特許第6596241号(P6596241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596241
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20191010BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20191010BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
   A47K1/14 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-119868(P2015-119868)
(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-2651(P2017-2651A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−227664(JP,A)
【文献】 特開2004−116213(JP,A)
【文献】 特開2009−114753(JP,A)
【文献】 特開2005−180142(JP,A)
【文献】 実開昭51−162725(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0255054(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0237070(US,A1)
【文献】 特開2005−188699(JP,A)
【文献】 実開平03−003286(JP,U)
【文献】 特開2000−345598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
A47K 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口に挿設される筒状の排水口部材と、
上下動可能であるとともに、前記排水口部材と略同軸に設けられた栓蓋本体部、及び、当該栓蓋本体部の外周に設けられ、前記排水口部材に接触することで前記排水口を閉鎖可能である弾性変形可能な環状のパッキン部を有する栓蓋と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記栓蓋側に伝達するための伝達部材とを備えた排水栓装置であって、
前記排水口部材の内周には、前記槽体の貯水空間側に位置し、前記貯水空間側を向く環状の上向面部が設けられるとともに、
当該上向面部の最内周部には、環状の角部が形成されており、
当該角部の最内周部は、前記排水口部材の中心軸と平行に延びるように構成された前記排水口部材の内周面に連続しており、
前記パッキン部の全周が前記角部に接触することで、前記排水口が閉鎖されるように構成されることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記パッキン部のうち前記角部と接触し得る部位の全域は、前記栓蓋本体部の中心軸上に中心が位置する仮想球面と重なる湾曲面状をなすことを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【請求項3】
前記栓蓋は、前記排水口部材の径方向に沿って前記排水口部材に対し若干だけ相対移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水栓装置。
【請求項4】
前記角部は、前記排水口部材の中心軸を含む断面において、直角形状をなすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項5】
前記排水口部材は、その上端部に径方向外側に突出する鍔状のフランジ部を有し、
前記排水口部材のうち、前記角部の外周から前記フランジ部の外周面上端に連なる連接面は、
基本的には、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面のみ、又は、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面と当該拡径面の最外周から前記中心軸と直交する方向に沿って前記フランジ部の外周面上端へと延びる直交面とからなる面によって構成され、
前記連接面のうち、前記角部の近傍には、前記排水口部材の中心軸から遠ざかる側に向けて窪んだ形状をなす凹面が設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排水栓装置。
【請求項6】
前記槽体は、
前記フランジ部が直接又は間接的に載置される環状の張出部と、
前記張出部の外周に立設された環状の立設部とを備え、
