特許第6596351号(P6596351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596351
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23C 7/02 20060101AFI20191010BHJP
   F23D 1/02 20060101ALI20191010BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20191010BHJP
   F23L 9/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F23C7/02 301
   F23D1/02 Z
   F23C99/00 305
   F23L9/06
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-26266(P2016-26266)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-145976(P2017-145976A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 直也
(72)【発明者】
【氏名】有賀 健
(72)【発明者】
【氏名】芳川 裕基
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−068403(JP,A)
【文献】 特開2015−114077(JP,A)
【文献】 特開2015−083893(JP,A)
【文献】 特開2014−173776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 7/02,99/00
F23L 9/06
F23D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉と、
固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを前記火炉内に噴出する燃焼バーナと、
前記燃焼バーナより鉛直方向の下方で燃焼用空気を前記火炉内に噴出する炉底空気ノズルと、
前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向または鉛直方向に調整可能な空気噴出方向調整装置と、
を備え、
前記燃焼バーナは、燃料ガスの噴出方向を鉛直方向に調整可能な角度調整機構を有し、前記角度調整機構により前記燃焼バーナからの燃料ガスの噴出方向が下方側に調整されたとき、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更する、
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉と、
固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを前記火炉内に噴出する燃焼バーナと、
前記燃焼バーナより鉛直方向の下方で燃焼用空気を前記火炉内に噴出する炉底空気ノズルと、
前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向または鉛直方向に調整可能な空気噴出方向調整装置と、
を備え、
前記炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出量が減少したとき、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更する
ことを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に水平方向に調整可能な水平方向調整装置を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に鉛直方向に調整可能な鉛直方向調整装置を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボイラ。
【請求項5】
前記火炉の底部に落下した固体燃料の未燃分量を計測する第1未燃分量計測装置が設けられ、前記第1未燃分量計測装置の計測結果に応じて前記空気噴出方向調整装置を作動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボイラ。
【請求項6】
前記火炉から煙道に流れる排ガスの未燃分量を計測する第2未燃分量計測装置が設けられ、前記第2未燃分量計測装置の計測結果に応じて前記空気噴出方向調整装置を作動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボイラ。
【請求項7】
前記未燃分量が増加すると、前記空気噴出方向調整装置により前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料と空気を燃焼させることで蒸気を生成するためのボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に設置される火炉を有し、この火炉壁に複数の燃焼バーナが周方向及び上下方向に複数配置されている。そして、この火炉は、上部に煙道が連結され、この煙道に排ガスの熱を回収して蒸気を生成するための熱交換器が配置されている。
【0003】
このようなボイラとして、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。特許文献に記載された微粉炭バーナは、ノズル本体と、2次空気調整装置とを設け、2次空気調整装置として補助空気調整機構と主空気調整機構を設け、補助空気調整機構の補助空気取込口に回転可能な補助空気用風量調整羽根を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4983416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ボイラは、複数の燃焼バーナから微粉炭混合気と燃焼用空気を火炉内に噴出させ、微粉炭混合気に着火することで火炎が形成され、火炉内で発生した燃焼ガス(排ガス)が上昇する。ところで、ボイラは、その運転条件が常に変化するものとなっており、火炉の内部での燃焼状態も常に変化している。このとき、例えば、微粉炭混合気と共に火炉内に噴出される燃焼用空気の供給量が減少すると、燃焼用空気が火炉の中心部まで届かず、火炉中心での燃焼が不十分となる。すると、火炉の中心部での燃料の未燃分が増加し、燃焼効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、火炉内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制可能とするボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉と、固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを前記火炉内に噴出する燃焼バーナと、前記燃焼バーナより鉛直方向の下方で燃焼用空気を前記火炉内に噴出する炉底空気ノズルと、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向または鉛直方向に調整可能な空気噴出方向調整装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
