特許第6596225号(P6596225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596225混合ガス調製装置および混合ガス調製方法
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  • 特許6596225-混合ガス調製装置および混合ガス調製方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596225
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】混合ガス調製装置および混合ガス調製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   G01N1/00 102D
   G01N1/00 101T
   G01N1/00 101S
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-90235(P2015-90235)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-206095(P2016-206095A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 智生
(72)【発明者】
【氏名】武藤 弘樹
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033362(JP,A)
【文献】 実開昭61−125744(JP,U)
【文献】 特開昭58−143235(JP,A)
【文献】 実開昭55−001724(JP,U)
【文献】 米国特許第06237392(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定体積の第一チャンバと、
当該第一チャンバより体積の大きい一定体積の第二チャンバと、
複数種のガス供給源のうちから選択された一のガス供給源からの原料ガスを当該第一チャンバに充填する原料ガス供給機構と、
当該第一チャンバ内に充填されたガスを大気圧/常温状態に調整する脱圧機構と、
当該第一チャンバ内のガスを当該第二チャンバに移送するガス移送機構と、
当該第一チャンバと前記複数種のガス供給源の一とを選択的に接続すると共に当該第一チャンバから当該第二チャンバへの原料ガスの移送回数をガス種に応じて制御する制御機構とを備えており、
前記第一チャンバおよび前記第二チャンバは、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成されており、
前記原料ガス供給機構は、前記複数のガス供給源が接続される複数の原料ガス導入部の各々から流路切り替え手段を介して前記第一チャンバに至る原料ガス供給流路と、当該原料ガス供給流路における流路切り替え手段より前記第一チャンバ側に設けられた第1の流路開閉バルブおよび第2の流路開閉バルブとを備えており、
前記脱圧機構は、前記第1の流路開閉バルブと第2の流路開閉バルブとの間に接続され、装置外部にガスを排出するためのガス排出部に至るガス排出流路と、当該ガス排出流路に設けられた第3の流路開閉バルブとを備えており、
前記ガス移送機構は、第一チャンバと第二チャンバとを第4の流路開閉バルブを介して接続するガス移送流路と、装置外部からエアを導入するためのエア導入部から圧力調整器および第5の流路開閉バルブを介して第一チャンバに至るエア導入流路とを備えており、
前記制御機構は、前記流路切り替え手段並びに前記第1の流路開閉バルブ乃至前記第5の流路開閉バルブの各々の開閉状態を制御して流路を切り替える機能を有することを特徴とする混合ガス調製装置。
【請求項2】
前記ガス移送機構は、前記エア導入流路における圧力調整器と第5の流路開閉バルブとの間に接続され、第6の流路開閉バルブを介して第二チャンバに至る分岐エア導入流路をさらに備えており、第二チャンバ内の混合ガスを第一チャンバに逆送可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の混合ガス調製装置。
【請求項3】
ガス特性を測定するためのガス用機器の校正用ガスの調製に用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混合ガス調製装置。
【請求項4】
請求項1に記載の混合ガス調製装置において実行される混合ガス調製方法であって、
