【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決される。さらなる実施形態が、従属請求項及び以下の説明に組み込まれる。
【0008】
本発明の後述の第1の態様が、X線像形成システム、X線像形成システムを動作させる方法、コンピュータプログラム要素、及びコンピュータ可読媒体に等しく適用されることが留意されなければならない。
【0009】
本発明の第1の態様は、放射線ディテクターに関し、特に、X線ディテクターに関する。放射線ディテクターは、シンチレーターと、シンチレーターに光学的に結合された光センサーと、電子モジュールとを備える。電子モジュールは、電荷積分器と比較器とを備える電流−周波数コンバーターを備える。電流−周波数コンバーターは、測定サイクル中に光センサーにより生成及び/又は出力された電荷を積分し、電荷と相関した周波数をもつパルス状信号に変換するように構成される。従って、パルスは、単位時間当たりの電荷と相関した、すなわち光センサーにより生成された電流と相関した周波数をもつ。その中で、電子モジュールは、電流−周波数コンバーターにバイアス電流を供給するため、及び、パルス状信号の周波数オフセットを生成するための電流源を備える。電子モジュールは、電荷積分器による電荷の積分を中断するための中断デバイスを備える。電子モジュールは、パルス状信号の周波数を決定するための論理モジュールをさらに備え、論理モジュールは、放射源のオフ状態を決定し、放射源のオフ状態を決定すると中断デバイスを始動させるように構成される。
【0010】
本発明の第1の態様を言い換えると、放射線ディテクターは、X線光子などの放射粒子のフラックスを可視光に変換するためのシンチレーターを備える。この可視光は、次に、光センサーにより電荷に変換され、光センサーは、シンチレーターにより出力された可視光を電荷に変換するためのフォトダイオードを備える。測定サイクル中に光センサーにより生成及び/又は出力された電荷は、次に、既定の電荷閾値に到達するまで、段階的に、すなわち決定の量及び/又は部分の電荷ごとに、電荷積分器により積分され、既定の閾値に到達すると、比較器によりパルス状信号の単一パルスが生成される。従って、光センサーにより生成された電荷は、測定サイクル中、連続的に、積分されて、測定サイクル中に生成された電荷を表す周波数をもつデジタルパルス状信号に変換される。電子モジュールのコンポーネントを実行可能な、及び/又は適切な動作点に保つために、バイアス電流が電流−周波数コンバーターに供給される結果、一定の電流、すなわち単位時間当たりの電荷が電荷積分器に供給され、結果的に、パルス状信号の一定の周波数オフセットをもたらす。この周波数オフセットは、放射線ディテクターの照射中に光センサーにより生成された電荷によりもたらされる信号と重ね合わされることによりパルス状信号を生成する。電流−周波数コンバーターにより出力されたパルス状信号の周波数は、最後に、論理モジュールにより決定される。この電流から周波数への変換は、基本的に、パルス状信号の周波数を決定することにより、何桁もの大きさのダイナミックレンジにわたって高精度にX線フラックスを決定することを可能にする。
【0011】
中断デバイスにより、電荷積分器の電荷積分及び/又は電荷積分器の電荷積分機能は、中断、抑制、抑止、及び/又は停止され得る。放射線ディテクターの論理モジュールは、放射線及び/又は実際の像形成工程に関連した放射線が放射線ディテクターに当たらない放射源のオフ状態を決定するように構成される。放射源のオフ状態を決定したことに応答して、及び/又は、放射源のオフ状態を決定した後、電荷積分器による電荷積分が中断、抑制、抑止、及び/又は停止されるように、論理モジュールが中断デバイスを始動させる。
【0012】
このアプローチは、X線フラックス変調用途に特に有益である。これらの用途では、X線源はパルスモードで動作させられ、X線源がオンとオフとに交互に完全にスイッチングされるか、又はX線源が非一定の管電流を使用して動作させられ、放射線ディテクターが、投影データの獲得のために使用される、つまりは像再現のために使用される決定の時間インターバル中にのみX線光子の関連フラックスにより照射される。
