(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアと、該コアに巻き回され、導体を絶縁膜で覆われてなる導線と、該コアに設けられ、該導線と接続される電極とを有するコイル部品を製造するコイル部品の製造装置であって、
前記コアを支持するコア支持部と、
前記コアに対して前記導線を繰り出すノズルと、
前記導線にレーザ光を照射して前記導線の絶縁膜の少なくとも一部を剥離するレーザ発振器と、
前記導線におけるレーザ光が照射される被照射部分と前記レーザ発振器との間に配置され、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を透過させるレーザ保護ガラスと、
前記レーザ保護ガラスにおける前記導線側の一面に気流を発生させ、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を吸引して、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を除去する粉塵除去機構と
を備え、
前記レーザ保護ガラスは、前記導線の被照射部分の下側に配置され、前記レーザ発振器は、前記レーザ保護ガラスの下側に配置され、
前記レーザ発振器のレーザ光の出射孔は、前記導線の被照射部分の直下と重ならずにずれた位置にある、コイル部品の製造装置。
前記粉塵除去機構は、前記レーザ保護ガラスの前記一面にエアを吹き付けるブロワと、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を吸引するバキュームとを有する、請求項1に記載のコイル部品の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のコイル部品の製造装置を実際に使用すると、次の問題があることを見出した。
【0005】
導線の絶縁膜にレーザ光を照射して絶縁膜を剥離する際に、粉塵が発生する。そして、この粉塵がレーザ発振器内に入り込んで、レーザ発振器が故障するおそれがある。レーザ発振器が故障した場合、レーザ発振器のメンテナンスのコストが大きくなる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、粉塵によるレーザ発振器の故障を防止できるコイル部品の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のコイル部品の製造装置は、
コアと、該コアに巻き回され、導体を絶縁膜で覆われてなる導線と、該コアに設けられ、該導線と接続される電極とを有するコイル部品を製造するコイル部品の製造装置であって、
前記コアを支持するコア支持部と、
前記コアに対して前記導線を繰り出すノズルと、
前記導線にレーザ光を照射して前記導線の絶縁膜の少なくとも一部を剥離するレーザ発振器と、
前記導線におけるレーザ光が照射される被照射部分と前記レーザ発振器との間に配置され、前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を透過させるレーザ保護ガラスと、
前記レーザ保護ガラスにおける前記導線側の一面に気流を発生させ、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を吸引して、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を除去する粉塵除去機構と
を備える。
【0008】
本発明のコイル部品の製造装置によれば、レーザ保護ガラスは、導線の被照射部分とレーザ発振器との間に配置され、レーザ発振器から出射されたレーザ光を透過させる。これにより、レーザ光の照射により絶縁膜を剥離する際に粉塵が発生するが、レーザ保護ガラスが、粉塵のレーザ発振器への進入を防止する。したがって、レーザ発振器が粉塵により故障することを防止できる。
【0009】
また、粉塵除去機構は、レーザ保護ガラスの一面に気流を発生させ、レーザ保護ガラスの一面の粉塵を吸引して、レーザ保護ガラスの一面の粉塵を除去する。これにより、粉塵がレーザ保護ガラスの一面に付着することを防止する。したがって、粉塵がレーザ光の光路を遮らない。
【0010】
したがって、粉塵によるレーザ発振器の故障を防止し、さらに、粉塵によるレーザ光の強度低下を防止できる。
