特許第6596219号(P6596219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596219
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20191010BHJP
   B41J 2/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B41J2/01 203
   B41J2/02
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-80510(P2015-80510)
(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公開番号】特開2016-198941(P2016-198941A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228402(JP,A)
【文献】 特開2014−024294(JP,A)
【文献】 特開2015−033821(JP,A)
【文献】 米国特許第06533385(US,B1)
【文献】 特開2010−137528(JP,A)
【文献】 特開2014−188960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインに取付けられたエンコーダから出力されるエンコーダパルスを用いて、複数ノズルの印字制御を行うインクジェット記録装置であって、
前記複数ノズルのノズルごとに、印字の文字幅を個別に設定する入力部と、
前記入力部の入力情報に応じた文字幅の印字を制御する制御部を有し、
前記入力部は、前記複数ノズルのノズルごとに、複数の縦ドット列で構成される印字文字の縦ドット列の印字間隔を、前記エンコーダから出力されるエンコーダパルスのパルス数で設定するものであり、
前記制御部は、前記入力部で設定されたパルス数に基づき、各ノズルでの印字文字の縦ドット列の印字間隔を制御して印字するものであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
搬送ラインに取付けられたエンコーダから出力されるエンコーダパルスを用いて、複数ノズルの印字制御を行うインクジェット記録装置であって、
前記複数ノズルのノズルごとに、印字の文字幅を個別に設定する入力部と、
前記入力部の入力情報に応じた文字幅の印字を制御する制御部を有し、
前記入力部は、前記複数ノズルのノズルごとに、複数の縦ドット列で構成される印字文字の縦ドット列の前後に挿入する印字に使用しない粒子数を設定するものであり、
前記制御部で、前記入力部で設定された印字に使用しない粒子数に基づき、各ノズルでの印字文字幅を制御して印字するものであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
搬送ラインに取付けられたエンコーダから出力されるエンコーダパルスを用いて、複数ノズルの印字制御を行うインクジェット記録装置であって、
前記複数ノズルのノズルごとに、印字の文字幅を個別に設定する入力部と、
前記入力部の入力情報に応じた文字幅の印字を制御する制御部を有し、
前記入力部は、前記複数ノズルのノズルごとに、複数の縦ドット列で構成される印字文字の縦ドット列の印字間隔を、前記エンコーダから出力されるエンコーダパルスのパルス数で設定するものか、前記複数ノズルのノズルごとに、複数の縦ドット列で構成される印字文字の縦ドット列の前後に挿入する印字に使用しない粒子数を設定するものかを選択して、設定できるものであり、
前記制御部は、前記入力部で設定された情報に基づき、各ノズルでの印字文字幅を制御して印字するものであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電制御方式のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2010−228402号公報(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1には、「書出し時間をノズル毎に設定できることにより、ノズル間の書出し位置のズレを無くすことのできるインクジェット記録装置の実現が可能となる。」と記載されている。(要約参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−228402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術では、共有する1つのエンコーダのパルスに基づいて各ノズルでのインク吐出タイミングを制御している。