流路切り替え手段の開閉状態を制御して複数種のガス供給源のうちから一のガス供給源を選択し、第1の流路開閉バルブおよび第2の流路開閉バルブを開状態とすると共に第3の流路開閉バルブ、第4の流路開閉バルブおよび第5の流路開閉バルブを閉状態とし、一定体積の第一チャンバ内に選択したガス供給源からの原料ガスを充填する充填工程と、
前記第1の流路開閉バルブ、前記第4の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを閉状態とすると共に前記第2の流路開閉バルブおよび前記第3の流路開閉バルブを開状態とし、当該第一チャンバ内に充填された原料ガスを大気圧/常温状態にする脱圧工程と、
前記第1の流路開閉バルブ、前記第2の流路開閉バルブおよび前記第3の流路開閉バルブを閉状態とすると共に前記第4の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを開状態とし、当該第一チャンバ内の原料ガスを一定体積の第二チャンバ内に移送する移送工程と
からなる一連のガス定量採取操作を、ガス種に応じて設定された回数繰り返して行うことにより混合ガスを調製することを特徴とする混合ガス調製方法。
【請求項5】
前記ガス移送工程を行った後、前記第1の流路開閉バルブ、前記第4の流路開閉バルブおよびエア導入流路における圧力調整器と前記第5の流路開閉バルブとの間に接続された前記第二チャンバに至る分岐エア導入流路に設けられた第6の流路開閉バルブを閉状態とし、前記第2の流路開閉バルブ、前記第3の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを開状態とし、前記第一チャンバ内および配管内に残留するガスを装置外部に排出することを特徴とする請求項4に記載の混合ガス調製方法。
【請求項6】
前記第一チャンバを、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成し、
前記移送工程においては、前記第一チャンバにおけるガス充填空間とピストンを挟んで反対側の空間内に装置外部からエアを導入して当該第一チャンバ内を昇圧することにより当該第一チャンバ内のガスを第二チャンバに移送させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の混合ガス調製方法。
【請求項7】
前記第4の流路開閉バルブおよび前記第6の流路開閉バルブを開状態とし、前記第1の流路開閉バルブ、前記第2の流路開閉バルブ、前記第3の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを閉状態とし、前記第二チャンバ内の混合ガスを前記第一チャンバに逆送し、前記脱圧工程を行って当該第一チャンバ内の混合ガスを大気圧/常温状態とした後、再び、前記移送工程を行って当該第二チャンバ内に移送し、
当該混合ガスを希釈するための希釈用ガスについて、前記定量採取操作を必要に応じて複数回繰り返し行うことにより前記第二チャンバ内の混合ガスを希釈して混合ガスの濃度を調整することを特徴とする請求項5に記載の混合ガス調製方法。
【請求項8】
前記第二チャンバを、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成し、
当該第二チャンバにおけるガス充填空間とピストンを挟んで反対側の空間内に装置外部からエアを導入して当該第二チャンバ内を昇圧することにより、当該第二チャンバ内のガスを排出させることを特徴とする請求項7に記載の混合ガス調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガス濃度装置や燃焼性ガスの熱量測定装置などのガス用機器の校正用ガスとして用いられる混合ガスを調製するための混合ガス調製装置および混合ガス調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの熱量を測定するための熱量測定装置としては、熱量測定対象ガスの熱伝導率に基づいて熱量を得る構成のもの、被測定ガスの密度に基づいて熱量を得る構成のもの、あるいは被測定ガスの屈折率に基づいて熱量を得る構成のものなどが用いられている。
このような構成の熱量測定装置においては、被測定ガスとしてのパラフィン系炭化水素ガスの熱量が、屈折率および密度とは比例関係にあることに基づいて熱量の測定がなされている。あるいは、被測定ガスとしてのパラフィン系炭化水素ガスの熱量が、熱伝導率とは反比例関係にあることに基づいて熱量の測定がなされている。パラフィン系炭化水素ガスの熱量は、被測定ガスの熱伝導率、密度あるいは屈折率の測定値から特定の計算式によって算出することによって求められる。
