(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スタビライザバーが挿通される内孔を有する筒状のブッシュ本体において該内孔を外周面に開放させて該スタビライザバーへの側方からの装着を可能にする切割りが周壁部に設けられていると共に、該周壁部における車両ボデー側への重ね合わせ面上に取付用台座が組み付けられている台座付きのスタビライザブッシュにおいて、
前記ブッシュ本体における前記切割りが前記周壁部における前記取付用台座とは反対側の半周部分に位置して設けられている一方、
該ブッシュ本体の前記重ね合わせ面には、該取付用台座に向かって突出して該取付用台座に設けられた嵌合孔への係止作用で該ブッシュ本体を該取付用台座への組付状態に保持する挿入突起が設けられていると共に、
該ブッシュ本体の該重ね合わせ面において前記内孔の中心軸に直交する幅方向で該中心軸に対応するセンターを外れた位置から該挿入突起が突設されていることを特徴とするスタビライザブッシュ。
前記挿入突起が、前記ブッシュ本体の前記重ね合わせ面から突出して前記取付用台座の前記嵌合孔へ挿通される柄部と、該柄部の先端側から広がって該取付用台座における該嵌合孔の開口周縁部に係止される笠部とを有していると共に、
該柄部における該笠部への近接部分において該柄部の基端側よりも細くされた細柄部が設けられている請求項1に記載のスタビライザブッシュ。
前記挿入突起が、前記ブッシュ本体の前記重ね合わせ面から突出して前記取付用台座の前記嵌合孔へ挿通される柄部と、該柄部の先端側から広がって該取付用台座における該嵌合孔の開口周縁部に係止される笠部とを有していると共に、
該柄部の長さが該嵌合孔の長さよりも大きくされている請求項1又は2に記載のスタビライザブッシュ。
前記ブッシュ本体の前記周壁部には、前記切割りを挟んだ周方向両側に位置して補強用の中間板が固着されている請求項1〜4の何れか1項に記載のスタビライザブッシュ。
前記ブッシュ本体の周壁部には、前記切割りを挟んだ周方向両側にそれぞれ半周以下の長さで広がる一対の前記中間板が配されていると共に、各該中間板の周方向両端縁部には外周側に向かって突出する端縁突起が一体形成されている請求項5に記載のスタビライザブッシュ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、本発明者が検討したところ、従来構造の台座付きのスタビライザブッシュでは、スタビライザバーへ装着する際に、意図せずに台座がブッシュ本体から外れてしまうことがあり、装着作業に支障をきたすおそれのあることが明らかとなった。即ち、スタビライザバーへの装着に際して切割りを広げる操作に伴ってブッシュ本体に惹起される弾性変形により、ブッシュ本体の挿入突起が取付用台座の嵌合孔から抜け出して外れることで取付用台座がブッシュ本体から脱落するおそれのあることが判ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様の特徴とするところは、スタビライザバーが挿通される内孔を有する筒状のブッシュ本体において該内孔を外周面に開放させて該スタビライザバーへの側方からの装着を可能にする切割りが周壁部に設けられていると共に、該周壁部における車両ボデー側への重ね合わせ面上に取付用台座が組み付けられている台座付きのスタビライザブッシュにおいて、前記ブッシュ本体における前記切割りが前記周壁部における前記取付用台座とは反対側の半周部分に位置して設けられている一方、該ブッシュ本体の前記重ね合わせ面には、該取付用台座に向かって突出して該取付用台座に設けられた嵌合孔への係止作用で該ブッシュ本体を該取付用台座への組付状態に保持する挿入突起が設けられていると共に、該ブッシュ本体の該重ね合わせ面において前記内孔の中心軸に直交する幅方向で該中心軸に対応するセンターを外れた位置から該挿入突起が突設されているスタビライザブッシュにある。
【0010】
