(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596337
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】水溶性除草剤塩の相溶性を改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20191010BHJP
A01N 39/04 20060101ALI20191010BHJP
A01N 57/20 20060101ALI20191010BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20191010BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N39/04 A
A01N57/20 G
A01P13/00
C08F220/04
【請求項の数】29
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-530088(P2015-530088)
(86)(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公表番号】特表2015-528467(P2015-528467A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】US2013057490
(87)【国際公開番号】WO2014039379
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月25日
【審判番号】不服2018-4595(P2018-4595/J1)
【審判請求日】2018年4月5日
(31)【優先権主張番号】61/696,351
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/739,364
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】312013619
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル サーフィス ケミストリー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,アン
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,クリン エー.
(72)【発明者】
【氏名】タンク,ホルガー
【合議体】
【審判長】
瀬良 聡機
【審判官】
佐々木 秀次
【審判官】
関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−502444号公報(JP,A)
【文献】
特表2012−519699号公報(JP,A)
【文献】
特表2010−532332号公報(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/121976号(WO,A2)
【文献】
国際公開第2012/027349号(WO,A1)
【文献】
化学大辞典編集委員会編、化学大辞典8 縮刷版、共立出版株式会社、1989年、縮刷版第32刷、178−179頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A01N57/00−57/20,37/00−37/40
DB名 CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩;およびNH
4+、Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+、Mn
2+およびZn
2+から成る群より選択される1つもしくはそれ以上の無機カチオンまたはモノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)から成る群より選択される1つもしくはそれ以上のオルガノアンモニウムカチオンならびにジメチルアミノプロピルアミンおよびジエチレントリアミンから調製されたカチオンまたはその混合物;を含み、16%以下の1以上の肥料を含んでいてもよい、除草剤水溶液の、pH6.5より低いpHでの結晶化または固体の沈殿を予防もしくは抑制することにより、相溶性を改善する方法であって、前記除草剤水溶液に、モノマーAおよびモノマーBを含む2つのモノマー、および場合によりモノマーC、を共重合することにより製造される1以上のポリマー性結晶化阻害剤
(Aは
【化6】
であり、式中R
1、R
2およびR
3は独立してH、CH
3、COOHまたはCH
2COOHであり、Lは−C(=O)−O−、−C(=O)−N−、−CH2−、−O−、および−O−C(=O)−からなる群から選択される連結基または直接結合であり、R
hyは疎水性であり、直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、ア
リール
アルキルまたはそのアルコキシ化誘導体を含み;Bは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導され;および、Cは任意であり、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーもしくはホスホン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導される。)を添加することを含む方法であって、前記ポリマー性結晶化阻害剤はランダム構造であ
り;構成成分AはモノマーAを重合することから誘導され、構成成分BはモノマーBを重合することから誘導され、構成成分CはモノマーCを重合することから誘導される、方法。
【請求項2】
前記アリールオキシアルカン酸が2,4−D、2,4−DB、ジクロルプロップ、メコプロップ、MCPAまたはMCPBである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rhyがアリール部分である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
Rhyがナフチル、エトキシ化ナフチル、フェニル、エトキシ化フェニル、ベンジルまたはエトキシ化ベンジルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の肥料がアンモニウムサルフェートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記除草剤水溶液が濃縮物またはプレミックス濃縮物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記除草剤水溶液が2,4−Dまたは2,4−Dおよびグリホサートの水溶性塩を含有する濃縮物であって、前記1以上のポリマー性結晶化阻害剤が、全組成物に対し、0.05から10重量パーセント、および前記2,4−Dの水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩を、酸当量ベースで20から60重量パーセント含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記除草剤水溶液が散布溶液である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー性結晶化阻害剤がアクリレート基、メタクリレート基もしくはマレエート基またはその混合物を含有するコポリマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリアクリレート基を含有する前記コポリマーがスチレンモノマーの重合から誘導される疎水性基を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー性結晶化阻害剤が塩の形態である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩が有機アミン塩または無機アルカリ塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩がモノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)より選択されるオルガノアンモニウムカチオンならびにジメチルアミノプロピルアミンおよびジエチレントリアミンより調製されるカチオンまたはその混合物を含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー性結晶化阻害剤が5から80モル%のAおよび0から25モル%のCを含み、残りがBである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩;およびNH
