(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発明者は、小型で高感度が得られる衛星電波腕時計用のアンテナとして、一対のチップアンテナを直線上に配置することを検討している。ここで、チップアンテナはチップ状の部品として形成されたアンテナであり、一対のチップアンテナは1つの擬似的なダイポールアンテナを構成する。衛星電波腕時計は、金属を含む電池や耐磁板、モータなど、電波の受信に影響を及ぼす部材を含み、また、それらの部材をコンパクトなケース内に密に配置する必要がある。このため、チップアンテナと各部材との配置によっては受信感度に差異が生じるが、これまで、一対のチップアンテナと各部材との好適な配置については十分には検討されていなかった。
【0015】
そこで、発明者は、鋭意研究開発を行い、その結果、衛星電波腕時計におけるチップアンテナの好適な配置を見つけ出すに到った。以下の実施形態では、そのチップアンテナの配置について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る衛星電波腕時計1は、時刻情報を含んだ衛星電波を受信し、当該受信した電波に含まれる時刻情報を用いて自身が計時している時刻の修正を行う。
【0017】
図1は、本実施形態に係る衛星電波腕時計1の外観の一例を示す平面図である。衛星電波腕時計1は、ケース50と、リング55と、文字板51と、時針52aと、分針52bと、秒針52cと、時字53a,53bと、一対のアンテナ71a,71bとを含んでいる。アンテナ71a,71bは、衛星電波腕時計1の内部であり、文字板51およびケース50に囲まれた部分に配置されている。
【0018】
時字53a,53bは、文字板51の上に配置されている。時字53aは時針52aが12時を示す位置にあり、時字53bは時針52aが6時を示す位置にある、また1時,2時,・・・,5時、7時、・・・、11時を示す位置にも時字が設けられてよい。リング55は平面視で文字板51を囲むように設けられた金属製の装飾部材であり、ケース50の内周に接している。
【0019】
アンテナ71a,71bのそれぞれは、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される周波数約1.6GHzの電波を受信するチップアンテナであり、主に衛星電波腕時計1の文字板51側から入射する電波を受信するように構成されている。チップアンテナは、チップ状の部品として形成されたアンテナである。一般的には、チップアンテナとして誘電体の表面にアンテナとして働く配線が配置されたものがよく用いられており、
図1に示すチップアンテナも同じである。アンテナ71a,71bは、平面視で長方形であり、アンテナ71a,71bの中央部を通る直線の向きがアンテナ71a,71bの長手方向に沿うように配置されている。
【0020】
ここで、電波の送受信を可能とするために設けられるアンテナ71a,71bのそれぞれは、電波を多く放射する領域と、少ない領域とを有する。一般に、アンテナ71a,71bのようなチップアンテナでは、外縁部のいずれかにおいて電磁界強度の最大値を示す地点があらわれ、かかる地点を含む領域が電波を多く放射する領域となるので、以下では、かかる電磁界強度の最大値を示す地点を含むアンテナ71a,71bの端部を放射端と記載する。放射端の位置は、給電点の位置に依存する。アンテナ71a,71bの場合、そのそれぞれの長手方向の端のうち、内側(アンテナ71a,71bのうち向かい合う側)の端には図示しない給電線が接続されているので、給電線と接続される給電点から最も離れた端部、つまり外側の端が放射端となる。
図1の例では、一対のアンテナ71a,71bは、放射端が互いに外向きになるように配置されている。
【0021】
一対のアンテナ71a,71bは、平面視で、文字板51の外周上の1つの点(
図1では文字板51の外周の円のうち時字53aに最も近い点)と、文字板51の中央(時針52a、分針52b、秒針52cの回転軸)との間に設けられている。以下では、平面視で文字板51の中央の位置を「中心軸」と記載する。
図1の例では、さらに厳密にいえば、平面視でその外周上の1つの点と文字板51の中央とを結ぶ線分上に一対のアンテナ71a,71bが配置され、またその線分上に12時を示す位置(時字53a)が存在する。また、一対のアンテナ71a,71bが配置される線分上に6時を示す位置(時字53b)が存在するようにアンテナ71a,71bが配置されてもよい。
【0022】
次に、衛星電波腕時計1の内部構造について説明する。
図2は、
図1に示す衛星電波腕時計1に内蔵される部材の配置を示す平面図である。
図3は、