【0011】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、前記レーザ保護ガラスは、前記導線の被照射部分の下側に配置され、前記レーザ発振器は、前記レーザ保護ガラスの下側に配置されている。
【0012】
前記実施形態によれば、レーザ保護ガラスは、導線の被照射部分の下側に配置され、レーザ発振器は、レーザ保護ガラスの下側に配置されている。これにより、レーザ発振器から出射されたレーザ光は、レーザ保護ガラスを下側から通過して、導線を下側から照射する。このため、粉塵(特に、固体の状態の粉塵)が、重力の影響により、レーザ保護ガラスの一面に落下しても、粉塵除去機構により、落下した粉塵を有効に除去できる。
【0013】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、前記レーザ保護ガラスは、前記導線の被照射部分の上側に配置され、前記レーザ発振器は、前記レーザ保護ガラスの上側に配置されている。
【0014】
前記実施形態によれば、レーザ保護ガラスは、導線の被照射部分の上側に配置され、レーザ発振器は、レーザ保護ガラスの上側に配置されている。これにより、レーザ発振器から出射されたレーザ光は、レーザ保護ガラスを上側から通過して、導線を上側から照射する。このため、粉塵が、上昇気流の影響により、レーザ保護ガラスに到達するまで上昇しても、粉塵除去機構により、上昇した粉塵を有効に除去できる。
【0015】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、
前記レーザ発振器は、第1レーザ発振器と第2レーザ発振器とを有し、
前記第1レーザ発振器と前記第2レーザ発振器とは、前記導線の被照射部分に対して互いに対向する位置に配置されている。
【0016】
ここで、対向する位置とは、第1レーザ発振器と第2レーザ発振器のレーザ光の光軸が、同軸上にあってもよいし、同軸上になくてもよいことを意味する。レーザ光の光軸同士が平行、かつ、所定距離ずれていてもよい。レーザ光の光軸同士が平行でない角度(179°等の180°以外の角度)で交わっていてもよい。
【0017】
前記実施形態によれば、第1レーザ発振器と第2レーザ発振器とは、導線の被照射部分に対して互いに対向する位置に配置されているので、第1レーザ発振器および第2レーザ発振器からレーザ光を照射して、導線の絶縁膜の全周を剥離することができる。
【0018】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、前記レーザ発振器のレーザ光の出射孔は、前記導線の被照射部分の直下と重ならずにずれた位置にある。
【0019】
前記実施形態によれば、レーザ発振器のレーザ光の出射孔は、導線の被照射部分の直下と重ならずにずれた位置にあるので、レーザ発振器のレーザ光を導線の被照射部分の斜め下方から照射することができる。これにより、粉塵がレーザ発振器の出射孔の直上に落下せず、レーザ光の強度低下を防止できる。
【0020】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、
前記コア支持部を上側に取り付けるベース板を有し、
前記レーザ保護ガラスおよび前記レーザ発振器は、前記ベース板の下側に配置され、
前記ベース板は、前記レーザ発振器から出射されるレーザ光が通過する貫通孔と、前記貫通孔の上側の開口端を囲む壁部とを有する。
【0021】
前記実施形態によれば、ベース板は、レーザ発振器から出射されるレーザ光が通過する貫通孔と、貫通孔の上側の開口端を囲む壁部とを有する。これにより、粉塵がベース板の上面に堆積しても、壁部により、堆積した粉塵がベース板の貫通孔に落下することを防止できる。
【0022】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、前記壁部の上部が上下方向からみて前記貫通孔に重なって、前記壁部の上部の開口幅が前記貫通孔の上側の開口端の開口幅よりも狭くなる。
【0023】
前記実施形態によれば、壁部の上部が上下方向からみて貫通孔に重なって、壁部の上部の開口幅が貫通孔の上側の開口端の開口幅よりも狭くなる。これにより、壁部が、粉塵のベース板の貫通孔への落下を一層防止できる。
【0024】
また、コイル部品の製造装置の一実施形態では、前記粉塵除去機構は、前記レーザ保護ガラスの前記一面にエアを吹き付けるブロワと、前記レーザ保護ガラスの前記一面の粉塵を吸引するバキュームとを有する。