前記排水口部材の周方向に沿った全域において、前記フランジ部の外周面上端が前記立設部に対しほぼ接触するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口に設けられる排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽や洗面器等)に設けられる排水栓装置としては、槽体の排水口に挿設される筒状の排水口部材と、排水口部材の内周に配置される上下動可能な支持軸と、当該支持軸の上端部に取付けられた栓蓋と、所定の操作部材(例えば、操作ボタンや操作ハンドル)の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するための伝達部材(例えば、ワイヤー等)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような排水栓装置において、栓蓋は、円板状をなし支持軸に支持される栓蓋本体部と、当該栓蓋本体部の背面外周側に設けられた環状のパッキン部とを備えている。そして、排水口を閉鎖するときには、パッキン部が、槽体又は排水口部材の内周上部に設けられたテーパ状部分に対し、鉛直方向に沿って押付けられることが一般的である(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−116213号公報
【特許文献2】特開2010−53539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、槽体や排水口部材に対するパッキン部の接触部分の径(シール径)が比較的大きなものとなる。そのため、排水口を開放する際に、操作部材へと比較的大きな力を加えることが必要となってしまい、その結果、操作性の低下を招いてしまったり、操作部材から栓蓋までの前記駆動力の伝達経路に位置する部材(伝達部材等)に加わる負荷が大きくなってしまったりするおそれがある。
【0006】
また、パッキン部のシール径が比較的大きくなることで、排水口の閉鎖時において、パッキン部の周方向全域を槽体や排水口部材に対し接触させることが難しくなってしまったり(シール安定性が低下してしまったり)、製造コストの増大を招いてしまったりする可能性もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作性やシール安定性等の向上を図ることができるとともに、操作時に部材へと加わる負荷をより確実に低減することができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.槽体の排水口に挿設される筒状の排水口部材と、
上下動可能であるとともに、前記排水口部材と略同軸に設けられた栓蓋本体部、及び、当該栓蓋本体部の外周に設けられ、前記排水口部材に接触することで前記排水口を閉鎖可能である弾性変形可能な環状のパッキン部を有する栓蓋と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記栓蓋側に伝達するための伝達部材とを備えた排水栓装置であって、
前記排水口部材の内周には、前記槽体の貯水空間側に位置し、前記貯水空間側を向く環状の上向面部が設けられるとともに、
当該上向面部の最内周部には、環状の角部が形成されており、
当該角部の最内周部は、前記排水口部材の中心軸と平行に延びるように構成された前記排水口部材の内周面に連続しており、
前記パッキン部の全周が前記角部に接触することで、前記排水口が閉鎖されるように構成されることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
尚、「略同軸」とあるのは、排水口部材と栓蓋本体部とが厳密に同軸に設けられている場合のみならず、排水口部材の中心軸に対し栓蓋本体部の中心軸が若干傾いたり、ずれたりしている場合も含むという趣旨である。また、「角部」は、頂点部分が厳密な角形状となっているものだけではなく、微視的に見て、頂点部分がいくらか丸みを帯びていたり、平坦状をなしていたりするものであってもよい。例えば、角部の頂点部分に幅の小さい(例えば、排水口部材の径方向に沿った幅が1mm以下の)テーパ部分(面取り部分)や湾曲面部分などが存在していてもよい。
【0011】
上記手段1によれば、パッキン部の全周が、上向面部の最内周に位置する環状の角部と接触することで、排水口が閉鎖される。従って、排水口部材に対するパッキン部の接触部分の径(シール径)を極めて小さくすることができ、排水口を開放する際に、操作部材へと加えることが必要な力を効果的に小さくすることができる。その結果、操作性の向上を図ることができるとともに、操作時に伝達部材や操作部材等に加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0012】
また、上記手段1によれば、パッキン部のシール径を小さくできることで、排水口の閉鎖時において、パッキン部の周方向全域を角部に対してより確実に接触させることができる。また、パッキン部を製造する際の材料コストを低減することができる。従って、シール安定性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
