特許第6596395号(P6596395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6596395犠牲コーティングおよび中間転写体上で犠牲コーティングを使用する間接的な印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6596395
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】犠牲コーティングおよび中間転写体上で犠牲コーティングを使用する間接的な印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20191010BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20191010BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191010BHJP
   C09D 103/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   B41M5/00 132
   B41M5/52 100
   B41J2/01 123
   B41J2/01 101
   B41J2/01 501
   C09D103/02
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-153385(P2016-153385)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-39316(P2017-39316A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】14/830,557
(32)【優先日】2015年8月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アール・ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェイ・フォーキンズ
(72)【発明者】
【氏名】マンダキニ・カナンゴ
(72)【発明者】
【氏名】サントク・エス・バデシャ
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−231829(JP,A)
【文献】 特開2002−302883(JP,A)
【文献】 特開平11−301098(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/171385(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/61203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00−5/52
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インク画像作成システムの中間転写体上の犠牲コーティングであって、この犠牲コーティングが、
ワックス状デンプンと;
少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;
少なくとも1つの吸湿性材料と;
少なくとも1つの界面活性剤と
を含む成分から作られる、犠牲コーティング。
【請求項2】
ワックス状デンプンが、ワックス状トウモロコシデンプン、ワックス状米デンプン、ワックス状キャッサバデンプン、ワックス状ジャガイモデンプン、ワックス状小麦デンプンおよびワックス状大麦デンプンからなる群から選択される少なくとも1つのデンプンを含む、請求項1に記載の犠牲コーティング。
【請求項3】
少なくとも1つのポリカルボン酸が、ジカルボン酸およびトリカルボン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の犠牲コーティング。
【請求項4】
少なくとも1つのポリカルボン酸がクエン酸である、請求項1に記載の犠牲コーティング。
【請求項5】
少なくとも1つのポリカルボン酸が水溶性ポリマーカルボン酸である、請求項1に記載の犠牲コーティング。
【請求項6】
犠牲コーティングは、さらに、i)ポリビニルアルコール、及びii)ビニルアルコールとアルケンモノマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを有する、請求項1に記載の犠牲コーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、間接的なインクジェットプリンタに関し、特に、インクジェットプリンタの中間転写体上で使用される犠牲コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクによる間接的な印刷では、中間画像作成表面(ブランケットの形態であってもよい)に水性インクが吐出される。画像が媒体基材(例えば、紙シート)に転写固定される前に、ブランケットの上でインクが部分的に乾燥する。優れた印刷品質を確保するために、ブランケットに吐出されるインク液滴は、乾燥の前に広がり、十分に融着することが望ましい。そうでなければ、インク画像は、ザラザラになったり、欠損したりするようである。広がらないと、インクジェット放出部の欠損もかなりもっと明らかになり、インク画像にもっと広い縞模様を生じさせることもある。水性インクの広がりは、高エネルギー表面を有する材料によって促進される。
【0003】
しかし、中間画像作成表面でインクが乾燥した後にブランケットから媒体基材へのインク画像の転写を促進するためには、比較的低い表面エネルギーを有する表面を有するブランケットが好ましい。低表面エネルギー材料は、インクの望ましい広がりを与えずに、画像受け入れ表面上での個々のインク液滴の「球状化」を促進する傾向がある。
【0004】
したがって、間接的な画像転写プロセスに最適なブランケットは、濡れたインクの望ましい広がりおよび融着、乾燥したインクの画像転写といった濡れた画像の品質についての両方の課題に取り組まなければならない。第1の課題(濡れた画像の品質)は、水性インクを広げ、表面を濡らすような高表面エネルギーブランケットを好む。第2の課題(画像の転写)は、インクが部分的に乾燥したとき、ブランケット表面への最低限の引力を有し、媒体表面に転写することができるような低表面エネルギーのブランケットを好む。
【0005】
上述の課題のバランスの良い解決策を提供するために、種々の手法が調べられてきた。これらの手法には、ブランケット材料の選択、インクの設計、補助液法が挙げられる。材料選択に関し、最適な剥離特性を与えることが知られている材料としては、シリコーン群、フルオロシリコーン群、フルオロポリマー群、例えば、TEFLON(登録商標)またはVITON、および特定のハイブリッド材料が挙げられる。これらの材料は、表面エネルギーが低いが、濡れ性が悪い。または、ポリウレタンおよびポリイミドを使用して濡れ性が高くなるが、インク剥離特性が犠牲になる。インクの主な性能属性が印刷ヘッド内での性能であるため、これらの課題に対処するようにインク組成物を調整することは非常に困難であることがわかった。例えば、インクの表面張力が高すぎる場合、インクヘッドの種類によっては適切に吐出されず、低すぎる場合、印刷ヘッドの前面から垂れるだろう。
【0006】
インクの画質および転写特徴に影響を及ぼすことに加え、犠牲コーティングの特性は、印刷物の水堅牢度にも影響を与えることがある。水堅牢度は、水性インクについて一般的に知られている関心事である。水堅牢度が悪いと、汚れや、画質の低下、インクの望ましくない移動(例えば、画像を取り扱うユーザの指への移動)が起こる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
優れた水堅牢度を有し、濡れた画像の品質および/または画像の転写が良好な新しいポリマーコーティング材料を特定し、開発することが、当該技術分野で歓迎される進歩であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、水性インク画像作成システムの中間転写体上の犠牲コーティングに関する。犠牲コーティングは、ワックス状デンプンと;少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;少なくとも1つの吸湿性材料と;少なくとも1つの界面活性剤とを含む成分から作られる。
