(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項4に記載の製造方法で形成された積層板の一部または全体に加熱処理を施し、前記加熱処理を施した積層板を金型内に投入し、加圧処理を施すことで、前記金型の型形状に追従した型成形品を形成する工程を含むことにより、前記積層板を成型する型成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態の積層板を
図1〜
図3を参照して説明する。
図2(c)に示すように本実施形態の積層板16は、繊維マット7からなる本体層としての本体11と、本体11の表面及び裏面に対して積層されたフィルターシート層としてのフィルターシート9、及びフィルターシート9の表面に積層されたシールド層Sとを有する。
【0020】
繊維マット7にて構成された本体11は、空隙を有しており、その空隙内には後述する熱可塑性樹脂が存する。また、フィルターシート9は、そのシート表裏面を貫通する空隙を有しており、その空隙内には前記熱可塑性樹脂が存する。そして、本体11とフィルターシート9は前記熱可塑性樹脂により接着固定されている。
【0021】
シールド層Sは、後述する多数の導電材が層状に配置された状態で固化された前記熱可塑性樹脂によりその層状態が保持されるとともに、フィルターシート9に対して該熱可塑性樹脂により接着固定されている。
【0022】
次に、前記繊維マット7、フィルターシート9、及びシールド層Sの材料について説明する。
(繊維マット7の材料)
繊維マット7の材料は、ガラス繊維単独、または、ガラス繊維に補強繊維を加えてもよい。補強繊維としては、樹脂繊維、玄武岩繊維、天然繊維、或いはパルプ繊維等から選ばれた1種、または2種以上からの混合物からなる。
【0023】
ガラス繊維としては、連続ガラス繊維単独、または、連続ガラスとチョップドガラス繊維との組合せが好ましい。
樹脂繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリ乳酸繊維等を含む。
【0024】
これらの繊維は、後述する熱可塑性樹脂よりも融点が高く、加熱処理及び加圧処理をした際に、不織布形態、織物形態或いは編物形態を保持できるものが好ましい。
繊維マット7の形態としては、不織布の単独、或いは、織物、編物から選ばれた1種、或いは2種を不織布に重層状に積層してもよい。
【0025】
(フィルターシート9の材料)
フィルターシート9の材料は、樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維(植物繊維、動物繊維、鉱物繊維を含む)、パルプ繊維等を含む。
【0026】
ガラス繊維としては、連続ガラス繊維単独、または、連続ガラスとチョップドガラス繊維との組合せ、または、チョップドガラス繊維単独が好ましい。
フィルターシート9の材料として樹脂繊維を使用する場合、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリ乳酸繊維等を含むことが好ましい。
【0027】
フィルターシート9の形態は、不織布の単層が好ましいが、不織布に限定するものではなく、織物、或いは編物から選ばれた1種の単層、或いは前述した不織布、織物、編物の中から2種以上を重層状に構成していてもよい。なお、フィルターシートとするためには、後述する軟化状態の熱可塑性樹脂を通過させるが、後述する導電材を通過させない、盧材の機能を有することが好ましい。
【0028】
すなわち、フィルターシート9は、表裏面を通過する多数の空隙を備えており、該空隙は、前記軟化状態の熱可塑性樹脂を通過させるが、後述する導電材を通過させない径を有していて、盧材の機能を有している。なお、フィルターシート9の空隙の大きさは、シールド層S側の前記空隙の開口部が、後述する導電材を通過させない径を有することが好ましいが、必ずしも、シールド層S側の開口部でなくても、フィルターシート9の厚み方向のいずれかの部分において、後述する導電材を通過させない径を有するものであってもよい。
【0029】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、後述する熱可塑性樹脂シートの組成物である。
本体11(繊維マット7)とフィルターシート9との間、及びフィルターシート9とシールド層Sとを接着固定する熱可塑性樹脂は、代表的には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0030】