手段2.前記パッキン部のうち前記角部と接触し得る部位の全域は、前記栓蓋本体部の中心軸上に中心が位置する仮想球面と重なる湾曲面状をなすことを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0014】
上記手段2によれば、排水口部材の中心軸に対し栓蓋本体部の中心軸が、部品の製造時や組立時の精度等に起因して、若干ずれたり、斜めになったりした状態であっても、角部に対しパッキン部の全周をより確実に接触させることができる。これにより、排水口の閉鎖時において、良好な水密性をより確実に得ることができる。
【0015】
手段3.前記栓蓋は、前記排水口部材の径方向に沿って前記排水口部材に対し若干だけ相対移動可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0016】
尚、「若干だけ」とあるのは、栓蓋の中心軸と排水口部材の中心軸とを合わせた状態において、排水口部材の径方向に沿った栓蓋の移動可能量が、例えば、最大で1mm程度に抑えられていることを意味する。
【0017】
上記手段3によれば、排水口を閉鎖するときに角部へとパッキン部が接触することによって、栓蓋本体部の中心軸と排水口部材の中心軸とが同軸となるように、栓蓋を移動させることができる。従って、角部に対しパッキン部の全周を一層確実に接触させることができる。これにより、排水口の閉鎖時において、さらに良好な水密性を実現することができる。
【0018】
手段4.前記角部は、前記排水口部材の中心軸を含む断面において、直角形状をなすことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0019】
尚、「角部が直角形状をなす」とあるのは、換言すれば、角部を挟む2つの面がほぼ直角に延びているということができる。また、安全性を考慮して、角部には、若干の(例えば、R1mm程度の)湾曲部分が形成されていてもよい。
【0020】
上記手段4によれば、角部に対するパッキン部の接触圧力をより大きなものとすることができる。その結果、排水口の閉鎖時において、一層良好な水密性を得ることができる。また、パッキン部のシール径を最も小さくすることができるため、操作性の更なる向上を図ることができるとともに、操作時に伝達部材等に加わる負荷を効果的に低減することができる。
【0021】
手段5.前記排水口部材は、その上端部に径方向外側に突出する鍔状のフランジ部を有し、
前記排水口部材のうち、前記角部の外周から前記フランジ部の外周面上端に連なる連接面は、
基本的には、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面のみ、又は、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面と当該拡径面の最外周から前記中心軸と直交する方向に沿って前記フランジ部の外周面上端へと延びる直交面とからなる面によって構成され、
前記連接面のうち、前記角部の近傍には、前記排水口部材の中心軸から遠ざかる側に向けて窪んだ形状をなす凹面が設けられることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の排水栓装置。
【0022】
尚、排水口部材の連接面部分に、取付用の工具を係合するための切欠きや部分的な凹部を設けてもよい。この場合、排水口部材のうち前記切欠きや前記部分的な凹部を除いた部分において上記構成が満たされていればよい。
【0023】
上記手段5によれば、凹面の存在によって、角部を形成しつつ、排水口部材における凹面の外周からフランジ部の外周面上端までの面を滑らかな面とすることができる。従って、清掃性や美感の向上を図ることができる。
【0024】
また、単に角部からフランジ部の外周面上端までの面全域を滑らかなテーパ面としつつ、角部にパッキン部を接触させるように構成した場合、角部のうちパッキン部に接触する部分は、傾斜角度が非常に小さくなり得る(鉛直方向に対しほんの少しだけ傾いたような状態となり得る)。このように角部のうちパッキン部に接触する部分の傾斜角度が非常に小さくなってしまうと、排水口を閉鎖する際に、パッキン部が排水口部材の内周に入り込んで(食い込んで)しまいやすく、パッキン部が排水口部材の内周へと入り込んで(食い込んで)しまうと、排水口を開放する際に大きな操作力が必要となってしまう。この点、上記手段5によれば、角部のうちパッキン部に接触する部分の傾斜角度をより確実に適正な大きさ(例えば、45°程度)とすることができる。従って、排水口部材の内周に対するパッキン部が入り込みをより確実に防止することができ、操作性をより一層高めることができる。
【0025】
手段6.前記槽体は、
前記フランジ部が直接又は間接的に載置される環状の張出部と、
前記張出部の外周に立設された環状の立設部とを備え、
前記排水口部材の周方向に沿った全域において、前記フランジ部の外周面上端が前記立設部に対しほぼ接触するように構成されていることを特徴とする手段5に記載の排水栓装置。
【0026】