【0013】
従って、放射源のオフ状態を決定すること、及び、電荷積分器の電荷積分を中断することにより、例えばフラックス変調用途において、放射線ディテクターが照射されない、及び/又は、像再現に関連したX線フラックスにより照射されない期間中、バイアス電流がパルス状信号に寄与しないこと、すなわち、バイアス電流が電流−周波数コンバーターによりデジタル化されないことが確実にされる。従って、放射源のオフ状態中、1/fノイズなどのバイアス電流のノイズが抑制される。言い換えると、オフ状態を決定し、オフ状態を決定すると電荷積分を中断することにより、電荷が光センサーにより生成されなければならない期間である測定サイクル中、及び/又は、電荷が電荷積分器により積分されなければならない期間である積分期間中、バイアス電流のみがノイズに寄与することが確実にされる。
【0014】
放射源の「オフ状態」という用語は、放射粒子がディテクターに当たらない、及び/又は、投影データの獲得に関連した放射粒子のフラックスがディテクターに当たらない期間及び/又は時間インターバルを表す。X線フラックス変調用途について述べると、「オフ状態」は、像再現及び/又は投影データの獲得のために使用されないX線フラックスが生成されるように、X線源が完全にオフにスイッチングされる、及び/又は小さな管電流しかX線管に供給されない状態を表す。
【0015】
従って、「測定サイクル」という用語は、像再現のための投影データを獲得するために、放射粒子のフラックス、例えばX線フラックスにより生成されたパルス状信号が放射線ディテクターにより検出される期間及び/又は時間インターバルを表す。測定サイクルは、放射粒子がディテクターに当たる、及び/又は、投影データの獲得に関連した放射線フラックスがディテクターに当たる放射源のオン状態と少なくとも同じ長さである。しかし、測定サイクルは、また、オン状態より長い。測定サイクルは、また、光センサーからの電荷及び/又はバイアス電流が電荷積分器により積分される積分期間を表す。
【0016】
概して、「中断デバイス」は、電荷積分器の電荷積分を中断、抑止、及び/又は抑制するための中断モジュール、中断ユニット、及び/又は中断器を表す。例示として、これは、電荷積分器を短絡することを介して、及び/又は、電荷積分器をグランド電位に接続することを介して達成される。例えば、電荷積分器の積分コンデンサが短絡される。さらに、電荷−周波数コンバーターに対するバイアス電流の供給は、中断デバイスにより抑制及び/又は中断される。従って、中断デバイスは、電荷積分器によるバイアス電流の積分が抑制されるように、バイアス電流を流出させる、及び/又は除去するように構成される。
【0017】
「論理モジュール」は、特に、デジタル信号、サンプルデータ、出力デジタル信号、及び/又は出力データを処理するように構成される。論理モジュールは、例えば、ディスクリート型論理モジュール、ディスクリート型論理ユニット、処理ユニット、及び/又はプロセッサを表す。
【0018】
一実施形態によると、論理モジュールは、放射源のオフ状態を決定した後、パルス状信号のさらなるパルスを検出すると、中断デバイスを始動させるように構成される。従って、論理モジュールは、さらなるパルスを検出したことに応答して、及び/又は、さらなるパルスを検出した後、中断デバイスを始動させるように構成される。言い換えると、論理モジュールは、2つの状態が満たされたとき、中断デバイスを始動させるように構成され、第1の条件は、放射源のオフ状態が決定されることであり、第2の条件は、オフ状態を決定した後、パルス状信号のさらなるパルスが検出されることである。しかし、両方の状態が、また、同時に満たされることもある。さらなるパルスは、例えば、放射源がオフ状態にスイッチングされた後、バイアス電流により生成される。さらなるパルスを待つこと、及び、さらなるパルスの検出後に中断デバイスを始動させることにより、電荷積分器がほとんど電荷を蓄えなくなるように、従って、後続の測定サイクルのために準備されるように、電荷積分器の電荷がさらなるパルスに変換された直後にのみ中断デバイスが始動されることが確実にされる。従って、電荷積分器がリセットされ、その結果、電荷積分器に残っていれば後続の測定サイクルのパルス状信号に寄与するおそれのある電荷が、電荷積分器にほとんど残らない。これは、投影データの獲得の全体的な精度を向上させ、及び/又は改善する。
