【文献】
Nat. Rev. Cancer,2012年 3月22日,Vol.12, No.4,p.252-264
【文献】
Int. J. Oncol.,2008年 4月,Vol.32, No.4,p.777-789
【文献】
Int. J. Cancer,2006年 2月 1日,Vol.118, No.3,p.658-667
【文献】
Clin. Cancer Res.,1998年 3月,Vol.4, No.3,p.721-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)であり、かつ該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体である、前記医薬組成物。
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該サイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)であり、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、PD1であり、かつ該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体である、前記医薬組成物。
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該サイトカインは、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)であり、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、PD1であり、かつ該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体である、前記医薬組成物。
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、PD1であり、該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体であり、かつ該キメラNDVの該パッケージングされたゲノムが、さらなる異種タンパク質をコードしない、前記医薬組成物。
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該サイトカインは、IL-2であり、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、PD1であり、該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体であり、かつ該キメラNDVの該パッケージングされたゲノムが、さらなる異種タンパク質をコードしない、前記医薬組成物。
それを必要とする対象の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、キメラニューカッスル病ウイルス(NDV)を含み、該キメラNDVは、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むパッケージングされたゲノムを含み、該サイトカインは、該ウイルスによって発現され、該サイトカインは、GM-CSFであり、該医薬組成物は、該キメラNDVが、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとの併用で該対象に投与されるように用いられ、該抑制受容体が、PD1であり、該アンタゴニストが、該抑制受容体に特異的に結合する抗体であり、かつ該キメラNDVの該パッケージングされたゲノムが、さらなる異種タンパク質をコードしない、前記医薬組成物。
前記サイトカインが、IL-15、IL-7、IL-9、IL-17、IL-21、IL-22、インターフェロン(IFN)-γ、又は腫瘍壊死因子(TNF)-αである、請求項1又は4記載の医薬組成物。
前記パッケージングされたゲノムが、突然変異Fタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該突然変異Fタンパク質が、前記キメラNDVによって発現され、かつ該突然変異Fタンパク質が、突然変異した切断部位を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記パッケージングされたゲノムが、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ該突然変異Fタンパク質が、前記キメラNDVによって発現される、請求項1〜11のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記医薬組成物は、前記キメラNDVが、養子Tリンパ球とのさらなる併用で前記対象に投与されるように用いられる、請求項1〜18のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記癌が、メラノーマ、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、腎細胞癌、膵臓癌、中皮腫、非ホジキン病、前立腺癌、唾液腺癌、肉腫、甲状腺癌、子宮癌、ホジキン病、子宮内膜癌、食道癌、多形性膠芽腫、肝細胞癌、肺癌、又は頭頸部扁平上皮細胞癌である、請求項1〜19のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記癌が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、腎細胞癌、悪性メラノーマ、悪性神経膠腫、膵腺癌、悪性中皮腫、肺腺癌、肺小細胞癌、肺扁平上皮細胞癌、胃癌、口腔癌、鼻腔癌、咽喉癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、癌細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、髄膜腫、皮膚癌、メラノーマ、神経芽腫、又は網膜芽腫である、請求項1〜19のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記癌が、白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨肉腫及び結合組織肉腫、脳腫瘍、乳癌、副腎癌、甲状腺癌、膵癌、下垂体癌、眼癌、腟癌、外陰癌、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、肺癌、精巣癌、陰茎癌、口腔癌、基底癌、唾液腺癌、咽頭癌、皮膚癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、粘液肉腫、骨肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、又は乳頭腺癌である、請求項1〜19のいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0099】
(5.詳細な説明)
一態様において、本明細書に提示されるのは、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたキメラニューカッスル病ウイルス(NDV)である。具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含み、該アゴニストが発現される、キメラNDVである。具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含み、該アンタゴニストが発現される、キメラNDVである。
【0100】
別の態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)を増殖させる方法である。本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)は、NDV感染を起こしやすい任意の細胞、対象、組織、器官、又は動物で増殖させることができる。
【0101】
別の態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)を含む組成物である。具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。別の実施態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)に感染させた癌細胞及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。別の実施態様において、本明細書に提示されるのは、溶解したNDV感染癌細胞(例えば、キメラNDV感染癌細胞)由来のタンパク質濃縮物及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0102】
別の態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)を含む医薬組成物を製造する方法である。一実施態様において、医薬組成物を製造する方法は:(a)本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)を、NDV感染を起こしやすい細胞株で増殖させること;及び(b)子孫ウイルスを回収することを含み、ここで、該ウイルスは、該子孫ウイルスが医薬組成物への製剤化に適するように、該ウイルスが夾雑物質を含まない十分な量まで及びそのような十分な条件下で成長させられる。別の実施態様において、医薬組成物を製造する方法は:(a)本明細書に記載のNDV(例えば、本明細書に記載のキメラNDV)を孵化卵中で増殖させること;及び(b)子孫ウイルスを回収することを含み、ここで、該ウイルスは、該子孫ウイルスが医薬組成物への製剤化に適するように、該ウイルスが夾雑物質を含まない十分な量まで及びそのような十分な条件下で成長させられる。
【0103】
別の態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又はそのようなキメラNDVを含む組成物を用いて癌を治療する方法である。具体的な実施態様において、癌を治療する方法は、対象の癌細胞を、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物に感染させることを含む。別の実施態様において、癌を治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物を投与することを含む。具体的な実施態様において、有効量の本明細書に記載のキメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又は有効量の本明細書に記載のキメラNDVを含む組成物は、癌を治療するために対象に投与される。具体的な実施態様において、該キメラNDVは、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト(例えば、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニスト)及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト(例えば、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニスト)を含むパッケージングされたゲノムを含み、ここで、該アゴニスト及び/又はアンタゴニストは、該NDVによって発現される。ある実施態様において、該NDVのゲノムは、突然変異Fタンパク質も含む。ある実施態様において、2以上のキメラNDVは、癌を治療するために対象に投与される。
【0104】
別の実施態様において、癌を治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物に感染させた癌細胞を投与することを含む。具体的な実施態様において、該癌細胞は、該対象に投与する前に又は該医薬組成物に組み込む前にγ線で処理されたものである。別の実施態様において、癌を治療する方法は、それを必要とする対象に、キメラNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物に感染させた癌細胞由来のタンパク質濃縮物又は形質膜断片を投与することを含む。具体的な実施態様において、該キメラNDVは、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト(例えば、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニスト)及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト(例えば、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニスト)を含むパッケージングされたゲノムを含み、ここで、該アゴニスト及び/又はアンタゴニストは、該NDVによって発現される。ある実施態様において、該NDVのゲノムは、該NDVによって発現される突然変異Fタンパク質も含む。
【0105】
別の態様において、本明細書に提示されるのは、本明細書に記載のNDV(例えば、下の第5.2節に記載されているようなキメラNDV)又はそのようなNDVを含む組成物を1以上の他の療法と組み合わせて用いて癌を治療する方法である。一実施態様において、本明細書に提示されるのは、癌を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載のNDV(例えば、下の第5.2節に記載されているようなキメラNDV)及び1以上の他の療法を投与することを含む、方法である。別の実施態様において、本明細書に提示されるのは、癌を治療する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載のNDV又は有効量の本明細書に記載のNDVを含む組成物、及び1以上の他の療法を投与することを含む、方法である。該NDV及び1以上の他の療法は、該対象に同時に又は連続的に投与することができる。ある実施態様において、該NDV及び1以上の他の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、該NDV及び1以上の他の療法は、異なる組成物中で投与される。該NDV及び1以上の他の療法は、同じ又は異なる投与経路で該対象に投与することができる。
【0106】
限定されないが、天然株、変異体もしくは突然変異体、突然変異を誘発させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む任意のNDV型又は株を本明細書に開示される併用療法で使用することができる。具体的な実施態様において、1以上の他の療法と組み合わせて使用されるNDVは、天然株である。別の実施態様において、1以上の他の療法と組み合わせて使用されるNDVは、キメラNDVである。具体的な実施態様において、該キメラNDVは、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-17、又はIL-21)を含む、パッケージングされたゲノムを含む。具体的な実施態様において、該キメラNDVは、腫瘍抗原を含むパッケージングされたゲノムを含む。具体的な実施態様において、該腫瘍抗原は、該キメラNDVに感染させた細胞によって発現される。別の具体的な実施態様において、該キメラNDVは、アポトーシス促進分子(例えば、Bax、Bak、Bad、BID、Bcl-xS、Bim、Noxa、Puma、AIF、FasL、及びTRAIL)又は抗アポトーシス分子(例えば、Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、及びXIAP)を含む、パッケージングされたゲノムを含む。具体的な実施態様において、該アポトーシス促進分子又は抗アポトーシス分子は、該キメラNDVに感染させた細胞によって発現される。別の具体的な実施態様において、該キメラNDVは、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト(例えば、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニスト)及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト(例えば、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニスト)を含むパッケージングされたゲノムを含む。具体的な実施態様において、該アゴニスト及び/又はアンタゴニストは、該キメラNDVに感染させた細胞によって発現される。ある実施態様において、該NDVのゲノムは、突然変異Fタンパク質、腫瘍抗原、異種インターフェロンアンタゴニスト、アポトーシス促進分子、及び/又は抗アポトーシス分子も含む。ある実施態様において、本明細書に記載のNDVと組み合わせて使用される1以上の療法は、下の第5.6.4節に記載の1以上の他の療法である。特定の実施態様において、本明細書に記載のNDVと組み合わせて使用される1以上の療法は、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストである。例えば、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストの例については、下の第5.2.1節を参照されたい。具体的な実施態様において、該免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストは、下の第6節に記載の抗CTLA-4抗体である。別の具体的な実施態様において、該免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストは、下の第6節に記載のICOSリガンドである。
【0107】
(5.1 ニューカッスル病ウイルス)
限定されないが、天然株、変異体もしくは突然変異体、突然変異を誘発させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む任意のNDV型又は株を本明細書に開示される併用療法で使用することができる。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、天然株である。ある実施態様において、該NDVは、溶解性株である。他の実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、非溶解性株である。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、長潜伏期性株である。いくつかの実施態様において、該NDVは、亜病原性株である。他の実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、短潜伏期性株である。NDV株の具体的な例としては、73-T株、NDV HUJ株、Ulster株、MTH-68株、Italien株、Hickman株、PV701株、Hitchner B1株(例えば、Genbank No. AF309418又はNC_002617参照)、La Sota株(例えば、Genbank No. AY845400参照)、YG97株、MET95株、Roakin株、及びF48E9株が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、Hitchner B1株である。別の具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、Genbank No. AF309418又はNC_002617によって特定されるB1株である。別の具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、ATCC No. VR2239によって特定されるNDVである。別の具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、La Sota株である。
【0108】
具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、当業者に公知の技術によって評価したとき、鳥で病原性がない。ある具体的な実施態様において、併用療法で使用されるNDVは、1日齢のニワトリへの該ウイルスの頭蓋内注射、並びに8日間スコアリングしたときの疾患発症及び死によって評価したとき、病原性ではない。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、又は0.1未満の頭蓋内病原性指数を有する。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、0という頭蓋内病原性指数を有する。
【0109】
ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、当業者に公知の技術によって評価したとき、鳥で病原性があるとは考えられないように遺伝子改変された亜病原性株である。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、当業者に公知の技術によって評価したとき、鳥で病原性があるとは考えられないように遺伝子改変された短潜伏期性株である。
【0110】
ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、突然変異Fタンパク質を発現する。具体的な実施態様において、併用療法で使用されるNDVは、高融合原性で、かつ合胞体を形成することができる突然変異Fタンパク質を発現する。別の具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質はビリオンに取り込まれる。
【0111】
一実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVのゲノムは、突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、突然変異Fタンパク質を発現するように改変され、ここで、該Fタンパク質の切断部位は、多塩基性アミノ酸配列を生成させるように突然変異させられ、それにより、該タンパク質は、細胞内プロテアーゼによって切断されることが可能になり、それにより、該ウイルスは、細胞に侵入し、合胞体を形成するのにより効果的になる。別の具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、突然変異Fタンパク質を発現するように改変され、ここで、該Fタンパク質の切断部位は、1つ又は2つの追加のアルギニン残基を含む切断部位と置き換えられ、それにより、該突然変異切断部位は、広範に発現されるフューリンファミリーのプロテアーゼによって活性化されることが可能になる。そのような突然変異Fタンパク質を発現するNDVの具体的な例としては、rNDV/F2aa及びrNDV/F3aaが挙げられるが、これらに限定されない。突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質を産生するためにNDV Fタンパク質に導入される突然変異の説明については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Parkらの文献(2006)、二重特異性を有する改変されたウイルスワクチン構築物:鳥インフルエンザ及びニューカッスル病(Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian influenza and Newcastle disease.)、PNAS USA 103: 8203-2808を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。
【0112】
ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、該NDVが、少なくとも一部感染性を残し、インビボで複製することができるが、低い力価しか生じさせず、結果として、非病原性の無症候性レベルの感染をもたらすように、弱毒化される(例えば、Khattarらの文献、2009, J. Virol. 83:7779-7782を参照されたい)。具体的な実施態様において、該NDVは、Vタンパク質の欠失によって弱毒化される。そのような弱毒化NDVは、該ウイルスが、免疫原、例えば、生ワクチンとして作用するために対象に投与される実施態様に特に適する場合がある。該ウイルスは、当技術分野で公知の任意の方法によって弱毒化することができる。
【0113】
ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、NDV Vタンパク質コード配列を含まない。他の実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、突然変異Vタンパク質を発現する。突然変異Vタンパク質の例については、例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、Elankumaranらの文献、2010, J. Virol. 84(8): 3835-3844を参照されたい。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用される亜病原性又は短潜伏期性NDV株は、Elankumaranらの文献、2010, J. Virol. 84(8): 3835-3844に開示されているような突然変異Vタンパク質を発現する。
【0114】
ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国特許第7,442,379号、米国特許第6,451,323号、又は米国特許第6,146,642号に開示されているNDVである。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、異種ペプチド又はタンパク質をコードし、発現するように遺伝子改変される。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、当業者に公知のキメラNDV、又は本明細書に開示されるキメラNDV(例えば、下の第5.2節参照)である。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、腫瘍抗原(腫瘍抗原の例については、下記参照)を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、異種インターフェロンアンタゴニスト(異種インターフェロンアンタゴニストの例については、下記参照)を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0058141号に開示されているキメラNDVである。ある実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0122185号に開示されているキメラNDVである。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、例えば、IL-2、IL-7、IL-9、IL-15、IL-17、IL-21、IL-22、IFN-γ、GM-CSF、及びTNF-αなどのサイトカインを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、IL-2、IL-15、又はIL-21を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、下の第7節、実施例2に記載のサイトカインを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。
【0115】
(5.2 キメラニューカッスル病ウイルス)
一態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、T-リンパ球又はナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。いくつかの実施態様において、該アゴニスト及び/又はアンタゴニストは、ビリオンに取り込まれる。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストを発現するように改変される。別の具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変される。言い換えると、該NDVは、例えば、T-リンパ球又はナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変される「骨格」としての役割を果たす。共刺激シグナルのアゴニストの具体例及び抑制シグナルのアンタゴニストの具体例は、以下に提供されている。
【0116】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びに突然変異Fタンパク質を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。一実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及び突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。別の実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及び突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は高融合原性であり、かつ合胞体を形成することができる。別の具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質はビリオンに取り込まれる。ある実施態様において、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたNDVのゲノムは、NDV Vタンパク質コード配列を含む。
【0117】