尚、「ほぼ接触」とあるのは、フランジ部が立設部に対し厳密に接触している場合のみならず、フランジ部と立設部との間に隙間が存在するものの、当該隙間が非常に小さい(例えば、1mm以下)場合も含むという意味である。
【0027】
上記手段6によれば、フランジ部の外周と立設部との間に汚れが付着しにくくなり、清掃性を一層高めることができる。また、フランジ部の外周と立設部との間にほとんど隙間がない状態となるため、より良好な美観を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】排水口装置や栓蓋側機構部の構成を示す一部破断正面図である。
図2】操作装置の断面図である。
図3】排水口部材の内周面形状等を説明するための一部拡大断面図である。
図4】パッキン部の形状を説明するための一部拡大断面図である。
図5】別の実施形態における排水口装置を示す一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100等に取付けられており、操作装置2と、レリースワイヤ3と、栓蓋側機構部4と、排水口装置5とを備えている。尚、洗面器100は、下方に向けて延びる筒状の立設部101と、当該立設部101の下端から径方向内側に向けて突出する環状の張出部102とを備えている。そして、張出部102の内周に、排水口103が形成されている。
【0030】
操作装置2は、図2に示すように、洗面器100の近傍に設けられた壁状のバックガード104に取付けられた筒状のガイド部21と、当該ガイド部21の内周において往復移動可能に配置された操作部材22とを備えている。操作部材22の一端部には、レリースワイヤ3の後述する伝達部材31の他端部が取付けられている。
【0031】
また、ガイド部21の一端部外周には、ほぼ直角に屈曲する筒状をなす操作側屈曲ガイド部材23が取付けられている。そして、操作側屈曲ガイド部材23の内周においてレリースワイヤ3の後述するチューブ部材32の他端部が保持されている。
【0032】
レリースワイヤ3は、ワイヤー等からなる長尺状の伝達部材31と、樹脂等からなる長尺筒状のチューブ部材32とを備えている。伝達部材31は、チューブ部材32の内周に配置されており、操作部材22の変位に伴いチューブ部材32に対し往復移動するようになっている。
【0033】
図1に戻り、栓蓋側機構部4は、下端部に穴部を有する棒状の軸部41と、当該軸部41が上下動可能な状態で挿通された円筒状の被挿通部42Aを有してなる保持部42と、被挿通部42Aの下端部内周にねじ止め固定され、被挿通部42Aからの軸部41の抜けを防ぐ底部43とを備えている。底部43は、軸部41の軸方向に延びる貫通孔を備えており、チューブ部材32の一端部が当該貫通孔の内周において保持している。一方、伝達部材31は、前記貫通孔を通って軸部41の前記穴部へと配置可能となっている。そして、伝達部材31の往動に伴い、伝達部材31の一端部が軸部41を押し上げることで、軸部41が上動し、伝達部材31の復動に伴い、伝達部材31の一端部による軸部41の押し上げが解除されることで、軸部41が下動するようになっている。
【0034】
また、栓蓋側機構部4は、保持部42の外周環状部分が配管52の内周に設けられた段差部分に対し載置されることで、配管52に対し取付けられている。尚、後述する配管52の本体管52Aが、螺合により直列的に接続される2つの部材を備えるものとし、1の部材に対しその他の部材を螺合した状態において、保持部42の外周環状部分が両部材により挟まれるように構成することで、栓蓋側機構部4が配管52に対し取付けられるようにしてもよい。
【0035】
加えて、保持部42の外周環状部分と被挿通部42Aとは、被挿通部42Aの周方向に沿って間隔をあけて設けられた複数のアーム部42Bによって連結されている。そして、各アーム部42B間の隙間を通って排水が流れ落ちるようになっている。
【0036】
排水口装置5は、排水口部材51と、配管52と、下部捕集部材53と、支持軸54と、ヘアキャッチャー55と、栓蓋56とを備えている。
【0037】
排水口部材51は、筒状に形成されており、自身の中心軸CL1と前記排水口103の中心軸とがほぼ一致するように排水口103に挿設されている。また、排水口部材51は、その上端部に、径方向外側に突出形成された鍔状のフランジ部51Aを有し、当該フランジ部51Aよりも下方側の外周に、雄ねじ部51Bを備えている。尚、排水口部材51の内周部分の構成、及び、フランジ部51Aと洗面器100との位置関係については、後に詳述する。
【0038】
配管52は、筒状の本体管52Aと、当該本体管52Aの外周からほぼ水平方向に突出形成され、自身の内部空間が本体管52Aの内部空間に連通する筒状の枝分かれ管52Bとを備えている。
【0039】
本体管52Aは、鉛直方向に沿って延びるとともに、その一端部(上端部)内周に前記雄ねじ部51Bを螺合可能な雌ねじ部52Cを備えている。そして、フランジ部51Aを前記張出部102に載置した上で、前記雄ねじ部51Bを雌ねじ部52Cに螺合し、フランジ部51A及び本体管52Aの上端面により張出部102を挟み込むことで、配管52は排水口部材51に接続されるとともに、洗面器100に取付けられている。