【0003】
而して、このような熱量測定装置においては、校正用ガス(標準ガス)により定期的に校正する必要がある。校正用ガスとしては、例えばパラフィン系炭化水素ガスなどの一種の特定の成分ガスまたは複数種の特定の成分ガスを混合した混合ガスが、例えば希釈用ガスによって所定濃度に希釈されたものが用いられる。
【0004】
一般に、混合ガスを生成する方法としては、例えば質量比混合法などが利用されている。例えば特許文献1には、成分ガスの供給系と精製ガスとしての希釈ガス供給系を合流連結して両ガスを混合させる混合器と、両供給系にそれぞれ介設されガスの流量を制御するそれぞれのマスフローコントローラとを備えた、ガス分析計のための校正ガスを調製する校正ガス調製装置が開示されている。
【0005】
一方、ガス濃度装置においても、センサの検出感度が経時的に変化するため、校正用ガスにより定期的に校正する必要があり、例えば、上記のような方法により調製された混合ガス(特定の成分ガスが希釈用ガスで希釈されたものを含む。)が校正用ガスとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−305027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、質量比混合法を利用した混合ガスの調製においては、例えばマスフローコントローラによる流量制御を行う場合には、ガス種によって出力が変わるため、精度(信頼性)が低い、という問題がある。また、このような方法を利用した装置は、概して大型のものとなりやすく、設備費用が高価であるという、問題もある。
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、所期の混合ガスを高い精度で容易に調製することのできる混合ガス調製装置および混合ガス調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の混合ガス調製装置は、一定体積の第一チャンバと、
当該第一チャンバより体積の大きい一定体積の第二チャンバと、
複数種のガス供給源のうちから選択された一のガス供給源からの原料ガスを当該第一チャンバに充填する原料ガス供給機構と、
当該第一チャンバ内に充填されたガスを大気圧/常温状態に調整する脱圧機構と、
当該第一チャンバ内のガスを当該第二チャンバに移送するガス移送機構と、
当該第一チャンバと前記複数種のガス供給源の一とを選択的に接続すると共に当該第一チャンバから当該第二チャンバへの原料ガスの移送回数をガス種に応じて制御する制御機構とを備えており、
前記第一チャンバおよび前記第二チャンバは、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成されており、
前記原料ガス供給機構は、前記複数のガス供給源が接続される複数の原料ガス導入部の各々から流路切り替え手段を介して前記第一チャンバに至る原料ガス供給流路と、当該原料ガス供給流路における流路切り替え手段より前記第一チャンバ側に設けられた第1の流路開閉バルブおよび第2の流路開閉バルブとを備えており、
前記脱圧機構は、前記第1の流路開閉バルブと第2の流路開閉バルブとの間に接続され、装置外部にガスを排出するためのガス排出部に至るガス排出流路と、当該ガス排出流路に設けられた第3の流路開閉バルブとを備えており、
前記ガス移送機構は、第一チャンバと第二チャンバとを第4の流路開閉バルブを介して接続するガス移送流路と、装置外部からエアを導入するためのエア導入部から圧力調整器および第5の流路開閉バルブを介して第一チャンバに至るエア導入流路とを備えており、
前記制御機構は、前記流路切り替え手段並びに前記第1の流路開閉バルブ乃至前記第5の流路開閉バルブの各々の開閉状態を制御して流路を切り替える機能を有することを特徴とする。
【0011】
さらにまた、本発明の混合ガス調製装置においては、前記ガス移送機構は、前記エア導入流路における圧力調整器と第5の流路開閉バルブとの間に接続され、第6の流路開閉バルブを介して第二チャンバに至る分岐エア導入流路をさらに備えており、第二チャンバ内の混合ガスを第一チャンバに逆送可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の混合ガス調製装置は、ガス特性を測定するためのガス用機器の校正用ガスの調製に好適に用いることができる。