【0009】
本開示の別の実施形態は、濡れた犠牲コーティング組成物に関する。このコーティング組成物は、ワックス状デンプンと;少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;少なくとも1つの吸湿性材料と;少なくとも1つの界面活性剤と;液体担体とを含む成分から作られる。
【0010】
本開示の別の実施形態は、間接的な印刷プロセスに関する。このプロセスは、中間転写体を備えるインクジェット印刷装置にインク組成物を提供することを含む。濡れた犠牲コーティング組成物は、中間転写体の上に堆積する。濡れた犠牲コーティング組成物は、ワックス状デンプンと;少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;少なくとも1つの吸湿性材料と;少なくとも1つの界面活性剤と;液体担体とを含む成分から作られる。濡れた犠牲コーティング組成物を乾燥させ、犠牲コーティングを作製する。犠牲コーティングの上に画像状のパターンにインク液滴を放出する。インクを少なくとも部分的に乾燥させ、中間転写体の上に実質的に乾燥したインクパターンを作成する。実質的に乾燥したインクパターンと犠牲コーティングの両方を中間転写体から最終基材に転写する。
【0011】
本開示の犠牲コーティング組成物は、以下の1つ以上の利点を与えることができる。良好な濡れ能を有するコーティング、良好なインク濡れ性およびインク広がり性を有するコーティング、水性インクを用いて改良された濡れた画像の品質および/または改良された画像転写性、改良された物理的な丈夫さまたは増加した貯蔵寿命、改良された画質または改良された水堅牢度を示す画像転写体コーティング。
【0012】
上の一般的な記載および以下の詳細な記載は、両方とも例示であり、単なる説明であり、特許請求の範囲に記載されるような本教示を制限するものではないことを理解すべきである。
【0013】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本教示の実施形態を説明し、本記載とともに本教示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施形態にかかるシート媒体を印刷する間接的な水性インクジェットプリンタの模式図である。
図2図2は、本開示の一実施形態にかかるインクジェットプリンタの中間転写体表面に親水性犠牲コーティング組成物を塗布する表面管理ユニットの模式図である。
図3図3は、本開示の一実施形態にかかる水性インクを使用する間接的なインクジェットプリンタを用いて画像を印刷するためのプロセスのブロック図である。
図4A図4Aは、本開示の一実施形態にかかるインクジェットプリンタの中間転写体表面に作られる親水性犠牲コーティング組成物の側面図である。
図4B図4Bは、本開示の一実施形態にかかる親水性犠牲コーティング組成物の液体担体の一部を乾燥部で除去した後、中間転写体表面にある乾燥または半分乾燥した親水性犠牲コーティング組成物の側面図である。
図4C図4Cは、本開示の一実施形態にかかる中間転写体表面にある乾燥または半分乾燥した親水性犠牲コーティング組成物の上に作られた水性インク画像の一部の側面図である。
図4D図4Dは、本開示の一実施形態にかかる水性インク中の水の一部をプリンタ内の乾燥部で除去した後の、乾燥した親水性犠牲コーティング組成物の上に作られた水性インク画像の一部の側面図である。
図4E図4Eは、本発明の一実施形態にかかるインクジェットプリンタの転写工程操作後、水性インク画像および乾燥した親水性犠牲コーティング組成物の層の一部を受け入れる印刷媒体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面のいくつかの詳細は単純化されており、厳格な構造的な正確性、詳細および縮尺を維持するのではなく、本実施形態の理解を促進するために描かれていることを注記すべきである。
【0016】
本教示の実施形態について詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の図面では、全体で同一の要素を示すために同じ参照番号を使用した。以下の記載では、その一部を生成する添付の図面を参照し、本教示を実施し得る特定の例示的な実施形態を説明することによって示される。従って、以下の記載は、単なる例示である。
【0017】
本明細書で使用する場合、「プリンタ」、「印刷デバイス」または「画像作成デバイス」という用語は、一般的に、印刷媒体の上に水性インクを用いて画像を製造するデバイスを指し、任意の目的で印刷画像を作る任意のこのような装置、例えば、デジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、多機能機などを包含してもよい。画像データは、一般的に、インクジェット放出部を操作し、印刷媒体の上にインク画像を作成するようにレンダリングされ、用いられる電子形態での情報を含む。これらのデータは、文字、グラフィック、図などを含んでいてもよい。着色剤を用いて画像(例えば、グラフィック、文字、写真など)を印刷媒体の上に製造する操作は、一般的に、本明細書では、印刷またはマーキングと呼ばれる。水性インクジェットプリンタは、インク中の着色剤および/または溶媒の量と比較して、多量の水を含むインクを使用する。
【0018】
「印刷ヘッド」という用語は、本明細書で使用する場合、画像受け入れ表面にインク液滴を放出するためのインクジェット放出部を備えるように構成されたプリンタ内の要素を指す。典型的な印刷ヘッドは、インクジェット放出部のアクチュエータを操作する発生シグナルに応答し、画像受け入れ表面に1種類以上のインク色のインク液滴を放出する複数のインクジェット放出部を備えている。インクジェットは、1つ以上の列および行に並ぶように配列している。ある実施形態において、インクジェットを、印刷ヘッドの面に沿って千鳥状の斜めになった列に配列する。種々の実施形態のプリンタは、画像受け入れ表面にインク画像を作成する1つ以上の印刷ヘッドを備えている。ある実施形態のプリンタは、印刷ゾーンに配列された複数の印刷ヘッドを備えている。画像受け入れ表面(例えば、中間画像作成表面)は、印刷ゾーンの処理方向に印刷ヘッドが通過するように移動する。印刷ヘッド中のインクジェットは、画像受け入れ表面を横切る処理方向に垂直の処理方向を横切る方向に、インク液滴を列になるように放出する。
【0019】
本書面で使用する場合、「水性インク」という用語は、着色剤が、水を含む液体媒剤および/または1種類以上の液体溶媒を用いた溶液、懸濁物または分散物である液体インクを含む。「液体溶媒」またはもっと簡単に「溶媒」という用語は、着色剤を溶解して溶液にし得る化合物、または、着色剤を溶解することなく、着色剤粒子を懸濁物または分散物の中に保持する液体であってもよい化合物を含むように広く用いられる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「親水性」という用語は、水性インク中で用いられる水分子または他の溶媒を引き寄せる任意の組成物または化合物を指す。本明細書で使用する場合、親水性組成物との言及は、親水性薬剤を保有する液体担体を指す。液体担体の例としては、限定されないが、分散物、懸濁物または溶液を保有する液体、例えば、水またはアルコールが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用する場合、乾燥した層または乾燥したコーティングとの言及は、液体担体のすべてまたはかなりの部分が乾燥プロセスによって組成物から除去された後の親水性化合物の配置を指す。以下にさらに詳細に記載されるように、間接的なインクジェットプリンタは、液体担体(例えば、水)を用い、中間転写体表面に親水性組成物の層を形成し、親水性組成物の層を塗布する。液体担体は、親水性組成物を画像受け入れ表面に運び、画像受け入れ表面に親水性組成物の均一な層を形成するための機構として使用される。
【0022】