従って、燃焼バーナから固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを火炉内に噴出させ、炉底空気ノズルから火炉における燃料ガスの噴出位置より下方に燃焼用空気を噴出させる。このとき、ボイラの運転条件が変わると、燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向や炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出量が変動することがある。このとき、空気噴出方向調整装置は、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向または鉛直方向に調整する。そのため、炉底空気ノズルは、火炉における燃料ガスの噴出位置より下方に燃焼に必要な燃焼用空気を適切に供給することができる。その結果、火炉内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明のボイラでは、前記燃焼バーナは、燃料ガスの噴出方向を鉛直方向に調整可能な角度調整機構を有し、前記角度調整機構により前記燃焼バーナからの燃料ガスの噴出方向が下方側に調整されたとき、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更することを特徴としている。
【0010】
従って、角度調整機構により燃焼バーナからの燃料ガスの噴出方向が下方側に調整されると、炉底空気ノズルから燃料ガスの噴出位置より下方に噴出する燃焼用空気が火炉の中央部に到達し難くなる。このとき、空気噴出方向調整装置により炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を火炉の中心側または火炉の下方側に変更する。すると、炉底空気ノズルからの燃焼用空気が燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達し易くなり、火炉内で燃料を効率的に燃焼することができる。
【0011】
本発明のボイラでは、前記炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出量が減少したとき、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更することを特徴としている。
【0012】
従って、炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出量が減少すると、燃料ガスの噴出位置より下方に噴出する、炉底空気ノズルからの燃焼用空気が火炉の中央部に到達し難くなる。このとき、空気噴出方向調整装置により炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を火炉の中心側または火炉の下方側に変更する。すると、炉底空気ノズルからの燃焼用空気が燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達し易くなり、火炉内で燃料を効率的に燃焼することができる。
【0013】
本発明のボイラでは、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に水平方向に調整可能な水平方向調整装置を有することを特徴としている。
【0014】
従って、水平方向調整装置は、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に水平方向に調整することで、燃料ガスの噴出方向に拘わらず、燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整することができ、火炉の燃焼状態が変動しても、炉底空気ノズルからの燃焼用空気を燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達させることができる。
【0015】
本発明のボイラでは、前記空気噴出方向調整装置は、前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に鉛直方向に調整可能な鉛直方向調整装置を有することを特徴としている。
【0016】
従って、鉛直方向調整装置は、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を燃焼バーナによる燃料ガスの噴出方向とは別に鉛直方向に調整することで、燃料ガスの噴出方向に拘わらず、燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整することができ、火炉の燃焼状態が変動しても、炉底空気ノズルからの燃焼用空気を燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達させることができる。
【0017】
本発明のボイラでは、前記火炉の底部に落下した固体燃料の未燃分量を計測する第1未燃分量計測装置が設けられ、前記第1未燃分量計測装置の計測結果に応じて前記空気噴出方向調整装置を作動することを特徴としている。
【0018】
従って、火炉の底部に落下した固体燃料の未燃分量に応じて空気噴出方向調整装置により炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出方向を調整することとなり、炉底空気ノズルからの燃焼用空気を燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達させることができ、燃料の未燃分の発生を抑制することができる。
【0019】
本発明のボイラでは、前記火炉から煙道に流れる排ガスの未燃分量を計測する第2未燃分量計測装置が設けられ、前記第2未燃分量計測装置の計測結果に応じて前記空気噴出方向調整装置を作動することを特徴としている。
【0020】
従って、煙道に流れる排ガスの未燃分量に応じて空気噴出方向調整装置により炉底空気ノズルからの燃焼用空気の噴出方向を調整することとなり、炉底空気ノズルからの燃焼用空気を燃料ガスの噴出位置より下方で、且つ、火炉の中央部に到達させることができ、燃料の未燃分の発生を抑制することができる。
【0021】
本発明のボイラでは、前記制御装置は、前記未燃分量が増加すると、前記空気噴出方向調整装置により前記炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を前記火炉の中心側または前記火炉の下方側に変更することを特徴としている。