ここで、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリ乳酸は結晶性樹脂であり、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂は非晶性樹脂である。
【0031】
なお、前記繊維マット7、及びフィルターシート9が熱可塑性樹脂を採用している場合、本体11(繊維マット7)とフィルターシート9との間、及びフィルターシート9とシールド層Sとを接着固定する熱可塑性樹脂は、繊維マット7、及びフィルターシート9で使用している熱可塑性樹脂よりも軟化温度が低い熱可塑性樹脂を採用する。
【0032】
(シールド層Sにおける導電材)
シールド層Sの導電材は、金属繊維、炭素繊維から選ばれた1種または2種を混合して使用することが好ましい。
【0033】
(製造方法)
次に、積層板16の製造方法を
図1(a)、
図1(b)を参照して説明する。
図1(a)に示すように、チョップガラス繊維容器1からは繰出し装置3を介してチョップドガラス繊維が、及び連続ガラス繊維容器2からは繰出し装置4を介して連続ガラス繊維がそれぞれ引き出されて、ネットコンベア5に供給された後に、ニードルパンチ装置6で処理されて不織布の繊維マット7として搬出される。
【0034】
図1(b)に示すように、熱可塑性樹脂シート8が重ねられた一対の不織布のフィルターシート9と前記繊維マット7とがそれぞれ搬送されて、
図2(a)に示す第一重合体10となる。ここで、熱可塑性樹脂シート8は、導電材として金属繊維、カーボン繊維が混合されたものである。なお、導電材の混合割合は、後述するシールド層Sの厚み(設計値)に応じてその割合が設定されている。
【0035】
前記第一重合体10においては、一枚の繊維マット7からなる本体11の表側に一枚のフィルターシート9が両フィルターシート9間でその繊維マット7を挟むように重ねられ、さらにこの両フィルターシート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シート8が繊維マット7との間でそのフィルターシート9を挟むように重ねられる。
【0036】
(加熱加圧処理)
第一重合体10が加熱加圧ゾーン12を通過する際に加熱処理及び加圧処理される。このときの加熱温度は、熱可塑性樹脂シート8の熱可塑性樹脂の軟化温度以上が好ましい。なお、前記加熱温度は、繊維マット7、フィルターシート9に、熱可塑性樹脂シート8とは異なる熱可塑性樹脂からなる繊維が含まれている場合には、この熱可塑性樹脂の軟化温度よりも低い温度である。
【0037】
熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂の場合には、前記軟化温度は、ガラス転位点の温度である。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合は、結晶性樹脂は100%結晶化することはなく、非晶の部位を有する。このことから、結晶性樹脂は、ガラス転位点と該ガラス転位温度よりも高い融点とを有することになる。従って、結晶性樹脂の軟化温度は、ガラス転位点、または融点を意味する。
【0038】
前記加熱温度で加熱されると、
図2(b)に示すように、熱可塑性樹脂シート8が軟化してその繊維マット7内の空隙及びフィルターシート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸された第二重合体13となる。
【0039】
加圧されることにより、軟化した熱可塑性樹脂がフィルターシート9へ含浸される際、熱可塑性樹脂シート8に含入された多数の導電材は、フィルターシート9のフィルタ効果により、フィルターシート9の表面に留置されて、フィルターシート9表面に残った一部の軟化状態の熱可塑性樹脂とともにシールド層Sを形成する。このように多数の導電材が、フィルターシート9のフィルタ効果により、フィルターシート9の表面に留置されることにより、加圧されるより以前の状態に比較して導電材の濃密層が形成されることになる。
【0040】
(冷却加圧処理)
そして、第二重合体13が冷却加圧ゾーン14を通過する際に冷却処理及び加圧処理されると、
図2(c)に示すように、繊維マット7内の空隙及びフィルターシート9内の空隙、並びにシールド層Sでそれぞれ熱可塑性樹脂が固化して繊維マット7の表側に両フィルターシート9が接着された第三重合体15である積層板16となる。また、フィルターシート9の表面には、多数の導電材が固化した熱可塑性樹脂により保持されて固化したシールド層Sを形成する。