本開示の一実施形態は、水性インク画像作成システムにおいて画像転写体の上に犠牲コーティングを作製するための濡れたコーティング組成物に関する。濡れたコーティング組成物は、ワックス状デンプンと;ワックス状デンプンを架橋するのに十分な量の少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;少なくとも1つの吸湿性材料と;少なくとも1つの界面活性剤と;液体担体とを含む成分から作られる。コーティングは、場合により、(i)ポリビニルアルコールおよび(ii)ビニルアルコールとアルケンモノマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0023】
一実施形態において、ワックス状デンプンは、ワックス状トウモロコシデンプンである。例えば、ワックス状トウモロコシデンプンは、カチオン性ワックス状トウモロコシデンプンまたは非カチオン性ワックス状トウモロコシデンプンであってもよい。カチオン性デンプンの例としては、酸処理されたワックス状トウモロコシデンプンが挙げられ、例えば、Guiqin Song等、「WETTING ENHANCEMENT COATING ON INTERMEDIATE TRANSFER MEMBER(ITM)FOR AQUEOUS INKJET INTERMEDIATE TRANSFER ARCHITECTURE」の名称の2014年3月19日に出願された米国特許出願第14/219,125号に記載される。適切な非カチオン性ワックス状トウモロコシデンプンとしては、Cargill,Inc.からCALIBER(登録商標)180として入手可能な酸解重合されたワックス状デンプンが挙げられる。ワックス状デンプンは、ワックス状トウモロコシデンプン以外の他の種類のワックス状デンプン、例えば、ワックス状米デンプン、ワックス状キャッサバデンプン、ワックス状ジャガイモデンプン、ワックス状小麦デンプンおよびワックス状大麦デンプンであってもよい。少なくとも1つのワックス状デンプン(例えば、ワックス状トウモロコシデンプン)の粘度は、約25℃、デンプン固体含有量が約4%で約1000cp未満、例えば、約700cp未満、または500cp未満であってもよい。
【0024】
本明細書に開示される特定の実施形態において、少なくとも1つのワックス状デンプンは、糊化していてもよい。デンプンの糊化は、水および熱の存在下、デンプン分子の分子間結合を破壊し、水素結合部位(ヒドロキシル水素および酸素)に水をもっと係合させるプロセスである。従って、水存在下、少なくとも1つのワックス状デンプンを加熱すると、デンプン顆粒が不可逆的に溶解する。例えば、ワックス状デンプンスラリーは、脱イオン水と望ましい量のデンプン(例えば、スラリーの合計重量を基準として固形デンプン含有量が約1〜約30重量%)とを混合することによって調製することができる。デンプンスラリーは、バッチプロセスにおいて、またはジェットクッカーによって糊化し、または加熱される。バッチプロセスの場合、デンプンスラリーを、例えば、約93℃〜約98℃の温度まで加熱し、この温度に約15分〜約60分維持してもよい。
【0025】
ワックス状デンプンを任意の適切な量で使用してもよい。一実施形態において、本開示の濡れた犠牲コーティング中のデンプンの重量%は、濡れた犠牲コーティング組成物の合計重量を基準として約0.5〜約10重量%、例えば、約1〜約8重量%、または約2〜約6重量%の範囲である。
【0026】
上述のように、ポリビニルアルコール(PVOH)およびそのコポリマーは、場合により、本開示の組成物中のバインダーの一部としてデンプンと共に含まれる。一実施形態において、ワックス状デンプンおよび少なくとも1つのPVOHおよび/またはPVOHコポリマーは、それぞれ、約2:1〜約20:1、例えば、約3:1〜約16:1、または約4:1の範囲の重量比である。
【0027】
PVOHおよびそのコポリマーは、(i)ポリビニルアルコールおよび(ii)ビニルアルコールとアルケンモノマーのコポリマーからなる群から選択されてもよい。一実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、ポリビニルアルコールである。一実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、ポリビニルアルコールとアルケンモノマーのコポリマーである。適切なポリビニルアルコールコポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール−コ−エチレン)が挙げられる。一実施形態において、ポリ(ビニルアルコール−コ−エチレン)は、エチレン含有量が約5モル%〜約30モル%の範囲である。ポリビニルコポリマーの他の例としては、ポリ(アクリル酸)−ポリ(ビニルアルコール)コポリマー、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーおよびポリ(ビニルアルコール−コ−アスパラギン酸)コポリマーが挙げられる。市販のPVOHの一例は、ダラス、テキサスのSekisui Specialty Chemicalsから入手可能なSELVOL(商標) PVOH 825である。
【0028】
PVOHは、例えば、部分的に加水分解したもの(87〜89%)、中程度に加水分解したもの(91〜95%)、完全に加水分解したもの(98〜98.8%)から、高度に加水分解したもの(99.3%を超える)までのポリ酢酸ビニルの加水分解によって製造可能であることがよく知られている。一実施形態において、本開示の組成物に使用されるポリビニルアルコールは、加水分解度が、少なくとも95%以上、または少なくとも98%以上、または99.3%以上である。
【0029】
ポリビニルアルコールまたはそのコポリマーは、任意の適切な分子量を有していてもよい。一実施形態において、重量平均分子量は、約85,000〜約186,000、例えば、約90,000〜約180,000、または約100,000〜約170,000、または約120,000〜約150,000の範囲である。比較的高い分子量のPVOHを使用すると、デンプンと合わせたときに強い薄い膜を生成し、膜をブランケット上に転写するのに役立つだろう。高分子量PVOHの保持量が高いと、粘度が顕著に増加し、コーティングの問題が生じる場合があるため、PVOHの保持量は、50%より高くない。
【0030】
一実施形態において、ポリビニルアルコールは、中間転写体の上に犠牲コーティングを作成するのに適した粘度を与えてもよい。例えば、ポリビニルアルコールの約4重量%脱イオン水溶液は、20℃での粘度が、少なくとも20センチポイズ(「cp」)、例えば、25、26または30cpまたはそれより高くてもよく、ポリビニルアルコールの重量%は、ポリビニルアルコールおよび水の合計重量に対する値である。
【0031】
ポリビニルアルコールは、親水性ポリマーであり、良好な水保持特性を有する。親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコールから作られたコーティング膜は、良好な水保持特性を示すことができ、ブランケットへのインクの広がりを助けることができる。その優れた強度に起因して、ポリビニルアルコールを用いて配合されたコーティングは、合計固体保持量を顕著に下げることができる。これにより、コーティング膜の性能を顕著に高めつつ、かなりの費用節約になるだろう。ポリビニルアルコールおよびデンプン系犠牲コーティング組成物は、他の既知の犠牲コーティング組成物と比較して、改良された機械特性を有し、改良されたプリンタ操作性、例えば、特に、長時間の印刷操作のために、改良されたインクスキン転写特性を与えるだろう。さらに、ポリビニルアルコールおよびデンプンは、両方とも環境に優しいと考えられ、この特徴は、犠牲コーティング組成物に使用される場合に重要な特徴である。
【0032】
少なくとも1つの架橋剤は、本開示の印刷プロセスで有用であるような所定温度および所定時間で、ワックス状デンプンおよび任意要素のポリビニルアルコールおよび/またはそのコポリマーを架橋するのに適した任意のポリカルボン酸化合物であってもよい。架橋剤を、デンプンおよび/またはPVOHのヒドロキシル基または他の部分と反応させ、分子間の架橋を生成してもよい。一実施形態において、180℃以下、例えば、約160℃または150℃またはそれ未満で望ましい架橋度を与えることができる架橋剤を使用してもよい。一実施形態において、架橋温度は、約80℃〜約150℃の範囲である。反応のための時間は、加えられる温度に依存して、約0.1秒〜約10分の範囲であってもよい。
【0033】