4+、Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+、Mn
2+およびZn
2+から成る群より選択される1つもしくはそれ以上の無機カチオンまたはモノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)から成る群より選択される1つもしくはそれ以上のオルガノアンモニウムカチオンならびにジメチルアミノプロピルアミンおよびジエチレントリアミンから調製されたカチオンまたはその混合物;を含み、16%以下の1以上の肥料を含んでいても良く、ならびに、モノマーAおよびモノマーBを含む2つのモノマー、および場合によりモノマーC、を共重合することにより製造される1以上のポリマー性結晶化阻害剤
(Aは
【化8】
であり、式中、R
1、R
2およびR
3は独立してH、CH
3、COOHまたはCH
2COOHであり、Lは−C(=O)−O−、−C(=O)−N−、−CH
2−、−O−、および−O−C(=O)−からなる群から選択される連結基または直接結合であり、R
hyは疎水性であり、直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、ア
リール
アルキルまたはそのアルコキシ化誘導体を含み;Bは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導され;ならびにCは任意であり、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーもしくはホスホン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導される。)を含む、pH6.5より低いpHでの相溶性が改善した除草剤水溶液であって、前記ポリマー性結晶化阻害剤はランダム構造であ
り;構成成分AはモノマーAを重合することから誘導され、構成成分BはモノマーBを重合することから誘導され、構成成分CはモノマーCを重合することから誘導される、水溶液。
【請求項16】
アリールオキシアルカン酸が2,4−D、2,4−DB、ジクロルプロップ、メコプロップ、MCPAおよびMCPBの少なくとも1つである、請求項15に記載の除草剤水溶液。
【請求項17】
濃縮物またはプレミックス濃縮物である、請求項15から16のいずれか一項に記載の除草剤水溶液。
【請求項18】
前記除草剤水溶液が2,4−Dおよび/またはグリホサートの水溶性塩を含有する濃縮物であって、前記1以上のポリマー性結晶化阻害剤が、全組成物に対し、0.05から10重量パーセント、および前記2,4−Dの水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩を、酸当量ベースで20から60重量パーセント含む、請求項17に記載の除草剤水溶液。
【請求項19】
散布溶液である、請求項15および16のいずれか一項に記載の除草剤水溶液。
【請求項20】
2,4−Dの水溶性塩または2,4−Dの水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩;NH
4+、Na
+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、Fe
2+、Fe
3+、Cu
2+、Mn
2+およびZn
2+から成る群より選択される1つもしくはそれ以上の無機カチオンまたはモノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)から成る群より選択される1つもしくはそれ以上のオルガノアンモニウムカチオンならびにジメチルアミノプロピルアミンおよびジエチレントリアミンから調製されたカチオンまたはその混合物;を含み、16%以下の1以上の肥料を含んでいても良く、ならびに、モノマーAおよびモノマーBを含む2つのモノマー、および場合によりモノマーC、を共重合することにより製造される1以上のポリマー性結晶化阻害剤
(Aは
【化10】
であり、式中、R
1、R
2およびR
3は独立してH、CH
3、COOHまたはCH
2COOHであり、Lは−C(=O)−O−、−C(=O)−N−、−CH
2−、−O−、および−O−C(=O)−からなる群から選択される連結基または直接結合であり、R
hyは疎水性であり、直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、ア
リール
アルキルまたはそのアルコキシ化誘導体を含み;Bは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導され;ならびにCは任意であり、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーもしくはホスホン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導される。)を含む無水除草剤組成物であって、前記ポリマー性結晶化阻害剤はランダム構造であ
り;構成成分AはモノマーAを重合することから誘導され、構成成分BはモノマーBを重合することから誘導され、構成成分CはモノマーCを重合することから誘導される、組成物。
【請求項21】
Rhyがアリール部分である、請求項20に記載の無水除草剤組成物。
【請求項22】
Rhyがナフチル、エトキシ化ナフチル、フェニル、エトキシ化フェニル、ベンジルまたはエトキシ化ベンジルである、請求項20から21のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【請求項23】
前記1以上の肥料がアンモニウムサルフェートである、請求項20から22のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【請求項24】
前記ポリマー性結晶化阻害剤が塩の形態である、請求項20から23のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【請求項25】
前記塩が有機アミン塩または無機アルカリ塩である、請求項24に記載の無水除草剤組成物。
【請求項26】
前記塩がモノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)より選択されるオルガノアンモニウムカチオンならびにジメチルアミノプロピルアミンおよびジエチレントリアミンより調製されるカチオンまたはその混合物を含有する、請求項20から25のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【請求項27】
前記ポリマー性結晶化阻害剤がアクリレート基、メタクリレート基もしくはマレエート基またはその混合物を含有するコポリマーである、請求項20から26のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【請求項28】
ポリアクリレート基を含有する前記コポリマーがスチレンモノマーの重合から誘導される疎水性基を含む、請求項27に記載の無水除草剤組成物。
【請求項29】
前記構造Iのポリマー性結晶化阻害剤が5から80モル%のAおよび0から25モル%のCを含み、残りがBである、請求項20から28のいずれか一項に記載の無水除草剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
殺虫化学物質および植物成長調節物質の水性濃縮物製剤は、世界中の農業、工業、レクリエーション地域および住宅地で幅広く使用されている。このような濃縮物の活性成分には、カルボン酸またはリン酸などの酸性官能基が、より一般的にはその水溶性塩の形態で含有されることが多い。水性濃縮物は、本質的に、散布または他の手段による適用前に水で希釈することが意図される、比較的高濃度の活性成分の水溶液である。通例、水性濃縮物は、適用前にそれ自体の体積の10倍から500倍の水で希釈される。