【0041】
ここで積層板16において、フィルターシート9の厚みは
図2(a)に示す第一重合体10の繊維マット7の厚みよりも小さくなっている。
ここでフィルターシート9が、樹脂繊維で形成されていた場合、その樹脂繊維の軟化温度が熱可塑性樹脂シート8の軟化温度よりも高いため、熱可塑性樹脂シート8が軟化して繊維マット7内の空隙及びフィルターシート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂が含浸される際にも、フィルターシート9の形態を保つことができる。
【0042】
(加熱処理)
なお、さらに前記第三重合体15である積層板16に前記熱可塑性樹脂シート8の熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱処理を施すと、
図2(d)に示すように、繊維マット7内の空隙及びフィルターシート9内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂が軟化して繊維マット7が繊維のスプリングバックにより膨らむ。そのスプリングバックにより、繊維マット7内の空隙率よりもフィルターシート9内の空隙率が小さくなる。その後、繊維マット7内の空隙及びフィルターシート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂が自然冷却により固化し、前記第三重合体15よりも厚みの大きい例えば二倍以上の厚みの第四重合体17である積層板18となる。積層板18において、フィルターシート9の厚みは
図2(c)に示す繊維マット7の厚みよりも大きくなっている。
【0043】
(型成形品)
次に、型成形品について説明する。
図3(a)に示すように、第三重合体15または第四重合体17である積層板16,18を金型にセットして成形すると、第五重合体19である成形体20となる。
【0044】
図3(b)に示すように、第三重合体15(または第四重合体17)である積層板16、18に成形枠セットして、該積層板16、18の一部または全体、例えば積層板16、18全体に熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱処理を施す。な、積層板16は、この加熱処理により膨らむ。そして、この積層板16、18を金型内に投入して加圧処理を施すと、型成形部位である台板部としての積層板16、18の外周縁全体に第三重合体15がその台板部の縁板部として成形された第六重合体21である成形体22となる。そして、積層板16、18は金型の型形状に追従した成形品となり、前記加圧処理が施された部位は使用された金型の形状によって任意の厚みになる。
【0045】
また、型成形部位は、積層板16、18と同様にその厚み方向において、本体11と、フィルターシート9と、フィルターシート9の表面に積層されたシールド層Sと、本体11内の空隙、フィルターシート9の空隙に存するとともに、本体11とフィルターシート9、及びフィルターシート9とシールド層Sを接着している熱可塑性樹脂とを備える。
【0046】
なお、前記積層板16,18や成形体20,22については、フィルターシート9の色や模様などに変化を持たせて装飾性を高めることができる。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
【0047】
(1)本実施形態の積層板16、18は、ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体11(本体層)と、本体11の両方の表面に積層されたフィルターシート9(フィルターシート層)と、フィルターシート9の表面に積層されたシールド層Sを有する。また、積層板16、18は、本体11内の空隙、フィルターシート9の空隙に存するとともに、本体11とフィルターシート9、及びフィルターシート9とシールド層(9)を接着している熱可塑性樹脂とを備える。そして、シールド層Sは、多数の導電材が熱可塑性樹脂にて保持されている。
【0048】
この結果、本実施形態によれば、ガラス繊維を含む繊維マットを有する積層板であって、機械的強度を導電材に依存しないとともに、前記導電材の使用量を少なくすることができる効果を奏する。また、導電材がフィルターシートの表面に積層されているため、積層板に電磁シールド特性を付与することができる。また、フィルターシートは、製造時において、導電材が本体内に侵入しないようにフィルターとして機能して、フィルターシート層の表面に集積されて、固化された熱可塑性樹脂により保持されている。このため、導電材の密度を高めることができる。