先ず、従来構造の台座付きのスタビライザブッシュにおける前述の問題点について本発明者が検討を加えたところ、スタビライザバーへの装着の際にブッシュ本体の弾性変形が特定の態様をもって惹起されることに起因することが明らかとなった。即ち、ブッシュ本体をスタビライザバーへ装着するに際しては、切割りを広げるように周壁部を弾性変形させることとなるが、ブッシュ本体の取付用台座への重ね合わせ部分では、切割りを広げる方向へ周壁部に及ぼされる外力が、取付用台座の幅方向両端部分を支点とするモーメントとして作用せしめられる。その結果、ブッシュ本体の周壁部における取付用台座への重ね合わせ部分では、幅方向両端部分が取付用台座へ押し付けられる一方、幅方向中央部分が取付用台座から浮き上がるように変形することとなる。
【0011】
特に、取付用台座への重ね合わせ部分におけるブッシュ本体の周壁部の厚さ寸法は、略円形断面の中心孔が採用されることで幅方向の略中央部分において薄肉となるために、厚肉の幅方向両端部に比して弾性変形しやすくなり、取付用台座から一層浮き上がりやすい。また、ブッシュ本体の周壁部の切割りが取付用台座と反対側に設けられた場合には、ブッシュ本体の周壁部における取付用台座への重ね合わせ部分に作用するモーメントのアーム長が大きくなることから、取付用台座への重ね合わせ部分の弾性変形量ひいては取付用台座からの浮き上がり量が一層大きくなりやすいことがわかった。
【0012】
このような新たな知見に基づいて完成された本発明の第一の態様に従う構造のスタビライザブッシュにおいては、ブッシュ本体における取付用台座への係止用の挿入突起が、切割りを開いてブッシュ本体を弾性変形させた際に取付用台座から最も大きく離れる位置を外れて設けられることとなる。それ故、スタビライザバーへの装着に際して、ブッシュ本体を弾性変形させることで挿入突起に及ぼされる嵌合孔からの引抜方向の変位量や力が軽減されることから、挿入突起が嵌合孔から意図せず抜け出してブッシュ本体から取付用台座が外れてしまう不具合が抑えられ得る。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記挿入突起が、前記ブッシュ本体の前記重ね合わせ面から突出して前記取付用台座の前記嵌合孔へ挿通される柄部と、該柄部の先端側から広がって該取付用台座における該嵌合孔の開口周縁部に係止される笠部とを有していると共に、該柄部における該笠部への近接部分において該柄部の基端側よりも細くされた細柄部が設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、嵌合孔の開口周縁部に対する笠部の引っ掛かりによって挿入突起の嵌合孔からの抜け出しがより確実に防止される。また、取付用台座をブッシュ本体へ組み付けるために笠部を嵌合孔へ押し込んで嵌め入れるに際しても、細柄部により笠部の変形領域が柄部の外周面上に確保されて、笠部が一層小さく折り曲げられることから、挿入突起の嵌合孔への挿通作業も容易となる。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記挿入突起が、前記ブッシュ本体の前記重ね合わせ面から突出して前記取付用台座の前記嵌合孔へ挿通される柄部と、該柄部の先端側から広がって該取付用台座における該嵌合孔の開口周縁部に係止される笠部とを有していると共に、該挿通突起の該柄部の長さが該嵌合孔の長さよりも大きくされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュによれば、ブッシュ本体への取付用台座の組付状態での笠部が嵌合孔における係止部分から外方に離隔して所定量の遊びが設定されることとなる。それ故、切割りを開いてブッシュ本体を弾性変形させた際に、ブッシュ本体における挿入突起の形成部位が取付用台座から多少離れても、挿入突起の笠部が嵌合孔の開口周縁部に対する係止状態へ一層安定して維持され得る。
【0017】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記嵌合孔と前記挿入突起との各横断面が、相対回転により相互に当接される長円状断面とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュによれば、嵌合孔と挿入突起との相対回転が防止されることで、ブッシュ本体と取付用台座とが、組付状態において所定の相対位置関係に保持され得る。これにより、例えばスタビライザブッシュをスタビライザバーや車両ボデー側へ装着するに際して、ブッシュ本体と取付用台座を正しく位置合わせし直すなどといった面倒な作業も不要となって作業効率の向上も図られ得る。
