(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
最初に、第1実施形態の塗布容器1について説明する。
この塗布容器1には、例えば人体の頭皮や皮膚等の被塗布部Sに塗布される育毛剤や薬液等の内容物が収容される。
図1及び
図2に示すように、塗布容器1は、被塗布部Sに塗布する内容物が収容される有底筒状の容器本体2と、容器本体2の口部3に装着され、容器本体2内に連通する連通孔5が形成された中栓部材4と、中栓部材4との間に、連通孔5を通して容器本体2内に連通する計量室6を形成するとともに、頂部に計量室6に連通する吐出孔8が形成された計量筒部材7と、計量室6に設けられるとともに、先端が吐出孔8から計量室6の外部に突出される塗布栓9と、内側に移行中栓40が固着されるとともに、容器本体2の口部3に着脱自在に装着されて吐出孔8及び塗布栓9の先端を覆うオーバーキャップ10と、オーバーキャップ10の内側に固着されるとともに、計量筒部材7の頂部に着脱自在に装着され、塗布栓9を、計量室6と連通孔5との連通を遮断する位置に位置させる移行中栓40と、を備えている。
【0015】
また、計量室6内に配設された塗布栓9は、吐出孔8と計量室6との連通を遮断し、かつ計量室6と連通孔5とを連通させる計量位置(例えば
図3に示す状態)と、計量位置よりも下側に位置するとともに、計量室6と連通孔5との連通を遮断し、かつ吐出孔8と計量室6とを連通させ(ここでいう「連通させる」とは、「連通する、又は連通可能な状態とする」の両方の意味を含む)、さらに後述する弾性部材28を容器軸O方向に圧縮変形させる塗布位置(例えば
図4に示す状態)と、の間を容器軸O方向(上下方向)に移動自在に配設されている。また、塗布栓9が塗布位置に位置する状態では、塗布栓9の外周と吐出孔8との間に形成された隙間を通して、内容物が吐出可能とされている。
【0016】
ここで、
図1において、容器本体2の口部3、中栓部材4、計量筒部材7、塗布栓9、オーバーキャップ10及び移行中栓40は、それぞれの中心軸線が共通軸上に配置されている。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸O方向に沿う容器本体2の底部側(
図1における下側)を下側、容器軸O方向に沿う容器本体2の口部3側(
図1における上側)を上側という。また、容器軸Oから見た平面視で容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
容器本体2は有底筒状をなしており、その口部3が該口部3以外の部位(胴部、底部及び肩部)よりも小径とされている。また、口部3の外周面には雄ねじ部が形成されている。前記雄ねじ部は、二条ねじである。口部3の上端部は、前記雄ねじ部が形成された該上端部以外の部分より外径が小さくされており、該上端部の外周面には、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起3aが形成されている。
また、容器本体2における口部3と肩部との連結部分には、径方向外側へ向けて突出するとともに容器軸O方向に沿って延びる回り止めリブ3bが形成されている。
【0018】
図2に示すように、中栓部材4は、容器本体2の口部3内に配設される有底筒状の受け筒12と、受け筒12の底壁12aから上側に向かって突設された支持体11と、受け筒12を径方向外側から囲繞するとともに受け筒12に連結されて、容器本体2の口部3内に嵌合するシール筒13と、受け筒12とシール筒13とを連結する環状のフランジ部14と、シール筒13の上端部に立設された内嵌合筒15と、シール筒13の上端部から径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状の鍔部16と、鍔部16に立設された外嵌合筒17と、を有している。
なお、本実施形態では、中栓部材4の受け筒12、支持体11、シール筒13、フランジ部14、内嵌合筒15、鍔部16及び外嵌合筒17が、一体に形成されている。
【0019】