【0002】
生産性向上が引き続き求められている今日の農薬市場において、製品の一連の最適な防除、有効性および送達効率を得るために散布タンク中で複数の製剤品を組み合わせることがますます一般化しつつある。しかし、これを行う際に、散布タンク混合物または溶液の構成成分が化学的または物理的に相互作用するときに、製品間の散布タンクでの非相溶性が生じることがあり、散布タンク混合の安定性、均質性または他の特性に対する悪影響を引き起こし、散布適用品の有効性を低下させる。散布タンク混合物または溶液の非相溶性は、結晶性沈殿、表面のスカム、油滴、ゲル、過剰な泡立ちまたは固形物塊の形成を通じて物理的に現れることがあり、散布ノズルまたはスクリーンの目詰まりが生じることがある。
【0003】
相溶性水性殺虫剤混合物または溶液は、1以上の殺虫剤製品および/または他の一般に使用される成分の組合せまたは混合によって形成される場合、結果として固形沈殿物または相分離がほとんどまたは全く生じず、これらの生物学的有効性が完全に維持される、混合物または溶液として定義される。
【発明の概要】
【0004】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つを含み、16%以下の1以上の肥料を含有してもよい除草剤水溶液の相溶性を改善する方法は、除草剤水溶液に1以上の構造Iのポリマー性結晶化阻害剤を添加することを含み、
【化1】
式中、Aは
【化2】
であり、式中、R
1、R
2およびR
3は独立してH、CH
3、COOHまたはCH
2COOHであり、Lは−C(=O)−O−、−C(=O)−N−、−CH
2−、−O−、−O−C(=O)−を含む連結基または直接結合であり、R
hyは疎水性であり、直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリルまたはそのアルコキシ化誘導体を含み;Bは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導され;ならびにCは任意であり、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーもしくはホスホン酸モノマーおよび/またはその塩を重合することから誘導される。
【0005】
さらに、構造Iの、アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つを含み、16%以下の1以上の肥料を含んでいても良く、ならびに1以上のポリマー性結晶化阻害剤を含む、相溶性が改善した除草剤水溶液も提供される。
【0006】
加えて、構造Iの、2,4−Dの水溶性塩および/またはグリホサートの水溶性塩を含み、16%以下の1以上の肥料を含んでいても良く、および1以上のポリマー性結晶化阻害剤を含む無水除草剤組成物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つを含み、16%以下の1以上の肥料を含有してもよい除草剤水溶液ならびにそのような溶液を調製する方法が提供される。本明細書に記載する除草剤水溶液は、記載した構成成分を含むすでに公知の除草剤水溶液を超える改善された相溶性を有する。本明細書に記載する除草剤水溶液は、相溶化剤として作用するポリマー性結晶化阻害剤を含有する。ポリマー性結晶化阻害剤は、無機または有機アンモニウムカチオンが存在する場合にとりわけ有用であり、溶液のpHを上昇させる必要なしに相溶化をもたらす。
【0008】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、たとえば2,4−Dの塩の水溶液は、酸当量(ae)濃度が約0.3重量パーセントまたはそれ以上であり、pHが約6またはそれ以下であり、十分な濃度の無機カチオン、たとえばK
+、Na
+、Ca
2+、Mg
2+、NH
4+、Fe
2+、Fe
3+などがあるという条件下で沈殿固形物の形成につながる、相溶性の問題を有し得ることが公知である。2,4−D塩のこれらの溶液からの沈殿固形物の形成に必要な正確な条件は、使用する水の温度および硬度ならびに溶液中の構成成分の実際の組成および濃度にも依存するであろう。たとえば、800g ae/ヘクタールの比率のDMA(登録商標)−6除草剤(ダウアグロサイエンス(Dow AgroSciences)LLC、インディアナポリス、インディアナ州;約7のpH値を有する2,4−Dジメチルアンモニウム塩)および840g ae/ヘクタールの比率および47リットル/ヘクタールの散布体積のラウンドアップウェザーマックス(Roundup WeatherMax)(登録商標)除草剤(モンサント(Monsanto)、セントルイス、ミズーリ州;約4.7のpH値を有するグリホサートカリウム塩溶液)の濃縮物から調製された散布タンク混合物は、pH値が約5であり、非相溶性となり、結果として固形物が顕著に生じる。
【0009】
除草剤性能を改善させるために、グリホサートを含有する水性除草剤散布混合物にアンモニウムサルフェートを添加する常法も、相溶性の問題をもたらすことがある。たとえば、除草剤、たとえば2,4−Dジメチルアンモニウム(DMA)は、アンモニウムサルフェートが添加されたグリホサートを含有する散布混合物中に存在し、pHおよび2,4−D濃度が本明細書に記載する範囲内にある場合には、固形物の結晶化が生じる可能性がある。
【0010】
アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つを含み、16%以下の1以上の肥料を含有してもよい除草剤水溶液の相溶性を改善する方法であって、除草剤水溶液に式Iの1以上のポリマー性結晶化阻害剤を添加することを含む方法が提供され、
【化3】
式中、Aは
【化4】
であり、R1、R
2およびR
3は独立してH、CH
3、COOHまたはCH
2COOHであり、Lは−C(=O)−O−、−C(=O)−N−、−CH
2−、−O−、−O−C(=O)−を含む連結基または直接結合であり、R
hyは疎水性であり、直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリルまたはそのアルコキシ化誘導体を含む。R
hyは好ましくは芳香族であり、ナフタレン、エトキシ化ナフタレン、フェニル、エトキシ化フェニル、ベンジルまたはエトキシ化ベンジルである。しかし、R
hyは脂肪族またはアルコキシ化脂肪族、たとえば直鎖または分枝C
1からC
22基であることができる。
【0011】
式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、一般にモノマーAおよびモノマーBを含む2つのモノマーを共重合することによって調製され、場合によりモノマーCを含み、式Iに示すようなA部、B部およびC部を与える。本願の目的のために、モノマーは、フリーラジカル開始剤を使用して重合できるエチレン性不飽和部分として定義される。式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、好ましくは5から80モル%のAおよび0から25モル%のCを有し、残りはBである。式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、好ましくは10から70モル%のAおよび2から20モル%のCを有し、残りはBである。式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、好ましくは15から50モル%のAおよび5から15モル%のCを有し、残りはBである。モノマーA、BおよびC(使用する場合)のモル量が合計100パーセントとなることが理解される。
【0012】
疎水性部分R
hyは、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルエトキシレート(メタ)アクリレート、フェニルエトキシレート(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリルアミド、オクチルアクリルアミド、ラウリルアクリルアミド、ステアリルアクリルアミド、ベヘニルアクリルアミド、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ビニルアセテート、1−アリルナフタレン、2−アリルナフタレン、1−ビニルナフタレンスチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよび2−ビニルナフタレンより選択されてよいモノマーAの1以上を重合することによって、式Iのポリマー性結晶化阻害剤中に包含させることができる。疎水性モノマーの組合せも、式Iの構成成分Aを提供するために使用してよい。