【0019】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか一つの態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記ブッシュ本体の前記周壁部には、前記切割りを挟んだ周方向両側に位置して補強用の中間板が固着されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、中間板によってスタビライザバーの防振支持特性のチューニング自由度が大きくなる。また、切割りを挟んだ周方向両側に中間板を配すると、中間板の配設部分の変形が抑えられることで、スタビライザバーへの装着時に切割りを開いた際のブッシュ本体の弾性変形が取付用台座の重ね合わせ部分等に集中するおそれもあるが、本発明では前述のように挿入突起の嵌合孔への係止状態が安定して維持されることから、取付用台座のブッシュ本体からの不用意な離脱を防止しつつ中間板を採用することが可能になる。
【0021】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るスタビライザブッシュにおいて、前記ブッシュ本体の周壁部には、前記切割りを挟んだ周方向両側にそれぞれ半周以下の長さで広がる一対の前記中間板が配されていると共に、各該中間板の周方向両端縁部には外周側に向かって突出する端縁突起が一体形成されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュによれば、端縁突起を設けたことにより、中間板の剛性ひいてはブッシュ本体への補強効果の向上が図られ得る。なお、本態様における端縁突起は、例えばブッシュ本体の軸方向両端面に突出位置させることで、ブッシュ本体の成形キャビティ内での中間板の位置決め支持部などとして利用することも可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、スタビライザバーへの装着に際してブッシュ本体を切割りで拡開させた場合でも、ブッシュ本体を取付用台座への組付状態に保持する挿入突起の突出位置における取付用台座からのブッシュ本体の離隔が軽減される。その結果、挿入突起の嵌合孔への係止状態が安定して維持され得て、取付用台座のブッシュ本体からの不用意な脱落が効果的に回避され得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、
図1には、本発明の一実施形態としてのスタビライザブッシュ10が、車両への装着状態で示されている。このスタビライザブッシュ10は、ブッシュ本体14へ取付用台座15が組み付けられることによって構成されている。そして、ブッシュ本体14が自動車のスタビライザバー16に外挿状態で装着される一方、ブッシュ本体14が取付用台座15を介して車両ボデー側の部材であるサブフレーム18などに重ね合わされた状態で外周面をブラケット19で固定的に保持されることにより、スタビライザバー16が車両ボデー18に防振支持せしめられるようになっている。
【0027】
なお、以下の説明において、上下方向および高さ方向は、
図1中の上下方向を言う。幅方向は、
図1中の左右方向を言う。軸方向は、
図1中において、紙面に直交する方向を言う。
図1中の上下方向は、車両の上下方向と必ずしも一致するものではない。
【0028】
より詳細には、ブッシュ本体14は、
図2〜5に示されるように、全体として略厚肉の筒状とされている。ブッシュ本体14の中央部分には、円形断面で軸方向へストレートに延びる内孔20が形成されており、内孔20を囲む周壁部22の外周面は略小鉤形状とされている。
【0029】
すなわち、ブッシュ本体14の周壁部22の外周面は、軸直角方向の断面において、上側半分が略半円形とされていると共に、両側が上下方向へ平行に延びている。そして、これら上側半分と両側部分とによって、全体として逆U字形状を有し、後述するブラケット19で車両ボデー18側へ締結される外周締結面24が構成されている。
【0030】