支持体11は、受け筒12の底壁12aに立設されて容器軸Oに同軸に延びる軸部11aと、軸部11aの下端部から径方向外側へ向けて突出するとともに容器軸O方向に沿って延びる支持リブ11b(剛性部材)と、を備えている。軸部11aの上端部は、受け筒12及び内嵌合筒15よりも上側へ向けて突出している。支持リブ11bは、軸部11aの外周面に周方向に間隔をあけて複数設けられており、図示の例では、受け筒12の底壁12aの上面に連結されている。また、支持リブ11bの上縁は、受け筒12の周壁の上端開口縁よりも下側に位置している。
【0020】
支持体11の支持リブ11bには、弾性部材28が外嵌されている。弾性部材28は、例えばニトリルゴムやブチルゴム、シリコンゴム、エラストマー、ウレタン等の弾性変形可能な軟材質により、容器軸O方向に沿う円筒状に形成されている。弾性部材28の上端縁は、支持リブ11bの上縁よりも上側に位置している。弾性部材28の下端縁は、受け筒12の底壁12aに上側から当接している。
【0021】
受け筒12には、周方向に間隔をあけて連通孔5が複数形成されている。連通孔5は、受け筒12の周壁と底壁12aとにわたって一体に形成されている。連通孔5を画成する内周縁(内周壁面)のうち径方向内側に位置する端縁は、底壁12aに位置し、かつ径方向における弾性部材28の内周面と外周面との間に配置され、前記内周縁のうち受け筒12の周壁に位置し、下方を向く端縁は、支持リブ11bの上縁よりも下側に位置している。
また、受け筒12の周壁の内周面のうち、連通孔5より上側に位置する部位は、塗布栓9の下端部が摺動可能に嵌合する中栓シール部となっている。
【0022】
シール筒13は、その容器軸O方向における中間部がフランジ部14を介して受け筒12の上端部に連結されている。図示の例では、シール筒13の下端部が、受け筒12の底壁12aより上側に位置している。
内嵌合筒15は、シール筒13の上端部から上側へ向けて突設されており、図示の例では、内嵌合筒15の内周面が、上側へ向かうに従い漸次拡径するテーパ状に形成されている。
【0023】
鍔部16は、容器本体2の口部3の上端開口縁に、その上側から当接している。
外嵌合筒17は、鍔部16の外周縁部から上側へ向けて突設されている。外嵌合筒17の外周面には、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起17aが形成されている。
【0024】
計量筒部材7は、容器本体2の口部3に装着される装着筒部18と、装着筒部18より上側に位置して計量筒部材7の頂部をなし、吐出孔8が形成された吐出筒部19と、装着筒部18と吐出筒部19との間に位置してこれら装着筒部18及び吐出筒部19を連結する連結筒部20と、を有している。
図示の例では、計量筒部材7は下側から上側へ向かって、装着筒部18、連結筒部20、吐出筒部19の順に段階的に縮径している。
【0025】
装着筒部18は有頂筒状をなしており、環状の天壁と、周壁と、を有している。
装着筒部18の周壁は、容器本体2の口部3の上端部、及び中栓部材4の外嵌合筒17に対して外嵌している。装着筒部18の周壁の内周面には、径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起18aと、突起18aより上側に位置して径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起18bと、が形成されている。
装着筒部18の周壁に設けられた突起18a,18bのうち、下側に位置する突起18aは、口部3の突起3aにその下側から係止されており、上側に位置する突起18bは、外嵌合筒17の突起17aにその下側から係止されている。これにより、装着筒部18と口部3、及び、装着筒部18と中栓部材4の外嵌合筒17が、それぞれアンダーカット嵌合されている。
【0026】
装着筒部18の天壁は、外嵌合筒17の上端開口縁に、その上側から当接している。また、装着筒部18の天壁の内周縁部には、中栓部材4の外嵌合筒17と内嵌合筒15との間に挿入されるシール筒部21が垂下設されている。
シール筒部21は、計量室6における中栓部材4と計量筒部材7との連結部分の液密性を確保できるように、内嵌合筒15及び外嵌合筒17の少なくともいずれか一方に嵌合している。
【0027】
