特許第6596310号(P6596310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596310圧電センサ、センサシステム、および圧電素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596310
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】圧電センサ、センサシステム、および圧電素子
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   G01L1/16 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-221344(P2015-221344)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-90276(P2017-90276A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮渕 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】西ノ原 大介
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0076966(US,A1)
【文献】 特開2000−180250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0091858(US,A1)
【文献】 特開平07−113816(JP,A)
【文献】 特開平05−091593(JP,A)
【文献】 特開平06−074752(JP,A)
【文献】 特開2010−030832(JP,A)
【文献】 特開平04−364413(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0267920(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104734564(CN,A)
【文献】 特開2015−099039(JP,A)
【文献】 特開2009−295788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/10,1/16,5/00,
H01L 27/20,41/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、及び圧電体層を備え前記圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生する圧電素子と、
入力端が前記第1電極に接続される能動回路と、を有し、
前記圧電素子はカンチレバーを備え、
前記カンチレバー上に前記圧電体層が形成され、前記圧電体層上に前記第1電極及び前記第2電極が形成され、
前記圧電体層は第1圧電体層であり、
前記圧電素子は第2圧電体層をさらに備え、
前記第1圧電体層と前記第2圧電体層とで前記第1電極及び前記第2電極が挟まれ、
前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生し、
前記第2圧電体層の層厚は前記第1圧電体層の層厚より厚いことを特徴とする圧電センサ。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ櫛歯状電極であり、互いに噛み合うように配置され、前記第1電極及び前記第2電極の各櫛が前記カンチレバーの長手方向と交差する方向に延びるように形成されている請求項に記載の圧電センサ。
【請求項3】
前記圧電素子は前記カンチレバーの自由端側に設けられる重りをさらに備える請求項1又は請求項2に記載の圧電センサ
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の圧電センサと、
前記圧電センサのアナログ出力信号を処理するアナログ信号処理回路と、を有することを特徴するセンサシステム。
【請求項5】
前記能動回路及び前記アナログ信号処理回路が集積化されている請求項に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記圧電センサを収納する筐体をさらに有し、
前記圧電センサが請求項のいずれか一項に記載の圧電センサであって、前記筐体の前記カンチレバーに対向する部分に開口が設けられている請求項又は請求項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
第1電極、第2電極、第1圧電体層、第2圧電体層、及びカンチレバーを備え、
前記カンチレバー上に前記第1圧電体層が形成され、前記第1圧電体層上に前記第1電極及び前記第2電極が形成され、
前記第1圧電体層と前記第2圧電体層とで前記第1電極及び前記第2電極が挟まれ、
前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生し、
前記第2圧電体層の層厚は前記第1圧電体層の層厚より厚いことを特徴とする圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電体を備える圧電センサ、センサシステム、および圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電センサに用いられる従来の典型的な圧電素子は図17及び図18に示すような構造である。図17は従来の典型的な圧電素子の上面図であり、図18図17に示すAA線で切断した従来の典型的な圧電素子の断面図である。