【0025】
前記実施形態によれば、粉塵除去機構は、ブロワとバキュームとを有する。これにより、粉塵除去機構を簡単な構成とできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のコイル部品の製造装置によれば、レーザ保護ガラスは、導線の被照射部分とレーザ発振器との間に配置され、レーザ発振器から出射されたレーザ光を透過させるので、粉塵によるレーザ発振器の故障を防止できる。また、粉塵除去機構は、レーザ保護ガラスの一面に気流を発生させ、レーザ保護ガラスの一面の粉塵を吸引して、レーザ保護ガラスの一面の粉塵を除去するので、粉塵によるレーザ光の強度低下を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明のコイル部品の製造装置の第1実施形態を示す簡略構成図である。
図2は、コイル部品の製造装置の一部を示す簡略斜視図である。
図1と
図2に示すように、コイル部品の製造装置1は、コイル部品のコア10を支持するコア支持部60と、コア10に対して第1導線21を繰り出す第1ノズル19と、コア10に対して第2導線22を繰り出す第2ノズル20とを有する。なお、
図1では、第2ノズル20および第2導線22を省略して描いている。
【0030】
コイル部品の製造装置1は、さらに、第1、第2導線21,22にレーザ光Lを照射して第1、第2導線21,22の絶縁膜を剥離する第1レーザ発振器31と、第1レーザ発振器31から出射されたレーザ光Lを透過させる第1レーザ保護ガラス41と、第1レーザ保護ガラス41上の粉塵を除去する第1粉塵除去機構51とを有する。
【0031】
コイル部品の製造装置1は、さらに、第1、第2導線21,22にレーザ光Lを照射して第1、第2導線21,22の絶縁膜を剥離する第2レーザ発振器32と、第2レーザ発振器32から出射されたレーザ光Lを透過させる第2レーザ保護ガラス42と、第2レーザ保護ガラス42上の粉塵を除去する第2粉塵除去機構52とを有する。
【0032】
コイル部品の製造装置1は、コア10の巻芯部13の軸心Aを回転軸としてコア10を回転させることにより第1、第2導線21,22をコア10の巻芯部13の略全体にわたって巻き回して、バイファイラ構造のコイル部品を製造する。このコイル部品は、例えば、コモンモードチョークコイルである。
【0033】
コア10は、巻芯部13と、巻芯部13の一端に設けられた第1鍔部11と、巻芯部13の他端に設けられた第2鍔部12とを有する。コア10の材料としては、例えば、アルミナ(非磁性体)や、Ni−Zn系フェライト(磁性体、絶縁体)や、樹脂などの材料を用いる。
【0034】
巻芯部13の形状は、例えば、直方体である。第1鍔部11の形状と第2鍔部12の形状は、例えば、矩形の平板である。第1鍔部11の底面および第2鍔部12の底面には、それぞれ、第1電極14および第2電極15が設けられている。第1、第2電極14,15の材料は、例えば、Ag等である。第1導線21の先端は、コア10の第1鍔部11の第1電極14に接合される。第2導線22の先端は、コア10の第1鍔部11の第2電極15に接合される。コア10は、第1鍔部11と第2鍔部12とを結ぶ軸心A方向がY方向に一致するように、XY面上に設置される。Z方向は、上下方向に一致する。
【0035】
第1,第2導線21,22は巻芯部13にコイル状に巻き回され、導体を絶縁膜で覆われてなる。例えば、導体は銅線から構成され、絶縁膜は耐熱性材料であるポリアミドイミド(AIW)から構成される。第1導線21は、コア10に巻き回されることで、一次側コイルを構成する。第2導線22は、コア10に巻き回されることで、二次側コイルを構成する。
【0036】
コア支持部60は、ベース板70の上側に取り付けられる。ベース板70は、支持脚75を介して水平面に設置される。コア支持部60は、コア10の一方の第1鍔部11を保持できるように構成される。また、コア支持部60は、コア支持部60に支持されたコア10の巻芯部13の軸心Aを回転軸として回転するように構成されている。第1,第2導線21,22をコア10の巻芯部13に巻回するときに、コア10をコア支持部60で支持した状態で回転することにより、コア10も巻芯部13の軸心Aを回転軸として回転し、第1、第2ノズル19,20から引き出される第1、第2導線21,22が巻芯部13に巻回される。