【0013】
式Iの構成成分Bは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーおよび/またはその塩であってよいモノマーBを重合することから誘導される。式Iのポリマー性結晶化阻害剤を調製するために有用なエチレン性不飽和カルボキシル化モノマーとしては、これに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチル−アクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p−クロロケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸(1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3)、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、ムコン酸、2−アクリルオキシプロピオン酸およびマレイン酸が挙げられる。カルボン酸部分を形成できるモノマー、たとえば無水マレイン酸またはアクリルアミドも含まれる。エチレン性不飽和カルボキシル化モノマーの組合せも使用できる。一態様において、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、アクリル酸、マレイン酸またはメタクリル酸である。 別の態様において、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0014】
任意の構成成分Cは、エチレン性不飽和スルホン酸モノマーもしくはホスホン酸モノマーおよび/またはその塩であってよいモノマーCを重合することから誘導される。エチレン性不飽和スルホン酸モノマーまたはホスホン酸モノマー(モノマーC)およびその塩の例としては、これに限定されるものではないが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−メタクリルアミド−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、スルホメチルアクリルアミド、スルホメチルメタクリルアミド(sulphomethylinethacrylamide)、ナトリウムスチレンスルホネート、ナトリウム1−アリルオキシ2ヒドロキシプロパンスルホネート、アリルオキシベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ナトリウムメタリルスルホネート、スルホン化スチレン、アリルオキシベンゼンスルホン酸、ビニルホスホン酸および他が挙げられる。ナトリウムスチレンスルホネートをモノマーCとして使用する場合、ここでR
hyは好ましくは、芳香族またはアルコキシ化芳香族である。
【0015】
式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、無機アルカリ塩および有機アミン塩を、式Iのポリマーに結合された対応するカルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸基の誘導体として含んでもよい。ある例において、たとえば水溶性2,4−D塩を含有する水溶液の相溶性を改善する場合において、式Iのポリマーに結合された対応するカルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸基の有機アミン塩は有用である。その対応するオルガノアンモニウムカチオンの形態の有機アミンは、これに限定されるものではないが、モノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)ならびにジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA;N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン)およびジエチレントリアミン(DETA;ビス(2−アミノエチル)アミン)より調製されたカチオンまたはその混合物より選択することができる。
【0016】
式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、当分野で公知のプロセス、たとえば、その関連部分が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第5,650,473号に開示されているプロセスによって調製できる。式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、ランダム、ブロック状、星形または他のいずれの構造であることもできる。式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、約1,000から約20,000の重量平均分子量を有してよく、その誘導体、たとえばアルカリ金属塩、たとえばナトリウムカルボキシレート、有機アンモニウム塩またはスルホン化誘導体を含んでよい。式Iの好適なポリアクリレートコポリマーとしては、たとえば、アクゾ・ノーベル・サーフェス・ケミストリー社(Akzo Nobel Surface Chemistry LLC)(シカゴ、イリノイ州)より市販されている、アルコスパース(Alcosperse)(登録商標)725、725−D、747および747−Dならびにアルマック(Armak)2092が挙げられる。本明細書に開示する組成物および方法によって有用な式Iのポリマー性結晶化阻害剤のさらなる例としては、ベンジルメタクリレートおよびアクリル酸のコポリマー(たとえば表2のサンプル5472e)ならびにスチレンおよびアクリル酸のコポリマー(たとえば表2のサンプル5472g)が挙げられる。
【0017】
本明細書に記載するアリールオキシアルカン酸の水溶性塩としては、たとえば2,4−D((2,4−ジクロロフェノキシ)酢酸)、2,4−DB、ジクロロプロップ、メコプロップ、MCPAおよびMCPBが挙げられる。本明細書に記載するピリジルオキシアルカン酸としては、たとえばトリクロピルおよびフルロキシピルが挙げられる。アリールオキシアルカン酸およびピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩としては、オルガノアンモニウムカチオン、たとえばこれに限定されるものではないが、モノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)およびジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA;N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン)およびジエチレントリアミン(DETA;ビス(2−アミノエチル)アミン)より調製されたカチオンまたはその混合物を含有するものが挙げられる。アリールオキシアルカン酸およびピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩を含有する水溶液は、除草散布溶液および除草剤濃縮物を含んでよい。
【0018】
除草剤水溶液の相溶性を改善するための本明細書に記載する方法および組成物は、アリールカルボン酸および/またはヘテロアリールカルボン酸除草剤の水溶性塩、たとえばアミノピラリド、クロピラリド、ジカンバ、ピクロラムなどを含有する水溶液と共に使用してもよい。
【0019】
本明細書に記載するグリホサートの水溶性塩としては、カチオンがカリウム、ナトリウムおよびアンモニウムより選択される塩、またオルガノアンモニウム、たとえばイソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、コリンなどならびにトリメチルスルホニウムカチオンおよびその混合物が挙げられる。
【0020】