ここに、ガス用機器とは、各種のガス成分の濃度を検出するガス濃度計、燃焼性ガスの熱量を測定する熱量計(成分ガスの混合比(ガス組成)によって変化する熱量と相関のある物性値を測定することにより熱量を測定するもの)などを例示することができる。
【0013】
本発明の混合ガス調製方法は、上記の混合ガス調製装置において実行される混合ガス調製方法であって、
流路切り替え手段の開閉状態を制御して複数種のガス供給源のうちから一のガス供給源を選択し、第1の流路開閉バルブおよび第2の流路開閉バルブを開状態とすると共に第3の流路開閉バルブ、第4の流路開閉バルブおよび第5の流路開閉バルブを閉状態とし、一定体積の第一チャンバ内に選択したガス供給源からの原料ガスを充填する充填工程と、
前記第1の流路開閉バルブ、前記第4の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを閉状態とすると共に前記第2の流路開閉バルブおよび前記第3の流路開閉バルブを開状態とし、当該第一チャンバ内に充填された原料ガスを大気圧/常温状態にする脱圧工程と、
前記第1の流路開閉バルブ、前記第2の流路開閉バルブおよび前記第3の流路開閉バルブを閉状態とすると共に前記第4の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを開状態とし、当該第一チャンバ内の原料ガスを一定体積の第二チャンバ内に移送する移送工程と
からなる一連のガス定量採取操作を、ガス種に応じて設定された回数繰り返して行うことにより混合ガスを調製することを特徴とする。
【0014】
本発明の混合ガス調製方法においては、前記ガス移送工程を行った後、前記第1の流路開閉バルブ、前記第4の流路開閉バルブおよびエア導入流路における圧力調整器と前記第5の流路開閉バルブとの間に接続された前記第二チャンバに至る分岐エア導入流路に設けられた第6の流路開閉バルブを閉状態とし、前記第2の流路開閉バルブ、前記第3の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを開状態とし、前記第一チャンバ内のガスを装置外部に排出することが好ましい。
また、本発明の混合ガス調製方法においては、前記第一チャンバを、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成し、
前記移送工程においては、前記第一チャンバにおけるガス充填空間とピストンを挟んで反対側の空間内に装置外部からエアを導入して当該第一チャンバ内を昇圧することにより当該第一チャンバ内のガスを第二チャンバに移送させることができる。
【0015】
また、本発明の混合ガス調製方法においては、前記第4の流路開閉バルブおよび前記第6の流路開閉バルブを開状態とし、前記第1の流路開閉バルブ、前記第2の流路開閉バルブ、前記第3の流路開閉バルブおよび前記第5の流路開閉バルブを閉状態とし、前記第二チャンバ内の混合ガスを前記第一チャンバに逆送し、前記脱圧工程を行って当該第一チャンバ内の混合ガスを大気圧/常温状態とした後、再び、前記移送工程を行って当該第二チャンバ内に移送し、
当該混合ガスを希釈するための希釈用ガスについて、前記定量採取操作を必要に応じて複数回繰り返し行うことにより前記第二チャンバ内の混合ガスを希釈して混合ガスの濃度を調整することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の混合ガス調製方法においては、前記第二チャンバを、摺動可能に設けられたピストンを有するシリンダにより構成し、
当該第二チャンバにおけるガス充填空間とピストンを挟んで反対側の空間内に装置外部からエアを導入して当該第二チャンバ内を昇圧することにより、当該第二チャンバ内のガスを排出させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、複数種の原料ガスについて共通の第一チャンバによって一定体積のガスが定量採取されると共に、第一チャンバにおいて定量採取された原料ガスが一定の条件(圧力条件、温度条件)に調整される。これにより、原料ガスが充填される試料容器の「体積の不確かさ」に起因する調製される混合ガスの濃度に対する影響を小さく抑制することができる。また、第一チャンバから第二チャンバへの移送を容易に実施することができる。従って、本発明によれば、第一チャンバから第二チャンバへのガス移送の回数をガス種に応じて制御することにより所期の混合ガスを高い精度で容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の混合ガス調製装置の一例における構成を概略的に示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、例えば、炭化水素ガス、水素ガスおよび一酸化炭素ガスから選ばれる少なくとも一種のガスを含有する燃焼性ガスを熱量測定対象ガスとする熱量測定装置の校正用ガス(vol%オーダーの成分ガスの濃度)を調製する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、本発明の混合ガス調製装置の一例における構成を概略的に示す配管図である。