適切なポリカルボン酸架橋剤の例としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸および水溶性ポリマーカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。一実施形態において、化合物は、式(1)または(2)のジカルボン酸またはトリカルボン酸であり、
【0034】
【化1】
【0035】
式中、Rは、飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖または環状の置換または非置換のC〜C20炭素基であってもよく、場合により、1個以上のヘテロ原子を含む。適切なR基の例としては、C〜C20アルカンジイル、C〜C20アルケンジイル、C〜C20ビスアルキレンエーテル、C〜C20シクロアルキレンおよびC〜C20アレーンジイルが挙げられ;Rは、飽和または不飽和の直鎖、分枝鎖または環状の置換または非置換のC〜C20炭素基であってもよく、例えば、C〜C20アルカントリイル、C〜C20アルケントリイル、C〜C20シクロアルカントリイルまたはC〜C20アレーントリイルであってもよい。R基およびR基は、場合により、1個以上の官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基またはアミン基で置換されていてもよい。
【0036】
式(1)適切なジカルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、オレイン酸ダイマーおよびセバシン酸が挙げられる。式(2)の適切なトリカルボン酸の具体例としては、ペンタン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸およびクエン酸が挙げられる。一実施形態において、少なくとも1つのトリカルボン酸は、クエン酸である。ポリマーカルボン酸を使用することもできる。適切な水溶性ポリマーカルボン酸の具体例としては、ポリ(アクリル酸)およびポリ(メタクリル酸)が挙げられる。
【0037】
デンプンおよび任意要素のPVOHバインダーが、少なくとも24時間水に可溶性のままであることが望ましい。多すぎる架橋剤を添加すると、デンプン溶液の安定性、ブランケットから基材への画像の転写効率が潜在的に犠牲となることがある。従って、適切な量の架橋剤が、水堅牢度の向上と、デンプン溶液の安定性および画像の転写効率に対する潜在的な有害な影響との間で望ましいバランスを与える。犠牲コーティングを堆積させる前の任意の時点で、架橋剤を犠牲コーティングと合わせてもよい。例えば、犠牲コーティング溶液をプリンタに入れる前に、短時間で架橋物を犠牲コーティング溶液に加えてもよい。または、ライン内での混合プロセスを使用してもよく、架橋剤は、場合により、犠牲コーティング組成物と相溶性の媒剤に希釈する。一実施形態において、下にあるITM表面に塗布する直前に、デンプンおよび任意要素のPVOHバインダー、および湿潤剤溶液を架橋物と混合する。
【0038】
架橋剤の保持量は、変動してもよく、架橋物の種類によって変わってもよい。例となる量は、バインダーの合計保持量を基準として、約2〜約30重量%、例えば、約2〜約10重量%の範囲であってもよい。1種類、2種類、3種類、またはもっと多種類の任意の上述の架橋物を使用してもよい。
【0039】
デンプンおよび任意要素のポリビニルアルコールを含有するコーティングの化学構造を、その下にあるITM表面からの犠牲コーティングの濡れ能および剥離特徴を微細に調節するように変えることができる。このことは、1つ以上の吸湿性材料および1つ以上の界面活性剤をコーティング組成物に使用することによって達成されてもよい。しかし、デンプン−PVOH系犠牲コーティングを吸湿性材料と共に使用すると、インクジェット印刷物の水堅牢度に悪い影響を与えることがある。デンプンバインダーと組み合わせた吸湿性材料の使用は、水堅牢度の問題を悪化させる場合があるが、本願発明者らは、上述の架橋剤を添加すると、この問題を最低限にすることができ、多くの場合には、この問題をなくすことができることを発見した。
【0040】
本開示の犠牲コーティング組成物に任意の適切な吸湿性材料を使用してもよい。吸湿性材料は、その周囲から水を吸収することができる物質(例えば、湿潤剤)を含んでいてもよい。一実施形態において、吸湿性材料は、可塑剤として機能させることもできる化合物であってもよい。一実施形態において、少なくとも1つの吸湿性材料は、グリセロール、ソルビトールまたはグリコール、例えば、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。1種類の吸湿性材料を使用してもよい。または、複数の吸湿性材料、例えば、2種類、3種類以上の吸湿性材料を使用してもよい。
【0041】
任意の適切な界面活性剤を使用してもよい。適切な界面活性剤の例としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、およびこれらの混合物が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、HLB値が約4〜約14の範囲であってもよい。1種類の界面活性剤を使用してもよい。または、複数の界面活性剤(例えば、2種類、3種類またはもっと多種類の界面活性剤)を使用してもよい。例えば、約4〜約8の範囲の低いHLBの非イオン系界面活性剤と、約10〜約14の範囲の高いHLB値を有する非イオン系界面活性剤の少なくとも2種類の非イオン系界面活性剤の混合物は、良好な濡れ性能を示す。一実施形態において、少なくとも1つの界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0042】
本開示の濡れた組成物は、液体担体を含む。液体担体は、水性担体、例えば、少なくとも50重量%の水、例えば、90重量%または95重量%以上の水、例えば、100%の水を含む担体であってもよい。水性担体系の一部として含まれていてもよい他の成分としては、有機溶媒、例えば、ケトンが挙げられる。ケトン溶媒の一例は、2−ピロリジノンであり、グリセロールの保持量のいくらかを潜在的に置き換えることができる。2−ピロリジノンに加え、またはこれに代えて使用することができる他の有機溶媒としては、テルピネオール;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2 ピリミジノン;ジメチルプロピレン尿素;イソプロパノール、MEK(メチルエチルケトン)およびこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒は、例えば、半分乾燥した犠牲層の膜形成特性を高め、乾燥特徴を制御し、濡れ特性を制御するといった利点を有するだろう。一実施形態において、水性担体は、100%の水である。
【0043】
最初に、犠牲コーティング組成物は、中間転写体(「ITM」)に塗布され、これが半分乾燥され、または乾燥され、膜を生成する。コーティングは、通常は低表面エネルギー材料、例えば、ポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサンまたは他のシリコーンゴム材料、フルオロシリコーン、TEFLON(登録商標)、ポリイミドまたはこれらの組み合わせである基材ITMよりも高い表面エネルギーおよび/または高い親水性を有することができる。
【0044】
一実施形態において、犠牲コーティングは、ワックス状デンプンと;ワックス状デンプンを架橋するのに十分な量の少なくとも1つのポリカルボン酸架橋剤と;少なくとも1つの吸湿性材料と;少なくとも1つの界面活性剤と;液体担体と、場合により、(i)ポリビニルアルコールおよび(ii)ビニルアルコールとアルケンモノマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーとを含む成分を混合することによって作られる。
【0045】
上述の成分に加え、混合物は、他の成分(例えば、殺生物剤)を含んでいてもよい。殺生物剤の例としては、任意の適切な濃度、例えば、約0.1〜約2重量%のACTICIDES(登録商標)CT、ACTICIDES(登録商標)LA 1209およびACTICIDES(登録商標)MBSが挙げられる。
【0046】