【0006】
一方で、ノズルごとに文字幅や粒子使用率を異なるように設定した場合、エンコーダパルスに同期して各ノズルでインクを噴出するため、2つのノズルで同じ印字ピッチとなってしまい、図2(a)に示すように広い印字ピッチのノズルに合ったエンコーダパルスで印字を行うと、狭い印字ピッチの印字結果が間延びし、図2(b)に示すように狭い印字ピッチのノズルに合ったエンコーダパルスで印字を行うと、広い印字ピッチの印字結果が狭まるという課題があった。
【0007】
そこで本発明では、複数ノズルで印字を行う際の印字品質を向上するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、搬送ラインに取付けられたエンコーダから出力されるエンコーダパルスを用いて、複数ノズルの印字制御を行うインクジェット記録装置であって、前記複数ノズルのノズルごとに、印字の文字幅を個別に設定する入力部と、前記入力部の入力情報に応じた文字幅の印字を制御する制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数ノズルで印字を行う際の印字品質を向上するインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1(a)】ツインノズルを有するインクジェット記録装置の外観斜視図である。
図1(b)】インクジェット記録装置の全体構成のシステムブロック図である。
図1(c)】ツインノズルを縦方向に配置したときの印字動作である。
図2(a)】従来のツインノズルがエンコーダ有り印字を行ったときの印字結果例である。(エンコーダパルス広い)
図2(b)】従来のツインノズルがエンコーダ有り印字を行ったときの印字結果例である。(エンコーダパルス狭い)
図3(a)】第一の実施例にかかるエンコーダパルスの間引き印字を行った場合の印字結果例である。
図3(b)】エンコーダパルス入力時の印字フローチャートYである。
図4(a)】第二の実施例にかかるダミードットを挿入した場合の印字イメージである。
図4(b)】ダミードットを挟んだ場合の印字結果例である。
図4(c)】エンコーダパルス入力時の印字フローチャートZである。
図5(a)】印字に必要な印字要素群である。
図5(b)】ツインノズル間の異ピッチ印字制御の実行可否を選択する画面である。
図5(c)】ツインノズル間の異ピッチ印字制御実行時のフローチャートMである。
図6(a)】書き出し位置が等しい場合、第一の実施例にかかるエンコーダパルスの間引き印字を行った場合の印字結果例である。
図6(b)】書き出し位置が等しい場合、第二の実施例にかかるダミードットを挟んだ場合の印字結果例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本発明の一実施例における形態について、下記の通り説明する。
図1(a)は、ツインノズルを有するインクジェット記録装置の外観斜視図を示す。図1(b)は、図1(a)のインクジェット記録装置の全体構成のシステムブロック図を示す。また、図1(c)は、インクジェット記録装置のツインノズルを縦方向に配置したときの印字動作を説明する構成図を示す。
【0012】
図1(a)のインクジェット記録装置の外観斜視図において、インクジェット記録装置本体1は、装置本体の外面上部に配置した表示パネル3を持ち、ツインノズルを搭載した印字ヘッド2を外部に備え、装置本体1と印字ヘッド2の間は導管4で接続された構成であることを示している。
【0013】
図1(b)のインクジェット記録装置の全体構成のシステムブロック図において、インクジェット記録装置本体1は、全体動作を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)5、一時データ記録部のRAM(ランダムアクセスメモリ)6、プログラム格納部のROM(リードオンリーメモリ)7、印字内容などの情報を表示する表示装置8、パネルIF(インターフェース)9、印字情報や微調整用の印字データを入力するパネル10、被印字物検知回路11、被印字物を検知する印字物センサ12、外部信号検知回路13
搬送ラインの速度を取得するエンコーダ14、装置本体内でインク及び溶剤の供給・回収の経路に用いる電磁弁15、インクを供給する供給ポンプ16、ツインノズルのうちのノズルα、ノズルβ、およびノズルα・βそれぞれに存在する、印字制御に使用する各種装置を有する。
【0014】