また、ブッシュ本体14の周壁部22の外周面のうち、下側の底面は幅方向に広がる略平坦な重ね合わせ面26とされている。そして、この重ね合わせ面26において、ブッシュ本体14が、取付用台座15を介して車両ボデー18に重ね合わされて固定的に取り付けられるようになっている。
【0031】
なお、周壁部22の外周締結面24には、軸方向中間部分を周方向に延びる山部28,28や谷部30が形成されている。そして、外周締結面24に装着されるブラケット19が、これら山部28,28や谷部30に対応する波形の凹凸形状を与えられて、外周締結面24に対してブラケット19が密着状態で重ね合わされることにより、外周締結面24とブラケット19が軸方向で相互に位置合わせされて固定的に組み付けられるようになっている。
【0032】
また、周壁部22の重ね合わせ面26には、幅方向両側近くに段差34,34が形成されており、幅方向中央部分が両端部分よりも下方に突出した嵌合凸部36とされている。この嵌合凸部36は、軸方向の全長に亘って連続して延びており、嵌合凸部36の突出先端面は左右方向に所定幅で広がる略平坦面とされている。
【0033】
さらに、ブッシュ本体14の周壁部22における頂点付近となる周方向略中央部分には、切割り38が形成されている。かかる切割り38は、周壁部22の内外周面を半径方向に貫通しており、周壁部22の軸方向の全長に亘って連続して延びている。本実施形態では、切割り38が、実質的に幅寸法のないスリット状に形成されており、例えばブッシュ本体14の成形後にカッターナイフなどで切り裂くことで形成されている。
【0034】
すなわち、ブッシュ本体14の周壁部22は、切割り38の形成部位において周上で構造的に分断されていることから、切割り38の両側部分を相互に周方向で離隔させる方向に引っ張ることで、周壁部22を周上の一箇所で拡開するように弾性変形させることができるようになっている。そして、このような弾性変形により、ブッシュ本体14をスタビライザバー16の側方から組み付けて外挿状態で装着することが可能とされている。
【0035】
特に本実施形態では、切割り38が、周壁部22の重ね合わせ面26の幅方向中心とブッシュ本体14の中心軸(内孔20の中心軸)とを通って上下方向に延びる直線L上に形成されている。これにより、切割り38が、ブッシュ本体14の中心軸を挟んで、重ね合わせ面26上に組み付けられる取付用台座15と反対側に位置する周壁部22上に設けられている。
【0036】
また、本実施形態のブッシュ本体14の周壁22には、中間板39が埋設状態で固着されている。この中間板39は、内孔20の周上でそれぞれ半周弱の長さで広がる円弧状の湾曲板からなる一対の分割板40,40により構成されている。それぞれの分割板40,40は、ブッシュ本体14の周壁部22の厚さ方向中間部分に埋設されており、内孔20の中心軸と平行に軸方向の両端近くまで延びている。また、これら分割板40,40は、切割り38が位置する前記直線Lを挟んだ両側に位置して、左右で相互に対向位置して配されている。
【0037】
なお、各分割板40の周方向両側の端縁部には、それぞれ外周側に向かって突出する端縁突起42,42が一体形成されている。本実施形態では、各分割板40の長さ方向両端部に位置して、かかる端縁突起42,42が設けられている。これらの端縁突起42,42は、ブッシュ本体14との接着面積の向上などを図り得るほか、例えばブッシュ本体14の成形用型の成形キャビティ内に分割板40をセットしてインサート成形するに際して、成形用型で挟んで固定する部位等として利用することもできる。また、分割板40では、ブッシュ本体14の成形時における成形キャビティ内でのゴム材料の回り込みを考慮して、板厚方向に貫通する複数の貫通孔44が、適宜に形成され得る。
【0038】
因みに、ブッシュ本体14や中間板39の材質は特に限定されるものでないが、例えばブッシュ本体14としては、天然ゴム(NR)や、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム材料が採用され得る。また、中間板39としては、ブッシュ本体14よりも剛性が高く成形も容易な金属や硬質の合成樹脂材などが採用され得る。
【0039】
さらに、ブッシュ本体14の周壁部22において重ね合わせ面26を形成する底壁部45には、重ね合わせ面26において下方に向かって突出する挿入突起46が形成されている。
