【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0009】
手段1.槽体の排水口に挿設される筒状の排水口部材と、
上下動可能であるとともに、前記排水口部材と略同軸に設けられた栓蓋本体部、及び、当該栓蓋本体部の外周に設けられ、前記排水口部材に接触することで前記排水口を閉鎖可能である弾性変形可能な環状のパッキン部を有する栓蓋と、
所定の操作部材の変位による駆動力を前記栓蓋側に伝達するための伝達部材とを備えた排水栓装置であって、
前記排水口部材の内周には、前記槽体の貯水空間側に位置し、前記貯水空間側を向く環状の上向面部が設けられるとともに、
当該上向面部の最内周部には、環状の角部が形成されており、
当該角部の最内周部は、前記排水口部材の中心軸と平行に延びるように構成された前記排水口部材の内周面に連続しており、
前記パッキン部の全周が前記角部に接触することで、前記排水口が閉鎖されるように構成されることを特徴とする排水栓装置。
【0010】
尚、「略同軸」とあるのは、排水口部材と栓蓋本体部とが厳密に同軸に設けられている場合のみならず、排水口部材の中心軸に対し栓蓋本体部の中心軸が若干傾いたり、ずれたりしている場合も含むという趣旨である。また、「角部」は、頂点部分が厳密な角形状となっているものだけではなく、微視的に見て、頂点部分がいくらか丸みを帯びていたり、平坦状をなしていたりするものであってもよい。例えば、角部の頂点部分に幅の小さい(例えば、排水口部材の径方向に沿った幅が1mm以下の)テーパ部分(面取り部分)や湾曲面部分などが存在していてもよい。
【0011】
上記手段1によれば、パッキン部の全周が、上向面部の最内周に位置する環状の角部と接触することで、排水口が閉鎖される。従って、排水口部材に対するパッキン部の接触部分の径(シール径)を極めて小さくすることができ、排水口を開放する際に、操作部材へと加えることが必要な力を効果的に小さくすることができる。その結果、操作性の向上を図ることができるとともに、操作時に伝達部材や操作部材等に加わる負荷をより確実に低減することができる。
【0012】
また、上記手段1によれば、パッキン部のシール径を小さくできることで、排水口の閉鎖時において、パッキン部の周方向全域を角部に対してより確実に接触させることができる。また、パッキン部を製造する際の材料コストを低減することができる。従って、シール安定性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
手段2.前記パッキン部のうち前記角部と接触し得る部位の全域は、前記栓蓋本体部の中心軸上に中心が位置する仮想球面と重なる湾曲面状をなすことを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0014】
上記手段2によれば、排水口部材の中心軸に対し栓蓋本体部の中心軸が、部品の製造時や組立時の精度等に起因して、若干ずれたり、斜めになったりした状態であっても、角部に対しパッキン部の全周をより確実に接触させることができる。これにより、排水口の閉鎖時において、良好な水密性をより確実に得ることができる。
【0015】
手段3.前記栓蓋は、前記排水口部材の径方向に沿って前記排水口部材に対し若干だけ相対移動可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の排水栓装置。
【0016】
尚、「若干だけ」とあるのは、栓蓋の中心軸と排水口部材の中心軸とを合わせた状態において、排水口部材の径方向に沿った栓蓋の移動可能量が、例えば、最大で1mm程度に抑えられていることを意味する。
【0017】
上記手段3によれば、排水口を閉鎖するときに角部へとパッキン部が接触することによって、栓蓋本体部の中心軸と排水口部材の中心軸とが同軸となるように、栓蓋を移動させることができる。従って、角部に対しパッキン部の全周を一層確実に接触させることができる。これにより、排水口の閉鎖時において、さらに良好な水密性を実現することができる。
【0018】
手段4.前記角部は、前記排水口部材の中心軸を含む断面において、直角形状をなすことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の排水栓装置。
【0019】
尚、「角部が直角形状をなす」とあるのは、換言すれば、角部を挟む2つの面がほぼ直角に延びているということができる。また、安全性を考慮して、角部には、若干の(例えば、R1mm程度の)湾曲部分が形成されていてもよい。
【0020】
上記手段4によれば、角部に対するパッキン部の接触圧力をより大きなものとすることができる。その結果、排水口の閉鎖時において、一層良好な水密性を得ることができる。また、パッキン部のシール径を最も小さくすることができるため、操作性の更なる向上を図ることができるとともに、操作時に伝達部材等に加わる負荷を効果的に低減することができる。
【0021】
手段5.前記排水口部材は、その上端部に径方向外側に突出する鍔状のフランジ部を有し、
前記排水口部材のうち、前記角部の外周から前記フランジ部の外周面上端に連なる連接面は、
基本的には、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面のみ、又は、上方側に向けて徐々に内径の大きくなる拡径面と当該拡径面の最外周から前記中心軸と直交する方向に沿って前記フランジ部の外周面上端へと延びる直交面とからなる面によって構成され、
前記連接面のうち、前記角部の近傍には、前記排水口部材の中心軸から遠ざかる側に向けて窪んだ形状をなす凹面が設けられることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の排水栓装置。
【0022】
尚、排水口部材の連接面部分に、取付用の工具を係合するための切欠きや部分的な凹部を設けてもよい。この場合、排水口部材のうち前記切欠きや前記部分的な凹部を除いた部分において上記構成が満たされていればよい。
【0023】
上記手段5によれば、凹面の存在によって、角部を形成しつつ、排水口部材における凹面の外周からフランジ部の外周面上端までの面を滑らかな面とすることができる。従って、清掃性や美感の向上を図ることができる。
【0024】
また、単に角部からフランジ部の外周面上端までの面全域を滑らかなテーパ面としつつ、角部にパッキン部を接触させるように構成した場合、角部のうちパッキン部に接触する部分は、傾斜角度が非常に小さくなり得る(鉛直方向に対しほんの少しだけ傾いたような状態となり得る)。このように角部のうちパッキン部に接触する部分の傾斜角度が非常に小さくなってしまうと、排水口を閉鎖する際に、パッキン部が排水口部材の内周に入り込んで(食い込んで)しまいやすく、パッキン部が排水口部材の内周へと入り込んで(食い込んで)しまうと、排水口を開放する際に大きな操作力が必要となってしまう。この点、上記手段5によれば、角部のうちパッキン部に接触する部分の傾斜角度をより確実に適正な大きさ(例えば、45°程度)とすることができる。従って、排水口部材の内周に対するパッキン部が入り込みをより確実に防止することができ、操作性をより一層高めることができる。
【0025】
手段6.前記槽体は、
前記フランジ部が直接又は間接的に載置される環状の張出部と、
前記張出部の外周に立設された環状の立設部とを備え、
前記排水口部材の周方向に沿った全域において、前記フランジ部の外周面上端が前記立設部に対しほぼ接触するように構成されていることを特徴とする手段5に記載の排水栓装置。
【0026】
尚、「ほぼ接触」とあるのは、フランジ部が立設部に対し厳密に接触している場合のみならず、フランジ部と立設部との間に隙間が存在するものの、当該隙間が非常に小さい(例えば、1mm以下)場合も含むという意味である。
【0027】
上記手段6によれば、フランジ部の外周と立設部との間に汚れが付着しにくくなり、清掃性を一層高めることができる。また、フランジ部の外周と立設部との間にほとんど隙間がない状態となるため、より良好な美観を実現することができる。