特許第6596275号(P6596275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6596275-包装用容器の蓋 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596275
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   B65D47/08 100
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-177303(P2015-177303)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-52533(P2017-52533A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武尚
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203449(JP,A)
【文献】 実開平06−020261(JP,U)
【文献】 特開2005−067647(JP,A)
【文献】 特開2015−107815(JP,A)
【文献】 特開2012−240741(JP,A)
【文献】 米国特許第05400912(US,A)
【文献】 特開2012−176764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋と、キャップ本体とを備え、該上蓋と該キャップ本体とがヒンジ部を介して結合される包装用容器の蓋であって、
該上蓋は、周壁と、内壁と、該周壁に形成された第1の係合部と、該内壁に形成された第2の係合部とを有しており、
該キャップ本体には、係合筒と、筒壁部と、該係合筒の外面に形成された第1の被係合部と、該筒壁部の外面に形成された第2の被係合部とを有しており、
該第1の係合部は、該上蓋を閉じた際に該第1の被係合部と係合可能に該周壁の内面に形成され、
該第2の係合部は、該上蓋を閉じた際に該第2の被係合部と係合可能に該内壁の内面に形成されており、
該上蓋は、該第2の係合部と該第2の被係合部とが係合した際にその位置が該ヒンジ部のある方向に補正されることを特徴とする包装用容器の蓋。
【請求項2】
前記上蓋が閉じられた際に、前記内壁の中心位置が、前記筒壁部の中心位置より前記ヒンジ部とは反対側の方向に偏心した位置となる様に設計されていることを特徴とする請求項に記載の包装用容器の蓋。
【請求項3】
前記内壁は、少なくとも前記ヒンジ側半周に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用容器の蓋。
【請求項4】
前記筒壁部は、注出筒であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の包装用容器の蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器の蓋に関し、より詳細には、上蓋とキャップ本体とがヒンジ結合された包装用容器の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
上蓋とキャップ本体とがヒンジ結合された包装用容器の蓋、所謂、ヒンジキャップにおいては、上蓋のスカート壁外面とキャップ本体の内面に突起等のアンダーカットを形成し、それらを係合することで、蓋が閉じられた状態を維持することができる様になっている。この様なヒンジキャップは、通常、射出成形によって金型により成形される。
【0003】
一方、機能やデザイン上の観点から、上蓋を大きくすることが困難なヒンジキャップがある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−3758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様なヒンジキャップにおいては、それを射出成形するに当たり上蓋のスカート壁外面及びキャップ本体の内面のアンダーカットを大きくすると、当該アンダーカットを金型より無理抜きすることが困難となるため、成形不能となる。
【0006】