一実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びに突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。具体的な実施態様において、該NDVは、突然変異Fタンパク質を発現するように改変され、ここで、該Fタンパク質の切断部位は、多塩基性アミノ酸配列を生成させるように突然変異させられ、それにより、該タンパク質は、細胞内プロテアーゼによって切断されることが可能になり、それにより、該ウイルスは、細胞に侵入し、合胞体を形成するのにより効果的になる。別の具体的な実施態様において、該NDVは、突然変異Fタンパク質を発現するように改変され、ここで、該Fタンパク質の切断部位は、1つ又は2つの追加のアルギニン残基を含む切断部位と置き換えられ、それにより、該突然変異切断部位は、広範に発現されるフューリンファミリーのプロテアーゼによって活性化されることが可能になる。そのような突然変異Fタンパク質を発現するNDVの具体的な例としては、rNDV/F2aa及びrNDV/F3aaが挙げられるが、これらに限定されない。突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質を産生するためにNDV Fタンパク質に導入される突然変異の説明については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Parkらの文献(2006)、二重特異性を有する改変されたウイルスワクチン構築物:鳥インフルエンザ及びニューカッスル病(Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian influenza and Newcastle disease.)、PNAS USA 103: 8203-2808を参照されたい。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0118】
いくつかの実施態様において、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたNDVのゲノムは、Elankumaranらの文献、2010, J. Virol. 84(8): 3835-3844に開示されているような、突然変異したNDV Vタンパク質コード配列を含む。他の実施態様において、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたNDVのゲノムは、NDV Vタンパク質コード配列を含まない。ある実施態様において、該キメラNDVのもとの骨格は、Elankumaranらの文献、2010, J. Virol. 84(8): 3835-3844に開示されているような、突然変異Vタンパク質を発現するように改変されている亜病原性又は短潜伏期性NDV株である。
【0119】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びにサイトカインを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及びサイトカインを発現するように改変される。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及びサイトカインを発現するように改変される。サイトカインの具体的な例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-9、IL-15、IL-17、IL-21、IL-22、インターフェロン(IFN)γ、GM-CSF、及び腫瘍壊死因子(TNF)-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、突然変異Fタンパク質、並びにサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-9、IL-15、IL-17、IL-21、IL-22、IFN-γ、GM-CSF、及びTNF-α)を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、高融合原性である。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、突然変異切断部位(例えば、本明細書に記載されているもの)を有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、アミノ酸突然変異L289Aを含む。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0121】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、例えば、IL-7、IL-15、IL-21などのサイトカイン、又は本明細書に記載のもしくは当業者に公知の別のサイトカインを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。サイトカインを発現するように改変されたキメラNDV及びそのようなキメラNDVを産生する方法の例については、例えば、第7節を参照されたい。
【0122】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、(i)免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びに(ii)腫瘍抗原を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及び腫瘍抗原を発現するように改変される。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及び腫瘍抗原を発現するように改変される。
【0123】
腫瘍抗原には、腫瘍関連抗原及び腫瘍特異的抗原が含まれる。腫瘍抗原の具体的な例としては、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、p-15、gp100、MART-1/MelanA、TRP-1(gp75)、チロシナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ4、β-カテニン、MUM-1、CDK4、HER-2/neu、ヒトパピローマウイルス-E6、ヒトパピローマウイルスE7、CD20、癌胎児性抗原(CEA)、上皮成長因子受容体、MUC-1、カスパーゼ-8、CD5、ムチン-1、ルイスx、CA-125、p185HER2、IL-2R、Fap-α、テネイシン、メタロプロテイナーゼと関連する抗原、及びCAMPATH-1が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、KS 1/4汎癌抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺酸性ホスフェート、前立腺特異的抗原、メラノーマ関連抗原p97、メラノーマ抗原gp75、高分子量メラノーマ抗原(HMW-MAA)、前立腺特異的膜抗原、CEA、多形性上皮ムチン抗原、乳脂肪球抗原、結腸直腸腫瘍関連抗原(例えば: CEA、TAG-72、CO17-1A、GICA 19-9、CTA-1、及びLEA)、バーキットリンパ腫抗原-38.13、CD19、Bリンパ腫抗原−CD20、CD33、メラノーマ特異的抗原(例えば、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドGM3)、腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA)(例えば、DNA腫瘍ウイルスのT抗原及びRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を含むウイルス誘導性腫瘍抗原)、癌胎児抗原-α-フェトタンパク質、例えば、結腸のCEA、膀胱腫瘍癌胎児抗原、分化抗原(例えば、ヒト肺癌抗原L6及びL20)、線維肉腫の抗原、白血病T細胞抗原-Gp37、新生糖タンパク質、スフィンゴ脂質、乳癌抗原(例えば、EGFR(上皮成長因子受容体)、HER2抗原(p185
HER2)及びHER2 neuエピトープ)、多形性上皮ムチン(PEM)、悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1、分化抗原(例えば、胎児赤血球、初期内胚葉に見られるI抗原、成体赤血球、着床前胚に見られるI抗原、胃腺癌に見られるI(Ma)、M18、乳房上皮に見られるM39、骨髄細胞に見られるSSEA-1、VEP8、VEP9、Myl、VIM-D5、結腸直腸癌に見られるD
156-22、TRA-1-85(血液型H)、結腸腺癌に見られるC14、肺腺癌に見られるF3、胃癌に見られるAH6、Yハプテン、胎生期癌細胞に見られるLe
y、TL5(血液型A)、A431細胞に見られるEGF受容体、膵癌に見られるE
1系列(血液型B)、胎生期癌細胞に見られるFC10.2、胃腺癌抗原、腺癌に見られるCO-514(血液型Le
a)、腺癌に見られるNS-10、CO-43(血液型Le
b)、A431細胞のEGF受容体に見られるG49、結腸腺癌に見られるMH2(血液型ALe
b/Le
y)、結腸癌に見られる19.9、胃癌ムチン、骨髄細胞に見られるT
5A
7、メラノーマに見られるR
24、胎生期癌細胞に見られる4.2、G
D3、D1.1、OFA-1、G
M2、OFA-2、G
D2、及びM1:22:25:8、並びに4〜8細胞期胚に見られるSSEA-3及びSSEA-4)、皮膚T細胞リンパ腫のT細胞受容体由来ペプチド、C反応性タンパク質(CRP)、癌抗原-50(CA-50)、乳癌と関連する癌抗原15-3(CA15-3)、消化器癌と関連する癌抗原-19(CA-19)及び癌抗原-242、癌関連抗原(CAA)、クロモグラニンA、上皮ムチン抗原(MC5)、ヒト上皮特異的抗原(E1A)、ルイス(a)抗原、メラノーマ抗原、メラノーマ関連抗原100、25、及び150、ムチン様癌関連抗原、多剤耐性関連タンパク質(MRPm6)、多剤耐性関連タンパク質(MRP41)、Neu癌遺伝子タンパク質(C-erbB-2)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、P-糖タンパク質(mdr1遺伝子産物)、多剤耐性関連抗原、p170、多剤耐性関連抗原、前立腺特異的抗原(PSA)、CD56、並びにNCAMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、突然変異Fタンパク質、並びに腫瘍抗原を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、高融合原性である。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、突然変異切断部位(例えば、本明細書に記載のもの)を有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、アミノ酸突然変異L289Aを含む。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0125】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、(i)免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びに(ii)異種インターフェロンアンタゴニストを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及び異種インターフェロンアンタゴニストを発現するように改変される。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及び異種インターフェロンアンタゴニストを発現するように改変される。異種インターフェロンアンタゴニストを発現するように改変されたキメラNDVの例については、例えば、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2012-0058141号を参照されたい。
【0126】
インターフェロンアンタゴニストは、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる:米国特許第6,635,416号;第7,060,430号;及び第7,442,527号に記載されている技術を含む、当業者に公知の任意の技術を用いて同定することができる。具体的な実施態様において、該異種インターフェロンアンタゴニストは、ウイルスタンパク質である。そのようなウイルスタンパク質を任意のウイルスから入手し又は任意のウイルスから得ることができ、該ウイルスは、任意の種に感染することができる(例えば、該ウイルスは、ヒト又は非ヒト哺乳動物に感染することができる)。例示的な異種インターフェロンアンタゴニストとしては、限定するものではないが、ニパウイルスWタンパク質、ニパVタンパク質、エボラウイルスVP35タンパク質、ワクシニアウイルスE3Lタンパク質、インフルエンザウイルスNS1タンパク質、呼吸器合胞体ウイルス(RSV) NS2タンパク質、1型単純ヘルペスウイルス(HSV) ICP34.5タンパク質、C型肝炎ウイルスNS3-4プロテアーゼ、自然免疫の誘導又は自然免疫に対する応答を遮断するドミナントネガティブ型細胞タンパク質(例えば、STAT1、MyD88、IKK、及びTBK)、並びに自然免疫応答の細胞性調節因子(例えば、SOCSタンパク質、PIASタンパク質、CYLDタンパク質、IkBタンパク質、Atg5タンパク質、Pin1タンパク質、IRAK-Mタンパク質、及びUBP43)が挙げられる。異種インターフェロンアンタゴニストに関するさらなる情報については、例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2012-0058141号を参照されたい。
【0127】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、突然変異Fタンパク質、並びに異種インターフェロンアンタゴニストを発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、高融合原性である。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、突然変異切断部位(例えば、本明細書に記載のもの)を有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、アミノ酸突然変異L289Aを含む。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0128】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びにアポトーシス促進分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及びアポトーシス促進分子を発現するように改変される。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及びアポトーシス促進分子を発現するように改変される。アポトーシス促進分子の具体的な例としては、Bax、Bak、Bad、BID、Bcl-xS、Bim、Noxa、Puma、AIF、FasL、及びTRAILが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、突然変異Fタンパク質、並びにアポトーシス促進分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、高融合原性である。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、突然変異切断部位(例えば、本明細書に記載のもの)を有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、アミノ酸突然変異L289Aを含む。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0130】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、並びに抗アポトーシス分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト、及び抗アポトーシス分子を発現するように改変される。具体的な実施態様において、NDVのゲノムは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、及び抗アポトーシス分子を発現するように改変される。抗アポトーシス分子の具体的な例としては、Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、及びXIAPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニスト、突然変異Fタンパク質、並びに抗アポトーシス分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、高融合原性である。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、突然変異切断部位(例えば、本明細書に記載のもの)を有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、アミノ酸突然変異L289Aを含む。いくつかの実施態様において、該キメラNDVは、アミノ酸突然変異L289Aを有する突然変異Fタンパク質を発現するように改変される。ある実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDVとは異なる型又は株のNDVに由来するものである。具体的な実施態様において、該L289A突然変異Fタンパク質は、1つ、2つ、又は3つのアルギニン残基を該切断部位に保有する。いくつかの実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に付加されたものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、骨格NDV Fタンパク質に置き換わるものである。具体的な実施態様において、該突然変異Fタンパク質は、ビリオンに取り込まれる。
【0132】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、アポトーシス促進分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。ある態様において、本明細書に提供されるのは、抗アポトーシス分子を発現するように改変されたゲノムを含むキメラNDVである。アポトーシス促進分子及び抗アポトーシス分子の例は、本明細書に提供されている。
【0133】
限定されないが、天然株、変異体もしくは突然変異体、突然変異を誘発させたウイルス、再集合体、及び/又は遺伝子改変ウイルスを含む、任意のNDV型又は株を、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変され、ある実施態様においては、サイトカイン、腫瘍抗原、異種インターフェロンアンタゴニスト、アポトーシス促進分子、抗アポトーシス分子、及び/又は突然変異Fタンパク質を発現するように改変されている骨格として使用することができる。具体的な実施態様において、本明細書に開示される併用療法で使用されるNDVは、天然株である。ある実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、溶解性株である。他の実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、非溶解性株である。ある実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、長潜伏期性株である。いくつかの実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、亜病原性株である。他の実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、短潜伏期性株である。NDV種の具体的な例としては、73-T株、NDV HUJ株、Ulster株、MTH-68株、Italien株、Hickman株、PV701株、Hitchner B1株、La Sota株(例えば、Genbank No. AY845400参照)、YG97株、MET95株、Roakin株、及びF48E9株が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、Hitchner B1株である。別の具体的な実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、Genbank No. AF309418又はNC_002617によって特定されるB1株である。別の具体的な実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、ATCC No. VR2239によって特定されるNDVである。別の具体的な実施態様において、遺伝子改変の骨格としての役割を果たすNDVは、La Sota株である。
【0134】
ある実施態様において、キメラNDVが、少なくとも一部感染性を残し、インビボで複製することができるが、低い力価しか生じさせず、結果として、非病原性の無症候性レベルの感染をもたらすような、キメラNDVの弱毒化、又はさらなる弱毒化が望ましい(例えば、Khattarらの文献、2009, J. Virol. 83:7779-7782を参照されたい)。具体的な実施態様において、該NDVは、Vタンパク質の欠失によって弱毒化される。そのような弱毒化NDVは、該ウイルスが、免疫原、例えば、生ワクチンとして作用するために対象に投与される実施態様に特に適する場合がある。該ウイルスは、当技術分野で公知の任意の方法によって弱毒化することができる。
【0135】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、以下のもの:(1)免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト;(2)免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト;(3)サイトカイン;(4)腫瘍抗原;(5)異種インターフェロンアンタゴニスト;(6)アポトーシス促進分子;(7)抗アポトーシス分子;及び/又は(8)突然変異Fタンパク質うちの1つ、2つ、3つ、もしくはそれより多く、又は全て、並びに自殺遺伝子を発現する。具体的な実施態様において、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、ある実施態様においては、突然変異Fタンパク質及びサイトカインを発現することに加えて、キメラNDVは、自殺遺伝子(例えば、チミジンキナーゼ)又はNDVの複製もしくは機能を阻害する別の分子(NDVを抗生物質もしくは抗ウイルス剤に対して感受性にする遺伝子)を発現するように改変される。いくつかの実施態様において、例えば、Tリンパ球又はNK細胞などの、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト、ある実施態様においては、突然変異Fタンパク質及びサイトカインを発現することに加えて、キメラNDVは、組織特異的マイクロRNA(miRNA)標的部位(例えば、miR-21、miR-184、miR-133a/133b、miR-137、及び/又はmiR-193aマイクロRNAによって標的とされる部位)をコードするように改変される。
【0136】
ある実施態様において、キメラNDVの指向性が改変される。具体的な実施態様において、該ウイルスの指向性は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)及びウロキナーゼなどの組織特異的又は腫瘍特異的プロテアーゼによって認識されるようにFタンパク質切断部位の修飾によって改変される。他の実施態様において、該ウイルスの指向性は、組織特異的miRNA標的部位の導入によって改変される。ある実施態様において、NDV HNタンパク質は、腫瘍特異的受容体を認識するように突然変異させられる。
【0137】
ある実施態様において、以下のもの:(1)免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト;(2)免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト;(3)サイトカイン;(4)腫瘍抗原;(5)異種インターフェロンアンタゴニスト;(6)アポトーシス促進分子;(7)抗アポトーシス分子;及び/又は(8)突然変異Fタンパク質うちの1つ又は複数が、キメラNDVによって、キメラタンパク又は融合タンパク質として発現される。具体的な実施態様において、該キメラタンパク質又は融合タンパク質は、NDV Fタンパク質又はNDV HNタンパク質の膜貫通及び細胞質ドメイン又はその断片、並びに前の文に言及された分子のうちの1つを含む細胞外ドメインを含む。そのようなキメラタンパク質又は融合タンパク質の説明に関する米国特許出願第2012-0122185号と、国際出願公開WO 2007/064802号とを参照されたく、これらは、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0138】
本明細書中の実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストは、骨格NDVのゲノムの2つの転写ユニットの間に挿入することができる。具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストは、骨格NDVのゲノムのM転写ユニットとP転写ユニットの間又はHN転写ユニットとL転写ユニットの間に挿入される。本明細書中の他の実施態様によれば、サイトカイン、腫瘍抗原、異種インターフェロンアンタゴニスト、アポトーシス促進分子、抗アポトーシス分子、及び/又は突然変異Fタンパク質は、骨格NDVのゲノムの2以上の転写ユニットの間(例えば、M転写ユニットとP転写ユニットの間又はHN転写ユニットとL転写ユニットの間)に挿入される。
【0139】
(5.2.1.免疫細胞刺激剤)
本明細書に記載のキメラNDVは、当業者に公知の、例えば、T-リンパ球、NK細胞、又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)などの免疫細胞の任意の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は任意の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変することができる。具体的な実施態様において、該アゴニスト及び/又はアンタゴニストは、免疫細胞のヒト共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞のヒト抑制シグナルのアンタゴニストである。ある実施態様において、該共刺激シグナルのアゴニストは、例えば、Tリンパ球(例えば、CD4+もしくはCD8+ Tリンパ球)、NK細胞、及び/又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)などの免疫細胞に見られる共刺激分子(例えば、共刺激受容体)のアゴニストである。共刺激分子の具体的な例としては、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS又はCD278)、OX40(CD134)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、CD40、リンホトキシンα(LTα)、LIGHT(リンホトキシン様、誘導性発現を示し、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質DとHVEMを競合する、Tリンパ球によって発現される受容体)、CD226、細胞傷害性及び調節性T細胞分子(CRTAM)、死受容体3(DR3)、リンホトキシン-β受容体(LTBR)、膜貫通活性化因子及びCAML相互作用因子(TACI)、B細胞活性化因子受容体(BAFFR)、並びにB細胞成熟タンパク質(BCMA)が挙げられる。具体的な実施態様において、該アゴニストは、免疫細胞のヒト共刺激受容体のアゴニストである。ある実施態様において、該共刺激受容体のアゴニストは、ICOSのアゴニストではない。いくつかの実施態様において、該アンタゴニストは、例えば、Tリンパ球(例えば、CD4+もしくはCD8+ Tリンパ球)、NK細胞、及び/又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)などの免疫細胞に見られる抑制性分子(例えば、抑制受容体)のアンタゴニストである。抑制性分子の具体的な例としては、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4又はCD52)、プログラム細胞死タンパク質1(PD1又はCD279)、B及びT-リンパ球アテニュエーター(BTLA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、CD160、アデノシンA2a 受容体(A2aR)、免疫グロブリンドメインとITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、並びにCD160が挙げられる。具体的な実施態様において、該アンタゴニストは、免疫細胞のヒト抑制受容体のアンタゴニストである。
【0140】
具体的な実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは、該共刺激受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片である。共刺激受容体の具体的な例としては、GITR、ICOS、OX40、CD27、CD28、4-1BB、CD40、、LTα、LIGHT、CD226、CRTAM、DR3、LTBR、TACI、BAFFR、及びBCMAが挙げられる。ある具体的な実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。他の具体的な実施態様において、該抗体は、sc-Fvである。具体的な実施態様において、該抗体は、免疫細胞上の2つの受容体に結合する二重特異性抗体である。他の実施態様において、該二重特異性抗体は、免疫細胞上の受容体及び癌細胞上の別の受容体に結合する。具体的な実施態様において、該抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。いくつかの実施態様において、該抗体は、NDV Fタンパク質もしくはその断片、又はNDV HNタンパク質もしくはその断片を有するキメラタンパク質として発現される。キメラFタンパク質又はキメラHNタンパク質の作製に関する説明については、例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0122185号を参照されたい。具体的な実施態様において、該キメラタンパク質は、下の第6節及び/又は第7節に記載のキメラFタンパク質である。キメラICOSL-Fタンパク質及びキメラCD28-Fタンパク質を作製するための下記の技術を用いて、他のキメラFタンパク質又はキメラHNタンパク質を作製することができる。
