こり得る酸化還元反応の推移は、電位の印加によって影響され得る。したがって、酸化還元反応の詳細な推移は、ここでは、1つまたは複数の電極電位、特に第1電極と第2電極との間の電位差を比較することによって検出されてもよい。この目的のために、バイオセンサの第1電極、第2電極および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続される。本明細書で使用されるように、「ポテンショスタット」という用語は、電気化学セル内の第1電極と第2電極との間の電位差を調節および/または測定するように適合される電子装置を指す。この目的のために、ポテンショスタットは、第3電極を介して電気化学セルに電流を注入することを可能とするために実装されており、この理由から補助電極または対抗電極とも呼称される。ポテンショスタットのこの設定により、電気化学的セル内の第1電極と第2電極との間の電位差を調節すること、そして代替的に、または追加的に第1電極と第3電極との間の電流を測定することが可能になる。さらなる利点の中でも、ポテンショスタットは、事実上電流のない方法で電圧を測定することを可能にし、これは、装置のかなり高い入力インピーダンスとして説明することができ、GΩレンジの値を達成してもよい。さらに、ポテンショスタットは電流を測定するために等しく使用されてもよく、それにより、装置によって実行される有効電流調整による電位降下が生じない。
【0043】
結果として、ポテンショスタットは、ここでは、ステップb)に従って、第3電極の電流−電圧特性を測定するために利用され、この電流−電圧特性は、好ましくは、第1に、第1電極と第2電極との間に電圧を印加し、好ましくは同時に、それにより第1電極と第3電極との間に生じる電流を測定することによって、第2に、印加された電圧の対応する値に対する電流信号の記録された値を表示することによって取得される。
【0044】
代替的または追加的に、ガルバノスタット法を適用することによって、第3電極の電流−電圧特性が測定されてもよい。この目的のためにガルバノスタットが使用されてもよく、概して、「ガルバノスタット」という用語は、特に、非常に高い内部抵抗の影響により電気化学セルを流れる電流を一定に維持することが可能である制御および測定装置を指す。したがって、第1電極と第3電極との間にガルバノスタットによって供給される所定の電流を印加することによって、そして、好ましくは同時に、第1電極と第2電極との間の電位差を測定することによって、同様に第3電極の電流−電圧特性が取得されてもよい。
【0045】
さらに、本発明による方法の実行中に、電気化学セルに印加される電位差は、所定の方法で変更される。その結果、ここでは「通常動作モード」および「干渉物質検出モード」と呼ばれる2つの動作モードが区別されてもよい。したがって、通常動作モードでは、第1電極と第2電極との間に電位差が印加される。ここでは、電気化学セル内の第1電極と第2電極との間の電位差は、酸化プロセスが第1電極の表面で起こる一方で、還元プロセスが第3電極の表面で起こるように調節される。本明細書では、この種の動作モードは、バイオセンサの主要タスクである、体液中に存在する少なくとも1つの分析物の有無および/または量および/または濃度を検出することに関連するため、「通常動作モード」という用語が用いられる。
【0046】
しかし、これとは対照的に、干渉物質検出モードは、バイオセンサ内で干渉物質による寄与を検出するために使用される。したがって、本発明による方法は、ステップa)に従って通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるプロセスを含む。本明細書で使用するように、「切り替える」という用語は、第1の種類の動作からさらなる種類の動作に移行させ、それによって第1の種類の動作に戻る機会を提供するプロセスを指す。後により詳細に説明するように、ある種の動作から別の種類の動作への移行は、瞬間的、特に限られた期間の後に、または、連続的、特に限られた期間中に実行されてもよい。「限られた期間」という用語は、概して使用されるように、開始点と終了点との間で持続してもよい一時的な持続時間を指してもよい。本明細書においては、開始点とは、さらなる種類の動作が開始する時点を指し、一方で、終了点とは、さらなる種類の動作が終了する別の時点に関連してもよい。一例として、体液内の分析物を検出するために、バイオセンサは通常動作モードで動作させられてもよい。一定の時間間隔または可変の時間間隔によって促されるか、あるいは代替的にまたは追加的に、少なくとも1つの所定の事象の発生によって促される場合、バイオセンサは、干渉物質による寄与を検出するための干渉物質検出モードで動作され得る。しかし、限られた期間の後、バイオセンサは、その主要タスクである体液内の分析物の検出を再開するために通常動作モードに戻る。