図2のIII−III切断線における断面を示す断面図である。なお、文字板51、時針52a、分針52b、秒針52cの上には、衛星電波腕時計1に含まれる風防54が配置されている。
【0023】
衛星電波腕時計1は、その内部に、アンテナ71a,71bだけでなく、日板61、モータ62a,62b,62c、電池63、耐磁板64、太陽電池65、日板押え66、配線基板72、地板75等も含む。
【0024】
太陽電池65は
図3でみて文字板51の下に接するように設けられており、平面視では一対のアンテナ71a,71bを避ける形状となるよう、一対のアンテナ71a,71bの直上にあたる部分には開口が設けられている。耐磁板64は、外部の磁力によりモータ62a,62b,62cを含む駆動機構に対して悪影響が生じることを防ぐために設けられた金属板である。耐磁板64は、太陽電池65の下に設けられている。平面視で、耐磁板64はアンテナ71a,71bと重ならないよう、10時方向から1時方向にかけて斬りかかれた形状となっている。具体的には、耐磁板64は、中心軸からみて1時と2時のとの間の方向から、9時と10時との間の方向まで文字板51の外周に沿って延びる弧と、その弧の終端同士を結び、アンテナ71bの外側の端と中心軸との間の点を通る曲線とにより囲まれている。
【0025】
日板61は、内側に歯車を有し表に日付が表記されたドーナツ状の樹脂板である。日板61は、モータ62cの回転が複数の歯車を介して伝達されることにより回転する。秒針52cはモータ62aの回転が複数の歯車を介して伝達されることにより回転し、時針52aおよび分針52bは、モータ62bの回転が複数の歯車を介して伝達されることにより回転する。日板押え66は、日板61の上方に設けられる円形の樹脂板であり、日板61の内周と内周側の上端とに接し、日板61が浮き上がることなく、中心軸まわりに回転できるよう固定している。地板75は、モータ62a,62b,62cや輪列からなる駆動機構や、各種その他部品を組み付けるハウジングとなる樹脂板である。
【0026】
アンテナ71a,71bは、日板61または日板押え66の下に設けられている。また、アンテナ71a,71bは配線基板72の上に実装されている。なお、配線基板72は、いわゆるプリント基板でよく、配線基板72は地板75の上層かつ日板61の下層にあり、平面視で耐磁板64の存在しない領域とほぼ重なっている。
【0027】
モータ62a,62b,62cはステッピングモータである。電池63は、太陽電池65により発電された電力を貯める二次電池である。モータ62a,62b,62c、電池63は、耐磁板64より下に設けられており、平面視で、耐磁板64と重なっている。
【0028】
ここで、耐磁板64、モータ62a,62b,62c、電池63は、いずれも導電性の金属が使われる大型導電部材といえる。耐磁板64、モータ62a,62b,62c、電池63からなる部材のグループを、大型導電部材グループと呼ぶ。さらに、大型導電部材グループに含まれるモータ62a,62b,62cや電池63は、それに使われる導電性の部分の形状は機能や規格により定まり、その形状を変更できる範囲が限られる。以下では、モータ62a,62b,62cや電池63からなる部材のグループを大型導電部材サブグループと呼ぶ。
【0029】
次に、大型導電部材とアンテナ71a,71bとの配置について説明する。はじめに、一対のアンテナ71a,71bの間には、大型導電部材グループに含まれる部材は配置されていない。さらにいえば、一対のアンテナ71a,71bの放射端(外側の端)同士を結ぶ線分を直径とする円(
図2において破線Aで示している)の内部には、大型導電部材グループに含まれる部材は配置されていない。なお、本例では一対のアンテナ71a,71bの外側の端同士の距離は、文字板51の直径の3分の1以下である。
【0030】
また、一対のアンテナ71a,71bの中央部を通る直線を配置線と呼ぶと、配置線の方向に関して、大型導電部材グループに含まれる部材はその放射端より外側の領域(
図2において、一点鎖線Bより下側の領域及び一点鎖線Cより上側の領域)に重なるように配置されている。特に、大型導電部材サブグループに属する部材は、配置線の方向に関して、その放射端より外側に含まれるように配置される。また、電池63については平面視で配置線の方向に関して、アンテナ71a,71bからみて中心軸の向こうに配置される。
【0031】
次に、アンテナ71a,71bとアンテナの特性との関係について説明する。
図6は、