【0019】
一実施形態によると、論理モジュールは、放射源のオフ状態を表す、及び/又はオン状態を表す制御信号を受信することにより、放射源のオフ状態を決定するように構成される。例示として、制御信号は、例えば、X線像形成システムの制御装置から直接受信され、制御装置は、放射源をオン及び/又はオフに、すなわちオン状態及び/又はオフ状態にスイッチングするように構成される。さらに、制御信号は、放射源をオフ状態及び/又はオン状態にスイッチングするための、制御装置のスイッチング信号と相関する。これは、オフ状態が論理モジュールにより時間遅延なく信頼可能に決定されることを確実にする。
【0020】
一実施形態によると、中断デバイスが電子スイッチを備え、論理モジュールは、電子スイッチを作動させることにより中断デバイスを始動させるように構成される。電子スイッチは、特に、半導体ベースのスイッチ、例えば、例として、トランジスタ、サイリスタ、電界効果トランジスタ、金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ、相補型金属−酸化物−半導体などである。電子スイッチは、従って、スイッチのゲート端子に電気信号を提供することにより作動するようにされる。概して、電子スイッチを使用することは、小型かつ信頼可能な回路を使用して、ある程度高速なスイッチング、つまりは、中断デバイスのある程度高速な始動を可能にする。
【0021】
一実施形態によると、電子スイッチが、電流源と電流−周波数コンバーターとを相互接続する供給線に接続され、電子スイッチが、グランド電位に供給線を接続するように構成される。このように、中断デバイスが始動されたとき、バイアス電流が除去され、及び/又は流出させられ、それにより、電荷積分器の電荷積分を信頼可能に中断する。
【0022】
一実施形態によると、電流−周波数コンバーターの電荷積分器が積分コンデンサを備え、中断デバイスの電子スイッチは、電荷積分器の積分コンデンサを短絡するように構成される。スイッチは、積分コンデンサと並列に構成され、スイッチの作動時にバイアス電流のためのバイパス経路を提供する。これは、積分コンデンサから任意の電荷が除去され、及び/又は流出させられることにより、積分コンデンサ及び/又は電荷積分器をリセットすることを確実にする。
【0023】
本発明の第2の態様は、ここまでに説明されるように、及び以下で説明されるように、X線を発するための放射源と、放射線ディテクターとを備えるX線像形成システムに関する。従って、放射線ディテクターは、X線ディテクターを表し、放射源は、X線管などのX線源を表す。特に、X線像形成システムは、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)像形成システムを表す。
【0024】
一実施形態によると、放射源は、グリッド制御X線管である。X線管は、X線管のアノードとカソードとの間に配置されたグリッドを備える。X線管内で、アノードからカソードまでの電子フラックスは、アノードにおけるX線光子の生成を抑止するために、グリッドに供給される負の制御電位を使用してオフにスイッチングされる。従って、X線像形成システムは、例えば、X線管グリッドスイッチングなどの、高速X線フラックス変調性能をもつCT像形成システムを表す。その中で、スイッチング時間は、1μ秒未満であり、フラックス変調は、CTのためのまばらな角度サンプリングを行うために使用される。加えて、パルス幅変調が、積分期間及び/又は測定サイクル内の限られた時間インターバルのみにわたって放射線ディテクターを照射するために使用される。
【0025】
