【実施例】
【0231】
実施例
実施例1.全スケールにわたる3D DNAブロックナノ構造の自己集合
本発明者らの方法をより良く理解し、且つその能力を実証するため、様々なサイズ及びアスペクト比の3D DNAブロックナノ構造を設計し、試験した(
図2)。
【0232】
ランダム配列設計。オリゴヌクレオチドの配列(「DNAブリック」とも称される)は、塩基対(A−T、G−C)を3Dナノ構造にランダムに割り当てることにより設計した。本発明者らは、初めにランダム配列又は特別に設計した配列のいずれかを含む2つのバージョンの6H×6H×64Bを試験し、同等な自己集合結果を観察した(
図8)。本発明者らはまた、4H×12H×120Bで3組のランダム配列も試験し、同様に同程度の自己集合収率を観察した(データは示さず)。これらの結果に基づき、本発明者らはランダム配列を使用してさらなるナノ構造を設計した。配列は、カスタムプログラム及びmfold, rna, Albanyウェブサイトで利用可能なプログラムであるUNAfoldを併用することにより生成した。初めに、以下の3つの基準を考慮することにより、第1のオリゴヌクレオチドセットの配列(Xブリック)を生成した:(1)鎖の結合エネルギーを平滑化する(各鎖が同程度のGC含量を有する);(2)各鎖の二次構造を最小限に抑える;及び(3)配列対称性を低下させる。次に、第1のセットとのその相補性に従い、第2のオリゴヌクレオチドセット(Yブリック)を生成した。ランダム配列及び特別に設計した配列を使用して組み立てた構造の産物収率は同程度であった。本明細書では、ほとんどのナノ構造の合成にランダム配列設計戦略が用いられるが、この配列設計戦略がまた用いられてもよく、進行中の研究で探索しているところである。
【0233】
保護体DNAブリック。対をなしていない一本鎖をDNA二重鎖の末端に含めることは、平滑末端スタッキングを軽減するのに有効であることが分かっている(P. W. K. Rothemund (2006))。対をなしていない一本鎖8ntドメインが、3Dナノ構造中の全てのDNA二重鎖のあらゆる5’末端又は3’末端から突き出る(
図1C及び
図1D)。これらの8ntドメインの配列を、望ましくない相互作用を防ぐため、8つの隣接チミンに置き換えることができる。修飾されたヘッド又はテイルドメインを有するDNAブロックは、それぞれ「ヘッド保護体」又は「テイル保護体」と称される。
【0234】
境界DNAブリック。16ntの半分のブリックを、そのヘリックスの方向に沿って先行する32ntの完全なブリックと合体させ、48nt長の境界鎖を形成することができる(
図9及び
図10)。本発明者らは、長い境界設計を実施したとき、恐らくは目的のナノ構造形成のヌクリエーションが加速したことに起因して、6H×6H×64Bの自己集合が大幅に改善されたことを観察した。従って、この合体戦略を全ての3Dナノ構造に適用した。
【0235】
6H×10H×128Bの特徴付け。本発明者らは、初めに、459個の鎖(7680bp、M13ベースのDNA折り紙と同程度のサイズ、設計詳細については
図S11、
図S12を参照のこと)からなる6H×10H×128B直方体を構築した。未精製のDNA鎖を、細かい化学量論的調節は行うことなしに、公称上等しい比率で共に混合した。最適なアニーリング条件を決定するため、本発明者らは、6H×10H×128B自己集合に関して2つのアニーリング勾配(24時間アニーリング及び72時間アニーリング)、2つの鎖濃度(各鎖につき100nM及び200nM)、及び8つのMgCl
2濃度(10、20、30、40、50、60、70、80mM)を試験した。次に等量の各サンプル(各鎖につき2pmol)を臭化エチジウム(EtBr)染色2%アガロースゲル電気泳動に供した(
図2B、
図2C)。3Dナノ構造の収率を、アガロースゲル電気泳動を使用して推定した。
図11は、かかるアッセイの一例を示す。アニーリングしたサンプルをアガロースゲル電気泳動に供して産物を遊離鎖及び不要な凝集物から分離した。産物バンドの蛍光強度(黒色の囲み線で示される)を3k bpラダーバンドの蛍光強度(灰色の囲み線で示される)と比較することにより、産物の収率を推定した。両方の蛍光強度とも、初めにバックグラウンドノイズで減算し、次に計算に使用した。ImageJソフトウェアを使用して強度を計測した:
【数1】
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次にパーセンテージ収率を以下のとおり計算する。
【数2】
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【0236】
二本鎖3kbpラダーと本発明者らの3D構造とでは、EtBr染色の効率が異なり得る。従って収率の絶対数が異なり得る。それでもなお、このアッセイは、ナノ構造間における自己集合結果の比較及び3D構造の最適なアニーリング条件のスクリーニングに特に有用である。以下の条件で最大収率(370ng、又は約4%)が達成された:各鎖につき200nM、72時間アニーリング、40mM MgCl
2。この収率は、同程度のサイズ及びアスペクト比(10H×6H、8H×8H、6H×10H、及び4H×16H)の3D DNA折り紙に関する既報告の4%〜14%収率と同等である(S. Douglas, et al., Nucleic Acids Research 37, 5001 (2009))。折り紙ことは注目に値する。
【0237】
折り紙の収率は、
【数3】
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として推定される。過剰なステープル鎖の損失(通常足場鎖より5〜10倍多い)は考慮しない。本明細書で使用される最適40mM MgCl
2は、3D折り紙の折り畳みに最適な30mM(又はそれ以下)のMgCl
2濃度(S. M. Douglas, et al., Nature 459, 414 (2009))より高い。カラム精製した産物(約50%の回収効率(
図2D))は、アガロースゲル電気泳動により単一のバンドとして泳動し、透過電子顕微鏡(TEM)下に予想された形態で見られ、計測された寸法は各塩基対高さにつき0.34nm(±0.01nmSD)及び各ヘリックス幅につき2.5nm(±0.2nmSD)であった。6H×10H128Bのアガロースゲル精製後、TEM画像において構造をカウントして収率もまた計算した。この「TEM収率」は、精製した構造の安定性に関係する。TEM画像中の粒子を、存在する欠陥の量及び程度に応じて「良好」、「軽微な欠陥」、又は「重大な欠陥」として分類した。全粒子のうちの良好な粒子の割合をカウントして最終的な収率を決定した。ほとんどの軽微な欠陥は構造のヘリックス末端に近い位置に生じ、鎖がこれらの位置で解離を受け易いことを示している可能性がある。加えて、これらの収率は、概して粒子の安定性の指標となる。イメージングバイアスが計測精度に影響を与え得ることは注目に値する。TEM画像においてインタクトな粒子の割合をカウントすることにより、予想された55%のTEM収率が得られた(
図12)。このTEM収率は、3D正方格子DNA折り紙に関する既報告の収率(6H×12H×80Bについて27%収率、8H×8H×96Bについて59%)(Y. Ke, et al., J.Am.Chem.Soc 131, 15903 (2009))と同等である。
【0238】
DNA二重鎖の両末端に位置する鎖は、1つのみ又は2つの8ntランダム配列セグメントを有し、これが他の鎖との塩基対合に使用される(
図13B)。従って合理的な仮定は、これらの「ヘッド」鎖又は「テイル」鎖が、構造内部のより深くに位置する鎖と比較してアニーリング中に組み込まれ難く、アニーリング後に3D構造からの解離を受け易いというものである。これらの「ヘッド」鎖又は「テイル」鎖の組込み効率を高める設計戦略が3D構造の全体的な自己集合の質に有利となることが考えられる。本発明者らは、この仮説を、「ヘッド」鎖の組込み効率が向上するように修飾した設計(
図13C)で試験した。同様の修飾を「テイル」鎖にも同様に適用することができる。この設計方法は二段階を含む。(1)クロスオーバーの削除:矢印により指示されるとおり(
図13B)、クロスオーバーの第1列及び第2列が取り除かれる。(2)鎖の連結:
図13Cに示されるとおり、同じ二重鎖にある鎖の各対が共に合体され、より長い一本鎖を形成する。これらの新しい鎖は、3つのランダム配列ドメインを含む32nt長であるか、或いは5つのランダム配列ドメインを含む48nt長(境界鎖)である。6H×10H×128Bの「ヘッド保護体」を設計し直してそれらをその隣接する鎖と合体させることにより(
図13)、修飾されたバージョンの6H×10H×128B−Mは、6H×10H×128Bと比べて190%の収率向上及び17%のTEM収率向上を示した(
図14)。「ヘッド」鎖の修飾はSSD 3D構造の自己集合を向上させることが予想されるが、削除はクロスオーバー密度の低下をもたらし、それが、特に短いヘリックスの構造について、局所的な変形を生じさせ得る。従って、本発明者らはあくまでもこの修飾されたバージョンを、特別な設計規則を実施することにより3D構造を安定化させることができるという概念実証として試行するにとどめた。本明細書で使用される他の3D構造は、当初の戦略を用いて設計した。他の手法、例えば架橋結合(A. Rajendran, et al. J. Am. Chem. Soc. 133, 14488 (2011))が、設計の柔軟性を犠牲にすることなく3D DNAナノ構造を安定化させるのにより一般的な方法であることが判明し得る。
【0239】