この混合ガス調製装置は、複数種の原料ガス供給源70が接続されて用いられるものであって、ハウジング10には、複数個(この例では4つ)の原料ガス導入部11が設けられている。また、ハウジング10には、装置外部からエア(例えば計装エア)を導入するためのエア導入部12、混合ガス供給部13および装置外部にガスを排出するためのガス排出部14が設けられている。ここに、原料ガスとは、校正用ガスの成分ガスおよび希釈用ガスを含む。
【0021】
各々の原料ガス供給源70は、例えば高圧ガスボンベ71と、供給圧力調整器72とを備えている。
原料ガスとしては、例えばメタンガス、エタンガスなどのパラフィン系炭化水素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、水素ガスおよびその他のガス用機器の校正に用いられる標準ガスを構成する成分ガス並びに希釈用ガスからなる群より選ばれるものである。
原料ガス供給源70の数は、目的に応じて適宜に設定することができるが、装置構造が煩雑化、大型化することを回避するために、例えば2〜16個(種)であることが好ましい。
原料ガス供給源70から供給される原料ガスの供給圧力(配管内のガス圧)は、例えば
10〜300kPaである。
【0022】
ハウジング10の内部には、一定の体積V0 の第一チャンバ20および第一チャンバ20の体積V0 より大きい一定の体積V1 を有する第二チャンバ25が配設されていると共に、原料ガス供給機構30、脱圧機構40並びにガス移送機構50を構成する配管系が形成されている。
【0023】
この例における第一チャンバ20および第二チャンバ25は、例えば、摺動可能に設けられたピストン22,27を有するシリンダ21,26により構成されている。第一チャンバ20の体積(ガス充填空間の体積)V0 は、例えば0.1〜10リットルであることが好ましい。また、第二チャンバ25の体積(ガス充填空間の体積)V1 は、第一チャンバ20の体積V0 の2〜100倍の大きさであることが好ましい。なお、第一チャンバ20の体積V0 および第二チャンバ25の体積V1 は、ピストン22,27の位置を適宜変更することにより調整することができる。
【0024】
原料ガス供給機構は、複数種の原料ガス供給源70のうちから選択された一の原料ガス供給源からの原料ガスを第一チャンバ20内に充填するものである。この例における原料ガス供給機構30は、各々の原料ガス導入部11から流路切り替え手段35を介して第一チャンバ20に至る原料ガス供給流路31と、原料ガス供給流路31における流路切り替え手段35より第一チャンバ20側の位置に設けられた第1の流路開閉バルブ32および第2の流路開閉バルブ33とを備えている。流路切り替え手段35は、例えば5方切り替えバルブにより構成されている。
【0025】
脱圧機構は、第一チャンバ20内に充填された原料ガスを大気圧/常温(室温)状態に調整するものである。この例における脱圧機構40は、原料ガス供給流路31における第1の流路開閉バルブ32と第2の流路開閉バルブ33との間の位置に接続された、ガス排出部14に至るガス排出流路41と、原料ガス供給流路31の一部を構成する配管部分(第一チャンバ20からガス排出流路41との接続部までの配管部分)と、ガス排出流路41に設けられた第3の流路開閉バルブ42とを備えている。
【0026】
ガス移送機構は、第一チャンバ20内に充填された原料ガスを第二チャンバ25に移送するものである。この例におけるガス移送機構50は、第一チャンバ20と第二チャンバ25とを第4の流路開閉バルブ52を介して接続するガス移送流路51と、エア導入部12から圧力調整器56および第5の流路開閉バルブ57を介して第一チャンバ20に至るエア導入流路55aとを備えている。
また、この例におけるガス移送機構50は、エア導入流路55aにおける圧力調整器56と第5の流路開閉バルブ57との間に接続された、第6の流路開閉バルブ58を介して第二チャンバ25に至る分岐エア導入流路55bをさらに備えている。これにより、第二チャンバ25内において生成された混合ガスを第一チャンバ20に逆送する機能を有するものとして構成されている。