【0141】
別の実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは、該共刺激受容体のリガンドである。ある実施態様において、該リガンドは、天然リガンドの断片である。天然リガンドの具体的な例としては、ICOSL、B7RP1、CD137L、OX40L、CD70、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD80、及びCD86が挙げられる。天然リガンドをコードするヌクレオチド配列及び天然リガンドのアミノ酸配列は当技術分野で公知である。例えば、B7RP1(別名、ICOSLとして知られている; GenBankヒト: NM_015259.4、NP_056074.1、マウス: NM_015790.3、NP_056605.1)、CD137L(GenBankヒト: NM_003811.3、NP_003802.1、マウス: NM_009404.3、NP_033430.1)、OX40L(GenBankヒト: NM_003326.3、NP_003317.1、マウス: NM_009452.2、NP_033478.1)、CD70(GenBankヒト: NM_001252.3、NP_001243.1、マウス: NM_011617.2、AAD00274.1)、CD80(GenBankヒト: NM_005191.3、NP_005182.1、マウス: NM_009855.2、NP_033985.3)、及びCD86(GenBankヒト: NM_005191.3、CAG46642.1、マウス: NM_019388.3、NP_062261.3)のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列をGenBankで見出すことができる。他の実施態様において、該リガンドは、天然リガンドの誘導体である。いくつかの実施態様において、該リガンドは、共刺激受容体に特異的に結合する天然リガンド又は天然リガンドの誘導体の少なくとも一部と異種アミノ酸配列とを含む融合タンパク質である。具体的な実施態様において、該融合タンパク質は、共刺激受容体に特異的に結合する天然リガンド又は天然リガンドの誘導体少なくとも一部と免疫グロブリンのFc部分又はその断片とを含む。リガンド融合タンパク質の一例は、免疫グロブリンのFc部分に融合した4-1BBリガンド(Meseck Mらの文献、J Immunother. 2011 34:175-82に記載されている)である。いくつかの実施態様において、該リガンドは、NDV Fタンパク質もしくはその断片、又はNDV HNタンパク質もしくはその断片を有するキメラタンパク質として発現される。具体的な実施態様において、該タンパク質は、下の第7節に記載のキメラHNタンパク質である。キメラHN-GITRL、キメラHN-OX40-L、キメラHN-4-1BBL、及び/又はキメラHN-CD40Lを作製するための下記の技術を用いて、他のキメラFタンパク質又はキメラHNタンパク質を作製することができる。
【0142】
別の実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは、該抑制受容体の天然リガンドに特異的に結合し、かつ該天然リガンドが該抑制受容体に結合して、抑制シグナル(複数可)を伝達するのを遮断する、抗体(もしくは抗原結合断片)又は可溶性受容体である。抑制受容体の天然リガンドの具体的な例としては、PDL-1、PDL-2、B7-H3、B7-H4、HVEM、Gal9、及びアデノシンが挙げられる。天然リガンドに結合する抑制受容体の具体的な例としては、CTLA-4、PD-1、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、及びA2aRが挙げられる。
【0143】
具体的な実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは、該抑制受容体の天然リガンドに特異的に結合し、かつ該天然リガンドが該抑制受容体に結合して、抑制シグナル(複数可)を伝達するのを遮断する、可溶性受容体である。ある実施態様において、該可溶性受容体は、天然リガンドに特異的に結合する天然の抑制受容体の断片又は天然の抑制受容体の誘導体の断片(例えば、天然の抑制受容体又は抑制受容体の誘導体の細胞外ドメイン)である。いくつかの実施態様において、該可溶性受容体は、天然の抑制受容体又は天然の抑制受容体の誘導体(例えば、天然の抑制受容体又は天然の抑制受容体の誘導体の細胞外ドメイン)の少なくとも一部と異種アミノ酸配列とを含む融合タンパク質である。具体的な実施態様において、該融合タンパク質は、天然の抑制受容体又は天然の抑制受容体の誘導体の少なくとも一部と免疫グロブリンのFc部分又はその断片とを含む。可溶性受容体融合タンパク質の一例は、LAG3-Ig融合タンパク質(Huard Bらの文献、Eur J Immunol. 1995 25:2718-21に記載されている)である。
【0144】
具体的な実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは、該抑制受容体の天然リガンドに特異的に結合し、かつ該天然リガンドが該抑制受容体に結合して、抑制シグナル(複数可)をする伝達するのを遮断する、抗体(又は抗原結合断片)である。ある具体的な実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。他の具体的な実施態様において、該抗体は、scFvである。特定の実施態様において、該抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。抑制性リガンドに対する抗体の具体的な例は、抗PD-L1抗体(Iwai Yの文献、PNAS 2002; 99:12293-12297)である。
【0145】
別の実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは、該抑制受容体に結合するが、抑制シグナル(複数可)を伝達しない、抗体(もしくは抗原結合断片)又はリガンドである。抑制受容体の具体的な例としては、CTLA-4、PD1、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、及びA2aRが挙げられる。ある具体的な実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。他の具体的な実施態様において、該抗体は、scFvである。特定の実施態様において、該抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。抑制受容体に対する抗体の具体的な例は、抗CTLA-4抗体(Leach DRらの文献、Science 1996; 271: 1734-1736)である。抑制受容体に対する抗体の別の例は、抗PD-1抗体(Topalian SLの文献、NEJM 2012; 28:3167-75)である。
【0146】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、例えば、イピリムマブ又はトレメリムマブなどのCTLA-4のアンタゴニストに改変される。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、例えば、MDX-1106(BMS-936558)、MK3475、CT-011、AMP-224、又はMDX-1105などのPD1のアンタゴニストに改変される。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、例えば、IMP321などのLAG3のアンタゴニストを発現するように改変される。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、例えば、MGA271などの、B7-H3に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片、又はscFv)を発現するように改変される。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVは、下の第6節及び/又は第7節に記載の免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変される。具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDVは、抗CD28 scvFv、ICOSL、CD40L、OX40L、CD137L、GITRL、及び/又はCD70を発現するように改変される。
【0147】
ある実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストは、共刺激受容体のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を誘導する(例えば、選択的に誘導する)。具体的な実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは、該共刺激受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での該共刺激受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で誘導する。具体的な実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは:(i)該共刺激受容体の1つの特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での該共刺激受容体の該特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で誘導し;及び(ii)該共刺激受容体の1以上の他のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を誘導しないか、或いは該シグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での該共刺激受容体のそのような1以上の他のリガンドによって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、20%、15%、10%、5%、もしくは2%未満、又は2%〜5%、2%〜10%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、10%〜15%、もしくは15%〜20%の範囲で誘導する。
【0148】
ある実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストは、共刺激受容体のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を活性化又は増強する(例えば、選択的に活性化又は増強する)。具体的な実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは、該共刺激受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での共刺激受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で活性化又は増強する。具体的な実施態様において、共刺激受容体のアゴニストは:(i)該共刺激受容体の1つの特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での該共刺激受容体の該特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で活性化又は増強し;及び(ii)該共刺激受容体の1以上の他のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を活性化又は増強しないか、或いは該シグナル伝達経路を、該アゴニストの非存在下での該共刺激受容体のそのような1以上の他の結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、20%、15%、10%、5%、もしくは2%未満、又は2%〜5%、2%〜10%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、10%〜15%、もしくは15%〜20%の範囲で活性化又は増強する。
【0149】
いくつかの実施態様において、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストは、抑制受容体のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を(例えば、選択的に)阻害し又は低下させる。具体的な実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは、該抑制受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アンタゴニストの非存在下での該抑制受容体の1以上のそのリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で阻害し又は低下させる。具体的な実施態様において、抑制受容体のアンタゴニストは:(i)該抑制受容体の1つの特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を、該アンタゴニストの非存在下での該抑制受容体の該1つの特定のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%、又は25%〜50%、25%〜75%、50%〜75%、50%〜95%、75%〜95%、もしくは75%〜100%の範囲で阻害し又は低下させ;及び(ii)該抑制受容体の1以上の他のリガンドの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路を阻害し又は低下させないか、或いは該シグナル伝達経路を、該アンタゴニストの非存在下での抑制受容体のそのような1以上の他のリガンドへの結合によって誘導される1以上のシグナル伝達経路と比べて、20%、15%、10%、5%、もしくは2%未満、又は2%〜5%、2%〜10%、5%〜10%、5%〜15%、5%〜20%、10%〜15%、もしくは15%〜20%の範囲で阻害し又は低下させる。
【0150】
具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストは、1以上の免疫活性、機能、又は応答を誘導し、活性化し、及び/又は増強する。該1以上の免疫活性、機能、又は応答は、例えば、抗体応答(液性応答)又は細胞性免疫応答、例えば、サイトカイン分泌(例えば、インターフェロン-γ)、ヘルパー活性、又は細胞傷害性の形態であることができる。一実施態様において、免疫細胞上の活性化マーカー(例えば、CD44、グランザイム、もしくはKi-67)の発現、免疫細胞上の共刺激受容体(例えば、ICOS、CD28、OX40、もしくはCD27)の発現、共刺激受容体のリガンド(例えば、B7HRP1、CD80、CD86、OX40L、もしくはCD70)の発現、サイトカイン分泌、免疫細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、及び/もしくはNK細胞)の腫瘍への浸潤、抗体産生、エフェクター機能、T細胞活性化、T細胞分化、T細胞増殖、B細胞分化、B細胞増殖、並びに/又はNK細胞増殖は、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストとの接触後に誘導され、活性化され、及び/又は増強される。別の実施態様において、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の腫瘍浸潤及び増殖、Tregの腫瘍浸潤、活性化、及び増殖、末梢血MDSC及びTregの数は、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストとの接触後に阻害される。
【0151】
(5.3 NDVの構築)
本明細書に記載のNDVは、リバースジェネティックス技術を用いて作製することができる。リバースジェネティックス技術は、ウイルスポリメラーゼによる認識及び成熟ビリオンを生成させるのに必要なシグナルのパッケージングに不可欠なマイナス鎖のウイルスRNAの非コード領域を含む合成組換えウイルスRNAの調製を伴う。該組換えRNAは、組換えDNA鋳型から合成され、精製ウイルスポリメラーゼ複合体とともにインビトロで再構築されて、細胞にトランスフェクトするのに使用することができる組換えリボヌクレオタンパク質(RNP)を形成する。より効率的なトランスフェクションは、ウイルスポリメラーゼタンパク質がインビトロ又はインビボのどちらかにおける合成RNAの転写中に存在する場合に達成される。合成組換えRNPは、感染性ウイルス粒子中にレスキューすることができる。前述の技術は、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、1992年11月24日に発行された米国特許第5,166,057号; 1998年12月29日に発行された米国特許第5,854,037号; 2000年11月14日に発行された米国特許第6,146,642号; 1996年2月20日に公開された欧州特許公開EP 0702085A1号;米国特許出願第09/152,845号; 1997年4月3日に公開された国際特許公開PCT WO97/12032号; 1996年11月7日に公開されたWO96/34625号;欧州特許公開EP A780475号; 1999年1月21日に公開されたWO 99/02657号; 1998年11月26日に公開されたWO 98/53078号; 1998年1月22日に公開されたWO 98/02530号; 1999年4月1日に公開されたWO 99/15672号; 1998年4月2日に公開されたWO 98/13501号; 1997年2月20日に公開されたWO 97/06270号;及び1997年6月25日に公開されたEPO 780 475A1号に記載されている。
【0152】
ヘルパーフリープラスミド技術を用いて、本明細書に記載のNDVを改変することもできる。簡潔に述べると、NDV(例えば、Hitchner B1株)の完全なcDNAを構築し、プラスミドベクターに挿入し、2つの転写ユニット(例えば、NDV P遺伝子とNDV M遺伝子;又はNDV HN遺伝子とNDV L遺伝子)の間にユニークな制限部位を含むように改変することができる。異種アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列)を該ユニークな制限部位でウイルスゲノムに挿入することができる。或いは、挿入がウイルスの感染及び複製能力に影響を及ぼさない限り、異種アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は抑制シグナルのアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列)を改変して、NDV転写ユニット中に挿入することができる。単一のセグメントをT7プロモーターとδ型肝炎ウイルスリボザイムの間に位置付けて、T7ポリメラーゼから正確なマイナスの転写物を生成させる。必要なウイルスタンパク質を含むプラスミドベクター及び発現ベクターを細胞にトランスフェクトして、組換えウイルス粒子の産生をもたらす(例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、国際公開WO 01/04333号;米国特許第7,442,379号、第6,146,642号、第6,649,372号、第6,544,785号、及び第7,384,774号; Swayneらの文献(2003). Avian Dis. 47:1047-1050;並びにSwayneらの文献(2001). J. Virol. 11868-11873を参照されたい)。
【0153】
抗体を発現するキメラNDVの産生技術は、当技術分野で公知である。例えば、2つの導入遺伝子から完全IgGを発現する組換えNDVの作製については、Puhlerらの文献、Gene Ther. 15(5): 371-283(2008)を参照されたい。
【0154】
単一のmRNAから多数のタンパク質を産生する二シストロン性技術は当業者に公知である。二シストロン性技術は、IRES配列の使用により、多数のタンパク質のコード配列を単一のmRNAに改変することを可能にする。IRES配列は、RNA分子へのリボザイムの内部動員を誘導し、キャップ非依存的な様式での下流の翻訳を可能にする。簡潔に述べると、1つのタンパク質のコード領域を第二のタンパク質のORFに挿入する。挿入の両隣に、IRESと適切な発現及び/又は機能に必要な任意の非翻訳シグナル配列とを配置する。挿入は、第二のタンパク質のオープンリーディングフレームも、ポリアデニル化も、転写プロモーターも破壊してはいけない(例えば、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Garcia-Sastreらの文献、1994, J. Virol. 68:6254-6261及びGarcia-Sastreらの文献、1994 Dev. Biol. Stand. 82:237-246を参照されたい)。
【0155】
(5.4 NDVの増殖)
本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、該ウイルスを本明細書に記載のウイルスの使用を可能にする力価まで成長させる任意の基体で増殖させることができる。一実施態様において、該基体は、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、対応する野生型ウイルスについて決定された力価と同程度の力価まで成長させる。
【0156】
本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、該ウイルスによる感染を起こしやすい細胞(例えば、鳥細胞、ニワトリ細胞など)、孵化卵(例えば、鶏卵もしくはウズラ卵)、又は動物(例えば、鳥類)で成長させることができる。そのような方法は、当業者に周知である。具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、癌細胞、例えば、上皮癌(carcinoma)細胞(例えば、乳癌細胞及び前立腺癌細胞)、肉腫細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、並びに胚細胞腫瘍細胞(例えば、精巣癌細胞及び卵巣癌細胞)で増殖させることができる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、細胞株、例えば、癌細胞株、例えば、HeLa細胞、MCF7細胞、THP-1細胞、U87細胞、DU145細胞、Lncap細胞、及びT47D細胞で増殖させることができる。ある実施態様において、該細胞又は細胞株(例えば、癌細胞又は癌細胞株)をヒト(複数可)から入手し、及び/又はヒト(複数可)から得る。別の実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)をニワトリ細胞又は孵化卵で増殖させる。代表的なニワトリ細胞としては、ニワトリ胚線維芽細胞及びニワトリ胚腎臓細胞が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)をVero細胞で増殖させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、下の第6節及び/又は第7節に記載の方法に従って、癌細胞で増殖させる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を鶏卵又はウズラ卵で増殖させる。ある実施態様において、本明細書に記載のNDVウイルス(例えば、キメラNDV)をまず孵化卵で増殖させ、その後、細胞(例えば、細胞株)で増殖させる。
【0157】
本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、例えば、6〜14日齢、6〜12日齢、6〜10日齢、6〜9日齢、6〜8日齢、又は10〜12日齢の孵化卵で増殖させることができる。幼若な又は未成熟な孵化卵を用いて、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を増殖させることができる。未成熟な孵化卵は、IFNを欠損している、10日齢未満である卵、例えば、6〜9日齢又は6〜8日齢の卵を包含する。未成熟な孵化卵は、IFNシステムが10〜12日齢の卵と比較して完全には発達しないような、成長条件の変化、例えば、インキュベーション温度の変化;薬物による処理;又は発育が遅延した卵を生じさせる任意の他の変化の結果として、10日齢までの未成熟卵を人工的に模倣する卵も包含する。本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を、孵化卵の様々な場所、例えば、尿膜腔で増殖させることができる。ウイルスの成長及び増殖に関する詳細な考察については、例えば、どちらも引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,852,522号及び米国特許第7,494,808号を参照されたい。
【0158】
ウイルス単離のために、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を細胞培養物から取り出し、通常、例えば、勾配遠心分離及びカラムクロマトグラフィーなどの周知の清澄化手順によって、細胞成分から分離することができ、望ましい場合、当業者に周知の手順、例えば、プラークアッセイを用いて、さらに精製することができる。
【0159】
(5.5 組成物及び投与経路)
本明細書に包含されるのは、組成物中の本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)の使用である。また本明細書に包含されるのは、組成物中のNDV感染細胞又はNDVに感染させた全癌細胞由来の形質膜断片の使用である。具体的な実施態様において、該組成物は、免疫原性製剤(例えば、ワクチン製剤)などの医薬組成物である。該組成物を癌の治療方法で使用することができる。
【0160】
一実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)を含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の予防剤又は治療剤をさらに含む。具体的な実施態様において、医薬組成物は、医薬として許容し得る担体中に、有効量の本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)、及び任意に1以上の追加の予防剤又は治療剤を含む。いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)は、医薬組成物中に含まれる唯一の活性成分である。
【0161】
別の実施態様において、医薬組成物(例えば、腫瘍溶解性ワクチン)は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、NDVに感染させた癌細胞由来のタンパク質濃縮物又は形質膜断片調製物を含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の予防剤又は治療剤をさらに含む。別の実施態様において、医薬組成物(例えば、全細胞ワクチン)は、医薬として許容し得る担体との混合物中に、NDVに感染させた癌細胞を含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の予防剤又は治療剤をさらに含む。
【0162】
本明細書に提供される医薬組成物は、該組成物を対象に投与することを可能にする任意の形態であることができる。具体的な実施態様において、該医薬組成物は、動物及び/又はヒトへの投与に好適である。本明細書で使用されるように、「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、それとともに医薬組成物が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクル体を指す。生理食塩水溶液及び水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液は、特に注射用溶液のための液体担体として利用することもできる。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。好適な医薬担体の例は、E. W. Martin著、「レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。製剤は、投与様式に適するべきである。
【0163】
具体的な実施態様において、医薬組成物は、対象への意図された投与経路に適するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口、静脈内、動脈内、胸腔内、吸入、腹腔内、経口、皮内、結腸直腸、腹腔内、頭蓋内、及び腫瘍内投与に適するように製剤化することができる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、静脈内、動脈内、経口、腹腔内、鼻腔内、気管内、胸腔内、頭蓋内、皮下、筋肉内、局所、肺、又は腫瘍内投与用に製剤化することができる。
【0164】
(5.6 抗癌用途及び他の用途)
一態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を癌の治療で使用することができる。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物を投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物を投与することを含む、方法である。