【0047】
干渉物質による寄与を検出する目的で、第1電極と第2電極との間の電位差は、ステップa)の間、限られた期間において変更される。概して使用されるように、「変更する」という用語は、第1の値から、一定のさらなる値またはさらなる値の範囲のような、少なくとも1つのさらなる値へ特性を修正することを指す。本発明によれば、干渉物質検出モードでは、第1電極と第2電極との間の電位差が、酸化プロセスがこの場合は第3電極の表面で行われるように修正される。さらに、還元プロセスは、この場合は第1電極の表面で行われてもよいが、還元プロセスの正確な位置は、電極配置の詳細、それぞれの対応する電極の容量、および第1電極と第2電極との間の電位差を変更する方法に依存し得る。特定の実施形態とは無関係に、酸化プロセスおよび還元プロセスは、いずれの場合も、特に第1電極を通じて負の電流を観察することによって、電極配置内の電気回路を閉じ得るように進行してもよい。以下でより詳細に説明するように、少なくとも1つの電位ステップの印加は、負の充電電流をもたらしてもよい。その結果、負電位ステップは、第1電極での充電電流の発生をもたらし、一方で、還元プロセスは第3電極で既に起こってもよい。したがって、ここで第1電極と第2電極との間の電位は、通常動作モードに対して逆の極性を示し得るが、電位は能動的に以前の極性に戻るように設定されてもよい、または、代替的もしくは追加的に、限られた期間内またはその直後に以前の極性を回復するために緩和プロセスを受けてもよい。
【0048】
この種の配置の結果として、バイオセンサは、干渉物質検出モードにおいて、分析物に関連する変数を測定することができないが、むしろ体液中の干渉物質の有無および/または量および/または濃度に関連する変数を測定するように適合され得る。しかし、上述したように、バイオセンサは、限られた期間の後、リセットおよび/または緩和プロセスなどによって通常動作モードに戻り、第1電極と第2電極との間の電位は、バイオセンサが分析物に関連する変数を再び測定することが可能であるように、通常の極性を回復することができる。
【0049】
概して、ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、第1電極と第2電極との間の電位差の時間に応じて変わる変更によって実施されてもよい。
【0050】
特に好ましい実施形態では、通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、少なくとも1つの電位ステップを第1電極と第2電極との間の電位差に印加することによって実施されてもよい。この目的のために、好ましくは、ポテンショスタットが使用されてもよい。しかし、他の手段も実行可能である。本明細書で使用されるように、「電位ステップ」という用語は、電気パルスの形態で提供されてもよい追加の電位による、第1電極の瞬間的な衝撃を指してもよい。それにより、この手順の適用によって流すことのできる電流範囲を画定するために、電位ステップの高さが選択されてもよい。本明細書では、追加の電位は、電位ステップの印加後、少なくとも能動的に以前の極性に戻るように設定される前に、および/または緩和プロセスの完了の前に、第1電極の極性が第2電極に対して逆の符号を示すことを達成する符号および強度を示してもよい。
【0051】
既に上述したように、負の電位ステップにより、第1電極に負の充電電流が生じ、それは、充電プロセスの終了後、バイオセンサの通常のプロセスに従って正の電流に戻ってもよい。結果として、第1電極における観測可能な電流は、負の電流範囲を、分析物の濃度に応じて、正の電流範囲に戻るまで掃引してもよい。同様に、第3電極における観測可能な電流は、分析物の濃度に応じて、正の電流範囲を負の電流範囲に戻るまで掃引してもよい。したがって、対抗電極における電流が、分析物および/または干渉物質によって提供され得る酸化可能な物質の有無および濃度に応じて生成される。このようにして、好ましくは、第3電極の電流−電圧特性が達成されてもよい。さらに、より詳細に後述するゼロ電流遷移が取得され得る。