【0040】
この挿入突起46は、
図1,6などにも示されているように、ブッシュ本体14の幅方向において、内孔22の中心を通り上下方向に延びる直線Lから外れた位置から突出しており、直線Lと略平行に伸びている。特に、本実施形態では、挿入突起46の全体が直線Lから左右方向に外れている。なお、かかる挿入突起は、嵌合凸部36の下面に複数設けられてもよいが、本実施形態では、一つの挿入突起46が、
図1において直線Lから右側に外れて設けられている。
【0041】
挿入突起46は、底壁部45の嵌合凸部36から下方に向かってストレートに突出する柄部48を有していると共に、柄部48の突出先端には、外周に向かって広がる笠部50が形成されている。また、柄部48および笠部50の横断面は、
図7にも示されているように、長円または楕円からなる長円形状とされており、笠部50が、柄部48よりも一回り大きい外周形状とされている。
【0042】
また、柄部48の突出先端側で笠部50に近接位置する部分は、外周形状が基端部よりも小さくされた細柄部としてのテーパ状部52が設けられている。すなわち、テーパ状部52では、柄部48の断面の長軸方向両側の円弧状外周面における径寸法が、笠部50に向かって次第に小さくされている。なお、テーパ状部52の形成長さは限定されるものでないが、柄部48の先端外周面から笠部50の外周側への突出寸法と略同じかそれより大きな上下方向長さ領域にテーパ状部52が形成されることが望ましい。
【0043】
このようなテーパ状部52が設けられていることにより、笠部50を柄部48側へ折り畳むように押し曲げた際に、柄部48の外周面に重なるように弾性変形した笠部50がテーパ状部52へ入り込むことで、弾性変形した笠部50の外径寸法を一層小さくすることが可能となっている。なお、テーパ状部52は、柄部48側に弾性変形した笠部50の変形スペースを与えるものであり、例えば柄部48の全周に亘って形成されていても良い。
【0044】
また、本実施形態では、笠部50の裏面(
図6の上面)は、外周縁部から柄部48に向かって次第に柄部48の基端側に突出する傾斜面53とされており、上述のように笠部50が柄部48側に弾性変形した際に、笠部50の裏面(傾斜面53)が、柄部48のテーパ状部52の表面に沿い易くなっている。尤も、笠部50の裏面は、柄部48の軸直角方向に広がっていたり、中央側から外周縁部に向かって次第に柄部48の基端側に突出する逆傾斜面とされていても良く、それによって、取付用台座15への係止力を向上させることも可能である。
【0045】
また一方、笠部50の表面(
図6の下面)は、外周縁部から中央に向かって次第に突出方向先端側に突出する傾斜案内面54とされている。これにより、取付用台座15の後述する嵌合孔60への挿入作業の向上等が図られている。
【0046】
一方、取付用台座15は、硬質の合成樹脂や金属で形成されており、
図8に示されているように、全体として略厚肉板状または矩形ブロック状の部材とされている。この取付用台座15は、ブッシュ本体14の底面形状と略同じ大きさの平面形状とされている。
【0047】
また、取付用台座15の上面の形状は、ブッシュ本体14の下面の形状に略対応しており、取付用台座15の上面における幅方向中央部分には、所定幅で軸方向に延びる平底状の嵌合凹部56が設けられている。更にまた、取付用台座15の上面の幅方向両端縁部には、嵌合凹部56の両側壁をなして軸方向に延びる突条からなる位置決め突部58,58が設けられている。そして、嵌合凹部56の幅方向両側における位置決め突部58,58との間は、滑らかに湾曲した段差面とされている。
【0048】
これにより、取付用台座15の上面には、ブッシュ本体14が載置され、ブッシュ本体14の重ね合わせ面26が、略全体に亘って当接状態で重ね合わされるようになっている。
【0049】
さらに、取付用台座15には、挿入突起46と対応する位置で上面に開口して、下方に向かって延びる嵌合孔60が形成されている。また、嵌合孔60の形成部位では、取付用台座15の下面に開口する座ぐり穴61が形成されている。そして、座ぐり穴61の内周形状が嵌合孔60よりも大きくされていることで、座ぐり穴61の上底面の略中央に位置して、嵌合孔60の軸方向下側の開口が設けられている。なお、これら嵌合孔60および座ぐり穴61の横断面は、挿入突起46と同様に長円または楕円からなる長円形状とされている。また、嵌合孔60の大きさは、笠部50より小さくされており、柄部48と略同じか僅かに大きくされている。一方、座ぐり穴61は、笠部50より大きくされている。