犠牲コーティングの成分を任意の適切な様式で混合し、中間転写体にコーティング可能な組成物を作製することができる。成分を任意の適切な量で混合してもよい。例えば、ワックス状デンプンを、コーティング混合物の合計重量を基準として約0.5〜約10重量%、または約2〜約8重量%、または約5〜約7重量%の量で加えてもよい。任意要素のポリビニルアルコールまたはビニルアルコールコポリマーを、コーティング混合物の合計重量を基準として約0〜約5重量%、または約0.5〜約4重量%、または約1〜約3重量%の量で加えてもよい。界面活性剤は、コーティング混合物の合計重量を基準として約0.01〜約4重量%、または約0.05〜約2重量%、または約0.08〜約1重量%の量で存在していてもよい。吸湿性材料は、コーティング混合物の合計重量を基準として約0.5〜約30重量%、または約2〜約25重量%、または約4〜約20重量%、または約10〜約15重量%の量で存在していてもよい。
【0047】
本開示の組成物を使用し、任意の適切な基材の上に犠牲コーティングを作製することができる。限定されないが、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スタンプ印刷、ダイ押出成型コーティング、フレキソコーティングおよびグラビアコーティング、および/またはブレード技術を含め、任意の適切なコーティング方法を使用してもよい。例示的な実施形態において、適切な方法を使用し、中間転写体を液体コーティング組成物でコーティングすることができ、例えば、図2に示されるようなアニロックスローラーを用い、または空気噴霧デバイス、例えば、エアブラシまたは自動化された空気/液体噴霧器をスプレーコーティングに使用してもよい。別の例において、プログラム可能なディスペンサを使用し、コーティング材料を塗布し、フローコーティングを行うことができる。
【0048】
上述のように、最初に、犠牲コーティングを濡れたコーティングとして中間転写体に塗布または配置する。次いで、乾燥プロセスまたは硬化プロセスを使用してもよい。いくつかの実施形態において、濡れたコーティングを、使用する材料またはプロセスに依存して、乾燥または硬化に適した温度で加熱してもよい。例えば、濡れたコーティングを、約30℃〜約200℃の範囲の温度で約0.01秒〜約100秒、例えば、約0.1秒〜約60秒加熱してもよい。また、乾燥プロセス中に空気流の速度を調節し、低温での乾燥を促進してもよい。いくつかの実施形態において、乾燥プロセスおよび硬化プロセスの後に、犠牲コーティングは、厚みが約0.02マイクロメートル〜約10マイクロメートル、例えば、約0.02マイクロメートル〜約5マイクロメートル、または約0.05マイクロメートル〜約1マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0049】
一実施形態において、犠牲コーティングは、中間転写体の主要な表面の一部を覆っていてもよい。中間転写体の主要な外側表面は、例えば、ポリシロキサン、フルオロシリコーン、フルオロポリマー、例えば、VITON(登録商標)またはTEFLON(登録商標)などを含んでいてもよい。
【0050】
中間転写体上にインクの濡れた表面を提供することによって、この犠牲コーティングは、上述の濡れた画像の品質に関する問題を克服することがわかっている。このコーティングは、画像の凝集も顕著に向上させ、優れた画像転写を可能にするだろう。
【0051】
図1は、高速水性インク画像製造機械またはプリンタ10を示す。示されているように、プリンタ10は、中間回転体12の周囲に取り付けられたブランケット21の表面にインク画像を生成し、次いで、インク画像を、ブランケット21と転写固定ローラー19との間に作られる爪18によって通過する媒体に転写する間接的なプリンタである。ブランケット21の表面14は、表面14が親水性組成物および水性インク画像を受け入れ、これを印刷プロセス中に印刷部材に転写固定するため、ブランケット21および回転体12の画像受け入れ表面と呼ばれる。ここで、プリンタ10を参照しつつ、印刷サイクルを記載する。この書類で使用される場合、「印刷サイクル」は、印刷のために画像表面を調製し、調製した表面へのインクの放出、媒体に転写するために画像を安定化し、調製するための画像生成表面でのインクの処理、および画像生成表面から媒体への画像の転写のためのプリンタの操作を指す。
【0052】
プリンタ10は、以下に記載する操作サブシステムおよび要素を直接的または間接的に支えるフレーム11を備えている。プリンタ10は、中間転写体を備えており、図1では回転する画像生成ドラム12として示されるが、他の適切な構造(例えば、支えられた終端のないベルト)を有していてもよい。画像生成ドラム12は、ドラム12の周囲に沿って取り付けられた外側ブランケット21を有する。ブランケットは、部材12が回転するにつれて、方向16に動く。方向17に回転可能な転写固定ローラー19は、ブランケット21の表面に負荷をかけ、転写固定爪18を生成し、その中で、ブランケット21の表面に作られたインク画像を、印刷媒体49に転写固定する。ある実施形態において、ドラム12(図示せず)またはプリンタの別の位置にあるヒーターが、ブランケット21の画像受け入れ表面14を、例えば、約50℃〜約70℃の範囲の温度まで加熱する。この高温によって、親水性組成物を堆積させるために用いられる液体担体および画像受け入れ表面14に堆積される水性インク液滴中の水の部分的な乾燥を促進する。
【0053】
ブランケットは、爪18において、ブランケット21の表面から印刷媒体49へのインク画像の転写を容易にするために、比較的表面エネルギーが低い材料から作られる。このような材料としては、ポリシロキサン、フルオロ−シリコーン、フルオロポリマー、例えば、VITONまたはTEFLON(登録商標)などが挙げられる。表面管理ユニット(SMU)92は、インク画像を印刷媒体49に転写した後、ブランケット21の表面に残った残留インクを除去する。ブランケットの低エネルギー表面は、少なくとも、このような表面がインク液滴を広げず、高エネルギー表面であるため、必ずしも良好な品質のインク画像を作成するのを補助するように設計されない。
【0054】
一実施形態において、図2にもっと明確に示すように、SMU92は、コーティングアプリケータ(例えば、供与ローラー404)を備えており、本開示の濡れた犠牲コーティング組成物を保持する容器408に部分的に沈んでいる。供与ローラー404は、画像受け入れ表面14の移動に応答し、処理方向に回転する。供与ローラー404は、容器408から液体犠牲コーティング組成物を取り出し、液体犠牲コーティング組成物の層を画像受け入れ表面14に堆積させる。以下に記載するように、犠牲コーティング組成物を、任意の望ましい厚みを有する均一な層として堆積させる。例としては、約0.1μm〜約10μmの範囲の厚みが挙げられる。SMU92は、画像受け入れ表面14に犠牲コーティング組成物を堆積させる。乾燥プロセスの後、乾燥した犠牲コーティングは、プリンタが印刷プロセス中にインク液滴を放出する前に、画像受け入れ表面14を実質的に覆う。ある具体的な実施形態において、供与ローラー404は、アニロックスローラー、または例えばゴムのような材料で作られるエラストマーローラーである。SMU92を、以下に詳細に記載するようにコントローラ80に操作可能に接続し、供与ローラーを操作するためのコントローラ、ならびにブランケット表面にコーティング材料を堆積させ、分配し、転写されなかったインクおよび犠牲コーティング残渣をブランケット21の表面から除去するようにそれぞれ機能し得る秤量ブレードおよびクリーニングブレードを可能にする。
【0055】
図1に戻ると、プリンタ10は、熱を放出し、場合により、画像受け入れ表面14に塗布される濡れた犠牲コーティング組成物に空気流を向かわせる乾燥部96を備えている。乾燥部96は、中間転写体が印刷ヘッドモジュール34A〜34Dを通り、水系印刷画像を受け入れる前に、濡れた犠牲コーティング組成物からの液体担体の少なくとも一部の蒸発を容易にし、画像受け入れ画面14の上に乾燥した層を残す。
【0056】