印字制御に使用する各種装置とは、ノズルαで説明すると、ガターα(20a)よりインクを回収するための回収ポンプα17a、ノズルαの前段の圧力を計測する圧力センサα18a、ノズルαから噴出するインク粒子に最適な帯電タイミングを検出するAPH(オートフェーズ)検出回路α19a、ノズルαから噴出した印字に使用しないインク粒子を回収するガターα20a、ノズルαからインク粒子を作成するためノズルαに印加する励振周波数発生回路α21a、ノズルαで被印字物に印字するため文字信号を発生する文字信号発生回路α22a、文字信号をノズルαのインク粒子に帯電させる帯電電極α23a、偏向電極α(a25)に偏向電圧を印加する偏向電圧発生回路α24a、偏向電極α25aのことである。
【0015】
ノズルβも同様に、回収ポンプβ17b、圧力センサβ18b、APH検出回路β19b、ガターβ20b、励振周波数発生回路β21b、文字信号発生回路β22b、帯電電極β23b、偏向電圧発生回路β24b、偏向電極β25bを有する。これらは、信号の送受信を行うバス26でそれぞれが接続される。
【0016】
インクジェット記録装置は、MPU5でバス26を介して、RAM6、ROM7、表示装置8、パネル10、被印字物検知回路11、供給ポンプ16、回収ポンプ17a、17b、圧力センサ18a、18b、APH検知回路19a、19b、ガター20a、20b、励振周波数発生回路21a、21b、ノズルα、β、文字信号発生回路22a、22b、帯電電極23a、23b、偏向電圧発生回路24a、24b、偏向電極25a、25b等を制御する。
【0017】
ROM7には、インクジェット記録装置を制御するためのプログラムが格納されており、MPU5はこのプログラムに基づいて各部位を制御する。また、パネル10は、タッチパネル方式となっており、画面上でデータを入力でき、入力したデータはRAM6に記憶され保存される。
【0018】
次にインクジェット記録装置について、2個のノズルαおよびノズルβが搬送ライン28上にある製品である被印字物29に対して印字を行うときの印字動作について、図1(c)を用いて説明する。
【0019】
まず、印字物センサ12で製品である被印字物29の位置を検知する。次にインク容器27から供給ポンプ16によって供給されたインクがノズルαおよびノズルβを通過する。このとき、ノズルαでは、インクを励振周波数発生回路22aで励振させてインク粒子30aを形成し、RAM6上の印字データに合わせて文字信号発生回路22aで帯電電圧を発生させ帯電電極23aでかける。帯電電極23aでかける帯電電圧は、印字する内容によって変化する。
【0020】
荷電されたインク粒子30は、偏向電圧発生回路24aで出力された偏向電圧を印加した偏向電極25aを通過するときにかけられた帯電電圧に応じて偏向し、製品である被印字物29に対して印字ドットを形成し印字を行う。荷電されないインク粒子30aは印字に使用されずにガター20aから回収ポンプ17aによって回収されインク容器25に戻る。ノズルβでも同様の制御によって印字を実行する。
【0021】
ここで、印字を行う際の印字データや各種印字条件を設定し変更するときは、パネル10や外部信号検知装置13など入力部から得た情報やRAM6のデータを元に、ROM7内のプログラムを用いてMPU5で解析し設定を変更する。設定変更後は、変更後の値をRAM6に記憶し保存するとともに、設定変更後は、表示装置8や外部信号検知装置13にて現在設定を表示する。
【0022】
また、搬送ライン28の速度に合わせて印字するエンコーダ有り印字を行いたい場合、エンコーダ14から得たエンコーダパルスが搬送ライン28の速度変化を示すため、このエンコーダパルスに同期して印字を実行する。
【0023】
つまり、エンコーダ14から入力されたエンコーダパルスのエッジ検出タイミングで、帯電電極23を通過するインク粒子30の縦ドット1列分に、文字信号発生回路22から帯電電圧をかける。その後、インク粒子30は偏向電極25を通過するときにかけられた帯電電圧に応じて偏向し印字を行う。
【0024】
エンコーダを用いたツインノズル印字における、ノズル間の文字幅制御の第一の実施例について図3(a)、図3(b)を用いて説明する。図3(a)は、印字する文字幅をエンコーダパルスのパルス数に基づいて制御して印字を行った場合の印字結果例である。ここでは、文字幅をエンコーダパルスのパルス数に基づいて調整することを間引く(分周間引き)ということにする。
【0025】