本明細書に記載する無機カチオンは、測定可能な量または濃度で存在する場合に、場合によりグリホサートを含有する、アリールオキシアルカン酸またはピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩の水溶液を非相溶性にして、固形物を形成することがある無機カチオンである。これらの無機カチオンとしては、たとえばアルカリ金属カチオン、たとえばナトリウムおよびカリウム;アルカリ土類金属カチオン、たとえばカルシウムおよびマグネシウム;遷移金属カチオン、たとえばマンガン、銅、亜鉛および鉄;ならびにアンモニウムが挙げられる。約pH6.5より低いpHレベルにおける2,4−Dおよびグリホサートの水溶性塩を含有する水溶液は、無機カチオンの測定可能な濃度の存在下では、より高いpHレベルでのそのような溶液よりも非相溶性となる傾向がある。
【0021】
本明細書に記載する無機カチオンは、溶液の非相溶性に必要な他の条件すべて、たとえばアリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩および/またはグリホサートの水溶性塩の組成および濃度ならびに水の温度、硬度およびpHが存在する場合、アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つならびに場合により16%以下の1つまたはそれ以上の肥料を含有する水溶液中に存在する、その溶液からの固形分の沈殿につながる無機カチオンの濃度を示す。たとえば酸当量(ae)ベースで約0.8重量%を超える2,4−D DMAを含有し、硬度342パーツ・パー・ミリオン(ppm)およびpH約5の水で調製された室温の水溶液中にて、酸当量ベースで約0.8重量%の濃度のグリホサートカリウムは非相溶性となる。このような除草剤溶液の相溶性は、本明細書で論じる他の因子に加えて、溶液中に存在する無機カチオンの総濃度および実際の組成に依存する。
【0022】
本明細書に記載する除草剤水溶液に無機カチオンを与える成分としては、これに限定されるものではないが、肥料、微量栄養素、硬水、同時製剤成分などを含有する製品または水溶液などならびに無機カチオン、たとえばカリウム、ナトリウムおよびアンモニウムを含有するグリホサートの水溶性塩が挙げられる。
【0023】
肥料は、本明細書に記載する方法および組成物に場合により含まれ、水に分散または溶解されていてよく、アリールオキシアルカン酸、ピリジルオキシアルカン酸およびグリホサートの少なくとも1つの水溶性塩を含有する水溶液と混合したときに、非相溶性の問題を引き起こすのに十分な量で、無機カチオン、たとえばアンモニウムおよびカリウムを含有してよい。本明細書に記載する方法および組成物に場合により含まれていてよい肥料の量は、16パーセント以下である。本明細書に記載する方法および組成物に場合により含まれていてよい肥料の量のさらなる例としては、15パーセント以下、14パーセント以下、13パーセント以下、12パーセント以下、11パーセント以下、10パーセント以下、9パーセント以下、8パーセント以下、7パーセント以下、6パーセント以下、5パーセント以下、4.5パーセント以下、4パーセント以下、3.5パーセント以下、3パーセント以下、2.5パーセント以下、2パーセント以下、1.5パーセント以下または1パーセント以下が挙げられる。肥料としては、これに限定されるものではないが、アンモニウムサルフェート(AMS)、アンモニウムホスフェート、アンモニウムニトレート、当分野で一般に28% NまたはUANと呼ばれるアンモニウムニトレートおよび尿素の溶液、アンモニウムチオサルフェート、カリウムニトレート、カリウムホスフェート、カリウムクロリド、カリウムカーボネートなどおよびその混合物が挙げられる。AMSおよびUANは、その肥料特性に加えて、生物学的有効性を向上させるために、散布補助剤または水調整剤として、グリホサート除草剤処理剤と共に一般に使用される。ゆえに、AMSはグリホサートと混合されることが多く、本明細書に記載する方法および組成物は、これらの溶液をアリールオキシアルカン酸の水溶性塩および/またはピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩を含有する除草剤水溶液と組合せるときに、相溶性を改善するために使用できる。
【0024】
本明細書に記載する方法および組成物で有用な微量栄養素としては、ごく少量のみ必要とされる植物の成長および健康に必須の1以上の栄養素が挙げられ、中でも、1以上の無機カチオン、たとえばマンガン、銅、鉄、モリブデンおよび亜鉛のカチオンを含有してよい。微量栄養素は、作物植物への経済的な送達のために、アリールオキシアルカン酸、ピリジルオキシアルカン酸および/またはグリホサートの水溶性塩を含有する除草剤散布水溶液に添加してよい。これらの除草剤散布水溶液の相溶性の問題は、本明細書に記載する、これらの溶液の非相溶性条件が存在する場合に生じることがある。
【0025】
本明細書に記載する除草剤水溶液において、特に濃縮物およびプレミックス濃縮物において、非相溶性を引き起こすことがあるオルガノアンモニウムカチオンとしては、モノメチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム(コリン)またはその混合物が挙げられる。
【0026】
本明細書に記載する方法および組成物で有用な同時製剤成分としては、無機カチオンを含有する製品または成分が挙げられ、補助剤、発泡防止剤、抗菌剤、緩衝剤、防食剤、消泡剤、沈殿剤、分散剤、染料、凝固点降下剤、中和剤、浸透助剤、金属イオン封鎖剤、散布ドリフト制御剤、展着剤、安定剤、固着剤、懸濁助剤、粘度調整剤、湿潤剤などの1以上より選択されてよい。
【0027】
本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤は、散布タンク混合物、濃縮物またはプレミックス濃縮物中にアリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩および/またはグリホサートの水溶性塩ならびに場合により16%以下の1つまたはそれ以上の肥料を含有する除草剤水溶液の相溶性を改善するために使用してよい。水性散布タンク混合物中において、式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、相溶性が改善した除草剤散布水溶液に対して、0.01から5重量パーセント、0.01から4重量パーセント、0.01から3重量パーセント、0.01から2重量パーセント、0.01から1重量パーセント、0.05から2重量パーセント、0.05から1重量パーセント、0.05から0.5重量パーセント、0.1から0.4重量パーセント、0.15から0.3重量パーセントまたは0.15から0.25重量パーセントを構成してよい。水性濃縮物および水性プレミックス濃縮物において、式Iのポリマー性結晶化阻害剤は、相溶性が改善した除草剤水溶液に対して、0.05から10重量パーセント、0.05から8重量パーセント、0.05から6重量パーセント、0.1から5重量パーセント、0.2から5重量パーセント、0.3から5重量パーセント、0.4から5重量パーセント、0.5から5重量パーセント、0.5から4重量パーセント、0.5から3重量パーセント、1から3重量パーセントまたは1.5から2.5重量パーセントを構成してよい。
【0028】
いくつかの例において、本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤は、非相溶性を引き起こす溶液中の無機イオンの濃度を引き起こし得るまたは上昇させ得る無機イオンを含有できる。このような場合、選ばれたポリマー性結晶化阻害剤は、ポリマー性結晶化阻害剤の添加後に無機イオン総濃度を相溶化できるべきである。または、無機カチオンを含有しない式Iのポリマー性結晶化阻害剤、たとえばカルボキシル基が酸またはオルガノアンモニウム塩形態である式Iのポリアクリレートコポリマーを使用できる。無機カチオンを含有しない式Iのこのようなポリマー性結晶化阻害剤は、周囲温度および周囲温度未満の条件下での水性除草剤濃縮物およびプレミックス濃縮物の貯蔵安定性を改善するのに特に有用なことがある。
【0029】