このため、上蓋のスカート壁外面及びキャップ本体の内面のアンダーカットを大きくすることができず、それらの係合が浅くなり十分な係合力を確保することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、機能やデザイン上の観点から、上蓋を大きくすることが困難な包装用容器の蓋であっても、上蓋とキャップ本体との係合力を十分確保することが可能な包装用容器の蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上蓋と、キャップ本体とを備え、該上蓋と該キャップ本体とがヒンジ部を介して結合される包装用容器の蓋であって、該上蓋は、周壁と、内壁と、該周壁に形成された第1の係合部と、該内壁に形成された第2の係合部とを有しており、該キャップ本体には、係合筒と、筒壁部と、該係合筒の外面に形成された第1の被係合部と、該筒壁部の外面に形成された第2の被係合部とを有しており、該第1の係合部は、該上蓋を閉じた際に該第1の被係合部と係合可能に該周壁の内面に形成され、該第2の係合部は、該上蓋を閉じた際に該第2の被係合部と係合可能に該内壁の内面に形成されており、該上蓋は、該第2の係合部と該第2の被係合部とが係合した際にその位置が該ヒンジ部のある方向に補正されることを特徴とする包装用容器の蓋である。
【0009】
、本発明は、前記上蓋が閉じられた際に、前記内壁の中心位置が、前記筒壁部の中心位置より前記ヒンジ部とは反対側の方向に偏心した位置にくる様に設計することも可能である。又、本発明は、前記内壁が、少なくとも前記ヒンジ側半周に形成されていればよい。又、本発明は、前記筒壁部が、注出筒であってもよい。
【0010】
尚、本発明において、“第1の”や“第2の”という表現を用いているが、当該表現は各構成の区別を明確にするために用いられているに過ぎず、その数や順番には、特に意味がないものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上蓋の周壁とキャップ本体の係合筒及び上蓋の内壁とキャップ本体の筒壁部の2箇所で上蓋とキャップ本体とを係合するものとしたため、上蓋とキャップ本体との係合力を十分確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図2のI−I線における断面図である。
図2】本発明の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図1及び図2に基づき説明する。包装用容器の蓋1(以下、単に蓋1と略記する)は、所謂、ヒンジキャップである。蓋1は、上蓋2とキャップ本体3とを備えており、上蓋2とキャップ本体3とは、ヒンジ部4を介して連結されている。
【0014】
キャップ本体3は、頂壁5と、頂壁5の外縁より垂下する外筒6とを有している。頂壁5の天面には、その外縁に近い部分に係合筒7が立設されていると共に係合筒7よりも内方に筒壁部8が立設されている。又、頂壁5のキャップ本体の筒壁部8より外方の内面には、内筒9が形成されている。
【0015】
係合筒7は、その外面上方にキャップ本体3の第1の被係合部である第1の被係合突起7aが形成されている。本実施形態においては、第1の被係合突起7aは、上蓋2が閉じられた際の鍔部15側(ヒンジ部4とは反対側)略220°の領域に形成されている。
【0016】
筒壁部8は、その外面上方にキャップ本体3の第2の被係合部である第2の被係合突起8aが略全周に亘って形成されている。本実施形態において、筒壁部8は、注出筒を兼ねており、その上壁8bには、数個の注出口10が形成されている。
【0017】
内筒9は、外筒6と共に包装用容器(図示せず)の口部と嵌合する嵌合溝11を形成している。本実施形態において、外筒6は、雌螺子様となっており、雄螺子様に形成された包装用容器の口部が螺合可能となっているが、この様な螺条を設けず、蓋1を当該口部に打栓し、その打栓力によって当該口部を嵌合溝11に嵌合可能とすることもできる。
【0018】
上蓋2は、一般的なヒンジキャップの上蓋の厚さが15 mm程度であるのに対して、その厚さLが12 mm以下となっており、比較的薄く形成されている。又、上蓋2は、天壁12と天壁12の外縁より垂下する周壁13を有している。
【0019】
天壁12の内面には、インナーリングとも呼称される筒状の内壁14が形成されている。本実施形態において、内壁14は、周壁13よりも高さ方向に短い筒状に形成されている。周壁13のヒンジ部4とは反対側の外面下方には、鍔部15が形成されており、鍔部15と対向する周壁13の内面下方には、上蓋2の第1の係合部である第1の係合突起13aが形成されている。又、内壁14の内周面には、上蓋2の第2の係合部である第2の係合突起14aが形成されている。
【0020】
第1の係合突起13aは、上蓋2が閉じられた際に、係合筒7の第1の被係合突起7aと係合させる様に形成されている。本実施形態においては、第1の係合突起13aは、周壁13のヒンジ4側略200°の領域に形成されている。