連結筒部20は有頂筒状をなしており、環状の天壁と、周壁と、を有している。
連結筒部20の周壁は、装着筒部18の天壁の内周縁部から上側へ向けて突設されている。連結筒部20の周壁の内径は、内嵌合筒15の内径より大きくされており、図示の例では、内嵌合筒15の外径と略同一となっている。
また、連結筒部20の天壁は、径方向内側へ向かうに従い漸次上側へ向けて傾斜している。
【0028】
吐出筒部19は筒状をなし、周壁を有している。
吐出筒部19の周壁は、連結筒部20の天壁の内周縁部から上側へ向けて突設されている。吐出筒部19の周壁の内部が、吐出孔8となっている。
本実施形態では、計量筒部材7の連結筒部20と、中栓部材4の内嵌合筒15、シール筒13の上部、フランジ部14及び受け筒12と、により画成される空間(室)が、計量室6とされている。
【0029】
塗布栓9は、容器軸O方向に延びるとともにその上端(先端)が吐出孔8から上側へ向けて突出される栓本体22を有している。図示の例では、栓本体22は、天壁24aと周壁24bとを有する有頂筒状の下筒部24と、下筒部24の天壁24aに垂下設されて周壁24bに径方向外側から囲繞されるガイド筒部25と、下筒部24の天壁24aに立設された上筒部26と、下筒部24の天壁24aから上方に向けて突設され容器軸Oに同軸に延びる軸部27と、を有している。
【0030】
下筒部24の周壁24bのうち、上端部は、
図3に示す塗布栓9の計量位置で、吐出筒部19の周壁(吐出孔8)の径方向内側に摺動自在に嵌合する塗布栓上シール部となっている。
また、下筒部24の周壁24bのうち、下端部は、
図4に示す塗布栓9の塗布位置で、受け筒12の周壁(中栓シール部)の径方向内側に摺動自在に嵌合する塗布栓下シール部となっている。
なお、本実施形態では、塗布栓9の下端部に、中栓部材4の受け筒12内に嵌合する前記塗布栓下シール部(周壁24bの下端部)が設けられ、この径方向の嵌合のみによって、計量室6と連通孔5との連通が遮断されるようになっている。図示の例では、周壁24bのうち下端部(塗布栓下シール部)の肉厚が、該下端部以外の部位の肉厚より薄くされている。
【0031】
また、塗布栓9には、径方向の外側へ向けてストッパー突起24cが突設されている。ストッパー突起24cは、
図3に示すように、塗布栓9が計量位置に位置するときに、計量筒部材7の吐出孔8の開口周縁部に対して、下側から当接可能である。
具体的に本実施形態では、周壁24bのうち、上端部と下端部との間に位置する中間部分に、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のストッパー突起24cが形成されている。ストッパー突起24cは、計量筒部材7のうち連結筒部20の天壁の内周縁部に対して、その下側から当接可能となっている。
【0032】
ガイド筒部25は、中栓部材4の軸部11aの径方向外側に摺動自在に外挿されている。図示の例では、ガイド筒部25の下端開口縁は、周壁24bの下端開口縁よりも下側に配置されている。
【0033】
図4に示すように、塗布栓9の塗布位置で、ガイド筒部25の下端開口縁は、支持体11の支持リブ11bの上縁と当接し、支持体11の支持リブ11bに下側から支持されている。このとき、弾性部材28は、塗布位置に位置する塗布栓9のガイド筒部25の下端開口縁により、容器軸O方向に圧縮変形されている。またこの状態で、支持体11の軸部11aの上端と、下筒部24の天壁24aとは、接近している。
【0034】
上筒部26は、吐出筒部19内に配設されている。上筒部26は、下筒部24の周壁24bの上端部(塗布栓上シール部)に対して、外径が小さくなっている。上筒部26の外周面には、周方向に間隔をあけて溝部26aが複数形成されている。溝部26aは、容器軸O方向に沿って上筒部26の下部から上端開口縁にわたって形成されている。
図4に示す塗布栓9の塗布位置で、上筒部26の外周面と、吐出筒部19の内周面(吐出孔8)との間には、内容物が流通可能な隙間が形成されている。そして、この隙間及び溝部26aを通して、計量室6内と容器外部とが連通されている。
また上筒部26の内周面のうち、上端部には、径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起26b(係合部)が形成されている。