【0165】
具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストを発現するように改変されたキメラNDV、又はその組成物を対象に投与して、癌を治療する。別の具体的な実施態様において、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変されたキメラNDV、又はその組成物を対象に投与して、癌を治療する。ある実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び突然変異Fタンパク質を発現するように改変されたキメラNDV又はその組成物を対象に投与して、癌を治療する。ある実施態様において、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニスト及び突然変異Fタンパク質を発現するように改変されたキメラNDV又はその組成物を対象に投与して、癌を治療する。
【0166】
癌を治療する方法で使用される本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞癌ワクチンを任意の次数の治療(例えば、第一次、第二次、第三次、第四次、又は第五次治療)として使用することができる。
【0167】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)は、癌を治療するために投与される唯一の活性成分である。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)は、癌を治療するために投与される組成物中の唯一の活性成分である。
【0168】
キメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物は、対象に、局所又は全身投与することができる。例えば、キメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物は、対象に、非経口的に(例えば、静脈内に、動脈内に、もしくは皮下に)、腫瘍内に、胸腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、頭蓋内に、経口的に、経直腸的に、吸入により、筋肉内に、局所に、又は皮内に投与することができる。具体的な実施態様において、キメラNDVは、例えば、肝動脈注射により、肝動脈経由で投与され、これは、画像下治療(interventional radiology)によるか又は動脈注入ポンプの留置によって行うことができる。別の具体的な実施態様において、キメラNDVは、外科手術中、腹腔鏡手術下、又は内視鏡手術下で投与される。具体的な実施態様において、キメラNDVの腹腔内投与は、直接的な注射、カテーテルによる注入、又は腹腔鏡手術中の注射によって行われる。
【0169】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法は、治療法がない癌の治療を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物は、他の従来治療の代替法として癌を治療するために対象に投与される。
【0170】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物及び下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法を投与することを含む、方法である。特定の実施態様において、1以上の療法は、癌を治療するために、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物と組み合わせて対象に投与される。具体的な実施態様において、該追加の療法は、癌の治療で使用現在使用されているものであるか、癌の治療で使用されてきたものであるか、又は癌の治療において有用であることが知られているものである。別の実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)又はその組成物は、支持療法、疼痛緩和療法、又は癌に対する治療効果を有しない他の療法と組み合わせて対象に投与される。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)と組み合わせて投与される1以上の追加の療法は、下の第5.6.4.1節に記載の療法のうちの1つ又は複数である。ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)及び1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、キメラNDV及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0171】
ある実施態様において、2つ、3つ、又は多数のNDV(1つ、2つ、又はそれより多くの本明細書に記載のキメラNDV、例えば、1つ、2つ、又はそれより多くの上の第5.2節に記載のキメラNDVを含む)は、癌を治療するために対象に投与される。癌を治療するために対象に2つ、3つ、又は多数のNDVを投与することを含む本明細書に記載の方法に従って使用される2以上のキメラNDVは、天然のキメラNDV又は異種アミノ酸配列(例えば、サイトカイン)を発現するように改変されている改変キメラNDVであることができる。第一及び第二のキメラNDVは、同じ医薬組成物又は異なる医薬組成物の部分であることができる。ある実施態様において、第一のキメラNDV及び第二のキメラNDVは、同じ投与経路で投与される(例えば、どちらも腫瘍内又は静脈内に投与される)。他の実施態様において、第一のキメラNDV及び第二のキメラNDVは、異なる投与経路で投与される(例えば、一方は腫瘍内に投与され、もう一方は静脈内に投与される)。
【0172】
具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストを発現するように改変された第一のキメラNDVは、癌を治療するために、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変された第二のキメラNDVと組み合わせて患者に投与される。他の具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変された第一のキメラNDVは、以下のもの:サイトカイン(例えば、IL-2)、異種インターフェロンアンタゴニスト、腫瘍抗原、アポトーシス促進分子、及び/又は抗アポトーシス分子うちの1つ、2つ、又はそれより多くを発現するように改変された第二のキメラNDVと組み合わせて投与される。具体的な実施態様において、該第一のキメラNDV、該第二のキメラNDV、又はその両方は、該キメラNDVの融合活性を増大させる突然変異Fタンパク質を発現する。別の具体的な実施態様において、該第一のキメラNDV、該第二のキメラNDV、又はその両方は、切断部位に突然変異(例えば、本明細書に記載されているもの)を有する突然変異Fタンパク質を発現する。
【0173】
具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストを発現するように改変された第一のキメラNDVを含む第一の組成物(例えば、医薬組成物)は、癌を治療するために、免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変された第二のキメラNDVを含む第二の組成物(例えば、医薬組成物)と組み合わせて患者に投与される。他の具体的な実施態様において、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニスト及び/又は免疫の抑制シグナルのアンタゴニストを発現するように改変された第一のキメラNDVを含む第一の組成物(例えば、医薬組成物)は、以下のもの:サイトカイン(例えば、IL-2)、異種インターフェロンアンタゴニスト、腫瘍抗原、アポトーシス促進分子、及び/又は抗アポトーシス分子のうちの1つ、2つ、又はそれより多くを発現するように改変された第二のキメラNDVを含む第二の組成物(例えば、医薬組成物)と組み合わせて投与される。具体的な実施態様において、該第一のキメラNDV、該第二のキメラNDV、又はその両方は、該キメラNDVの融合活性を増大させる突然変異Fタンパク質を発現する。別の具体的な実施態様において、該第一のキメラNDV、該第二のキメラNDV、又はその両方は、切断部位中の突然変異(例えば、本明細書に記載されているもの)を有する突然変異Fタンパク質を発現する。
【0174】
別の態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)を、癌の治療において、本明細書中、下の第5.6.4節(例えば、下の第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて使用することができる。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)又はその組成物及び本明細書中、下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法を投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)又はその組成物及び有効量の下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)及び下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、NDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0175】
1以上の追加の療法と組み合わせて使用されるNDVは、全身又は局所投与することができる。例えば、該NDV又はその組成物は、対象に、非経口的に(例えば、静脈内に、動脈内に、もしくは皮下に)、腫瘍内に、胸腔内に、鼻腔内に、腹腔内に、頭蓋内に、経口的に、経直腸的に、吸入により、筋肉内に、局所に、又は皮内に投与することができる。具体的な実施態様において、該NDVは、例えば、肝動脈注射により、肝動脈経由で投与され、これは、画像下治療(interventional radiology)によるか又は動脈注入ポンプの留置によって行うことができる。別の具体的な実施態様において、該NDVは、外科手術中、腹腔鏡手術下、又は内視鏡手術下で投与される。具体的な実施態様において、該NDVの腹腔内投与は、直接的な注射、カテーテルによる注入、又は腹腔鏡手術中の注射によって行われる。
【0176】
本明細書中、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせた、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞癌ワクチンは、本明細書に記載の方法に従って癌を治療するための任意の次数の治療(例えば、第一次、第二次、第三次、第四次、又は第五次治療)として使用することができる。
【0177】
別の態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)に感染させた全癌細胞を用いて、癌を治療することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を癌細胞又は癌細胞の集団と接触させることができ、感染させた癌細胞又は癌細胞の集団を対象に投与して、癌を治療することができる。一実施態様において、癌細胞は、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)に感染させる前に、γ線照射を受ける。別の実施態様において、癌細胞は、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)に感染させた後に、γ線照射を受ける。特定の実施態様において、癌細胞が対象中で増殖することができないように、癌細胞は対象に投与される前に処理される。具体的な実施態様において、癌細胞は対象中で増殖することができず、ウイルスは対象に感染することができない。一実施態様において、癌細胞は、対象に投与される前にγ線照射を受ける。別の実施態様において、癌細胞は、対象に投与される前に超音波処理される。別の実施態様において、癌細胞は、対象に投与される前に、マイトマイシンCで処理される。別の実施態様において、癌細胞は、対象に投与される前に、凍結及び解凍によって処理される。別の実施態様において、癌細胞は、対象に投与される前に、熱処理で処理される。癌細胞は、対象に、局所又は全身投与することができる。例えば、癌細胞は、対象に、非経口的に(例えば、静脈内にもしくは皮下に)、腫瘍内に、鼻腔内に、経口的に、吸入により、胸腔内に、局所に、又は皮内に投与することができる。具体的な実施態様において、癌細胞は、腫瘍内に又は対象の皮膚(例えば、皮内)に投与される。使用される癌細胞は、自己のもの又は同種異系のものであることができる。具体的な実施態様において、キメラNDVの骨格は、非溶解性株である。癌細胞は、単独で又は追加の療法と組み合わせて、対象に投与することができる。癌細胞は、医薬組成物中にあることが好ましい。ある実施態様において、癌細胞は、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、癌細胞及び1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、癌細胞及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0178】
別の態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた全癌細胞は、癌の治療において、本明細書中、下の第5.6.4節に記載の1以上の追加の療法と組み合わせて使用することができる。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた全癌細胞を、本明細書中、下の第5.6.4節に記載の1以上の追加の療法と組み合わせて投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた全癌細胞を、下の第5.6.4節に記載の有効量の1以上の追加の療法と組み合わせて投与することを含む、方法である。ある実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた全癌細胞及び下の第5.6.4節に記載の1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた全癌細胞及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0179】
別の態様において、キメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)に感染させた溶解した癌細胞由来のタンパク質濃縮物又は形質膜調製物を用いて、癌を治療することができる。一実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVに感染させた癌細胞由来の断片を含む形質膜調製物を用いて、癌を治療することができる。別の実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVに感染させた癌細胞由来のタンパク質濃縮物を用いて、癌を治療することができる。当業者に公知の技術を用いて、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物を産生することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を癌細胞又は癌細胞の集団と接触させることができ、感染させた癌細胞又は癌細胞の集団を、当業者に公知の技術を用いて溶解させて、NDVに感染させた癌細胞のタンパク質濃縮物又は形質膜断片を得ることができ、該NDVに感染させた癌細胞のタンパク質濃縮物又は形質膜断片を対象に投与して、癌を治療することができる。該タンパク質濃縮物又は形質膜断片は、対象に、局所又は全身投与することができる。例えば、該タンパク質濃縮物又は形質膜断片は、対象に、非経口的に、腫瘍内に、鼻腔内に、胸腔内に、経口的に、吸入により、局所に、又は皮内に投与することができる。具体的な実施態様において、そのようなタンパク質濃縮物又は形質膜調製物は、腫瘍内に又は対象の皮膚(例えば、皮内)に投与される。該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物を産生するために使用される癌細胞は、自己のもの又は同種異系のものであることができる。具体的な実施態様において、キメラNDVの骨格は、溶解性株である。該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物は、単独で又は追加の療法と組み合わせて対象に投与することができる。該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物は、医薬組成物中にあることが好ましい。ある実施態様において、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物は、下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物及び1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0180】
別の態様において、NDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた溶解した癌細胞由来のタンパク質濃縮物又は形質膜調製物は、癌の治療において、本明細書中、下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて使用することができる。一実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、NDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた溶解した癌細胞由来のタンパク質濃縮物又は形質膜調製物を、本明細書中、下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、NDV(例えば、上の第5.1節に記載のNDV)に感染させた溶解した癌細胞由来の有効量のタンパク質濃縮物又は形質膜調製物を、有効量の下の第5.6.4節(例えば、第5.6.4.1節)に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物及び下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法は、同じ組成物中で投与される。他の実施態様において、該タンパク質濃縮物又は形質膜調製物及び1以上の追加の療法は、異なる組成物中で投与される。
【0181】
別の態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を用いて、診断的免疫アッセイ、受動免疫療法、及び抗イデオタイプ抗体の作製で使用することができる抗体を産生することができる。例えば、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を、対象(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウマ、ロバ、鳥、又はヒト)に投与して、抗体を作製することができ、その後、これを単離し、例えば、診断アッセイ、受動免疫療法、及び抗イデオタイプ抗体の作製で使用することができる。ある実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節又は第5.2節に記載のNDV)を、対象(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウマ、ロバ、鳥、又はヒト)に、下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与して、抗体を作製することができ、その後、これを単離し、例えば、診断アッセイ、受動免疫療法、及び抗イデオタイプ抗体の作製で使用することができる。作製された抗体を、当技術分野で公知の標準的な技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、遠心分離、沈殿など)により単離し、診断的免疫アッセイ、受動免疫療法、及び抗イデオタイプ抗体の作製で使用することができる。
【0182】
ある実施態様において、本明細書に記載のキメラNDV(例えば、上の第5.2節に記載のキメラNDV)を投与された対象から単離された又は本明細書に記載のNDV(例えば、上の第5.1節もしくは第5.2節に記載のNDV)を下の第5.6.4節に記載されているような1以上の追加の療法と組み合わせて投与された対象から単離された抗体を用いて、NDVタンパク質、キメラNDVによって発現される異種ペプチドもしくはタンパク質、又はその両方の発現を評価することができる。この目的のために、限定されないが、少し例を挙げれば、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、及び免疫電気泳動アッセイなどの技術を用いる、競合的及び非競合的アッセイ系を含む、当技術分野で公知の任意の免疫アッセイ系を使用することができる。
【0183】
(5.6.1.患者集団)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌に罹患している対象に投与される。他の実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌の素因を有するか又は癌になりやすい対象に投与される。いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌と診断された対象に投与される。癌の種類の具体的な例は、本明細書に記載されている。一実施態様において、該対象は、転移性癌を有する。別の実施態様において、該対象は、ステージ1、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の癌を有する。別の実施態様において、該対象は、寛解期にある。また別の実施態様において、該対象は、癌の再発を有する。
【0184】
ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、0〜6カ月、6〜12カ月、6〜18カ月、18〜36カ月、1〜5歳、5〜10歳、10〜15歳、15〜20歳、20〜25歳、25〜30歳、30〜35歳、35〜40歳、40〜45歳、45〜50歳、50〜55歳、55〜60歳、60〜65歳、65〜70歳、70〜75歳、75〜80歳、80〜85歳、85〜90歳、90〜95歳、又は95〜100歳であるヒトに投与される。いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、ヒト乳児に投与される。他の実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、ヒト幼児に投与される。他の実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、ヒト小児に投与される。他の実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、ヒト成人に投与される。また他の実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、ヒト高齢者に投与される。
【0185】
ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、免疫不全状態もしくは免疫抑制状態にあるか、又は免疫不全状態もしくは免疫抑制状態になるリスクのある対象に投与される。ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、免疫抑制療法を受けているか又は免疫抑制療法から回復しつつある対象に投与される。ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌を有しているか又は癌になるリスクのある対象に投与される。ある実施態様において、該対象は、外科手術、化学療法、及び/又は放射線療法を受けているか、これらを受ける予定であるか、又はこれらを受けたことがある。ある実施態様において、患者は、外科手術を受けて、腫瘍又は新生物を除去したことがある。具体的な実施態様において、外科手術を施して、腫瘍又は新生物を除去した後に、患者に、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を投与する。他の実施態様において、外科手術を施して、腫瘍又は新生物を除去する前に、患者に、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を投与する。ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、組織移植、臓器移植、又は輸血を受けているか、これらを受ける予定であるか、又はこれらを受けた対象に投与される。
【0186】
いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、該キメラNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物、全細胞ワクチン、又は併用療法以外の療法に不応性であることが分かっているが、これらの療法をもはや受けていない患者に投与される。具体的な実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、化学療法に不応性であることが分かっている患者に投与される。一実施態様において、癌が療法に不応性であるということは、癌細胞の少なくともいくつかの重要な部分が死滅しないか又はその細胞分裂が停止しないことを意味する。癌細胞が不応性であるかどうかの決定は、当技術分野で許容される「不応性」の意味をそのような文脈で用いて、癌細胞に対する療法の効果をアッセイする当技術分野で公知の任意の方法により、インビボ又はインビトロのどちらかで行うことができる。ある実施態様において、不応性患者は、標準療法に不応性の患者である。ある実施態様において、癌を有する患者は、腫瘍又は新生物がそれほど根絶されない場合及び/又は症状がそれほど緩和されない場合、療法に不応性である。患者が不応性であるかどうかの決定は、当技術分野で許容される「不応性」の意味をそのような文脈で用いて、癌の治療の有効性をアッセイする当技術分野で公知の任意の方法により、インビボ又はインビトロのどちらかで行うことができる。
【0187】
ある実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療されるべき患者は、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、又は他の生物療法/免疫療法もしくは抗癌療法で既に治療されている患者である。これらの患者の中に、不応性患者、及び従来の療法を施すには若すぎる患者がいる。いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を投与されている対象は、該キメラNDVもしくはその組成物、該腫瘍溶解物ワクチン、又は該全細胞ワクチン、又は該併用療法の投与前に、療法を受けたことがない。
【0188】
いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌を発症するリスクのある患者で癌の発生を予防するために、患者に投与される。いくつかの実施態様において、化合物は、従来の療法に対する有害反応を起こしやすい患者に投与される。
【0189】
いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を投与されている対象は、先行治療を受けたことがない。他の実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、該NDV(例えば、キメラNDV)もしくは組成物、該腫瘍溶解物ワクチン、該全細胞ワクチン、又は該併用療法の投与前に治療を受けたことがある対象に投与される。いくつかの実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、又は本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を投与される対象は、先行治療に対する有害な副作用を経験したか、又は先行治療は、該対象に対する許容されないレベルの毒性が原因で中止された。
【0190】
(5.6.2.投薬量及び頻度)
癌の治療において有効であるNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンの量は、癌の性質、投与経路、対象の全体的な健康などによって決まり、医師の判断に従って決定されるべきである。最適な投薬量範囲の特定を助けるために、インビトロアッセイなどの標準的な臨床技術を任意に利用することができる。しかしながら、投与用のNDVの好適な投薬量範囲は、通常、約10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、5×10
4、10
5、5×10
5、10
6、5×10
6、10
7、5×10
7、10
8、5×10
8、1×10
9、5×10
9、1×10
10、5×10
10、1×10
11、5×10
11、又は10
12pfu、最も好ましくは、約10
4〜約10
12、10
6〜10
12、10
8〜10
12、10
9〜10
12、又は10
9〜10
11であり、必要に応じた間隔で、1回、2回、3回、4回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。投与用の腫瘍溶解物ワクチンの投薬量範囲は、0.001mg、0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1.0mg、2.0 mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、10.0mg、0.001mg〜10.0mg、0.01mg〜1.0mg、0.1mg〜1mg、及び0.1mg〜5.0mgを含むことができ、必要に応じた間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。投与用の全細胞ワクチンの投薬量範囲は、10