【0022】
従って、炉底や煙道における未燃分量が増加すると、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を火炉の中心側または火炉の下方側に変更することで、燃料の未燃分の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のボイラによれば、炉底空気ノズルによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向または鉛直方向に調整可能な空気噴出方向調整装置を設けるので、火炉内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態のボイラを表す概略構成図である。
図2図2は、燃焼バーナの配置構成を表す平面図である。
図3図3は、炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
図4図4は、燃焼バーナの配置構成の第1変形実施形態を表す平面図である。
図5図5は、第1変形実施形態の炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
図6図6は、燃焼バーナの配置構成の第2変形実施形態を表す平面図である。
図7図7は、第2変形実施形態の炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
図8図8は、第2実施形態のボイラを表す概略構成図である。
図9図9は、第3実施形態のボイラを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るボイラの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のボイラを表す概略構成図、図2は、燃焼バーナの配置構成を表す平面図、図3は、炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
【0027】
第1実施形態のボイラは、石炭を粉砕した微粉炭やバイオマスを粉砕した微粉バイオマスを微粉燃料(固体燃料)として用い、この微粉燃料を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能なボイラである。
【0028】
第1実施形態において、図1に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁が伝熱管により構成されている。
【0029】
燃焼装置12は、この火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)の下部に設けられている。この燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ21,22,23を有している。本実施形態にて、この燃焼バーナ21,22,23は、周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って3セット、つまり、3段配置されている。但し、火炉の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施形態に限定されるものではない。
【0030】
この各燃焼バーナ21,22,23は、微粉炭供給管24,25,26を介して粉砕機(微粉炭機/ミル)27,28,29に連結されている。また、火炉11は、燃焼バーナ21,22,23の装着位置より下方に位置して炉底空気ノズル30が設けられている。火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23及び炉底空気ノズル30の装着位置に風箱31が設けられており、この風箱31に空気ダクト32の一端部が連結されており、この空気ダクト32の他端部に送風機33が連結されている。また、火炉11は、燃焼バーナ21,22,23の装着位置より上方に位置して追加空気ノズル34が設けられており、追加空気ダクト34から分岐した追加空気ダクト35が連結されている。
【0031】
煙道13は、火炉11の上部に連結されている。この煙道13は、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器としての過熱器(スーパーヒータ)41,42,43、再熱器(リヒータ)44,45、節炭器(エコノマイザ)46,47が設けられており、火炉11での燃焼で発生した燃焼ガスと水との間で熱交換が行われる。また、煙道13は、その下流側に熱交換を行った燃焼ガスが排出されるガスダクト48が連結されている。このガスダクト48は、空気ダクト32との間にエアヒータ49が設けられ、空気ダクト32を流れる空気と、ガスダクト48を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ21,22,23、炉底空気ノズル30、追加空気ノズル34に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0032】
ここで、燃焼装置12について詳細に説明するが、この燃焼装置12を構成する燃焼バーナ21,22,23は、それぞれほぼ同様の構成をなしていることから、燃焼バーナ21を代表して説明する。
【0033】
燃焼バーナ21は、図2に示すように、火炉11における4つの隅部にそれぞれ設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成されている。各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、微粉炭供給管24から分岐した各分岐管24a,24b,24c,24dが連結されると共に、空気ダクト32から分岐した各分岐管32a,32b,32c,32d(風箱31)が連結されている。
【0034】
そのため、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11に対して、微粉炭と搬送用空気が混合した微粉炭混合気(燃料ガス)を吹き込むと共に、その微粉炭混合気の周囲外側に燃焼用空気(燃料ガス燃焼用空気/2次空気)を吹き込む。そして、この微粉炭混合気に着火することで、4つの火炎F1,F2,F3,F4を形成することができ、この火炎F1,F2,F3,F4は、火炉11の鉛直上方から見て(図2にて)火炉11の中心Oとして反時計周り方向に旋回する火炎旋回流C1となる。
【0035】
また、炉底空気ノズル30は、図3に示すように、火炉11における4つの隅部にそれぞれ設けられる炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dから構成されている。各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、空気ダクト32から分岐した各分岐管32a,32b,32c,32d(風箱31)が連結されている。そのため、各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、火炉11に対して、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dが噴出した微粉炭混合気の下方に燃焼用空気を吹き込む。すると、火炉11の鉛直上方から見て(図3にて)火炉11の中心Oとして反時計周り方向に旋回する空気旋回流C11となる。
