【実施例】
【0022】
−実施例1〜3、比較例1〜3−
次の種々の構成の耐震スリット芯材を作製した。
−実施例1−
合成樹脂発泡板:ポリスチレン系樹脂からなる発泡板(株式会社ジェイエスピー製 ミラフォーム3種品、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度35kg/m
3)
耐火材:粘着剤付きアルミ箔テープ(日立マクセル株式会社製 スリオンテックアルミテープNo.8060、幅50mm、厚さ50μm)
構成:合成樹脂発泡板の長手方向に沿った両端面側を、断面コの字状の金属箔で覆った構成
−実施例2−
合成樹脂発泡板:フェノール系樹脂からなる発泡板(旭化成建材株式会社製オマフォーム、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度27kg/m
3)
耐火材:粘着剤付きアルミ箔テープ(日立マクセル株式会社製 スリオンテックアルミテープNo.8060、幅50mm、厚さ50μm)
構成:合成樹脂発泡板の長手方向に沿った両端面側を、断面コの字状の金属箔で覆った構成
−実施例3−
合成樹脂発泡板:ポリカーボネート系樹脂からなる発泡板(株式会社ジェイエスピー製 ミラポリカフォーム、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度60kg/m
3)
耐火材:粘着剤付きアルミ箔テープ(日立マクセル株式会社製 スリオンテックアルミテープNo.8060、幅50mm、厚さ50μm)
構成:合成樹脂発泡板の長手方向に沿った両端面側を、断面コの字状の金属箔で覆った構成
−比較例1−
合成樹脂発泡板:ポリスチレン系樹脂からなる発泡板(株式会社ジェイエスピー製 ミラフォーム3種品、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度35kg/m
3)
耐火材:使用せず
構成:合成樹脂発泡板単体
−比較例2−
合成樹脂発泡板:ポリスチレン系樹脂からなる発泡板(株式会社ジェイエスピー製 ミラフォーム3種品、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度35kg/m
3)
耐火材:粘着剤付きアルミ箔テープ(日立マクセル株式会社製 スリオンテックアルミテープNo.8060、幅25mm、厚さ50μm)
構成:合成樹脂発泡板の長手方向に沿った両端面を、平板状の金属箔で覆った構成
−比較例3−
合成樹脂発泡板:ポリスチレン系樹脂からなる発泡板(株式会社ジェイエスピー製 ミラフォーム3種品、厚さ25mm×幅210mm×長さ200mm、密度35kg/m
3)
耐火材:ロックウール(ニチアス株式会社製、密度120kg/m
3、厚さ10mm)
構成:合成樹脂発泡板の長手方向に沿った一端面に、ロックウールを沿わせた構成
なお、上記各種合成樹脂発泡板の両板面には、王子マテリア株式会社製SRK(主成分セルロース、厚み300μm、坪量250g)を補強シートとして積層接着した。
【0023】
得られた上記各種の耐震スリット芯材について、変形復帰性、嵌合強度、耐火性能、そして実際の施工性について、測定或いは評価し、その結果を表1に示す。
なお、変形復帰性、嵌合強度等の測定或いは評価は、それぞれ下記の方法で行った。
【0024】
〔変形復帰性〕
独立行政法人都市構生機構制定の「機材の品質判定基準」(平成23年4月版)2建築編の5.スリット材の別紙「スリット材の性能試験方法」2.圧縮試験(試験番号02)4)変形復帰性に準じて試験を行った。
試験方法は以下の通りである。
試験前に
図2に示す位置の耐火材部分の最大厚さを測定した。試験体に厚さ15mmまでの変位量を与え圧縮し、その後荷重ゼロまで復帰させた。この操作を5回繰り返したのち、厚さが安定するまで静置した。安定後、試験前と同様の方法で厚さを測定し、これを復帰厚さとした。試験速度は往復とも500mm/minとし、下式に従って変形量を算出した。
変形復帰性(%)=(t2/t1)×100
ここに、
t1:試験前の耐火材部分の厚さの最大値(mm)
t2:試験後の耐火材部分の厚さの最大値(mm)
【0025】
〔嵌合強度〕
篏合強度の評価は、以下の方法により行った。
