特許第6596305号(P6596305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000002
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000003
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000004
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000005
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000006
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000007
  • 特許6596305-建物の配管設備 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596305
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】建物の配管設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F16L1/00 C
   F16L1/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-213727(P2015-213727)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-82972(P2017-82972A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智介
(72)【発明者】
【氏名】土谷 睦
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】永山 昌和
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−198536(JP,A)
【文献】 特開平09−100558(JP,A)
【文献】 特開平03−069733(JP,A)
【文献】 特許第4082650(JP,B2)
【文献】 特開平11−140926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
E03B 5/02
E03B 7/04
F17D 1/04
F17D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2階建て以上の集合住宅に設けられる、建物の配管設備であって、
建物共有部に設けられている主縦配管と、
各階の住戸部の床下に設けられている住戸内引込管と、
ある特定階毎に前記主縦配管と前記住戸内引込管を接続する横引き配管と、を備え、
前記特定階に配置された前記横引き配管は、前記特定階の下層階または上層階に設けられた近接階用の副縦配管を介して、前記特定階とは異なる階の住戸内引込管に接続されていることを特徴とする建物の配管設備。
【請求項2】
前記各配管は水を供給する配管であり、
前記横引き配管は、2階毎に設けられており、
横引き配管と、前記特定階の下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されている、請求項1に記載の建物の配管設備。
【請求項3】
前記各配管は電気またはガスを供給する配管であり、
前記横引き配管は、2階毎に、又は3階毎に、設けられており、
前記横引き配管が2階毎に設けられている場合には、横引き配管と、前記特定階の下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されており、
前記横引き配管が3階毎に設けられている場合には、横引き配管と、前記特定階の上及び下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されている、請求項1に記載の建物の配管設備。
【請求項4】
前記副縦配管は、前記建物の階を跨いで縦方向に連通する、電力量計、水道メーター、及びガスメーターのいずれかを収納する空間内に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の建物の配管設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2階建て以上の集合住宅に設けられる建物の配管設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅を施工するに当たり、各住戸に、水、電気、ガス等を供給、排出するための配管設備を設置する必要がある。
図6に、一般的な配管設備の例を示す。図6に示される配管設備は、集合住宅101に設置されている。集合住宅101には、階102を上下に連続して設けられたメーターボックス(以下、MBと記す)104が設置されている。MB104の一方には、廊下、階段、エレベータ等を備えた建物共有部Kが、他方には住戸106を備えた住戸部Sが、それぞれ設置されている。各住戸106には、床下103が備えられている。