一実施形態によると、X線像形成システムは、スイッチング信号により放射源をオン状態とオフ状態とに交互にスイッチングするように構成された制御装置をさらに備え、放射線ディテクターの論理モジュールは、制御装置のスイッチング信号に基づいて、放射源のオフ状態を決定するように構成される。例示として、オン状態において、X線管のグリッドに電位が与えられない、及び/又は、X線管のグリッドに正電位が印加されるのに対し、オフ状態において、X線光子の生成を抑止するために負電位がグリッドに与えられる。論理モジュールが制御信号に基づいて放射源のオフ状態を決定し得、その制御信号がスイッチング信号と相関することにより、オフ状態を信頼可能に決定することを可能にする。さらに、スイッチング信号は、オフ状態を決定するために論理モジュールに制御信号として直接提供される。
【0026】
本発明の第3の態様は、放射線ディテクターと放射源とを含むX線像形成システムの作動方法に関する。本方法は、
− シンチレーターに光学的に結合された光センサーを備える放射線ディテクターを照射することにより、X線像形成システムの測定サイクル中、電荷を生成するステップと、
− 電荷積分器を含む電流−周波数コンバーターが、電荷を積分し、測定サイクル中に生成された電荷を表す周波数をもつパルス状信号に変換するステップと、
− 電流源が、バイアス電流を電流−周波数コンバーターに供給するステップと、
− 放射線ディテクターの論理モジュールが、放射源のオフ状態を決定するステップと、
− オフ状態を決定した後、電荷積分器による電荷の積分を中断するステップと、
を有する。
【0027】
ここで、測定サイクル中に生成された電荷は、パルス状信号を生成するために、決定の一部及び/又は電荷量において段階的に積分される。言い換えると、光センサーにより生成された電荷は、パルス状信号へと連続的に積分されてデジタル化される。
【0028】
ここまでに説明されるような、及び以下で説明されるような放射線ディテクターの特徴及び/又は要素は、X線像形成システム及び/又は方法の特徴及び/又は要素であることが留意されなければならない。逆も同様であり、ここまでに説明されるような、及び以下で説明されるようなX線像形成システム及び/又は方法の特徴は、放射線ディテクターの特徴及び/又は要素である。
【0029】
一実施形態によると、本方法は、オフ状態を決定した後、パルス状信号のさらなるパルスを検出するステップをさらに有し、さらなるパルスが検出された後、電荷積分器による電荷の積分が中断される。
【0030】
一実施形態によると、電荷の積分を中断するステップは、電流−周波数コンバーターの電荷積分器をリセットするステップを有する。
【0031】
一実施形態によると、電荷の積分を中断するステップは、電荷積分器の積分コンデンサを短絡するステップを有する。
【0032】
代替的に、又は追加的に、電荷の積分を中断するステップは、供給線であって、本供給線を介してバイアス電流が電流−周波数コンバーターに供給されるその供給線を、グランド電位に接続するステップを有する。
【0033】
本発明の第4の態様は、コンピュータプログラム要素に関し、本コンピュータプログラム要素は、X線像形成システムの制御装置において実行されたとき、ここまでに説明されるように、及び以下で説明されるように、方法のステップを実行するように制御装置に命令する。
【0034】
本発明の第5の態様は、コンピュータ可読媒体に関し、コンピュータ可読媒体上のコンピュータプログラム要素が、X線像形成システムの制御装置において実行されたとき、ここまでに説明されるように、及び以下で説明されるように、方法のステップを実行するように制御装置に命令する。
【0035】
コンピュータ可読媒体は、フロッピーディスク、ハードディスク、USB(ユニバーサルシリアルバス)記憶デバイス、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)、及びEPROM(消去可能でプログラム可能な読み出し専用メモリ)である。コンピュータ可読媒体は、また、プログラムコードをダウンロードすることを可能にする、インターネットなどのデータ通信ネットワークである。
【0036】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。
【0037】
本発明の主題は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照しながら、以下でさらに詳細に説明される。