この方法では、印字実行する前にあらかじめそれぞれのノズルの印字ピッチ(文字幅)を計算し、エンコーダパルスを間引かない場合には搬送ライン28からのエンコーダパルスをそのまま印字に使用し、エンコーダパルスを間引く場合には搬送ライン28からのエンコーダパルスを印字に使用するのに必要な分だけ整数分間引いて使用する。
【0026】
図3(a)では、ノズルαで印字する文字は一列の縦ドット数が10個の列を5列用いて構成し、ノズルβで印字する文字は一列の縦ドット数が7個の列を5列用いて構成するものとする。また、エンコーダパルスの間引き有無はそれぞれのノズルで設定できることとし、ノズルαではエンコーダパルス間引きを行い、ノズルβではエンコーダパルス間引きを行わない場合を示している。
【0027】
エンコーダ14および印字物センサ12は同一であるため、エンコーダパルスの動きおよび印字センサ信号53は同じタイミングで入り、ノズルαの印字結果57aは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号58入力時から書き出し位置59a経過分だけ、エンコーダパルス60がカウントしてから印字タイミング61aのタイミングで印字される。
【0028】
このとき、印字タイミング61aはエンコーダパルス60を整数倍間引いたときのタイミングであり、パルス間引き間隔62は一定である。ここでは、ノズルαで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの3パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0029】
一方、ノズルβの印字結果57bは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号58入力時から書き出し位置59b経過分だけ、エンコーダパルス60がカウントしてから印字タイミング61bのタイミングで印字される。
【0030】
ここでは、印字タイミング61bは間引きを行っていないため、ノズルβで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの1パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0031】
図3(b)は、本実施例のエンコーダパルスの間引き印字を行う際の印字フローチャートYである。外部信号検知回路13にエンコーダ14のエンコーダパルスが入力された場合、まずステップY1で、MPU5にてノズルαが分周間引きを行うかどうかを判定する。
【0032】
ノズルαが分周間引きを行う場合、ステップY2で初回印字タイミング61aを基準としてのエンコーダパルスの入力数をカウントアップしてから、ステップY3でエンコーダパルスの入力数が間引き数分経過したかチェックする。
【0033】
エンコーダパルスの入力数が間引き数経過したときは、間引き間隔62経過後の次の印字タイミング61aであるため、MPU5はエンコーダパルスを間引かずノズルαで印字することを判断し、ステップY4にてノズルαの文字信号発生回路22aを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23aにかける処理を行う。
【0034】
エンコーダパルスの入力数が間引き数経過していないときは、印字タイミング61aではないため、MPU5はエンコーダパルスを間引いてノズルαで印字しない。また、ノズルαが分周間引きを行わない場合、ステップY1の後でステップY4を実行し、ノズルαの文字信号発生回路22aを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23aにかける処理を行う。
【0035】
その後、ステップY5にて、MPU5にてノズルβが分周間引きを行うかどうかを判定する。ノズルβが分周間引きを行う場合、ステップY6で初回印字タイミング61bを基準としてのエンコーダパルスの入力数をカウントアップしてから、ステップY7でエンコーダパルスの入力数が間引き数分経過したかチェックする。
【0036】
エンコーダパルスの入力数が間引き数経過したときは、間引き間隔62経過後の次の印字タイミング61bであるため、MPU5はエンコーダパルスを間引かずノズルβで印字することを判断し、ステップY8にてノズルβの文字信号発生回路22bを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23aにかける処理を行う。
【0037】
エンコーダパルスの入力数が間引き数経過していないときは、印字タイミング61bではないため、MPU5はエンコーダパルスを間引いてノズルβで印字しない。