【0003】
図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子は、基板101、下部電極102、圧電体層103、及び上部電極104を有している。
【0004】
基板101は本体部101Aからカンチレバー101Bが延出する形状に加工されている。カンチレバー101B上に下部電極102、圧電体層103、及び上部電極104がその順番で積層されている。
【0005】
このような構造によってカンチレバー101Bに曲げ応力が作用すると、圧電体層103に電荷が発生して圧電体層103が分極し、下部電極102と上部電極104との間に電圧が発生する。
【0006】
そして、能動回路を接続して圧電素子から電圧信号または電流信号を取り出すことで圧電センサとして利用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J0ng Cheol Park、他2名、“Modeling and Characterization ofPiezoelectric d33-Mode MEMS Energy Harvester”、JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS、2010年10月、第19巻、第5号、p.1215-1222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子を用いた圧電センサは高い出力が得られないという問題を有している。本発明は、上記の状況に鑑み、高出力な圧電センサ並びに当該圧電センサを備えたセンサシステム及び当該圧電センサに利用可能な圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電センサは、第1電極、第2電極、及び圧電体層を備え前記圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生する圧電素子と、入力端が前記第1電極に接続される能動回路と、を有する構成(第1の構成)とする。
【0010】
上記第1の構成である圧電センサにおいて、前記圧電素子はカンチレバーを備え、前記カンチレバー上に前記圧電体層が形成され、前記圧電体層上に前記第1電極及び前記第2電極が形成される構成(第2の構成)にしても良い。
【0011】
上記第2の構成である圧電センサにおいて、 前記第1電極及び前記第2電極は、それぞれ櫛歯状電極であり、互いに噛み合うように配置され、前記第1電極及び前記第2電極の各櫛が前記カンチレバーの長手方向と交差する方向に延びるように形成されている構成(第3の構成)にしても良い。
【0012】
上記第2又は第3の構成である圧電センサにおいて、前記圧電体層は第1圧電体層であり、前記圧電素子は第2圧電体層をさらに備え、前記第1圧電体層と前記第2圧電体層とで前記第1電極及び前記第2電極が挟まれ、前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生する構成(第4の構成)にしても良い。
【0013】
上記第4の構成である圧電センサにおいて、前記第2圧電体層の層厚は前記第1圧電体層の層厚より厚い構成(第5の構成)にしても良い。
【0014】
上記第2〜5いずれかの構成である圧電センサにおいて、前記圧電素子は前記カンチレバーの自由端側に設けられる重りをさらに備える構成(第6の構成)にしても良い。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係るセンサシステムは、上記第1〜第6いずれかの構成である圧電センサと、前記圧電センサのアナログ出力信号を処理するアナログ信号処理回路と、を有する構成(第7の構成)とする。
【0016】
上記第7の構成であるセンサシステムにおいて、前記能動回路及び前記アナログ信号処理回路が集積化されている構成(第8の構成)にしても良い。
【0017】
上記第7又は第8の構成であるセンサシステムにおいて、前記圧電センサを収納する筐体をさらに有し、前記圧電センサが上記第2〜第6いずれかの構成である圧電センサであって、前記筐体の前記カンチレバーに対向する部分に開口が設けられている構成(第9の構成)にしても良い。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電素子は、第1電極、第2電極、第1圧電体層、第2圧電体層、及びカンチレバーを備え、前記カンチレバー上に前記第1圧電体層が形成され、前記第1圧電体層上に前記第1電極及び前記第2電極が形成され、前記第1圧電体層と前記第2圧電体層とで前記第1電極及び前記第2電極が挟まれ、前記第1圧電体層及び前記第2圧電体層のd33モードの変位によって前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が発生する構成(第10の構成)とする。
【0019】
上記第10の構成である圧電素子において、前記第2圧電体層の層厚は前記第1圧電体層の層厚より厚い構成(第11の構成)にしても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高出力な圧電センサ並びに当該圧電センサを備えたセンサシステム及び当該圧電センサに利用可能な圧電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】力が作用したときの圧電体の変形を示す図
図2】第1実施形態に係る圧電センサが備える圧電素子の上面図
図3】第1実施形態に係る圧電センサが備える圧電素子の断面図
図4】第2実施形態に係る圧電センサが備える圧電素子の上面図
図5】第2実施形態に係る圧電センサが備える圧電素子の断面図