【0027】
この混合ガス調製装置においては、第一チャンバ20内のガスを装置外部に排出させる洗浄機構60が設けられている。洗浄機構60は、エア導入部12から圧力調整器56および第5の流路開閉バルブ57を介して第一チャンバ20に至るエア導入流路55aと、第一チャンバ20から第2の流路開閉バルブ33および第3の流路開閉バルブ42を介してガス排出部14に至るガス排出流路(原料ガス機供給流路31の一部を含む。)41とを備えている。
【0028】
また、第二チャンバ25内において調製された混合ガスを、例えば当該混合ガス調製装置の混合ガス供給部13に配管接続されるガス用機器に供給する混合ガス供給機構65が設けられている。混合ガス供給機構65は、エア導入部12から圧力調整器56および第6の流路開閉バルブ58を介して第二チャンバ25に至る分岐エア導入流路(エア導入流路55aの一部を含む。)55bと、ガス移送流路51における第二チャンバ25と第4の流路開閉バルブ52との間の位置に接続された、混合ガス供給部13に至る混合ガス供給流路66と、混合ガス供給流路66に設けられた例えば手動流路開閉バルブ67とを備えている。
【0029】
この混合ガス調製装置は、流路切り替え手段35および各流路開閉バルブ(32,33,42,52,57,58)の開閉状態を制御して流路を切り替える機能を有する制御機構(図示せず)を備えている。この制御機構は、第一チャンバ20から第二チャンバ25への原料ガスの移送回数をガス種に応じて制御する。
【0030】
以下、上記の混合ガス調製装置による混合ガス調製方法について説明する。
上記の混合ガス調製装置による混合ガス調製方法においては、(a)充填工程と、(b)脱圧工程と、(c)移送工程とからなる一連のガス定量採取操作が、ガス種に応じて設定された回数繰り返して行われることにより混合ガスが調製される。
【0031】
(a)充填工程
充填工程は、選択された原料ガス供給源70からの原料ガスを、一定体積V0 の第一チャンバ20におけるガス充填空間内に充填する工程である。この充填工程においては、流路切り替え手段35が制御機構によって制御されることにより複数種の原料ガス供給源70のうちから一の原料ガス供給源が選択される。また、第1の流路開閉バルブ32および第2の流路開閉バルブ33が共に開状態とされることにより、選択された原料ガス供給源が第一チャンバ20に接続される。なお、他の流路開閉バルブ(42,52,57,58)は閉状態に維持される。これにより、選択された原料ガス供給源から原料ガスが供給圧力調整器72によって適正な大きさに制御された供給圧力で供給され、一定体積V0 の原料ガスが第一チャンバ20内に充填されて定量採取される。第一チャンバ20内のガス圧は、例えば供給圧力(配管内の圧力)と同等の大きさで平衡状態となる。
【0032】
(b)脱圧工程
脱圧工程は、第一チャンバ20内に充填された原料ガスを大気圧/常温状態にする工程である。この脱圧工程においては、制御機構によって、第1の流路開閉バルブ32が閉状態とされると共に第3の流路開閉バルブ42が開状態とされる。なお、第2の流路開閉バルブ33は開状態に維持されると共に他の流路開閉バルブ(52,57,58)は閉状態に維持される。これにより、第一チャンバ20内がガス排出流路41を介して例えば大気に開放され、第一チャンバ20内が大気圧/常温(室温)状態となる。
【0033】
(c)移送工程
移送工程は、第一チャンバ20内の原料ガスを一定体積V1 の第二チャンバ25におけるガス充填空間内に移送する工程である。この移送工程においては、制御機構によって、第2の流路開閉バルブ33および第3の流路開閉バルブ42が閉状態とされると共に、第4の流路開閉バルブ52および第5の流路開閉バルブ57が開状態とされる。なお、他の流路開閉バルブ(32,58)は閉状態に維持される。これにより、エア導入部12よりエア導入流路55aを介してエア(計装エアー)が第一チャンバ20におけるピストン22を挟んで原料ガス充填空間と反対側の空間内に導入される。その結果、第一チャンバ20内が昇圧されてピストン22が移動されることにより定量採取された原料ガスが第一チャンバ20から排出される。当該原料ガスは、ガス移送流路51を介して第二チャンバ25内に移送(充填)される。
【0034】
(d)洗浄工程