【0052】
この処理の結果として、バイオセンサは、体液中の干渉物質に関連する変数を検出すること、特に、ステップb)に従って第3電極の電流−電圧特性を測定することが可能であってもよい。電位ステップの適用に続いて、これによって不平衡になった第1電極は、特に上述の緩和プロセスを通して、限られた期間内に通常動作モードに戻ってもよい。時定数RCは、この特定の効果に起因し得るものであり、膜の厚さのような、第1電極の特徴に依存してもよい。限られた期間中、第1電極と第3電極との間の電流および第3電極の電圧が測定されてもよく、限られた期間は、たとえば0.5秒から20秒、好ましくは1秒から10秒の時間間隔であってもよいが、関与する電極の容量に依存し得る測定期間を含んでもよい。
【0053】
代替の実施形態では、通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、限られた期間中の電位差の段階的または連続的な変更によって実施されてもよい。また、好ましくは、この目的のためにポテンショスタットが使用されてもよい。しかし、他の手段も実行可能である。本明細書で使用されるように、「段階的な変更」という用語は、特に、所定の振幅の増加を複数設定することによる電位の変化を指してもよく、そのそれぞれは、限られた持続時間、たとえば限られた一定の持続時間に亘り一定であってもよい。「連続的な変更」という用語は、特に、振幅が所定の電位範囲内で変化し得る、連続的に変化する電位を指してもよい。好ましくは、電位差は電位走査を行ってもよく、走査は、通常動作モードにおける電位差の値で開始点にて開始してもよく、限られた期間の後に、変更された値で終了点にて終了してもよい。一例として、電位差は、開始点と終了点との間における連続的な修正に伴う上昇に沿って変化してもよい。しかし、電位差の時間に応じて変わる他の種類の時間的推移も可能である。電位走査中の電位の変化の間に、第1電極と第3電極との間の電流と、第3電極の電圧の両方が、限られた期間中に測定されてもよく、限られた期間は、1分〜30分、好ましくは5分〜15分の時間間隔を含んでもよい。
【0054】
結果として、電位走査は、特に、上記の電位ステップの印加に続く測定期間に適用され得る好ましい時間間隔と比較して、かなりの時間を必要としてもよい。この種の性能は、電位走査が、好ましくは実際の測定値が記録される前に、バイオセンサの定常状態が達成されるような方法で実行されてもよいという、典型的なアプローチによって説明することができる。さらに、電位走査の適用中に、酸化還元反応に関する平衡を可能な限り維持し得ることを保証することは有利であってもよい。
【0055】
さらに、ステップc)に従って第3電極の電流−電圧特性を評価することにより、バイオセンサ中の干渉物質による寄与が判定される。本明細書で使用されるように、「寄与」という用語は、体液内の干渉物質の存在によって生じる測定可能な影響を指し、測定可能な影響は、好ましくは、第3電極の電流−電圧特性において検出可能であり得る。特に、分析物に関連する酸化還元活性物質と同様の方法で酸化され得る追加の酸化還元活性物質である、またはそれを含む干渉物質は、追加の電流として検出可能なさらなる電子を生成し得る。追加の電流は、分析物が存在しない場合でも取得され得るため、追加の電流は、「バックグラウンド電流」または「ゼロ電流」とも呼称されてもよい。既に上述したように、第1の種類の干渉物質は、追加の酸化還元活性物質を含んでもよく、追加の酸化還元活性物質は、酸化還元メディエータと同様に作用してもよく、したがって第1電極で直接酸化され、それによって追加の電流部分を提供し得る。これに代えてまたは加えて、さらなる種類の干渉物質は、体液中の中間生成物の濃度が減少するように、グルコース反応中に生成される、過酸化水素(H
2O
2)などの中間生成物と反応し得る。その結果、ポテンショスタットの感度が低下し得る。
【0056】
さらに好ましい実施形態では、第3電極の電流−電圧特性は、バイオセンサ中の干渉物質の種類および/または量を検出するために、以下で説明する特定の方法で、ステップc)の間に評価されてもよい。
【0057】