【0040】
また、本実施形態においては、配管52の上端面と洗面器100との間には、弾性変形可能な材料により形成された環状のシール部材57が介在されており、当該シール部材57によって、排水口部材51及び配管52と洗面器100との間からの漏水防止が図られている。尚、漏水防止を図るという点では、フランジ部51Aと洗面器100との間にシール部材を設けることとしてもよい。
【0041】
枝分かれ管52Bは、洗面器100に設けられた図示しないオーバーフロー口と所定の配管を介して接続されており、オーバーフロー口を通った排水が流れ込むようになっている。
【0042】
下部捕集部材53は、配管52(本体管52A)内において上下動可能に配置されており、環状の外周壁部53Aと、当該外周壁部53Aの内周から内側に向けて延びる下部捕集部53Bとを備えている。
【0043】
外周壁部53Aは、配管52(本体管52A)の内周面に沿うようにして配管52(本体管52A)内に配置されている。尚、本実施形態では、外周壁部53Aと配管52(本体管52A)との間に若干(例えば、1mm程度)の隙間が形成されている。このように外周壁部53Aと配管52(本体管52A)との間の隙間が比較的小さなものとされることで、下部捕集部材53の径方向に沿った移動が抑制され、ひいては支持軸54や栓蓋56の傾きが防止されるようになっている。つまり、下部捕集部材53は、支持軸54や栓蓋56の傾きを防止する機能をも備えている。
【0044】
下部捕集部53Bは、その内周部分が支持軸54に固定されており、外周壁部53Aの径方向に沿って延びる複数のリブを有している。下部捕集部53Bにおいて、本体管52Aを流れる排水は前記リブ間に形成された隙間を通って流れ落ち、その一方で、排水に含まれるゴミ等は捕集されることとなる。
【0045】
支持軸54は、棒状をなし、その上端部が栓蓋56の背面中央部に取付けられている。また、支持軸54の下端部が前記軸部41に載置状態とされることで、支持軸54は、軸部41により配管52(本体管52A)内で支持されている(但し、軸部41が最も下方に配置された状態では、支持軸54の下端部から軸部41が離間するようになっている)。そして、軸部41が上下動することで支持軸54が上下動した際には、支持軸54とともに、下部捕集部材53及び栓蓋56等が上下動するようになっている。
【0046】
ヘアキャッチャー55は、支持軸54の外周から外周側に向けて広がっており、本体管52Aを流れる排水に含まれるゴミ等を捕集する機能を備えている。
【0047】
栓蓋56は、樹脂等からなる円板状の栓蓋本体部56Aと、当該栓蓋本体部56Aに取付けられたパッキン部56Bとを備えている。
【0048】
栓蓋本体部56Aは、排水口部材51と略同軸に設けられており、その背面の外周側には、下方に向けて延びる筒状部56Cが形成されている。そして、当該筒状部56Cの外周に対し前記パッキン部56Bが嵌め込まれている。
【0049】
パッキン部56Bは、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)によって環状に形成されている。そして、操作部材22の変位に伴い軸部41が下動した際に、下部捕集部材53及び支持軸54とともに栓蓋56が下動し、パッキン部56Bの外周部分全域が排水口部材51に接触することで、排水口103が閉鎖されるようになっている。一方で、操作部材22の変位に伴い軸部41が上動した際には、下部捕集部材53及び支持軸54とともに栓蓋56が上動し、パッキン部56Bが排水口部材51から離間することで、排水口103が開放されるようになっている。尚、パッキン部56Bの外周部分の形状については後に詳述する。
【0050】
また、本実施形態では、排水口103の開放時において、軸部41は支持軸54の下端部に接触しているが、排水口103の閉鎖時において、軸部41は支持軸54の下端部から離間するようになっている。これにより、排水口103の閉鎖時において、パッキン部56Bを確実に排水口部材51へと接触させることができ、良好な水密性を得ることができる。
【0051】
尚、本実施形態では、洗面器100の表側から栓蓋56や支持軸54を引き上げることで、下部捕集部材53、支持軸54、ヘアキャッチャー55及び栓蓋56からなるユニット58を配管52から一度に取外すことができるようになっている。そのため、メンテナンス性や清掃性の向上を図ることができる。
【0052】
加えて、上述の通り、外周壁部53Aと配管52(本体管52A)との間に若干の隙間が形成されていることから、栓蓋56は、排水口部材51の径方向に沿って排水口部材51に対し若干(例えば、1mm程度)だけ相対移動可能となっている。
【0053】
次いで、排水口部材51の内周部分の形状、及び、フランジ部51Aと洗面器100との位置関係について詳述する。
【0054】