図2の例に示されるアンテナ71a,71bの配置を概略的に示す平面図である。一対のアンテナ71a,71bはダイポールアンテナに近似した特性を示すため、その利得は、配置線82と直角の方向では強く、配置線82の方向では弱い。配置線82の向きは、一対のアンテナ71a,71bが形成する電波の放射パターン81(ローブ)において、いわゆるヌル方向となる。したがって、上述した大型導電部材の配置により、これらの大型導電部材は主にヌル方向に位置し、メインローブ方向には置かれないことになるから、大型導電部材がアンテナ71a,71bの受信感度に及ぼす悪影響を低減することができる。
【0032】
また、
図1や
図2に示されるように、配置線は、文字板51の6時の位置と12時の位置を通る直線にほぼ平行に延びている。衛星電波を受信する操作をする際には、人体が文字板51の中央から見て6時の方向にあることが多い。一方、人体は電波を吸収するため、アンテナ71a,71bの受信感度に悪影響を及ぼす。したがって、配置線の向きが6時の位置と12時の位置を通る直線に沿うことで、ヌル方向に人体がある可能性を高くし、受信感度への悪影響を低減することができる。さらに、一対のアンテナ71a,71bは、中心軸からみて12時の方向または6時の方向に配置されると好適である。配置線の向きが6時の位置と12時の位置を通る直線に沿っている場合、この配置にすれば、大型導電部材グループに含まれる部材をより広い領域に配置することが可能になり、これらの部材の配置を最適化しやすくなるからである。
【0033】
ここで、一対のアンテナ71a,71bは、配置線の向きに関して、文字板51の外側にあるケース50やリング55の内周より、大型導電部材グループに含まれる部材のいずれかに近い。ケース50やリング55が金属製である場合、これらは衛星電波腕時計1において最大の導電性部材であり、アンテナ71a,71bへ及ぼす影響も大きいと考えられる。したがって、アンテナ71a,71bを相対的にケース50やリング55から離すことで、ケース50やリング55による影響が低減される。
【0034】
なお、太陽電池65は、耐磁板64と同様に、配置線の方向に関して、アンテナ71a,71bの放射端より外側の領域に重なるように配置されている。太陽電池65も大型導電部材グループに属するものとして、衛星電波腕時計1の内部に配置されてよい。例えば、太陽電池65は、一対のアンテナ71a,71bの放射端(外側の端)同士を結ぶ線分を直径とする円の内部に配置されなくてもよい。
【0035】
ここで、必ずしも、アンテナ71a,71bの外形のうち長手方向に延びる辺が配置線82と平行でなくてもよい。
図7は、アンテナ71a、71bの配置の他の一例を概略的に示す平面図である。
図7に示す例では、アンテナ71a,71bの長手方向の辺は、文字板51の6時の位置と12時の位置を通る直線に並行であるが、アンテナ71aおよびアンテナ71bの中心を通る配置線82と、文字板51の6時の位置と12時の位置を通る直線とが角をなすように、アンテナ71a,71bが配置されている。また配置線82の方向に関して、大型導電部材グループに含まれる部材は一対のアンテナ71a,71bより外側の領域(
図7では一点鎖線Bより下側の領域)に重なるように配置されている。なお、
図2や
図6の例と同様に、一対のアンテナ71a,71bの間には、大型導電部材グループに含まれる部材は配置されておらず、一対のアンテナ71a,71bの放射端(外側の端)同士を結ぶ線分を直径とする円の内部には、大型導電部材グループに含まれる部材は配置されていない。
図7の例においても、大型導電部材は主に放射パターン81のヌル方向に位置し、メインローブ方向には置かれない。したがって、大型導電部材がアンテナ71a,71bの受信感度に及ぼす悪影響を低減することができる。
【0036】
図8は、アンテナ71a、71bの配置の他の一例を概略的に示す平面図である。
図8の例では、配置線82は、文字板51の6時の位置と12時の位置を通る直線に平行である。一方、アンテナ71a、71bのそれぞれの長手方向の辺が向かい合っており、アンテナ71a、71bの長手方向の辺は配置線82と直交している。また配置線82の方向に関して、大型導電部材グループに含まれる部材は一対のアンテナ71a,71bより外側の領域(
図8では一点鎖線Bより下側の領域)に重なるように配置されている。
図8の例においても大型導電部材は主に放射パターン81のヌル方向に位置し、メインローブ方向には置かれない。したがって、大型導電部材がアンテナ71a,71bの受信感度に及ぼす悪影響を低減することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態に対し、液晶表示パネル67が設けられ、日板61が設けられていない点が主に異なる。以下では主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0038】