最初に、好ましくは、この目的のために、第3電極の電流−電圧特性において生じ得るゼロ電流遷移の位置が判定されてもよい。本明細書で使用されるように、「ゼロ電流遷移」という用語は、電流−電圧特性における少なくとも1つの観察可能な電圧値を指し、この電圧値において、電流は消滅する、またはより具体的には、電流が負の電流値から正の電流値に変化するように、またはその逆に、正の電流値から負の電流値に変化するように、電圧は電流‐電圧特性におけるゼロ電流軸を通る遷移が起こる。特に、ゼロ電流遷移の位置に影響を及ぼすことが可能である特定の種類の干渉物質の有無がこのように判定されてもよい。
【0058】
一例として、水相中において酸化プロセスおよび還元プロセスが起こる場合、たとえば、分析物を含まない典型的な体液の場合、第3電極が金である場合、確立されたゼロ電流遷移が約550mVの電圧で生じてもよく、これは、一般的に、金の電極における水相内の水分の酸化に起因する。しかし、ゼロ電流遷移の他の値は、異なる種類の第3電極の他の電圧で観測可能であってもよい。逆に、分析物であるグルコースが水相中に存在する場合、酵素グルコースオキシダーゼ(GOD)の反応から生じ得る過酸化水素(H
2O
2)が、第1電極では約275mVの電圧で酸化され得るが、異なる分析物は異なる電圧値で酸化されるということを観察することによって、グルコースの存在が検出可能である。なお、この種の反応は、バイオセンサの電極配置内において、酵素を含まない第3電極は第1電極から空間的に分離されているため、第3電極で起こらない。さらに、グルコースに加えて特定の干渉物質が水相中に存在する場合、干渉物質が、分析物、水および電極材料が酸化され得る電圧値より低い電圧で第1電極にて酸化されることを観察することによって、干渉物質の存在は検出可能であってもよい。結果として、第3電極の電流−電圧特性に生じるゼロ電流遷移の位置は、好ましくは、分析物が第1電極にて酸化される電圧より下に位置してもよい。以下の図にさらに示されるように、電圧値のデフォルト位置に対する、電流−電圧特性におけるゼロ電流遷移の位置の変位から導き出される値は、電気化学セル内に存在する干渉物質の種類に対する基準として用いられてもよい。
【0059】
また、第3電極の電流−電圧特性は、さらに、少なくとも1つの電流プラトーを示してもよい。本明細書で使用される「電流プラトー」という用語は、電流−電圧特性内における電流の推移の特定の挙動を指してもよく、それによって、電流は、限定された電圧範囲に亘って一定の値またはレベルを達成し得る。「一定値」という用語は、下限閾値および上限閾値のような限定された電流範囲に限定され得る電流の変動に関連してもよい。このように、代替的にまたは追加的に、第3電極の電流−電圧特性において生じる少なくとも1つの電流プラトーの電流値がさらに判定されてもよい。いくつかの試料において観察され得るように、第3電極の電流−電圧特性において生じ得る典型的な電流プラトーの電流値は、0.1nA〜20nA、特に0.5nA〜10nAの値を取る。その結果、電気化学セル内に存在し得る干渉物質の量が、少なくとも1つの電流プラトーにおける電流値の評価から判定され得る。
【0060】
また、少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサに寄与することが可能である場合、2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの遷移が、さらに、第3電極の電流−電圧特性において、少なくとも1つの特定の電圧で生じてもよい。したがって、少なくとも1つのさらなる干渉物質の種類は、2つの特定の異なる電流プラトーの間で少なくとも1つの電圧遷移が観察可能である少なくとも1つの特定電圧における少なくとも1つの位置を評価することによって判定されてもよい。
【0061】
上述したように、本明細書で使用されるバイオセンサは、全体的に埋め込み可能なバイオセンサ、またはその代わりに部分的に埋め込み可能なバイオセンサであってもよい。特に、バイオセンサは、体液中の分析物の連続的なモニタリングのために適合されてもよく、好ましくは、皮下組織中の、特に血液などの間質液中の分析物の連続測定のために適合されてもよい。しかし、他の種類のバイオセンサおよびバイオセンサの適用もまた実行可能であってもよい。
【0062】