【0035】
ここで、
図5に示すように、塗布栓9の下端部が弾性部材28を圧縮変形させることなく上側から当接している状態において、塗布栓9の先端(上筒部26の先端)は吐出孔8(吐出筒部19の上端開口縁)から上側へ向けて突出されている。以下、この状態を「塗布開始状態」といい、塗布開始状態における弾性部材28の位置を「塗布開始位置」という。塗布栓9の先端が外力を受けることで弾性部材28が塗布開始状態から弾性変形することにより、塗布栓9は、中栓部材4に対して下側へ移動可能(弾性変位可能)となっている。このとき、塗布栓9の外周と吐出孔8との間には、僅かに隙間が形成されている。図示の例では、塗布栓9の外周と吐出孔8との間の前記隙間は、表面張力により残留した内容物によって塞がれる程度となっている。なお、この塗布開始状態において、塗布栓9の外周と吐出孔8との間は、シールされていてもよい。
【0036】
塗布栓9が外力を受けて、弾性部材28を弾性変形させながら、中栓部材4に対して下側へ移動すると、
図4に示すように、塗布栓9のガイド筒部25の下端開口縁は、支持体11の支持リブ11bに当接する。このとき、塗布栓9の外周と吐出孔8との間には、上述した塗布開始状態よりも大きい隙間が形成されている。なお、塗布栓9の外周と吐出孔8との間の隙間は、塗布栓9の容器軸O方向における変位量に応じて変化するように形成されてもよい。
【0037】
また、塗布開始位置から塗布位置へ移動する塗布栓9が、中栓部材4に対して下側へ弾性変位する移動量(弾性変位量)は、支持体11の支持リブ11bの上縁と、弾性部材28の上端縁と、の容器軸O方向の距離により規定されている。塗布栓9のガイド筒部25の下端開口縁と、支持体11の支持リブ11bとが当接されて前記隙間がゼロとなった状態では、それ以上に弾性部材28が弾性変形することが規制される。
【0038】
また、塗布栓9の先端に付与されていた外力が無くなる(又は低減する)ことで、弾性部材28は復元変形して、
図5に示すように、塗布栓9は塗布開始位置に戻される。このように、計量室6の塗布栓9は、外力を受けたり、該外力が解除されたりすることで、容器軸O方向に揺動可能とされている。
つまり本実施形態では、塗布栓9の先端に対して下側へ向かう外力が加えられ、弾性部材28が弾性変形されるとともに、塗布栓9が下側へ向けて弾性変位したときに、塗布栓9の外周と吐出孔8との間の隙間の流路断面積が大きくなるように構成され、かつ、塗布栓9の下端部が支持体11の支持リブ11bに当接することで、塗布栓9が所定の弾性変位量以上に弾性変位することが規制されている。
【0039】
一方、
図3に示すように、塗布栓9が計量位置に位置した状態では、塗布栓9のガイド筒部25の下端開口縁は、弾性部材28から上側に離間している。またこの状態で、塗布栓9のストッパー突起24cが、計量筒部材7における吐出孔8の開口周縁部にその下側から当接されていることで、たとえ計量室6に対して塗布栓9を上側へ移動させる向きの外力が作用した場合でも、計量位置に位置した塗布栓9がそれ以上に上側へ向けて移動することが規制されている。
【0040】
オーバーキャップ10は、有頂筒状をなしており、その周壁29の下部における内周面に、口部3の雄ねじ部に螺着する雌ねじ部が形成されている。前記雌ねじ部は、二条ねじである。オーバーキャップ10は、周壁29を径方向の外側から囲繞する外郭筒30を備えている。また、オーバーキャップ10の天壁には、移行中栓40の外筒部41を外側から囲う引き上げ筒31が垂下設されている。引き上げ筒31の内周面には、径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起31aが形成されている。
【0041】
オーバーキャップ10の下端部の内周面には、周方向を向く壁面を備えた段部32が形成されており、オーバーキャップ10が容器本体2の口部3に装着された際において、段部32は、容器本体2の回り止めリブ3bに周方向から当接可能とされている。
【0042】