種々のサイズのナノ構造。9個のヘリックス、16個のヘリックス、36個のヘリックス、60個のヘリックス、96個のヘリックス、及び144個のヘリックスを含む6つのグループのナノ構造を設計し、次に先に6H×10H×128B自己集合について特定した最適条件を使用してアニーリングした(データは示さず)。本発明者らは、32bp長であるもの(従って隣接するヘリックスの各対の間に1つのクロスオーバーを含むもの)を除く全ての設計について正しい産物バンドを観察した(
図2G及び
図15)。収率は1%未満から約80%まで異なる(
図15)。32bp長であるものを除き、各グループ内で設計が小さい程、より高いパーセンテージ収率を呈する。全ての設計のなかで最も高い収率(80%)は、最も小さいオブジェクト3H×3H×64B(1,296nt又は約0.43MDa)について観察された。最も低い収率は、8H×12H×120B、4H×24H×120B、及び12H×12H×48Bについて観察され、これらの収率は低過ぎたため(1%未満)正確に計測できなかった。各ナノ構造のインタクトな粒子の計測寸法は本発明者らの設計と一致し、種々のサイズの3D自己集合の成功が示唆される(表1)。組み立てられた最も大きい(larget)DNA構造は、8H×12H×120B(728個の鎖によって形成される)及び4H×24H×120B(710個の鎖によって形成される)であり、これらは分子量が同じであった(24,576nt、又は約8MDa、M13ベースのDNA折り紙と比べて60%大型である)。
【0240】
実施例2.10×10×10ボクセルキャンバスから作成される入り組んだ形状
本明細書に提供される教示に基づき、本明細書に記載される方法を用いて様々なキャンバス(及び次に構造)を生成し得ることが理解されるべきである。従ってある特定のキャンバスのこの例示は、非限定的なものである。
【0241】
本発明者らの手法のモジュール性は、10H×10H×80B直方体(10×10×10ボクセル)3Dキャンバスから作成した102個の形状の構築及び特徴付けの成功によって実証される(
図3A及び
図16)。各ボクセルが、X及びYブロックの対の相互作用により形成された8bp(2.5nm×2.5nm×2.7nm)に対応する。
【0242】
【表83】
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【0243】
DNAブリック及び誘導体。3Dキャンバスの任意のDNAブリックが、カスタム形状設計において境界ブリック(即ち層の縁部に露出している)又は保護体ブリック(即ち最初又は最後の層にある)のいずれにもなることができ、さらには両方同時にもなり得る。従って、各ブリックの修飾されたバージョンを、ドメイン削除(例えば、半分のブリックに二等分する)、ポリチミジン配列置換(例えば、保護体ブリックに変える)、及び境界ブリック合体(例えば、48nt境界ブリックに変える)のあらゆる組み合わせで生成し、あらゆる可能性に対応した(
図16)。全部で4455個の鎖(合計138,240nt)がコンピュータプログラムにより生成され、任意の形状をヘッド/テイル保護体及びブリック長い境界ブリックと共に組み立て得ることが保証された。本明細書と共に提出される、本開示の一部と見なされるべき添付の付属書類に、例示的配列が提供される。
【0244】
設計プロセス。本発明者らは、初めに10×10×10ボクセル3Dキャンバスを構築した。ここでは各XYZボクセル(Zがヘリックス方向にある)が8bp二重鎖(2.5nm×2.5nm×2.7nm)に対応する。形状設計は、特定のボクセルセットを選択し、及び取り除くことを介して行われた。3D視覚化ソフトウェアを使用して3Dキャンバスをレンダリングすることにより、グラフィックインタフェース上でボクセルを編集し、単一ボクセル分解能で形状を設計及び視覚化することが可能であった(
図3B及び
図17)。次に複数の形状のボクセル情報をカスタムプログラムにより解釈し、各形状の形成に関わる鎖のリストを生成した。続いてこのリストを加工することにより、自動液体ハンドリングロボットがソースプレートからDNA鎖を選択し、それらをピペットで産物プレートのウェルに移すように指図し、ハイスループット方式で多くの形状用の鎖を混合した。完全な設計ワークフローは
図17及び
図18に示す。
【0245】
3D形状の設計。
図16は、任意の3D形状の作成に使用される4ドメイン鎖及びその誘導体を示す。個別のDNA構造の自己集合は、往々にして望ましくない凝集によって損なわれ、この凝集は、構造が、(1)対をなさない一本鎖ドメイン、又は(2)DNA二重鎖の保護されていない平滑末端を含むときに起こる。C〜Eに示す異なる種類の鎖は、任意の対をなさない一本鎖ドメインのDNA配列を8個の連続するTに変えることによってこれらの2つの状況を回避するように設計される。この戦略により、合計14種類の鎖誘導体が存在するようになり、任意の形状設計について1個、2個、又は3個のボクセルが存在しない場合のあらゆる可能性が網羅される。全15種類の鎖(A〜E)を取り入れる場合、いかなる任意の形状も8bp(1ボクセル)分解能で設計することができる。
【0246】
14種の鎖誘導体のうち、本発明者らの設計及び実験においては、それらの8種のみが実際に実施された。残る6種の誘導体(
図16D及び
図16Eで*が付される)のタイプの鎖は除外される。
図16Dにおける2つの取り除かれた誘導体は、本発明者らによる任意の形状の設計に生じる頻度が低いと考えられる。
図16Eにおける4つの取り除かれた誘導体は、僅か1個のみの8ntランダム配列ドメインからなり、従ってDNA構造へのその組込みは安定性が低いと考えられる。本発明者らは、各形状について100個より多い「1ボクセル」誘導体を組み込むことにより、2つの形状(形状45及び形状55、元の形状は
図3Eを参照)を設計し直した。いずれの修飾形状も、アガロースゲル上に産物バンドがなかったことにより確認されるとおり(データは示さず)、任意の目標の構造を生じることができなかった。しかしながら、この単純な実験からは、個々の「1ボクセル」誘導体の組込み効率に関する何ら明確な示唆を得られない。これらの鎖誘導体が形状の境界にのみ存在することは注目に値する。上述の6種類の誘導体の除外は、実際には、形状の全体的な見掛けにほとんど影響を及ぼさないものと見られる。
【0247】
本発明者らはまた、2種類の48nt「境界鎖」(
図10)を取り入れて形状の自己集合を向上させた。直前の節に記載したとおり、各48nt「境界」鎖は32nt鎖及び16nt鎖の置換に使用される。本発明者らの設計には、全体で各鎖につき合計(9+2)=11個のオリジナル及び誘導体が作り出された。3Dキャンバスの表面に位置する鎖は誘導体が少ないことに留意されたい。
【0248】
各鎖は、それが充当されるボクセルの位置で呼ばれる(
図16G)。数字の各対が1ボクセルを表す。最初の数字がヘリックスを指示し、2番目の数字がヘリックス上のボクセル位置を指示する。数字(0,0)は、8個の連続するTを有するドメイン又は空のドメインを意味する。鎖のボクセル情報を使用して、形状を形成し得る鎖が特定される(
図17)。
【0249】
以下は、3D形状の設計方法の例である。
【0250】
全てのDNA鎖の生成:(1)カスタムプログラムを使用して3Dキャンバスを構築する(
図6)。本発明者らは、本明細書では例として10×10×10ボクセルキャンバスを使用した。(2)カスタムプログラムが、10×10×10ボクセル3Dキャンバスで作成することのできる任意の形状を自己集合させるための鎖及びその誘導体を生成する(S6.1.1節)。次に、全ての配列及びその対応するボクセル情報が、単一のテキストファイルALL-strand.txtに保存される。任意の形状を作成するための合計4455鎖(138,240nt)が生成された。
【0251】
3Dモデルの構築及び形状の編集:(3)市販の3Dモデリングソフトウェアを使用して(本発明者らはStrata(商標)3D(Strataウェブサイトにある)を使用した)、全ての10×10×10ボクセルを含む3Dモデルを構築する。各ボクセルが小さい球体で表される(
図18A)。市販のモデリングソフトウェアは、ボクセルを取り除き/追加し、且つ形状を様々な角度から視覚化するための利便性の高いツールを提供する。(4)
図18Bに示されるとおり、10×10×10ボクセル3Dキャンバスからボクセルを取り除くことにより形状を設計する。この工程では、形状は単一ボクセル(8bp)分解能で設計される。各形状が単一のファイルにそのボクセル情報と共に保存される。
【0252】
ボクセル情報に基づく各形状の鎖の特定:(5)本発明者らのカスタムプログラムがボクセルファイルを読み出す。形状のボクセル情報に基づき、プログラムが配列ファイルALL-strand.txtを検索し、設計した形状を自己集合させるための鎖のリストを生成する。プログラムは、初めに、32nt鎖及び16nt鎖のみを検索して形状を生成する。次にプログラムは、48nt「境界」鎖を形成するため32nt鎖及び16nt鎖の任意の対を一体に合わせることができるかどうかを決定する(
図16F)。そのようにできる場合、プログラムは32nt鎖及び16nt鎖を48nt「境界」鎖に置換する。(6)上記に記載する本発明者らの鎖設計が理由で、一部のボクセルに、ALL-strand.txtにおける本発明者らの鎖が充当されないこともある。この検索プロセスの間、プログラムは、充当を受けられないボクセルを自動的に取り除き、鎖検索プロセスに戻る。ごく少数のボクセル(形状の境界上にある)のみが形状から取り除かれ、従って削除は形状の全体的な見掛けを変えないことに留意されたい。注記:コンピュータプログラムは複数の形状を操作することができる。そのためユーザは、初めにあらゆる形状を設計し、コンピュータプログラムを使用して全形状用の鎖のリストを同時に生成することができる。(7)プログラムが鎖の検索を終了し、全形状の鎖リストを生成する。また、各形状から削除されたボクセルも報告される。ユーザは、誤りがないか、又はボクセルが多く取り除かれ過ぎていないかを確認することができる。例えば、以下の出力は、形状23(形状については