【0049】
また、本体11の繊維マット7内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、フィルターシート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7の表側に対するフィルターシート9の接着強度を高めてフィルターシート9の非剥離性を向上させることができる。
【0050】
(2)本実施形態の型成形部位を有する型成形品では、型成形部位は、積層板16、18と同様にその厚み方向において、ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体11と、フィルターシート9と、フィルターシート9の表面に積層されたシールド層Sとを有する。また、前記本体11内の空隙、及びフィルターシート9の空隙には熱可塑性樹脂が存するとともに、本体11とフィルターシート9、及びフィルターシート9とシールド層Sは前記熱可塑性樹脂にて接着されている。そして、シールド層Sは、多数の導電材が前記熱可塑性樹脂にて保持されている。この結果、型成形品において、ガラス繊維を含む繊維マットを有する型成形品であって、機械的強度を導電材に依存しないとともに、前記導電材の使用量を少なくすることができる効果を奏する。
【0051】
(3)本実施形態の積層板の製造方法は、ガラス繊維を含む繊維マットを有する本体11と、フィルターシート9と、導電材が混合された熱可塑性樹脂シート8とを重ねて、本体11と熱可塑性樹脂シート8間にフィルターシート9が挟まれた第一重合体10を形成する工程を有する。
【0052】
次の工程では、第一重合体10に対して加熱処理及び加圧処理を施すことにより、前記熱可塑性樹脂シート8を軟化させて本体11内の空隙及びフィルターシート9内の空隙にそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させるとともに、フィルターシート9の表面に導電材を留置させた第二重合体13を形成する。
【0053】
又、次の工程では、第二重合体13に対してさらに冷却処理及び加圧処理を施すことにより、熱可塑性樹脂を固化させ、この固化により、本体11の表側にフィルターシート9を接着するとともに、留置させた導電材を固着してシールド層Sを有する第三重合体15を形成する。この結果、本実施形態の製造方法によれば、ガラス繊維を含む繊維マットを有する積層板であって、機械的強度を導電材に依存しないとともに、前記導電材の使用量を少なくすることができる積層体を製造できる。
【0054】
特に、フィルターシートは、製造時において、フィルターとして機能することにより、導電材がフィルターシートの表面に集積されて、固化された熱可塑性樹脂により保持されている。このため、導電材の密度を高めることができる。
【0055】
(4)本実施形態の積層板の製造方法は、第三重合体15に加熱処理を施すことにより、本体11内の空隙及びフィルターシート9内の空隙でそれぞれ固化した熱可塑性樹脂を軟化して本体11の繊維マット7をガラス繊維のスプリングバック性を利用して膨らませる工程を有する。また、本製造方法は、本体11内の空隙及びフィルターシート9内の空隙でそれぞれ熱可塑性樹脂を固化させて前記第三重合体よりも厚みの大きい第四重合体17を形成する。この結果、本実施形態によれば、厚みを増大させた積層板を形成することができる。
【0056】
(5)本実施形態の型成形品の製造方法は、上記積層板18の一部に加熱処理を施し、前記加熱処理を施した積層板を金型内に投入し、加圧処理を施すことで、前記金型の型形状に追従した型成形品を形成する工程を含むことにより、前記積層板を成型する。この結果、機械的強度を導電材に依存しないとともに、導電材の使用量を少なくすることができる電磁シールド特性を備えた型成形品を製造できる。
【0057】
(6)積層板16(第三重合体15)は積層板18(第四重合体17)と比較して薄いため、撓み強度を高めることができる。
次に、第2〜第7実施形態を第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0058】
(第2実施形態)
以下の説明では、熱可塑性樹脂シート8は導電材が混合されているものとし、熱可塑性樹脂シート8aは、導電材が混合されていないものと「8」と、「8a」の符号により区別するものとする。