図6】センサシステムの構成例を示す図
図7】インピーダンス変換回路の一例を示す図
図8】インピーダンス変換回路の他の例を示す図
図9】センサシステムの他の構成例を示す図
図10】I−V変換回路の他の例を示す図
図11】センサシステムの概略斜視図
図12】センサシステムの概略縦断面図である。
図13A】センサシステムの変形例の概略縦断面図である。
図13B】センサシステムの変形例の概略縦断面図である。
図14】第1実施形態の変形例に係る圧電素子の断面図
図15】第1実施形態の変形例に係る圧電素子の断面図
図16】第1実施形態の変形例に係る圧電素子の上面図
図17】従来の典型的な圧電素子の上面図
図18】従来の典型的な圧電素子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<圧電体の変位モード>
本発明者等は、圧電体の変位モードに着目し、高出力な圧電センサに適した圧電素子の構造について検討した。
【0023】
ここで、圧電体の変位モードについて図1を参照して説明する。なお、図1における点線は力が作用していないときの圧電体P1の外形を示している。圧電体P1に引張力F1が作用すると、引張力F1と垂直な方向に収縮E1が生じるとともに引張力F1と平行な方向に伸長E2が生じる。一方、圧電体P1に圧縮力F2が作用すると、圧縮力F2と垂直な方向に伸長E3が生じるとともに圧縮力F2と平行な方向に収縮E4が生じる。
【0024】
圧電体P1に作用する力F(F1又はF2)に垂直な伸縮(収縮E1又は伸長E3)によって圧電体P1に発生する電荷Q1すなわちd31モードの変位によって圧電体P1に発生する電荷Q1は、d31モードの圧電定数d31を用いて下記(1)式のように表すことができる。
1=d31×F ・・・(1)
【0025】
また、圧電体P1に作用する力F(F1又はF2)に平行な伸縮(伸長E2又は収縮E4)によって圧電体P1に発生する電荷Q2すなわちd33モードの変位によって圧電体P1に発生する電荷Q2は、d33モードの圧電定数d33を用いて下記(2)式のように表すことができる。
2=d33×F ・・・(2)
【0026】
力Fと同じ方向の変位によって発生する電荷Q2の方が力Fと異なる方向の変位によって発生する電荷Q1よりも発生効率が良い。例えば、圧電定数d33は圧電定数d31のおよそ2倍程度になる。
【0027】
圧電素子は、一対の電極とそれらの電極間に介在する圧電体とを備えるキャパシタ構造である。このため、一対の電極間に発生する電圧Vは下記(3)式のように表すことができる。ただし、Qは圧電体で発生する電荷であり、Cは圧電体の静電容量である。
V=Q/C ・・・(3)
【0028】
ここで、上述した図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子について考察する。カンチレバー101Bに曲げ応力が作用すると、圧電体層103にはカンチレバー101Bの長手方向に平行な力が作用する。そして、圧電体層103に作用する力に垂直な伸縮によって圧電体層103に発生する電荷に比例する電圧が下部電極102と上部電極104との間に発生している。すなわち、図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子はd31モードを用いる構造である。
【0029】
したがって、圧電素子においてd33モードを用いることで、図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子よりも上記(3)式における電荷Qひいては電圧Vを大きくすることができる。また、図17及び図18に示す従来の典型的な圧電素子では上記(3)式における静電容量を小さくするためには圧電体層103の層厚を厚くする必要があり、静電容量の大幅な低減は困難であった。
【0030】
したがって、本発明者等は、圧電素子の構造として、圧電体のd33モードの変位によって一対の電極間に電圧が発生する構造を採用し、その構造の圧電素子を圧電センサに応用することで圧力センサの高出力化を図ることにした。
【0031】
なお、d33モードを用いる圧電素子の一例は非特許文献1に開示されている。しかしながら、非特許文献1では、d33モードを用いる圧電素子をエナジーハーベスタとして利用しているので、d33モードを用いる圧電素子は単純に負荷(受動素子)に接続され、d33モードを用いる圧電素子の出力が負荷で消費されるだけである。このように圧電素子を発電装置に応用することは非特許文献1に開示されている電力密度から考えておよそ現実的でない。すなわち、非特許文献1では、d33モードを用いる圧電素子の現実的な応用例を何ら示していなかった。
【0032】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る圧電センサは、図2及び図3に示す圧電素子11と、入力端が圧電素子11の第1電極1に接続される能動回路(図2及び図3において不図示)と、を有している。
【0033】
図2は圧電素子11の上面図であり、図3図2に示すAA線で切断した圧電素子11の断面図である。圧電素子11は、第1電極1、第2電極2、圧電体層3、及び基板4を有している。
【0034】
基板4は本体部4Aからカンチレバー4Bが延出する形状に加工されている。カンチレバー4B上に圧電体層3が形成され、圧電層3上に第1電極1及び第2電極2が形成されている。なお、圧電体層3の一部はカンチレバー4Bを越えて本体部4Aまで延びており、第1電極1の一部及び第2電極2の一部は圧電体層3を越えて、本体部4Aの圧電体層3が形成されていない部分まで延びている。
【0035】