移行中栓40は、引き上げ筒31の内側に嵌合されている。移行中栓40は、計量筒部材7の吐出筒部19を径方向外側から囲む外筒部41と、外筒部41の内側に設けられ、計量室6と連通孔5との連通を遮断する位置に位置する塗布栓9の上筒部26と軸部27との間に配置された内筒部42と、外筒部41の上端部と内筒部42の上端縁とを接続する有頂筒状の接続筒部43と、を有する。
外筒部41の外周面には、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起41aが形成されている。外筒部41の突起41aは、引き上げ筒31の突起31aに係止されている。また、外筒部41は、吐出筒部19に対して着脱自在に、かつ液密に嵌合している。
【0043】
内筒部42は、その上端縁において接続筒部43の天壁の下面に接続している。内筒部42の外周面には、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起42a(係合部)が形成されている。内筒部42の突起42aは、塗布栓9の上筒部26の突起26bに下側から対向している。
接続筒部43は、外筒部41よりも小径に形成されている。接続筒部43の周壁の下端開口縁は、吐出筒部19の上端開口縁に上側から当接している。接続筒部43の周壁の下端部には、その外側から外筒部41の上端部が接続している。
【0044】
塗布容器1は、中栓部材4、計量筒部材7、塗布栓9、弾性部材28、及び移行中栓40が組み立てられてなる計量塗布具を、内容物の充填された容器本体2の口部3に装着した後に、オーバーキャップ10を口部3に螺着することで形成される。
【0045】
以下、本実施形態の塗布容器1の作用について説明する。
図2に示すように、塗布容器1の使用前において、容器本体2の口部3にオーバーキャップ10が装着された状態では、移行中栓40が計量筒部材7の頂部に装着されている。このとき、塗布栓9の前記塗布栓下シール部(周壁24bの下端部)が受け筒12の周壁の内側に嵌合して、計量室6と連通孔5との連通が遮断されている。
【0046】
塗布容器1を用いて、内容物を被塗布部Sに塗布するには、まず、オーバーキャップ10を上側へ移動させて容器本体2の口部3から離脱させ、吐出孔8及び塗布栓9の先端を容器外部に露出させる。ここで、オーバーキャップ10が離脱される際には、引き上げ筒31の突起31aと移行中栓40の外筒部41の突起41aとが互いに容器軸O方向に係合することで、オーバーキャップ10とともに移行中栓40が上側へ移動する。このとき、移行中栓40の内筒部42の突起42aは、塗布栓9の突起26bにその下側から当接して係止され、さらに移行中栓40が上側へ移動することで、内筒部42に係止された塗布栓9を引き上げて計量位置に移動させる。この際、口部3の雄ねじ部、およびオーバーキャップ10の雌ねじ部は、二条ねじであるため、一条ねじである構成と比較して、ねじのリードが大きくなる。このため、オーバーキャップ10の周方向の回転量に対する容器軸O方向の変位量を大きくすることができる。これにより、塗布栓9を速やかに上側に移動させることができるとともに、オーバーキャップ10を容器本体2の口部3から速やかに離脱させることができる。
【0047】
塗布栓9が計量位置へ移動させられると、塗布栓9のストッパー突起24cが計量筒部材7の連結筒部20の天壁(吐出孔8の開口周縁部)に当接し、これにより、この塗布栓9が計量位置を越えて上昇することが規制される。この状態から、さらに容器本体2の口部3に対してオーバーキャップ10及び移行中栓40が上側へ移動することで、
図3に示すように、移行中栓40の内筒部42の突起42aが、塗布栓9の突起26bを上側へ向けて乗り越えて、塗布栓9から取り外される。これにより、オーバーキャップ10が移行中栓40とともに容器本体2の口部3から取り外される。
【0048】
次いで、塗布栓9が計量位置に配置された状態で、塗布容器1を倒立姿勢にして、計量室6内に内容物を流入させる。これにより、計量室6に所定量の内容物が計量される。
次いで、