図4は、第2の実施形態にかかる衛星電波腕時計1に含まれる部材の配置を示す平面図である。
図5は、
図4のV−V切断線における断面を示す断面図である。衛星電波腕時計1は、第1の実施形態と同様に、ケース50と、文字板51と、時針52aと、分針52bと、秒針52cと、時字53a,53bと、風防54と、リング55とを含んでいる。また、衛星電波腕時計1は、その内部に、一対のアンテナ71a,71b、モータ62a,62b、電池63、耐磁板64、太陽電池65、液晶表示パネル67、配線基板72、受信回路73、地板75等を含む。
【0039】
アンテナ71a,71bは、平面視で長方形であり、アンテナ71a,71bの中央部を通る直線の向きがアンテナ71a,71bの長手方向に沿うように配置されている。モータ62a,62bはステッピングモータである。秒針52cはモータ62aの回転が複数の歯車を介して伝達されることにより回転し、時針52aおよび分針52bは、モータ62bの回転が複数の歯車を介して伝達されることにより回転する。
【0040】
第2の実施形態にかかる配線基板72は、文字板51の中央部に穴を有するが、一枚の板である。配線基板72は地板75の上層かつ耐磁板64の下層にある。配線基板72の上には、液晶表示パネル67と、受信回路73とアンテナ71a,71bとが実装されている。液晶表示パネル67は、平面視で中心軸からみて6時の方向に存在し、受信回路73およびアンテナ71a,71bは、中心軸からみてほぼ12時の方向に存在する。受信回路73とアンテナ71a,71bとは配線基板72上にある図示しない給電線により接続されている。
【0041】
液晶表示パネル67は、例えばセグメント表示をするパネルであり、信号が印加される電極と対向電極との間に生じる電界により液晶の透過率を変化させることで文字や記号などを表示するものである。
【0042】
液晶表示パネル67には電極や電極と接続する配線などに導電性の部材が使われており、サイズも大きい。したがって、これも、大型導電部材といえる。つまり、大型導電部材グループには耐磁板64、モータ62a,62b、電池63だけではなく液晶表示パネル67も含まれる。また、液晶表示パネル67に使われる導電性の部分の形状は機能や規格により定まり、その形状を変更できる範囲が限られる。したがって、大型導電部材サブグループには、モータ62a,62b、電池63だけではなく液晶表示パネル67も含まれる。
【0043】
第2の実施形態においても、一対のアンテナ71a,71bの放射端(外側の端)同士を結ぶ線分を直径とする円(
図4において破線Aで示している)の内部には、大型導電部材グループに含まれる部材は配置されておらず、もちろん一対のアンテナ71a,71bの間にも大型導電部材グループに含まれる部材は配置されていない。また、一対のアンテナ71a,71bのそれぞれの中央部を通る直線を配置線と呼ぶと、配置線の方向に関して、平面視で大型導電部材グループに含まれる部材はその放射端より外側の領域(
図4において、一点鎖線Bより下側の領域及び一点鎖線Cより上側の領域)に重なるように配置されている。特に、大型導電部材サブグループに属する部材は、配置線の方向に関して、その放射端より外側に含まれるように配置されており、例えば、液晶表示パネル67や電池63は、アンテナ71a,71bからみて中心軸の向こう側に配置されている。
【0044】
従って、第1の実施形態と同様に、受信感度への悪影響を低減することができる。なお、文字板51内でのアンテナ71a,71bの平面的な配置や、耐磁板64の配置は第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態の他の効果と同様の効果も奏する。
【0045】
ここで、液晶表示パネル67とアンテナ71a,71bと、受信回路73とは、同じ配線基板72上に平面視において重なり合わないように配置されている。こうすることで、衛星電波腕時計1の内部の空間を有効に用いることが可能になり、衛星電波腕時計1の部材をより密に配置することが可能になり、衛星電波腕時計1の厚みを削減することが可能になる。
【0046】
以上説明した実施形態に示した具体的な構成は例示として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成そのものに限定するものではない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形、例えば、各部材あるいはその部分の形状や数、配置等を適宜変更したり、例示された実施形態を互いに組み合わせたりしてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。