第1電極1及び第2電極2はそれぞれ櫛歯状電極である。第1電極1及び第2電極2は、互いに噛み合うように、すなわち一方の電極の櫛と櫛の間に他方の電極の櫛が位置するように、配置されている。また、第1電極1と第2電極2との間に発生する電圧を最大化するために、第1電極1及び第2電極2は、第1電極1及び第2電極2の各櫛がカンチレバー4Bの長手方向と略直交する方向に延びるように形成されている。
【0036】
圧電素子11の各部サイズの一例としては、基板1の長手方向長さL1(図2参照)が最大1mm、第1電極1及び第2電極2の各櫛の幅L2(図2参照)が最大10μm、隣接する櫛間の距離L3(図2参照)が最大10μmとする設計が考えられる。
【0037】
なお、第1電極1及び第2電極2の配置及び形状は本実施形態に限定されず、圧電体層3のd33モードの変位によって第1電極1と第2電極2との間に電圧が発生するような配置及び形状であれば良い。
【0038】
以上説明した本実施形態に係る圧電センサは、圧電体層3のd33モードの変位によって第1電極1と第2電極2との間に電圧が発生する構造である圧電素子11を備えているため、高出力化を図ることができる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る圧電センサは、図4及び図5に示す圧電素子12と、入力端が圧電素子12の第1電極1に接続される能動回路(図4及び図5において不図示)と、を有している。
【0040】
図4は圧電素子12の上面図であり、図5図4に示すAA線で切断した圧電素子12の断面図である。なお、図4及び図5において図2及び図3と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0041】
圧電素子12は、第1実施形態で用いた圧電素子11に対して圧電体層5を追加した構成である。
【0042】
圧電素子12は、圧電体層3と圧電体層5とで第1電極1及び第2電極2とが挟まれる構造である。圧電素子12では、圧電体層3及び5のd33モードの変位によって第1電極1と第2電極2との間に電圧が発生する。
【0043】
圧電体層3は、カンチレバー4Bに接している部分がカンチレバー4Bによる拘束の影響を受けるため、カンチレバー4Bの長手方向に平行な力が作用したときに分極方向が揃いにくいと考えられる。一方、圧電体層5は、カンチレバー4Bに接しておらずカンチレバー4Bによって拘束されないため、カンチレバー4Bの長手方向に平行な力が作用したときに分極方向が揃い易いと考えられる。
【0044】
したがって、圧電素子に圧電体層5を設けることで圧電センサの更なる高出力化が期待できる。さらに、圧電体層5の層厚を圧電体層3の層厚よりも厚くすることで、圧電体層5のd33モードの変位による電荷の発生を圧電体層3のd33モードの変位による電荷の発生よりも支配的にできるため、圧電センサのより一層の高出力化が期待できる。
【0045】
圧電素子12は第1実施形態で用いた圧電素子11よりも発生電荷及び電極間電圧が大きくなるので、圧電センサ以外への応用の可能性を秘めている。つまり、圧電素子12及びこれに類する構造(圧電体による電極の挟み込み構造)の圧電素子の応用範囲は、本実施形態すなわち圧電センサに限定されない。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る圧電センサは、圧電体層3及び5のd33モードの変位によって第1電極1と第2電極2との間に電圧が発生する構造である圧電素子12を備えているため、高出力化を図ることができる。
【0047】
<センサシステム>
上述した圧電センサと、当該圧電センサのアナログ出力信号を処理するアナログ信号処理回路とを組み合わせることによって、センサシステムを得ることができる。
【0048】
図6はセンサシステムの構成例を示す図である。図6に示すセンサシステムは、圧電素子11と、能動回路であるインピーダンス変換回路13と、ゲインアンプ14と、アナログフィルタ15と、A/D変換器16と、を有するマイクロフォンである。
【0049】
圧電素子11及びインピーダンス変換回路13によって圧電センサが構成される。ゲインアンプ14は圧電センサの出力(インピーダンス変換回路13の出力)を増幅する。アナログフィルタ15はゲインアンプ14の出力(増幅信号)から不要帯域成分を除去或いは抑制する。A/D変換器16はアナログフィルタ15の出力(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0050】
A/D変換器16の出力(デジタル信号)は例えば不図示のDSP(Digital Signal Processor)に送られ、音声認識処理や音声圧縮処理等が施される。
【0051】
ここではインピーダンス変換回路13、ゲインアンプ14、アナログフィルタ15、及びA/D変換器16は一つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)17に集積化されているが、これに限定されるものではない。
【0052】
図7はインピーダンス変換回路13の一構成例を示す図である。図7の構成例では、インピーダンス変換回路13は、プルアップ抵抗R1及びNMOSトランジスタQ1によって構成されるオープンドレイン回路であって、圧電素子11の第1電極1がNMOSトランジスタQ1のゲート(インピーダンス変換回路13の入力端)に接続されている。
【0053】
図8はインピーダンス変換回路13の一構成例を示す図である。図8の構成例では、インピーダンス変換回路13は、オペアンプA1によって構成されるバッファアンプであって、圧電素子11の第1電極1がオペアンプA1の非反転入力端子(インピーダンス変換回路13の入力端)に接続されている。
