特許第6596287号(P6596287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596287
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】プラント保全支援システム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20191010BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G21C17/00 110
   G21C17/00 600
   G05B23/02 R
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-188602(P2015-188602)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-62208(P2017-62208A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】東 隆史
(72)【発明者】
【氏名】真塩 健二
(72)【発明者】
【氏名】山下 太香恵
(72)【発明者】
【氏名】椎塚 晋
(72)【発明者】
【氏名】西谷 順一
(72)【発明者】
【氏名】内海 正文
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 純
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−240642(JP,A)
【文献】 特開2011−76334(JP,A)
【文献】 特開2011−227706(JP,A)
【文献】 特開平7−270574(JP,A)
【文献】 特開2006−252311(JP,A)
【文献】 特開2004−191359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00−17/14
G05B 23/00−23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの異常予兆を検知する異常予兆監視システムと、
異常予兆の検知結果に基づいて、前記原子力プラントの異常事象を特定すると共に、特定した前記異常事象に関連付けられる異常予兆設備を特定し、特定した前記異常事象及び前記異常予兆設備に関する情報を含む異常診断情報を生成する異常診断システムと、
前記原子力プラントの保全計画を作成する保全計画作成システムと、
前記異常予兆設備を含む設備の待機除外によって前記原子力プラントに生じるリスクを評価し、評価結果としてのリスク情報を生成するリスク評価システムと、
前記原子力プラントで用いられる部品を管理するための部品管理情報を有する部品管理システムと、を備え、
前記リスク評価システムは、
前記リスク情報及び前記異常診断情報に基づいて、前記異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定し、前記異常予兆設備に対する保全作業が必要であると判定すると、
前記保全計画作成システムは、
前記保全計画に、前記異常予兆設備を含む設備に対する保全作業の保全実施時期を設定し、
前記部品管理システムは、
前記保全計画作成システムによって設定された前記保全実施時期において、前記部品管理情報に基づいて、前記部品の手配が可能であるか否かを判定することを特徴とするプラント保全支援システム。
【請求項2】
前記部品管理システムは、
前記部品管理情報に基づいて、前記保全実施時期における前記部品の手配が可能であると判定した場合、前記保全実施時期における前記部品の手配を実行する一方で、
前記保全実施時期における前記部品の手配が不能である場合、前記保全実施時期が、前記部品の手配が可能な時期となるように、前記保全計画作成システムに前記保全実施時期の再設定を要求することを特徴とする請求項1に記載のプラント保全支援システム。
【請求項3】
前記部品管理情報は、前記部品の在庫数に関する在庫情報を含んでおり、
前記部品管理システムは、
前記保全計画作成システムによって設定された前記保全計画に基づいて、前記部品の在庫数が前記保全計画に対応可能な在庫数となるように、前記在庫情報を更新することを特徴とする請求項1または2に記載のプラント保全支援システム。
【請求項4】
前記リスク評価システムは、
前記異常予兆設備に対する保全作業の実施後に、前記リスク情報を更新することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラント保全支援システム。
【請求項5】
前記原子力プラントに設けられる設備の余寿命を評価する余寿命評価システムを、さらに備え、
前記リスク評価システムは、