【0038】
また、ノズルβが分周間引きを行わない場合、ステップY5の後でステップY8を実行し、ノズルβの文字信号発生回路22bを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23bにかける処理を行う。なお、印字フローチャートYは、ROM7内に格納されており、適宜MPU5が呼出して制御する。
【0039】
上記の通り、エンコーダパルスを間引いて印字することで、複数ノズルの印字において、共有するエンコーダを用いて印字を行う場合であっても、複数ノズルのノズルごとに文字幅を異なるように制御することができ、複数ノズルで印字を行う際の印字品質を向上することができる。
【実施例2】
【0040】
エンコーダを用いたツインノズル印字における、ノズル間の文字幅制御の第二の実施例について、図4(a)、図4(b)、図4(c)を用いて説明する。本実施例は、実際に印字に使用するドットの前に印字に使用しないダミードットを挟み込んで、各ノズルごとに印字幅を個別に制御できるようにしたものである。
【0041】
まず、図4(a)を用いて印字に使用しないダミードットを挿入して印字タイミングを制御するしくみについて説明する。図4(a)は、印字に使用するインク粒子のドットの前に4つのダミードットを挿入する例である。
【0042】
被印字物29Bが印字物センサ12で検知されたとき、印字物センサ12の印字センサ信号63Bはセンサ入力64Bとなってインクジェット記録装置に入力される。インクジェット記録装置では、書き出し位置65B経過後だけエンコーダパルス66Bをカウントした後、カウント後の次エンコーダパルスを印字開始位置67Bとする。
【0043】
印字開始位置67Bから実際にインク粒子68Bを噴出するが、このとき、インク粒子68Bの前にダミードット70を4ドット噴出する。すると、ダミードットの飛行時間分だけ実際の印字開始位置71が遅れるため、印字結果69Bは印字結果69Aよりも印字位置がずれる。
【0044】
このようにダミードットを使用することで、実際の印字開始位置を変更することができる。ダミードットの設定方法は、ドット単位と列単位の2通りの方法で設定できる。
【0045】
図4(b)を用いて、ツインノズル印字におけるダミードットを用いたノズルごとの印字文字幅制御の例について説明する。
【0046】
図4(b)では、ノズルαでの印字において、ダミードットを挿入して文字幅を制御し、ノズルβでの印字においては、ダミードットを挿入せずにエンコーダパルスに基づいて印字するようにしている。
【0047】
この方法では、予めそれぞれのノズルの印字ピッチを計算し、ダミードットを挟み込まない場合には搬送ライン28からのエンコーダパルスをそのまま印字に使用し、ダミードットを挟み込む場合にはインク粒子間の任意位置にダミードットを入れて使用する。エンコーダ14および印字物センサ12は同一であるため、エンコーダパルスの動きおよび印字センサ信号53は同じタイミングで入る。
【0048】
ノズルαのダミードットを挟み込む場合にて、ノズルαの印字結果72aは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号73入力時から書き出し位置74a経過分だけ、エンコーダパルス75がカウントしてから印字タイミング76aのタイミングで印字される。ここでは、印字開始位置に3ドットのダミードットを挿入し、印字列間には2列分のダミードットを挿入している。
【0049】
一方、ノズルβのダミードットを挟み込まない場合にて、ノズルβの印字結果72bは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号73入力時から書き出し位置74b経過分だけ、エンコーダパルス75がカウントしてから印字タイミング76bのタイミングで印字される。ここでは、印字タイミング61bは間引きを行っていないため、ノズルβで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの1パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0050】
図4(c)は、本実施例のダミードットを用いた印字を行う際の印字フローチャートZである。外部信号検知回路13にエンコーダ14のエンコーダパルスが入力された場合、まずステップZ1で、MPU5にてノズルαがダミードット挟み込みを行うかどうかを判定する。
【0051】