さらに、上述したように、分析物は、好ましくはグルコースを含んでもよく、酵素はグルコースオキシダーゼ(GOD)であってもよい。代替的に、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)のような他の種類の酵素が使用されてもよい。ここで、作用電極として機能するバイオセンサの第1電極は、酸化プロセスを実行するために適合されてもよい。同様に、対抗電極として機能する第3電極は、還元プロセスを実行するように適合されてもよい。また、第2電極は参照電極として機能する。その結果、体液中のグルコース濃度などのグルコースレベルは、作用電極における酸化プロセスによって判定され得る。結果として、ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、追加の負電位を、特に、ポテンショスタットを使用することによって、作用電極に印加することを含んでもよい。これに関しては、作用電極に印加される追加の負電位は、単一の大きな負の値を含む負電位ステップから、または、段階的もしくは連続的に交互に繰り返す形で負電位の値が増える電位走査から選択され得ることが強調されてもよい。
【0063】
また、本発明により寄与が検出され得る干渉物質は、内在性干渉物質および外在性干渉物質のうちの1つであってもよく、干渉物質は、分析物レベルに影響を及ぼすことが可能であってもよい。以下において図面により詳細に示すように、本方法は、特に、内在性干渉物質である尿酸による寄与を検出するために適用可能である。さらなる可能な例は、上に提供された干渉物質のリストに見出すことができる。
【0064】
これに関して、ある種の干渉物質は、体液中に存在するが、それらによる寄与が第3電極の電流−電圧特性に影響を及ぼし得るような形で寄与をもたらさないため、本方法によって検出することができない可能性があることが強調されてもよい。一例として、内在性物質であるシステインは、調査した体液中に存在する濃度において、潜在的な干渉物質ではないことが判明した。詳細については、以下で参照される図がここでも参照される。
【0065】
また、本発明の方法は、特に、外在性干渉物質の寄与の検出に適用可能であってもよく、外在性干渉物質は、具体的には、医薬化合物、たとえば薬剤および/または薬品、またはその代謝産物であってもよい。特に好ましい例として、医薬物質であるアスコルビン酸および/またはアセチルサリチル酸および/またはパラセタモールによる寄与は、本方法によって検出されてもよい。さらなる可能な例は、上で提供された干渉物質のリストに見出すことができる。
【0066】
さらに、本方法は、1つまたは複数の医薬物質の有無の検出だけでなく、その量および/または濃度の判定にも適用可能であるため、本方法は、また、体液内の分析物レベル、特に血糖値に影響を及ぼし得る、選択された医薬物質の量および/または濃度の検出および/または監視に適用可能であってもよい。したがって、このさらなる機会は、患者の糖尿病状態の管理、監視、および制御におけるより完全な血液分析のために利用されてもよい。
【0067】
本発明のさらなる態様では、バイオセンサを較正するための方法が開示される。この方法は、上記および/または下記のようなバイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法を実行するステップを含む。これに関して、この方法は、少なくとも1つの較正測定として、少なくとも1つの干渉物質の種類や濃度など、少なくとも1つの所定の項目について、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法であり、好ましくはそれに引き続いて、特にさらなる参照のために、第3電極の電流−電圧特性またはそれから得られる少なくとも1つの特性値を、対応する干渉物質による寄与とともに記憶する方法の実行を含む。特に好ましい実施形態では、第3電極の電流−電圧特性におけるゼロ電流の電圧値が、少なくとも1つの特性値として判定される。代替的または追加的に、第3電極の電流−電圧特性における電流プラトーの電流値は、少なくとも1つの特性値として判定される。本明細書においては、電流プラトーについて判定される1つまたは複数の値、特に、第1電極の電位に相当する電位における電流プラトーの合計について判定される値が、バイオセンサの較正のためのバックグラウンドでの電流補正に使用されるためのゼロ電流を評価するために好適に使用されてもよい。
【0068】