理論に縛られることを意図するものではないが、本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤は、固形分の結晶化または沈殿を防止または抑制することによって、アリールオキシアルカン酸の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つ、好適な濃度の1以上の無機カチオンならびに約6.5未満のpHより構成される除草剤水溶液の相溶性を改善すると考えられる。これらの固形分の形成を防止するポリマー性結晶化阻害剤の相対有効性は、滴定分析手順において固形分の結晶化開始pH(OSPOC)を測定することによって概算することができる。特定の組成物のOSPOCは、無機カチオンのアリールオキシアルカン酸塩またはピリジルオキシアルカン酸塩、たとえば2,4−Dのカリウム塩の溶液を強酸、たとえば硫酸によって、特定のpH値(OSPOC)にて固形分または結晶が形成を開始するまで滴定することによって測定できる。本明細書に記載するいずれの特定のポリマー性結晶化阻害剤の使用で観測されるOSPOCが低ければ低いほど、該ポリマー性結晶化阻害剤は、本明細書に記載する除草剤水溶液中での結晶化の防止に、したがって除草剤水溶液の相溶性の改善により良好に作用し得る。
【0030】
または、本明細書に記載する除草剤水溶液の相溶性の改善における、本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤の相対有効性は、タンクミックス溶液中の無機カチオンのアリールオキシアルカン酸塩またはピリジルオキシアルカン酸塩、たとえば2,4−Dのカリウム塩の臨界結晶化濃度(CCC)を測定することによって決定できる。特定の組成物のCCCは、組成物の飽和および過飽和溶液または混合物を調製して、次に溶液中に残存するアリールオキシアルカン酸の濃度を測定することによって測定できる。特定のポリマー性結晶化阻害剤の使用で観測されるCCCが高ければ高いほど、該ポリマー性結晶化阻害剤は、本明細書に記載する除草剤水溶液中での結晶化の防止に、したがって除草剤水溶液の相溶性の改善により良好に作用し得る。
【0031】
本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤を使用して相溶化され得る本明細書に記載する除草剤水溶液は、濃縮物、プレミックス濃縮物およびこのような濃縮物もしくはプレミックス濃縮物を希釈することによって、または散布溶液の複数の成分をタンク混合することによって調製される散布溶液を含んでよい。水性除草剤濃縮物またはプレミックス濃縮物は、全組成物に対して0.05から10重量パーセントの、0.05から8重量パーセントの、0.05から6重量パーセントの、0.1から5重量パーセントの、0.2から5重量パーセントの、0.3から5重量パーセントの、0.4から5重量パーセントの、0.5から5重量パーセントの、0.5から4重量パーセントの、0.5から3重量パーセントの、1から3重量パーセントまたは1.5から2.5重量パーセントの1以上の本明細書に記載するポリマー性結晶化阻害剤ならびに酸当量ベースで約20から約60重量パーセントのアリールオキシアルカン酸(たとえば2,4−D)の水溶性塩、ピリジルオキシアルカン酸(たとえばトリクロピル)の水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つまたはこれらの塩の1つもしくはそれ以上を含有するプレミックスの使用を含んでよい。相溶性が改善した水性除草剤濃縮物またはプレミックス濃縮物は、好ましくは、製品または溶液と共に水へ希釈したときに、通常、本明細書に記載するような非相溶性を引き起こしやすい条件にて、相溶性が改善した除草剤散布溶液を形成する濃縮物中に、溶解または分散したポリマー性結晶化阻害剤を含有する溶液である。相溶性が改善した除草剤散布溶液は、散布溶液の個々の構成成分を使用時にタンク混合することによっても調製してよい。このような散布溶液は、相溶性が改善した除草剤散布溶液を形成するために、本明細書に記載するような、非相溶性を引き起こしやすい条件にて、製品または溶液と組み合わせても、または製品または溶液によって希釈してもよい。
【0032】
2,4−Dの溶解性塩、グリホサートの溶解性塩および無機カチオンを含有する散布水溶液中での本明細書に記載するようなポリマー性結晶化阻害剤の使用によって、約6.5より低いpHレベルにて相溶性が改善した溶液が提供される。加えて、改善された相溶性は、約5.5より低いpHで提供することができる。さらに、改善された相溶性は、約5より低いpHで提供することができる。
【0033】
グリホサートおよび2,4−Dの水溶性塩を含有する相溶性散布水溶液は、グリホサートおよび2,4−Dの塩の水溶性濃縮物を、式Iのポリマー性結晶化阻害剤を含有する水溶液に添加することによって調製できる。他の同時製剤成分、たとえばこれに限定されるものではないが、分散剤、湿潤剤、散布ドリフト低減剤、肥料および発泡防止剤を含む水溶性または水分散性成分は、場合により散布溶液に添加してよい。
【0034】
本明細書に記載する方法を使用して、グリホサートおよび2,4−Dの水溶性塩ならびに無機カチオンを含有する、約6.5より低いpHにおける散布溶液の相溶性を改善する例は:
a)最終散布溶液に対して、約0.01から約5重量パーセントの式Iのポリマー性結晶化阻害剤、たとえばアスコスパース(Alcosperse)(登録商標)725を含有する水溶液を調製すること;
b)最終散布溶液に対して酸当量(ae)ベースで約0.3から約5重量パーセントの2,4−Dを含む溶液を提供するために、2,4−D DMAの水性濃縮物をa)で調製した溶液に添加すること;
c)最終pHが約6.5未満である場合に最終散布溶液に対して酸当量(ae)ベースで、約0.3から約5重量パーセントのグリホサートを含む溶液を提供するために、ラウンドアップウェザーマックス(Roundup WeatherMax(登録商標))除草剤の水性濃縮物(グリホサートカリウム塩を含有する水性濃縮物)(モンサント(Monsanto)、セントルイス、ミズーリ州)をb)で調製した溶液に添加すること;
d)最終散布溶液に対して約1から約5重量パーセントのAMSを含む相溶性溶液を与えるために、アンモニウムサルフェート(AMS)の水溶液をc)で調製した溶液を添加すること;および
e)場合により、他の不活性同時製剤成分をd)で調製した溶液に添加すること
を含む。
【0035】
さらなる例において、相溶化除草剤散布水溶液は、1以上の水性除草剤濃縮物を希釈することによって、または散布溶液の構成成分をタンク混合することによって調製してよい。このような散布溶液は、全散布溶液に対して0.01から5重量パーセントの、0.05から2重量パーセントの、または0.05から0.5重量パーセントの1以上の式Iのポリマー性結晶化阻害剤、0.3から10重量パーセントまたは0.3から5重量パーセントの2,4−Dの水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩それぞれならびに場合によりいずれかの追加の成分、たとえば肥料を含んでよい。
【0036】
さらなる例において、相溶化水性除草剤濃縮物は、1以上の式Iのポリマー性結晶化阻害剤および2,4−Dもしくはグリホサートの水溶性塩または2,4−Dおよびグリホサートの水溶性塩を含有するプレミックスを含有することができる。濃縮物は、全組成物に対して、0.05から10重量パーセントの、0.1から5重量パーセントまたは0.5から5重量パーセントの1以上のポリマー性結晶化阻害剤ならびに酸当量ベースで約20から約60重量パーセントの2,4−Dの水溶性塩およびグリホサートの水溶性塩の少なくとも1つを含んでよい。本明細書に記載するように、相溶化水性除草剤濃縮物は、製品または溶液と共に水に希釈したときに、通常、本明細書に記載するような非相溶性を引き起こしやすい条件にて、相溶性が改善した除草剤散布溶液を形成する、濃縮物中に溶解または分散したポリマー性結晶化阻害剤を含有する溶液である。
【0037】
本明細書に記載する相溶性水性除草剤濃縮物を調製する代表的な方法では、1以上の式Iのポリマー性結晶化阻害剤、2,4−Dおよびグリホサートの少なくとも1つの水溶性塩ならびに場合により、いずれの追加の成分も水中で共に混合して、水性濃縮物を提供する。成分の添加順序および混合条件は、当業者が決定することができる。
【0038】