この配管設備は、水等が供給、排出される設備関連配管107と、電気が供給される電気関連配管108を備えている。設備関連配管107は、MB104内を上下方向に延在する縦配管107aと、縦配管107aに一端が接続されて床下103を水平方向に延在し、縦配管107aから各住戸106に水等を供給する、床下配管107bを備えている。電気関連配管108も同様に、縦配管108aと、床下配管108bを備えている。
【0003】
このような構成においては、特に設備関連配管107内に水が供給される場合には、階を跨いで延在して各住戸106に水を供給する縦配管107aが、住戸106に隣接するMB104内に配管されているため、ある階の住戸106が水を使用する際に水が縦配管107aを通過する音が、他の、特に下層階の住戸106に騒音として伝わるという問題がある。例えば、水が地下から集合住宅101に供給される場合には、最下層である1階の住戸106には、2階以上の全ての住戸106が水を使用する際に、その騒音が伝わってしまう。
【0004】
上記の問題に対し、特許文献1には、図7に示すような高層集合住宅の配管構造110が開示されている。特許文献1の高層集合住宅においては、各階の中心に共用ゾーン116が配置されており、共用ゾーン116の外周位置に共用ゾーン116を囲むように住戸ゾーン117が配置されている。共用ゾーン116の、住戸ゾーン117から離れた位置には、上下に延びる設備シャフト111が設置されている。共用ゾーン116の共用廊下112は、共用ゾーン116の外周位置に環状に形成されており、二重床構造となっている。設備シャフト111は、この二重床内に設置された設備用ピット113と連通している。各設備の配管は、設備シャフト111の主管に沿って上下方向に展開され、各階においては、設備用ピット113に沿って水平方向に、環状に配管されている。この、設備用ピット113内の横配管114には、各住戸115内の配管が接続されている。
【0005】
このような構成においては、各設備の配管は、共用ゾーン116の、住戸ゾーン117から離れた位置に形成された設備シャフト111の主管に沿って、上下方向に展開されているため、各住戸115に伝わる、水の流れによる騒音を低減することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4082650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6に示されるような配管設備においては、上記のように、水が通過する際の通過音が、通過階の住戸106に騒音として伝わるという問題がある。この問題は、特に下層階において顕著である。他方、図7に示されるように、設備シャフト111を住戸ゾーン117から離すことで水の通過に起因する騒音の低減を試みた、特許文献1に開示されている高層集合住宅の配管構造110においては、各階において、横配管114が設備用ピット113内に、環状に配置されている。したがって、図6に示されるような配管設備に比べると、多くの横配管114を必要とするため、材料費、及び、施工コストが嵩む。
また、多くの横配管114が設置された集合住宅においては、何らかのリニューアルを行う際に、横配管114が障害となる可能性があるため、柔軟なリニューアル計画の立案が困難であるとともに、リニューアルの施工も容易にはできない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、水による騒音の低減と、材料費、施工コストの低減を両立可能な、建物の配管設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明による建物の配管設備は、2階建て以上の集合住宅に設けられるものであり、建物共有部に設けられている主縦配管と、各階の住戸部に設けられている住戸内引込管と、ある特定階毎に前記主縦配管と前記住戸内引込管を接続する横引き配管と、を備え、前記特定階に配置された前記横引き配管は、前記特定階の下層階または上層階に設けられた近接階用の副縦配管を介して、前記特定階とは異なる階の住戸内引込管に接続されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、建物共有部に設けられている主縦配管と、各階の住戸部に設けられている住戸内引込管が、特定階に配置された横引き配管を介して接続されているため、主縦配管を住戸部から離して設置することが可能となる。また、横引き配管が設置されていない階の住戸に関しては、縦方向に延びる近接階用の副縦配管を介して、直近の横引き配管に接続することになるが、横引き配管は特定階毎に設置されているため、副縦配管が多くの階を上下に跨ぐように、副縦配管を設置する必要がなく、したがって、副縦配管の発生する騒音の影響を少なくすることができる。以上の理由により、配管に起因して生じる設備騒音の上下階の住戸への影響を低減することが可能となる。
