特許第6596355号(P6596355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596355
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】液圧マスタシリンダのリザーバタンク
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/26 20060101AFI20191010BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20191010BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B60T11/26 Z
   B60T17/00 A
   B62L3/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-29852(P2016-29852)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-144952(P2017-144952A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】上原 和真
(72)【発明者】
【氏名】酒井 剛
(72)【発明者】
【氏名】長原 純一
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−110465(JP,U)
【文献】 特開2004−051031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/26
B60T 17/00
B62L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧マスタシリンダのシリンダ孔の上部に配置され、ポートを介して前記シリンダ孔に連通する水平方向の断面が長方形状のリザーバ本体と、該リザーバ本体の上部開口縁にダイヤフラムを介して被着されるキャップとを備え、
前記ダイヤフラムは、前記リザーバ本体の上部開口縁の形状に応じた長方形状の外形を有し、前記上部開口縁に載置される外端のフランジ部と、該フランジ部の内側に設けられる蛇腹部と、該蛇腹部の下端内側に延設され、作動液の液面の変化に追従する平面部とを備えた液圧マスタシリンダのリザーバタンクにおいて、
前記蛇腹部は、凹状部と凸状部とが連続して設けられる凹凸状に形成され、前記凸状部は、前記フランジ部の長辺の内側に形成される長辺部と、前記フランジ部の短辺の内側に形成される短辺部と、該短辺部と前記長辺部とが交わる角部とを備え、
前記長辺部は、外側面と内側面とが前記フランジ部の長辺と平行にそれぞれ形成され、
前記角部は、外側面が前記長辺部の延長線方向に突出して形成され、
前記短辺部は、内側面が前記フランジ部の短辺と平行に形成され、外側面が、前記角部から中央部に向けて、漸次、内側面に近付く湾曲状に形成されることを特徴とする液圧マスタシリンダのリザーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車や自動三・四輪車の液圧マスタシリンダを作動させる作動液を貯留するリザーバタンクに係り、詳しくは、リザーバタンクに用いられるダイヤフラムの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧マスタシリンダのリザーバタンクとして、水平方向の断面が長方形状に形成されたものがあり、このリザーバタンクに用いられるダイヤフラムは、リザーバタンクの形状に応じた長方形状の外形を有し、貯液室を備えたリザーバ本体の上部開口縁に載置される外端のフランジ部と、該フランジ部の内側に設けられる蛇腹部と、該蛇腹部中央の下端内側に延設され、作動液の液面の変化に追従する平面部とを備えていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−80748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に示されるダイヤフラムでは、蛇腹部が長方形状に形成されており、作動液充填時に油圧経路を真空引きする際に、ダイヤフラムがリザーバタンクの底部側に引っ張られると、蛇腹部の角部が伸びて座屈して折り皺が発生することがあった。さらに、作動液充填後に蛇腹部が元の形状に復帰する際に、座屈点の飛び移り現象が発生し、いわゆる飛び移り座屈を起こし、いずれかの角部に座屈による変形が集中する虞があった。このため、作動液充填後に蛇腹部が元の形状に復帰し難くなり、作動液充填後にダイヤフラムの形状を作業者が手で復帰させなければならないことがあった。