本明細書に記載する方法および組成物は、上記のような2,4−Dの水溶性塩および/またはグリホサートの水溶性塩、場合により16%以下の1以上の肥料ならびに1以上の式Iポリマー性結晶化阻害剤を含む無水除草剤組成物も含む。無水除草剤組成物は、0.05から10重量パーセントの、0.05から8重量パーセントの、0.05から6重量パーセントの、0.1から5重量パーセントの、0.2から5重量パーセントの、0.3から5重量パーセントの、0.4から5重量パーセントの、0.5から10重量パーセントの、0.5から5重量パーセントの、0.5から4重量パーセントの、0.5から3重量パーセントの、1から3重量パーセントのまたは1.5から2.5重量パーセントの1以上の式Iのポリマー性結晶化阻害剤および酸当量ベースで約20から約80重量パーセントの2,4−Dの水溶性塩もしくはグリホサートの水溶性塩または2,4−Dおよびグリホサートの水溶性塩の混合物を含むことができる。本明細書に記載するような無水除草剤組成物は、製品または溶液と共に水へ希釈したときに、通常、本明細書に記載するような非相溶性を引き起こしやすい条件にて、相溶性が改善した除草剤散布溶液を形成する。
【0039】
無水除草剤組成物を調製する代表的な方法では、1以上のポリマー性結晶化阻害剤、2,4−Dおよびグリホサートの少なくとも1つの水溶性塩ならびに場合により、いずれの追加の成分も水中で共に混合して、水性濃縮物を提供する。成分の添加順序および混合条件は、当業者が容易に決定することができる。本明細書に記載する成分を無水ブレンドすることによっても調製されてよい無水除草剤組成物を提供するために、水性濃縮物は次に水の除去によって濃縮してよく、次に乾燥させてよい。無水組成物を製品または溶液を含有する散布水溶液に、通常、本明細書に記載するような非相溶性を引き起こしやすい条件にて添加して、相溶性が改善した除草剤散布溶液を形成することができる。濃縮物製剤または無水製剤が農業での常法に応じて、使用時に約10から約500倍希釈で水に希釈または溶解させてよいことは、一般に公知である。
【0040】
本明細書に記載する方法および組成物は、望ましくない植物の成長を制御するために使用できる。このような使用において、相溶性が改善した散布水溶液の除草剤的有効量を土壌範囲または対象植物の茎葉に適用して、望ましくない雑草植物を死滅させるか、またはその好適な防除を提供する。
【0041】
代表的な農業用途で用いられる、本明細書に記載する方法および組成物に使用される活性成分の有効量は、たとえば植物の種類、植物の成長段階、環境条件の過酷さ、防除される雑草および適用条件に依存することが多い。通例、防除が必要な雑草植物を、全散布水溶液に対して酸当量ベースで約0.01から約10重量パーセントの、好ましくは約0.1から約5重量パーセントの除草剤活性成分を含有する除草剤散布水溶液と接触させる。接触はいずれの有効な方式であってもよい。たとえば植物のいずれの露出部分、たとえば葉または茎に、担体、たとえば水中の溶液としての活性成分を散布してよい。
【0042】
本明細書に記載する方法および組成物は、散布溶液に含有されている除草剤に本来耐性である、または遺伝子操作によってもしくは突然変異および選択によって該除草剤に耐性または抵抗性とされた作物中の雑草の防除にとりわけ有用である。たとえばグリホサートに耐性または抵抗性とされ、2,4−Dに本来、耐性または抵抗性であるか、または遺伝的に耐性または抵抗性とされたトウモロコシ、小麦、コメ、大豆、砂糖大根、綿、ナタネおよび他の作物を処理することができる。本発明の除草剤散布水溶液は、グリホサートに抵抗性となった多くの雑草、たとえばヒメムカシヨモギ(コニザ・カナデンシス(Conyza canadensis)、ERICA)の防除にも有効である。
【0043】
場合により、本明細書に記載する方法および組成物は、1以上の界面活性剤をさらに含有してよい。界面活性剤の性質は、アニオン性、カチオン性または非イオン性であることができる。代表的な界面活性剤としては、アルキルサルフェートの塩、たとえばジエタノールアンモニウムラウリルサルフェート;アルキルアリールスルホネート塩、たとえばカルシウムドデシルベンゼンスルホネート;アルキルおよび/またはアリールアルキルフェノール−アルキレンオキシド付加生成物、たとえばノニルフェノール−C
18エトキシレート;アルコール−アルキレンオキシド付加生成物、たとえばトリデシルアルコール−C
16エトキシレート;石鹸、たとえばナトリウムステアレート;アルキル−ナフタレンスルホネート塩、たとえばナトリウムジブチル−ナフタレンスルホネート;スルホスクシネート塩のジアルキルエステル、たとえばナトリウムジ(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート;ソルビトールエステル、たとえばソルビトールオレエート;四級アミン、たとえばラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;エトキシ化アミン、たとえばエトキシ化タローアミン;ベタイン界面活性剤、たとえばココアミドプロピルベタイン;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、たとえばポリエチレングリコールステアレート;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー;モノおよびジアルキルホスフェートエステルの塩;ならびにその混合物が挙げられる。 使用されるこれらの界面活性剤の量および組合せは、当業者が容易に決定することができる。ポリマー性結晶化阻害剤について上で論じたように、組成物の意図する物理的安定性を維持するために、無機イオン、たとえばNa
+、K
+またはNH
4+を結晶化に影響を及ぼすレベルで含有する界面活性剤の使用を避けることが好都合であり得る。
【0044】
上述した具体的な方法および組成物に加えて、本明細書に記載する方法および組成物は、1以上の追加相溶性成分を含有する組成物も含んでよい。これらの追加成分としては、たとえば、組成物中に溶解または分散してよい1以上の殺虫剤または他の成分が挙げられ、ダニ駆除剤、殺藻剤、摂食阻害剤、殺鳥剤、殺菌剤、鳥忌避剤、化学不妊剤、落葉剤、乾燥剤、消毒剤、殺真菌剤、除草剤毒性緩和剤、除草剤、昆虫誘引物質、殺虫剤、昆虫忌避剤、哺乳動物忌避剤、交信かく乱剤、軟体動物駆除剤、植物活性化剤、植物のサイズおよび構造の調節剤、殺鼠剤、信号化学物質、相乗剤ならびに殺ウイルス剤より選択してよい。また、機能的有用性を提供する他のいずれのさらなる成分、たとえば発泡防止剤、抗菌剤、緩衝剤、防食剤、分散剤、染料、香料、凝固点降下剤、中和剤、付臭剤、浸透助剤、金属イオン封鎖剤、散布ドリフト制御剤、展着剤、安定化剤、固着剤、粘度調節添加物なども、これらの組成物に含まれてよい。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本明細書に記載する組成物および方法の多様な態様を例証するために与えられ、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
実施例1
添加した式Iのポリマー性結晶化阻害剤(PCI)による2,4−Dカリウムの水溶液の結晶化開始pH(OSPOC)の低下
0.2N硫酸水溶液の添加によってpHをゆっくりと低下させながら、ポリマー性結晶化阻害剤(PCI)を添加したまたは添加しない、3重量パーセント(酸当量ベース)の2,4−Dカリウム(2,4−D K)の水溶液(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)にて調製)の100mLサンプルの結晶化開始pH(OSPOC;結晶が開始するときの溶液のpH)を決定した。表1に示すように、全溶液に対して0.2重量パーセントのPCIを2,4−D Kの水溶液に添加することによって、PCIを使用しない対照サンプルと比較して、2,4−D含有溶液のOSPOCが著しく低下した。使用したPCIを表2に示す。
【0047】
【表1】
1アルコスパース(Alcosperse)(登録商標)製品は、アクゾ・ノーベル・サーフェス・ケミストリー社(Akzo Nobel Surface Chemistry LLC)(シカゴ、イリノイ州)より入手できる;ハイドロパラート(Hydropalat)(登録商標)製品は、BASFの一部門であるコグニス(Cognis)(シンシナティ、オハイオ州)より入手できる;およびメタスパース(Metasperse)(商標)製品は、クローダ(Croda)(エジソン、ニュージャージー州)より入手できる。
【0048】
【表2】