図4に示すように、計量位置に位置する塗布栓9の先端を、被塗布部Sに押し付けると、塗布栓9は、下側に向かって塗布位置へ移動する。ここで、中栓部材4には、塗布位置に位置する塗布栓9により、容器軸O方向に圧縮変形させられる弾性部材28が装着されている。このため、塗布栓9を塗布位置へ移動させる過程において、塗布栓9は、弾性部材28に当接して弾性部材28を弾性変形させつつ弾性変位して、塗布栓9の外周と吐出孔8との間を開口させる。そして、ガイド筒部25の下端開口縁は、弾性部材28を容器軸O方向に圧縮変形させて、中栓部材4の支持リブ11bの上縁に当接する。
これにより、塗布容器1は、計量室6と連通孔5との連通が遮断されるとともに、吐出孔8と計量室6とが連通し、吐出孔8と塗布栓9の先端(上筒部26)との間を通して内容物を被塗布部Sに塗布することができる。
【0049】
ここで、塗布開始状態において、塗布栓9の外周と吐出孔8との間に隙間が形成されている場合には、内容物の塗布後に負圧となった容器本体2内へ外気をスムーズに導入することができる。
【0050】
塗布容器1の使用を終了するに際し、オーバーキャップ10を容器本体2の口部3に装着するときには、移行中栓40の内筒部42の突起42aが塗布栓9の突起26bにその上側から当接して係止される。この係止状態からさらにオーバーキャップ10が下側へ移動することで、塗布栓9が計量位置に位置している場合には塗布位置へ向けて押し下げられる。
そして、塗布栓9のガイド筒部25の下端開口縁が、弾性部材28に上側から当接して支持された状態から、さらにオーバーキャップ10とともに移行中栓40が下側へ向けて移動することで、塗布栓9は、弾性部材28を弾性変形させながら下側へ移動し、支持体11の支持リブ11bに対してその上側から当接する。これにより、塗布栓9のそれ以上の下側へ向けた移動が規制される。この状態からさらにオーバーキャップ10及び移行中栓40が下側へ向けて移動することで、内筒部42の突起42aは、塗布栓9の突起26bを下側へ向けて乗り越えて、
図2に示す状態となる。
【0051】
以上に詳述したように、この塗布容器1によれば、塗布栓9の先端を被塗布部Sに押し付けることで、計量室6内の内容物を被塗布部Sに塗布することができる。
そして、人体の頭皮や皮膚等の被塗布部Sに塗布栓9を押し付け、内容物を塗布する際に、上記弾性変位によるクッション作用の発生によって、押し付け時に被塗布部Sに及ぼされる衝撃や外力等が緩和されて、柔らかな塗布感触を得ることができるとともに、不快さや心地悪さを感じることが抑えられ、快適で心地よい塗布を行うことができる。
【0052】
また、中栓部材4に、塗布位置に位置する塗布栓9により、容器軸O方向に圧縮変形させられる弾性部材28が装着されていて、中栓部材4及び弾性部材28が互いに別部材により構成されているので、これらを形成する材質の選択の幅が拡がり、例えば、中栓部材4を容器本体2の口部3に対して強固に取り付けつつ、この塗布容器1を長期にわたって繰り返し使用しても、弾性部材28が復元変形しにくくなる等の劣化を防ぐことを容易に実現することができる。
【0053】
また、中栓部材4には、塗布位置に位置する塗布栓9を下側から支持する支持リブ11bが配設されているので、塗布栓9が塗布位置からさらに下側に変位して、塗布栓9と吐出孔8との間に生ずる隙間が過度に大きくなることを防ぐことができる。したがって、吐出の精度をより一層高めることができる。
【0054】
また、移行中栓40及び塗布栓9は、容器軸O方向に係合するので、中栓部材4、計量筒部材7、塗布栓9、弾性部材28、及び移行中栓40が組み立てられてなる計量塗布具において、塗布栓9が、中栓部材4及び計量筒部材7に対して容器軸O方向に移動するのを抑制することが可能となる。これにより、塗布栓9が弾性部材28に対して繰り返し突き当たる等することが抑えられ、弾性部材28の破損を防ぐことができる。
【0055】
また、移行中栓40が計量筒部材7の頂部に装着されているので、塗布容器1を製造する過程において、前記計量塗布具を搬送する際に、頂部に他の部材が直接衝突するのを防ぐことが可能になり、移行中栓40と計量筒部材7との間のシール性を確実に確保することができる。
【0056】