プリンタ10は、部材12が回転してセンサを通過するにつれて、ブランケット表面14およびブランケット表面に塗布された犠牲コーティングから反射した光を検出するように構成された光学センサ94A(イメージオンドラム(「IOD」)センサとも呼ばれる)を備えていてもよい。光学センサ94Aは、ブランケット21の処理方向を横切る方向に整列した個々の光学検出器が列になった線状の配列を含む。光学センサ94Aは、ブランケット表面14および犠牲コーティングから反射した光に対応するデジタル画像データを作成する。光学センサ94Aは、中間転写体12が方向16にブランケット21を回転させ、光学センサ94Aを通るにつれて、「スキャンライン」と呼ばれる一列の画像データを作成する。一実施形態において、光学センサ94Aのそれぞれの光学検出器は、さらに、赤色、緑色、青色(RGB)の反射光の色に対応する光の波長に感受性の3つの検知要素を含む。または、光学センサ94Aは、赤色、緑色および青色に輝く照射源を含むか、または、別の実施形態において、センサ94Aは、ブランケット21の表面で白色の光が輝く照射源を有し、白色光の検出器を使用する。光学センサ94Aは、画像受け入れ表面で相補的な色の光が輝き、光検出器を用い、異なるインク色を検出することができる。光学センサ94Aによって作られる画像データを、プリンタ10内のコントローラ80または他のプロセッサによって分析し、ブランケットの上の犠牲コーティングの厚みおよび被覆面積を特定することができる。ブランケット表面および/またはコーティングからの鏡面反射光または拡散光の反射から、厚みおよび被覆を特定することができる。他の光学センサ(例えば、94B、94Cおよび94D)は、類似の構成であり、印刷プロセス中の他のパラメータ、例えば、インクジェットの欠けまたは動作不能、および画像乾燥前のインク画像の作成(94B)、画像転写のためのインク画像の処理(94C)およびインク画像の転写効率(94D)を特定し、評価するために、ブランケット21の周囲の異なる位置に配置されていてもよい。または、ある実施形態は、媒体での画質を評価するために使用可能なさらなるデータを作成するために、光学センサを備えていてもよい(94E)。
【0057】
プリンタ10は、印刷ゾーンへの空気の流れを作り出し、制御する空気流管理システム100を備えている。空気流管理システム100は、印刷ヘッド空気供給部104と、印刷ヘッド空気戻り部108とを備える。印刷ヘッド空気供給部104と戻り部108は、プリンタ10のコントローラ80またはある種の他のプロセッサに操作可能に接続され、コントローラが、印刷ゾーンへ流れる空気を管理することができる。この空気流の制御は、全体または1つ以上の印刷ヘッドの整列としての印刷ゾーンにわたってもよい。この空気流の制御によって、インク中の蒸発した溶媒および水が印刷ヘッド上で凝集するのを防ぐのに役立ち、印刷ゾーン中の熱を弱め、インクジェット内でインクが乾燥し、インクジェットが詰まり得る可能性を減らすのに役立つ。空気流管理システム100は、さらに、印刷ゾーンの湿度および温度を検出するためのセンサを備えていてもよく、空気供給部104および戻り部108の温度、流れ、および湿度をもっと正確に制御することができ、印刷ゾーン内の最適条件を確保することができる。プリンタ10内のコントローラ80またはある種の他のプロセッサは、さらに、画像領域のインク被覆に関し、システム100の制御を可能にしてもよく、または時間までは、画像が印刷されないときに空気のみが印刷ゾーンを通って流れるように、システム100の操作を可能にしてもよい。
【0058】
高速水性インクプリンタ10は、さらに、ある色の水性インクの少なくとも1つの供給源22を含む水性インク供給および運搬サブシステム20を備える。示されているプリンタ10が、多色画像製造機である場合、インクを運搬するシステム20は、例えば、4種類の異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、黒色)の水性インクをあらわす4種類の供給源22、24、26、28を備える。図1の実施形態において、印刷ヘッドシステム30は、印刷ヘッド支持部32を備えており、複数の印刷ヘッドモジュールを支え、プリントボックスユニット(34A〜34D)としても知られる。それぞれの印刷ヘッドモジュール34A〜34Dは、ブランケットの幅方向にわたって効果的に延び、ブランケット21の表面14にインク液滴を放出する。印刷ヘッドモジュールは、1個の印刷ヘッドまたは千鳥状の配列に構成された複数の印刷ヘッドを備えていてもよい。それぞれの印刷ヘッドモジュールは、フレーム(図示せず)に操作可能に接続し、インク液滴を放出するように整列し、ブランケット表面14の上のコーティングの上にインク画像を作成する。印刷ヘッドモジュール34A〜34Dは、1つ以上の印刷ヘッドにインクを供給するために、関連する電子機器、インク容器およびインク経路を備えていてもよい。示した実施形態において、経路(図示せず)は、印刷ヘッドモジュール34A〜34Dに供給源22、24、26および28を操作可能に接続し、モジュール内の1つ以上の印刷ヘッドにインクを供給する。一般的によく知られているように、印刷ヘッドモジュール内の1つ以上の印刷ヘッドは、それぞれ、1色のインクを放出することができる。他の実施形態において、印刷ヘッドは、2色以上のインクを放出するように構成されていてもよい。例えば、モジュール34Aおよび34B中の印刷ヘッドは、シアンおよびマゼンタのインクを放出することができ、一方、モジュール34Cおよび34D中の印刷ヘッドは、イエローおよび黒色のインクを放出することができる。示されているモジュール中の印刷ヘッドは、印刷ヘッドの処理幅を横切る方向に連続的に被覆した印刷を行うことができるように、互いに相殺する(すなわち、千鳥状の)2つの並びに配列される。プリンタ10は、4個の印刷ヘッドモジュール34A〜34Dを備えているが、それぞれ、2つの印刷ヘッドの並びを有し、交互に並ぶ構造は、異なる数の印刷ヘッドモジュールを有するか、またはモジュール内の並びを有する。
【0059】
ブランケット表面14の上に印刷される画像が印刷ゾーンから出た後、画像が、画像乾燥部130の下を通る。画像乾燥部130は、ヒーター(例えば、放射赤外線型、放射近赤外線型および/または強制温風対流ヒーター)134、乾燥部136(温風源136として示される)および空気戻り部138Aおよび138Bを備える。赤外線型ヒーター134は、ブランケット21の表面14に印刷した画像に赤外熱をあて、インク中の水または溶媒を蒸発させる。温風源136は、インクに温風を向かわせ、インクから水または溶媒の蒸発を補助する。一実施形態において、乾燥部136は、乾燥部96と同じデザインを有する温風源である。乾燥部96は、親水性組成物を乾燥させるために処理方向に沿って配置されているが、乾燥部136は、画像受け入れ表面14の水性インクを少なくとも部分的に乾燥させるために、印刷ヘッドモジュール34A〜34Dの後に、処理方向に沿って配置される。次いで、空気を集め、空気戻り部138Aおよび138Bによって排気し、印刷領域中の空気の流れと他の要素との干渉を減らす。
【0060】
さらに示されるように、プリンタ10は、印刷媒体を供給し、取り扱うシステム40を備え、例えば、種々の大きさの紙印刷媒体の1つ以上の積み重ねを保存する。印刷媒体を供給し、取り扱うシステム40は、例えば、シートまたは基材の供給源42、44、46および48を備える。プリンタ10の実施形態において、供給源48は、例えば、切断した印刷媒体49の形態で画像受け入れ基材を保存し、供給するための高容量紙供給部またはフィーダである。印刷媒体を供給し、取り扱うシステム40は、さらに、基材を取り扱い、輸送するシステム50を備え、媒体プレコンディショナアセンブリ52と媒体ポストコンディショナアセンブリ54とを有する。プリンタ10は、印刷媒体が転写固定爪18を通った後、印刷媒体にさらなる熱および圧力を加えるための任意要素の融合デバイス60を備える。図1の実施形態において、プリンタ10は、書類保持トレイ72、書類シートを供給し、回復するデバイス74および書類を露出させ、スキャンするシステム76を含む元々の書類フィーダ70を備える。
【0061】
機械またはプリンタ10の種々のサブシステム、要素および機能の操作および制御は、コントローラまたは電子サブシステム(ESS)80の助けを借りて行われる。ESSまたはコントローラ80は、例えば、中間転写体12、印刷ヘッドモジュール34A〜34D(したがって、印刷ヘッド)、印刷媒体を供給し、取り扱うシステム40、基材を取り扱い、輸送するシステム50、ある実施形態において、1つ以上の光学センサ94A〜94Eに操作可能に接続する。ESSまたはコントローラ80は、例えば、中央処理ユニット(CPU)82を含む自己内蔵型の専用のミニコンピュータであり、電子記憶部84およびディスプレイまたはユーザインターフェース(UI)86を備える。ESSまたはコントローラ80は、例えば、センサ入力部および制御回路88と、ピクセルの配置および制御回路89とを含む。それに加え、CPU82は、画像入力源、例えば、スキャンシステム76、またはオンラインまたはワークステーションの接続90および印刷ヘッドモジュール34A〜34Dの間の画像データフローを読み取り、捕捉し、作成し、管理する。このように、ESSまたはコントローラ80は、以下に記載する印刷プロセスを含む他の機械サブシステムおよび機能のすべてを操作し、制御するための主なマルチタスクプロセッサである。