【0037】
また、コア支持部60にはクランプ61が設けられており、クランプ61は、ノズル18からそれぞれ引き出された第1,第2導線21,22の一端をそれぞれ狭持し、クランプ61に狭持された第1,第2導線21,22の一端は、コア支持部60に対して固定される。したがって、ノズル18を移動させているときには、第1,第2導線21,22の一端は固定されているため、第1、第2ノズル19,20の移動に伴って第1,第2導線21,22が第1、第2ノズル19,20からそれぞれ引き出される。
【0038】
第1、第2レーザ発振器31,32は、それぞれ、コア10の近傍位置に配置される第1,第2導線21,22に向けてレーザ光Lを照射して、第1,第2導線21,22の絶縁膜の少なくとも一部を剥離する。第1,第2導線21,22において、それぞれ、レーザ光Lが照射される部分を被照射部分21a,22aとする。被照射部分21a,22aについて、
図1では黒丸で示し、
図2ではハッチングで示す。
【0039】
ここで、第1、第2レーザ発振器31,32は、それぞれ、レーザ光Lを走査させながら300ミリ角の範囲を照射でき、この300ミリ角のレーザ照射範囲に第1,第2導線21,22を配置させてレーザ光Lをそれぞれ照射する。なお、1回の照射時間は約数ms程度であり、連続的に複数回照射して複数の剥離を行ったとしても全体にかかる時間は約1秒以内となる。
【0040】
レーザ光Lは、例えば、第2高調波(SHG(second harmonic generation))のレーザ光であり、このレーザの波長は約532nm程度である。そのため、耐熱性材料であるポリアミドイミドからなる各第1,第2導線21,22の絶縁膜を透過することができ、絶縁膜と各第1,第2導線21,22との界面位置で絶縁膜を最適に除去することが可能となる。
【0041】
第1レーザ発振器31と第2レーザ発振器32とは、第1導線21の被照射部分21aおよび第2導線22の被照射部分22aに対して互いに対向する位置に配置されている。ここで、対向する位置とは、第1レーザ発振器31と第2レーザ発振器32のレーザ光Lの光軸が、同軸上にあってもよいし、同軸上になくてもよいことを意味する。レーザ光Lの光軸同士が平行、かつ、所定距離ずれていてもよい。レーザ光Lの光軸同士が平行でない角度(179°等の180°以外の角度)で交わっていてもよい。
【0042】
第1レーザ発振器31は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aの下側に配置され、第2レーザ発振器32は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aの上側に配置されている。これにより、第1レーザ発振器31および第2レーザ発振器32からレーザ光Lを照射して、第1、第2導線21,22の絶縁膜の全周を剥離することができる。したがって、絶縁膜を剥離するのに必要とされる工程作業時間(タクトタイム)をより短縮することが可能となる。
【0043】
第1レーザ発振器31は、ベース板70の下側に配置されている。ベース板70は、第1レーザ発振器31から出射されるレーザ光Lが通過する貫通孔71を有する。貫通孔71は、例えば、スリット状に形成され、レーザ光Lがスリットに沿って走査できるようになっている。
【0044】
第1レーザ保護ガラス41は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aと第1レーザ発振器31との間に配置され、第1レーザ発振器31から出射されたレーザ光Lを透過させる。第1レーザ保護ガラス41は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aの下側に配置され、第1レーザ発振器31は、第1レーザ保護ガラス41の下側に配置されている。第1レーザ保護ガラス41は、ベース板70の下側に配置されている。ベース板70の貫通孔71は、上下方向、第1レーザ保護ガラス41に重なる。
【0045】
第2レーザ保護ガラス42は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aと第2レーザ発振器32との間に配置され、第2レーザ発振器32から出射されたレーザ光Lを透過させる。第2レーザ保護ガラス42は、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aの上側に配置され、第2レーザ発振器32は、第2レーザ保護ガラス42の上側に配置されている。第2レーザ保護ガラス42は、ベース板70の上側に配置されている。