【0059】
(第3実施形態)
図4(b)に示す第2実施形態の第一重合体10においては、第一重合体10における両フィルターシート9の表側に一枚の熱可塑性樹脂シート8が重ねられる。
【0060】
また、繊維マット7の両面と各フィルターシート9の間には、熱可塑性樹脂シート8aが介在配置される。この第一重合体10を、
図1(b)の加熱加圧ゾーン12及び冷却加圧ゾーン14に通過させると、積層板16は、
図6(a)に示すように両面にシールド層Sを有したものとなる。なお、熱可塑性樹脂シート8aは、加熱加圧ゾーン12を通過するときに、加熱により軟化して、繊維マット7の空隙内に含浸されて、冷却加圧ゾーン14を通過すると、繊維マット7内の空隙内で固化する。
【0061】
図6(b)は、
図6(a)に示す積層板16を、さらに加熱処理して、繊維マット7を繊維のスプリングバックにより膨らませて、第四重合体17である積層板18を形成したものである。
【0062】
(第3実施形態)
図5(a)に示す第3実施形態の第一重合体10においては、
図2(a)及び
図4(a)に示す第1実施形態の第一重合体10における本体11が、二枚の繊維マット7とそれらの間に挟まれた一枚の熱可塑性樹脂シート8aとからなる。この第一重合体10を、
図1(b)の加熱加圧ゾーン12及び冷却加圧ゾーン14に通過させると、
図7(a)に示すように、積層板16は、両面に、シールド層Sを有したものとなる。なお、熱可塑性樹脂シート8aは、加熱加圧ゾーン12を通過するときに、加熱により軟化して、両繊維マット7の空隙内に含浸されて、冷却加圧ゾーン14を通過すると、繊維マット7内の空隙内で固化する。
【0063】
図7(b)は、
図7(a)に示す積層板16を、さらに加熱処理して、繊維マット7を繊維のスプリングバックにより膨らませて、第四重合体17である積層板18を形成したものである。
【0064】
また、
図5(a)に代えて、
図5(b)に示す第一重合体10としてもよい。
図5(b)に示す第一重合体10においては、
図5(a)に示す第一重合体10における本体11の両表面に熱可塑性樹脂シート8aが積層されている。このように構成した場合においても、この第一重合体10を、
図1(b)の加熱加圧ゾーン12及び冷却加圧ゾーン14に通過させると、
図7(a)に示すように、積層板16は、両面に、シールド層Sを有したものとなる。
【0065】
(第4実施形態)
図8(a)に示す第4実施形態の第三重合体15(積層板16)は、本体11を三層の繊維マット7にて構成したものであり、本体11の表裏両面にフィルターシート9が積層され、フィルターシート9の表面にシールド層Sが積層されたものである。
【0066】
なお、図示はしないが、第一重合体10の繊維マット7、熱可塑性樹脂シート8,8aの積層の仕方は、上記した他の実施形態と同様に行えばよい。
図8(b)は、
図8(a)に示す積層板16を、さらに加熱処理して、繊維マット7を繊維のスプリングバックにより膨らませて、第四重合体17である積層板18を形成したものである。
【0067】
(第5実施形態)
図9(a)に示す第5実施形態の第三重合体15(積層板16)は、本体11を四層の繊維マット7にて構成したものであり、本体11の表裏両面にフィルターシート9が積層され、フィルターシート9の表面にシールド層Sが積層されたものである。
【0068】
なお、図示はしないが、第一重合体10の繊維マット7、熱可塑性樹脂シート8,8aの積層の仕方は、上記した他の実施形態と同様に行えばよい。
図9(b)は、
図9(a)に示す積層板16を、さらに加熱処理して、繊維マット7を繊維のスプリングバックにより膨らませて、第四重合体17である積層板18を形成したものである。上記した第2〜第5実施形態においても、第1実施形態と同様に型成形体を成形することができる。
【0069】
第2実施形態〜第5実施形態は、第1実施形態の(1)〜(5)の他に下記の効果を有する。
(1)積層板16,18及び型成形品において、ガラス繊維を含む繊維マット7を主体とする本体11内の空隙と、不織布のフィルターシート9内の空隙とにそれぞれ熱可塑性樹脂を含浸させた。そして、積層板16,18及び成形体20,22の強度を高めることができるとともに、その本体11の繊維マット7の表側に重ねたフィルターシート9の表面にシールド層Sを有する。この結果、本体11の繊維マット7内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂と、フィルターシート9内の空隙に含浸させた熱可塑性樹脂とが互いにつながるため、本体11の繊維マット7の表側に対するフィルターシート9の接着強度を高めてフィルターシート9の非剥離性を向上させることができる。