【0062】
コントローラ80は、プログラム化された命令を実行する汎用または特殊用途用のプログラム制御可能なプロセッサで実行することができる。プログラム制御された機能を発揮するのに必要な命令およびデータを、プロセッサまたはコントローラに関連するメモリに保存することができる。プロセッサ、そのメモリおよびインターフェース回路は、以下に記載する操作を行うためのコントローラを構成する。これらの要素は、印刷配線回路カードで与えられてもよく、または特定用途向け集積回路(ASIC)の回路として与えられてもよい。それぞれの回路は、別個のプロセッサを用いて実行されてもよく、または複数の回路が同じプロセッサで実行されてもよい。または、回路を別個の要素で実行してもよく、または超大規模集積(VLSI)回路で与えられる回路で実行してもよい。また、本明細書に記載する回路は、プロセッサ、ASIC、別個の要素またはVLSI回路の組み合わせで実行することができる。
【0063】
図1のプリンタ10は、中間回転体12の周囲に取り付けられたブランケット21を有するものとして記載されているが、画像受け入れ表面の他の構造を使用してもよい。例えば、中間回転体は、その周囲に組み込まれた表面を有し、水性インク画像を表面に作成することができる。または、ブランケットは、水系画像を作成するための終端のない回転ベルトとして構成される。これらの構造の他の変更例は、この目的のために構成されていてもよい。この書類で使用される場合、「中間画像作成表面」という用語は、これらの種々の構造を含む。
【0064】
1つ以上の画像が、コントローラ80の制御下、ブランケットおよびコーティングの上に作られたら、示されたインクジェットプリンタ10は、プリンタ内の要素を操作し、ブランケット表面14から媒体へ1つ以上の画像を転写し、固定するためのプロセスを行う。プリンタ10では、コントローラ80は、媒体輸送システム50中の1つ以上のローラー64を動かすためのアクチュエータを操作し、印刷媒体49を処理方向Pに転写固定ローラー19に隣接する位置まで移動させ、次いで、転写固定ローラー19とブランケット21の間にある転写固定爪18を通って移動する。転写固定ローラー19は、ブランケット21に対し、印刷媒体49の前側を押すために、印刷媒体49の裏側に対して圧力を加える。転写固定ローラー19も加熱してもよいが、図1の例示的な実施形態において、転写固定ローラー19は加熱されない。その代わりに、印刷媒体49のためのプレヒーターアセンブリ52が、爪に向かう媒体の経路に与えられる。プレコンディショナアセンブリ52は、印刷媒体49を所定の温度に安定化させ、画像を媒体に転写するのを助け、それによって、転写固定ローラーのデザインを単純化する。印刷媒体49の裏側に対し、転写固定ローラー19によって作られる圧力は、中間転写体12から印刷媒体49への画像の転写固定(転写および融合)を容易にする。中間転写体12および転写固定ローラー19両方の回転または転がりによって、印刷媒体49に画像を転写固定するだけではなく、印刷媒体49が爪を通って運ばれるのにも役立つ。中間転写体12は、回転を続け、印刷プロセスを繰り返すことができる。
【0065】
中間転写体12を転写固定爪18によって移動させた後、画像受け入れ表面は、クリーニングユニットを通り、画像受け入れ表面14から、犠牲コーティングの残留部分および少量の残留インクを除去する。プリンタ10では、クリーニングユニットは、画像受け入れ表面14に係合するクリーニングブレード95として具現化される。ブレード95は、ブランケット21を損傷させることなく、画像受け入れ表面14を拭き取る材料から作られる。例えば、クリーニングブレード95は、プリンタ10中、可とう性ポリマー材料から作られる。図1で以下に示すように、別の実施形態は、中間転写体が転写固定爪18を通って移動した後、水および洗剤の混合物を塗布し、画像受け入れ表面14から残留物質を除去するためのローラーまたは他の部材を含むクリーニングユニットを有する。本明細書で使用する場合、「洗剤」または洗浄剤という用語は、画像受け入れ表面に残り得る任意の犠牲コーティングおよび任意の残留インクを画像受け入れ表面から除去するのに適した任意の界面活性剤、溶媒、または他の化学化合物を指す。適切な洗剤の一例は、ステアリン酸ナトリウムであり、一般的に石鹸に用いられる化合物である。別の例は、IPAであり、画像受け入れ表面からインク残渣を除去するのに非常に効果的な一般的な溶媒である。一実施形態において、インクおよび犠牲層を転写した後、ITMに残る犠牲ポリウレタンコーティング層の残渣は存在せず、この場合には、ITMを洗浄し、残留する犠牲コーティングを除去することは問題ではないだろう。
【0066】
図3は、液体インク液滴を乾燥層に放出する前に、中間転写体の画像受け入れ表面で、本明細書に記載されるように、犠牲コーティング組成物を用いて乾燥したコーティングを作成するために間接的な水性インクジェットプリンタを操作するためのプロセス700を示す。以下の記載では、作業または機能を行うプロセス700に対する言及は、プリンタの他の要素と組み合わせて、この作業または機能を行うための保存されたプログラム化された命令を実行するコントローラ(例えば、プリンタ10内のコントローラ80)を指す。プロセス700は、具体的な目的のために、プリンタ10を示す図1と、ブランケットおよびコーティングを示すための図4A図4Eとを組み合わせて記載される。犠牲コーティングおよびこれらのコーティングを使用するプロセスは、プリンタ10での使用に限定されず、当業者によって簡単に理解されるように、中間転写体を備えるインクジェットプリンタで使用できる可能性がある。
【0067】
プリンタが、中間転写体の画像受け入れ表面に、液体担体を用い、濡れたコーティング組成物の犠牲層を塗布すると、プロセス700が開始する(ブロック704)。プリンタ10では、ドラム12およびブランケット21は、プロセス700中に示されている円方向16に沿って処理方向に移動し、犠牲コーティング組成物を受け入れる。
【0068】
一実施形態において、液体担体は、水または別の液体、例えば、アルコールまたは濡れたコーティング組成物で使用するための本明細書に記載される任意の他の液体担体であり、画像受け入れ表面から部分的に蒸発し、画像受け入れ表面の上に乾燥した層が残る。図4Aでは、中間転写体504の表面が犠牲コーティング組成物508で覆われている。SMU92は、ブランケット21の画像受け入れ表面14の上に犠牲コーティング組成物が堆積し、均一な親水性コーティングを生成する。犠牲コーティング組成物のコーティングの厚みが大きくなると、画像受け入れ表面を完全に覆う均一な層を作成することができるが、厚いコーティング中の液体担体の量が増え、液体担体を除去し、乾燥した層を作成するために、さらなる乾燥時間または大きな乾燥部が必要となる。犠牲コーティング組成物の薄いコーティングならば、乾燥した層を作成するために少ない量の液体担体を除去することが必要であるが、犠牲コーティングが薄すぎる場合、コーティングが、画像受け入れ表面を完全に覆わないことがある。特定の実施形態において、液体担体を含む犠牲コーティング組成物を、約1μm〜10μmの厚みで塗布する。
【0069】
プロセス700は、プリンタ内の乾燥部が犠牲コーティング組成物を乾燥させ、液体担体の少なくとも一部を除去し、画像受け入れ表面に乾燥した層を作製するように続く(ブロック708)。プリンタ10では、乾燥部96は、放射熱を加え、場合により、ドラム12の画像受け入れ表面に空気を循環させるファンを備えている。図4Bは、乾燥した層512を示す。乾燥部96は、液体担体の一部を除去し、画像受け入れ表面に作られる乾燥した層の厚みが小さくなる。プリンタ10では、乾燥した層512の厚みは、任意の適切な望ましい厚みであってもよい。例となる厚みは、異なる実施形態において約0.1μm〜約3μmの範囲であり、具体的な特定の実施形態において、約0.1〜約0.5μmである。
【0070】