また、移行中栓40によって、塗布栓9が、計量室6と連通孔5との連通を遮断する位置に位置させられるので、前記計量塗布具が、内容物の充填された容器本体2の口部3に装着された状態で、内容物が計量室6に進入するのを防ぐことが可能になり、オーバーキャップ10を移行中栓40とともに離脱したときに、不用意に内容物が吐出孔8から外部に漏出するのを防止することができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の塗布容器101について説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0058】
図6に示すように、中栓部材4の支持体111は、受け筒12の底壁12aに立設されて容器軸Oに同軸に延びる軸部111aを備えている。軸部111aの下端部には、弾性部材28が外嵌されている。弾性部材28の下端縁は、受け筒12の底壁12aに上側から当接している。
【0059】
オーバーキャップ110は、有頂筒状をなしている。オーバーキャップ110の天壁は、円環状に形成されている。オーバーキャップ110の天壁には、移行中栓140の外筒部41を外側から囲う囲繞筒131が垂下設されている。また、オーバーキャップ110の天壁の開口端縁には、径方向内側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起110aが形成されている。
【0060】
移行中栓140は、オーバーキャップ110の天壁の開口内に嵌合されている。移行中栓140の接続筒部143の周壁における上端部には、径方向外側へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状又は円弧状の突起143aが形成されている。接続筒部143の突起143aは、オーバーキャップ110の突起110aに上側から係止されている。これにより、移行中栓140は、オーバーキャップ110の内側に固着されている。このとき、接続筒部143の天壁の上面は、オーバーキャップ110の天壁の上面と面一になっている。
なお、上記形態において、オーバーキャップ110の天壁は、外装体により覆われていてもよい。これにより、オーバーキャップ110と移行中栓140の境界部を外部から見えないようにすることができるため、塗布容器101の意匠性を向上させることができる。
【0061】
このように構成された塗布容器101であっても、第1実施形態の塗布容器1と同様に、快適で心地よい塗布を行うことができる。また、中栓部材4及び弾性部材28が互いに別部材により構成されているので、これらを形成する材質の選択の幅が拡げることができる。
【0062】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態においては、計量室6の内嵌合筒15が、中栓部材4のフランジ部14に上側に向けて突設されているとしたが、これに限定されるものではない。具体的に、内嵌合筒15を設けなくても、計量筒部材7と中栓部材4との連結部分における液密性が確保できる場合には、内嵌合筒15を設けなくてもよい。
【0063】
また、上記各実施形態においては、塗布栓9が、有頂筒状の下筒部24、下筒部24の天壁24aから垂下設されたガイド筒部25、及び、下筒部24の天壁24aから立設された上筒部26を備えた構成を一例として用いたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、下筒部24の周壁24bとガイド筒部25とは、互いに径方向に間隔をあけずに一体に形成されていてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態においては、弾性部材28が弾性変形可能な軟材質により形成された部材であるとしたが、これに限定されず、弾性部材は例えばコイルスプリング等であってもよい。
【0065】
また、上記各実施形態においては、容器本体2の口部3に対して、オーバーキャップ10,110が螺着により着脱自在に装着されているとしたが、これに限定されるものではなく、例えばそれ以外のアンダーカット嵌合等により、着脱自在に装着されていてもよい。
また、オーバーキャップ10,110が容器本体2の口部3に着脱自在に装着されているが、これに限定されず、計量筒部材に着脱自在に装着される構成であってもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。