本実施形態では、図3に示すように、排水口部材51は、その内周に、洗面器100の貯水空間側に位置し、当該貯水空間側(上方側)を向く上向面部51Cが設けられている。上向面部51Cは、前記中心軸CL1を中心とする環状をなしており、排水口部材51の径方向に沿ってある程度の幅を有している。さらに、上向面部51Cの最内周部には、環状をなす角張った形状の角部51Dが形成されている。本実施形態において、角部51Dは、前記中心軸CL1を含む断面において直角状となっている。尚、「角部51Dが直角状をなす」とあるのは、排水口部材51のうち、角部51Dを挟む2つの面がほぼ直角に延びている状態であるということもできる。加えて、排水口部材51の内周下部には、所定の工具を係合するための凸部51E(図1参照)が周方向に沿って等間隔に複数形成されている。
【0055】
また、本実施形態において、角部51Dは、頂点部分がいくらか丸みを帯びたものとされている。そして、本実施形態では、パッキン部56Bの全周が前記角部51Dの頂点部分に接触することで、排水口103が閉鎖されるように構成されている。尚、角部51Dのうちパッキン部56Bに接触する部位の傾斜角度(角部51Dのうちパッキン部56Bと接触する部位に接する接線と前記中心軸CL1とのなす角のうち鋭角の角度)は、例えば、45°程度とされている。
【0056】
加えて、排水口部材51の内周面のうち、角部51Dの外周からフランジ部51Aの外周面上端に連なる連接面51F(上向面部51Cから角部51Dを除いた部位)は、基本的には(後述する凹面51Gを除いて)、上方側に向けて徐々に内径が大きくなる拡径面とされている。但し、連接面51Fのうち、角部51Dの近傍には、排水口部材51の中心軸CL1から遠ざかる方向に向けて窪んだ形状をなす環状の凹面51Gが形成されている。
【0057】
さらに、本実施形態では、排水口部材51の周方向に沿った全域において、フランジ部51Aの外周面上端が前記立設部101に対しほぼ接触している。尚、「ほぼ接触」とあるのは、フランジ部51Aの外周面上端が立設部101に対し厳密に接触している場合のみならず、フランジ部51Aの外周面上端と立設部101との間に隙間が存在するものの、当該隙間が非常に小さい(例えば、1mm以下)場合も含むという趣旨である。
【0058】
次に、パッキン部56Bの外周面の形状について説明する。本実施形態において、パッキン部56Bの外周面の所定部位は、所定の湾曲面形状とされている。より詳しくは、図4に示すように、パッキン部56Bのうち角部51Dと接触し得る部位の全域は、栓蓋本体部56Aの中心軸CL2上に中心CPが位置する仮想球面VSと重なる湾曲面状とされている。
【0059】
以上詳述したように、本実施形態によれば、排水口103を閉鎖するときに、パッキン部56Bが角部51Dと接触するため、排水口部材51に対するパッキン部56Bの接触部分の径(シール径)を極めて小さくすることができる。そのため、排水口103を開放する際に、操作部材22へと加えることが必要な力を効果的に小さくすることができる。その結果、操作性の向上を図ることができるとともに、操作時に伝達部材31や操作部材22、栓蓋側機構部4等に加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0060】
また、パッキン部56Bのシール径を小さくできるため、シール径が大きい場合と比較して、排水口103の閉鎖時において、パッキン部56Bの周方向全域を角部51Dに対してより確実に接触させることができる。また、パッキン部56Bを製造する際の材料コストを低減することができる。従って、シール安定性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
さらに、パッキン部56Bのうち角部51Dと接触し得る部位の全域は、前記仮想球面VSと重なる湾曲面状をなすため、排水口部材51の中心軸CL1に対し栓蓋本体部56Aの中心軸CL2が、部品の製造時や組立時の精度等に起因して、若干ずれたり、斜めになったりした場合であっても、角部51Dに対しパッキン部56Bの全周をより確実に接触させることができる。これにより、排水口103の閉鎖時において、良好な水密性をより確実に得ることができる。
【0062】
加えて、栓蓋56は、排水口部材51に対し、その径方向に沿って相対移動可能であるため、排水口103を閉鎖するときに角部51Dへとパッキン部56Bが接触することによって、栓蓋本体部56Aの中心軸CL2と排水口部材51の中心軸CL1とが同軸となるように、栓蓋56を移動させることができる。従って、角部51Dに対しパッキン部56Bの全周を一層確実に接触させることができ、排水口103の閉鎖時において、さらに良好な水密性を実現することができる。
【0063】
また、排水口部材51に凹面51Gを設けることで、角部51Dを形成しつつ、排水口部材51における凹面51Gの外周からフランジ部51Aの外周面上端までの面を滑らかな面とすることができる。従って、清掃性や美感の向上を図ることができる。
【0064】