前記余寿命評価システムにおいて評価した前記異常予兆設備の余寿命情報、前記リスク情報及び前記異常診断情報に基づいて、前記異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラント保全支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの保全計画を作成するプラント保全支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント機器異常を診断する状態診断部と、状態診断部で診断した情報を用いてプラント機器異常がプラント運転に及ぼす影響を評価するプラント運転影響度評価部と、状態診断部及びプラント運転影響度評価部で得た結果を用いてプラント機器の点検方法及び点検時期を決定する点検方法/時期決定部とからなるプラント機器の保守支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−240642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、原子力プラントを安全に運転するために、原子力プラントの保守及び点検は、保全計画に基づいて行われている。保全計画は、原子力プラントの設備の重要度、設備の点検時期、及び設備の消耗品の取り替え時期等に基づいて策定される。策定される保全計画を最適化するためには、原子力プラントの異常予兆の発生を考慮することが望ましい。この点において、特許文献1の保守支援装置では、状態診断部で得た診断結果に基づいて、点検方法及び点検時期を決定している。しかしながら、原子力プラントでは、保全作業を行うにあたって、設備の消耗品等の部品を取り替えることがあり、決定した点検時期に部品を手配できない場合には、原子力プラントへの保全作業を効率良く行うことが困難となる。また、点検時期を決定する場合には、原子力プラントの異常予兆の発生の他に、原子力プラントに与えられるリスクを考慮する必要がある。なお、リスクは、一般的に、確率論的リスク評価(PRA:Probabilistic Risk Assessment)によって算出される。
【0005】
そこで、本発明は、原子力プラントに異常予兆が発生した場合、原子力プラントへの保全作業を効率良く行うことができるプラント保全支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラント保全支援システムは、原子力プラントの異常予兆を検知する異常予兆監視システムと、異常予兆の検知結果に基づいて、前記原子力プラントの異常事象を特定すると共に、特定した前記異常事象に関連付けられる異常予兆設備を特定し、特定した前記異常事象及び前記異常予兆設備に関する情報を含む異常診断情報を生成する異常診断システムと、前記原子力プラントの保全計画を作成する保全計画作成システムと、前記異常予兆設備を含む設備の待機除外によって前記原子力プラントに生じるリスクを評価し、評価結果としてのリスク情報を生成するリスク評価システムと、前記原子力プラントで用いられる部品を管理するための部品管理情報を有する部品管理システムと、を備え、前記リスク評価システムは、前記リスク情報及び前記異常診断情報に基づいて、前記異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定し、前記異常予兆設備に対する保全作業が必要であると判定すると、前記保全計画作成システムは、前記保全計画に、前記異常予兆設備を含む設備に対する保全作業の保全実施時期を設定し、前記部品管理システムは、前記保全計画作成システムによって設定された前記保全実施時期において、前記部品管理情報に基づいて、前記部品の手配が可能であるか否かを判定することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、原子力プラントに異常予兆が発生した場合、リスク情報及び異常診断情報に基づいて、異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定することができる。そして、異常予兆設備に対する保全作業が必要である場合、保全計画に、異常予兆設備に対する保全作業の保全実施時期を優先的に設定することができる。このとき、部品管理システムは、保全実施時期に部品の手配を適切に行うことができるか否かを判定することができる。つまり、保全実施時期に部品の手配ができない場合には、保全実施時期に部品を手配する対応をとることが可能となる。よって、原子力プラントに異常予兆が発生し、異常予兆設備に対する保全作業を行う場合であっても、保全実施時期に部品を適切に手配することができるため、原子力プラントへの保全作業を効率良く行うことができる。なお、リスク情報としては、確率論的リスク評価(PRA)より算出される炉心損傷確率または格納容器破損確率等がある。
【0008】
また、前記部品管理システムは、前記部品管理情報に基づいて、前記保全実施時期における前記部品の手配が可能であると判定した場合、前記保全実施時期における前記部品の手配を実行する一方で、前記保全実施時期における前記部品の手配が不能である場合、前記保全実施時期が、前記部品の手配が可能な時期となるように、前記保全計画作成システムに前記保全実施時期の再設定を要求することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、保全実施時期に部品を手配することができない場合であっても、保全実施時期を、部品を手配することが可能な時期に再設定することで、保全実施時期に、確実に部品を手配することが可能となる。
【0010】
また、前記部品管理情報は、前記部品の在庫数に関する在庫情報を含んでおり、前記部品管理システムは、前記保全計画作成システムによって設定された前記保全計画に基づいて、前記部品の在庫数が前記保全計画に対応可能な在庫数となるように、前記在庫情報を更新することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、異常予兆設備の保全実施時期が設定された保全計画に対して、部品の在庫数を最適な数にすることができる。
【0012】