乾燥した犠牲コーティング512は、「スキン」層とも呼ばれる。乾燥した犠牲コーティング512は、画像受け入れ表面のうち、印刷プロセス中に水性インクを受け入れる部分の実質的にすべてを覆う均一な厚みを有する。上に記載したように、液体担体を含む犠牲コーティングが、液体担体中の犠牲コーティング材料の溶液、懸濁物または分散物を含み、乾燥した犠牲コーティング512は、中間転写体504の画像受け入れ表面を覆う。乾燥した犠牲コーティング512は、中間転写体504の画像受け入れ表面に比較的高レベルの付着性を有し、乾燥した層512と接触する印刷媒体への付着度は比較的低レベルである。以下にさらに詳細に記載するように、水性インク液滴を、乾燥した層512の一部に放出すると、水性インク中の水および他の溶媒の一部が、乾燥した層512に浸透する。
【0071】
プロセス700は、親水性スキン層を有する画像受け入れ表面が、1つ以上の印刷ヘッドを通って移動し、水性インク液滴が、乾燥した層および画像受け入れ表面に放出され、水性印刷画像の潜像を作成するように続く(ブロック712)。プリンタ10内の印刷ヘッドモジュール34A〜34Dは、CYMK糸のインク液滴を放出し、印刷画像を作成する。
【0072】
犠牲コーティング512は、インク524中の着色剤に実質的に不浸透性であり、着色剤は、水性インクが広がる乾燥した層512の表面に残る。液体インクの広がりによって、画像受け入れ表面の上で、従来の低表面エネルギーの画像受け入れ表面で起こるように個々の液滴が球状化するのではなく、周囲の水性インク液滴が互いに併合される。
【0073】
再び図3を参照すると、プロセス700は、中間転写体の上にある水性インクを部分的に乾燥するプロセスを伴って続く(ブロック716)。プリンタ内の印刷媒体に転写される水量によって印刷媒体の荒れまたは他の変形が起こらないように、乾燥プロセスによって、中間転写体の上の水性インクおよび犠牲コーティング(スキン層とも呼ばれる)から水の一部を除去する。プリンタ10では、温風源136は、温風を画像受け入れ表面14に向かわせ、印刷した水性インク画像を乾燥させる。ある実施形態において、中間転写体およびブランケットを高温まで加熱し、インクからの液体の蒸発を促進する。例えば、プリンタ10では、画像形成ドラム12およびブランケット21を、50℃〜70℃の温度まで加熱し、印刷プロセス中、乾燥した犠牲層の上のインクを部分的に乾燥させることができる。図4Dに示されるように、乾燥プロセスは、部分的に乾燥した水性インク532を生成し、このインクには、図4Cの新しく印刷した水性インク画像と比較して、残っている水の量が少ない。
【0074】
乾燥プロセスによって水性インクの粘度が上がり、水性インクの稠度は、低粘度の液体から、もっと高粘度の接着性材料へと変化する。乾燥プロセスは、インク532の厚みも小さくする。一実施形態において、乾燥プロセスは、インクが、部分的に乾燥したインク(乾燥後ではあるが、印刷媒体に転写する前のインク)の20重量%未満、例えば、5重量%未満の水または他の溶媒、例えば、2重量%未満の水または他の溶媒を含むように、十分な水を除去する。
【0075】
プロセス700は、プリンタが、水性インク画像の潜像を画像受け入れ表面から印刷媒体、例えば、紙シートに転写固定するように続く(ブロック720)。プリンタ10では、ドラム12の画像受け入れ表面14は、転写固定ローラー19と係合し、爪18を形成する。印刷媒体(例えば、紙シート)は、ドラム12と転写固定ローラー19の間の爪を通って移動する。爪の圧力が、水性インク画像および乾燥した犠牲層の一部を印刷媒体に転写する。転写固定爪18によって通過した後、印刷媒体は、印刷した水性インク画像を保有する。図4Eに示されるように、印刷媒体536は、印刷媒体536の表面にあるインク画像532を覆う犠牲コーティング512を含む印刷した水性インク画像532を保有する。犠牲コーティング512は、水性インク画像532を印刷媒体536の上で乾燥させつつ、水性インク画像が傷つくか、または他の物理的な損傷を受けるのを防ぐ。
【0076】
プロセス700中、プリンタは、転写固定操作の後に画像受け入れ表面に残り得る犠牲コーティング512の残った部分を洗浄する(ブロック724)。一実施形態において、クリーニングシステムは、例えば、画像受け入れ表面の上で機械攪拌を用いた水と洗剤の組み合わせを使用し、ドラム12の表面から、犠牲コーティング512の残留部分を除去する。プリンタ10では、水と組み合わせて使用してもよいクリーニングブレード95は、ブランケット21と係合し、画像受け入れ表面14から、残留する犠牲コーティング512を除去する。クリーニングブレード95は、例えば、ブランケット21から犠牲ポリウレタンコーティング512の残留部分を拭き取るポリマーブレードである。
【0077】
印刷操作中、プロセス700は、ブロック704を参照して上述の処理に戻り、印刷プロセス中、さらなる印刷ページのために、画像受け入れ表面に親水性組成物を塗布し、さらなる水性インク画像を印刷し、水性インク画像を印刷媒体に転写固定する。プリンタ10の具体的な実施形態は、中間転写体の1回の回転または回路で、乾燥した層を作成し、水性インク画像を印刷し、水性インク画像を印刷媒体に転写固定する「1回通過」モードで操作する。代替的な実施形態において、インクジェットは、複数回通過する構造を使用し、画像受け入れ表面は、2回以上の回転または回路で完成し、印刷媒体に印刷画像を転写固定する前に、乾燥した層を作製し、水性インク画像を受け入れる。
【0078】
プロセス700のいくつかの実施形態において、プリンタは、1層のインク(例えば、図4Cに示されるインク524)を用い、印刷画像を作成する。しかし、プリンタ10では、複数の印刷ヘッドモジュールは、プリンタが複数の色のインクを用いて印刷画像を作成することができる。プロセス700の他の実施形態において、プリンタは、複数の色のインクを用い、画像を作成する。印刷した画像のいくつかの領域では、複数色のインクは、画像受け入れ表面の同じ領域で重なりあっており、親水性組成物の層の上に複数のインク層を作製してもよい。図3の方法の工程を、同様の結果を有する複数のインク層の環境に適用してもよい。
【実施例】
【0079】
実施例1:犠牲コーティング組成物
クエン酸5重量%溶液の液滴をOceansハーフトーン印刷物に加え、120℃で乾燥させた。クエン酸で処理された印刷物の領域は、処理していない領域、水滴で処理され、乾燥した領域、5重量%Borax溶液の液滴で処理し、乾燥した領域と比較して、顕著に向上した水堅牢度を示した。
【0080】
本開示の広い範囲に記載する数値範囲およびパラメータは概算値であるが、具体例に記載する数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定で見出される標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示するすべての範囲は、その範囲に包含される任意の部分範囲およびあらゆる部分範囲を包含することが理解されるべきである。
【0081】
本教示を1つ以上の実施の観点で示してきたが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、示されている実施例に対し、変更および/または改変を行ってもよい。それに加え、本教示の具体的な特徴が、いくつかの実施例の1つのみに関して開示されていてもよいが、このような特徴を、所望なように、任意の所与の機能または具体的な機能に有利な他の実施例の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。さらに、「〜を含む(including)」、「含む(includes)」、「〜を有する(having)」、「有する(has)」、「伴う(with)」という用語またはこれらの変形語をいずれかの詳細な記載および特許請求の範囲に使用する程度まで、このような用語は、「〜を含む(comprising)」という語句と同様の様式で包括的であることを意図している。さらに、本明細書の記載および特許請求の範囲では、「約」という語句は、変更によって、示されている実施形態に対するプロセスまたは構造と不整合がない限り、列挙した値をある程度変えてもよいことを示す。最終的に、「例示的な」は、理想的であると暗示されていることよりも、その記載が例として使用されることを示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E