【0070】
(2)積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した不織布のフィルターシート9には薄膜や微細穴が生じる。このため、そのフィルターシート9に衝突した入射音が薄膜を振動させたり微細穴を通過したりする際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の低周波域を減衰する。また、積層板18において、熱可塑性樹脂が含浸した繊維マット7を有する本体11に多孔質部が生じるため、フィルターシート9を通過した入射音がその多孔質部を通過する際に生じるエネルギー変換作用により、主に入射音の中周波域や高周波域を減衰する。従って、積層板18の吸音性を高めることができる。そのような積層板18を利用して成形された成形品についても同様に吸音性を高めることができる。
【0071】
(実施例)
次に、実施例を
図10〜
図15を参照して説明する。
本実施例は、第1実施形態を具体化した、両面にシールド層Sを有する実施例と、第1実施形態の変形例であって、片面にのみシールド層Sがある実施例を含み、いずれも繊維マット7にチョップドガラス繊維を使用しないで、連続ガラス繊維を使用したものである。
【0072】
(1)繊維マット7の材料
連続ガラス繊維の目付量は、500〜700g/m^2とした。なお、「^ 」はべき乗を表わしている。
【0073】
(2)導電材を含む熱可塑性樹脂シート8
炭素繊維を10〜50%含んだポリプロピレンペレットと、ポリプロピレンペレットとをブレンドした後、押し出し機ホッパーに投入し、その後、160〜220℃に加熱し、ダイスから押し出したものをローラーにて延伸し、厚みt=0.3〜0.5mmの熱可塑性樹脂シート8を準備した。熱可塑性樹脂シート8における、最終的な導電材の含有率(この例では炭素繊維率)は、2.5%、4.0%、5.0%となるようにした。
【0074】
(3)フィルターシート9
本実施例では、フィルターとしての役割を持たせるために、ポリエステル繊維径2〜8デニールのポリエステル繊維からなる不織布をニードルパンチした。不織布の目付は、50〜180g/m^2とした。なお、積層板を構成するには必須ではないが、本実施例では、パインダーとしてアクリル樹脂をフィルターシート9の全表面に塗布した。
【0075】
上記の繊維マット7、熱可塑性樹脂シート8、フィルターシート9を第1実施形態で説明した製造方法にて、
図2(c)及び
図2(d)に示す積層板16、18を製造した。
なお、
図1(b)に示す加熱加圧ゾーン12における加熱加圧処理は、加熱温度240℃、加熱時間105秒、加圧力10kg/cm^2で行った。
【0076】
また、
図1(b)に示す冷却加圧ゾーン14における冷却加圧処理は、冷却温度40℃、冷却時間105秒、加圧力10kg/cm^2で行った。
・実施例1−1は、両面にシールド層Sを有するもので、炭素繊維率2.5%、非膨張の積層板16である。
【0077】
・実施例1−2は、実施例1−1を加熱処理により膨張させた積層板18である。
・実施例2−1は、両面にシールド層Sを有するもので、炭素繊維率4.0%の非膨張の積層板16である。
【0078】
・実施例2−2は、実施例2−1を加熱処理により膨張させた積層板18である。
・実施例3−1は、両面にシールド層Sを有するもので、炭素繊維率5.0%の非膨張の積層板16である。
【0079】
・実施例3−2は、実施例3−1を加熱処理により膨張させた積層板18である。
・実施例4−1は、片面にシールド層Sを有するもので、炭素繊維率2.5%の非膨張の積層板16である。
【0080】
・実施例4−2は、実施例4−1を加熱処理により膨張させた積層板18である。
・実施例5−1は、片面にシールド層Sを有するもので、炭素繊維率5.0%の非膨張の積層板16である。
【0081】
・実施例5−2は、実施例5−1を加熱処理により膨張させた積層板18である。
なお、実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1の厚みtは1.3mmであり、実施例1−2、2−2、3−2、4−2、5−2の厚みtは4.7mmである。
【0082】
比較例1〜3として、炭素繊維ペレットとポリプロビレンを混合したものを押し出して、板厚1.3mmの板材を作った。比較例1〜3の炭素繊維率は、それぞれ2.5%、5.0%、70%である。