少なくとも1つの較正測定において、少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性またはその少なくとも1つの特性値との間の一般的関係が取得されてもよい。一般的関係は、たとえば、1つまたは複数の較正曲線の形で報告されてもよい。これに関連して、一般的関係は、干渉物質の項目の複数の異なる値に対する規則を意味すると理解され、その規則は、干渉物質の項目の値が電流−電圧特性にどのように影響し得るかを記述する。この規則は、干渉物質濃度の値の連続した範囲で、または干渉物質濃度の値、たとえば互いに離れた干渉物濃度の値の量の不連続の範囲で確認できる。したがって、一般的関係は、たとえば、複数の干渉物質濃度値を、それぞれの場合に、電流−電圧特性への対応する影響に点ごとに割り当てることを含んでもよい。代替的または追加的に、規則は、較正曲線または較正関数とも呼ばれ、干渉物質の項目による電流−電圧特性への影響を分析的に記述する、分析関数の形の法則を含むこともできる。
【0069】
較正測定は、たとえば、干渉物質の項目が分かっている複数の試験試料または較正試料における少なくとも電流−電圧特性をそれぞれの場合において検出することによって行われ得る。たとえば、特定の濃度の既知の干渉物質を有する試験試料を調製することが可能である。試験試料に関して、それぞれの場合に、少なくとも1つの電流−電圧特性またはそこから導き出される特性値を確認することが可能である。このようにして、それぞれが干渉物質の項目および関連の特性値を含む一対の値の量を判定することが可能であってもよい。上記一対の値は、それ自体が一般的関係を記述することができ、または上記一般的関係は、たとえば当てはめ(fit)によって一対の値から確認され得る。場合によっては、一般的関係を直線で記述することが可能であってもよく、その傾きと軸の切片は、適切な当てはめを使用して一対の値から判定され得る。上記直線は、較正曲線として使用され得る。より複雑な較正曲線、たとえば一対の値の関係を非常によく記述する指数関数および/または多項式も可能であってもよい。
【0070】
一般的関係、より具体的には較正曲線または較正関数は、具体的には、少なくとも1つのデータ記憶装置、たとえば、揮発性および/または不揮発性のデータ記憶装置に記憶されてもよく、データ記憶装置は、データ処理装置などの形態の少なくとも1つの評価ユニットに接続されてもよい。上記評価ユニットは、本発明による方法の方法ステップを完全にまたは部分的に実行するように構成されてもよい。較正測定は、評価ユニット内で実行することもでき、また評価ユニットから独立して実行することもできる。
【0071】
本発明のさらなる態様では、バイオセンサの動作を検証する方法が開示され、この方法は、上記のようなバイオセンサを較正する方法と比較すると、必要な変更を加えた上で同様である。本明細書においては、バイオセンサの動作を検証する方法は、特に、バイオセンサのフェイルセーフ動作のために利用されてもよい。概して使用されるように、「フェイルセーフ動作」という用語は、特に、連続的なグルコースモニタリングの適用中に、バイオセンサの故障の場合に、それにもかかわらずバイオセンサが少なくとも1つの信頼できる特性値を提供するように応答するバイオセンサの動作モードを指す。代替的または追加的に、バイオセンサの動作を検証する方法は、さらに、何らかの理由で電流測定値がバイオセンサによって提供できないが、依然として連続的グルコースモニタリングに必要とされる場合に、測定値を補うために使用されてもよい。これに関して、少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性、または、上述の、その少なくとも1つの特性値との間の一般的関係が、同様に使用されてもよい。
【0072】
本発明による方法は、先行技術に関して多くの利点を示す。干渉物質の影響を低減するために不十分な技術的解決法を使用する代わりに、体液中に存在する干渉物質がバイオセンサ上に及ぼし得る影響が積極的に検出される。これにより、提案された、バイオセンサ中の電流と電位との間の依存性を観察する方法は、干渉物質の存在および好ましくは量を明確な方法で推定することを可能にし、また、概して、1種類以上の干渉物質の場合に適用可能である。さらに、試薬を含まない電極のような追加の作用電極も、またはバイポテンショスタットおよび1つまたは複数のリレー回路のような補助回路構成要素も必要とされない。したがって、本方法は、標準的なバイオセンサのセンサ電子機器構造内で実施可能であってもよく、特に、既存のバイオセンサシステムに適用可能である。
【0073】
要約すると、以下の実施形態は、本発明の可能な実施形態である。しかし、他の実施形態も実施可能である。
【0074】