ノズルαでダミードット挟み込みを行う場合、MPU5はダミードット挟み込みを実施してノズルαで印字することを判断し、ステップZ2にてノズルαの印字内容に対する、ダミードット挟み込み処理を実行してから、ステップZ3にてノズルαの文字信号発生回路22aを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23aにかける処理を行う。
【0052】
また、ノズルαがダミードット挟み込みを行わない場合、ステップZ1の後でステップZ3を実行し、ノズルαの文字信号発生回路22aを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23aにかける処理を行う。
【0053】
その後、ステップZ4にて、ノズルβがダミードット挟み込みを行う場合、MPU5はダミードット挟み込みを実施してノズルβで印字することを判断し、ステップZ5にてノズルβの印字内容に対する、ダミードット挟み込み処理を実行してから、ステップZ6にてノズルβの文字信号発生回路22bを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23bにかける処理を行う。
【0054】
また、ノズルβがダミードット挟み込みを行わない場合、ステップZ4の後でステップZ6を実行し、ノズルβの文字信号発生回路22bを制御し帯電電圧を発生させ帯電電極23bにかける処理を行う。なお、印字フローチャートZは、ROM7内に格納されており、適宜MPU5が呼出して制御する。
【0055】
上記の通り、ダミードットを挿入して印字を制御することで、複数ノズルの印字において、共有するエンコーダを用いて印字を行う場合であっても、複数ノズルのノズルごとに文字幅を異なるように制御することができ、複数ノズルで印字を行う際の印字品質を向上することができる。
【実施例3】
【0056】
第一の実施例及び第二の実施例で説明したツインノズル間の文字幅制御の選択機能について本実施例で説明する。
【0057】
図5(a)は、印字に必要な印字要素群77であり、印字ピッチを構成する要素として、印字の文字サイズ78、印字に使用する縦ドット数79、文字幅80、粒子使用率81、書き出し位置82、搬送ライン速度83、エンコーダパルス84がある。そのうち、印字ピッチの計算には、文字サイズ78、縦ドット数79、文字幅80、粒子使用率81を用いる。
【0058】
図5(b)は、ツインノズル間の文字幅個別制御(異ピッチ印字制御)の実行可否を選択する画面85A、85B、85Cである。画面85A、85B、85Cはノズルαおよびノズルβそれぞれで存在し、画面上で選択画面を設けることで、必要なときに異ピッチ印字制御を実行できるようにする。
【0059】
画面85Aは、項目「異ピッチ制御」86の選択肢を「しない」としたときの画面であり、画面85Bおよび85Cは、項目「異ピッチ制御」86の選択肢を「する」としたときの画面である。
【0060】
項目「異ピッチ制御」86の選択肢が「する」のとき、画面85Bおよび85Cには項目「異ピッチ制御方式」87と選択肢「分周方式」「ドット方式」が表示される。
【0061】
このうち画面85Bは、項目「異ピッチ制御方式」87の選択肢を「分周方式」とした場合であり、さらに項目「分周間引き率」88が表示される。これは、実施例1で説明したエンコーダパルスの間引き印字制御により異ピッチ印字制御を実行するときの画面である。
【0062】
画面85Cは、項目「異ピッチ制御方式」87の選択肢を「ドット方式」とした場合であり、さらに項目「1列目の挿入ドット数」89および「途中挿入ドット列」90が表示される。これは、実施例1で説明したダミードットを用いた印字制御により異ピッチ印字制御を実行するときの画面である。
【0063】
なお、印字要素群77を入力する画面や、画面85A、85B、85Cは、表示装置8で表示し、パネル10で値を入力できる機能を設けてあり、入力結果はRAM6に記録されるとともに、ROM7内に格納されたプログラムが入力結果を必要とする際には適宜MPU5が呼出して制御する。
【0064】
図5(c)は、異ピッチ印字制御実行時のフローチャートMである。このフローチャートMは、インクジェット記録装置1が「印字可能状態」となった場合、または、「印字可能状態」でノズルαまたはノズルβでの印字内容が変更された場合に実行する。
【0065】
まずステップM1で、MPU5はノズルαの項目「異ピッチ制御」86aの選択肢を判定する。選択肢が「する」の場合は、MPU5はさらにステップM2で、ノズルαの項目「異ピッチ制御方式」87aの選択肢を判定する。選択肢が「分周方式」の場合は、MPU5はさらにステップM3で、項目「分周間引き率」88aからノズルαのエンコーダパルスの間引き間隔を計算する。