さらに、凹面51Gの存在により、角部51Dのうちパッキン部56Bに接触する部分の傾斜角度をより確実に適正な大きさとすることができる。従って、排水口部材51の内周に対するパッキン部56Bが入り込みをより確実に防止することができ、操作性をより一層高めることができる。
【0065】
加えて、フランジ部51Aの外周面上端が立設部101に対しほぼ接触するため、フランジ部51Aの外周と立設部101との間に汚れが付着しにくくなり、清掃性を一層高めることができる。また、フランジ部51Aの外周と立設部101との間にほとんど隙間がない状態となるため、より良好な美観を実現することができる。
【0066】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0067】
(a)上記実施形態において、軸部41の上下動は、支持軸54を介して栓蓋56へと伝達されているが、支持軸54を介することなく、軸部41の上下動が栓蓋56へと直接伝達されるように構成してもよい。従って、例えば、図5(尚、図5では配管等を不図示)に示すように、排水口装置6は、下端部に対し伝達部材31の他端部が接触可能であるとともに、上端部に栓蓋66が取付けられた棒状の軸部63と、当該軸部63をその外周において上下動可能に保持する被挿通部64とを有してなる支持軸機構65を備えることとしてもよい。尚、支持軸機構65は、排水口部材61に対し直接、又は、排水口部材61に対し取付けられるアタッチメント部材67等の介在部を介して間接的に取付けられる。
【0068】
尚、このような支持軸機構65を用いる場合には、軸部63の上端部外周と栓蓋66との間や、軸部63の外周と被挿通部64の内周との間、アタッチメント部材67と支持軸機構65との間に若干の隙間(遊び)を設けることで、栓蓋66が、排水口部材61に対しその径方向に沿って若干だけ相対移動可能となるように構成してもよい。
【0069】
(b)上記実施形態において、排水口部材51の連接面51Fは、基本的には、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面のみによって形成されているが、図5に示すように、排水口部材61の連接面61Fが、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面と、当該拡径面の最外周から排水口部材61の中心軸CL1と直交する方向に沿ってフランジ部61Aの外周面上端へと延びる直交面とからなる面によって形成されていてもよい。尚、図5に示すように、排水口部材61(フランジ部61A)の上面に、取付用の工具を係合するための部分的な凹部61Eを設ける場合には、排水口部材61のうち前記凹部61Eを除いた部分において、連接面61Fが上述の構成を満たしていればよい。
【0070】
(c)上記実施形態において、角部51Dは、頂点部分が丸みを帯びた形状とされているが、角部の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば、排水口部材51の中心軸CL1を含む断面において、角部51Dの頂点部分が直角形状をなしていたり、面取り形状をなしていたりしてもよい。
【0071】
(d)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、浴槽やキッチンの流し台などに対して本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0072】
(e)上記実施形態における操作装置2の構成やこの設置場所はあくまでも例示である。従って、操作装置としては、操作部材が往復動作するものに代えて、操作部材が回転(回動)動作し、この回転(回動)動作に伴い伝達部材31を動作させるものを用いてもよい。また、操作装置を、洗面器や浴槽などの槽体に設置することとしてもよいし、槽体の近傍に設けられた構造物に設置することとしてもよい。
【0073】
(f)上記実施形態において、伝達部材31は、チューブ部材32の内周を往復移動可能なワイヤー等によって構成されているが、伝達部材の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、回転力を伝達可能なユニバーサルジョイントなどによって伝達部材を構成してもよい。
【0074】
(g)上記実施形態におけるパッキン部56Bは成形パッキンであるが、パッキン部はこれに限られず、例えば、Oリングや平パッキンであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…排水栓装置、22…操作部材、31…伝達部材、51…排水口部材、51A…フランジ部、51C…上向面部、51D…角部、51F…連接面、56…栓蓋、56A…栓蓋本体部、56B…パッキン部、100…洗面器(槽体)、101…立設部、102…張出部、103…排水口、CL1…(排水口部材の)中心軸、CL2…(栓蓋本体部の)中心軸、CP…(仮想球面の)中心、VS…仮想球面。
図1
図2
図3
図4
図5