また、前記リスク評価システムは、前記異常予兆設備に対する保全作業の実施後に、前記リスク情報を更新することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、保全作業を実施した異常予兆設備は、正常な設備となるため、原子力プラントに生じるリスクを再評価することで、最新のリスク情報に基づいて、保全計画を適切に作成することが可能となる。
【0014】
また、前記原子力プラントに設けられる設備の余寿命を評価する余寿命評価システムを、さらに備え、前記リスク評価システムは、前記余寿命評価システムにおいて評価した前記異常予兆設備の余寿命情報、前記リスク情報及び前記異常診断情報に基づいて、前記異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、異常予兆設備の余寿命を考慮することができるため、異常予兆設備に対する保全作業の要否を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るプラント保全支援システムに関する概略構成図である。
図2図2は、保全計画に関する説明図である。
図3図3は、異常予兆設備及びリスク情報に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0018】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るプラント保全支援システムに関する概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るプラント保全支援システム1は、納入先に設置した原子力発電プラント(原子力プラント)10の保全を支援するシステムである。本実施形態において、プラント保全支援システム1は、原子力発電プラント10を製造(建設)した製造元が保有する場合について説明する。なお、プラント保全支援システム1は、プラント保全支援システム1を構成する複数のシステムの一部を、納入先に配置してもよく、システム構成については特に限定されない。ここで、プラント保全支援システム1の説明に先立ち、納入先で運用される原子力発電プラント10について説明する。
【0019】
納入先は、納入先において管理される納入側データベース11を有している。納入先に設けられる納入側データベース11には、原子力発電プラント10に設けられる複数の計測機器からそれぞれ出力される複数の計測パラメータが、プラント運転データとして記憶されている。また、この納入側データベース11には、納入先において作成した保全計画に関する保全計画データが記憶されている。なお、納入側データベース11には、上記した計測パラメータ及び保全計画データを含む各種データが記憶されている。
【0020】
製造元に設けられるプラント保全支援システム1は、納入先から提供される各種データを記憶すると共に、プラント保全支援システム1において用いられる各種データを記憶する製造側データベース21が設けられている。また、プラント保全支援システム1は、異常予兆監視システム22と、異常診断システム23と、余寿命評価システム24と、リスク評価システム25と、保全計画作成システム26と、部品管理システム27と、を含む構成となっている。なお、プラント保全支援システム1は、各システム21,22,23,24,25,26,27が統合された構成であってもよいし、各システム21,22,23,24,25,26,27がそれぞれ独立した構成であってもよく、特に限定されない。
【0021】
製造側データベース21は、納入側データベース11と接続されており、記憶装置等のハードウェア資源を用いて構成されている。製造側データベース21は、納入側データベース11との間で各種データを通信可能となっており、例えば、納入側データベース11に記憶されているプラント運転データ及び保全計画データを取得して記憶する。また、製造側データベース21は、各システム21,22,23,24,25,26,27に接続されており、各システム21,22,23,24,25,26,27からの要求に基づいて、所定のデータを各システム21,22,23,24,25,26,27へ向けて出力する。さらに、製造側データベース21は、各システム21,22,23,24,25,26,27から提供された所定のデータを取得し、記憶している。
【0022】
異常予兆監視システム22は、製造側データベース21から取得した複数の計測パラメータの相互の相関関係を表す相関値に基づいて、原子力発電プラント10の異常予兆を検知している。具体的に、異常予兆監視システム22は、複数の計測パラメータのうち、2つの計測パラメータの相関強さを表す相関値をそれぞれ導出する。異常予兆監視システム22は、導出した全ての計測パラメータの相関値を足し合わせた相関値を監視指示値として用いている。そして、異常予兆監視システム22は、異常予兆であるか否かを判定するためのしきい値が予め設定されており、監視指示値がしきい値を超えた場合、異常予兆があると判定(検知)する一方で、監視指示値がしきい値以下である場合、異常予兆がないと判定(未検知)する。異常予兆監視システム22は、異常予兆があると検知すると、異常予兆の検知結果を異常診断システム23に出力する。なお、異常予兆監視システム22は、上記の構成に限定されるものではなく、原子力発電プラント10の異常予兆を検知するものであれば、いずれの構成であってもよい。
【0023】