【0066】
選択肢が「ドット方式」の場合は、MPU5はさらにステップM4で、項目「1列目の挿入ドット数」89aおよび「途中挿入ドット列」90aからノズルαのダミードット追加位置を計算する。
【0067】
同様に、ステップM5で、MPU5はノズルβの項目「異ピッチ制御」86bの選択肢を判定する。選択肢が「する」の場合は、MPU5はさらにステップM6で、ノズルβの項目「異ピッチ制御方式」87bの選択肢を判定する。選択肢が「分周方式」の場合は、MPU5はさらにステップM7で、項目「分周間引き率」88bからノズルβのエンコーダパルスの間引き間隔を計算する。
【0068】
選択肢が「ドット方式」の場合は、MPU5はさらにステップM8で、項目「1列目の挿入ドット数」89bおよび「途中挿入ドット列」90bからノズルβのダミードット追加位置を計算する。
【0069】
以上で計算したもののうち、ステップM3の計算結果はフローチャートYのステップY5で、ステップM7の計算結果はフローチャートYのステップY10で、ステップM4の計算結果はフローチャートZのステップZ5で、ステップM8の計算結果はフローチャートZのステップY11で、それぞれ使用される。
【0070】
上記のことから、複数ノズルの印字において、共有するエンコーダを用いて印字を行う場合であっても、複数ノズルのノズルごとに文字幅を異なるように制御することができ、複数ノズルで印字を行う際の印字品質を向上することができる。
【実施例4】
【0071】
上記の各実施例においては、ノズルαとノズルβの書き出し位置が異なる場合についての説明だったが、ノズルαとノズルβの書き出し位置が等しい場合についても適用できる。これについて、図6(a)、図6(b)を用いて説明する。
【0072】
図6(a)は、ノズルαとノズルβの書き出し位置91が等しい場合、書き出し位置91以外の印字条件・印字文字を実施例1の図3(a)と同じとして印字を行った場合の印字結果例である。ノズルαではエンコータパルス間引きを行い、ノズルβではエンコーダパルス間引きを行わない場合を示している。
【0073】
エンコーダ14および印字物センサ12は同一であるため、エンコーダパルスの動きおよび印字センサ信号53は同じタイミングで入り、ノズルαの印字結果92aは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号58入力時から書き出し位置91経過分だけ、エンコーダパルス60がカウントしてから印字タイミング61aのタイミングで印字される。このとき、印字タイミング61aはエンコーダパルス60を整数倍間引いたときのタイミングであり、パルス間引き間隔62は一定である。ここでは、ノズルαで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの3パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0074】
一方、ノズルβの印字結果92bは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号58入力時から書き出し位置91経過分だけ、エンコーダパルス60がカウントしてから印字タイミング61bのタイミングで印字される。ここでは、印字タイミング61bは間引きを行っていないため、ノズルβで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの1パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0075】
図6(b)は、ノズルαとノズルβの書き出し位置93が等しい場合、書き出し位置93以外の印字条件・印字文字を実施例2の図4(b)と同じとして印字を行った場合の印字結果例である。ノズルαではダミードットを挿入して文字幅を制御し、ノズルβではダミードットを挿入せずにエンコーダパルスに基づいて印字する場合を示している。
【0076】
エンコーダ14および印字物センサ12は同一であるため、エンコーダパルスの動きおよび印字センサ信号53は同じタイミングで入り、ノズルαの印字結果94aは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号73入力時から書き出し位置93経過分だけ、エンコーダパルス75がカウントしてから印字タイミング76aのタイミングで印字される。ここでは、印字開始位置に3ドットのダミードットを挿入し、印字列間には2列分のダミードットを挿入している。