【0036】
本実施形態では、図1に示すように、炉底空気ノズル30(30a,30b,30c,30d)による燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整可能な空気噴出方向調整装置としての水平方向調整装置51が設けられている。この場合、水平方向調整装置51は、各燃焼バーナ21,22,23と独立して炉底空気ノズル30を水平方向に移動調整することができる。
【0037】
図2に示すように、燃焼バーナ21は、火炉11における各隅部に設けられる4つの燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成される。各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11内に微粉炭混合気と燃焼用空気を吹き込むことで、火炎旋回流C1を形成することができる。一方、図3に示すように、炉底空気ノズル30は、火炉11における各隅部に設けられる4つの炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dから構成される。各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、火炉11内に燃焼用空気を吹き込むことで、空気旋回流C11を形成することができる。
【0038】
この場合、図2及び図3に示すように、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dと各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dとは、火炉11の水平方向における同位置に配置される一方、鉛直方向にずれて設けられている。そして、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dと各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、火炉11に対する噴出方向が同方向であることから、火炎旋回流C1と空気旋回流C11は、同径となっている。
【0039】
ボイラ10の定格運転では、前述したように、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、微粉炭混合気と燃焼用空気を吹き込み、各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、燃焼用空気を吹き込むことで、火炎旋回流C1の下方に同径の空気旋回流C11が形成される。ところが、ボイラ10は、必要に応じて運転条件が変化するものであり、火炉11内の燃焼状態も変化する。
【0040】
図1に示すように、燃焼バーナ21,22,23と炉底空気ノズル30は、風箱31に支持され、図示しない角度調整機構により微粉炭混合気と燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整自在となっている。即ち、燃焼バーナ21,22,23と炉底空気ノズル30は、風箱31に水平方向に沿う支持軸により支持され、エアシリンダによりその向きが鉛直方向に変更可能となっている。ボイラ10の定格運転時における燃焼バーナ21,22,23及び炉底空気ノズル30の傾斜角度が設定されており、例えば、火炉11の上方における排ガス温度が高すぎると、角度調整機構により燃焼バーナ21,22,23の傾斜角度を変更し、噴出方向を下向きにする。また、排ガス中の有害物質(Nox)が増加すると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量を減少させる。
【0041】
燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したりすると、各炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴流が影響を受ける。即ち、燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出領域での火炎旋回流C1が強くなり、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部に届かないおそれがある。また、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少すると、この燃焼用空気の流速が低下し、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部に届かないおそれがある。すると、火炉11は、下部中央部で酸素不足となり、炉底に残存している灰中の未燃分が燃焼しないまま上昇し、煙道13に流れてしまう。
【0042】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、各燃焼バーナ21,22,23から噴出される微粉炭混合気と燃焼用空気の噴出領域の下方中央領域で、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気の到達量が減少すると、水平方向調整装置51により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。
【0043】
図3に示すように、火炉11における各隅部に設けられる4つの炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、それぞれ水平方向調整装置51a,51b,51c,51dが設けられている。各水平方向調整装置51a,51b,51c,51dは、炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dによる燃焼用空気の噴出方向を水平方向に変更することができる。例えば、炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dからの燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更すると、ボイラ10の定格運転時に形成される空気旋回流C11より小径の燃焼用空気の空気旋回流C12を形成することができる。
【0044】
水平方向調整装置51(51a,51b,51c,51d)は、炉底空気ノズル30(30a,30b,30c,30d)を水平方向に調整自在であるが、炉底空気ノズル30(30a,30b,30c,30d)の水平方向における調整角度θ1は、0度から30度であり、望ましくは、5度から20度がよい。