また、横引き配管は各階に設置されておらず、特定階毎に設置されているため、横引き配管の設置量が少なくなる。これにより、材料費、及び、施工コストを低減することができる。
また、横引き配管は各階に設置されておらず、特定階毎に設置されているため、リニューアル実施時の横引き配管の影響が少なくなる。これにより、リニューアル計画の立案や、施工が容易となる。
【0010】
本発明の一態様(第1の発明)においては、前記各配管は水を供給する配管であり、前記横引き配管は、2階毎に設けられており、横引き配管と、前記特定階の下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されている。
本態様においては、水を供給するための横引き配管は、2階毎に設けられており、横引き配管が設けられていない階の住戸内引込管は、一階層上の階に設置された横引き配管に対して、副縦配管によって接続されている。このような構成においては、横引き配管が設けられていない、下の住戸の住人が使用する水のみが、この住戸の住戸内引込管が接続された副縦配管を流れるため、当該住居の住人が水を使用することで、副縦配管から騒音が発生したとしても、その影響を受けるのは、実際に水を使用している当該住戸の住人のみであり、他の住戸による水の使用は騒音源となりにくい。これにより、配管に起因して生じる設備騒音の上下階の住戸への影響を更に低減することが可能となる。
【0011】
別の態様(第2の発明)においては、前記各配管は電気、またはガスを供給する配管であり、前記横引き配管は、2階毎に、又は3階毎に、設けられており、前記横引き配管が2階毎に設けられている場合には、横引き配管と、前記特定階の下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されており、前記横引き配管が3階毎に設けられている場合には、横引き配管と、前記特定階の上及び下の階の住戸内引込管が、前記副縦配管によって接続されている。
上記のような構成によれば、電気、またはガスを供給する横引き配管の設置階を少なくすることができるため、効果的に、材料費、及び、施工コストを低減することができる。
【0012】
別の態様(第3の発明)の建物の配管設備においては、水供給用配管設備は第1の発明による配管構造とし、電気またはガス供給用配管設備は第2の発明による配管構造とすることを特徴とする。
本態様においては、上記のように、水を供給する配管に関しては、配管に起因して生じる設備騒音の上下階の住戸への影響を更に低減することが可能となる。
また、水、ガス、または電気を供給する横引き配管の設置階を少なくすることができるため、効果的に、材料費、及び、施工コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管に起因して生じる設備騒音の上下階の住戸への影響の低減と、材料費、施工コストの低減を両立可能な、建物の配管設備を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態として示した建物の配管設備の説明図である。
図2】本発明の一実施形態として示した建物の配管設備を設置した集合住宅の、横引き配管を設置した階の設備配管に関連する模式平面図である。
図3】本発明の一実施形態として示した建物の配管設備の、横引き配管と住戸内引込管との接続例を示した、一部断面視した側面図である。
図4】本発明の一実施形態として示した建物の配管設備の、第1の変形例の説明図である。
図5】本発明の一実施形態として示した建物の配管設備の、第2の変形例の説明図である。
図6】従来の建物の配管設備を示す説明図である。
図7】従来の建物の配管設備を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、2階建て以上の集合住宅の配管設備として、建物共有部に設備共有縦配管(縦シャフト)を設けるとともに、その設備共有縦配管に対して、各階毎ではなく特定階毎に横引き共有配管を接続し、その横引き共有配管を通して、各住戸に水、ガスまたは電気が供給することで、配管長さを削減し、かつ日常生活に伴う騒音源を低減することが可能な配管構造に着目し、本願発明に至った。
本発明の配管設備に係る各実施形態は、設備共有縦配管に対して、水またはガス用の設備関連横引き配管と電気関連横引き配管を共に、2階ごとの同一階毎に接続させた配管設備(第1の実施形態、図1)と、給水用横引き配管は2階毎とし、ガスまたは電気関連横引き配管を3階毎に接続させた配管設備(第1の変形例、図4)と、水用の設備関連横引き配管とガスまたは電気関連横引き配管は、各階ごとに交互に配置させた配管設備(第2の変形例、図5)である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、図1図3を用いて本発明の一実施形態として示した建物の配管設備を説明する。図1は、建物の配管設備2の説明図である。建物の配管設備2は、2階建て以上の集合住宅1に設けられている。集合住宅1は、建物共有部Kと、住戸部Sを備えている。