上記の混合ガス調製装置においては、複数種の原料ガスについて共通の第一チャンバ20によって原料ガスが定量採取される構造上の理由から、第一チャンバ20内のガスを排出する必要がある。従って、一の原料ガスについてガス移送工程が行われた後、第一チャンバ20内の洗浄処理が必要に応じて行われることが好ましい。この洗浄工程においては、制御機構によって、第2の流路開閉バルブ33、第3の流路開閉バルブ42および第5の流路開閉バルブ57が開状態とされる。他の流路開閉バルブ(32,52,58)は閉状態とされる。これにより、エア導入部12よりエア導入流路55aを介してエア(計装エアー)が第一チャンバ20におけるピストン27を挟んで原料ガス充填空間と反対側の空間内に導入される。その結果、第一チャンバ20内が昇圧されてピストン27が移動されることにより第一チャンバ20内のガスがガス排出流路41を介してガス排出部14から装置外部に排出される。
【0035】
以上のようなガス定量採取操作が一の原料ガスについて設定された回数繰り返して行われることにより、当該原料ガスが第二チャンバ25内に所定量充填される。
次いで、調製すべき混合ガスを構成する他の原料ガスについて、以上のようなガス定量採取操作が当該原料ガスについて設定された回数繰り返して行われることにより二種以上の原料ガスが所定の混合比で混合された混合ガスが調製される。
例えば、ガスAとガスBとが、ガスA:ガスB=1:m(mは1以上の整数)の混合比(体積基準)で、混合された混合ガスを調製する場合には、ガスAについて1回のガス定量採取操作が行われた後、ガスBについてm回のガス定量採取操作が行われる。
【0036】
そして、混合ガスからなるガス用機器の校正用ガスは、通常、一種の特定の成分ガスまたは複数種の成分ガスが、希釈用ガスによって所定濃度に希釈された混合ガスが用いられる。このような混合ガスは、例えば次のようにして調製することができる。
【0037】
すなわち、先ず、上記のようにして得られた複数種の原料ガスが所定の混合比で混合された、第二チャンバ25内の混合ガス(特定の一種の成分ガスと希釈用ガスとの混合ガスを含む。)を、第一チャンバ20に逆送(移充填)するガス移送工程が行われる。
このガス移送工程においては、制御機構によって、第4の流路開閉バルブ52および第6の流路開閉バルブ58が開状態とされる。なお、他の流路開閉バルブ(32,33,42,57)は閉状態とされる。これにより、エア導入部12より分岐エア導入流路55bを介してエア(計装エアー)が第二チャンバ25におけるピストン27を挟んでガス充填空間と反対側の空間内に導入される。その結果、第二チャンバ25内が昇圧されてピストン27が移動されることにより第二チャンバ25内のガスがガス移送流路51を介して第一チャンバ20内に充填される。
次いで、第一チャンバ20内の混合ガスを大気圧/常温状態とする脱圧工程が、上記と同様にして行われた後、再び、第一チャンバ20内の混合ガスを第二チャンバ25内に移送するガス移送工程が上記と同様にして行われる。
【0038】
その後、第二チャンバ25内の混合ガス(大気圧/常温状態)を希釈するための希釈用ガスについて、上記ガス定量採取操作が必要に応じて複数回繰り返し行われることにより第二チャンバ25内の混合ガスが希釈されて混合ガスの濃度が調整される。これにより、所定の成分ガスが所定の混合比で混合されたものが希釈用ガスによって所定の濃度に調整された混合ガスからなる校正用ガスが得られる。
【0039】
以上のようにして調製された混合ガス(校正用ガス)は、例えば、混合ガス供給部13に接続されたガス用機器に供給される。具体的には、第6の流路開閉バルブ58が制御機構によって開状態とされると共に、手動流路開閉バルブ67が例えば作業者によって開状態とされる。なお、他の流路開閉バルブ(32,33,42,57)は閉状態とされる。これにより、エア(計装エアー)がエア導入部12から分岐エア導入流路55bを介して第二チャンバ25におけるピストン27を挟んでガス充填空間と反対側の空間内に導入される。その結果、第二チャンバ25内が昇圧されてピストン27が移動されることにより第二チャンバ25内の混合ガスが混合ガス供給流路66を介して混合ガス供給部13からガス用機器に供給される。なお、調製された混合ガスは第二チャンバ25内において保管されてもよい。
【0040】
而して、上記の混合ガス調製方法および当該混合ガス調製方法が実施される混合ガス調製装置によれば、制御機構によって、各々の流路開閉バルブの開閉状態が制御されて流路が切り替えられると共に第一チャンバ20から第二チャンバ25へのガス移送回数がガス種に応じて制御されることにより、所期の混合ガスを容易にかつ高い精度で調製することができる。