目地棒(長さ300mm)を鋼製型枠にスクリュー釘ピッチ50mmで固定し、力骨材と耐震スリット芯材(厚さ25mm,幅210mm,長さ200mm)を挟み込んだ。次に、耐震スリット芯材部分の全面に荷重を加えるため、サイズ:厚さ16mm×幅90mm×長さ200mmのゴム板がスリッ芯材に接する側に積層された板を耐震スリット芯材の上に置き、その上から加圧棒により耐震スリット芯材表面に荷重をかけた。加圧条件は、試験速度:10mm/min、加圧棒:r=17mm(直径34mm、長さ600mmの鉄パイプ)とした。
なお、評価方法としては、加圧棒の変位が5mm時に、たわみ荷重が500N以上のものを○、たわみ荷重が500N以下のものを×と評価した。
【0026】
〔耐火性能〕
耐火性能の評価は、独立行政法人都市構生機構制定の「機材の品質判定基準(平成26年5月版):スリット材の性能試験方法」における耐火性能試験に準じて行った。
評価としては、試験終了時までに次の(1)から(4)までに適合するものを○とし、適合しないものを×とした。
(1)スリット部の裏面温度は、次式に適合すること。
最高温度≦180℃+初期温度
平均温度≦140℃+初期温度
この式における初期温度は、試験開始時のスリット部の裏面温度の平均とする。
(2)非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと。
(3)非加熱面で10秒を超えて継続する発炎がないこと。
(4)火炎が通る亀裂等の損傷を生じないこと。
【0027】
〔施工性〕
図3は、種々の構成からなる耐震スリット芯材1を垂直スリットの芯材としてコンクリート建造物に適用したときの横断面図である。耐震スリット芯材1は、その両側端側が力骨材4,4で挟持された状態で、柱部(構造柱)2と壁部(非構造壁)3との境界付近に埋設される。さらに、それら力骨材4,4の背面側にはシーリング材5,5が充填されている。
耐震スリットの前記境界部付近への埋設は、対向して設置された型枠のそれぞれに目地棒を固定し、耐震スリット芯材1の両側端部に力骨材4,4をそれぞれ配置した耐震スリットを、力骨材4,4の背面側の溝を目地棒に嵌合させることにより固定し、次いで、型枠間にコンクリートを打設し、所定期間経過後に型枠を取り外し、その後、型枠とともに外された目地棒の跡にコーキング材5,5を充填するという作業手順で行った。
施工性の評価は、上記作業、特にコンクリートの打設作業が良好に行われたものを○、コンクリート打設時に耐震スリット芯材が安定せず、耐震スリット芯材の力骨材からの離脱等が懸念されたものを×と評価した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より、合成樹脂発泡板としてポリスチレン系樹脂を使用した実施例1、フェノール系樹脂を使用した実施例2、およびポリカーボネート系樹脂を使用した実施例3は、耐震スリット芯材として要求される変形復帰性能、嵌合強度、耐火性能そして施工性の全て満足していることが分かる。また、地震発生時における元の形状への戻りやすさを示す、変形復帰性は、実施例3≒実施例1>実施例2であり、実施例2に比べ、実施例1、3の方がより元の形状に戻りやすく、耐震スリット芯材により適していることが分かる。
これに対し、合成樹脂発泡板は実施例1と同じものを使用しているが、比較例1〜3の耐震スリット芯材の構成では、耐震スリット芯材として要求される変形復帰性能、嵌合強度、耐火性能そして施工性の全ての性能を満足するものはなかったことが分かる。
比較例1のように耐火材が無い構成の耐震スリット芯材では、耐火性能を満足することができない。比較例2のように合成樹脂発泡板の木口面(長手方向に沿った端面)のみにアルミ箔テープを貼り付けた構成の耐震スリット芯材では、変形復帰性試験時にアルミ箔テープの一部が発泡板から剥がれ、変形したままとなり、合成樹脂発泡板の変形復帰に追従できないため、変形復帰性能を満足することができない。比較例3のように、金属箔の変わりに、厚さのある耐火材であるロックウールを使用した構成の耐震スリット芯材では、力骨材の合成樹脂発泡板への掛かりが浅くなるため、施工を簡略化するために耐震スリットとして要求される嵌合強度を得ることができない。