集合住宅1において、建物の配管設備2は、建物共有部Kに設けられている主縦配管12、17と、各階3a、3bの住戸部9a、9bに設けられている住戸内引込管15a、15b、20a、20bと、ある特定階3a毎に主縦配管12、17と住戸内引込管15a、20aを接続する横引き配管13、18と、を備えている。この特定階3aに配置された横引き配管13、18は、特定階3aの下層階に設けられた近接階用の副縦配管14、19を介して、特定階3aとは異なる階3bの住戸内引込管15b、20bに接続されている。
具体的には、設備共有縦配管(設備関連主縦配管、電気関連主縦配管)に対して、水またはガス用の設備関連横引き配管13と電気関連横引き配管18が、2階ごとの同一階にて接続された配管設備である。
【0017】
本実施形態において、集合住宅1の住戸部Sは、各階3a、3bに、それぞれ住戸9a、9bを備えている。図2は、本発明の一実施形態として示した建物の配管設備2を設置した集合住宅1の、横引き配管13が配設された特定階3aの設備配管に関連する模式平面図である。集合住宅1の中心には、建物共有部Kが配置されており、建物共有部Kの外周位置には、建物共有部Kを囲むように住戸部Sが配置されている。なお、図1に示される各特定階3aにおいては、2種類の横引き配管13、18が設置されているが、図2においては説明のために、横引き配管13のみが示されている。
【0018】
特定階3aの建物共有部Kは、中心に設置されたコア部Cと、コア部Cと住戸部Sを接続する廊下6aを備えている。本実施形態において、コア部Cは、4つのパイプシャフト(以下、PSと記す)5、エレベータ、エレベータホール、階段等の共用設備を備えている。PS5は、集合住宅1の階を跨いで縦方向に連通している、配管等を収納する空間である。コア部Cは、附室、ごみ置場、トランクルーム、コミュニティコーナー等を備えていても構わない。建物共有部Kに設けられている主縦配管12は、PS5内に設けられている。また、後述するように、住戸内引込管15aは住戸部Sの床下に配置され、横引き配管13は下の階の天井裏に設けられている。
建物共有部Kの外周の、住戸部Sとの境界には、各住戸9aに対応するように、MB8が設置されている。MB8は、電力量計、水道メーター、ガスメーター等を収納する空間である。図2において、廊下6aから一点鎖線で区切られた、廊下6aのMB8の近傍の領域は、二重床構造となっており、住戸近傍床下20を備えている。
【0019】
図1に示される、特定階3aとは異なる階3bも、図2に示されるような特定階3aと同様な間取りを有しており、建物共有部K、コア部C、住戸部Sと、廊下6bを備えている。建物共有部Kの、住戸部Sとの境界には、各住戸9bに対応するように、MB8が設置されている。本実施形態における集合住宅1においては、MB8は、特定階3aと同じ水平位置に設けられており、PS5と同様に、集合住宅1の階を跨いでMB8が縦方向に連通する構造となっている。特定階3aとは異なる階3bにおいては、横引き配管は配設されていない。
図1に示される住戸部Sの各住戸9a、9bは、二重床構造となっており、それぞれ、床下10a、10bを備えている。
【0020】
次に、上記のような集合住宅1に設置された、配管設備2を詳細に説明する。配管設備2は、図1に示されるように、水やガス等を供給する配管である設備関連配管11と、強電、弱電等を供給する配管である電気関連配管16を備えている。まず、設備関連配管11について説明する。なお、図2は、配管設備2のうち特に、建物共有部Kにおける設備関連配管11を説明するものである。図2には、電気関連配管16に関しては図示されていないが、後述のように電気関連配管16は、設備関連配管11と同様な構造を有している。
【0021】
設備関連配管11は、図1に示されるように、設備関連主縦配管12、設備関連横引き配管13、設備関連副縦配管14、及び、設備関連住戸内引込管15a、15bを備えている。
【0022】
設備関連主縦配管12は、PS5内を上下に延在するように設置されている。集合住宅1の外部から供給された水やガス等は、設備関連主縦配管12を介して、設備関連主縦配管12に接続されている設備関連横引き配管13に供給される。
設備関連横引き配管13は、2階毎に設けられている。図2に示されるように、設備関連横引き配管13は、設備関連横引き配管13が設けられた特定階3aにおいて、特定階3a内の廊下6aに沿って水平方向に延在している。
特定階3aには、設備関連横引き配管13と、特定階3aに設置された住戸9aを接続する、設備関連住戸内引込管15aが設置されている。設備関連住戸内引込管15aは、MB8を経由して対応する住戸9a内に導入されており、設備関連主縦配管12から設備関連横引き配管13に供給された水やガス等は、特定階3aの各住戸9aへ供給されている。
【0023】
図3に、特定階3aにおける、設備関連横引き配管13と設備関連住戸内引込管15aの設置例を示す。図3は、特定階3aの廊下6aの床の鉛直方向断面図である。図3において、紙面に垂直な方向に廊下6aが延在しており、その右側に住戸とMBが位置している。