図3Eを参照)から取り除かれた21個のボクセルを示す:[[0, 1], [0, 10], [1, 10], [2, 1], [3, 10], [4, 1], [5, 10], [6, 1], [7, 10], [8, 1], [9, 10], [18, 10], [22, 10], [36, 10], [44, 10], [54, 10], [66, 10], [72, 10], [88, 10], [90, 9], [90, 10]]。
【0253】
この手順を実施して、102個の互いに異なる3D形状の組立てに成功した(
図3E)。形状を同じアニーリング条件(0.5×TE、40mM MgCl
2緩衝液中72時間アニーリング)でアニーリングし、アガロースゲル電気泳動及びTEMイメージングにより(未精製のサンプルに関して)特徴付けた。
【0254】
形状1〜形状17。中間の2層「連結ブロック」によって連結された2個の4H×10H×80Bブロックを各々が含む一群の形状(形状2〜17)を使用して、基本的な設計制約を調べた。連結ブロックは、Y軸(形状2〜9)又はZ軸(形状10〜17)に沿って数が漸減するボクセルを有するように系統的に設計される。形状の対称性から、X軸に沿ったボクセルの除去は、Y軸に沿ったボクセルの除去と同じ影響を有するはずである。アガロースゲル電気泳動の結果から、いずれの系も連結ブロックが小さくなるにつれ形状の安定性が低くなることが明らかになり(データは示さず)、しかしZ軸連結の数を減らすと、Y軸連結の数を減らすより安定性に大きい影響が及ぶように見えた。Y軸に沿った2ボクセル連結のみを有する形状9は、壊れているナノ構造が50%未満となった。対照的に、形状17(Z軸に沿った2ボクセル)の粒子の大多数が壊れており、もっともアガロースゲル及びTEM結果は、良好な粒子がごく一部形成されたことを確かに示している。総じて、これらの観察は、少なくとも2個の連続するX軸又はY軸ボクセル(2個のヘリックス)及び3個の連続するZ軸ボクセル(24bp)という、より安定性の高い特徴のための安全設計基準を示唆している。しかしながら、以下の実験で実証されるとおり、ある種の形状では、より小さい特徴(例えば、2個の連続するZ軸ボクセル、形状33〜37)が安定的に存在し、ここでこれらの特徴は恐らく近接したボクセルによって強化されている)。
【0255】
中実形状18〜31。単純な幾何学的形状及びより入り組んだオブジェクトのZ方向の突出を含むいくつかの中実形状を設計した。これらのオブジェクトの形成収率及び画像が、本発明者らの方法論の構造的完全性に関するさらなる情報を提供する。詳細には、いずれも1つの縁部のみに固定された3個のヘリックス厚さのアペンデージを含む形状26及び27は、時にこれらの突起部を含まずに又は突起部が欠損を含む形で見られることもある。従って、かかる薄い特徴は、本発明者らの設計基準の範囲内にあるにも関わらず、より支持された又はより厚い特徴と比べて安定性が低い。
【0256】
閉じた空洞形状32〜42。これまでに、箱(E.S. Andersen (2009))、四面体(Y. Ke (2009))、並びに球体及び楕円体(D. Han (2011))を含め、閉じた空洞を備える3D DNA折り紙のいくつかの例が実証されている。ここで、種々のサイズの直方体の空洞を備える一連の「空の箱」(形状32〜37)を作り出した。本明細書の結果は、より複雑な空洞設計(例えば、角リング、十字形、及び三角形)を実現可能であることも実証する(形状38〜42)。
【0257】
開いた空洞形状43〜62。様々な幅、奥行き及び幾何形状の単一の空洞(形状43〜53)並びに複数の平行な空洞(形状54〜56)を備える形状を構築した。交差しない垂直トンネル(形状57)、曲がったトンネル(形状58)、及び交差するトンネル(形状59〜60)を備える形状もまた構築した。さらに、結果から、形状60〜62により実証されるとおり、異なる角度から様々な外観図が作り出されるように直方体の外表面を修飾し得ることが示された。これらの形状は、本明細書に提示されるモジュール式自己集合によって実現可能な複雑さの好見本である。
【0258】
中実基体上に特徴が載った形状63〜100。10×10×6ボクセルの中実基体上にある4ボクセル厚さの細密な特徴又は個別の特徴を設計した。これらには、完全な一組の数字(形状65〜74)及びラテン文字(形状75〜100)が含まれた。同心円構造(形状63及び64)は、1ボクセル程の小ささの特徴を作成できることを示した。かかる観察は、さらに、2ヘリックス束×24bpの設計基準が、大まかに構造の周囲環境に依存することを示す。2D特徴と中実基体の厚さとの間のボクセル数の差が小さいため、TEM画像は2つの表面間で低いコントラストを示す。それでもなお、この方法は、これらの3D特徴を使用して、本来2D平面では達成し得ない複数の部分が突出した特徴を作り出せる可能性を際立たせる。
【0259】
本明細書に記載されるほとんどの形状について、収率は数パーセント乃至30パーセントであった(5個の3D DNA折り紙ナノ構造の収率は7%〜44%と報告された(15))。僅か5個の形状のみが30パーセントより高い収率であり、3個の形状は1パーセントより低い収率であった。様々な複雑な形状の作成が成功したにも関わらず、一部の形状は望ましくない特性を呈した。例えば、形状60〜62などの複雑な形状は、TEM画像で示されるインタクトな粒子の割合が低かった(1%未満)。形状の一部の細密な特徴(例えば形状27の2つのウィング)は損傷を受け得るか、又はさらには、アガロースゲルバンドから形状が抜き出された場合には完全に取り除かれ得る。4個の失敗した設計は、アガロースゲル上に明確な産物バンドを生じなかった(
図S55)。中実基体上に細密な特徴を有した2個の他の設計は、アガロースゲル上に強力なバンドを示した。しかしこれらの特徴はTEM画像において確認できなかった。最後の2つの形状については自己集合を成功であるとすることが可能であるが、特徴が小さ過ぎるため画像化できない。
【0260】
実施例3.3D DNAモジュール式自己集合の普遍性
モジュール式DNA自己集合の汎用性についてさらに調べるため、以下の実験を行った:(1)DNA折り紙によって実証されている、異なる格子ジオメトリを備える形状を設計する(P. W. K. Rothemund (2006);S. M. Douglas (2009);Y. Ke, et al. J.Am.Chem.Soc (2012))、及び(2)他の種類のモジュール式DNAモチーフを使用して3D自己集合を試験する。
【0261】
単層(2D)ナノ構造。概念的に、単層(2D)DNAナノ構造は、3D DNAブロックナノ構造から層を「抽出」することにより構築できる(
図4A)。30H×1H×126Bを試験した(データは示さず)。これは10.67bp/ターン(3D設計用)ではなく10.5bp/ターンとなるように意図的に(intensionally)修飾し、それにより比較的平坦なナノ構造を得た。収率は、アガロースゲル電気泳動の結果に基づき18%と推定された(データは示さず)。30H×1H×126Bの寸法は、AFM画像を基準として各bpにつき0.31nm(±0.01nmSD)、各ヘリックスにつき2.6nm(±0.3nmSD)であると計測された。
【0262】
3Dハニカム格子ナノ構造。次に本発明者らは、10.8bp/ターン(bp当たり33.3°のねじれ)の3Dハニカム格子及び六方格子DNAナノ構造を作った。3Dハニカム格子DNAナノ構造用に4種類の4ドメインDNA鎖を設計した(
図4D、
図4E)。6H×6H×84B−HCナノ構造を構築し、特徴付けることに成功した(
図4D、及びデータは示さず)。TEM画像の粒子は、13nm(±0.9nmSD)×22nm(±1.0nmSD)×29nm(±1.2nmSD)であると計測された。収率は30%であると推定された(データは示さず)。
【0263】
3D六方格子DNAナノ構造。3D六方格子DNAナノ構造を構築するように2種類の鎖を実現する:クロスオーバーによって連結された複数の9ntドメインを有する直鎖及び2つの9ntドメインを有する18nt鎖(
図4G、
図4H)。6H×7H×108B−HLナノ構造を構築し、特徴付けた(
図4I、及びデータは示さず)。TEM画像の粒子は、13nm(±0.8nmSD)×18nm(±1.1nmSD)×35nm(±2.2nmSD)であると計測された。収率は26%であると推定された(
図S64)。
【0264】
他のモチーフ設計。「一方向性」の設計とは対照的に、鎖はまた、3Dナノ構造において反対方向を向くように設計することもできる。ここで本発明者らは、奇数の層にある鎖がZ−方向に向き、且つ偶数の層にある鎖がZ+方向に向く設計戦略を実証する(
図19B)。本発明者らは、6H×6H×64B−A(交互設計)、及び2つの他のDNAモチーフ設計を実施する2つの6H×6H×64Bナノ構造の自己集合を設計し、試験した(データは示さず)。アガロースゲル電気泳動及びTEMイメージングによって6H×6H×64B−Aの自己集合の成功が確認された。本発明者らの結果はまた、この鎖設計が他の2つのモチーフ設計と比べて大幅に高い収率であったことも実証した。ナノ構造のサイズに関わらず、かかる交互設計ではクロスオーバーは対称に配置される。これらの設計の成功から、汎用的なモジュール式DNA自己集合方法が描き出された。
【0265】
実施例4.DNAブリック結晶