実施形態1:バイオセンサ中の干渉物質による寄与を検出する方法であって、バイオセンサは、第1電極、第2電極、および第3電極を有し、第1電極および第2電極は、膜で被覆されており、第1電極は酵素をさらに含むか、または第1電極は酵素層で被覆されており、第1電極、第2電極、および第3電極は、ポテンショスタットを介して接続されており、通常動作モードにおいて、第1電極が酸化プロセスを可能にし、第3電極が還元プロセスを可能にするように、ポテンショスタットを介して第1電極と第2電極との間に電位差が印加され、
方法は、
a)通常動作モードから干渉物質検出モードに切り替えるステップであって、干渉物質検出モードにおいて、第1電極と第2電極との間の電位差は、第3電極が酸化プロセスを可能にするように、限られた期間において変更される、ステップと、
b)第3電極の電流−電圧特性を測定するステップと、
c)第3電極の電流−電圧特性を評価することによって、バイオセンサ中の干渉物質による寄与を判定するステップと、
を含む、
方法。
【0075】
実施形態2:ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、ポテンショスタットを使用することによる、限られた期間における、電位差の時間に応じて変わる変更を含む、実施形態1の方法。
【0076】
実施形態3:電位差の連続的な変更は、所定の電位範囲内で電位差を段階的または連続的に変化させることを含む、実施形態2の方法。
【0077】
実施形態4:電位差を連続的に変化させることは、電位差を、所定の電位範囲の開始点と終了点との間における段階的または連続的な変更に伴う所定の電位の上昇に沿って変化させることを含む、実施形態3の方法。
【0078】
実施形態5:ステップb)による第3電極の電流−電圧特性の測定は、限られた期間において、第1電極と第3電極との間の電流を測定すること、および第3電極の電圧を測定することを含む、実施形態2〜4のいずれか1つの方法。
【0079】
実施形態6:限られた期間が、1分〜30分続く、実施形態5の方法。
【0080】
実施形態7:限られた期間が、5分〜15分続く、実施形態6の方法。
【0081】
実施形態8:ステップa)による通常動作モードから干渉物質検出モードへの切り替えは、少なくとも1つの電位ステップを、ポテンショスタットを用いて第1電極と第2電極との間の電位差に印加することを含む、実施形態1〜7のいずれか1つの方法。
【0082】
実施形態9:ステップb)による第3電極の電流−電圧特性の測定は、電位ステップの印加に続く測定期間において、第1電極と第3電極との間の電流を測定すること、および第3電極の電圧を測定することを含む、実施形態8の方法。
【0083】
実施形態10:電位ステップの印加後の測定期間は、0.5秒〜20秒続く、実施形態9の方法。
【0084】
実施形態11:電位ステップの印加後の測定期間は、1秒〜10秒続く、実施形態10の方法。
【0085】
実施形態12:第3電極の電流−電圧特性に生じるゼロ電流遷移の位置は、第1電極の電位にて判定される、請求項1〜11のいずれか1つの実施形態の方法。
【0086】
実施形態13:第1電極の電位におけるゼロ電流遷移の位置を評価することによって、干渉物質の種類が判定される、実施形態11の方法。
【0087】
実施形態14:分析物は、デフォルト位置において、ある種の干渉物質が存在しない場合にゼロ電流遷移を示すことが知られており、デフォルト位置の電圧値は、ある種の干渉物質のゼロ電流遷移の位置の電圧値と異なる、実施形態13の方法。
【0088】
実施形態15:デフォルト位置に対する電流−電圧特性におけるゼロ電流遷移の位置の変位から導き出される値が、ある種の干渉物質の基準として使用される、実施形態14の方法。
【0089】
実施形態16:第3電極の電流−電圧特性に生じる少なくとも1つの電流プラトーの電流値が、第1電極の電位でさらに判定される、実施形態1〜15のいずれか1つの方法。
【0090】
実施形態17:干渉物質の量は、第1電極の電位において電流プラトーにおける電流値を評価することによって判定される、実施形態16の方法。
【0091】
実施形態18:少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサ中の寄与をもたらす場合、第3電極の電流−電圧特性に生じる2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つの位置は、第1電極の電位で判定される、実施形態16または17の方法。