廊下6aの床スラブ25の上面は、平面となっており、上に床材27が設置されて、廊下6aを形成している。床スラブ25の下面には、住戸側に段部25aが形成されている。段部25aは廊下6aに沿って延在するように形成されている。
【0024】
廊下6aの図3における右側、すなわちMBの近傍は、上記のように、二重床構造となっており、床材27と、住戸側床スラブ28の上面によって、図2にも示される、住戸近傍床下20が形成されている。住戸側床スラブ28の上面は、床スラブ25の段部25aよりも低い位置に形成されている。また、床スラブ25の段部25aと住戸側床スラブ28は、鉛直方向に互いに重なっている。床スラブ25の段部25aと住戸側床スラブ28は、この重なった部分において、床スラブ25の段部25aと住戸側床スラブ28の上面が接続部29によって接続されることにより、一体となって形成されている。
床スラブ25、及び、住戸側床スラブ28の下方は、特定階3aの1つ下の階である、特定階3aとは異なる階3bの廊下6bとなっている。床スラブ25及び住戸側床スラブ28と、廊下6bは、天井材26によって区切られており、天井材26と床スラブ25及び住戸側床スラブ28の間は、廊下6bの天井裏7となっている。
【0025】
このような廊下6aの構成において、設備関連横引き配管13は、廊下6aの段部25a内に、廊下6aの延在する方向、すなわち、紙面に垂直な方向に水平に延在するように設置されている。
設備関連住戸内引込管15aの一端は、設備関連横引き配管13の側面に接続されている。他端は、屈曲して住戸側床スラブ28の上面より高い位置に引き上げられて、床スラブ25と住戸側床スラブ28の接続部29に形成された図示しない穴部を挿通して、住戸近傍床下20に導入されている。
設備関連住戸内引込管15aは、図1図2に示されるように、特定階3aのMB8を経由して、住戸9aの床下10aに導入されている。
【0026】
以上のように、図1に示されるように、特定階3aの住戸9aには、設備関連主縦配管12から、当該階層に設置された、設備関連横引き配管13及び設備関連住戸内引込管15aを介して、水やガスが供給されている。他方、特定階3aとは異なる階3b、例えば特定階3aの一階下の階3bの住戸9bに対しては、特定階3aの設備関連横引き配管13から、MB8内に縦方向に延在するように配設された、設備関連副縦配管14を介して、水やガスを一階下に引き下ろすことによって、水やガスが供給されている。
より詳細には、図2に示される各MB8には、当該特定階3aと、図1に示される一階下の階3bとの間に、図2の紙面鉛直方向に設備関連副縦配管14が設置されている。設備関連副縦配管14の上端は、屈曲して略水平方向に延在し、特定階3aの住戸9aの設備関連住戸内引込管15aと同じ要領で、設備関連横引き配管13に接続されている。設備関連副縦配管14の下端には、図1に示されるように、MB8内において、一階下の階3bの住戸9bの設備関連住戸内引込管15bの一端が接続されている。設備関連住戸内引込管15bの他端は、一階下の階3bの住戸9bの床下10bに導入されている。これにより、設備関連主縦配管12から設備関連横引き配管13に供給された水やガス等は、一階下の階3bの各住戸9bへ供給されている。
【0027】
次に、電気関連配管16を説明する。電気関連配管16は、設備関連配管11と同様な構造を有している。すなわち、電気関連配管16は、図1に示されるように、電気関連主縦配管17、電気関連横引き配管18、電気関連副縦配管19、及び、電気関連住戸内引込管20a、20bを備えている。
【0028】
電気関連主縦配管17は、PS5内を上下に延在するように設置されている。集合住宅1の外部から供給された電気は、電気関連主縦配管17を介して、電気関連主縦配管17に連通して接続されている、電気関連横引き配管18に供給される。
電気関連横引き配管18は、2階毎に設けられている。電気関連横引き配管18は、電気関連横引き配管18が設けられた特定階3aにおいて、特定階3a内の廊下6aに沿って水平方向に延在している。
【0029】
特定階3aには、電気関連横引き配管18と、特定階3aに設置された住戸9aを接続する、電気関連住戸内引込管20aが配設されている。これにより、電気関連主縦配管17から電気関連横引き配管18に供給された電気は、特定階3aの各住戸9aへ供給されている。
特定階3aにおける、電気関連横引き配管18と電気関連住戸内引込管20aの設置は、図3に示した設備に関する例と同様に、行うことが可能である。
特定階3aとは異なる階3b、例えば特定階3aの一階下の階の住戸9bに対しては、特定階3aの電気関連横引き配管18から、MB8内に縦方向に延在するように配設された、電気関連副縦配管19を介して、電気を一階下に引き下ろすことによって、電気が供給されている。電気関連副縦配管19の下端には、一階下の階3bの住戸9bの電気関連住戸内引込管20bが接続されている。電気関連住戸内引込管20bの他端は、住戸9bの床下10bに導入されている。