DNAブリック結晶の設計。全ての結晶を、天然のB型DNAの10.5bp/ターンのねじれ密度から僅かに逸脱する10.67塩基対(bp)/ターンのねじれ密度を使用して設計した。組み立てられた構造において、DNAブリックは、4つの8nt結合ドメインを含む単純なLEGO(登録商標)様ブリックモデル(
図20A上)で表され得る32ヌクレオチド(nt)鎖である。多くのブリック−各々が異なる配列を有する−が一段階アニーリング反応で規定の三次元構造に組み立てられる(
図20A下)。
【0266】
個別の三次元DNAブリック構造間に「連結」ブリックを使用して、DNAブリック結晶を得た。この設計戦略は、小さい6H(ヘリックス)×6H(ヘリックス)×24B(塩基対)直方体構造で実証された。個別のDNAブリック設計の表面上のDNAブリックは、個々の構造を連結し、且つX軸、Y軸及びZ軸に沿った結晶の成長を、一次元成長結晶が生じるように個々に伸ばすか、又は二次元成長結晶が生じるように組み合わせで伸ばすように修飾した(
図20D及び
図24A〜
図24C)。Z軸に沿った多量体化を達成するため、第1のドメイン層の配列を、最後のドメイン層と相補的になるように修飾した。X軸又はY軸に沿った多量体化は、X軸又はY軸に沿った境界上のブリックを新しい32ntブリックに置換することにより達成された。これらの新しい32ntブリックの各々は、直方体の一方の側に相補的な2つのドメインと、直方体の他方の側に相補的な別の2つのドメインとを含んだ。従って、これらの32ntブリックは直方体単量体を連結し、連続的な成長を達成する。
【0267】
DNAブリック結晶は繰り返し単位から設計したが、連結ブリックは他のブリックとサイズ及び機能が同じであった。従って、DNA折り紙結晶の階層的成長とは異なり、本発明(inventoin)のDNAブリック結晶の成長は非階層的であり得る(
図20C上)。初めに繰り返し基本単位を形成することなく、結晶の成長中、ブリックを個々に結晶に組み込んだ。情報階層−繰り返し単位におけるブリックの配列のユニークさ−は最終的な結晶構造において維持された。対照的に、DNA折り紙結晶化は階層的プロセスであり、折り紙構造を完全に形成してから結晶に組み込まなければならない(
図20C下)。
【0268】
この設計戦略を使用して、本発明者らは、3つのグループの結晶を構築し、試験した:(1)Z軸に沿って延在する一次元「DNAバンドル」結晶(Z結晶と称される);(2)Z軸及びX軸に沿って延在する二次元「DNAマルチレイヤー」結晶(ZX結晶と称される);及び(3)X軸及びY軸に沿って延在する二次元「DNAフォレスト」結晶(XY結晶と称される)(
図20D及び
図20E)。異なる設計の繰り返し単位を使用して、規定の寸法及びパターンを有するDNAブリック結晶を作成することができる(
図20F)。従って、結晶設計は、「[成長方向]−[繰り返し単位のサイズ]−[その形状の基本的特徴]」のようにして命名される。個別のDNAブリック構造と同様に、全てのDNAブリック結晶の配列は、本明細書に記載されるとおり、ランダムに生成した。
【0269】
全ての未精製DNAブリックを等モル比(各鎖100nM)で1×TE/MgCl
2(5mMトリス、pH7.9、1mM EDTA、40mM MgCl
2)緩衝液中に、細かい化学量論的調節は行うことなしに一緒に混合して結晶を組み立てた。次に混合物を一段階72時間又は168時間熱的アニーリングに供し、続いて精製することなくTEMイメージングを行った。各DNAヘリックスの有効直径は、全ての3D結晶において2.5nmであると計測された。
【0270】
一次元成長DNAバンドル結晶(Z結晶)。本発明者らは、初めに2つのグループのZ結晶を作成した:(1)種々の断面形状を備える中実Z結晶、これにはZ−6H×6H×32B、Z−8H×8H×32B、及びZ−10H×10H×32B、Z−8H×8H×128B−らせん、Z−43H×32B−三角形、及びZ−44H×32B−六角形が含まれる(
図21A);及び(2)チューブ形状のZ結晶、Z−56H×32B−トンネル、Z−60H×64B−トンネル、及びZ−108H×32B−トンネル(
図21B)。
【0271】
全てのZ結晶が、TEM画像において大域的な右巻きのねじれを呈した。大域的なねじれとは、10.67bp/ターンのアンダーワインディング設計により生成される応力に対する応答と理解される。ねじれの大きさは、Z結晶の断面形状の影響を受けた。Z結晶は容易に形成された。ほとんどのZ結晶は、24時間アニーリングプロトコルを使用して数マイクロメートルの長さに成長することができる。しかしながら、長いアニーリングプロトコル程、典型的にはより長いZ結晶が得られる。従って、本発明者らは全てのZ結晶について72時間アニーリングプロトコルを使用した。
【0272】
32bp繰り返し単位を使用して3つの中実Z結晶を設計した。Z結晶の正方形形状の断面は、それぞれ6H×6H、8H×8H、及び10H×10H直方体を含む。次に本発明者らは、より複雑な断面形状を備える結晶を作製した。Z軸に沿ってらせんチャネルを示すZ−8H×8H×128B−らせん結晶を構築することに成功した。チャネルはTEM画像で明確に見ることができる。次に本発明者らは、2つのより単純な設計を構築した:Z−43H×32B−三角形及びZ−44H×32B−六角形。いずれも、3つの正方形断面Z結晶と同等の高い組立て品質を示した。
【0273】
次に3つのチューブ形状のZ結晶を試験した。Z−56H×32B−トンネルの断面は、2H×4H長方形が中心から取り除かれた8H×8H正方形である。Z−108H×32B−トンネルの断面は、6H×6H正方形が中心から取り除かれた12H×12H正方形である。Z−60H×64B−トンネルは、このグループのなかで最も複雑な設計である。これは、Z軸に沿った中心にある2H×2H正方形トンネルを含む。加えて、8H×2H×24Bポアが、Z軸に沿って64bp毎に2H×2H正方形トンネルと交差する。TEM画像は、設計されたDNAヘリックスの半分のみを含むように見える多くの構造を示す。これは、周期的な8H×2H×24BポアがY軸に沿った上半分と下半分との間の連結を弱めることに起因し得る。
【0274】
Z結晶のさらなるTEM画像を
図25A〜
図25Hに示す。
【0275】
二次元成長DNAマルチレイヤー結晶(ZX結晶)。次に2つのグループのZX結晶を構築した:(1)中実ZX結晶−それぞれ4、6、10、及び20層のDNAヘリックスを含むZX−4H×4H×32B−直方体、ZX−4H×6H×32B−直方体、ZX−4H×10H×32B−直方体及びZX−4H×20H×32B−直方体(
図22A〜
図22C);及び(2)チャネル又はポアを備えるZX結晶−ZX−32H×64B−チャネル、ZX−32H×64B−交差チャネル、ZX−6H×6H×64B−ポア及びZX−96H×64B−交差チャネル(
図22D及び
図22E)。
【0276】
本発明者らは、全てのZX結晶が、X軸と比べてZ軸に沿ってより速く成長したことを観察した。ある場合には(例えば、X−6H×6H×64B−ポア結晶)、Z軸に沿った成長が大幅に速く、TEM画像に現れるリボン様のZX結晶が生じた。この現象は、Z軸(ヘリックス軸)に沿った結晶成長がX軸又はY軸に沿った結晶成長より実現し易いことを示唆している。これは恐らく、(1)Z軸の成長がより多くのπ−π塩基スタッキングをもたらすこと;及び/又は(2)X軸又はY軸の成長が負電荷を有するDNA骨格を互いに最密に充填するために余分なエネルギーペナルティを克服しなければならないことが理由と思われる。最も複雑なZX結晶設計である、イメージング前に168時間アニーリングしたZX−96H×64B−交差トンネルを除き、多くのZX結晶を72時間アニーリングプロトコルを使用して作製した。全てのZX結晶が小さい右巻きねじれを示したが、これは10.67bp/ターンのアンダーワインディング設計によって生じるものである。結果として、本発明者らは、TEM画像において結晶が時に屈曲し、それ自体に折り重なることを観察した。しかしながら、ZX結晶のねじれの大きさは、屈曲位置が典型的にはZX結晶上で数マイクロメートル離れて観察されたため、Z結晶より大幅に小さいものと見られた。
【0277】
4層、6層、10層、又は20層のヘリックスを含んだ4H×4H×32B単位から4つの中実ZX結晶を設計した。ZX結晶の厚さは、TEM画像において結晶が折れる位置で直接計測した(
図22C)。4層、6層、10層、及び20層のZX結晶の厚さは、それぞれ約10nm、15nm、25nm及び50nmと計測され、結晶が完全に形成されたことが示され、各DNAヘリックスは直径約2.5nmであった。本発明者らは、初めに、6H×6H×32B−直方体単位から3つのZX結晶を設計した。直方体から4個のヘリックスを取り除いてZX−32H×64Bチャネル設計を生成した。第2のZX−32H×64B−交差チャネル設計は、ZX−32H×64B−チャネルから2H×32Bチャネルを取り除くことにより生成した。第3のZX−6H×6H×64Bポア設計は、各直方体単位にY軸に沿った2H×4H×32B垂直ポアを含んだ。この設計は、恐らくはX軸に沿った連結が少ないことに起因して、細くて長い結晶を生じた。最も複雑なZX結晶設計は、ZX−96H×64B−交差トンネル結晶であった。その繰り返し単位は、Z軸に沿って2H×2H×64Bポアを有し、且つX軸に沿って10H×2H×24Bポアを有する10H×10H×64B(6400bp)直方体と考えることができる。互いに垂直に延在する2つのグループの接触のないトンネルが実現された。これらの2つのグループのトンネルは、2つのDNAヘリックス中実層によって隔てられた。かかる合理的に設計された3D多孔質特徴は、従来の折り紙法を用いては実現が困難であった。
【0278】
ZX結晶のさらなるTEM画像を
図26A〜
図26Hに掲載する。
【0279】