異常診断システム23は、原子力発電プラント10の異常予兆の検知結果を取得し、取得した異常予兆の検知結果に基づいて、原子力発電プラント10の異常を診断する。具体的に、異常診断システム23は、製造側データベース21に記憶された、異常に関するデータを用いて、異常を診断している。異常に関するデータとしては、原子力発電プラント10の異常事象と、異常事象に関連付けられる異常予兆設備と、異常事象に関連付けられる異常対応処置と、異常事象に関連付けられる異常予兆検知結果と、を含む情報である。そして、異常診断システム23は、異常予兆監視システム22から取得した異常予兆検知結果に基づいて、異常事象を特定すると共に、異常事象に関連付けられる異常予兆設備及び異常対応処置を特定する。そして、異常診断システム23は、特定した異常事象及び異常予兆設備に関する情報を含む異常診断情報を生成し、製造側データベース21に記憶させる。
【0024】
余寿命評価システム24は、原子力発電プラント10を構成する設備の余寿命を評価する。余寿命評価システム24は、製造側データベース21から取得したプラント運転データに基づいて、設備の余寿命を評価し、評価結果として、各設備の余寿命に関する余寿命情報を生成し、製造側データベース21に記憶させる。また、余寿命評価システム24は、異常予兆があると特定した異常予兆設備の余寿命を評価し、評価結果として、異常予兆設備の余寿命に関する余寿命情報を生成し、製造側データベース21に記憶させる。
【0025】
リスク評価システム25は、異常予兆設備を含む設備の待機除外によって原子力発電プラント10に生じるリスクを評価し、評価結果としてのリスク情報を生成し、製造側データベース21に記憶させる。なお、リスク情報としては、確率論的リスク評価(PRA)より算出される炉心損傷確率または格納容器破損確率等が用いられる。
【0026】
保全計画作成システム26は、原子力発電プラント10の保全計画を作成する。保全計画作成システム26は、製造側データベース21から保全計画、異常診断情報及びリスク情報を取得する。保全計画作成システム26は、取得した異常診断情報及びリスク情報に基づいて、異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定する。また、保全計画作成システム26は、異常予兆設備に対する保全作業が必要であると判定すると、取得した保全計画を基準として、異常予兆設備を含む設備に対する保全作業の保全実施時期を設定する。なお、保全計画作成システム26は、異常予兆設備に対する保全作業の保全実施時期を設定する場合、異常予兆設備を優先的に保全作業するために、予め設定されていた保全実施時期よりも早い時期に設定する。
【0027】
図2は、保全計画に関する説明図である。製造側データベース21から取得される保全計画は、例えば、図2に示すとおり、原子力発電プラント10の設備と、設備の保全実施時期とを関連付けたものとなっている。図2は、その左側の項目が、設備の項目となっており、設備の項目の右側の項目が、保全実施時期となっている。なお、保全実施時期としては、原子力発電プラント10の定期点検中に行われる定期点検時期と、原子力発電プラント10の運転期間中に行われるオンラインメンテナンス時期とがある。なお、図2において、定期点検時期は、時系列順に、「#1点検」、「#2点検」・・・と表しており、オンラインメンテナンス期間は、時系列順に、「#1運転」、「#2運転」・・・と表している。詳細は後述するが、図2では、異常予兆設備が「××ポンプB」となっており、「××ポンプB」の保全実施時期を、「#4運転」から「#3運転」に再設定している。
【0028】
部品管理システム27は、原子力発電プラント10の保全作業で用いられる部品を、部品を管理するための部品管理情報に基づいて管理する。部品管理システム27は、保全実施時期において各設備で使用される部品を、保全計画に基づいて手配する。部品管理システム27は、部品を手配する場合、倉庫31に部品の予備品があるか否かを判定し、予備品がない場合、部品業者に部品を発注する。一方で、部品管理システム27は、倉庫31に予備品がある場合、倉庫31から納入先に部品を納品する。
【0029】
また、部品管理情報には、部品の在庫数に関する在庫情報が含まれている。部品管理システム27は、保全計画作成システム26によって設定された保全計画に基づいて、部品の在庫数が保全計画に必要十分な在庫数となるように、在庫情報を更新している。つまり、部品管理システム27は、保全計画が更新(再設定)される度に、部品の在庫数が最適な数となるように、在庫情報を自動更新している。
【0030】
次に、異常予兆を検知したときのプラント保全支援システム1の動作について説明する。プラント保全支援システム1において、異常予兆監視システム22が異常予兆を検知すると、異常予兆監視システム22は、異常予兆検知結果を異常診断システム23に出力する。異常診断システム23は、異常予兆検知結果を取得すると、異常予兆設備を特定し、特定した異常予兆設備に関する情報を含む異常診断情報を生成し、生成した異常診断情報を製造側データベース21に記憶させる。
【0031】
リスク評価システム25は、製造側データベース21に記憶された異常診断情報を取得すると、異常予兆設備のリスク情報と、余寿命評価システム24において生成された異常予兆設備の余寿命情報とを取得する。そして、リスク評価システム25は、異常診断情報、リスク情報及び余寿命情報に基づいて、異常予兆設備のリスク情報を再評価し、再評価した結果に基づいて、異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定する。つまり、異常予兆が検知された設備は、余寿命が早まることから、再評価したリスク情報は、リスクが高まる。このため、リスク評価システム25は、保全計画において予め設定された保全実施時期において、再評価した異常予兆設備のリスクが、予め設定したしきい値よりも大きくなる場合、異常予兆設備に対する保全作業が必要であると判定する。一方で、リスク評価システム25は、再評価したリスクが、予め設定したしきい値以下となる場合、異常予兆設備に対する保全作業が必要でないと判定する。