【0054】
図9はセンサシステムの他の構成例を示す図である。なお、図9において図6と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。図9に示すセンサシステムは、図6に示すセンサシステムにおいてインピーダンス変換回路13をチャージアンプ18に置き換えた構成である。ここではチャージアンプ18、ゲインアンプ14、アナログフィルタ15、及びA/D変換器16は一つのASIC19に集積化されているが、これに限定されるものではない。
【0055】
図10はチャージアンプ18の一構成例を示す図である。図10の構成例では、チャージアンプ18は、オペアンプA2と、オペアンプA2の非反転入力端子と出力端子との間に設けられるキャパシタC1及び抵抗R2の並列回路と、によって構成されており、圧電素子11の第1電極1がオペアンプA2の非反転入力端子(チャージアンプ18の入力端)に接続されている。
【0056】
上述したセンサシステムは圧電素子11を有する構成であるが、圧電素子11の代わりに圧電素子12を用いることも当然の事ながら可能である。
【0057】
上述したセンサシステムの概略構造例について図6に示すセンサシステムを例に挙げて説明する。
【0058】
図11はセンサシステムの概略斜視図である。センサシステムは筐体20を備えている。筐体20は、ベース部20Aと、ベース部20Aを覆うカバー部20Bとによって構成されている。カバー部20Bには音圧を筐体20に導入するための開口(音響孔)20Cが形成されている。
【0059】
図12はセンサシステムの概略縦断面図である。開口(音響孔)20Cはカバー部20Bのカンチレバー4Bに対向する部分に形成されている。これにより、開口(音響孔)20Cから筐体20に導入された音圧によってカンチレバー5Bが変形しやすくなるため、圧電センサの感度が向上する。
【0060】
ASIC17の端子(インピーダンス変換回路13の入力端子に繋がっている端子)と第1電極1の端部とはボンディングワイヤ21によって電気的に接続される。また、ASIC17の端子(A/D変換器16の出力端子に繋がっている端子)とベース部20Aに配設されている配線パターンとはボンディングワイヤ21’によって電気的に接続される。
【0061】
ベース部20Aに配設されている配線パターンはベース部20Aに形成されているスルーホールに電気的に接続されており、ベース部20Aのスルーホールによってベース部20Aの底面に電気接点(端子)が設けられる。
【0062】
なお、上述した構造例とは異なり、図13Aに示すようにベース部20Aのカンチレバー4Bに対向する部分に開口(音響孔)2を形成してもよい。また、上述した構造例とは異なり、図13Bに示すようにASIC17の上に圧電素子を載置してもよい。また、ベース部20A及びカバー部20Bの形状は上述した構造例に限定されない。例えば、ベース部20Aを蓋のない箱形状とし、カバー部20Bを蓋形状(板形状)にしてもよい。
【0063】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
また例えば上記第1実施形態の変形例として、図14に示すように基板4の形状を変更してカンチレバー4Bの自由端側に重し4Cを設けるようにしてもよい。
【0065】
また、図15に示すように基板4とは別の部材で重し22を形成しカンチレバー4Bの自由端側に設けるようにしてもよい。この場合、例えば重し22を第1電極1及び第2電極2と同じ材料として製造時に重し形成プロセスと電極形成プロセスを同じプロセスで実行してもよい。
【0066】
このように重しを設けることでカンチレバー5Bが変形する際の変形量が大きくなるため、圧電センサの感度が向上する。なお、上記第2実施形態に対してもこれらの変形例と同様の変形を適用することができる。
【0067】
また例えば上記第1実施形態の変形例として、カンチレバー5Bの変形は固定端側が大きいことに着目して、図16に示すように第1電極1及び第2電極2を、カンチレバー5Bの固定端から、カンチレバー5Bの長手方向長さaの半分長さa/2の手前まで延びている形状としてもよい。すなわち、カンチレバー5Bの自由端側半分には第1電極1及び第2電極2が形成されていない。上記第2実施形態に対してもこの変形例と同様の変形を適用することができる。
【0068】
上述した説明では圧電センサの応用としてマイクロフォンを採り上げたが、圧電センサの応用はこれに限定されない。例えば、圧電センサの検出対象を可聴音から超音波に変更することで、圧電センサは超音波センサとして機能する。この超音波センサと超音波発信器と組み合わせたシステムとすることで、例えば、測距装置、超音波診断装置等に応用することができる。
【0069】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えばマイクロフォン、超音波診断装置、測距装置などに応用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 第1電極
2 第2電極
3、5 圧電体層
4 基板
4A 本体部
4B カンチレバー
4C 重し
11、12 圧電素子
13 インピーダンス変換回路
14 ゲインアンプ
15 アナログフィルタ
16 A/D変換器
17、19 ASIC
18 チャージアンプ
20 筐体
20A ベース部
20B カバー部
20C 開口
21、21’ ボンディングワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図13A
図13B
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