【0046】
第1粉塵除去機構51は、第1レーザ保護ガラス41における導線21,22側の一面41a(この実施形態では上面)に気流を発生させ、第1レーザ保護ガラス41の一面41aの粉塵を吸引して、第1レーザ保護ガラス41の一面41aの粉塵を除去する。第1粉塵除去機構51は、第1レーザ保護ガラス41の一面41aにエアを吹き付けるブロワ55と、第1レーザ保護ガラス41の一面41aの粉塵を吸引するバキューム56とを有する。ブロワ55とバキューム56は、ブロワ55の吹出側とバキューム56の吸込側とが対向するように、第1レーザ保護ガラス41の一面41a側に配置されている。このように、第1粉塵除去機構51はブロワ55およびバキューム56から構成されているので、第1粉塵除去機構51を簡単な構成とできる。
【0047】
第2粉塵除去機構52は、第2レーザ保護ガラス42における導線21,22側の一面42a(この実施形態では下面)に気流を発生させ、第2レーザ保護ガラス42の一面42aの粉塵を吸引して、第2レーザ保護ガラス42の一面42aの粉塵を除去する。第2粉塵除去機構52は、第1粉塵除去機構51と同様に、第2レーザ保護ガラス42の一面42aにエアを吹き付けるブロワ55と、第2レーザ保護ガラス42の一面42aの粉塵を吸引するバキューム56とを有する。
【0048】
次に、コイル部品の製造方法について説明する。コイル部品の製造方法では、2本の第1、第2導線21,22を同時にコア10に対して巻き回し、第1、第2電極14,15にそれぞれ接合する。この工程について以下に詳細に説明する。
【0049】
図2に示すように、コア支持部60によってコア10の一方の第1鍔部11を掴んで固定する。ここで、コア10は、コア10の巻芯部13の軸心Aを回転軸として回転することができる。
【0050】
そして、第1、第2ノズル19,20から第1、第2導線21,22をそれぞれ引き出し、各第1、第2導線21,22の一端をクランプ61で挟持してコア支持部60に対して固定する。
【0051】
そして、第1鍔部11の第1、第2電極14,15に接合される第1、第2導線21,22の接合箇所の絶縁膜をそれぞれ全周剥離する。具体的に述べると、第1、第2導線21,22の接合箇所を、第1、第2レーザ発振器31,32のレーザ光Lの照射範囲に移動させ、第1、第2レーザ発振器31,32からレーザ光Lを照射して、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,21bの絶縁膜を全周剥離する。
【0052】
ここで、第1レーザ発振器31によりレーザ光Lを照射したときの状態を説明する。
図3に示すように、第1レーザ発振器31から出射されたレーザ光Lは、第1レーザ保護ガラス41を下側から通過して、第1導線21を下側から照射する。なお、第2導線22についても、第1導線21と同様であるため、その説明を省略する。
【0053】
レーザ光Lの照射により第1導線21の被照射部分21aの絶縁膜を剥離する際に、粉塵Fが発生する。粉塵F(特に、固体の状態の粉塵F)は、重力の影響により、ベース板70の貫通孔71を通って、第1レーザ発振器31側に落下する。
図3では、分かりやすくするために、粉塵Fの量を多く描いている。このとき、第1レーザ保護ガラス41は、粉塵Fの第1レーザ発振器31への進入を防止する。したがって、第1レーザ発振器31が粉塵Fにより故障することを防止できる。
【0054】
さらに、第1粉塵除去機構51のブロワ55は、第1レーザ保護ガラス41の一面41aにエアを吹き付け、第1粉塵除去機構51のバキューム56は、第1レーザ保護ガラス41の一面41aの粉塵Fを吸引する。これにより、粉塵Fが第1レーザ保護ガラス41の一面41aに落下しても、第1粉塵除去機構51により、落下した粉塵Fを除去できて、粉塵Fが第1レーザ保護ガラス41の一面41aに積もることを防止する。したがって、粉塵Fがレーザ光Lの光路を遮らない。
【0055】
このように、コイル部品の製造装置1は、第1レーザ保護ガラス41および第1粉塵除去機構51を有するので、粉塵Fによる第1レーザ発振器31の故障を防止し、さらに、粉塵Fによるレーザ光Lの強度低下を防止できる。