二次元成長DNAフォレスト結晶(XY結晶)。最後に、本発明者らは、2つのグループのXY結晶を作成した:(1)中実XY結晶−XY−4H×4H×64B−直方体、XY−4H×4H×128B−直方体、XY−4H×4H×192B−直方体、及びXY−4H×4H×256B−直方体(
図23A及び
図23B);及び(2)複雑なXY結晶−XY−32H×64B−ポア、XY−32H×128B−ポア、XY−4H×8H×96B−チャネル、及びXY−4H×4H×32Bチューブ(
図23C及び
図23D)。
【0280】
XY結晶は、DNAヘリックス軸に沿った成長を省く二次元成長結晶である。対照的に、前出の二次元DNA結晶はいずれも、DNAヘリックス軸成長を実施する。X軸又はY軸に沿った結晶成長はZ軸に沿った成長より難しいため、72時間アニーリングプロトコルは多くの場合にXY結晶を生じないか、又はX軸若しくはY軸に沿って数百ナノメートルより小さいXY結晶を生じる。従って、本発明者らは、
図23における全てのXY結晶について168時間アニーリングプロトコルを使用した。XY結晶の成長は等方性で、2つの成長方向(X軸及びY軸)が両方ともDNAヘリックス軸と垂直であったため、明らかな方向選択性を示さなかった。
【0281】
XY結晶は、本発明者らの画像ではいかなる大域的な右巻きねじれも示さなかった。解析を単純化するため、本発明者らは、XY結晶がn個のヘリックスを含む完全な円柱を形成すると仮定した。円柱のラジアン単位の全体的なねじれθ=TL/JG(式中、Tはアンダーワインディング設計がもたらす印加トルクであり、Lはヘリックスの長さであり、Gはヘリックスの剛性率であり、及びJはねじれ係数である)。最初の3つのパラメータは一定と見なし得る。断面半径(XY面)の関数としての円のねじれ係数Jは、以下の式により近似することができる:J=πr
4/2(式中、rは円断面半径である)。従って、θはr
4、又はn
2に反比例する。XY結晶が成長し、nが1に近付くと、大域的ねじれは速やかに軽減され、それ以上観察することができなくなる。
【0282】
XY結晶の表面の平坦性は、溶液中であってもゲスト分子の位置及び向きを正確に制御することができるため、一部の適用にとって望ましい特性である。対照的に、ねじれのある構造(例えばZX結晶)又は柔軟性のある構造(例えば、単層DNA折り紙結晶)の溶液中におけるコンホメーションは、正確に予測することが困難である。加えて、結晶が極めて多数のDNAヘリックスを表面上に露出させているため、XY結晶は、物質を配置するのに容易なプラットフォームを提供する。機能化された材料は、各寸法において2.5nmの分解能で最密に充填されたDNAヘリックスの末端に簡便に連結することができる。
【0283】
4H×4H直方体単位から様々な厚さの中実XY結晶を設計した。異なる長さの4H×4H直方体単位を使用して、厚さ64bp、128bp、192bp及び256bpの4つのXY結晶を生成した。これらの中実XY結晶の厚さは、それらが完全に平坦であったため、TEMイメージングから直接計測することができなかった。各塩基対がB型DNAにおける標準的な0.33nm長さに対応する場合、これらの4つの結晶の厚さはそれぞれ約21nm、42nm、63nm及び84nmとなるはずである。
【0284】
XY−32H×64B−ポア及びXY−32H×128B−ポア結晶を構築した。両方の設計とも、各寸法において4個のヘリックス(10nm)により隔てられた周期的な2H×2H(5nm×5nm)ポアを含んだ。2つの結晶構造は、21nm及び42nm厚さの多孔質膜構造に似ていた。表面特徴を有する非多孔質構造を構築し得ることを実証するため、本発明者らは、XY−4H×8H×96Bチャネル結晶を作成した。これは、中実64bp(42nm)高さの基体と平行チャネルとを含んだ。チャネルは幅が4個のヘリックス(10nm)、高さが32bp(21nm)で、4層のヘリックスにより隔てられていた。
【0285】
XY結晶のさらなるTEM画像を
図27A〜
図27Iに示す。
【0286】
特に興味深いXY結晶はXY−4H×4H×32B−チューブ結晶であった。これは、他のXY結晶と同じ設計戦略を使用して設計した。この薄いXY結晶(32bp、又は10.6nm)は、平坦な2D結晶ではなく、チューブ構造を形成した。理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、このチューブ形成がヘリックス間における連結の不均等な分布に起因すると仮定する(
図28A〜
図28C)。XY−4H×4H×32B−チューブにおけるヘリックスは比較的短いため、隣接するヘリックスの各対の間にある連結は1つのみである。この連結はY軸に沿って均等に分布している。X軸に沿っては、連結の半分が構造の中央に位置し、残る半分が構造の片側に位置する。従って、理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、結晶が反対側で拡張し、チューブを形成すると仮定する。これらのチューブは細く、数マイクロメートルの長さに成長することができる(
図29)。チューブの直径は、僅かな変動はあるものの、約14〜20nmである。より高いMgCl
2濃度の存在下でXY−4H×4H×32B−チューブをアニーリングすると、Mg
2+が負に荷電したDNAヘリックス間の斥力を低減し得るため、より大きい直径のチューブを作製することができる。60mM MgCl
2では、本発明者らは、140nm〜300nmの直径を有する多くのチューブを観察した(
図30)。我々の仮説をさらに試験するため、本発明者らは、DNAブリックが層間で交互に並ぶように配置されたXY−4H×4H×32B−直方体結晶を設計した。この設計におけるヘリックス間の連結は、X軸及びY軸の両方に沿って対称に分布した。TEM画像から、平坦な結晶構造が実証された(
図31)。より厚い64bp、128bp、192bp及び256bpのXY結晶設計は、隣接するヘリックスの各対の間に2、4、6、及び8個の連結を有した。これらの設計について、TEM画像に認識できる湾曲は観察されなかった。
【0287】
その他のDNAブリック結晶。本発明者らは、(1)X軸に沿って延在する2つの一次元成長結晶及び(2)「オフセット」連結スキームを実現する二次元成長結晶を含め、DNAブリックから他のタイプのDNAブリック結晶を組み立て得ることをさらに実証した。
【0288】
1D X結晶。X軸又はY軸に沿った繰り返し単位の成長により、別種の一次元成長結晶が生成された。本発明者らは、2つのX結晶を設計し、試験した(DNAブリック構造の対称性から、X結晶とY結晶とは極めて類似しているはずであることに留意されたい):X−6H×6H×64B−直方体結晶(
図32A)及びX−32H×64B−ポア結晶(
図32B)。X−6H×6H×64B−直方体結晶は、中実6H×6H×64B直方体単位に基づき設計した。X−32H×64B−ポア結晶は、4個のヘリックスを中心から取り除いた6H×6H×64B直方体単位を使用した。両方の結晶とも、数百ナノメートルの長さに成長し、TEM画像において良好に形成されているように見えた。2つのX結晶の平均長さは、多数の短いDNAヘリックスが最密に充填されることに起因して、Z結晶と比べて大幅に短かった。
【0289】
オフセット2D ZX結晶。前述の結晶は全て、
図20Bの連結スキームを使用して設計した:構造の伸長は、軸に沿って繰り返し単位を「完全一致」方式で連結することにより達成した。例えば、6H×6H×32B−直方体Z軸結晶を作成するため、繰り返し単位中のあらゆる二重鎖が次の繰り返し単位中の同じ二重鎖と連結するように設計した。しかしながら、各軸に沿った連結は、「オフセット」結晶を生成するようにシフトさせることができる。かかる戦略により、同じ基本の繰り返し単位からのより多くの結晶設計が可能となる。本発明者らは、オフセットスキームを使用して、Z軸及びX軸に沿って6H×6H×64B−直方体繰り返し単位を伸長する二次元成長結晶を構築した(
図33A〜
図33C)。この設計では、結晶のZ軸延在範囲が、X軸に沿って4個の二重鎖だけずれている;結晶のX軸延在範囲が、Z軸に沿って32bpずれている。オフセット連結は、DNAブリック構造の周期性に起因して、以下の規則に従った:X軸又はY軸に沿ったずれは2個の二重鎖間隔毎に生じ;及びZ軸に沿ったずれは32bp間隔毎に生じる。
【0290】
実施例5.金ナノ粒子のパターニング
DNA構造を鋳型として使用して、金ナノ粒子が個別のパターン(Kuzyk, A. et al. Nature 483, 311-314 (2012);Acuna, G P et al. Science 338, 506-510 (2012);Aldaye, F A & Sleiman, H F. Angew. Chem. Int. Ed. 45, 2204-2209 (2006))及び単層の周期的パターン(Sharma, J. et al. Science 323, 112-116 (2009))に配列されている。しかしながら、金ナノ粒子の最密充填周期パターン、特に多層パターンを形成することは、依然として難題である。DNAブリック結晶を使用した材料の配列を実証するため、本発明者らは、最密充填金ナノ粒子構造を設計し、構築した:(1)ZX−4H×6H×96−チャネル結晶上における平行金粒子ラインの2D配列(
図34A及び
図34B)及び(2)XY−4H×4H×64−直方体結晶の2つの表面上における平行金ナノ粒子単層の単純3D配列(
図34C〜
図34E)。
【0291】
ZX−4H×6H×96−チャネル結晶の設計及びTEM画像を、
図35A〜
