【実施例】
【0029】
1.硬質粒子対応背圧ユニットを備えた微粒化装置の構成
図1は本発明の微粒化装置用硬質粒子対応背圧ユニットの一実施例を備えた微粒化装置の構成を示す説明図である。
図2は
図1の要部の構成を示す説明図である。
図3は3段の背圧ユニットとした別の要部の構成を示す説明図である。
【0030】
図1に示す通り、本実施例の微粒化装置用硬質粒子対応背圧ユニットを備えた微粒化装置10は、主な機器として、原料を加圧する2基の増圧機12と、この増圧機12で加圧された原料の高圧噴流を100〜245MPaの噴射圧で噴射させて微粒化する微粒化チャンバー20と、この微粒化チャンバー20の排出口から排出される原料の背圧で背圧ノズルから衝突室31に支承された硬質体に高圧噴流を衝突させる少なくとも一つの背圧ユニット30と、背圧ユニット30を経た原料の熱を回収する熱交換器19とを備える。
【0031】
個々の機器は、流路で連通されている。具体的には、原料を投入するための原料供給口11から増圧機12の供給口へ原料を供給する増圧機供給流路15と、増圧機12のハウジング内部から微粒化チャンバー20内部の微粒化ノズルまで加圧された原料を供給する微粒化ノズル供給流路16と、微粒化チャンバー20の微粒化ノズルから噴射された原料の背圧状態を維持させて前記背圧ユニット30の背圧ノズルまで原料を供給する背圧ノズル供給流路17と、背圧ユニット30内部の硬質体に衝突された原料の背圧状態を維持させて下流に供給する背圧ユニット後続流路18とを備える。
【0032】
図2に示す通り、微粒化チャンバー20は、内部の衝突室21内に微粒化硬質体23が支承され、この硬質体23に、増圧機12で加圧された原料を微粒化ノズル22で高圧の噴射圧で噴射させて衝突させる。具体的には、微粒化ノズル22のノズル直径は0.1〜0.5mmであり、100〜245MPaの噴射圧で噴射させる。
【0033】
尚、増圧機12は2基の増圧機12のシリンダ内を摺動するプランジャを半周期ずらして駆動することにより、2組のチェック弁13,14によって、常に微粒化ノズル供給流路16に高圧力で原料が加圧される。また、微粒化チャンバー20の直前の微粒化ノズル供給流路16には高圧用の圧力センサー24が装着され、背圧ユニット30の直前の背圧ノズル供給流路17には背圧用の圧力センサー34が装着されている。
【0034】
本実施例の微粒化装置10では、原料を微粒化する場合には、増圧機12のプランジャをシリンダ内を摺動可能に設置する。2基の増圧機12のシリンダ内を摺動するプランジャを半周期ずらして駆動することにより、チェック弁13,14の開閉によって、原料が原料供給口11から供給され、増圧機12にてMAX245MPaに加圧され、微粒化チャンバー20にて微粒化される。その後、背圧ユニット30にて微粒化が促進され、熱交換器19を通りより排出される。
【0035】
背圧ユニット30は、微粒化チャンバー20と同様に、内部の衝突室31内にセラミックボール製の背圧硬質体33が支承され、この背圧硬質体33に微粒化チャンバー20の排出口から排出される原料の背圧で背圧ノズルから噴射させて衝突させる。具体的には、背圧ノズル32のノズル直径は0.16〜1.2mmであり、おおよそ8〜20MPaの噴射圧で噴射させる。背圧ユニット30は、1段だけでなく、2段、3段と連設されてもよい。
図3に示す通り、別の実施例では、背圧ユニット30を3段連設している。
【0036】
2.乳化、粉砕、分散試験を実施
図2及び
図3に示した硬質粒子対応背圧ユニットを備えた微粒化装置を用いて、3種類原料の乳化、粉砕、分散試験を実施した。背圧をかける形態を、従来のバルブタイプ、ダイヤモンドオリフィス+セラミックボールタイプの硬質粒子対応背圧ユニットで比較した。評価は、それぞれの原料の粒度分布のメジアン径で行った。尚、粒度分布計は、LA−910Wレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製)を用いた。
【0037】
2-1.流動パラフィンの乳化について
原料は、流動パラフィン(分散剤ドデシル硫酸ナトリウムSDS3wt%)であり、溶媒はイオン交換水とした。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す通り、本実施例の硬質粒子対応背圧ユニットを用いることで、従来バルブ方式よりも乳化性能が良くなった(液滴径低下)。背圧後のセラミックボール衝突衝撃が効果として現れた。硬質粒子対応背圧ユニットの1段よりも3段の方が乳化性能が良く、3段背圧により、乳化に悪い影響を及ぼす気泡発生に対して、その抑制に効果があることが示された。
【0040】
2-2.炭酸カルシウム粒子の粉砕について
用いた原料は、炭酸カルシウム 5w%であり、溶媒はイオン交換水とした。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示す通り、炭酸カルシウムには従来の背圧用バルブは使えなかったが、本機構の硬質粒子対応背圧ユニット1段を用いることで、背圧無と比較して粒子径が小さくなった。また、炭酸カルシウムは硬質粒子のために従来の背圧用バルブは使えなかった。本機構の硬質粒子対応背圧ユニット1段を用いることで、従来の背圧無と比較して粒子径が小さくなった。
【0043】
2-3.カーボンナノチューブ繊維の分散について
用いた原料は、カーボンナノチューブ(CNT)1w%(分散剤添加)であり、溶媒はイオン交換水とした。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3に示す通り、CNTは繊維状のため、従来の背圧用バルブは使えなかったが、本機構の硬質粒子対応背圧ユニット1段を用いることで、背圧無と比較して粒子径が小さくなった。また、硬質粒子対応背圧ユニットの1段と3段では1段の方が粒子径が小さくなった。3段にすると、噴流の速度が抑制されるため、剪断力と衝突力が小さくなるためと考えられた。
【0046】
尚、本発明における微粒化装置では、Oリングシールを用いる必要がないため、液体が溶剤の場合や、医薬品対応装置に使用しやすく、121℃の蒸気滅菌対応も可能となる利点も奏する。