【0030】
次に、上記の建物の配管設備2の作用、効果について説明する。
【0031】
上記のような、図1図2に示される構成においては、設備関連主縦配管12は、住戸部Sから離れたPS5に設置されている。
また、設備関連横引き配管13は、2階毎に設けられており、設備関連横引き配管13が設けられていない階3bの住戸9bの設備関連住戸内引込管15bは、一階層上の特定階3aに設置された設備関連横引き配管13に対して、設備関連副縦配管14によって接続されている。このような構成においては、設備関連配管11が水を供給する場合には、設備関連横引き配管13が設けられていない、下の住戸9bの住人が使用する水のみが、この住戸9bの設備関連住戸内引込管15bが接続された設備関連副縦配管14を流れるため、当該住居9bの住人が水を使用することで、設備関連副縦配管14から騒音が発生したとしても、その影響を受けるのは、実際に水を使用しているこの住戸9bの住人のみであり、他の住戸による水の使用は騒音源となりにくい。
これにより、配管を介して供給される水に起因して生じる騒音の上下階の住戸への影響を低減することが可能となる。
【0032】
また、設備関連横引き配管13、電気関連横引き配管18は各階に設置されておらず、特定階3a毎に設置されているため、横引き配管の設置量が少なくなる。これにより、材料費、及び、施工コストを低減することができる。
また、設備関連横引き配管13、電気関連横引き配管18は各階に設置されておらず、特定階3a毎に設置されているため、リニューアル実施時の横引き配管の影響が少なくなる。これにより、リニューアル計画の立案や、施工が容易となる。
【0033】
(第1の変形例)
次に、図4を用いて、上記実施形態として示した建物の配管設備2の第1の変形例を説明する。本第1の変形例における配管設備30と、図1に示される配管設備2との差異は、配管設備30においてガスを供給するのは、配管設備2において水及びガスを供給した設備関連配管11に相当する設備関連配管36ではなく、電気関連配管16に相当するガス電気関連配管31であること、及び、ガス電気関連配管31においては、配管設備2の電気関連横引き配管18に相当するガス電気関連横引き配管33が3階毎に設けられていることである。
具体的には、設備共有縦配管(設備関連主縦配管、ガス電気関連主縦配管)に対して、給水用の設備関連横引き配管が2階毎に接続され、ガス電気関連横引き配管が3階毎に接続させた配管設備である。
【0034】
配管設備30の設備関連配管36は、図1に示される設備関連配管11と同様に設置されている。
配管設備30においては、ガスまたは電気を供給するガス電気関連横引き配管33が3階毎に設けられているため、ガス電気関連横引き配管33が設置された特定階40aの住戸41a、特定階40aの下の階40bの住戸41bに加えて、特定階40aの上の階40cの住戸41cに対しても、特定階40aに設置されたガス電気関連横引き配管33からガスまたは電気を供給する構造となっている。
具体的には、ガス電気関連配管31は、ガス電気関連主縦配管32、ガス電気関連横引き配管33、ガス電気関連副縦配管34b、及び、ガス電気関連住戸内引込管35a、35bを備えている。これらは、図1に示される電気関連主縦配管17、電気関連横引き配管18、電気関連副縦配管19、電気関連住戸内引込管20a、20bと同様の構造を有しており、住戸41a、41bに対してガスまたは電気を供給する。
配管設備30におけるガス電気関連配管31は、更に、ガス電気関連副縦配管34c、及び、ガス電気関連住戸内引込管35cを備えている。ガス電気関連副縦配管34cはMB8内に、上下方向に延在するように設置されており、その下端は、特定階40aにおいて、特定階40aに設置されたガス電気関連横引き配管33に接続されている。ガス電気関連副縦配管34cの上端は、ガス電気関連住戸内引込管35cの一端に接続されている。ガス電気関連住戸内引込管35cの他端は、住居41cの床下42cに導入され、住居41cにガスまたは電気を供給する。
【0035】
このような構成を有する配管設備30においては、図1に示される配管設備2に比べると、ガス電気関連横引き配管33の設置階を少なくすることができるため、材料費、及び、施工コストを更に低減することができる。
【0036】
本第1の変形例が、上記の実施形態と同様な効果を奏することは、いうまでもない。
【0037】
(第2の変形例)
次に、図5を用いて、上記実施形態として示した建物の配管設備2の第2の変形例を説明する。本第2の変形例における配管設備50と、図1に示される配管設備2との差異は、配管設備50においてガスを供給するのは、配管設備2において水及びガスを供給した設備関連配管11に相当する設備関連配管56ではなく、電気関連配管16に相当するガス電気関連配管51であること、及び、ガス電気関連配管51においては、配管設備2の電気関連横引き配管18に相当するガス電気関連横引き配管53が、設備関連横引き配管58とは異なる階に2階毎に設けられていることである。