図35Cに示す。チャネルは奥行き2ヘリックス(5ナノメートル)及び幅32bp(10.6ナノメートル)である。隣接する平行チャネルは、Z軸に沿って64bp(21.2nm)の距離だけ隔てられている。ポリA(10個の連続するアデニン塩基)DNA鎖で機能化された金ナノ粒子をDNA結晶上に配列した。チャネル内では、あらゆるヘリックス末端が、金ナノ粒子を捕捉するためのポリT一本鎖DNAを呈する。金ナノ粒子を、本発明者らの設計と一致する平行線状に配列することに成功した。各ライン内で、最密充填金ナノ粒子の単鎖が観察された。ライン状の金ナノ粒子間の平均距離は、明らかな欠陥がある一部の位置を除き、約2ナノメートルである(
図34B)。
図23Cに示されるとおり、2つの平行な金ナノ粒子単層をXY−4H×4H×64−直方体結晶上に組み立てた。結晶は両方の表面上の各ヘリックス末端に、ポリA鎖で機能化された10ナノメートル金ナノ粒子を捕捉するためのポリT配列を呈する。粒子間の平均距離は約1〜2ナノメートルであるものと見られた(
図34D)。構造は時に縁部が湾曲した(
図34E)。金ナノ粒子の2つの単層間の縁部間距離は、約25nmであると計測され、設計した結晶厚さと一致した。
【0292】
金ナノ粒子をミクロンスケールの秩序立った低次元アレイに並べることは、多様なプラスモン適用において必要とされる(Melosh, N. A. et al. Science 300, 112-115 (2003);Qi, M. H. et al. Nature 429, 538-542 (2004))。詳細には、2nm未満の面間間隔のナノ粒子アレイが、強力なプラズモンカップリングを呈するものと見込まれる(Qi, M. H. et al., 2004)。DNAナノ構造を鋳型として、金ナノ粒子がキラル(Qi, M. H. et al., 2004)、線状(Liu, N., et al. Science 332, 1407-1410 (2011);Tang, C. B., et al. Science 322, 429-432 (2008);Tavakkoli K. G., A. et al. Science 336, 1294-1298 (2012))、及び分枝状パターン(Seeman, N.C. J. Theor. Biol. 99, 237-247 (1982); Chen, J. & Seeman, N. C. Nature 350, 631-633 (1991))に配列されている。しかしながら、これらの構造のほとんどは個別の100nm未満の構造であり、ミクロンスケールでの長い範囲に及ぶ秩序化を欠いている。加えて、粒子間の間隔を2nmを切るまでに減らすこともまた難題である。本発明のDNA結晶の作製方法は、これらの難題に対処するユニークな方法を提供する。ポリT結合部位の表面分布を変化させることにより、金ナノ粒子をミクロンスケールの異なる2Dパターンで、最密充填パターンから20nm鎖間間隔の金ナノ粒子鎖のアレイに至るまでプログラムした。ポリT結合部位の周期性はDNA結晶上で2.5nmであり、これにより粒子間間隔は約2nmに減少した。
【0293】
本発明者らの研究は、短い合成DNAから3D正方格子、ハニカム格子、及び六方格子DNAナノ構造を構築するための普遍化された手法を提供する。さらに、本発明者らはまた、多様な形状並びにチャネル及びポアなどの入り組んだ特徴を備える102個の入り組んだ3D形状も実証した。本発明者らのモジュール式の手法は、本発明者らの単純化したLEGO(登録商標)様モデル及びコンピュータ支援設計プロセスを伴い、入り組んだ3Dナノ構造を設計する単純な方法を提供する。長い足場鎖がないため、3Dキャンバスにおける任意のボクセルを独立して追加し又は取り除くことができ、8bp分解能での形状設計が可能となる。DNAブリックのコンパクトさ及びモジュール性を利用して、本発明者らは入り組んだ特徴(細い空洞及び通路など)を有するナノ構造を組み立てることができたが、これを、各ステープル鎖成分が典型的には大幅にコンパクトさに欠け、且つ足場が全くモジュール式でないDNA折り紙を使用して達成するのは、困難であり得る。1000ボクセル3D DNAキャンバスは、最大2
1000〜10
300の潜在的可能性を提供する。しかしながら、完全な形状に自己集合するためには、各ボクセルがその隣接するボクセルの少なくとも1つと物質的に連結されなければならない。そのため構築することのできる実際の形状はそれより少ない。
【0294】
本発明者らは、ある種の大きい又は入り組んだ設計が脆弱性を呈し得ることを注記した。一例は3H×3H×1024Bであり、これはアガロースゲル精製後のTEMイメージングの間にほとんどが壊れて断片となった。この問題に対処する一つの方法は、ナノ構造の一部の位置、特に「ウィークポイント」に対するより長い合成DNA鎖の組込みを用いることである。これらの長い鎖は、足場鎖と同様、形状を強化し得る。
【0295】
入り組んだ3D形状を構築する能力により、DNAナノテクノロジーが対処し得る難題及び適用の範囲が広がり、例えば生合成機構を模倣する高度なDNAデバイスを作成し、又は3D空間にゲスト分子を配列して様々な機能性ナノ材料を生成し得る。加えて、合成DNAから作成される3Dナノ構造により、研究者がその用途に応じたカスタム配列を設計することが可能になる。さらに、L−DNA、化学修飾骨格を有するDNA、人工塩基を有するDNA、及びRNAを含めた他の合成情報高分子を使用するモジュール式自己集合は、薬物デリバリー及び治療適用などの様々な適用に決定的に重要であることが判明し得る。
【0296】
本発明者らはまた、カスタム設計された寸法及びナノスケール特徴を有する複雑な3D DNA結晶を構築するための普遍的方法論も提供している。これは、真のミクロンスケール3D周期構造を作成することが可能な初めてのボトムアップ式自己集合戦略であり、構造は、数ナノメートルの分解能で合理的に設計され得る繰り返し単位を使用して、メガダルトンのサイズに達し得る。様々な設計の周期的単位−数百塩基対から数千塩基対に至る−を使用して、本発明者らは、(1)最大108個の平行ヘリックスを含む1D成長DNAバンドル結晶;(2)最大20層(50nm)の厚さの2D成長DNAマルチレイヤー結晶;及び(3)最大256bp(84nm)の高さの2D成長DNAフォレスト結晶を構築した。さらに、本発明者らは、複雑なナノメートルスケールの表面特徴、チャネル、及び多孔質パターンを本明細書に提供される3D結晶で実現できることを実証した。
【0297】
この組立て戦略は、DNA折り紙及びDNAタイルの結晶化に関する理解に基づく。本明細書におけるDNA折り紙結晶の組立ては、一段階アニーリング反応又は二段階アニーリング反応を用いて実施され得る。1回のアニーリング反応では、足場、5〜10倍のステープル、及び連結鎖が共にアニーリングされる。理論によって拘束されるものではないが、DNA折り紙単量体はアニーリングの早い段階で(高い温度で)正しく形成され、次にアニーリングの遅い段階で(低い温度で)互いにつなぎ合わされることで結晶が形成される必要があると考えられる。二段階アニーリング反応は、連結鎖を除く折り紙単量体の最初のアニーリングから始まり、続いて精製ステップがあることにより、折り紙単量体が得られる。精製された単量体は、次に連結鎖と混合され、その混合物が、最初のアニーリングステップより低い開始温度による第2のアニーリングに供される。いずれの場合にも、DNA折り紙結晶の組立ては、2つの別個の段階、即ち単量体形成と単量体の結晶化とを経る階層的プロセスである。
【0298】
かかる階層的結晶化は、いくつかの潜在的難題をもたらし得る。第一に、単量体の形成と結晶化とが、2つの十分に離れたアニーリング段階で起こる必要があり得る。単量体が完全に形成される前に結晶化が始まると、欠陥のある単量体がある種の良く秩序立った結晶の成長を損なう可能性があり得る。第二に、DNA折り紙単量体を結晶に組み込む動力学が、単量体の純然たる大きさ及び単量体の大量の負電荷のために緩徐であり得る。これらの要因は、結晶が妥当なアニーリング時間内に大きいサイズに達することを妨げ得る。第三に、結晶化の成功には、最終的にその系を最低エネルギー状態に至らせ得る単量体の組込み及び解離の繰り返しが関わる何らかのエラー修正が必要であり得る。大きい折り紙単量体では解離速度が遅くなり得るが、これは一部の結晶の欠陥を引き起こし得るか、又は結晶成長を妨げ得るかのいずれかである。
【0299】
本明細書に提供されるDNAブリック結晶は、三次元空間において複雑なDNA結晶を作成するための新しい展望を明らかにする:結晶化中の高速の動力学を、繰り返し単位の情報の複雑さを損なうことなく達成することができる。標準化された構成要素−DNAブリックのような−を利用するモジュール式戦略を用いると、繰り返し単位が何千個もの塩基対を含むことができ、3D空間における複雑な設計が可能となる。結晶は、初めに複数の鎖からなる単位を形成する必要なしに、DNAブリックが結晶化する間の個々のブリックの組込みを通じて成長する。従って、本発明のモジュール式DNAブリック結晶では、情報の複雑性及び高速の結晶化動力学の両方が実現される。
【0300】
本発明の合理的に設計された自己集合DNA結晶は、機能部分、例えば限定はされないが、タンパク質、核酸、金属粒子、量子ドット等の鋳型化に用いられ得る。かかるボトムアップ方式を用いると、ナノスケール特徴を有するミクロンスケールの周期的材料を製作することができる。この技術はトップダウンパターニングを用いたDNA結晶の配列を促進し、従ってナノテクノロジーの重要な目標の一つ、即ち効率的なナノスケールDNA自己集合を、例えばナノフォトニクス及びナノエレクトロニクスなどの適用の強力なトップダウン方式と組み合わせることが達成される。
【0301】
方法及び材料
サンプル調製。Integrated DNA Technology, Inc.又はBioneer CorporationによってDNA鎖が合成された。構造を組み立てるため、未精製のDNA鎖を、10〜80mM MgCl