2、5×10
2、10
3、5×10
3、10
4、5×10
4、10
5、5×10
5、10
6、5×10
6、10
7、5×10
7、10
8、5×10
8、1×10
9、5×10
9、1×10
10、5×10
10、1×10
11、5×10
11、又は10
12細胞を含むことができ、必要に応じた間隔で、1回、2回、3回、又はそれより多くの回数、対象に投与することができる。ある実施態様において、NDV、腫瘍溶解物ワクチン、又は全細胞ワクチンの臨床試験で現在使用されているのと同様の投薬量が対象に投与される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得られる用量応答曲線から推定することができる。
【0191】
ある実施態様において、NDV(例えば、キメラNDV)又はその組成物は、単一用量として、次いで、1〜6週間後、1〜5週間後、1〜4週間後、1〜3週間後、1〜2週間後に第二の用量として、対象に投与される。これらの実施態様に従って、追加免疫接種物を、2回目の接種後6〜12カ月の間隔で、対象に投与することができる。ある実施態様において、腫瘍溶解性ワクチン又は全細胞ワクチンは、単一用量として、次いで、1〜6週間後、1〜5週間後、1〜4週間後、1〜3週間後、1〜2週間後に第二の用量として、対象に投与される。
【0192】
ある実施態様において、同じNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、又は全細胞ワクチンの投与を繰り返すことができ、該投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、6日、7日、10日、14日、15日、21日、28日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月の間隔を空けることができる。他の実施態様において、同じNDV(例えば、NDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、又は全細胞ワクチンの投与を繰り返すことができ、該投与は、1〜14日、1〜7日、7〜14日、1〜30日、15〜30日、15〜45日、15〜75日、15〜90日、1〜3カ月、3〜6カ月、3〜12カ月、又は6〜12カ月の間隔を空けることができる。いくつかの実施態様において、第一のNDV(例えば、第一のキメラNDV)又はその組成物を対象に投与し、次いで、第二のNDV(例えば、第二のキメラNDV)又はその組成物を投与する。ある実施態様において、第一及び第二のNDV(例えば、第一及び第二のキメラNDV)又はそれらの組成物は、少なくとも1日、2日、3日、5日、6日、7日、10日、14日、15日、21日、28日、30日、45日、2カ月、75日、3カ月、又は少なくとも6カ月の間隔を空けることができる。他の実施態様において、第一及び第二のNDV(例えば、第一及び第二のキメラNDV)又はそれらの組成物は、1〜14日、1〜7日、7〜14日、1〜30日、15〜30日、15〜45日、15〜75日、15〜90日、1〜3カ月、3〜6カ月、3〜12カ月、又は6〜12カ月の間隔を空けることができる。
【0193】
ある実施態様において、NDVもしくはその組成物又は腫瘍溶解物ワクチン又は全細胞ワクチンは、1以上の追加の療法、例えば、下の第5.6.4節に記載の療法と組み合わせて、対象に投与される。他の1以上の追加の療法の投薬量は、例えば、療法、癌の性質、投与経路、対象の全体的な健康などを含む、様々な因子によって決まり、医師の判断に従って決定されるべきである。具体的な実施態様において、他の療法の用量は、本明細書に開示される方法に従って使用される単剤として使用するための療法に推奨される療法の用量及び/又は投与頻度である。他の実施態様において、他の療法の用量は、本明細書に開示される方法に従って使用される単剤として使用するための療法に推奨されるよりも低用量及び/又は低頻度の療法の投与である。認可された療法の推奨用量は、医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)に見出すことができる。
【0194】
ある実施態様において、NDVもしくはその組成物又は腫瘍溶解物ワクチン又は全細胞ワクチンは、1以上の追加の療法の投与と同時に対象に投与される。他の実施態様において、NDVもしくはその組成物又は腫瘍溶解物ワクチン又は全細胞ワクチンは、3〜7日毎、1〜6週間毎、1〜5週間毎、1〜4週間毎、2〜4週間毎、1〜3週間毎、又は1〜2週間毎に対象に投与され、1以上の追加の療法(例えば、下の第5.6.4節に記載されているもの)は、3〜7日毎、1〜6週間毎、1〜5週間毎、1〜4週間毎、1〜3週間毎、又は1〜2週間毎に投与される。ある実施態様において毎、NDVもしくはその組成物又は腫瘍溶解物ワクチン又は全細胞ワクチンは、1〜2週間毎に対象に投与され、1以上の追加の療法(例えば、下の第5.6.4節に記載されているもの)は、2〜4週間毎に投与される。いくつかの実施態様において、NDVもしくはその組成物又は腫瘍溶解物ワクチン又は全細胞ワクチンは、毎週対象に投与され、1以上の追加の療法(例えば、下の第5.6.4節に記載されているもの)は、2週間毎に投与される。
【0195】
(5.6.3.癌の種類)
本明細書に記載の方法に従って治療することができる癌の具体的な例としては:白血病、例えば、限定されないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病性白血病、並びに骨髄異形成症候群;慢性白血病、例えば、限定されないが、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、有毛細胞白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、例えば、限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば、限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞(placancer cell)白血病、孤立性形質細胞腫(placancercytoma)、及び髄外性形質細胞腫(placancercytoma);ワルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症;良性単クローン性ガンマグロブリン血症;重鎖病;骨肉腫及び結合組織肉腫、例えば、限定されないが、骨肉腫(bone sarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば、限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、希突起膠腫、非神経膠腫、多形性膠芽腫、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;限定されないが、腺管癌、腺癌、小葉(癌細胞)癌、腺管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状腺乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病、及び炎症性乳癌を含む、乳癌;副腎癌、例えば、限定されないが、褐色細胞腫(pheochromocytom)及び副腎皮質癌;甲状腺癌、例えば、限定されないが、乳頭状又は濾胞状甲状腺癌、髄様甲状腺癌、及び未分化甲状腺癌;膵癌、例えば、限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイド又は島細胞腫瘍;下垂体癌、例えば、限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、末端肥大症、及び尿崩症;眼癌、例えば、限定されないが、眼メラノーマ、例えば、虹彩メラノーマ、脈絡膜メラノーマ、及び毛様体メラノーマ(cilliary body melanoma)、並びに網膜芽腫;膣癌、例えば、扁平上皮細胞癌、腺癌、及びメラノーマ;外陰癌、例えば、扁平上皮細胞癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びパジェット病;子宮頸癌、例えば、限定されないが、扁平上皮細胞癌及び腺癌;子宮癌、例えば、限定されないが、子宮内膜癌及び子宮肉腫;卵巣癌、例えば、限定されないが、卵巣上皮癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、及び間質性腫瘍;食道癌、例えば、限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫(placancercytoma)、疣状癌、及び燕麦細胞(癌細胞)癌;胃癌、例えば、限定されないが、腺癌、歯状(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、びまん性拡大型、悪性のリンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び癌肉腫;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、例えば、限定されないが、肝細胞癌及び肝芽腫;胆嚢癌、例えば、腺癌;胆管癌、例えば、限定されないが、乳頭状、結節性、及びびまん性;肺癌、例えば、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、及び癌細胞肺癌;精巣癌、例えば、限定されないが、胚腫瘍、精上皮腫、未分化、古典的(典型的)、精母細胞性、非精上皮腫、胎生期癌、奇形腫癌、絨毛腫(卵黄嚢腫瘍)、前立腺癌、例えば、限定されないが、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫;陰茎癌(penal cancer);口腔癌、例えば、限定されないが、扁平上皮細胞癌;基底癌;唾液腺癌、例えば、限定されないが、腺癌、粘液性類表皮癌、及び腺様嚢胞癌;咽頭癌、例えば、限定されないが、扁平上皮細胞癌、及び疣状;皮膚癌、例えば、限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、及びメラノーマ、表在拡大型メラノーマ、結節性メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、末端性黒子性メラノーマ;腎臓癌、例えば、限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行細胞癌(腎盂及び/又は尿管(uterer));ウィルムス腫瘍;膀胱癌、例えば、限定されないが、移行細胞癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、癌肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、癌としては、粘液肉腫、骨肉腫(osteogenic sarcoma)、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、及び乳頭腺癌が挙げられる(そのような障害の総説については、Fishmanらの文献、1985、Medicine、第2版、J.B. Lippincott社, Philadelphia、及びMurphyらの文献、1997、インフォームド・ディシジョン:癌の診断、治療、及び回復の完全本(Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery)、Viking Penguin, Penguin Books U.S.A.社, United States of Americaを参照されたい)。
【0196】
具体的な実施態様において、本明細書に記載のキメラNDVもしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書中の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、(限定されないが)以下のもの:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頸部、甲状腺、及び皮膚の癌を含む癌;扁平上皮細胞癌を含む;白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むリンパ球系統の造血系腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄球系統の造血系腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)を含む間葉起源の腫瘍;メラノーマ、精上皮腫、奇形腫、神経芽腫、及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む、中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)、及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;並びにメラノーマ、色素性乾皮症、角化棘細胞腫(keratoactanthoma)、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形腫を含む他の腫瘍を含む、種々の癌及び異常増殖性疾患の治療において有用である。
【0197】
いくつかの実施態様において、アポトーシスの異常と関連する癌を、本明細書に記載の方法に従って治療する。そのような癌としては、濾胞性リンパ腫、p53突然変異を有する癌、乳房、前立腺、及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、並びに前癌病変、例えば、家族性腺腫性ポリポーシス、並びに骨髄異形成症候群を挙げることができるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、悪性腫瘍もしくは異常増殖性変化(例えば、化生及び異形成)、又は皮膚、肺、肝臓、骨、脳、胃、結腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、膵臓、卵巣、及び/もしくは子宮の過剰増殖性障害を、本明細書に記載の方法に従って治療する。他の具体的な実施態様において、肉腫又はメラノーマを、本明細書に記載の方法に従って治療する。
【0198】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)である。本明細書に記載の方法に従って治療することができる白血病及び他の血行性癌の具体的な例としては、急性リンパ芽球性白血病「ALL」、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病「AML」、急性前骨髄球性白血病「APL」、急性単芽球性白血病、急性赤白血病性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性(nonlymphocyctic)白血病、急性未分化白血病、慢性骨髄球性白血病「CML」、慢性リンパ球性白血病「CLL」、及び有毛細胞白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
本明細書に記載の方法に従って治療することができるリンパ腫の具体的な例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び真性赤血球増加症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
別の実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、固形腫瘍である。本明細書に記載の方法に従って治療することができる固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、口腔癌、鼻腔癌、咽喉癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、癌細胞肺癌、膀胱癌、肺癌、上皮癌、神経膠腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、髄膜腫、皮膚癌、メラノーマ、神経芽腫、及び網膜芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、転移性である。別の実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、悪性である。
【0201】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、予後が悪い、並びに/又は化学療法及び放射線などの従来の療法に対する応答が悪い癌である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、悪性メラノーマ、悪性神経膠腫、腎細胞癌、膵腺癌、悪性胸膜中皮腫、肺腺癌、肺小細胞癌、肺扁平上皮細胞癌、未分化甲状腺癌、及び頭頸部扁平上皮細胞癌である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、下の第6節及び/又は第7節に記載されている種類の癌である。
【0202】
(5.6.4.追加療法)
癌の治療のために本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンと組み合わせて使用することができる追加療法としては、小分子、合成薬物、ペプチド(環状ペプチドを含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、限定されないが、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせん、RNAi、及び生体活性のあるタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、DNA及びRNAヌクレオチド)、抗体、合成又は天然無機分子、模倣剤、並びに合成又は天然有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、該追加療法は、化学療法剤である。
【0203】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンは、x線、γ線、及び癌細胞を破壊する他の放射線源の使用を含む放射線療法と組み合わせて使用される。具体的な実施態様において、該放射線療法は、外照射放射線又は遠隔療法として投与され、ここで、放射線は、遠隔源から向けられる。他の実施態様において、該放射線療法は、内科療法又は近接照射療法として投与され、ここで、放射能源は、体内で癌細胞及び/又は腫瘍塊の近くに置かれる。
【0204】
ある実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞癌ワクチンは、養子T細胞療法と組み合わせて使用される。具体的な実施態様において、養子T細胞療法で利用されるT細胞は、対象から単離され、特定のT細胞又はクローンがその用途のために拡大された腫瘍浸潤リンパ球である。いくつかの実施態様において、養子T細胞療法で利用されるT細胞は、患者が癌ワクチンを受けた後に患者の血液から採取され、使用前にインビトロで拡大されたT細胞である。別の具体的な実施態様において、養子T細胞療法で利用されるT細胞は、腫瘍を強く認識し、攻撃するように影響を受けたT細胞である。別の具体的な実施態様において、養子T細胞療法で利用されるT細胞は、腫瘍抗原特異的T細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子修飾されている。具体的な実施態様において、利用される養子T細胞療法は、下の第7節に記載されているものと類似している。
【0205】
ある実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞癌ワクチンは、サイトカインと組み合わせて使用される。具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞癌ワクチンは、インターフェロン(例えば、IFN-γ)と組み合わせて使用される。
【0206】
現在利用可能な癌療法、並びにその投薬量、投与経路、及び推奨使用量は当技術分野で公知であり、医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)(第67版、2013年)のような文献に記載されている。
【0207】
本明細書に記載のNDV又はその組成物と組み合わせて使用し得る抗癌剤の具体的な例としては:ホルモン剤(例えば、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)、及びエストロゲン受容体アンタゴニスト)、化学療法剤(例えば、微小管分解遮断薬、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、及びDNA架橋剤又は損傷剤)、抗血管新生剤(例えば、VEGFアンタゴニスト、受容体アンタゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、血管標的化剤(VTA)/血管破壊剤(VDA))、放射線療法、並びに従来の外科手術が挙げられる。
【0208】
本明細書に記載のNDV又はその組成物と組み合わせて使用し得るホルモン剤の非限定的な例としてはアロマターゼ阻害剤、SERM、及びエストロゲン受容体アンタゴニストが挙げられる。アロマターゼ阻害剤であるホルモン剤は、ステロイド性であっても、非ステロイド性であってもよい。非ステロイド性ホルモン剤の非限定的な例としては、レトロゾール、アナストロゾール、アミノグルテチミド、ファドロゾール、及びボロゾールが挙げられる。ステロイド性ホルモン剤の非限定的な例としては、アロマシン(エキセメスタン)、ホルメスタン、及びテストラクトンが挙げられる。SERMであるホルモン剤の非限定的な例としては、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標)として商標化/市販されている)、アフィモキシフェン、アルゾキシフェン、バゼドキシフェン、クロミフェン、フェマレル(femarelle)、ラソフォキシフェン、オルメロキシフェン、ラロキシフェン、及びトレミフェンが挙げられる。エストロゲン受容体アンタゴニストであるホルモン剤の非限定的な例としては、フルベストラントが挙げられる。他のホルモン剤としては、アビラテロン及びロナプリサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンと組み合わせて使用し得る化学療法剤の非限定的な例としては、微小管分解遮断薬、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、及びDNA架橋剤又は損傷剤が挙げられる。微小管分解遮断薬である化学療法剤としては、タキセン(taxene)(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標)として商標化/市販されている)、ドセタキセル、アブサキサン、ラロタキセル、オルタタキセル、及びテセタキセル);エポチロン(例えば、イキサベピロン);並びにビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビンクリスチン(オンコビン(登録商標))として商標化/市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
代謝拮抗薬である化学療法剤としては、葉酸代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、アミノプテリン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド);プリン代謝拮抗薬(例えば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニン);ピリミジン代謝拮抗薬(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、テガフール);及びデオキシリボヌクレオチド代謝拮抗薬(例えば、ヒドロキシウレア)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
トポイソメラーゼ阻害剤である化学療法剤としては、クラスI(カンプトテカ)トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン(HYCAMTIN(登録商標)として商標化/市販されている)イリノテカン、ルビテカン、及びベロテカン);クラスII(ポドフィルム)トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド又はVP-16、及びテニポシド);アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ドキシル、アクラルビシン、アムルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、及びゾルビシン);並びにアントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン及びピクサントロン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
DNA架橋剤(又はDNA損傷剤)である化学療法剤としては、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、イホスファミド(IFEX(登録商標)として商標化/市販されている)、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン(BiCNU(登録商標)として商標化/市販されている)、ロムスチン、セムスチン、ホテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、マンノスルファン、トレオスルファン、カルボコン、N,N'N'-トリエチレンチオホスホラミド、トリアジコン、トリエチレンメラミン);アルキル化様剤(例えば、カルボプラチン(PARAPLATIN(登録商標)として商標化/市販されている)、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン);非古典的DNA架橋剤(例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド(テモダール(登録商標)として商標化/市販されている)、アルトレタミン、ミトブロニトール);並びにインターカレート剤(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、及びプリカマイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
(5.6.4.1 免疫調節因子)
具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンは、以下のもの:当業者に公知の、免疫細胞(例えば、T-リンパ球、NK細胞、又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)など)の共刺激シグナルの任意のアゴニスト及び/又は免疫細胞(例えば、T-リンパ球、NK細胞、又は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)など)の抑制シグナルの任意のアンタゴニストのうちの1つ又は複数と組み合わせて対象に投与される。特定の実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンは、上の第5.2.1節に記載の免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストのうちの1つ又は複数と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンは、上の第5.2.1節に記載の免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストのうちの1つ又は複数と組み合わせて対象に投与される。ある実施態様において、本明細書に記載のNDV(例えば、キメラNDV)もしくはその組成物、腫瘍溶解性ワクチン、又は全細胞ワクチンは、下の第6節及び/又は第7節に記載されている、免疫細胞の共刺激シグナルのアゴニストのうちの1つもしくは複数及び/又は免疫細胞の抑制シグナルのアンタゴニストのうちの1つもしくは複数(例えば、抗CTLA-4抗体、ICOS-L、抗PD-1抗体、又は抗PD-L1抗体)と組み合わせて対象に投与される。
【0214】
(5.7 生物学的アッセイ)
(インビトロウイルスアッセイ)
ウイルスアッセイには、ウイルス複製の変化(例えば、プラーク形成により決定される)又はウイルスタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット解析により決定される)又はウイルスRNAの産生(例えば、RT-PCRもしくはノーザンブロット解析により決定される)を、当技術分野で周知の方法を用いて、インビトロで、培養細胞で測定するアッセイが含まれる。
【0215】
本明細書に記載のNDVの成長は、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の方法により(例えば、細胞培養(例えば、ニワトリ胚腎臓細胞の培養又はニワトリ胚線維芽細胞(CEF)の培養)で)評価することができる。ウイルス力価は、本明細書に記載のNDVの段階希釈液を、細胞培養物(例えば、CEF、MDCK、EFK-2細胞、Vero細胞、初代ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、H292ヒト上皮細胞株、もしくはHeLa細胞)、ニワトリ胚、又は生きた動物(例えば、鳥)に接種することにより決定することができる。ウイルスを規定の時間インキュベートした後、標準的な方法を用いて、該ウイルスを単離する。ウイルス力価の物理的定量は、ウイルス上清に適用されるPCR(Quinn & Trevorの文献、1997; Morganらの文献、1990)、血球凝集アッセイ、組織培養感染用量(TCID50)、又は卵感染用量(EID50)を用いて実施することができる。ウイルス力価を評価する例示的な方法は、下の第6節及び第7節に記載されている。