1AA=アクリル酸;AMPS=2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸;BzMA=ベンジルメタクリレート;DEA=ジエタノールアミン;Na=ナトリウム;2−EHA=2−エチルヘキシルアクリレート
【0049】
実施例2
ポリマー性結晶化阻害剤(PCI)を添加したグリホサートの塩を含有する水性組成物中の2,4−Dの塩の臨界結晶化濃度(CCC)の決定
2つの方法を使用して2,4−D組成物の臨界結晶化濃度(CCC)を測定した:
方法A:2,4−D(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)より供給)、グリホサート(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)より供給)、無機イオンおよびポリマー性結晶化阻害剤を含有する散布混合物を、多様な過飽和2,4−D濃度で調製し、この濃度にて結晶化を観察した。各混合物中で形成された結晶を単離、乾燥および秤量した。各混合物から単離した結晶の量/重量を混合物中の2,4−D重量%酸当量濃度に対してプロットして、線形関数を得た。結晶重量対2,4−Dの%AE濃度の外挿した線形関数のX交点によって、CCCを決定した。たとえば、以下の手順を使用して、表3に示すCCC値を決定した:
1.適量の342ppm硬度の水および2,4−D水性濃縮物製剤、たとえばコリン塩をビルトイン2% 重量/重量PCIありまたはなしで、100ml遠心管に添加して、均質な溶液が得られるまで混合した。
2.適量のグリホサート水性濃縮物製剤、たとえばラウンドアップパワーマックス(Roundup PowerMax)(登録商標)(モンサント社(Monsanto Company);セントルイス、ミズーリ州)中に見出されるグリホサートK塩を遠心管に添加し、反転させて混合した。
3.場合により、他のタンク混合成分、たとえばアンモニウムサルフェート(AMS)を遠心管に添加した。
4.サンプルを周囲温度にて24時間にわたって平衡にさせてから、結晶沈殿を濾過、回収、乾燥および秤量した。
5.1:1の比で2,4−Dおよびグリホサートの所望の酸当量濃度を達成するための2,4−Dおよびグリホサート塩の量を添加して、水の量を残量成分として計算して、100mlの最終混合物体積を達成した。
6.通例、一連の混合物を、酸当量(ae)ベースの各除草剤塩の過飽和濃度、たとえば1.8%、2.4%および3.0%にて、上の工程に従って調製した。回収した結晶沈殿の重量を、混合物中の2,4−Dの対応する酸当量濃度に対してプロットした。次に、結晶沈殿重量対2,4−D%酸当量濃度の線形関数を、結晶沈殿重量がゼロになる水平軸まで外挿することによって、臨界結晶化濃度(CCC)を結晶化が起こる前の最大%の2,4−D酸当量濃度として決定することができる。
【0050】
【表3】
方法B:CCCは、標準HPLC法を使用して、方法Aに記載した手順によって調製した過飽和(結晶化)混合物の透明上清部分中の2,4−D濃度を化学的に分析することによっても決定できる。本手順を使用して、表4に示すCCC値を決定した。
【0051】
方法Aまたは方法Bで決定したように、特定のポリマー性結晶化阻害剤の使用で観測されるCCCが高ければ高いほど、該ポリマー性結晶化阻害剤は、本明細書に記載する除草剤水溶液中での結晶化の防止に、したがって除草剤水溶液の相溶性の改善により良好に作用し得る。たとえば表3に示すように、2,4−D コリン濃縮物製剤への2% PCI、たとえば5472eおよび5472gの包含により、CCCは0.96% AEからそれぞれ2.89%および1.88%へと上昇し、これにより、2,4−Dおよびグリホサート塩の濃度が、PCIを含まないものより、はるかに高い相溶性タンク混合物が生じる。
【0052】
【表4】
1DMA(登録商標)−4は、456g ae/L 2,4−Dジメチルアンモニウム塩を含有する水性濃縮物(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)、インディアナポリス、インディアナ州)である;
2ラウンドアップパワーマックス(Roundup PowerMax)(登録商標)は、540g ae/L グリホサートカリウム塩を含有する水性濃縮物(モンサント社(Monsanto Company)、セントルイス、ミズーリ州)である。
【0053】
実施例3
ポリマー性結晶化阻害剤(PCI)を含有する2,4−Dコリン塩の相溶性水性濃縮物の調製およびグリホサート塩およびアンモニウムサルフェート(AMS)を含有する散布溶液での該濃縮物の希釈
2,4−Dコリン濃縮物の調製:456グラム酸当量/リットル(g ae/L)の濃度の2,4−Dを有し、2% (重量/重量)PCIを含有する2,4−Dコリン塩濃縮物の20グラムサンプルは、2,4−D酸工業級(97% 重量/重量)7.7g(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)より供給)をPCIサンプル5472eの溶液(水中50%)0.80gおよびコリンヒドロキシド溶液(水中45% コリンヒドロキシド)7.2gと混合することによって調製した。ひとたび2,4−D酸が完全に溶解したら、エチレンジアミンテトラ酢酸モノ−コリン塩の水溶液(水中25.4%)0.66gを透明溶液中に混合した。次に追加のコリンヒドロキシド溶液1から1.4gを添加して濃縮物のpHを約7.0に調整し、20gの最終サンプル重量を得た。
【0054】
表5に示す散布溶液を調製するための代表的な手順は、以下の工程を含んでいた:
1.適量の342ppm硬度の水を100ml遠心管に添加し、次に適量の2,4−D水性濃縮物製剤、たとえば2,4−Dコリン塩をビルトイン2% (重量/重量)PCIありまたはなしで添加して、均質な溶液が得られるまで混合した。
2.適量のグリホサート水性濃縮物製剤、たとえばグリホサートK塩遠心管に添加して、反転させて混合する。
3.場合により、他のタンク混合成分、たとえばAMSを遠心管に添加した。
4.1:1の比で2,4−Dおよびグリホサートの所望の酸当量濃度を達成するための2,4−Dおよびグリホサート塩の量を添加して、水の量を残量成分として計算して、100mlの最終混合物体積を達成した。たとえば840g ae/haの使用率での15gal/ac、10gal/acおよび5gal/ac散布体積は、タンク混合物中、約0.6%、0.9%および1.8%酸当量の2,4−Dおよびグリホサートそれぞれに相当する。
5.このように調製した散布溶液を周囲温度にて24時間にわたって平衡にさせてから、いずれかの結晶または沈殿の存在について調べた。
【0055】
【表5】
1DMA(登録商標)−4は、456g ae/L2,4−Dジメチルアンモニウム塩を含有する水性濃縮物(ダウアグロサイエンシズ社(Dow AgroSciences LLC)、インディアナポリス、インディアナ州)である。
2ラウンドアップパワーマックス(Roundup PowerMax)(登録商標)は、540g ae/L グリホサートカリウム塩を含有する水性濃縮物(モンサント社(Monsanto Company)、セントルイス、ミズーリ州)である。
【0056】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例証として意図される、本明細書に開示した実施形態によって範囲を限定されず、機能的に均等であるいずれの実施形態も本発明の範囲内である。プロセス、方法および組成物の多様な修正は、本明細書に提示および記載するものに加えて、当業者に明らかとなり、添付する特許請求の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本明細書で開示するプロセスおよび方法工程ならびに組成物構成成分のある代表的な組合せが上の実施形態において特に論じられているが、組成物構成成分ならびにプロセスおよび方法工程の他の組合せが当業者に明らかとなり、また添付する特許請求の範囲内に含まれることが意図される。このため構成成分または工程の組合せは、本明細書に明示的に記載されることがある;しかし、明示的に指摘されなくても、構成成分および工程の他の組合せも含まれる。「含む(comprising)」という用語およびその変形は、本明細書で使用する場合、「含む(including)」という用語およびその変形と同義的に用いられ、オープンで非限定的な用語である。