2を補足した0.5×TE緩衝液(5mM トリス、pH7.9、1mM EDTA)中に、終濃度が各鎖につき100nM又は200nMとなるように混合した(500個より多い鎖を含むナノ構造に関しては、所望の200nM濃度を達成するため蒸発ステップを実施した)。
【0302】
アニーリング勾配。次にPCRサーモサイクラーにおいて、80℃から60℃への1時間にわたる高速線形冷却ステップ、次に60℃から24℃への24時間又は72時間線形冷却勾配により、鎖混合物をアニーリングした。これらのアニーリング勾配は、第2の冷却ステップの長さにちなみ、24時間アニーリング又は72時間アニーリングと命名した。
【0303】
アガロースゲル電気泳動及びサンプル精製。次にアニーリングしたサンプルを、氷水浴中、2パーセント天然アガロースゲル電気泳動(11mM MgCl
2及び0.005%(v/v)EtBrを補足した0.5×TBE緩衝液に調製したゲル)に2時間供した。次に、目標のゲルバンドを切り出し、Freeze ’N Squeezeカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc.)に置いた。カラムにおいてマイクロチューブ用乳棒でゲル断片を細かく粉砕し、次にカラムを7000gで5分間遠心した。カラムに通して抽出したサンプルを、TEM又はAFMイメージング用に収集した。
【0304】
サンプル調製のロボットオートメーション。複雑な形状の設計を支援し、且つ液体ハンドリングロボット(Bravo、Agilent)を使用して鎖の混合を自動化するように、Python(http://www.python.org/)プログラムを設計した。各形状について、水溶液中10μMの各鎖のうち4μLをピペットで取り、2mL未満の最終容量となるように混合した(正確な容量は目標形状の構成鎖の数により決定した)。次に混合物を真空遠心乾燥し(Savant Speedvac sc110)、40mM MgCl
2を含む200μLの0.5×TE緩衝液中に再懸濁した。ロボットピペッティングのラウンド毎に48個の形状を受け入れ、完了するまでに3〜4日間かかった。
【0305】
TEMイメージング。イメージングのため、3.5μLアガロースゲル精製又は未精製サンプルをグロー放電炭素被覆TEMグリッドに4分間吸着させ、25mM NaOHを含有する2%ギ酸ウラニル水溶液を使用して1分間染色した。80kVで動作させたJEOL JEM-1400を使用して、イメージングを実施した。
【0306】
AFMイメージング。Digital Instruments Nanoscope V制御器(Veeco)でSPM Multimodeを使用してAFM画像を取得した。40μLの0.5×TE(10mM MgCl
2)を伴う精製による5μLの精製し、アニーリングしたサンプルを、新しく劈開したマイカの表面に加え、約2分間放置して吸収させた。時にサンプルの希釈を行い、所望のマイカ表面劈開を達成した。使用したAFMティップは、SNL-10窒化ケイ素カンチレバーチップ(Veeco Probes)における短くて細いカンチレバーであった。
【0307】
結晶成長実験用の方法及び材料
サンプル調製。Integrated DNA Technology, Inc.又はBioneer CorporationによってDNA鎖が合成された。構造を組み立てるため、40mM MgCl
2又は60mM MgCl
2を補足した0.5×TE緩衝液(5mM トリス、pH7.9、1mM EDTA)中100μMストックから、未精製のDNA鎖を等モル化学量論比で可能な限り高い濃度に混合した。
【0308】
アニーリング勾配。次にPCRサーモサイクラーにおいて、80℃から60℃への1時間にわたる高速線形冷却ステップ、次に60℃から24℃への72時間又は168時間線形冷却勾配により、鎖混合物をアニーリングした。アニーリング勾配は、第2の冷却ステップの長さにちなみ、72時間アニーリング又は168時間アニーリングと命名した。
【0309】
TEMイメージング。イメージングのため、2.5μLのアニーリングしたサンプルをグロー放電炭素被覆TEMグリッド上に2分間吸着させた。次に25mM NaOHを含有する2%ギ酸ウラニル水溶液を使用して、グリッドを10秒間染色した。80kVで動作させたJEOL JEM-1400 TEMを使用して、イメージングを実施した。
【0310】
10nm金ナノ粒子上へのDNAデコレーション。10nm金ナノ粒子上へのチオール化したDNAのコンジュゲーションを、以前記載されたとおり(Sharma, J. et al. J. Am. Chem. Soc. 130, 7820-7821, (2008))達成した。典型的な実験では、20μLの2.5μMホスフィン被覆10nm金ナノ粒子を、0.25×TBE緩衝液中の0.5μLの2M NaNO3及び0.65μLの100μMチオール化DNAと混合した。反応液を暗所において室温で36時間インキュベートした。この後、反応液を1%アガロースゲル含有0.5×TBE緩衝液に加えた。電気泳動を氷水浴上のゲルボックスにおいて95Vで1時間実行した。乳棒で砕き、続いて「Freeze ’N Squeeze」DNAゲル抽出スピンカラム(Bio-Rad)を使用して室温で3分間、10,000rpmで遠心することにより、紫色のバンドが回収された。回収されたDNAモールドを、後に使用するため4℃で暗所に保存した。チオール化DNAの配列は、5’−AAAAAAAAAA−/3ThioMC3−D/であった。
【0311】
金ナノ粒子デコレーション。15μLの400mM NaCl溶液に、0.8μL(ZX−4H×6H×96B−チャネル結晶)又は0.6μL(XY−4H×4H×64B−直方体結晶)DNA試料を添加した。次に、0.2uLの95nM 10nm金ナノ粒子を導入した。50回ピペッティングした後、反応混合物を暗所に室温で3時間放置した。
【0312】
【表84】
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【0313】
【表85】
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【0314】
【表86】
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【0315】
【表87】
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【0316】
【表88】
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【0317】
【表89】
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【0318】
【表90】
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【0319】
【表91】
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【0320】
【表92】
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【0321】
【表93】
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【0322】
【表94】
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【0323】
【表95】
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【0324】
【表96】
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【0325】
【表97】
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【0326】
【表98】
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【0327】
【表99】
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【0328】
【表100】
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【0329】
【表101】
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【0330】
【表102】
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【0331】
【表103】
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【0332】
【表104】
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【0333】
【表105】
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【0334】
【表106】
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【0335】
【表107】
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【0336】
【表108】
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【0337】