【0005】
そこで本発明は、油圧経路を真空引きしながら作動液を充填した後に、ダイヤフラムを元の形状に自動的に復帰させることができる液圧マスタシリンダのリザーバタンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液圧マスタシリンダのリザーバタンクは、液圧マスタシリンダのシリンダ孔の上部に配置され、ポートを介して前記シリンダ孔に連通する水平方向の断面が長方形状のリザーバ本体と、該リザーバ本体の上部開口縁にダイヤフラムを介して被着されるキャップとを備え、前記ダイヤフラムは、前記リザーバ本体の上部開口縁の形状に応じた長方形状の外形を有し、前記上部開口縁に載置される外端のフランジ部と、該フランジ部の内側に設けられる蛇腹部と、該蛇腹部の下端内側に延設され、作動液の液面の変化に追従する平面部とを備えた液圧マスタシリンダのリザーバタンクにおいて、前記蛇腹部は、凹状部と凸状部とが連続して設けられる凹凸状に形成され、前記凸状部は、前記フランジ部の長辺の内側に形成される長辺部と、前記フランジ部の短辺の内側に形成される短辺部と、該短辺部と前記長辺部とが交わる角部とを備え、前記長辺部は、外側面と内側面とが前記フランジ部の長辺と平行にそれぞれ形成され、前記角部は、外側面が前記長辺部の延長線方向に突出して形成され、前記短辺部は、内側面が前記フランジ部の短辺と平行に形成され、外側面が、前記角部から中央部に向けて、漸次、内側面に近付く湾曲状に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液圧マスタシリンダのリザーバタンクによれば、ダイヤフラムは、蛇腹部の剛性が角部では低く、角部から短辺部の中央部に向けて徐々に高くなることから、角部では変形し易く、角部から短辺部の中央部に向けて徐々に変形し難い構造となっている。これにより、作動液充填時に油圧経路を真空引きする際に、ダイヤフラムがリザーバタンクの底部側に引っ張られ、蛇腹部の角部が伸びて座屈して折り皺が発生することがあっても、作動液充填後に蛇腹部が元の形状に復帰する際に、剛性が高い短辺部の中央部側によって、座屈点の飛び移り現象の発生を抑制しながら、剛性の低い角部側から蛇腹部が元の形状に復帰することから、いずれかの角部に座屈による変形が集中することを防止でき、作動液充填後にダイヤフラムを元の形状に自動的に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図2のI−I断面図である。
図2】本発明の一形態例を示す液圧マスタシリンダ装置の平面図である。
図3】同じくダイヤフラムの平面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5】本発明の第1形態例を示すダイヤフラムの平面側斜視図である。
図6】同じくダイヤフラムの背面側斜視図である。
図7】油圧経路を真空引きした際のダイヤフラムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至図7は本発明の液圧マスタシリンダのリザーバタンクの一形態例を示すもので、バーハンドル車両の車体前部で前輪を操向するハンドルバー1の右側には、液圧マスタシリンダ2と操作レバー3とを組み合わせたフロントブレーキ用の液圧マスタシリンダ装置4が取り付けられている。液圧マスタシリンダ2は、ハンドルバー1に略沿って配置されるシリンダボディ2aの上部にリザーバタンク5が一体に取り付けられ、シリンダボディ2aの一端を開口して設けられた有底のシリンダ孔2bには、ピストン2cが液密且つ移動可能に内挿されており、操作レバー3の握り操作によってピストン2cをシリンダ孔2bの底部方向へ押動し、シリンダ孔2bの底部に設けられた液圧室6に液圧を発生させるようになっている。
【0010】
リザーバタンク5は、作動液を貯留する貯液室5aを備えたリザーバ本体5bと、該リザーバ本体5bの上部開口縁5cを覆うキャップ7との間に、ダイヤフラムプレート8とダイヤフラム9とを上下に重合し、キャップ7とダイヤフラムプレート8とダイヤフラム9とに挿通した2本の止めねじ10をリザーバ本体5bの上面に螺着して、これらをリザーバ本体5bに一体に取り付けている。
【0011】
シリンダボディ2aとリザーバ本体5bとは、鋳鉄やアルミニウム合金等によって一体に成形されており、シリンダ孔2bと貯液室5aとをリリーフポート11及びサプライポート12(本発明のポート)とで連通して、貯液室5a内の作動液をシリンダ孔2bへ随時補給したり、シリンダ孔2b内の作動液の一部を貯液室5aへ還流させるようにしている。