【0083】
上記実施例と比較例について、以下に説明するKEC法を用いて、電磁波シールド特性(電界シールド効果)を測定した。
KEC法は、(財)関西電子工業振興センターによる測定方法である。
図10及び
図11を用いて測定方法を説明する。
【0084】
KEC法は、
図10に示す測定装置を使用する。測定装置は、2つのシールドボックス50を有する。シールドボックス50は、縦80mm、横100mmの矩形断面の筒状部51を有する。筒状部51の中には、中心導体52が配置されており、筒状部51の端部に先細部材が連結され、その先端には入出力部53を有する。
【0085】
測定する際には、
図10に示すように、2つのシールドボックス50をそれらの開口部が向かい合うように配置するとともに、2つのシールドボックス50の間にサンプル54を配置した後、シールドボックス50同士を対向状態で圧縮し、EMIガスケット55を介してシールする。
【0086】
図10に示すようにシグナルジェネレータ56で発生した電磁波は、RFパワー増幅器57及び減衰器58によりレベルが調整された後、
図11に示す入出力部53に伝送され、一方の中心導体52からサンプル54に対して発振される。サンプル54を通過した電磁波は、対向配置された他方の中心導体52から、入出力部53を経て、減衰器58及びRFプレ増幅器59によりレベルが調整された後、スペクトラムアナライザー60で受信周波数(受信レベル)として検出される。
【0087】
なお、シールド効果(SE)は以下の式で求められる。
SE(dB)=201ogE1−201ogE2
(式中、E1:サンプル54が存在しないときの受信レベルであり、E2:サンプル54が存在するときの受信レベルである)
前記測定装置で電界シールド効果を測定し、測定結果を
図12〜
図15に示した。
図12、
図13のグラフは、横軸に周波数、縦軸に電界シールド効果(シールド特性)を示す。
図14、
図15のグラフは、横軸に実施例、縦軸に電界シールド効果(シールド特性)を示す。
【0088】
電界シールド効果は、一般的に、10〜20dBの場合は、最小限の効果があるとされており、30〜60dBの場合は平均的な効果があるとされ、60〜90dBの場合は平均以上の効果があるとされている。
【0089】
図12に示すように、実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1の電磁波シールドでは、比較例と同等、或いは特定の周波数の範囲では比較例以上の良好な電磁波シールド特性が得られていることが確認できた。また、実施例は、広範囲の周波数に対して電界シールド効果があることが確認できた。
【0090】
図13に示すように、膨張させた実施例1−2、2−2、3−2、4−2、5−2の電磁波シールドは、良好な電磁波シールド特性が得られており、広範囲の周波数に対して電界シールド効果があることが確認できた。
【0091】
図14は、実施例1−1、3−1、4−1、5−1、並びに比較例1〜3の電界シールド特性の最大値を示している。同図に示すように、炭素繊維率が2.5%の実施例1−1、4−1、炭素繊維率が5.0%の実施例3−1、5−1も、比較例1〜3以上の最大値を示していることが確認できた。特に、実施例1−1、4−1のように炭素繊維率2.5%であっても、炭素繊維率が2.5%、5.0%、7.0%の比較例1〜3よりも最大値が大きい値が得られている。このことは、実施例の方が、比較例よりも少ない炭素繊維率で、良好な電磁波シールド特性が得られていることが確認できた。
【0092】
図15は、非膨張の実施例1−1、3−1、4−1、5−1と、膨張の実施例1−2、3−2、4−2、5−2との電界シールド特性の最大値を示している。
図15に示すように、膨張の実施例と非膨張の実施例とでは、最大値の大きな差はないことが確認できた。
【0093】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・第1実施形態では、チョップドガラス繊維と、連続ガラス繊維とにて繊維マット7を構成したが、チョップドガラス繊維単独、或いは、連続ガラス繊維単独で繊維マット7を構成してもよい。また、他の実施形態においても、同様にしてよい。
【0094】
・第1実施形態では、ニードルパンチ装置6にて、1回のニードルパンチ処理を行うようにしたが、2回以上のニードルパンチ処理を行ってもよい。また、他の実施形態においても、同様にしてよい。