【0045】
なお、上述の説明では、火炉11における4つの隅部に燃焼バーナ21a,21b,21c,21dを配置したが、この構成に限定されるものではない。図4は、燃焼バーナの配置構成の第1変形実施形態を表す平面図、図5は、第1変形実施形態の炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
【0046】
第1変形実施形態において、図4に示すように、燃焼バーナ21は、火炉11における各隅部に接近した炉壁にそれぞれ設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成されている。各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11内に微粉炭混合気と燃焼用空気を吹き込む。すると、火炉11の鉛直上方から見て(図4にて)火炉11の中心Oとして反時計周り方向に旋回する火炎旋回流C1を形成することができる。
【0047】
また、図5に示すように、炉底空気ノズル30は、火炉11における各隅部に接近した炉壁にそれぞれ設けられる炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dから構成されている。各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、火炉11内で、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dからの微粉炭混合気の下方に燃焼用空気を吹き込む。すると、火炉11の鉛直上方から見て(図5にて)火炉11の中心Oとして反時計周り方向に旋回する空気旋回流C11を形成することができる。そして、各炉底空気ノズル30a,30b,30c,30dは、それぞれ水平方向調整装置51a,51b,51c,51dが設けられており、燃焼用空気の噴出方向を水平方向に変更することができる。
【0048】
また、図6は、燃焼バーナの配置構成の第2変形実施形態を表す平面図、図7は、第2変形実施形態の炉底空気ノズルの配置構成を表す平面図である。
【0049】
第2変形実施形態において、図6に示すように、燃焼バーナ21は、火炉11における対向する炉壁にそれぞれ設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21d,21e,21fから構成されている。各燃焼バーナ21a,21b,21cと各燃焼バーナ21d,21e,21fは、火炉11内に対向して微粉炭混合気と燃焼用空気を吹き込む。
【0050】
また、図7に示すように、炉底空気ノズル30は、火炉11における対向する炉壁にそれぞれ設けられる炉底空気ノズル30a,30b,30c,30d,30e,30fから構成されている。各炉底空気ノズル30a,30b,30cと炉底空気ノズル30d,30e,30fは、火炉11内で、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21d,21e,21fからの微粉炭混合気の下方に対向して燃焼用空気を吹き込む。そして、各炉底空気ノズル30a,30c,30d,30fは、それぞれ水平方向調整装置51a,51c,51d,51fが設けられており、燃焼用空気の噴出方向を水平方向に所定角度(調整角度θ11)の範囲内で所定の角度に変更することができる。
【0051】
このように構成された第1実施形態のボイラ10において、図1から図3に示すように、粉砕機27,28,29が駆動すると、供給された石炭が粉砕され、生成された微粉炭が搬送用空気により微粉炭供給管24,25,26を通して燃焼バーナ21,22,23に供給される。また、エアヒータ49で昇温された燃焼用空気が空気ダクト32により風箱31に供給されると共に、追加空気ダクト35により追加空気ノズル34に供給される。
【0052】
すると、燃焼バーナ21,22,23は、微粉炭と搬送用空気とが混合した微粉炭混合気と燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに着火することで火炎旋回流を形成する。また、炉底空気ノズル30は、燃焼用空気を火炉11における火炎旋回流より下方に吹き込む。更に、追加空気ノズル34は、追加空気を火炉11における火炎旋回流の上方に吹き込む。この火炉11では、微粉炭混合気と燃焼用空気とが燃焼して火炎旋回流が生じ、燃焼ガス(排ガス)が旋回しながら上昇する。
【0053】
このとき、角度調整機構により燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したりすると、水平方向調整装置51(51a,51b,51c,51d)により炉底空気ノズル30(30a,30b,30c,30d)による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。すると、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気と燃焼用空気とにより形成される火炎旋回流C1の下方に、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気により形成される空気旋回流C12が形成される。
【0054】
この空気旋回流C12は、火炎旋回流C1より小径であることから、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の貫通力が強くなる。そのため、燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになって火炎旋回流C1が強くなったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したりしても、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部までに届きやすくなる。すると、火炉11における下部中央部で酸素不足が抑制され、炉底に残存している灰中の未燃分が適正に燃焼し、煙道13に流れる未燃分が減少する。
【0055】
そして、図示しない給水ポンプから供給された水は、節炭器46,47によって予熱された後、図示しない蒸気ドラムに供給され火炉壁の各水管(図示せず)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。更に、図示しない蒸気ドラムの飽和蒸気は過熱器41,42,43に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器41,42,43で生成された過熱蒸気は、図示しない発電プラント(例えば、タービン等)に供給される。また、タービンでの膨張過程の中途で取り出した蒸気は、再熱器44,45に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。
【0056】