【0021】
第2の係合突起14aは、上蓋2が閉じられた際に、筒壁部8の第2の被係合突起8aと係合可能となっている。本実施形態においては、第2の係合突起14aは、筒壁部8の略全周に亘って形成されている。
【0022】
つまり、本実施形態においては、上蓋2を矢印A方向に回動させ上蓋2が閉じられた際に、上蓋2とキャップ本体2は、上蓋2の第1の係合突起13aとキャップ本体2の第1の被係合突起7a及び上蓋2の第2の係合突起14aとキャップ本体2の第2の被係合突起8aとが係合されることとなる。
【0023】
従って、本実施形態においては、上記2箇所で上蓋2とキャップ本体3との係合力を確保することが可能となっている。そのため、第1の係合突起13aと係合筒7との係合力が比較的弱いものであったとしても第2の係合突起14aと筒壁部8で係合力を補完することが可能である。そのため、第1の係合突起13aや第1の被係合突起7aを大きくすることなく十分な係合力を確保することが可能となっている。
【0024】
又、本実施形態においては、内壁14は、上蓋2が閉じられた際に、その中心位置Cが筒壁部8の中心位置Cに対して鍔部15側に偏心した位置となる様に設計されている。そのため、本実施形態においては、上蓋2は、閉じられる際に、図1中に二点鎖線で示した様に上蓋2が内壁14によってヒンジ部4のある方向(矢印A方向)にその位置が補正される様になっている。
【0025】
その様にすることで、本実施形態においては、第1の係合突起13aが係合筒7に押し付けられ、第1の係合突起13aと第1の被係合突起7aとの係合力をより大きなものとすることが可能となっている。そのため、本実施形態においては、少なくともヒンジ部4側略半周に亘って内壁14(第2の係合突起14a)を形成すれば、十分な当該係合力を確保することが可能となっている。尚、この際、周壁13及び内壁14は、外方に向かって変形することとなるが、図1においては、この変形を省略して示している。
【0026】
更に、この様にすることで、本実施形態においては、例えば、油分の多い調味液等の潤滑性が高い内容物が内壁14や筒壁部8に付着し、第2の係合突起14aと第2の被係合突起8a間の摩擦が低減されて、係合力が低下したとしても、上蓋2が閉じられた状態を保持するのに十分な係合力を確保することが可能になっている。
【実施例】
【0027】
以下に示す本発明の実施例並びに比較例1及び2を作成し、オートグラフも用いて比較検討した。その結果を、表1に示す。
(1)実施例は、上記実施形態と同じ第1の被係合突起7aが形成された係止筒7、第1の係合突起13aが形成された筒壁部13、第2の被係合突起8aが形成された周壁8及び第2の係合突起14aが形成された内壁14を有するポリプロピレン製の蓋である。
(2)比較例1は、実施例より第2の被係合突起8aと第2の係合突起14aを省いたものである。
(3)比較例2は、実施例より第1の被係合突起7aと第1の係合突起13aを省いたものである。
【0028】
【表1】
【0029】
表1は、上記実施例並びに比較例1及び2について、各5個ずつ上蓋2を開けるために必要な力(上蓋OP強度)を、オートグラフを用いて測定した結果である。この結果が示す通り、本発明の実施例は、比較例1及び2と比較して非常に上蓋OP強度が向上することが分かった。即ち、実施例は、比較例1及び2と比較して、上蓋2とキャップ本体3との係合力が飛躍的に改善していることが分かる。
【0030】
本発明を、上記実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。例えば、各係合突起13a,14aや各被係合突起7a,8aは、上蓋2が閉じられた状態を維持するのに必要な係合力をそれらの総和で確保できればよく、その長さ、形状、大きさ等は適宜変更可能であり、又、必ずしも連続的に設ける必要もなく、間欠的に設けることも可能である。
【0031】
又、筒壁部8とは別個に注出筒を設けることも可能である、その場合、注出筒は、筒壁部8よりも内方に設けることが望ましい。これら注出筒は、上壁8bを設けず、全面的に注出口10が形成されているものでもよい。そして、別途、プルリング等が立設された開口予定部を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 包装用容器の蓋 2 上蓋 3 キャップ本体
4 ヒンジ部 5 頂壁 6 外筒
7 係合筒 7a 第1の被係合突起 8 筒壁部
8a 第2の被係合突起 8b 上壁 9 内筒
10 注出口 11 嵌合溝 12 天壁
13 周壁 13a 第1の係合突起 14 内壁
14a 第2の係合突起 15 鍔部
図1
図2