【0077】
一方、ノズルβのダミードットを挟み込まない場合にて、ノズルβの印字結果94bは、印字物センサ12で検知した印字センサ信号73入力時から書き出し位置93経過分だけ、エンコーダパルス75がカウントしてから印字タイミング76bのタイミングで印字される。ここでは、印字タイミング61bは間引きを行っていないため、ノズルβで印字する文字の縦ドット列はエンコーダの1パルスごとに印字するように設定し、印字している。
【0078】
上記のことから、ノズルαとノズルβの書き出し位置が等しい場合についても、複数ノズルのノズルごとに文字幅を異なるように制御することができる。
【0079】
上記の各実施例においては、特にツインノズル機に対して説明したが、ノズルが3つ以上存在するマルチノズル機の場合でも、ノズルはそれぞれ独立して印字するため、エンコーダ使用時は印字ピッチの各ノズルで個別に制御し、印字することができる。
【0080】
また、ノズル配置が縦・横・斜めのいずれの方向でも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
α:ノズルα、β:ノズルβ、
1:インクジェット記録装置本体、2:印字ヘッド、3:表示パネル、4:導管、
5:MPU(マイクロプロセッシングユニット)、
6:RAM(ランダムアクセスメモリ)、7:ROM(リードオンリーメモリ)、
8:表示装置、9:パネルIF(インターフェース)、10:パネル、
11:被印字物検知回路、12:印字物センサ、13:外部信号検知回路、
14,14a,14b:エンコーダ、15:電磁弁、16:供給ポンプ
17a,17b:回収ポンプ、
18a,18b:圧力センサ、
19a,19b:APH(オートフェーズ)検出回路、
20a,20b:ガター、
21a,21b:励振周波数発生回路、
22a,22b:文字信号発生回路、
23a,23b:帯電電極、
24a,24b:偏向電圧発生回路、
25a,25b:偏向電極、
26:バス、27:インク容器、28:搬送ライン、29:被印字物、
30a,30b:インク粒子、
31:エンコーダ無し印字結果(1ノズル)、32:印字センサ信号、33:書き出し位置、
34:エンコーダ有り印字結果(1ノズル)、35:印字センサ信号、36:書き出し位置、
37:エンコーダパルス、38:印字タイミング、
39a,39b:エンコーダ無し印字結果(ツインノズル)、40:印字センサ信号、
41a,41b:書き出し位置、
42a,42b:エンコーダ有り印字結果(ツインノズル:広い)、43:印字センサ信号、
44a,44b:書き出し位置、45:エンコーダパルス、46:印字タイミング、
47a,47b:エンコーダ有り印字結果(ツインノズル:狭い)、48:印字センサ信号、
49a,49b:書き出し位置、50:エンコーダパルス、51:印字タイミング、
52a,52b:印字結果(エンコーダ複数個)、53:印字センサ信号、
54a,54b:書き出し位置、55a,56b:エンコーダパルス、
56a,56b:印字タイミング、
57a,57b:印字結果(パルス間引き)、58:印字センサ信号、
59a,59b:書き出し位置、60:エンコーダパルス、
61a,61b:印字タイミング、62:パルス間引き間隔、
29A,29B:被印字物、63A,63B:印字センサ信号、
64A,64B:センサ入力、65A,65B:書き出し位置、
66A,66B:エンコーダパルス、67A,67B:印字開始位置、
68A,68B:インク粒子、69A,69B:印字結果、
70:ダミードット、71:実際の印字開始位置、
72a,72b:印字結果(ダミードット)、73:印字センサ信号、
74a,74b:書き出し位置、75:エンコーダパルス、76:印字タイミング、
77:印字要素群、78:文字サイズ、79:縦ドット数、80:文字幅、
81:粒子使用率、82:書き出し位置、83:搬送ライン速度、
84:エンコーダパルス、
85A,85B,85C:本発明「異ピッチ印字制御」の実行可否を選択する画面、
86:項目「異ピッチ制御」、87:項目「異ピッチ制御方式」、
88:項目「分周間引き率」、89:項目「1列目の挿入ドット数」、
90:項目「途中挿入ドット列」、
91:書き出し位置、
92a,92b:印字結果(パルス間引き(書き出し位置91が同じ場合))、
93:書き出し位置、
94a,94b:印字結果(ダミードット(書き出し位置93が同じ場合))
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6(a)】
図6(b)】