【表109】
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【0338】
【表110】
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【0339】
【表111】
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【0340】
【表112】
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【0341】
【表113】
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【0342】
均等物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載及び例示されているが、当業者は、本明細書に記載される機能を実施し及び/又はその結果及び/又は利点の1つ以上を達成するための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するであろうとともに、かかる変形例及び/又は改良例の各々は、本明細書に記載される発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であるように意図されること、及び実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される具体的な1つ又は複数の適用に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載される具体的な本発明の実施形態の多くの均等物を認識し、又は通常と同じ程度の実験を用いて確認することができるであろう。従って、前述の実施形態が単に例として提供されること、及び添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に記載され且つ特許請求されるものとは別様に本発明の実施形態が実施され得ることが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法それぞれに関する。加えて、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせが、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が互いに矛盾し合わない限り、本開示の発明の範囲内に含まれ得る。
【0343】
本明細書において定義及び使用されるとおりの全ての定義が、辞書的定義、参照によって援用される文献中の定義、及び/又は定義される用語の通常の意味に優先することが理解されるべきである。
【0344】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許及び特許出願は、各々の引用の主題に関して参照によって援用され、これは場合によっては、文献の全体を包含し得る。
【0345】
不定冠詞「a」及び「an」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、明確にそれに反する旨が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されなければならない。
【0346】
語句「及び/又は」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、そのように結合された要素、即ち、ある場合には連言的に存在し、且つ別の場合には選言的に存在する要素の「一方又は両方」を意味するものと理解されなければならない。「及び/又は」で列挙される複数の要素は、同じように、即ちそのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されなければならない。「及び/又は」の節により具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されるそれらの要素と関係するか、それとも無関係かに関わらず、他の要素が場合により存在し得る。従って、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する言及は、「〜を含んでいる(comprising)」などのオープンエンド型の用語と併せて使用されるとき、一実施形態ではAのみを指し(場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみを指し(場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではA及びBの両方を指す(場合により他の要素を含む)等となり得る。
【0347】
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、「又は」は、上記に定義するとおりの「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されなければならない。例えば、リスト中で項目を分ける際、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、即ち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つ(しかしまた2つ以上も含む)、及び場合により、さらなるリストに載っていない項目を含むものと解釈されなければならない。「〜のうち1つのみ」又は「〜のうち正確に1つ」など、反する旨が明示的に示される用語に限り、又は特許請求の範囲において「からなる(consisting of)」が用いられる場合にのみ、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指し得る。一般に、本明細書で使用されるとおりの用語「又は」は、排他性の用語、例えば「いずれか」、「〜のうち1つ」、「〜のうち1つのみ」、又は「〜のうち正確に1つ」が前に付くとき、排他的な選択肢(即ち「一方又は他方で、しかし両方ではない」)を指示するものとのみ解釈されなければならない。「〜から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用されるとき、特許法の分野で使用されるとおりのその通常の意味を有するものとする。
【0348】
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、1つ以上の要素のリストに関連して語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中にある要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される一つ一つの要素の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、且つ要素のリスト中にある要素の任意の組み合わせを排除するものでないと理解されなければならない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素と関係するか、それとも無関係かに関わらず、場合により存在し得ることも許容する。従って、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は等価に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は等価に、「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの(場合により2つ以上を含む)Aであり、Bが存在しない(及び場合によりB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、少なくとも1つ(場合により2つ以上を含む)のBであり、Aが存在しない(且つ場合によりA以外の要素を含む)ことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つ(及び場合により2つ以上を含む)のA、且つ少なくとも1つ(場合により2つ以上を含む)のB(及び場合により他の要素を含む)を指す等となり得る。
【0349】
また、明確にそれに反する旨が示されない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、この方法のステップ又は行為の順序は、必ずしも、方法のステップ又は行為が記載される順序に限られるわけではないことも理解されなければならない。
【0350】
特許請求の範囲では、並びに上記の明細書では、「〜を含む(comprising)」、「〜を備える(including)」、「〜を担持する(carrying)」、「〜を有する(having)」、「〜を含有する(containing)」、「〜が関わる(involving)」、「〜を保持する(holding)」、「〜が含まれる(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンド型、即ち、包含するが限定はされないことを意味するものと理解されなければならない。移行句「〜からなる(consisting of)」及び「〜から本質的になる(consisting essentially of)」に限り、米国特許庁(United States Patent Office)の特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedures)第2111.03章に記載されるとおり、それぞれクローズド型又はセミクローズド型移行句であるものとする。