【0216】
本明細書に記載のキメラNDVのゲノムへの異種ペプチド又はタンパク質(例えば、サイトカイン、突然変異Fタンパク質、突然変異Vタンパク質、又はmiRNA標的部位)をコードするヌクレオチド配列の組込みは、当技術分野で公知の又は本明細書に記載の任意の方法により(例えば、細胞培養、動物モデル、又は孵化卵中のウイルス培養で)評価することができる。例えば、孵化卵の尿膜腔液の細胞培養物由来のウイルス粒子を、スクロースクッションに通す遠心分離により精製し、その後、当技術分野で周知の方法を用いて、ウェスタンブロッティングにより、融合タンパク質発現について解析することができる。
【0217】
免疫蛍光に基づく手法を用いて、ウイルスを検出し、ウイルス成長を評価することもできる。そのような手法は当業者に周知であり、例えば、蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリーがある(下の第6節及び第7節を参照されたい)。
【0218】
(抗体アッセイ)
本明細書に記載のNDVにより作製される抗体は、当業者に周知の種々の方法(例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴ディスプレイ(BIAcore)、ウェスタンブロット、免疫蛍光、免疫染色、及び/又は微量中和アッセイ)で特徴付けることができる。特に、本明細書に記載のキメラNDVにより作製される抗体は、ウイルス抗原又は異種ペプチドもしくはタンパク質に特異的に結合する能力についてアッセイすることができる。そのようなアッセイは、溶液中で(例えば、Houghtenの文献、1992, Bio/Techniques 13:412 421)、ビーズ表面で(Lamの文献、1991, Nature 354:82 84)、チップ表面で(Fodorの文献、1993, Nature 364:555 556)、細菌を用いて(米国特許第5,223,409号)、胞子を用いて(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号;及び第5,223,409号)、プラスミドを用いて(Cullらの文献、1992, Proc Natl. Acad. Sci. USA 89:1865 1869)、又はファージを用いて(Scott及びSmithの文献、1990, Science 249:386 390; Cwirlaらの文献、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378 6382;及びFeliciの文献、1991, J. Mol. Biol. 222:301 310)実施することができる(これらの参考文献の各々は、引用により完全に本明細書中に組み込まれている)。
【0219】
ウイルス抗原又は異種ペプチドもしくはタンパク質に特異的に結合することが確認された本明細書に記載のキメラNDVにより作製される抗体は、該ウイルス抗原又は異種ペプチド又はタンパク質に特異的に結合するその能力についてアッセイすることができる。該抗体は、ウイルス抗原又は異種ペプチドもしくはタンパク質への特異的結合について及び他の抗原とのその交差反応性について、当技術分野で公知の任意の方法によりアッセイすることができる。特異的結合及び交差反応性を解析するために使用することができる免疫アッセイには、少し例を挙げれば、ウェスタンブロット、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどの技術を用いる、競合的及び非競合的アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。そのようなアッセイはルーチンであり、かつ当技術分野で周知である(例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Ausubelら編、1994、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第1巻、John Wiley & Sons社, New Yorkを参照されたい)。
【0220】
抗原に対する抗体の結合親和性及び抗体-抗原相互作用の解離速度は、競合的結合アッセイにより決定することができる。或いは、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore動態解析)又はKinExAアッセイ(Blake,らの文献、Analytical Biochem., 1999, 272:123-134)を用いて、本明細書に記載のキメラNDVの抗原に対する抗体の結合速度及び解離速度を決定することができる。
【0221】
(IFNアッセイ)
本明細書に記載のNDVによるIFN誘導及び放出は、当業者に公知の又は本明細書に記載の技術を用いて決定することができる。例えば、本明細書に記載のNDVへの感染後に細胞で誘導されるIFNの量を、免疫アッセイ(例えば、ELISA又はウェスタンブロットアッセイ)を用いて決定して、IFN発現を測定し、又はその発現がIFNにより誘導されるタンパク質の発現を測定することができる。或いは、誘導されるIFNの量は、当業者に公知のアッセイ、例えば、ノーザンブロット及び定量的RT-PCRにより、RNAレベルで測定することができる。具体的な実施態様において、放出されるIFNの量は、ELISPOTアッセイを用いて測定することができる。(例えば、下の第6節及び第7節に記載の方法を参照されたい)。さらに、サイトカインの誘導及び放出は、例えば、免疫アッセイ又はELISPOTアッセイにより、タンパク質レベルで、及び/又は定量的RT-PCRもしくはノーザンブロットにより、RNAレベルで決定することができる。サイトカイン誘導及び放出を測定するためのアッセイに関しては、下の第6節及び/又は第7節を参照されたい。
【0222】
(活性化マーカーアッセイ)
免疫細胞による活性化マーカー、共刺激分子、リガンド、又は抑制性分子の発現を評価するための技術は、当業者に公知である。例えば、免疫細胞(例えば、Tリンパ球又はNK細胞)による活性化マーカー、共刺激分子、リガンド、又は抑制性分子の発現は、フローサイトメトリーにより評価することができる。具体的な実施態様において、下の第6節及び/又は第7節に記載の技術を用いて、免疫細胞による活性化マーカー、共刺激分子、リガンド、又は抑制性分子の発現を評価する。
【0223】
(免疫細胞浸潤アッセイ)
免疫細胞浸潤を評価するための技術は、当業者に公知である。具体的な実施態様において、下の第6節及び/又は第7節に記載の技術を用いて、免疫細胞浸潤を評価する。
【0224】
(毒性研究)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法を、細胞傷害性について、哺乳動物、好ましくは、ヒト細胞株で試験する(例えば、下の第6節及び/又は第7節に記載の細胞傷害性アッセイを参照されたい)。ある実施態様において、細胞傷害性を、1以上の以下の非限定的な細胞株例で評価する:U937、ヒト単球細胞株;初代末梢血単核細胞(PBMC);Huh7、ヒト肝芽腫細胞株;HL60細胞、HT1080、HEK 293T、及び293H、MLPC細胞、ヒト胚性腎臓細胞株;ヒトメラノーマ細胞株、例えば、SkMel2、SkMel-119、及びSkMel-197;THP-1、単球細胞;HeLa細胞株;並びに神経芽腫細胞株、例えば、MC-IXC、SK-N-MC、SK-N-MC、SK-N-DZ、SH-SY5Y、及びBE(2)-C。ある実施態様において、細胞傷害性を様々な癌細胞で評価する。いくつかの実施態様において、ToxLiteアッセイを用いて、細胞傷害性を評価する。
【0225】
当技術分野で周知の多くのアッセイを用いて、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物への感染、又は本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書に記載の全細胞ワクチン、もしくは本明細書に記載の併用療法による処理の後の細胞又は細胞株の生存を評価し、それにより、該NDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法の細胞傷害性を決定することができる。例えば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み、(
3H)チミジンの取込みを測定することによるか、直接的な細胞カウントによるか、又は既知の遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化を検出することによりアッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当技術分野で周知の任意の方法により決定することができる。例えば、市販の抗体を含む抗体を用いる公知の免疫診断方法、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、又は免疫沈降により、タンパク質を定量することができる。当技術分野で周知かつルーチンの方法を用いて、例えば、ノーザン解析、RNアーゼ保護、又は逆転写と関連するポリメラーゼ連鎖反応を用いて、mRNAを定量することができる。細胞の生存は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施態様において、細胞のATPレベルを測定して、細胞の生存を決定する。好ましい実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法は、癌細胞を死滅させるが、健常(すなわち、非癌)細胞を死滅させない。一実施態様において、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法は、癌細胞を優先的に死滅させるが、健常(すなわち、非癌)細胞を死滅させない。
【0226】
具体的な実施態様において、細胞の生存は、細胞内ATPレベルを測定する、当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は、細胞毒性効果を示すものである。別の具体的な実施態様において、細胞の生存は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様において、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。
【0227】
本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法を、インビボ毒性について、動物モデルで試験することができる(例えば、下の第6節及び/又は第7節に記載の動物モデルを参照されたい)。例えば、癌に対する化合物の効果を試験するために使用される、本明細書に記載の動物モデル及び/又は当技術分野で公知の他のものを用いて、本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法のインビボ毒性を決定することもできる。例えば、動物に、様々なpfuの本明細書に記載のNDV(例えば、下の第5.2節に記載のキメラNDV)を投与する。その後、該動物を、致死率、体重減少もしくは体重増加失敗、及び/又は組織損傷を示し得る血清マーカーのレベル(例えば、全般的な組織損傷の指標としてのクレアチンホスホキナーゼレベル、肝損傷の可能性の指標としてのグルタミン酸シュウ酸トランスアミナーゼ又はピルビン酸トランスアミナーゼのレベル)について経時的にモニタリングする。これらのインビボアッセイは、投薬量の他に、様々な投与様式及び/又はレジメンの毒性を試験するために適合させることができる。
【0228】
本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法の毒性及び/又は効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、これは、比LD50/ED50と表すことができる。大きい治療指数を示す療法が好ましい。毒性のある副作用を示す療法を使用してもよいが、非癌細胞に対する潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより、副作用を軽減するために、そのような療法を罹患組織の部位にターゲッティングする送達系を設計するよう、注意を払うべきである。
【0229】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、対象で使用される療法の投薬量の範囲を定める際に使用することができる。そのような薬剤の投薬量は、循環濃度の範囲内にあることが好ましく、この範囲には、ほとんど又は全く毒性のないED50が含まれる。投薬量は、利用される剤形及び利用される投与経路によって、この範囲内で異なり得る。本明細書に記載の任意の療法について、治療有効用量を、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量を動物モデルで定めて、循環血漿濃度範囲を得ることができ、この循環血漿濃度範囲には、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成するキメラNDVの濃度)が含まれる。そのような情報を用いて、対象での有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0230】
(抗癌研究)
本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法は、癌の動物モデルを用いて、生物学的活性について試験することができる。そのような動物モデル系としては、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、本明細書に記載のNDV又は併用療法の抗癌活性は、マウスモデル系で試験される。そのようなモデル系は広く使用され、当業者に周知であり、例えば、SCIDマウスモデル又はトランスジェニックマウスがある。
【0231】
本明細書に記載のNDVもしくはその組成物、本明細書に記載の腫瘍溶解物ワクチン、本明細書に記載の全細胞ワクチン、又は本明細書に記載の併用療法の抗癌活性は、該NDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法を動物モデルに投与し、該NDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物ワクチン、全細胞ワクチン、又は併用療法が、癌の重症度の軽減、癌の症状の軽減、癌転移の減少、及び/又は該動物モデルの腫瘍サイズの減少に効果的であることを立証することにより決定することができる(例えば、下の第6節及び/又は第7節を参照されたい)。一般的な癌の動物モデルの例としては、コンパニオン動物の自然発生腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Vail & MacEwenの文献、2000, Cancer Invest 18(8):781-92を参照されたい)。肺癌の動物モデルの例としては、Zhang & Rothらの文献(1994, In-vivo 8(5):755-69)に記載の肺癌動物モデル及びp53機能が破壊されたトランスジェニックマウスモデル(例えば、Morrisらの文献、1998, J La State Med Soc 150(4):179-85参照)が挙げられるが、これらに限定されない。乳癌の動物モデルの例としては、サイクリンD1を過剰発現するトランスジェニックマウスが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Hosokawaらの文献、2001, Transgenic Res 10(5):471-8を参照されたい)。結腸癌の動物モデルの例としては、TCR b及びp53の二重ノックアウトマウスが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Kadoらの文献、2001, Cancer Res. 61(6):2395-8を参照されたい)。膵癌の動物モデルの例としては、PancO2マウス膵腺癌の転移モデル(例えば、Wangらの文献、2001, Int. J. Pancreatol. 29(1):37-46参照)及び皮下膵臓腫瘍で作製されたnu-nuマウス(例えば、Ghanehらの文献、2001, Gene Ther. 8(3):199-208参照)が挙げられるが、これらに限定されない。非ホジキンリンパ腫の動物モデルの例としては、重症複合免疫不全(「SCID」)マウス(例えば、Bryantらの文献、2000, Lab Invest 80(4):553-73参照)及びIgHmu-HOX11トランスジェニックマウス(例えば、Houghらの文献、1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(23):13853-8参照)が挙げられるが、これらに限定されない。食道癌の動物モデルの例としては、ヒトパピローマウイルス16型E7癌遺伝子が遺伝子導入されたマウスが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Herberらの文献、1996, J. Virol. 70(3):1873-81を参照されたい)。結腸直腸癌の動物モデルの例としては、Apcマウスモデルが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Fodde & Smits, 2001, Trends Mol Med 7(8):369 73及びKuraguchiらの文献、2000を参照されたい)。具体的な実施態様において、下の第6節及び/又は第7節に記載の癌の動物モデルを用いて、NDVもしくはその組成物、腫瘍溶解物、全細胞ワクチン、又は併用療法の有効性を評価する。
【実施例】
【0232】
(6.実施例1)
本実施例は、癌の治療において免疫賦活作用がある免疫チェックポイント調節因子と組み合わせたNDV療法の治療効果を示している。
【0233】
(6.1 材料及び方法)
(マウス)
BALB/cマウス(6〜8週齢)及びWT C57BL/6マウスは、Jackson Laboratoryから購入した。全てのマウスをマイクロアイソレーターケージで維持し、NIH及び米国実験動物管理協会(American Association of Laboratory Animal Care)の規制に従って処置した。本研究のための全てのマウス処置及び実験は、メモリアル・スローン・ケタリング癌センター施設動物管理及び使用委員会(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committee)による承認を受けた。
【0234】
(細胞株)
メラノーマのマウス癌細胞株(B16-F10)並びに結腸癌のマウス癌細胞株(CT26及びMC38)を、10%胎仔ウシ血清及びペニシリンがストレプトマイシンとともに補充されたRPMI培地中で維持した。マウス前立腺癌細胞株TRAMP-C2を、5%胎仔ウシ血清(FCS; Mediatech社)、5%Nu血清IV(BD Biosciences)、HEPES、2-ME、pen/strep、L-glut、5μg/mLインスリン(Sigma)、及び10nmol/L DHT(Sigma)が補充されたDMEM培地中で維持した。
【0235】
(抗体)
治療用の抗CTLA-4(クローン9H10)、抗PD-1(クローンRMP1-14)、及び抗PD-L1モノクローナル抗体は、BioXcellにより産生された。フローサイトメトリーに使用される抗体は、eBioscience、Biolegend、Invitrogen、及びBD Pharmingenから購入した。
【0236】
(ウイルス及びクローニング)
組換え長潜伏期性NDV LaSota株を全ての実験に使用した。マウスICOSLを発現するNDVウイルスを作製するために、適当なNDV特異的RNA転写シグナルが両側に配置されたマウスICOSLをコードするDNA断片を、pT7NDV/LSのP遺伝子とM遺伝子の間に作出されたSacII部位に挿入した。ウイルスを、先に記載されている方法を用いてcDNAからレスキューし、インサートの忠実度について逆転写PCRによりシークエンシングした。ウイルス力価を段階希釈及びVero細胞における免疫蛍光により決定した。組換えICOSL-F融合コンストラクトを、細胞外ドメイン(アミノ酸1〜277)をコードし、EcoRI及びMluI制限部位を両側に有するICOSL DNA、並びにF膜貫通及び細胞内ドメイン(アミノ酸501〜554)をコードし、MluI及びXhoI制限部位を両側に有するNDV F DNAのPCR増幅により作製した。得られたDNA断片を、3部分ライゲーションを用いて、pCAGGSベクター中で組み合わせた。
【0237】
(インビトロ感染実験)
NDVによる表面MHC-I、MHC-II、及びICAM-1の上方調節の評価のために、並びにNDV-ICOSLウイルスからのICOSL導入遺伝子の表面発現の評価のために、B16-F10細胞を、6ウェルディッシュ中、MOI 2で、3連で感染させた。24時間後、細胞を機械的剥離により回収し、表面標識及びフローサイトメトリーによる定量用に処理した。ウイルス成長曲線実験のために、B16-F10細胞を、室温で、ウイルスとともに、6ウェル培養デュッシュ中、表示されたMOIで、100μlの全容量でインキュベートした。インキュベーションから1時間後、感染培地を吸引し、細胞を、10%ニワトリ尿膜腔液を含む1mlのDMEM中、37℃でインキュベートした。24、48、及び72時間後、上清を回収し、ウイルス力価を上記のように決定した。インビトロ細胞傷害実験のために、感染を同様の様式で実施した。感染から24、48、72、及び96時間後、細胞を洗浄し、1%Triton X-100とともに、37℃で30分間インキュベートした。溶解物中のLDH活性を、製造元の指示に従って、Promega CytoTox 96アッセイキットを用いて決定した。
【0238】
(腫瘍投与生存実験)
注射を受けた腫瘍と全身腫瘍の両方における治療効果についてモニタリングするために、両側腹腫瘍モデルを樹立した。単剤としてのNDV又は抗CTLA-4/抗PD-1による10〜20%の腫瘍クリアランスを達成するために、処置スケジュール及び細胞用量を各々の腫瘍モデルについて確立した。野生型NDV(NDV-WT)と免疫チェックポイント遮断との併用療法を評価する実験については、0日目に2×10
5個のB16F10細胞を右側腹に皮内注射し、4日目に5×10
4個の細胞を左側腹に注射することにより、B16F10腫瘍を移植した。7、10、13、及び16日目に、PBS中の2×10
7pfuのNDVを100μlの全容量で4回腫瘍内注射することにより、マウスを処置した。同時に、7、10、13、及び16日目に、マウスに、抗CTLA-4抗体(100μg)又は抗PD-1抗体(250μg)の腹腔内注射を4回受けさせた。対照群には、対応する用量のアイソタイプ抗体の腹腔内注射及びPBSの腫瘍内注射を受けさせた。腫瘍サイズ及び発生率を、キャリパーを用いた測定により、経時的にモニタリングした。
【0239】
TRAMP-C2モデルについては、0日目に5×10
5個の細胞を右側腹に移植し、8日目に5×10
5個の細胞を左側腹に移植した。処置を、上記と同様の様式で、11、14、17、及び20日目に実施した。
【0240】
ICOSLを発現する組換えNDV(NDV-ICOSL)を評価する実験については、0日目に2×10
5個のB16F10細胞を右側腹に皮内注射し、4日目に1×10
5個の細胞を左側腹に注射することにより、B16F10腫瘍を移植した。処置を上記の通りに実施した。
【0241】
CT26モデルについては、0日目に1×10
6個のCT26細胞を右側腹に皮内注射し、2日目に1×10
6個の細胞を左側腹に注射することにより、腫瘍を移植した。処置を、上記の通りに、6、9、及び12日目に実施した。
【0242】
(腫瘍浸潤リンパ球の単離)
0日目に2×10
5個のB16F10細胞を右側腹に皮内注射し、4日目に2×10
5個の細胞を左側腹に注射することにより、B16F10腫瘍を移植した。7、10、及び13日目に、マウスを、2×10
7pfuのNDVの3回の腫瘍内注射、及び指定されている場合、100μgの抗CTLA-4抗体の腹腔内注射又は250μgの抗PD-1抗体の腹腔内注射で処置した。15日目に、マウスをCO
2吸入により屠殺した。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節を、鉗子及び手術鋏を用いて摘出し、計量した。各々の群由来の腫瘍を鋏で細かく刻んだ後、1.67 Wunsch U/mLのリベラーゼ及び0.2mg/mLのDNアーゼとともに、37℃で30分間インキュベートした。腫瘍をピペッティングの繰り返しによりホモジナイズし、70-μmナイロンフィルターに通して濾過した。細胞懸濁液をコンプリートRPMIで1回洗浄し、Ficoll勾配で純化して、死細胞を除去した。腫瘍流入領域リンパ節由来の細胞は、該リンパ節を70-μmナイロンフィルターに通してすり潰すことにより単離した。
【0243】
(フローサイトメトリー)
腫瘍又は腫瘍流入領域リンパ節から単離された細胞を、CD45、CD3、CD4、CD8、CD44、PD-1、ICOS、CD11c、CD19、NK1.1、CD11b、F4/80、Ly6C、及びLy6Gを染色するいくつかの抗体パネルによる表面標識用に処理した。固定可能な生死判定色素eFluor780(eBioscience)を用いて、生細胞を識別した。細胞を、FoxP3固定及び透過処理キット(eBioscience)を用いてさらに透過処理し、Ki-67、FoxP3、グランザイムB、CTLA-4、及びIFNγについて染色した。データを、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて取得し、FlowJoソフトウェア(Treestar)を用いて解析した。
【0244】
(DC純化及びローディング)
未感作マウス由来の脾臓を単離し、37℃で30分間、1.67 Wunsch U/mLのリベラーゼ及び0.2mg/mLのDNアーゼで消化した。得られた細胞懸濁液を70umナイロンフィルターに通して濾過し、コンプリートRPMIで1回洗浄した。CD11c+樹状細胞を、Miltenyi磁気ビーズを用いる陽性選択により純化した。単離された樹状細胞を組換えGM-CSF及びB16-F10腫瘍溶解物とともに一晩培養し、Ficoll勾配で純化した。
(サイトカイン産生の解析)
腫瘍又は腫瘍流入領域リンパ節由来の細胞懸濁液をプールし、Miltenyi T細胞純化キットを用いて、T細胞について濃縮した。単離されたT細胞を計数し、B16-F10腫瘍細胞溶解物をロードした樹状細胞と、20U/ml IL-2(R and D)+ブレフェルジンA(BD Bioscience)の存在下で、8時間共培養した。再刺激後、リンパ球を、上記のように、フローサイトメトリー用に処理した。
【0245】
(統計)
データを両側スチューデントt検定により解析し、P<0.05を統計的有意とみなした。
【0246】
(6.2 結果)
ニューカッスル病ウイルス(NDV)感染により誘導される抗腫瘍免疫応答を特徴付けるために、インビトロ感染細胞の表面でのMHC I及びMHC II分子並びにICAM-1の発現を評価した。
図1に示すように、B16メラノーマ細胞へのNDV感染は、MHCクラスI及びII分子並びに接着分子ICAM-1の上方調節を誘導する。これらの分子は全て、腫瘍特異的リンパ球の動員及び抗腫瘍免疫応答の活性化に重要であると考えられている。次に、インビボでのNDV感染により誘導される抗腫瘍免疫応答をマウスメラノーマモデルで評価し、ウイルス注射を受けた腫瘍とウイルスを受容していない遠位腫瘍の両方における応答のモニタリングを可能にする2側腹モデルを樹立した。
図2に示すように、ウイルス感染腫瘍は、NK細胞、マクロファージ、並びにCD8及びCD4細胞などの免疫細胞の劇的な浸潤を示すが、調節性T細胞の浸潤は示さない。この免疫応答の一部は、腫瘍ではなく、ウイルスに対する応答であり得るので、対側腫瘍に対する免疫応答を評価した(
図3)。興味深いことに、これらの腫瘍は、同程度のCD8及びCD4エフェクターの増加を示したが、T reg浸潤物の増加は示さなかった。これらの細胞の解析により、それらが、活性化、増殖、及び溶解マーカーを上方調節することが明らかになった(
図4)。NDV単剤療法は、処置を受けた腫瘍の制御に効果的であったが(
図5A)、対側腫瘍の成長をごくわずかしか減速させなかった(
図5B)。しかしながら、腫瘍を排除したマウスは、さらなる腫瘍投与に対するある程度の防御を示し(
図5D)、NDV療法が持続的免疫を誘導し得ることを示唆した。
【0247】
次に、さらなるメカニズムを標的にして、NDVが生じさせる抗腫瘍効果を増強することができるかどうかを評価した。NDVを注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方に由来する腫瘍浸潤リンパ球の特徴付けにより、リンパ球上の抑制受容体CTLA-4の上方調節が明らかになった(
図6)。その後、CTLA-4受容体の阻害がNDVのより良好な治療効果をもたらし得るかどうかを評価した。注目すべきことに、併用療法は、大多数の動物で両側腫瘍の拒絶をもたらし、これは、どちらかの処置だけでは見られない効果であった(
図7)。この効果は、ウイルス感染を起こしにくい前立腺腺癌TRAMPモデルを用いた場合にも存在し(
図8)、最小限のウイルス複製及び結果として生じる炎症応答が防御的抗腫瘍免疫の生成に十分であることを示唆した。
【0248】
NDV療法と組み合わせた他の免疫チェックポイントの標的化が有益であり得るかどうかを明らかにするために、NDV感染後のPD-1−PD-L1経路に対する効果を評価した。
図9に示すように、インビトロとインビボの両方におけるNDV感染腫瘍細胞は、該細胞の表面での抑制性PD-L1リガンドの発現を上方調節していた。この効果は、直接的なウイルス感染の結果であっただけでなく、非感染細胞をウイルス感染細胞由来のUV不活化上清で処理した場合にも(
図9B)、対側非感染腫瘍でも(
図9C)見られた。これにより、NDVと抗PD-1抗体による併用療法を検討することになった。CTLA-4遮断と同様、侵襲性B16メラノーマモデルにおける抗PD-1と組み合わせたNDV療法は、大多数の動物に治癒をもたらし、これは、エフェクターリンパ球の活性化とともに腫瘍浸潤の増大を伴う効果であった(