その後、煙道13の節炭器46,47を通過した排ガスは、ガスダクト48にて、図示しない脱硝装置によりNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機により粒子状物質が除去され、脱硫装置により硫黄分が除去された後、煙突から大気中に排出される。
【0057】
このように第1実施形態のボイラにあっては、中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉11と、固体燃料と燃焼用空気とを混合した微粉炭混合気を火炉11内に噴出する燃焼バーナ21,22,23と、燃焼バーナ21,22,23より鉛直方向の下方で燃焼用空気を火炉11内に噴出する炉底空気ノズル30と、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整可能な水平方向調整装置(空気噴出方向調整装置)51とを設けている。
【0058】
従って、ボイラ10の運転条件が変わると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気が燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の下方に十分に供給されないおそれがある。このとき、水平方向調整装置51は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整する。そのため、炉底空気ノズル30は、火炉11における微粉炭混合気の噴出位置より下方に燃焼に必要な燃焼用空気を適切に供給することができる。その結果、火炉11内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制することができる。
【0059】
第1実施形態のボイラでは、燃焼バーナ21,22,23は、微粉炭混合気の噴出方向を鉛直方向に調整可能な角度調整機構を有し、角度調整機構により燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の噴出方向が下方側に調整されたとき、水平方向調整装置51は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。従って、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の噴出方向が下方側に調整されると、炉底空気ノズル30による微粉炭混合気の噴出位置より下方に噴出する燃焼用空気が火炉11の中央部に到達し難くなる。このとき、水平方向調整装置51により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。すると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気が微粉炭混合気の噴出位置より下方で、且つ、火炉11の中央部に到達し易くなり、火炉11内で燃料を効率的に燃焼することができる。
【0060】
第1実施形態のボイラでは、炉底空気ノズルから30の燃焼用空気の噴出量が減少したとき、水平方向調整装置51は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。従って、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少すると、炉底空気ノズル30からの微粉炭混合気の噴出位置より下方に噴出する燃焼用空気が火炉11の中央部に到達し難くなる。このとき、水平方向調整装置51により炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心O側に変更する。すると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気が微粉炭混合気の噴出位置より下方で、且つ、火炉11の中央部に到達し易くなり、火炉11内で燃料を効率的に燃焼することができる。
【0061】
第1実施形態のボイラでは、水平方向調整装置51は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を燃焼バーナ21,22,23による微粉炭混合気の噴出方向とは別に水平方向に調整可能としている。従って、微粉炭混合気の噴出方向に拘わらず、燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整することができ、火炉11の燃焼状態が変動しても、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気を微粉炭混合気の噴出位置より下方で、且つ、火炉11の中央部に到達させることができる。
【0062】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態のボイラを表す概略構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
第2実施形態において、図8に示すように、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整可能な空気噴出方向調整装置としての鉛直方向調整装置52が設けられている。この場合、鉛直方向調整装置52は、各燃焼バーナ21,22,23と独立して炉底空気ノズル30を鉛直方向に移動調整することができる。
【0064】
ボイラ10の定格運転にて、各燃焼バーナ21,22,23は、火炉11内に微粉炭混合気と燃焼用空気を吹き込み、各炉底空気ノズル30は、燃焼バーナ23の下方で火炉11内に燃焼用空気を吹き込む。ところが、ボイラ10は、必要に応じて運転条件が変化するものであり、火炉11内の燃焼状態も変化する。即ち、角度調整機構により燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出領域での火炎旋回流C1が強くなり、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉の中央部に届かないおそれがある。また、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少すると、この燃焼用空気の流速が低下し、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉の中央部に届かないおそれがある。すると、火炉11は、下部中央部で酸素不足となり、炉底に残存している灰中の未燃分が燃焼しないまま上昇し、煙道13に流れてしまう。
【0065】
そこで、本実施形態では、各燃焼バーナ21,22,23から噴出される微粉炭混合気と燃焼用空気の噴出領域の下方中央領域で、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気の到達量が減少すると、鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の下方側に変更する。
【0066】