【0050】
また、取付用台座15における嵌合孔60の上方の開口縁部には、上方に向かって次第に拡開するテーパ面64が設けられている。かかるテーパ面64は、嵌合孔60の周上で部分的であっても良いが、本実施形態では全周に亘って形成されている。
【0051】
そして、取付用台座15の上面にブッシュ本体14が重ね合わされて、挿入突起46の笠部50が嵌合孔60に押し通されて嵌合孔60を下方に向けて通過せしめられることで、柄部48が嵌合孔60を貫通する状態で、挿入突起46が嵌合孔60に対して挿通される。これにより、嵌合孔60を通過する際に押し縮められた笠部50が、座ぐり穴61内で広がって位置せしめられ、座ぐり穴61の上底面である嵌合孔60の下方の開口周縁部に当接して引っ掛かる係止作用により、挿入突起46の嵌合孔60から上方への引き抜きが阻止されるようになっている。
【0052】
すなわち、ブッシュ本体14の挿入突起46が取付用台座15の嵌合孔60への挿通状態に維持されることにより、ブッシュ本体14が取付用台座15に対して重ね合わされた組付状態に保持されるようになっている。なお、嵌合凸部36および嵌合凹部56の幅方向両側面がそれぞれ下傾する湾曲面とされていることから、ブッシュ本体14が取付用台座15の所定位置に滑らかに案内される。それに加えて、挿入突起46の先端に傾斜案内面54が設けられているとともに、嵌合孔60の上方開口部にもテーパ面64が設けられていることから、挿入突起46が嵌合孔60に案内され易くなっている。
【0053】
ここにおいて、嵌合孔60の上下方向寸法Tdは、挿入突起46における柄部48の上下方向寸法Tsよりも小さくされている。その結果、
図1などにも示されているように、ブッシュ本体14と取付用台座15との組付状態では、嵌合孔60に挿通された挿入突起46の柄部48の先端側(下端側)が座ぐり穴61内に所定高さで突出されて、笠部50が座ぐり穴61内に収容状態で位置せしめられている。すなわち、ブッシュ本体14と取付用台座15との組付時には、笠部50の裏面53と、嵌合孔60の開口端面である座ぐり穴61の上底面とが、上下方向で相互に離隔している。したがって、ブッシュ本体14と取付用台座15との組付時には、上下方向での所定量の遊びが設定されており、挿入突起46の嵌合孔60への挿通状態を維持したままで、ブッシュ本体14における取付用台座15から離隔方向への相対変位が許容されるようになっている。
【0054】
また、ブッシュ本体14の取付用台座15への組付状態では、取付用台座15の嵌合凹部56にブッシュ本体14の嵌合凸部36が嵌め入れられており、挿入突起46の嵌合孔60への挿通による係止作用と相俟って、取付用台座15とブッシュ本体14とが相互に位置決めされている。すなわち、本実施形態のスタビライザブッシュ10では、挿入突起46の柄部48や笠部50が、嵌合孔60や座ぐり穴61と対応する非円形の横断面形状とされており、相対的な軸回り変位に際して挿入突起46の外周面が嵌合孔60や座ぐり穴61の内周面に当たることで、軸回り変位が防止されている。また、挿入突起46によってブッシュ本体14と取付用台座15との相対的な離隔変位が制限されていることから、ブッシュ本体14と取付用台座15との相対回転に際して嵌合凸部36が嵌合凹部56の両側段差へ当たることによっても、ブッシュ本体14と取付用台座15との相対回転が防止されている。
【0055】
そして、スタビライザブッシュ10がスタビライザバー16に外挿状態で装着されるとともに、スタビライザブッシュ10の外周締結面24にブラケット19が装着されて、ブラケット19がサブフレーム18などの車両ボデー側の部材にボルト68などで固定されることにより、スタビライザバー16が車両ボデー18に対して防振支持されることとなる。なお、スタビライザブッシュ10の高さ寸法をブラケット19の高さ寸法より大きくすることなどにより、スタビライザブッシュ10の車両装着時には、ブッシュ本体14が軸直角方向で圧縮されるとともに、取付用台座15の下面がサブフレーム18の上面に対して押し付けられる。