また、第一チャンバ20が複数種の原料ガス供給源に共通の試料容器として構成されており、原料ガス供給機構30、脱圧機構40並びにガス移送機構50が流路開閉バルブ(32,33,42,52,57,58)が共用されることによって形成されている。このため、配管構造の簡素化を図ることができると共に部品点数を可及的に少なくすることができ、装置が大型化することを回避することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、第二チャンバ内のガスを脱圧処理するための配管系(流路開閉バルブを含む。)が設けられた構成とされていてもよい。このような構成のものにおいては、第二チャンバ内の洗浄処理も実施可能となる。
【0042】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0043】
<実験例1>
図1に示す構成を参照して、本発明に係る混合ガス調製装置を作製した。第一チャンバにおけるガス充填空間の体積(V0 )を1リットル、第二チャンバにおけるガス充填空間の体積(V1 )を4リットルとした。
この混合ガス調製装置を用いて、純メタンガス(メタン濃度:99.9999%以上)についての定量採取操作の回数と、窒素ガスについての定量採取操作の回数とを適宜変更して、下記表1に示す4種類の混合ガス(以下、「ガス(A)」〜「ガス(D)」という。)を調製した。表1における計算CH4 濃度は、各々の混合ガスにおける純メタンガスの計算上の体積百分率α(vol%)である。
そして、調製されたガス(A)〜ガス(D)の各々について、メタンガスの濃度β〔vol%〕を光学センサを用いて測定し、計算上の体積百分率(計算CH4 濃度)との差(β−α)〔vol%〕を求めた。結果を下記表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
〔実験例2〕
実験例1において作製した混合ガス調製装置を用い、純メタンガス(メタン濃度:99.9999%以上)についての定量採取操作と、窒素ガスについての定量採取操作とをそれぞれ同じ回数行い、純メタンガスと窒素ガスの混合比が1:1(計算CH4 濃度αが50vol%)である混合ガス(以下、「ガス(E)」という。)を調製した。
次いで、第二チャンバ内において調製された混合ガス(E)を第一チャンバに逆送(移充填)して脱圧工程を行って大気圧/常温状態とした後、再び、第一チャンバ20内の混合ガスを第二チャンバ25内に移送する。その後、純メタンガスについての定量採取操作の回数を、混合ガス(E)と当該混合ガス(E)に混合される純メタンガスとの混合比が1:2となるよう、制御して行うことにより、混合ガス(以下、「ガス(F)」という。)を調製した。
このような、第二チャンバ内において調製される混合ガスに対して、純メタンガスを、混合ガスと当該混合ガスに混合される純メタンガスとの混合比が1:2となるよう、混合する処理を繰り返して行った。これにより、下記表2に示す、さらに4種類の混合ガス(以下、「ガス(G)」〜「ガス(J)」という。)を調製した。
以上のようにして得られたガス(E)〜ガス(J)の各々について、メタンガスの濃度β〔vol%〕を光学センサを用いて測定し、計算上の体積百分率(計算CH4 濃度)αとの差(β−α)〔vol%〕を求めた。結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
以上の結果より明らかなように、本発明に係る混合ガス調製方法によれば、所期の混合ガスを高い精度で得られることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 ハウジング
11 原料ガス導入部
12 エア導入部
13 混合ガス供給部
14 ガス排出部
20 第一チャンバ
21 シリンダ
22 ピストン
25 第二チャンバ
26 シリンダ
27 ピストン
30 原料ガス供給機構
31 原料ガス供給流路
32 第1の流路開閉バルブ
33 第2の流路開閉バルブ
35 流路切り替え手段
40 脱圧機構
41 ガス排出流路
42 第3の流路開閉バルブ
50 ガス移送機構
51 ガス移送流路
52 第4の流路開閉バルブ
55a エア導入流路
55b 分岐エア導入流路
56 圧力調整器
57 第5の流路開閉バルブ
58 第6の流路開閉バルブ
60 洗浄機構
65 混合ガス供給機構
66 混合ガス供給流路
67 手動流路開閉バルブ
70 原料ガス供給源
71 高圧ガスボンベ
72 供給圧力調整器
図1