【0056】
続いて、第2レーザ発振器32によりレーザ光Lを照射したときの状態を説明する。
図4に示すように、第2レーザ発振器32から出射されたレーザ光Lは、第2レーザ保護ガラス42を上側から通過して、第1導線21を上側から照射する。なお、第2導線22についても、第1導線21と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
レーザ光Lの照射により第1導線21の被照射部分21aの絶縁膜を剥離する際に、粉塵Fが発生する。粉塵Fは、上昇気流の影響により、第2レーザ保護ガラス42に到達するまで上昇する。
図4では、分かりやすくするために、粉塵Fの量を多く描いている。このとき、第2レーザ保護ガラス42は、粉塵Fの第2レーザ発振器32への進入を防止する。したがって、第2レーザ発振器32が粉塵Fにより故障することを防止できる。
【0058】
さらに、第2粉塵除去機構52のブロワ55は、第2レーザ保護ガラス42の一面42aにエアを吹き付け、第2粉塵除去機構52のバキューム56は、第2レーザ保護ガラス42の一面42aの粉塵Fを吸引する。これにより、粉塵Fが第2レーザ保護ガラス42の一面42aに到達しても、第2粉塵除去機構52により、上昇した粉塵Fを除去できて、粉塵Fが第2レーザ保護ガラス42の一面42aに付着することを防止する。したがって、粉塵Fがレーザ光Lの光路を遮らない。
【0059】
このように、コイル部品の製造装置1は、第2レーザ保護ガラス42および第2粉塵除去機構52を有するので、粉塵Fによる第2レーザ発振器32の故障を防止し、さらに、粉塵Fによるレーザ光Lの強度低下を防止できる。
【0060】
その後、第1,第2導線21,22をコア10の巻芯部13に巻き回す。
図5に示すように、コア支持部60に支持されたコア10の巻芯部13の軸心Aを回転軸としてコア10とコア支持部60とを回転させながら、第1、第2ノズル19,20をコア10の巻芯部13の軸方向へ移動させて、巻芯部13全体にわたって第1、第2導線21,22を巻回する。そして、最終ターンの1つ前のターンの巻き回し動作が完了した時点でコア支持部60による回転動作を停止し、巻回動作を停止する。
【0061】
そして、第2鍔部12の第1、第2電極14,15に接続される第1、第2導線21,22の接続箇所の絶縁膜をそれぞれ全周剥離する。具体的に述べると、第1、第2導線21,22の接続箇所を、第1、第2レーザ発振器31,32のレーザ光Lの照射範囲に移動させ、第1、第2レーザ発振器31,32からレーザ光Lを照射して、第1、第2導線21,22の被照射部分21a,21bの絶縁膜を全周剥離する。ここで、第1、第2レーザ発振器31,32によりレーザ光Lを照射したときの状態は、上述の
図3、
図4で説明した通りである。
【0062】
その後、最終ターンの巻き動作を行う。すなわち、第1、第2導線21,22をコア10の巻芯部13に1ターンだけ巻き回す。これにより、第1、第2導線21,22の巻芯部13へのすべての巻き動作が完了する。
【0063】
そして、第1,第2導線21,22の巻き始めの剥離箇所(接続箇所)と第1鍔部11の第1,第2電極14,15とを、熱圧着やレーザ溶接によって接続し、さらに、第1,第2導線21,22の巻き終わりの剥離箇所(接続箇所)と第2鍔部12の第1,第2電極14,15とを、熱圧着やレーザ溶接によって接続する。
【0064】
最後に、図示しないカッターをコア10の第1,第2鍔部11,12近傍位置へ順に移動させて、各第1,第2導線21,22の一端(始端)部及び他端(終端)部をそれぞれ切断する。これにより、コイル部品を製造する。
【0065】
前記コイル部品の製造装置1によれば、第1、第2レーザ保護ガラス41,42を有するので、粉塵が第1、第2レーザ発振器31,32に進入することを防止する。したがって、第1、第2レーザ発振器31,32が粉塵により故障することを防止できる。
【0066】
また、第1、第2粉塵除去機構51,52を有するので、粉塵が第1、第2レーザ保護ガラス41,42の一面41a,42aに付着することを防止する。したがって、粉塵がレーザ光Lの光路を遮らない。
【0067】
したがって、粉塵による第1、第2レーザ発振器31,32の故障を防止し、さらに、粉塵によるレーザ光Lの強度低下を防止できる。