火炉11における各隅部に設けられる4つの炉底空気ノズル30は、それぞれ鉛直方向調整装置52が設けられている。各鉛直方向調整装置52は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に変更することができる。例えば、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出方向を火炉11の下方側に変更すると、噴出された燃焼用空気が火炉11の下方側に流れてから上昇するため、その滞留時間を長くすることができる。
【0067】
鉛直方向調整装置52による炉底空気ノズル30の鉛直方向における調整角度θ2は、0度から30度であり、望ましくは、5度から20度がよい。
【0068】
そのため、角度調整機構により燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したりすると、鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の下方側に変更する。すると、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気と燃焼用空気とにより形成される火炎旋回流のより下方に、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出により形成される空気旋回流が形成される。
【0069】
炉底空気ノズル30からの燃焼用空気は、下方領域に噴出されることから、燃焼用空気が火炉11の中心部に到達した後に上昇流により上昇させられるまでに時間を要し、このときの移動距離が長くなる。そのため、燃焼バーナ21,22,23の噴出方向が下向きになって火炎旋回流が強くなったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したりしても、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部までに届きやすくなる。すると、火炉11における下部中央部で酸素不足が抑制され、炉底に残存している灰中の未燃分が適正に燃焼し、煙道13に流れる未燃分が減少する。
【0070】
このように第2実施形態のボイラにあっては、中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉11と、固体燃料と燃焼用空気とを混合した微粉炭混合気を火炉11内に噴出する燃焼バーナ21,22,23と、燃焼バーナ21,22,23より鉛直方向の下方で燃焼用空気を火炉11内に噴出する炉底空気ノズル30と、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整可能な鉛直方向調整装置(空気噴出方向調整装置)52とを設けている。
【0071】
従って、ボイラ10の運転条件が変わると、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気が燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の下方に十分に供給されないおそれがある。このとき、鉛直方向調整装置52は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整する。そのため、炉底空気ノズル30は、火炉11における微粉炭混合気の噴出位置より下方に燃焼に必要な燃焼用空気を適切に供給することができる。その結果、火炉11内での燃料の燃焼を促進して未燃分の発生を抑制することができる。
【0072】
第2実施形態のボイラでは、鉛直方向調整装置52は、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を燃焼バーナ21,22,23による微粉炭混合気の噴出方向とは別に鉛直方向に調整可能としている。従って、微粉炭混合気の噴出方向に拘わらず、燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整することができ、火炉11の燃焼状態が変動しても、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気を微粉炭混合気の噴出位置より下方で、且つ、火炉11の中央部に到達させることができる。
【0073】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態のボイラを表す概略構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
第3実施形態において、図9に示すように、ボイラ10は、火炉11と燃焼装置12と煙道13を有している。燃焼装置12は、火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)の下部に設けられる複数の燃焼バーナ21,22,23により構成されている。また、火炉11は、燃焼バーナ21,22,23の装着位置より下方に位置して炉底空気ノズル30が設けられている。また、火炉11は、燃焼バーナ21,22,23の装着位置より上方に位置して追加空気ノズル34が設けられている。
【0075】
そして、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を水平方向に調整可能な水平方向調整装置51と、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を鉛直方向に調整可能な鉛直方向調整装置52が設けられている。
【0076】
また、火炉11は、下端部にホッパ61が設けられており、微粉炭の灰や未燃分を貯留可能となっている。火炉11は、このホッパ61の底部に落下した微粉炭の未燃分量を計測する第1未燃分量計測装置62が設けられている。火炉11は、煙道13における節炭器47より排ガスの流れ方向の下流側に排ガス中の微粉炭の未燃分量を計測する第2未燃分量計測装置63が設けられている。この各未燃分量計測装置62,63は、例えば、マイクロウェーブ装置、燃焼−CO検出器、レーザ誘起装置などを用いればよく、また、これらの装置以外のものを用いてもよい。第1未燃分量計測装置62及び第2未燃分量計測装置63は、未燃分分析装置64が接続され、未燃分分析装置64は、各未燃分量計測装置62,63の検出結果に基づいて火炉11と煙道13における未燃分量の増減傾向を分析する。
【0077】
制御装置65は、水平方向調整装置51及び鉛直方向調整装置52と未燃分分析装置64に接続されている。この制御装置65は、未燃分分析装置64の分析結果に応じて水平方向調整装置51及び鉛直方向調整装置52の作動を制御(フィードバック制御)することができる。具体的に、制御装置65は、微粉炭の未燃分量が増加すると、水平方向調整装置51及び鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30の噴出方向を調整する。
【0078】