【0056】
なお、ブラケット19の構造は限定されるものではないが、例えば
図1に示されているように、門形部材の開口両端部から一対の取付部70,70が外方に延び出す構造とされて、当該取付部70,70に設けられたボルト孔72,72にボルト68,68が螺着されることにより、ブラケット19がサブフレーム18などに固定される。
【0057】
ここにおいて、スタビライザブッシュ10のスタビライザバー16への装着においては、
図9に示されているように、スタビライザブッシュ10の切割り38を開いて拡開変形させることで内孔20を外周面に開放して、スタビライザバー16を側方から挟み込むことによってなされる。なお、スタビライザブッシュ10とスタビライザバー16は相互に接着されてもよいし、非接着とされてもよい。また、スタビライザブッシュ10とスタビライザバー16とが非接着とされる場合には、内孔22に自己潤滑性を有する合成樹脂や潤滑剤などを介在又は塗布させて滑り性を向上させるなどしてもよい。
【0058】
ところで、切割り38を開いてブッシュ本体14を弾性変形させた際、ブッシュ本体14における切割り38を挟んだ両側部分のそれぞれは、取付用台座15の幅方向両端部分を中心として、
図9中の白矢印の方向に外力が及ぼされる。一方、それに伴い、ブッシュ本体14における内孔20を挟んで切割り38と反対側では、取付用台座15に重ね合わされた底壁部45に曲げモーメントが作用することとなり、底壁部45の幅方向中間部分、特に内孔20の中心が位置する直線L上では、
図9中の白矢印の方向の力が及ぼされて取付用台座15から浮き上がるように弾性変形せしめられる。
【0059】
ここで、挿入突起46の突出位置は、底壁部45において曲げモーメントが大きくなって変位量が最も大きくなる直線L上から幅方向に外れている。それ故、
図9に示されているように、ブッシュ本体14の底壁部が浮き上がったとしても、挿入突起46の突出位置におけるブッシュ本体14の取付用台座15からの浮き上がりは軽減されて、挿入突起46が嵌合孔60から抜け出すことが防止される。その結果、本実施形態のスタビライザブッシュ10を採用することにより、ブッシュ本体14をスタビライザバー16に装着する際の、ブッシュ本体14からの取付用台座15の脱落が効果的に防止され得る。
【0060】
特に、本実施形態では、挿入突起46の全体が直線L上から外れており、挿入突起46の突出位置がブッシュ本体14の幅方向中央部分から大きく外れていることから、挿入突起46の形成部分におけるブッシュ本体14の取付用台座15からの浮き上がりが一層効果的に防止され得る。
【0061】
また、ブッシュ本体14と取付用台座15との組付状態において、笠部50と嵌合孔60との間に上下方向の遊びが設定されている。それ故、ブッシュ本体14の幅方向中央部分が取付用台座から浮き上がっても、挿入突起46の抜け出し方向への全体的な移動がある程度許容されて、挿入突起46の嵌合孔60への挿通状態が安定して維持され得る。
【0062】
しかも、前述のように、組付状態下でのブッシュ本体14と取付用台座15との相対回転が防止されることから、スタビライザブッシュ10の装着時における面倒な位置合わせ作業が軽減され得る。
【0063】
また、挿入突起46を嵌合孔60へ挿通する作業時には、弾性変形した笠部50が柄部48のテーパ状部52へ納まるように重ね合わされることで、挿入抵抗が軽減されて作業が容易となる。なお、挿入突起46は複数設けても良いが、本実施形態では、一つの挿入突起46が直線Lを挟んで幅方向一方の側に偏倚して設けられていることから、ブッシュ本体14と取付用台座15とを一層速やかに組み付けることが可能である。
【0064】
更にまた、本実施形態では、スタビライザブッシュ10のスタビライザバーへの組付時におけるブッシュ本体14の弾性変形態様が中間板39で安定して発現され得て、不用意な変形によるブッシュ本体14の取付用台座15からの離脱も回避される。尤も、本実施形態では、一対の分割板40,40の存在によって、切割り38で拡開した際のブッシュ本体14の弾性変形量が、底壁部45の幅方向中央に集中して大きくなりやすいが、上述のように挿入突起46が底壁部45の幅方向中心から外れていることや、軸方向で遊びをもって嵌合孔60へ挿通されていることにより、ブッシュ本体14からの取付用台座15の脱落が効果的に防止され得る。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0066】