具体的には、設備共有縦配管(設備関連主縦配管、ガス電気関連主縦配管)に対して、給水用の設備関連横引き配管とガス電気関連横引き配管が各階ごとに交互に配置させ、2階毎に接続された配管設備である。
【0038】
配管設備50の設備関連配管56は、図1に示される設備関連配管11と同様に設置されている。設備関連配管56においては、設備関連横引き配管58は特定階60aに設けられている。
配管設備50においては、ガスまたは電気を供給するガス電気関連配管51は、ガス電気関連主縦配管52、ガス電気関連横引き配管53、ガス電気関連副縦配管54、及び、ガス電気関連住戸内引込管55a、55bを備えている。これらは、図1に示される電気関連主縦配管17、電気関連横引き配管18、電気関連副縦配管19、電気関連住戸内引込管20a、20bと同様の構造を有しており、住戸61a、61bに対してガスまたは電気を供給する。
本第2の変形例においては、設備関連横引き配管58が設置されていない、特定階60aとは異なる階60bを、ガスまたは電気においては特定階60bとして、当該特定階60bに、ガス電気関連横引き配管53が設置されている。これにより、設備関連横引き配管58とガス電気関連横引き配管53が各階ごとに交互に配置されている。
【0039】
本第2の変形例が、上記の実施形態と同様な効果を奏することは、いうまでもない。
【0040】
なお、本発明の建物の配管設備は、図面を参照して説明した上述の実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。例えば、本発明の各実施形態では、設備関連配管は給水用配管と強電、弱電用配管を対象として、縦配管と横引き配管等について説明を行ったが、排水用配管として計画してもよい。
【0041】
例えば、上記の実施形態及び各変形例においては、例えば図1図2に示されるように、特定階3aとは異なる階3bの住戸内引込管15bは、副縦配管14の下端に接続されており、副縦配管14の上端は、特定階3aにおいて水平方向に屈曲し、特定階3aに配置された横引き配管13に接続されているが、これに代えて、副縦配管14の上端は、特定階3aにおいて、MB8内で、特定階3aの住戸9aに接続されている住戸内引込管15aに接続されて、住戸内引込管15aから住戸9bへの供給が行われても構わない。
また、上記の実施形態及び各変形例においては、例えば図2に示されるように、横引き配管13は廊下6aの住戸近傍床下20の手前において終端し、設備関連住戸内引込管15aや設備関連副縦配管14が住戸近傍床下20から廊下6aに延伸して横引き配管13に接続されているが、これに代えて、横引き配管13が住戸近傍床下20からMB8内に延伸して、MB8内において、設備関連住戸内引込管15aや設備関連副縦配管14に接続されてもよい。
また、本実施形態では、横引き配管は天井裏に配置したが、建物共有部の廊下を2重床構造として、床下部分に設けてもよい。横引き配管を2重床部分に配置することで、初期設置時に加えて、メンテナンス時においても作業性が良い。
また、上記の実施形態及び各変形例においては、例えば図1に示されるように、設備関連住戸内引込管15a、15bは、床下10aに延在しているが、これに代えて、壁などの、床下以外の場所に延在させるように、構成されていてもよい。
【0042】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
K 建物共有部 31 ガス電気関連配管
S 住戸部 32 ガス電気関連縦配管
C コア部 33 ガス電気関連横引き配管
1 集合住宅 34b ガス電気関連住戸部縦配管
2 配管設備 34c ガス電気関連住戸部縦配管
3a 特定階 35a ガス電気関連住戸内引込管
3b 特定階とは異なる階 35b ガス電気関連住戸内引込管
5 パイプシャフト(PS) 35c ガス電気関連住戸内引込管
6a 廊下 36 設備関連配管(水)
6b 廊下 40a 特定階
7 天井裏 40b 特定階とは異なる階
8 メーターボックス(MB) 40c 特定階とは異なる階
9a 住戸 41a 住戸
9b 住戸 41b 住戸
10a 床下 41c 住戸
10b 床下 50 配管設備
11 設備関連配管(水、ガス) 51 ガス電気関連配管
12 設備関連縦配管 52 ガス電気関連主縦配管
13 設備関連横引き配管 53 ガス電気関連横引き配管
14 設備関連住戸部縦配管 54 ガス電気関連副縦配管
15a 設備関連住戸内引込管 55a ガス電気関連住戸内引込管
15b 設備関連住戸内引込管 55b ガス電気関連住戸内引込管
16 電気関連配管 56 設備関連配管(水)
17 電気関連縦配管 58 設備関連横引き配管
18 電気関連横引き配管 60a 設備関連配管の特定階
19 電気関連住戸部縦配管 60b ガス電気関連配管の特定階
20a 電気関連住戸内引込管 61a 住戸
20b 電気関連住戸内引込管 61b 住戸
30 配管設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7