【0012】
リザーバ本体5bは、水平方向の断面がハンドルバー1の軸方向に長い四角形状に形成され、短辺側の内壁中央部に内側に向けて突出するボス部5dがそれぞれ設けられ、各ボス部5dに、キャップ取り付け用の雌ねじ孔5eが上面に開口してそれぞれ設けられている。
【0013】
キャップ7と、ダイヤフラムプレート8と、ダイヤフラム9とは、リザーバ本体5bの上部開口縁5cと略同一形状となるハンドルバー1の軸方向に長い平面視四角形状に形成されている。キャップ7は、リザーバ本体5bの各雌ねじ孔5eと同一位置に、テーパ状のざくり面付きのねじ挿通孔7aが穿設されている。ダイヤフラムプレート8は、中央に通気孔8aを備え、外縁部8bのリザーバ本体5bに形成された雌ねじ孔5eに対応する位置に、止めねじ10を挿通させるねじ挿通孔8cがそれぞれ形成されている。
【0014】
ダイヤフラム9は、リザーバ本体5bの上部開口縁5cの形状に応じた長方形状の外形を有し、上部開口縁5cに載置される外端のフランジ部9aと、該フランジ部9aの内側に設けられる蛇腹部9bと、該蛇腹部9bの下端内側に設けられ、作動液の液面の変化に追従する平面部9cとを備え、フランジ部9aのリザーバ本体5bの各雌ねじ孔5eと対応する位置には、ねじ挿通孔9dがそれぞれ穿設されている。
【0015】
蛇腹部9bは、凹状部9eと凸状部9fとが連続して設けられる凹凸状に形成され、外側に凹状部9eが、内側に凸状部9fがそれぞれ設けられている。凸状部9fは、フランジ部9aの長辺の内側に形成される長辺部9gと、フランジ部9aの短辺の内側に形成される短辺部9hと、短辺部9hと長辺部9gとが交わる角部9iとを備えている。長辺部9gは、外側面9jと内側面9kとがフランジ部9aの長辺と平行にそれぞれ形成され、角部9iは、外側面9jが長辺部9gの延長線方向にそれぞれ突出して形成されている。また、短辺部9hは、内側面9kがフランジ部9aの短辺と平行に形成され、外側面9jが、角部9iから中央部に向けて、漸次、内側面9kに近付く湾曲状に形成されている。これにより、蛇腹部9bの剛性は角部9iでは低く、角部9iから短辺部9hの中央部に向けて徐々に高くなることから、角部9iでは変形し易く、角部9iから短辺部9hの中央部に向けて徐々に変形し難く形成されている。
【0016】
キャップ7とダイヤフラムプレート8とダイヤフラム9とは、これらを上下に重ね合わせ、キャップ7のねじ挿通孔7aと、ダイヤフラムプレート8のねじ挿通孔8bと、ダイヤフラム9のねじ挿通孔9dとを同軸上にセットし、止めねじ10を上方から挿通し、止めねじ10の雄ねじ部を雌ねじ孔5eに螺合させ、キャップ7のざくり面に、止めねじ10の頭部を当接させることにより、キャップ7とダイヤフラムプレート8とダイヤフラム9とがリザーバ本体5bの上部開口縁5cに一体に取り付けられる。
【0017】
このように形成された液圧マスタシリンダ2は、作動液充填時に油圧経路を真空引きする際に、ダイヤフラム9がリザーバタンク5の底部側に引っ張られ蛇腹部9bが伸びて座屈して折り皺が発生することがあっても、作動液充填後に蛇腹部9bが元の形状に復帰する際に、剛性が高い短辺部9hの中央部側によって、座屈点の飛び移り現象の発生を抑制でき、剛性の低い角部側から蛇腹部が元の形状に復帰できる。これにより、いずれかの角部9iに座屈による変形が集中することを防止でき、作動液充填後に蛇腹部9bは元の形状に良好に復帰し、ダイヤフラム9を自動的に元の形状に復帰させることができることから、作動液充填時の作業性の向上を図ることができる。
【0018】
なお、本発明は上述の形態例に限らず、液圧マスタシリンダは、タンデムタイプのものでも良く、シリンダボディの上部に別体のリザーバタンクを設けたものや、リザーバ本体が樹脂で形成されてものでも良い。また、リザーバタンクにダイヤフラムプレートを備えていないものでも良い。
【符号の説明】
【0019】
1…ハンドルバー、2…液圧マスタシリンダ、2a…シリンダボディ、2b…シリンダ孔、2c…ピストン、3…操作レバー、4…液圧マスタシリンダ装置、5…リザーバタンク、5a…貯液室、5b…リザーバ本体、5c…上部開口縁、5d…ボス部、5e…雌ねじ孔、6…液圧室、7…キャップ、7a…ネジ挿通孔、8…ダイヤフラムプレート、8a…通気孔、8b…外縁部、8c…ねじ挿通孔、9…ダイヤフラム、9a…フランジ部、9b…蛇腹部、9c…平面部、9d…ねじ挿通孔、9e…凹状部、9f…凸状部、9g…長辺部、9h…短辺部、9i…角部、9j…外側面、9k…内側面、10…止めねじ、11…リリーフポート、12…サプライポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7