たとえば、前記実施形態では、切割り38は、ブッシュ本体14の内孔20の中心を通る直線L上に位置していたが、限定されるものでない。すなわち、本発明によれば、切割りの位置に拘わらず、底壁部45において幅方向両端を支点として中央部分が取付用台座15から離隔する弾性変形時に、挿入突起46に作用する取付用台座15から離隔する方向の変位量や力が軽減されることで、ブッシュ本体14の取付用台座15からの意図しない脱落が抑えられる。尤も、ブッシュ本体14における切割りは、取付用台座15上には形成し難いし、取付用台座15側の半周部分に設けた場合には底壁部45に惹起される取付用台座15から離隔方向の弾性変形も大きくならないことから、本発明では、ブッシュ本体における切割りが、周壁部22における取付用台座15とは反対側の半周部分に位置して設けられた態様が採用される。好適には、ブッシュ本体14の周壁部22において、
図1中の直線Lに直交して中心軸上を左右に延びる径方向線よりも上方に外れた位置に切割りを設けた態様として本発明が実施されることとなる。
【0067】
また、切割り38は、周壁部22の長さ方向で傾斜して軸方向に延びていても良いし、中心軸の径方向線に対して傾斜して厚さ方向に伸びていても良い。
【0068】
更にまた、挿入突起46は、直線Lに対して傾斜して突設されていても良い。特に挿入突起46は、ブッシュ本体14の底壁部45からの突出位置とされる底壁部45上の基端位置が、底壁部45の幅方向(周方向)の中心から外れていれば良く、それによってブッシュ本体14を切割り38で開いて弾性変形させた際に挿入突起46へ及ぼされる引張方向の変位量や力の軽減が図られ得る。なお、嵌合孔60も、上下方向線に対して傾斜して延びる方向に形成されていても良い。
【0069】
また、前記実施形態では、スタビライザブッシュ10の車両への装着状態で、挿入突起46の全体が、取付用台座15の嵌合孔60や座ぐり穴61と車両ボデー18とによって画成された内部空間に収容されることで保護されていたが、例えば挿入突起46の先端部分は外部に露出されるようになっていても良い。また、例えば車両ボデー18側にスペースを確保できる場合には、座ぐり穴61を設けることなく、取付用台座15を貫通して嵌合孔60を形成し、挿入突起46の先端部分を取付用台座15の下面から外部へ突出させることも可能である。
【0070】
さらに、前記実施形態では、長円形状の横断面を有する挿入突起46が一つ設けられていたが、例えば挿入突起が複数設けられることでブッシュ本体と取付用台座との相対回転を防止してもよく、かかる場合には、挿入突起の横断面が長円形状等とされる必要はない。また、ブッシュ本体14と取付用台座15との挿入突起46回りの相対回転の規制を、ブッシュ本体14と取付用台座15との重ね合わせ面の幅方向両側に位置する段差34,34などを利用して実現することも可能であり、その場合にも、挿入突起46と嵌合孔60との相対回転の規制機構を採用せずとも両部材の不用意な相対回転を防止することができる。
【0071】
また、挿入突起46における笠部50は、取付用台座15の嵌合孔60へ係止されるものであれば良く、例えば柄部48の周上で部分的に外周側へ突出する態様や、柄部48の先端がフック状に曲げられた態様の笠部なども採用可能である。尤も、本発明では、挿入突起と嵌合孔との機械的な係止機構に限定されるものでなく、挿入突起の嵌合孔からの抜け出しを阻止して嵌合状態に保持し得るものであれば、例えば圧入構造やテーパ嵌合構造なども係止機構に代えて採用することができる。
【0072】
更にまた、本発明に係るブッシュ本体やブラケット、中間板の形状などは、要求される防振特性などに応じて適宜設定され得る。また、取付用台座の大きさなどは、採用される自動車の車種やグレードなどに応じて適宜変更可能であり、共通のブッシュ本体に対して複数種類の取付用台座を適用することも可能である。