【0032】
保全計画作成システム26は、リスク評価システム25において異常予兆設備に対する保全作業が必要であると判定すると、異常予兆設備の保全実施時期が早くなるように再設定する。ここで、図3を参照して、異常予兆設備の保全実施時期の再設定について説明する。
【0033】
図3は、異常予兆設備及びリスク情報に関する説明図である。図3に示すように、生成されるリスク情報は、一例として数値化したリスク影響度として取り扱われる。ここで、図3において、異常予兆設備は「××ポンプB」である。図3では、「××ポンプB」を含む複数の設備の保全作業を行う場合に、これらの設備の待機除外を行った際のリスク影響度を示している。なお、待機除外とは、待機状態となっている設備を、保全作業のために待機状態を解除することである。
【0034】
図2に示すように、「××ポンプB」は、予め作成された保全計画の保全実施時期が「#4運転」となっている。「××ポンプB」の保全実施時期は、保全計画作成システム26によって、「#3運転」に再設定される。そして、リスク評価システム25は、「#3運転」中のリスク影響度を評価している。リスク評価システム25は、「#3運転」中における、異常予兆設備を含む複数の設備に係るリスクが、予め設定したしきい値Lよりも大きくなる場合、異常予兆設備の保全作業によるリスクが高くなるとして、「#3運転」への保全実施時期の変更が不能である(不成立)と判定する。一方で、リスク評価システム25は、「#3運転」中における、異常予兆設備を含む複数の設備に係るリスクが、予め設定したしきい値L以下となる場合、異常予兆設備の保全作業によるリスクが低いとして、「#3運転」への保全実施時期の変更が可能である(成立)と判定する。そして、保全計画作成システム26は、保全実施時期の変更が可能であると判定されると、保全実施時期を再設定し、再設定後の保全計画を作成する。
【0035】
部品管理システム27は、部品管理情報に基づいて、再設定後(変更後)の保全実施時期において、異常予兆設備で使用する部品の手配が可能であるか否かを判定する。部品管理システム27は、部品管理情報に基づいて、保全実施時期における異常予兆設備の部品の手配が可能であると判定した場合、倉庫31から納入先へ向けて、部品の手配を実行する。一方で、部品管理システム27は、部品管理情報に基づいて、保全実施時期における異常予兆設備の部品の手配が不能であると判定した場合、部品業者へ向けて部品の発注を行うと共に、保全計画作成システム26に異常予兆設備の保全実施時期の再設定を要求する。
【0036】
保全計画作成システム26は、部品管理システム27から保全実施時期の再設定の要求がなされると、異常予兆設備の保全実施時期が、部品の手配が可能な時期となるように、再設定する。
【0037】
そして、リスク評価システム25は、異常予兆設備に対する保全作業の実施後に、リスク情報を再評価し、製造側データベース21のリスク情報を更新する。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、リスク評価システム25は、原子力発電プラント10に異常予兆が発生した場合、リスク情報及び異常診断情報に基づいて、異常予兆設備に対する保全作業の要否を判定することができる。そして、保全計画作成システム26は、異常予兆設備に対する保全作業が必要である場合、保全計画に、異常予兆設備に対する保全作業の保全実施時期を優先的に設定することができる。このとき、部品管理システム27は、保全実施時期に部品の手配を適切に行うことができるか否かを判定することができる。つまり、部品管理システム27は、保全実施時期に部品の手配ができない場合、保全実施時期に部品を手配する対応をとることが可能となる。よって、原子力発電プラント10に異常予兆が発生し、異常予兆設備に対する保全作業を行う場合であっても、保全実施時期に部品を適切に手配することができるため、原子力発電プラント10への保全作業を効率良く行うことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、保全計画作成システム26は、保全実施時期に部品を手配することができない場合、保全実施時期を、部品を手配することが可能な時期に再設定する。このため、部品管理システム27は、異常予兆設備の保全実施時期に、確実に部品を手配することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、保全作業を実施した異常予兆設備は、正常な設備となるため、リスク評価システム25は、原子力発電プラント10に生じるリスクを再評価することで、最新のリスク情報に基づいて、保全計画を適切に作成することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態によれば、リスク評価システム25は、異常予兆設備の余寿命を考慮することができるため、異常予兆設備に対する保全作業の要否を適切に判定することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 プラント保全支援システム
10 原子力発電プラント
11 納入側データベース
21 製造側データベース
22 異常予兆監視システム
23 異常診断システム
24 余寿命評価システム
25 リスク評価システム
26 保全計画作成システム
27 部品管理システム
31 倉庫
図1
図2
図3