【0068】
(第2実施形態)
図6は、本発明のコイル部品の製造装置の第2実施形態を示す簡略構成図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1レーザ発振器の位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0069】
図6に示すように、第1レーザ発振器31のレーザ光Lの出射孔31aは、第1導線21の被照射部分21aの直下(矢印Z方向)と重ならずにずれた位置にある。つまり、レーザ光Lの光軸は、被照射部分21aの直下方向(矢印Z方向)に一致せず、交差する。同様に、第1レーザ発振器31の出射孔31aは、図示しないが、第2導線22の被照射部分22aの直下と重ならずにずれた位置にある。
【0070】
これにより、第1レーザ発振器31のレーザ光Lを第1、第2導線21,22の被照射部分21a,22aの斜め下方から照射することができる。したがって、粉塵が第1レーザ発振器31の出射孔31aの直上に落下せず、レーザ光Lの強度低下を防止できる。
【0071】
(第3実施形態)
図7は、本発明のコイル部品の製造装置の第3実施形態を示す簡略構成図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、ベース板の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0072】
図7に示すように、ベース板70Aは、貫通孔71の上側の開口端71aを囲む壁部72を有する。壁部72は、開口端71aの周囲を覆うように構成される。壁部72は、好ましくは、開口端71aの周囲に沿って連続的に形成されているが、開口端71aの周囲に沿って間欠的に形成されていてもよい。
【0073】
これにより、粉塵Fがベース板70Aの上面に堆積しても、壁部72により、堆積した粉塵Fがベース板70Aの貫通孔71に落下することを防止できる。
【0074】
(第4実施形態)
図8は、本発明のコイル部品の製造装置の第4実施形態を示す簡略構成図である。第4実施形態は、第3実施形態とは、ベース板の壁部の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第3実施形態と同一の符号は、第3実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0075】
図8に示すように、ベース板70Bの壁部72Bの上部は、上下方向からみて、貫通孔71に重なっている。つまり、壁部72Bの上部が、貫通孔71側に傾斜している。そして、壁部72Bの上部の開口幅H1は、貫通孔71の上側の開口端71aの開口幅H2よりも狭くなっている。
【0076】
これにより、粉塵が重力の影響により貫通孔71側に落下してきても、開口幅H1の狭い壁部72Bにより、粉塵の貫通孔71への落下を低減できる。また、粉塵がベース板70Bの上面に堆積しても、壁部72Bにより、粉塵の貫通孔71への落下を防止できる。したがって、壁部72Bにより、粉塵の貫通孔71への落下を一層防止できる。
【0077】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0078】
前記実施形態では、上下の2つのレーザ発振器を用いているが、下側の第1レーザ発振器または上側の第2レーザ発振器の何れかを用いてもよい。このとき、好ましくは、1つのレーザ発振器により、第1,第2導線の一部に向けてレーザ照射し第1,第2導線の周方向の略半分を剥離した後に、絶縁膜が剥離された側を反転させて絶縁膜が残っている側をレーザ発振器に対向させて再度レーザ照射し残っている絶縁膜を剥離して全周を剥離する。
【0079】
前記実施形態では、2つのレーザ発振器を上下に配置しているが、2つのレーザ発振器を、水平方向に配置するようにしてもよい。このとき、好ましくは、2つのレーザ発振器を、第1,第2導線の被照射部分に対して対向するように配置する。
【0080】
前記実施形態では、コアの巻芯部の軸心を回転軸としてコアを回転させることにより第1、第2導線を巻芯部に巻回させているが、ノズルをコアの周囲に公転させて、第1,第2導線をコアの巻芯部に巻き付けるようにしてもよい。
【0081】
前記実施形態では、2本の導線をコアに巻き回しているが、1本もしくは3本以上の導線をコアに巻き回すようにしてもよい。