そのため、燃焼バーナ21,22,23は、微粉炭混合気と燃焼用空気を火炉11に吹き込み、このときに着火することで火炎旋回流を形成する。また、炉底空気ノズル30は、燃焼用空気を火炉11における火炎旋回流より下方に吹き込む。すると、微粉炭混合気と燃焼用空気とが燃焼して火炎旋回流が生じ、燃焼ガス(排ガス)が旋回しながら上昇する。
【0079】
このとき、ボイラ10の運転条件が変更されると、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の噴出方向が変わったり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が変動したりする。そのため、第1未燃分量計測装置62は、火炉11のホッパ61に落下した微粉炭の未燃分量を計測し、未燃分分析装置64に出力する。また、第2未燃分量計測装置63は、煙道13を流れる排ガス中の微粉炭の未燃分量を計測し、未燃分分析装置64に出力する。未燃分分析装置64は、各未燃分量計測装置62,63の検出結果に基づいて微粉炭の未燃分量の増減傾向を分析して制御装置65に出力する。制御装置65は、未燃分分析装置64の分析結果に応じてホッパ61に落下した微粉炭の未燃分量と煙道13を流れる排ガス中の微粉炭の未燃分量が減少するように、水平方向調整装置51及び鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30の噴出方向を調整する。
【0080】
即ち、制御装置65は、微粉炭の未燃分量が増加すると、水平方向調整装置51により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の中心側に変更する。すると、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気と燃焼用空気とにより形成される火炎旋回流の下方に、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気により形成される小径の空気旋回流が形成され、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の貫通力が強くなる。そのため、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部までに届きやすくなり、火炉11における下部中央部で酸素不足が抑制され、炉底に残存している灰中の未燃分が適正に燃焼し、煙道13に流れる未燃分が減少する。
【0081】
また、制御装置65は、微粉炭の未燃分量が増加すると、鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を火炉11の下方側に変更する。すると、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気と燃焼用空気とにより形成される火炎旋回流のより下方に、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出により形成される空気旋回流が形成され、燃焼用空気が火炉11の中心部に到達した後に上昇流により上昇させられるまでに時間を要し、このときの移動距離が長くなる。そのため、炉底空気ノズル30から噴出される燃焼用空気が火炉11の中央部までに届きやすくなり、火炉11における下部中央部で酸素不足が抑制され、炉底に残存している灰中の未燃分が適正に燃焼し、煙道13に流れる未燃分が減少する。
【0082】
この場合、制御装置65は、微粉炭の未燃分量が増加したとき、水平方向調整装置51または鉛直方向調整装置52を作動するが、水平方向調整装置51と鉛直方向調整装置52の両方を作動してもよい。
【0083】
このように第3実施形態のボイラにあっては、火炉11の底部に落下した微粉炭の未燃分量を計測する第1未燃分量計測装置62と、火炉11から煙道13に流れる排ガスの未燃分量を計測する第2未燃分量計測装置63と、各未燃分量計測装置62,63の計測結果に応じて水平方向調整装置51と鉛直方向調整装置52を作動する制御装置65とを設けている。
【0084】
従って、制御装置65は、火炉11の底部に落下した微粉炭の未燃分量や煙道13に流れる排ガスの未燃分量に応じて水平方向調整装置51や鉛直方向調整装置52により炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出方向を調整することとなり、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気を微粉炭混合気の噴出位置より下方で、且つ、火炉11の中央部に到達させることができ、石炭の未燃分の発生を抑制することができる。
【0085】
なお、上述した第3実施形態では、制御装置65が水平方向調整装置51や鉛直方向調整装置52を調整可能としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、火炉11の底部に落下した微粉炭の未燃分量や煙道13に流れる排ガスの未燃分量に応じて、作業者が手動により水平方向調整装置51や鉛直方向調整装置52を調整してもよい。
【0086】
また、上述した実施形態では、燃焼バーナ21,22,23からの微粉炭混合気の噴出方向が下方側に調整されたとき、または、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気の噴出量が減少したとき、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を変更するように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、炉底空気ノズル30からの燃焼用空気が火炉11の中心部側に到達し難いボイラ10の運転状態で、炉底空気ノズル30による燃焼用空気の噴出方向を変更すると有効的である。
【0087】
また、上述した実施形態では、火炉11に対して3段の燃焼バーナ21,22,23を設定したが、2段でも、4段以上であってもよい。また、粉砕機27,28,29の個数も実施形態に限定されるものではない。
【0088】
また、上述した実施形態では、本発明のボイラを石炭焚きボイラとしたが、固体燃料としては、石炭以外に、バイオマスや石油コークス、石油残渣などを使用するボイラであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 ボイラ
11 火炉
12 燃焼装置
13 煙道
21,22,23 燃焼バーナ
24,25,26 微粉炭供給管
27,28,29 粉砕機
30 炉底空気ノズル
31 風箱
32 空気ダクト
34 追加空気ノズル
41,42,43 過熱器(熱交換器)
44,45 再熱器(熱交換器)
46,47 節炭器(熱交換器)
51 水平方向調整装置
52 鉛直方向調整装置
61 ホッパ
62 第1未燃分量計測装置
63 第2未燃分量計測装置
64 未燃分分析装置
65 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9