図10)。
【0249】
実施された研究の全体を通して、併用療法の治療効果は、より大きな腫瘍投与を使用した場合に減少した。次に、より良好な応答を予測し得る及び治療効果のさらなる改善のために標的とし得る活性化マーカーを評価した。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節から単離されたリンパ球の解析により、共刺激分子ICOSの上方調節が処置を受けた動物における活性化マーカーの1つであると確認された(
図11)。ICOS上方調節は、悪性メラノーマに対する抗CTLA-4療法で処置された患者のより持続的な治療応答及び生存の増加と関連することが以前に示されている。ICOSリガンド(ICOSL)の腫瘍内発現が併用療法の治療応答をさらに強化し得るかどうかを評価した。NDVに対してリバースジェネティックスシステムを用いて、マウスICOSLを発現するNDV(NDV-ICOSL)を作製した。該ウイルスのインビトロでの特徴付けにより、それが、親NDV株と同様の複製及び溶解特性を有することが明らかになった(
図12)。しかしながら、より大きなB16腫瘍投与を用いて、インビボで試験したとき、NDV-ICOSLは、大多数の処置を受けた動物の長期生存とともに、CTLA-4遮断と組み合わせて使用したときの親NDVウイルスに優る重大な利点を示した(
図13)。この効果は、B16メラノーマに限定されるものではなく、Balb/Cマウス系統のCT26結腸癌についても示され、この治療戦略が様々な腫瘍型に転用可能であり得ることが示唆された(
図14)。処置を受けた動物由来のB16腫瘍の解析により、活性化マーカーの上方調節を伴う様々な免疫細胞亜型の顕著な浸潤が示された(
図15及び16)。これらのリンパ球は腫瘍特異的であり、腫瘍溶解物をロードした樹状細胞による刺激に応答したIFNγの分泌を示した(
図17)。最後に、そのB16又はCT26腫瘍が治癒した動物に腫瘍細胞を再投与すると、腫瘍再投与に対する完全な防御を示した(
図18)。
【0250】
腫瘍内でのICOSLの発現をさらに向上させるために、及び該リガンドをビリオンに取り込ませるために、ICOSLの細胞外ドメイン(アミノ酸1〜277)並びにNDV Fタンパク質の膜貫通及び細胞内ドメイン(アミノ酸501〜554)からなるキメラタンパク質を作製した(
図19A)。得られたコンストラクトのB16-F10細胞へのトランスフェクションは、トランスフェクトされた天然ICOSLと比較して、トランスフェクトされた細胞の表面でのキメラICOSL-Fリガンドの発現を増大させ、表面へのNDV Fタンパク質の輸送を支配する調節メカニズムを利用して、免疫刺激リガンドの表面発現を増大させることができることが示唆された(
図19B)。
【0251】
全体的に見て、これらの研究は、1) NDVと免疫チェックポイント調節抗体との組合せを、腫瘍溶解性ウイルス療法と抗体療法の両方の限界を回避する戦略として使用することができること;及び2)特に、免疫調節抗体と組み合わせて使用した場合、NDVによる免疫刺激リガンドの発現が該ウイルスの治療効果をさらに向上させることを示している。これらの研究結果には臨床応用性がある。
【0252】
(7.実施例2)
本実施例は、CTLA-4遮断と組み合わせた腫瘍溶解性NDVにより誘導される抗腫瘍免疫応答及びNDVにより誘導される抗腫瘍応答を示している。
【0253】
(7.1 材料及び方法)
(マウス)
C57BL/6Jマウス及びBalb/Cマウスは、Jackson Laboratoryから購入した。C57BL/6JバックグラウンドのIFNAR-/-マウスは、Eric Pamer博士の好意による寄贈品であった。Pmel-1及びTrp-1 TCRトランスジェニックマウスは報告されており(Overwijkらの文献、2003, J. Exp. Med, 198:568, Muranskyらの文献、2008, Blood 112:362)、N. Restifo(National Cancer Institute, Bethesda, MD)により提供された。Trp1マウスを、MD Anderson Cancer Center(Houston, TX)のPatrick Hwuにより提供されたCD2:ルシフェラーゼマウスと交配させ、Trp1ルシフェラーゼ
+(Trp1-Fluc)マウスを作出した。全てのマウスをマイクロアイソレーターケージで維持し、NIH及び米国実験動物管理協会(American Association of Laboratory Animal Care)の規制に従って処置した。本研究のための全てのマウス処置及び実験は、メモリアル・スローン・ケタリング癌センター施設動物管理及び使用委員会(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Institutional Animal Care and Use Committee)による承認を受けた。
【0254】
(細胞株)
メラノーマのマウス癌細胞株(B16-F10)、並びに結腸癌のマウス癌細胞株(CT26及びMC38)を、10%胎仔ウシ血清及びペニシリンがストレプトマイシンとともに補充されたRPMI培地中で維持した。マウス前立腺癌細胞株TRAMP-C2を、5%胎仔ウシ血清(FCS; Mediatech社)、5%Nu血清IV(BD Biosciences)、HEPES、2-ME、pen/strep、L-glut、5μg/mLインスリン(Sigma)、及び10nmol/L DHT(Sigma)が補充されたDMEM培地中で維持した。
【0255】
(抗体)
治療用の抗CTLA-4(クローン9H10)、抗PD-1(クローンRMP1-14)、抗PD-L1(クローン9G2)、抗CD8(クローン2.43)、抗CD4(クローンGK1.5)、抗IFN-γ(クローンXMG1.2)、及び抗NK1.1(クローンPK136)モノクローナル抗体は、BioXcellにより産生された。フローサイトメトリーに使用される抗体は、eBioscience、Biolegend、Invitrogen、及びBD Pharmingenから購入した。
【0256】
(ウイルス及びクローニング)
組換え長潜伏期性NDV LaSota株を全ての実験に使用した。マウスICOSLを発現するNDVウイルスを作製するために、適当なNDV特異的RNA転写シグナルが両側に配置されたマウスICOSLをコードするDNA断片を、pT7NDV/LSのP遺伝子とM遺伝子の間に作出されたSacII部位に挿入した。ウイルスを、先に記載されている方法を用いてcDNAからレスキューし、インサートの忠実度について逆転写PCRによりシークエンシングした。ウイルス力価を段階希釈及びVero細胞における免疫蛍光により決定した。組換えICOSL-F融合コンストラクトを、EcoRI及びMluI制限部位を両側に有する、細胞外ドメイン(アミノ酸1〜277)をコードするICOSL DNA、並びにMluI及びXhoI制限部位を両側に有する、F膜貫通及び細胞内ドメイン(アミノ酸501〜554)をコードするNDV F DNAのPCR増幅により作製した。得られたDNA断片を、3部分ライゲーションを用いて、pCAGGSベクター中で組み合わせた。組換え抗マウスCD28scfv-F融合コンストラクトを、ハムスター抗CD28scfvをコードし、EcoRI及びMluI制限部位を両側に有するcDNA、並びにF膜貫通及び細胞内ドメイン(アミノ酸501〜554)をコードし、MluI及びXhoI制限部位を両側に有するNDV F DNAのPCR増幅により作製した。得られたDNA断片を、3部分ライゲーションを用いて、pCAGGSベクター中で組み合わせ、その後、P遺伝子とM遺伝子の間でpNDVベクターにサブクローニングした。他のキメラタンパク質(HN-GITRL、HN-4-1BBL、HN-CD40L、HN-OX40L)を発現する組換えウイルスを作製するために、各々の遺伝子の細胞外ドメイン(
図44)をコードするcDNAを、EcoRI及びMluI制限部位を両側に有する遺伝子特異的プライマーで増幅させ、HNタンパク質の膜貫通及び細胞内ドメインを、MluI及びXhoI制限部位を両側に有する特異的プライマーで増幅させた。全長キメラ遺伝子を、3部分ライゲーションを用いて、pCAGGSベクター中で組み合わせ、その後、P遺伝子とM遺伝子の間でNDVベクターにサブクローニングした。各々のキメラコンストラクトの詳細を
図44に示す。マウスIL-2、IL-15、及びIL-21をコードする組換えNDVを作製するために、各々の遺伝子のcDNAを、SacII制限部位を両側に有する遺伝子特異的プライマーで増幅させ、その後、P遺伝子とM遺伝子の間でpNDVにクローニングした。ウイルスを、先に記載されている方法を用いてcDNAからレスキューし、インサートの忠実度について逆転写PCRによりシークエンシングした。ウイルス力価を段階希釈及びVero細胞における免疫蛍光により決定した。
【0257】
(インビトロ感染実験)
細胞表面標識のために、細胞を、6ウェルディッシュ中、MOI 2(B16-F10)又はMOI 5(TRAMP C2)で、3連で感染させた。24時間後、細胞を剥離により回収し、表面標識及びフローサイトメトリーによる定量用に処理した。インビトロ細胞傷害実験のために、細胞を表示されたMOIで感染させ、250ng/ml TPCKトリプシンの存在下、無血清培地中、37℃でインキュベートした。感染から24、48、72、及び96時間後、細胞を洗浄し、1%Triton X-100とともに、37℃で30分間インキュベートした。溶解物中のLDH活性を、製造元の指示に従って、Promega CytoTox 96アッセイキットを用いて決定した。
【0258】
(腫瘍投与生存実験)
注射を受けた腫瘍と全身腫瘍の両方における治療効果についてモニタリングするために、両側腹腫瘍モデルを樹立した。単剤としてのNDV又は抗CTLA-4による10〜20%の腫瘍クリアランスを達成するために、処置スケジュール及び細胞用量を各々の腫瘍モデルについて確立した。NDVと抗CTLA-4抗体との併用療法を評価する実験については、0日目に2×10
5個のB16-F10F10細胞を右側腹に皮内(i.d.)注射し、4日目に5×10
4個の細胞を左側腹に注射することにより、B16-F10腫瘍を移植した。7、9、11、及び13日目に、PBS中の2×10
7pfuのNDVを100μlの全容量で腫瘍内注射することにより、マウスを処置した。同時に、7、9、11、及び13日目に、マウスに、抗CTLA-4抗体(100μg)、抗PD-1抗体(250μg)、又は抗PD-L1抗体(250μg)の腹腔内(i.p.)注射を受けさせた。対照群には、対応する用量のアイソタイプ抗体の腹腔内注射及びPBSの腫瘍内注射を受けさせた。苦痛の兆候があるか又は全腫瘍容積が1000mm
3に達した場合、動物を安楽死させた。免疫細胞の除去のために、マウスに、腫瘍投与の1日前及び2日後に、500μgのCD8+、CD4+、NK1.1、又はIFNγに対するモノクローナル抗体を腹腔内注射し、その後、実験の全体を通して5日おきに、250μgを注射した。TRAMP-C2モデルについては、0日目に1×10
6個の細胞を右側腹に移植し、4日目に5×10
5個の細胞を左側腹に移植した。処置を、上記と同様の様式で、7、10、13、及び16日目に実施した。CT26モデルについては、0日目に1×10
6個のCT26細胞を右側腹に皮内注射し、2日目に1×10
6個の細胞を左側腹に注射することにより、腫瘍を移植した。処置を、上記の通りに、6、9、及び12日目に実施した。ICOSL、4-1BBL、OX40L、CD40L、GITRL、抗CD28scfv、IL-2、IL-15、及びIL-21を発現する組換えNDV(NDV-導入遺伝子)を評価する実験については、0日目に2×10
5個のB16F10細胞を右側腹の皮内注射し、4日目に1×10
5個の細胞を左側腹に注射することにより、B16F10腫瘍を移植する。7、9、11、及び13日目に、PBS中の2×10
7pfuのNDVを100μlの全容量で腫瘍内注射することにより、マウスを処置する。同時に、7、9、11、及び13日目に、マウスに、抗CTLA-4抗体(100μg)、抗PD-1抗体(250μg)、又は抗PD-L1抗体(250μg)の腹腔内(i.p.)注射を受けさせる。
【0259】
(Trp1リンパ球及びPmelリンパ球の単離及び養子移植)
トランスジェニックマウス由来の脾臓及びリンパ節を単離し、70-umナイロンフィルターに通してすり潰した。CD4+及びCD8+細胞を、Miltenyi磁気ビーズを用いる陽性選択により純化した。
【0260】
単離されたTrp1細胞又はPmel細胞を、それぞれ、マウス1匹当たり2.5×10
4細胞及びマウス1匹当たり1×10
6細胞で、表示されたスケジュールで、尾静脈経由でレシピエント動物に注射した。
【0261】
(血清移植実験)
腫瘍担持マウスの群をNDV又はPBSの単回注射で腫瘍内処置した。4日目に、血液を終末採血により回収し、血清を遠心分離により単離した。血清を各々の群からプールし、Stratalinker 1800にて300mJ/cm
2のUV光の6回のパルスでUV処理して、存在する可能性がある全てのウイルスを不活化した。1日おきに施される合計3回の注射については、100μlの未希釈の血清を未感作B16-F10腫瘍担持マウスに腫瘍内注射した。最後の注射から3日後に腫瘍を摘出し、下記の通りに、腫瘍浸潤リンパ球の単離用に処理した。
【0262】
(生体発光イメージング)
6日目から2〜3日おきに、マウスをイメージングした。マウスに、PBS中の50μlの40mg/ml D-ルシフェリン(Caliper Life Sciences)を後眼窩から注射し、IVISイメージングシステム(Caliper Life Sciences)を用いてすぐにイメージングした。グレースケール画像と生体発光カラー画像を、The Living Image、バージョン4.0(Caliper Life Sciences)ソフトウェアオーバーレイを用いて重ね合せた。対象領域(ROI)を腫瘍にわたって手動で選択し、ROIの面積を一定にした。
【0263】
(腫瘍浸潤リンパ球の単離)
0日目に2×10
5個のB16-F10細胞を右側腹に皮内注射し、4日目に2×10
5個の細胞を左側腹に注射することにより、B16-F10腫瘍を移植した。7、9、及び11日目に、マウスを、2×10
7pfuのNDVの腫瘍内注射、及び指定されている場合、抗CTLA-4抗体又は抗PD-1抗体の腹腔内注射で処置した。腫瘍負荷が原因で死んだ数少ない動物(常に未処置対照群に含まれる)又は腫瘍を完全に除去した動物(常に処置群に含まれる)は、解析に使用しなかった。15日目に、マウスを屠殺し、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節を、鉗子及び手術鋏を用いて摘出し、計量した。各々の群由来の腫瘍を鋏で細かく刻んだ後、1.67 Wunsch U/mLのリベラーゼ及び0.2mg/mLのDNアーゼとともに、37℃で30分間インキュベートした。腫瘍をピペッティングの繰り返しによりホモジナイズし、70-μmナイロンフィルターに通して濾過した。細胞懸濁液をコンプリートRPMIで1回洗浄し、Ficoll勾配で純化して、死細胞を除去した。腫瘍流入領域リンパ節由来の細胞は、該リンパ節を70-μmナイロンフィルターに通してすり潰すことにより単離した。
【0264】
(フローサイトメトリー)
腫瘍又は腫瘍流入領域リンパ節から単離された細胞を、CD45、CD3、CD4、CD8、CD44、ICOS、CD11c、CD19、NK1.1、CD11b、F4/80、Ly6C、及びLy6Gを染色するいくつかの抗体パネルによる表面標識用に処理した。固定可能な生死判定色素eFluor506(eBioscience)を用いて、生細胞を識別した。細胞を、FoxP3固定及び透過処理キット(eBioscience)を用いてさらに透過処理し、Ki-67、FoxP3、グランザイムB、CTLA-4、及びIFNγについて染色した。データは、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して取得し、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して分析した。
【0265】
(DC純化及びローディング)
未感作マウス由来の脾臓を単離し、37℃で30分間、1.67 Wunsch U/mLのリベラーゼ及び0.2mg/mLのDNアーゼで消化した。得られた細胞懸濁液を70umナイロンフィルターに通して濾過し、コンプリートRPMIで1回洗浄した。CD11c+ DCを、Miltenyi磁気ビーズを用いる陽性選択により純化した。単離されたDCを組換えGM-CSF及びB16-F10腫瘍溶解物とともに一晩培養し、Ficoll勾配で純化した。
【0266】
(サイトカイン産生の解析)
腫瘍又は腫瘍流入領域リンパ節由来の細胞懸濁液をプールし、Miltenyi T細胞純化キットを用いて、T細胞について濃縮した。単離されたT細胞を計数し、B16-F10腫瘍細胞溶解物をロードしたDCと、20U/ml IL-2(R and D)+ブレフェルジンA(BD Bioscience)の存在下で、8時間共培養した。再刺激後、リンパ球を、上記の通りに、フローサイトメトリー用に処理した。
【0267】
(免疫蛍光及び顕微鏡観察)
腫瘍をマウスから切断し、PBS中で洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、以前に記載されているプロトコルに従って、パラフィン包埋用に処理した。切片をミクロトームを用いて切り出し、スライドに載せ、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)による又は抗CD3抗体及び抗FoxP3抗体による染色用に処理した。スライドを、Zeiss Axio 2広視野顕微鏡で、10倍及び20倍の対物レンズを用いて解析した。
【0268】
(統計)
データを両側スチューデントt検定(2群比較用)及び必要に応じてANOVAにより解析した。生存に関するデータをログ-ランク(マンテル-コックス)検定により解析した。両側p<0.05を統計的有意とみなした(P≦0.05(
*)、P≦0.01(
**)、P<0.001(
***)、P<0.0001(
****))。
【0269】
(7.2 結果)
(NDV複製は注射を受けた腫瘍部位に限定される)
NDVの腫瘍内及び全身投与によるウイルス分布動態を特徴付けた。ホタルルシフェラーゼレポーターを発現する組換えNDV(NDV-Fluc)の腫瘍内注射は、注射を受けた側腹腫瘍内でのルシフェラーゼシグナルの持続をもたらしたが、該ウイルスの全身投与は、腫瘍内での検出可能なルシフェラーゼシグナルを生じさせなかった(
図20A)。限定された全身ウイルス送達は十分な腫瘍溶解及び免疫応答を誘導する可能性が低かったので、腫瘍内NDV注射を、全身OV療法の限界を克服する可能性がある抗腫瘍免疫応答を誘発する手段として検討した。したがって、さらなる研究のために、モデル化された転移性疾患を、両側腹B16-F10腫瘍モデルを用いることによりモデル化した(
図22A)。右側腹腫瘍へのNDV-Fluc投与は、注射を受けた腫瘍内でのウイルス複製をもたらし、ルシフェラーゼシグナルは、最大96時間検出可能であった(
図20B〜D)。対側(左側腹)腫瘍では、発光イメージング(
図20B〜D)、孵化卵での継代、又はRT-PCRにより、ウイルスが検出されなかった。したがって、このシステムにより、ウイルス注射を受けた腫瘍とNDVによる直接的な影響を受けない遠位腫瘍の両方における免疫応答の特徴付けが可能になった。
【0270】
(NDV療法は局所及び遠位腫瘍リンパ球浸潤を増大させ、腫瘍成長を遅延させる)
ウイルス注射を受けた腫瘍の解析により、白血球共通抗原CD45を発現する細胞の浸潤の増大によって明白に示される炎症応答が示された(
図21A〜B)。免疫浸潤物は、骨髄細胞、NK細胞、及びNKT細胞を含む自然免疫コンパートメント(
図21C)、並びにCD8+及び従来型CD4+FoxP3-(Tconv) T細胞を含む適応コンパートメントの増加を特徴としており、CD8及びTconv対調節性(Treg) T細胞比の有意な増加を生じさせた(それぞれ、p=0.0131及びp=0.0006)(
図21D〜21F)。注目すべきことに、対側腫瘍の解析により、自然免疫細胞(
図22D)とエフェクターT細胞(
図22E、G)の両方の数の増加を特徴とする、炎症性浸潤物の同様の増加が明らかになった(
図22B、C)。注目すべきことに、Tregの絶対数には大きな変化がなかったが(
図22G)、その相対的パーセンテージは実質的に減少し(
図22E、F、H)、CD8及びTconv対Treg比の有意な増大が見られた(それぞれ、p=0.002及びp=0.0021)(
図22I)。遠位腫瘍から単離されたエフェクターT細胞は、それぞれ、活性化、増殖、溶解のマーカーであるICOS、Ki-67、及びグランザイムBの発現の増大を示した(
図1J、K)。先述のように、ウイルス又はウイルスRNAは遠位腫瘍から単離することができなかったが、これは、遠位腫瘍微小環境の観察された変化が直接的なウイルス感染によるものではなかったことを示唆している。検出できない局所ウイルス拡散の可能性をさらに排除するために、腫瘍を両側後足蹠などの他の遠位部位に移植し、これにより、同様の研究結果が得られた(
図23)。
【0271】
観察された炎症効果と一致して、NDVの腫瘍内投与は、注射を受けた腫瘍の成長遅延だけでなく、対側腫瘍の成長遅延ももたらし、長期の動物生存をもたらした(
図1L、M)。この効果が一過性であるかどうか、及び持続的な抗腫瘍防御が可能であるかどうかを明らかにするために、単側腹B16-F10腫瘍担持マウスをNDVで腫瘍内処置し、長期生存マウスの反対の側腹にB16-F10細胞を注射した。大多数の動物は腫瘍成長遅延を示し、該動物の30%は、再投与された細胞を完全に拒絶し、NDVによる腫瘍内療法が防御的抗腫瘍記憶応答を実際に誘導することができることを示唆した(
図25)。
【0272】
(NDVは腫瘍浸潤及び腫瘍特異的リンパ球の増殖を誘導する)
抗腫瘍免疫応答が、NDVを注射された腫瘍型に依存するのか、それともNDV感染により生じた非特異的炎症の結果であるのかを明らかにするために、異種腫瘍(MC38結腸癌及びB16-F10メラノーマ)を反対の側腹に移植して、実験を行った(
図24A)。腫瘍特異的リンパ球を追跡するために、メラノーマ分化抗原gp100(Pmel)及びTrp1(Trp1)を認識する、T細胞受容体が遺伝子導入されたコンジェニック標識CD8+(Pmel)細胞又はルシフェラーゼ標識CD4+(Trp1)細胞を養子移植した(Muranskiらの文献、2008, Blood, 112: 362; Overwijkらの文献、2003, J Exp Med, 198: 569)。生体発光イメージングを用いて、養子移植されたTrp1細胞の分布及び増殖動態を測定した。PBS処置した腫瘍担持動物へのTrp1細胞の移植は、腫瘍内でのTrp1蓄積を生じさせることができず、このモデルにおける腫瘍微小環境の免疫抑制性の高い性質を強調した(
図24B〜D)。B16-F10腫瘍へのNDV注射は、Trp1 T細胞増殖を示す、注射を受けた腫瘍内でのルシフェラーゼシグナルの有意な増加(曲線下面積(AUC) p=0.0084)をもたらした(
図24B〜D)。注目すべきことに、同様の増殖は、遅れてではあったが、対側腫瘍でも見られた(p=0.0009)(
図24B〜D)。対照的に、MC38腫瘍へのNDV注射は、注射を受けたMC38腫瘍又は遠位B16-F10腫瘍への実質的なTrp1浸潤を誘導することができず(
図24B〜D)、遠位腫瘍特異的リンパ球浸潤が、注入された腫瘍の抗原の素性に依存する可能性が高いことを示唆した。同様に、NDVの腫瘍内注射は、遠位腫瘍へのPmel細胞の浸潤の増大をもたらしたが、これは、注入された腫瘍が、MC38ではなくB16-F10であるときに、より顕著であった(
図24E)。
【0273】
興味深いことに、養子移植されたリンパ球による遠位B16-F10腫瘍の浸潤は、注入された腫瘍の素性に依存するが、遠位腫瘍は、注入された主要な腫瘍がMC38である場合でも、免疫浸潤の増大を確かに示し(
図24F)、これは、非特異的炎症応答成分も役割を果たし得ることを示唆している。実際、潜在的ウイルスを不活化するためにUV照射で処置したNDV処置動物由来の血清は、未感作B16-F10腫瘍担持マウスに腫瘍内注射したとき、腫瘍白血球浸潤を誘導し(
図24G、H)、この増加の大部分は、NK及びCD8+コンパートメントで見られた(それぞれ、p=0.0089及びp=0.0443)(
図24I)。
【0274】
(NDV及びCTLA-4遮断は相乗的に作用して、局所腫瘍及び遠位腫瘍を拒絶する)
顕著な炎症応答及び成長遅延が遠位腫瘍で見られたにもかかわらず、長期生存を伴う完全な対側腫瘍拒絶は、動物の約10%でしか見られず(
図22M)、これは、腫瘍微小環境における活発な免疫抑制機構を示唆するものであった。NDV注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍の特徴付けにより、腫瘍浸潤T細胞上のCTLA-4の上方調節が明らかになり(
図26)、これにより、NDV誘導性腫瘍炎症がCTLA-4遮断による全身療法に対して腫瘍を感受性にすることが示唆された。注目すべきことに、NDVと抗CTLA-4抗体との併用療法(
図27A)は、大多数の動物で両側腫瘍の拒絶と長期生存とをもたらし、これは、どちらかの処置だけでは見られない効果であった(
図27B〜D)。観察された防御の持続性を明らかにするために、生き残った動物の右側腹に、90日目に、B16-F10細胞を注射し、それ以上の治療を施さなかった。NDV及び抗CTLA-4併用療法で処置された動物は、単剤の抗CTLA-4抗体で処置された動物における40%の防御と比較して、腫瘍再投与に対する80%を超える防御を示した(
図27E)。
【0275】
(NDV及びCTLA-4遮断による併用療法はウイルス非許容性腫瘍に対して効果的である)
この治療戦略を他の腫瘍型に拡大することができるかどうかを明らかにするために、この戦略を、免疫原性が低いTRAMP C2前立腺腺癌モデルで評価した。B16-F10モデルと同様、併用療法は、注射を受けた腫瘍の退縮を引き起こし(
図27F)、遠位腫瘍の増殖を遅延させるか、又は持続的な長期生存を伴う完全な遠位腫瘍退縮をもたらした(
図27F、G)。興味深いことに、B16-F10細胞がインビトロでのNDV媒介性溶解を起こしやすいのに対し、TRAMP C2細胞は強く抵抗性であり、最大10の感染多重度(MOI)でわずかな細胞傷害性しか観察されなかった(
図27H)。両方の細胞株において、インビトロでのNDV感染は、MHC及び共刺激分子の表面上方調節をもたらした(
図27I〜K)。全ての細胞が、1のMOIでNDVに感染したわけではないにもかかわらず、MHCクラスIは、全ての細胞で均一に上方調節された。過去の研究により、NDVはB16-F10細胞でI型IFN発現を誘導することが示された(Zamarinらの文献、2009, Mol Ther 17:697)。両方のI型IFN(Dezfouliらの文献、2003, Immunol. Cell. Biol., 81:459, Seligerらの文献、2001, Cancer Res., 61:1095)は、B16-F10細胞上のMHCクラスIを上方調節することが知られており、感染腫瘍との関連において、これらの機構は、腫瘍免疫原性の増強において付加的な役割を果たし得ることが示唆される。したがって、これらの結果は、ウイルス媒介性溶解に対するインビトロ感受性がインビボでのNDV療法に対する感受性に必要ではないことを示唆するものであり、観察された抗腫瘍効果における、直接的な溶解ではなく、ウイルスが生じさせる炎症応答の重要性をさらに強調するものである。
【0276】
(全身抗腫瘍効果は注入される腫瘍型に対して抗原拘束性である)
遠位腫瘍における観察された抗腫瘍効果が注射された腫瘍型に特異的であるかどうかを明らかにするために、片側性遠位B16-F10腫瘍を担持する動物並びに異種腫瘍型(MC38結腸癌及びB16-F10メラノーマ)が反対の側腹に移植された動物における併用療法を評価した(
図28A)。腫瘍を担持していない右側腹へのウイルスの皮内投与は、左側腹腫瘍増殖の遅延を生じさせたが、これは、両側B16-F10腫瘍を担持する動物で見られる長期防御及び腫瘍拒絶を生じさせることができなかった(
図28B、C)。同様に、左側腹B16-F10腫瘍を担持する動物の右側腹MC38腫瘍へのNDVの注射は、B16-F10腫瘍拒絶を誘導することができず(
図28D、E)、NDV誘導性抗腫瘍免疫応答は、注入される腫瘍に対して抗原拘束性である可能性が高いことが示唆された。
【0277】
(NDV及び抗CTLA-4による併用療法は活性化リンパ球の腫瘍浸潤を誘導する)
処置を受けた動物におけるB16-F10腫瘍微小環境を調べるために、両側腫瘍を回収し、浸潤細胞の解析用に処理した。処置を受けた動物由来の注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍の解析により、併用療法で処置した動物における顕著な炎症性浸潤物及び広い面積の腫瘍壊死が明らかになった(
図30A、
図29)。これは、併用療法群におけるCD45+細胞及びT細胞の数の増加と相関した(
図30A〜C、
図29A〜C)。先述の通り、観察されたTILの増加は主に、Treg細胞ではなく、CD8+及びTconvの浸潤によるものであり、これにより、エフェクター対Treg比が増大した(
図30D〜F、
図29C〜E)。併用治療を受けた動物由来のCD4+及びCD8+ TILの表現型特徴付けにより、未処置動物及び抗CTLA-4処置動物を上回るICOS、グランザイムB、及びKi-67の上方調節(
図30G〜I)並びにB16-F10腫瘍溶解物がパルスされた樹状細胞(DC)による再刺激に応答したIFNγ発現CD8+細胞のパーセンテージの増大(
図30J)が示された。
【0278】
(NDV併用療法の抗腫瘍活性は、CD8+細胞、NK細胞、I型及びII型インターフェロンに依存する)
細胞性免疫のどの成分が観察された治療効果の原因となるのかを明らかにするために、CD4+細胞、CD8+細胞、又はNK細胞に対する除去抗体の存在下で、処置を繰り返した。各々の細胞サブセットの十分な細胞除去を末梢血のフローサイトメトリーにより確認した(
図31)。CD8+細胞又はNK細胞のどちらかの除去は、ウイルス注射を受けた腫瘍と遠位腫瘍の両方における治療効果の消失をもたらし(
図32A、B)、長期生存を有意に低下させた(CD8について、p<0.0001及びNK除去について、p=0.0011)(