【0092】
実施形態19:少なくとも1つのさらなる干渉物質の種類は、第1電極の電位の2つの異なる電流プラトー間における少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つの位置を評価することによって、および/または第1電極の電位における第1電極の電位に相当する電位での電流プラトーの合計について判定された値を評価することによって判定される、実施形態18の方法。
【0093】
実施形態20:バイオセンサは、全体的に埋め込み可能なバイオセンサまたは部分的に埋め込み可能なバイオセンサである、実施形態1〜19のいずれか1つの方法。
【0094】
実施形態21:バイオセンサは、分析物を連続的に監視するためのバイオセンサである、実施形態20の方法。
【0095】
実施形態22:バイオセンサは、皮下組織中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態21の方法。
【0096】
実施形態23:バイオセンサは、体液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態22の方法。
【0097】
実施形態24:バイオセンサは、間質液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態23の方法。
【0098】
実施形態25:バイオセンサは、血液中の分析物の連続測定のためのバイオセンサである、実施形態24の方法。
【0099】
実施形態26:分析物はグルコースを含む、実施形態21〜25のいずれか1つの方法。
【0100】
実施形態27:酵素はグルコースオキシダーゼの1つである、実施形態26の方法。
【0101】
実施形態28:干渉物質は、内在性干渉物質および外在性干渉物質のうちの1つであり、干渉物質は、分析物のレベルに影響を及ぼすことが可能である、実施形態19〜27のいずれか1つの方法。
【0102】
実施形態29:内在性干渉物質は、尿酸である、実施形態28の方法。
【0103】
実施形態30:外在性干渉物質は、医薬化合物またはその代謝産物である、実施形態28または29の方法。
【0104】
実施形態31:外在性干渉物質が、アスコルビン酸、アセチルサリチル酸、パラセタモールまたはアセトアミノフェンのうちの1つである、実施形態30の方法。
【0105】
実施形態32:バイオセンサの動作を検証する、および/またはバイオセンサを較正する方法であって、少なくとも1つの干渉物質の少なくとも1つの所定の項目に対し、実施形態1〜31のいずれか1つの方法を実行するステップ、および第3電極の少なくとも1つの電流−電圧特性、または電流−電圧特性から得られる少なくとも1つの特性値を、対応する干渉物質の項目と共に記憶するステップを含む方法。
【0106】
実施形態33:ゼロ電流の電圧値と、少なくとも1つのさらなる干渉物質がバイオセンサにおいて寄与をもたらす場合における、第3電極の電流−電圧特性における2つの異なる電流プラトー間の少なくとも1つの電圧遷移の少なくとも1つのさらなる電圧値とは、少なくとも1つの特性値として判定される、実施形態32の方法。
【0107】
実施形態34:第3電極の電流−電圧特性における電流プラトーの電流値、および/または第1電極の電位に相当する電位における電流プラトーの合計について判定される値は、少なくとも1つの特性値としてさらに判定される、実施形態32または33の方法。
【0108】
実施形態35:少なくとも1つの干渉物質の項目と、第3電極の電流−電圧特性またはその少なくとも1つの特性値との間の関係が、少なくとも1つの較正関数として判定され、記憶される、実施形態32〜34のいずれか1つの方法。
【0109】
実施形態36:少なくとも1つの較正関数は、少なくとも1つの評価ユニットに接続されている少なくとも1つのデータ記憶装置に記憶され、評価ユニットは、実施形態1〜35のいずれか1つの方法ステップを完全にまたは部分的に実行するように構成される、実施形態35の方法の使用。
【0110】
本発明のさらなる詳細が、以下の好ましい実施形態の開示から得られてもよい。実施形態の特徴は、独立した方法で、または任意の組み合わせで実現されてもよい。本発明は、実施形態に限定されない。実施形態は、図面に概略的に示されている。図中の同一の参照符号は、同一の要素または機能的に同一の要素またはそれらの機能に関連して互いに対応する要素を指す。