図32C)。これらの研究結果と一致して、抗IFNγ中和抗体による動物の処置も治療効果を低下させた。対照的に、CD4+細胞の除去は、感知できるほどの抗腫瘍効果の変化をもたらさなかったが、抗CD4+除去はTregの除去も同時に生じさせるので、これらの結果は、慎重に解釈されなければならない。
【0279】
I型IFNは、抗腫瘍免疫応答のためのCD8+細胞のプライミングにおいて重要な役割を果たすことが以前に示されている(Fuertesらの文献、2011, J Exp Med, 208: 2005; Diamondらの文献、2011, J Exp Med, 208: 1989)。NDVによる腫瘍拒絶におけるI型IFNの役割を調べるために、I型IFN受容体ノックアウト(IFNAR-/-)マウスで実験を繰り返した。IFNAR-/-マウスは、注射を受けた腫瘍と対側腫瘍の両方の急速な進行を示し、併用療法に対して完全に抵抗性であった(
図32D〜F)。全体的に見て、これらの研究結果は、本研究で観察されたウイルスの全身治療効果に対する自然免疫応答と適応免疫応答の両方の重要な役割を強調している。
【0280】
(NDV療法は腫瘍細胞上及び腫瘍浸潤白血球上のPD-L1の上方調節をもたらす)
NDV療法と組み合わせて他の免疫チェックポイントを標的とすることが有益であり得るかどうかを明らかにするために、NDV感染後のPD-1−PD-L1経路に対する効果を評価した。
図33に示すように、インビボとインビトロの両方におけるNDV感染腫瘍細胞は、該細胞の表面での抑制性PD-L1リガンドの発現を上方調節させており(
図33A)、これは、遠位の非感染腫瘍でも見られた。PD-L1の上方調節は、腫瘍細胞に限られたものではなく、自然免疫系統と適応免疫系統の両方の腫瘍浸潤白血球でも見られた(
図33B)。
【0281】
(NDVとPD-1及びPD-L1遮断抗体との併用療法は抗腫瘍免疫の向上及び長期の動物生存をもたらす)
NDVとPD-1を遮断する抗体との組合せ及びNDVとPD-L1を遮断する抗体との組合せを上記の両側腹メラノーマモデルで評価した。注目すべきことに、CTLA-4遮断と同様、抗PD-1又は抗PD-L1抗体のどちらかと組み合わせたNDV療法は、動物生存の向上をもたらした(
図34及び35)。NDVと抗PD-1抗体の組合せで処置した動物由来の遠位腫瘍を特徴付けた。
図36を見て分かるように、腫瘍内NDVと全身PD-1遮断との組合せは、免疫細胞による顕著な遠位腫瘍浸潤をもたらし、腫瘍浸潤CD8細胞の増加が最も顕著な所見であった。浸潤細胞は、それぞれ、増殖及び溶解のマーカーであるKi67及びグランザイムBを上方調節した(
図37)。
【0282】
(NDVは、ウイルス注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍並びに腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)におけるCD4細胞及びCD8細胞上でのICOSの腫瘍免疫浸潤上方調節を誘導する)
上記の研究結果は、腫瘍内NDVと全身免疫チェックポイント遮断との組合せが2つの治療的手法の間で著しい相乗効果を生むことを示した。これらの研究結果をさらに深めるために、関連のある共刺激経路を介した腫瘍微小環境内でのT細胞エフェクター機能の増強がより良好な抗腫瘍免疫応答を誘導し得ることを調べた。過去の研究により、T細胞上での誘導性共刺激因子(ICOS)の持続的な上方調節が患者のCTLA-4遮断に対する応答の強力な指標であることが確認された(Carthonらの文献、2010, Clin. Canc. Res., 16:2861)。ICOSは、T細胞依存性Bリンパ球応答及び全Tヘルパーサブセットの発生に極めて重要であることが示されている、活性化T細胞の表面で上方調節されるCD28ホモログである(Simpsonらの文献、2010 Curr Opin Immunol. 22:326)。CTLA-4遮断の抗腫瘍性腫瘍効果におけるICOSの役割がマウス研究により最近確認された。この研究において、ICOS欠損マウスは、CTLA-4遮断により、抗腫瘍応答の発生が重度に障害された(Fuらの文献、2011, Cancer Res., 71:5445)。
【0283】
NDVで処置した両側腹腫瘍モデルにおけるICOSの発現を特徴付け、該受容体がこの治療的手法における標的としての役割を果たし得るかどうかを明らかにした。腫瘍内NDV療法の局所及び遠達効果を特徴付けるために、両側腹B16-F10メラノーマモデルを利用し、該ウイルスを片側の腫瘍に投与した(
図38A)。より良好な応答を予測することができ、かつ治療効果のさらなる改善を求めて標的とすることができる活性化マーカーを評価した。持続的なICOS上方調節は、悪性メラノーマに対する抗CTLA-4療法で処置された患者におけるより持続的な治療応答及び生存の増加と関連することが以前に示されているので、実施例の重点をICOSに置いた。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節から単離されたリンパ球の解析により、共刺激分子ICOSの上方調節が、処置を受けた動物における活性化マーカーのうちの1つであることが確認された(
図38B、C)。
【0284】
(NDV-ICOSLウイルスの作製及びインビトロ評価)
NDVに対してリバースジェネティックスシステムを用いて、マウスICOSLを発現するNDV(NDV-ICOSL)を作製した(
図39A)。感染B16-F10細胞の表面でのICOSLの発現を、フローサイトメトリーにより、感染から24時間後に確認した(
図39B)。該ウイルスのインビトロでの特徴付けにより、該ウイルスが、親NDV株と同様の複製特性(
図39D)及び溶解特性(
図39C)を有することが明らかになった。
【0285】
(NDV-ICOSLは遠位腫瘍の成長を遅延させ、腫瘍リンパ球浸潤の増強を誘導する)
ウイルス注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍における治療効果についてNDV-ICOSLを評価するために、両側B16-F10腫瘍を担持する動物を、該ウイルスの4回の腫瘍内注射を片側腹腫瘍に施して処置した。NDV-ICOSLと野生型NDVはどちらも、これらのウイルスが直接注射された腫瘍内で腫瘍退縮を引き起こす能力について同程度であった(
図40A)。しかしながら、野生型NDVと比較したとき、NDV-ICOSLは、遠位腫瘍の顕著な腫瘍成長遅延をもたらし、数匹の動物は、無腫瘍状態を長期間維持した(
図40B〜C)。ウイルス注射を受けた腫瘍の解析により、野生型NDV及びNDV-ICOSLで処置した動物におけるCD4及びCD8エフェクター細胞による腫瘍浸潤の増強が明らかになったが、2つのウイルスの違いは統計的に有意なものではなく、右側腹腫瘍に対するこの2つのウイルスのよく似た活性を反映するものであった(
図40A及び40D)。対照的に、左側腹腫瘍の解析により、NDV-ICOSL処置群における腫瘍浸潤CD8細胞及びTconv細胞のより顕著な増加が明らかになった(
図40E)。興味深いことに、調節性T細胞の絶対数も増加し、最大の増加はNDV-ICOSL群で見られたが(
図40E)、調節性T細胞の相対的パーセンテージは、NDV処置動物で有意により低かった(
図40F)。
【0286】
(NDV-ICOSLとCTLA-4遮断との併用療法は注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍の拒絶をもたらす)
全体的に見て、上記の研究結果は、NDV-ICOSLの腫瘍内投与によって顕著な炎症応答が遠位腫瘍で見られたにもかかわらず、大多数の動物は依然として腫瘍のために死亡したことを示しており、腫瘍微小環境内で活発な抑制機構が浸潤免疫細胞による腫瘍拒絶を妨げることが示唆された。したがって、限局性NDV-ICOSLと全身性CTLA-4遮断との併用療法の効果を評価した。これらの実験のために、腫瘍投与用量を、単剤としてのNDV又は抗CTLA-4による顕著な治療効果が観察されないレベルにまで増大させた。先述のように、動物を、4用量のNDVを片側の腫瘍に投与して処置し、同時に、抗CTLA-4抗体を全身投与した(
図41A)。B16-F10モデルにおいて、NDV-ICOSLと抗CTLA-4による併用療法は、長期の動物生存を伴う大多数の注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍の退縮をもたらし、これは、NDV-WTと抗CTLA-4との組合せよりも顕著に優れていた(
図41B〜D)。これらの研究結果を他の腫瘍モデルに拡大することができるかどうかを明らかにするために、両側腹CT26結腸癌モデルで同じ実験を行った。インビトロでのNDV媒介性溶解に対するCT26細胞の低い感受性にもかかわらず、ウイルス注射を受けた腫瘍と遠位腫瘍の両方に対するNDVと抗CTLA-4の併用療法の顕著な治療効果が観察され、優れた効果は、この場合もやはり、NDV-ICOSLと抗CTLA-4との組合せを用いた群で見られた(
図42A〜D)。両方の腫瘍モデルにおいて、腫瘍を完全に除去した動物に、それ以上の治療を施すことなく、90日目に、致死用量の腫瘍細胞を再投与すると、再投与に対する防御が大多数の動物で示された(
図41E及び
図42E)。興味深いことに、CT26モデルでは、治癒した動物の全てが再投与から防御されたが、B16-F10モデルでは、抗CTLA-4のみで治癒した動物と比較したとき、併用療法で処置した動物が優れた防御を示し(
図41E)、これにより、併用アプローチがより有効な防御的記憶応答をもたらすことが示された。
【0287】
(併用療法は自然免疫細胞及び適応免疫細胞による腫瘍浸潤の増強をもたらす)
NDVと抗CTLA-4療法の組合せで処置した動物由来の遠位B16腫瘍の解析により、様々な免疫細胞亜型による顕著な腫瘍浸潤が示された(
図43A、B)。浸潤の増加は、自然免疫コンパートメント(
図43C、D)と適応免疫コンパートメント(
図43E)の両方で明らかであり、最大の増加は、NDV-ICOSLと抗CTLA-4の組合せで処置した群で見られた。興味深いことに、この群が最大の浸潤CD8+リンパ球数を示した一方、調節性T細胞の統計的に有意な増加もこの群で見られたが(
図43E)、Tregの全体的なパーセンテージは、未処置動物又は単剤の抗CTLA-4で処置した動物と比較したとき、有意に減少し(
図43F)、結果としてエフェクター対Treg比が増大した(
図43G)。TILの詳細な解析により、NDV-ICOSLと抗CTLA-4の組合せで処置した動物から単離されたTILは、それぞれ、活性化、溶解、及び増殖のマーカーであるICOS、グランザイムB、及びKi67を最大レベルで発現することが示された(
図43H〜J)。
【0288】
(他の共刺激分子を発現する組換えNDVの作製)
上に述べたように、本実施例は、NDVによる共刺激リガンドの発現が、より強い免疫応答の活性化をもたらすことができ、それが、特に、免疫チェックポイント遮断との併用療法の状況において、より効果的な抗腫瘍免疫を生じさせることができることを示している。さらなる共刺激分子を評価するために、免疫グロブリンスーパーファミリーの受容体(ICOS及びCD28)並びにTNF受容体スーパーファミリー(GITR、4-1BB、OX40、及びCD40)を標的とするリガンドを検討した。CD28を標的とするために、NDV F糖タンパク質の細胞質及び膜貫通ドメインとCD28に対する単鎖抗体から構成された細胞外ドメインとを有するキメラタンパク質から構成された人工リガンド(aCD28-scfv)を人為的に作製した(
図44A、B)。TNF受容体スーパーファミリーを標的とするリガンドについては、感染細胞の表面でのリガンドの発現の増強を確実にするために、各々のリガンドの細胞外ドメインをNDV HN糖タンパク質の膜貫通及び細胞内ドメインに融合させた(
図44A、B)。さらに、共通γ鎖受容体ファミリーのサイトカイン(IL-2、IL-15、及びIL-21)を発現する組換えウイルスを作製した。得られたコンストラクトを
図44Cの略図に示す。組換えウイルスをリバースジェネティクスにより作製し、ウイルスの存在を血球凝集アッセイにより確認した(
図45A)。挿入された遺伝子の忠実度を保証するために、RNAを各々のウイルスから単離し、クローニングされた遺伝子領域の外側でアニールするプライマーを用いてRT-PCRを行った(
図45B、C)。各々の遺伝子の配列をサンガーシークエンシングによりさらに確認した。感染細胞の表面での共刺激リガンドの発現を確認するために、培養B16-F10細胞を2のMOIで感染させ、24時間後、各々の遺伝子に特異的な抗体を用いるフローサイトメトリーにより解析した(
図46)。
【0289】
(NDV-4-1BBLは遠位腫瘍におけるリンパ球による腫瘍浸潤の増加を誘導する)
改変されたウイルスが免疫応答の増強の何らかの証拠を示す能力を、NDV-4-1BBLを一例として用いて評価した。両側腹B16-F10メラノーマを担持するマウスを、先に記載されている通りに、右腫瘍への対照NDV又はNDV-4-1BBLの腫瘍内注射で処置し、遠位腫瘍を15日目に回収した。
図47を見て分かるように、NDV-4-1BBLによる療法は、対側腫瘍への自然免疫細胞と適応免疫細胞の両方の浸潤の増強を示し、ICOSLを発現するNDVと同様の結果を示した先の研究結果と一致した(
図40)。全体的に見て、これらの研究結果は、腫瘍微小環境の状況でのNDVによる免疫刺激性分子の発現が、抗腫瘍免疫の増強をもたらすことができることを示唆している。
【0290】
作製されたウイルスNDV-4-1BBL、NDV-GITRL、NDV-OX40L、NDV-CD40L、NDV-IL-2、NDV-IL-15、NDV-IL-21を、この第7節に記載されているのと同様のアッセイを用いて、腫瘍免疫浸潤を誘導する能力について評価する。さらに、治療的評価のために、該ウイルスの各々を、該ウイルスを抑制性チェックポイントPD-1、PD-L1、及び/又はCTLA-4を標的とする全身性抗体と組み合わせて単側腹腫瘍に投与する両側腹腫瘍モデルで評価する。
【0291】
(結論)
免疫原性腫瘍細胞死及び炎症応答を誘発するために、非病原性NDVを利用した。非病原性NDVは、その比較的弱い溶解活性にもかかわらず、I型IFN及びDC成熟の強力な誘導因子であることが示されている(Wildenらの文献、2009, Int J Oncol 34: 971; Katoらの文献、2005, Immunity 23: 19)。同時免疫による影響を受けないことが以前に示されたスケジュールで腫瘍を交互に移植する両側腹メラノーマモデルを利用した(Turkらの文献、2004, J Exp Med 200: 771)。本実施例は、NDVの腫瘍内注射が、遠位ウイルス拡散の非存在下で遠位腫瘍免疫浸潤をもたらすことを示している。特に、この効果は、Tregの数の相対的減少とCD4及びCD8エフェクター対Treg比の顕著な増大とを伴っていたが、これらは、免疫療法に対する望ましい免疫応答のマーカーであることが以前に示されている(Quezadaらの文献、2006, J Clin Invest 116: 1935; Curranらの文献、2010, Proc Natl Acad Sci U S A 107: 4275)。
【0292】
本実施例のデータは、NDVが腫瘍特異的リンパ球による腫瘍浸潤を増強することを示しており、これは、ウイルス注射を受けた腫瘍の素性に依存した効果であった。腫瘍浸潤の増強及び養子移植リンパ球の増殖は、腫瘍溶解性ウイルス療法と養子T細胞移植を利用する治療的手法との間の相乗作用をさらに示唆している。腫瘍特異的リンパ球が、初期ウイルス感染の部位で活性化及び増殖を経た後、他の腫瘍部位に移動するというのがもっともらしいが、これは、ケモカイン及びリンパ球ホーミング受容体に依存的である可能性が高い(Franciszkiewiczらの文献、2012, Cancer Res 72: 6325)。本実施例のデータは、遠位腫瘍免疫浸潤が一部非特異的であり、異種腫瘍のNDV感染によって、又は処置を受けた動物から未感作腫瘍担持マウスへの血清の移植によって誘導され得ることも示している。IL-6などの炎症性サイトカインによって誘導される血管透過性の増大は、腫瘍血管系の活性化及び腫瘍内へのリンパ球動員に強く寄与し得る(Fisherらの文献、2011, The Journal of clinical investigation 121: 3846)。
【0293】
TILの顕著な増加にもかかわらず、遠位腫瘍における治療効果は、NDV単剤療法の場合、かなり低く、これらの腫瘍の微小環境の免疫抑制的な性質を強調している(Sprangerらの文献、2013, Sci Transl Med 5)。注目すべきことに、全身性抗CTLA-4抗体と腫瘍内NDVとの組合せは、長期の動物生存を伴う遠位B16-F10腫瘍の拒絶をもたらした。動物は、さらなる腫瘍再投与からも防御され、これは、長期記憶の確立を示唆するものであった。興味深いことに、治療効果は、インビトロでのNDV媒介性細胞溶解に対して低い感受性を示すTRAMP C2及びCT26腫瘍モデルでも見られた。これらの研究結果は、このモデルにおいて抗腫瘍効果を誘導する一次機構として、直接的な溶解ではなく、NDV誘導性抗腫瘍免疫/炎症応答の重要性を強調するものである。実際、併用療法で処置されたNDV注射を受けた腫瘍及び遠位腫瘍は、自然免疫細胞並びに活性化CD8+及びCD4+エフェクター細胞による顕著な浸潤を示したが、CD8+細胞及びNK細胞の除去は、治療効果を消失させた。さらに、組合せ戦略は、IFNAR-/-マウスでは完全に無効であり、このことは、このシステムでの抗腫瘍免疫の誘導におけるI型IFN経路の役割を裏付けている(Fuertesらの文献、2011, J Exp Med 208, 2005; Diamondらの文献、2011, J Exp Med 208: 1989; Swannらの文献、2007, J Immunol 178: 7540)。
【0294】
まとめると、本実施例は、NDVによるB16メラノーマの限局性腫瘍内療法が、炎症応答を誘導し、遠位ウイルス拡散を伴わずに、遠位(ウイルス注射を受けていない)腫瘍におけるリンパ球性浸潤物及び抗腫瘍効果をもたらすことを示している。炎症効果は、腫瘍特異的CD4+及びCD8+ T細胞による遠位腫瘍浸潤と同時に発生し、これは、ウイルス注射を受けた腫瘍の素性に依存する。限局性NDVと全身性CTLA-4遮断による併用療法は、NDV媒介性溶解に対する腫瘍細胞株の感受性に関係なく、免疫原性が低い腫瘍モデルで、予め樹立された遠位腫瘍の拒絶と腫瘍再投与からの防御とをもたらした。治療効果は、調節性T細胞ではなく、活性化されたCD8+及びCD4+エフェクターによる顕著な遠位腫瘍浸潤を伴い、CD8+細胞、NK細胞、及びI型インターフェロンに依存的であった。本実施例は、腫瘍溶解性NDVによる限局性療法が遠位腫瘍において炎症性免疫浸潤物を誘導し、該遠位腫瘍を免疫調節抗体による全身療法に対して感受性にすることを示している。
【0295】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様によって範囲が限定されるものではない。実際、記載されているものの他に、本発明の様々な変更が、前述の説明及び付随する図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0296】
本明細書に引用される全ての参考文献は、各々の個々の刊行物又は特許又は特許出願が、あらゆる目的のために引用により完全に本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別的に示される場合と同じ程度まで、引用により完全に及びあらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
免疫細胞の共刺激受容体のアゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含むキメラニューカッスル病ウイルス(NDV)であって、該アゴニストが該ウイルスによって発現される、前記ウイルス。
(構成2)
免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含むキメラNDVであって、該アンタゴニストが該ウイルスによって発現される、前記キメラNDV。
(構成3)
前記パッケージングされたゲノムが、突然変異Fタンパク質をコードし、該突然変異Fタンパク質が該ウイルスによって発現される、構成1又は2記載のキメラNDV。
(構成4)
前記免疫細胞が、Tリンパ球又はナチュラルキラー(NK)細胞である、構成1又は2記載のキメラNDV。
(構成5)
前記共刺激受容体が、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)、OX40、CD27、CD28、4-1BB、又はCD40である、構成1記載のキメラNDV。
(構成6)
前記抑制受容体が、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、又はT細胞膜タンパク質3(TIM3)である、構成2記載のキメラNDV。
(構成7)
前記アゴニストが、前記共刺激受容体に特異的に結合する抗体である、構成1記載のキメラNDV。
(構成8)
前記アゴニストが、前記共刺激受容体に特異的に結合するリガンドである、構成1記載のキメラNDV。
(構成9)
前記アゴニストが、GITR、OX40、CD27、CD28、4-1BB、又はCD40に特異的に結合する抗体である、構成1記載のキメラNDV。
(構成10)
前記抗体が、モノクローナル抗体又は単鎖Fvである、構成7又は9記載のキメラNDV。
(構成11)
前記リガンドが、GITRL、CD40L、CD137L、OX40L、CD70、又はICOSLである、構成8記載のキメラNDV。
(構成12)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体に特異的に結合する抗体である、構成2記載のキメラNDV。
(構成13)
前記アンタゴニストが、CTLA-4、PD-1、BTLA、KIR、LAG3、又はTIM3に特異的に結合する抗体である、構成2記載のキメラNDV。
(構成14)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体のリガンドの可溶性受容体である、構成2記載のキメラNDV。
(構成15)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体のリガンドに特異的に結合する抗体である、構成2記載のキメラNDV。
(構成16)
前記アンタゴニストが、PDL1、PDL2、B7-H3、B7-H4、HVEM、又はGal9に特異的に結合する抗体である、構成2記載のキメラNDV。
(構成17)
前記可溶性受容体が、PD1、BTLA、KIR、LAG3、又はTIM3の細胞外ドメインである、構成14記載のキメラNDV。
(構成18)
前記抗体が、モノクローナル抗体又はsc-Fvである、構成12、13、15、又は16記載のキメラNDV。
(構成19)
構成1、5、7、8、9、又は11記載のキメラNDV及び医薬として許容し得る担体を含む、医薬組成物。
(構成20)
構成2、6、12、13、14、15、16、又は17記載のキメラNDV及び医薬として許容し得る担体を含む、医薬組成物。
(構成21)
医薬組成物を製造する方法であって:
a.構成1、2、5〜9、又は11〜17のいずれか一項記載のキメラNDVを、NDV感染を起こしやすい細胞株で増殖させること;及び
b.子孫ウイルスを回収すること
を含み、
ここで、該ウイルスは、該子孫ウイルスが医薬組成物への製剤化に適するように、該ウイルスが夾雑物質を含まない十分な量まで及びそのような十分な条件下で成長させられる、前記方法。
(構成22)
医薬組成物を製造する方法であって:
a.構成1、2、5〜9、又は11〜17のいずれか一項記載のキメラNDVを孵化卵で増殖させること;及び
b.子孫ウイルスを回収すること
を含み、
ここで、該ウイルスは、該子孫ウイルスが医薬組成物への製剤化に適するように、該ウイルスが夾雑物質を含まない十分な量まで及びそのような十分な条件下で成長させられる、前記方法。
(構成23)
構成1、2、5〜9、又は11〜17のいずれか一項記載のキメラNDVを含む細胞株。
(構成24)
構成1、2、5〜9、又は11〜17のいずれか一項記載のキメラNDVを含む孵化卵。
(構成25)
癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構成1、5、7、8、9、又は11のいずれか一項記載のキメラNDVを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
(構成26)
癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構成2、6、12、13、14、15、16、又は17のいずれか一項記載のキメラNDVを含む医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
(構成27)
前記キメラNDVのパッケージングされたゲノムが、突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質をコードしており、そのため、該突然変異Fタンパク質が該ウイルスによって発現される、構成25記載の方法。
(構成28)
前記キメラNDVのパッケージングされたゲノムが、突然変異した切断部位を有する突然変異Fタンパク質をコードしており、そのため、該突然変異Fタンパク質が該ウイルスによって発現される、構成26記載の方法。
(構成29)
前記対象に、免疫細胞の共刺激受容体の第二のアゴニストを投与することをさらに含む、構成25記載の方法。
(構成30)
前記対象に、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニストを投与することをさらに含む、構成26記載の方法。
(構成31)
前記対象に、免疫細胞の抑制受容体の第二のアンタゴニストを投与することをさらに含む、構成26記載の方法。
(構成32)
前記対象に、免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストを投与することをさらに含む、構成25記載の方法。
(構成33)
癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、NDVと免疫細胞の共刺激受容体のアゴニストとを投与することを含む、前記方法。
(構成34)
癌を治療する方法であって、それを必要とする対象に、NDVと免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストとを投与することを含む、前記方法。
(構成35)
前記NDVがキメラNDVであり、該キメラNDVが、該ウイルスによって発現されるサイトカインをコードするパッケージングされたゲノムを含む、構成33記載の方法。
(構成36)
前記NDVが、サイトカインをコードするパッケージングされたゲノムを含むキメラNDVであり、該サイトカインが該ウイルスによって発現される、構成34記載の方法。
(構成37)
前記NDVが、免疫細胞の共刺激受容体の第二のアゴニスト又は免疫細胞の抑制受容体のアンタゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含むキメラNDVであり、該第二のアゴニスト又はアンタゴニストが該ウイルスによって発現される、構成33記載の方法。
(構成38)
前記NDVが、免疫細胞の共刺激受容体のアゴニスト又は免疫細胞の抑制受容体の第二のアンタゴニストをコードするパッケージングされたゲノムを含むキメラNDVであり、該アゴニスト又は第二のアンタゴニストが該ウイルスによって発現される、構成34記載の方法。
(構成39)
前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-15、又はIL-21である、構成35又は36記載の方法。
(構成40)
前記共刺激受容体が、GITR、OX40、CD27、CD28、4-1BB、又はCD40である、構成33記載の方法。
(構成41)
前記抑制受容体が、CTLA-4、PD1、BTLA、KIR、LAG3、又はTIM3である、構成34記載の方法。
(構成42)
前記アゴニストが、前記共刺激受容体に特異的に結合する抗体である、構成33記載の方法。
(構成43)
前記アゴニストが、前記共刺激受容体に特異的に結合するリガンドである、構成33記載の方法。
(構成44)
前記アゴニストが、GITR、OX40、CD27、CD28、4-1BB、又はCD40に特異的に結合する抗体である、構成33記載の方法。
(構成45)
前記抗体が、モノクローナル抗体又は単鎖Fvである、構成42又は44記載の方法。
(構成46)
前記リガンドが、CD137L、OX40L、CD40L、GITRL、CD70、又はICOSLである、構成43記載の方法。
(構成47)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体に特異的に結合する抗体である、構成34記載の方法。
(構成48)
前記アンタゴニストが、CTLA-4、PD1、BTLA、KIR、LAG3、又はTIM3に特異的に結合する抗体である、構成34記載の方法。
(構成49)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体のリガンドの可溶性受容体である、構成34記載の方法。
(構成50)
前記アンタゴニストが、前記抑制受容体のリガンドに特異的に結合する抗体である、構成34記載の方法。
(構成51)
前記アンタゴニストが、PDL1、PDL2、B7-H3、B7-H4、HVEM、又はGal9に特異的に結合する抗体である、構成34記載の方法。
(構成52)
前記可溶性受容体が、PD1、BTLA、KIR、LAG3、又はTIM3の細胞外ドメインである、構成51記載の方法。
(構成53)
前記抗体が、モノクローナル抗体又はscFvである、構成47、48、50、又は51記載の方法。
(構成54)
養子Tリンパ球を投与することをさらに含む、構成33又は34記載の方法。
(構成55)
前記癌が、メラノーマ、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、又は腎細胞癌である、構成33〜38、40〜44、又は46〜52のいずれか一項記載の方法。
(構成56)
前記癌が、悪性メラノーマ、悪性神経膠腫、腎細胞癌、膵腺癌、悪性中皮腫、肺腺癌、肺小細胞癌、肺扁平上皮細胞癌、未分化甲状腺癌、又は頭頸部扁平上皮細胞癌である、構成33〜38、40〜44、又は46〜52のいずれか一項記載の方法。
(構成57)
前記対象がヒトである、構成33〜38、40〜44、又は46〜52のいずれか一項記載の方法。